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卵巣癌の一例

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Academic year: 2021

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iN葦董i幣些≡重竺…鴨(籍召舞≒言i糞1垂套 圭8 骨)

緒 東京女子医科大学産婦人科学i教室(主任 柚木祥三郎教授) 雷 吉 ≡1シ 田 ダ 茂 シゲ 子 コ

(受付昭和33年8月21目)

卵巣腫瘍中充実性腫瘍の占める割合は,本邦に おいては樋口教授i)によると10.7%,欧米では

StUb1er u. Brandeaus 29.9.0/o, J. Miller8)21t. O/0/o,

Ailan&HeTtig 2δ.6%で本邦に比し遙かに癸現 頻度は高い,卵;巣充実性腫瘍中卵;巣癌はその発生 機転により,単純性卵巣癌と転移性卵巣癌に大別 され更に単純性卵巣癌は原発性と続発性とにわけ られる。続発性卵巣癌はその多くは良性卵巣嚢腫 の上皮成分が癌変性したもので,漿液嚢腫,殊に 面高嚢腫,偽ムチン嚢腫及び皮様嚢腫の4種に見 られる。通常これらの卵巣嚢腫の発育は緩慢で, 悪性変化をなすものは一一一般に稀とされている。 最近当教室において巨大なる卵巣嚢腫を有し, 悪性卵巣腫瘍の診断のもとに開腹,両側卵巣及び 子宮全話出術を行い,組織学的検査により卵巣癌 と診断された一症例を経験したのでここに報告す る。 症 例 患 者:○中○代,46才,4回経産。 初 診:昭和33年4月22日。同目入院。 主 訴:腹部膨隆 家族歴:父胃潰瘍にて死亡。 既往歴=20才虫垂切除術施行。その他特記すべき事 なし。 月経;初潮ユ7才。正順,30El型,量中等量,持続 3日,月経時軽度下腹痛あり。最終月経3月2唄,24 才健康男子と結婚。25才初産後3回の妊娠分娩はいず れも正常,終産29才,児4人健康,38才と44才に妊 娠3ヵ月で人工中絶を行っている。 現病歴:2年前の人工中絶の際子宮筋腫か或は卵巣 嚢腫があるらしいと云われた。1年前に腹部膨隆に気 付いたが,栄養摂取により肥ってきたのだろうと思っ ていた。1ヵ月前より急激に腹部膨隆が増大し,更に 1週間前より胃部圧迫感,食欲不振,悪心,腰背痛, 下腹痛,頻尿,便秘を訴える様になった。 二三:外診時所見:体格・やや大,顔貌衰弱し苦 悶状を呈す。胸部異常なし。腹部は著明に膨隆し その形は’ひょうたん型,で膀のやや上方でくび れを生じている。腫瘍上界は剣状突起下3横指で 耳丁半・合上縁より31 cm。最大腹囲は77㎝。腹 壁は平滑で右腸骨窩に虫垂切除の癩痕を認むるの ほか,静脈怒張等の所見なし。 内診時所見;外陰,二塁に異常なし。予宮は後 屈しその上方に小児頭火の腫瘤が上下に重ってお り,上方の腫瘤は弾性軟,下方の腫瘤は左側弾性 軟で,右側は弾性硬,表面は平滑で移動性なく, 軽度の圧痛あり,帯下は粘液性白色で量少量。麓 粘膜はリビド着色なし。 悪性卵巣腫瘍の診断のもとに入院,血圧120∼ 80 mmHg,脈搏70,血液所見:血色素98%ザー リー,赤!血球数470万,白血球数8700,赤沈1時

間値45 rnm,2鵬90㎜,出血醐1分20秒,

心臓機能検査(ビッケンバッハ氏法)異常なし。 スメアーテストは表層細胞多数を認め異型細胞を 認めず。尿蛋白及び糖の定性試験は陰性,ウロビ リノーゲン正常。 手術時所見:昭和33年4月6日開腹術施行。・ 腹腔内には淡黄色漿液性の腹水多量を認む。右 卵巣は小児頭大腫瘤が上下に重なり中央にくびれ を生じ,大網膜,腸,腸間膜,子宮及び1部腹壁 に線維性癒着あり。癒着剥離後両側卵巣及び子宮 全別出術を行った。

Shig・k・YOSHmA(D・p・・t…n’t・f Gynec・1・gy&Ob・t・t・i・・, T・ky・W・m・n’・M・d玉caユC・Ilege): One case of ovarian carcinoma.

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56 第 1 図 捌出腫瘍(右卵巣)・子宮・左卵巣の肉眼的所見 捌出物所見:右卵巣は27×18×16cm Ut量 35GO g,第1図の如く小児頭大の藝胞部と同じ大きさ の実質都とより成り,その表面は線維性癒着を認 め,平滑であるが壁の一部は菲薄,一部凹凸を示 している。割面は,嚢胞性の部は単房性であり, 充実性の二部は無数の小嚢胞から鷲卵大嚢胞及び全 く充実性の部よりなる。充実性の部は極めて僅か の結合織線維が錯綜し,殆んど腫瘍実質により占 められ,一部に小鳩卵大の三色壊死様部を認め る。 左卵巣は超栂指頭大,硬度梢々軟。一個の黄体 を認める。これを撫すると,示指頭大の周囲組織 との境界鋭利な黄色充実性部を認める。外側卵管 はほぼ正常。間膜に一個の小指頭大の副卵巣嚢腫 を認める。 子宮は小鷲卵大,表面に多数の線維性癒着を認 める。これの割面においては,やや内膜が菲薄な るのほか隅田はない。 第 2 図 右続発卵巣癌の組織所見 組織学的所見:右卵巣(第2図)腫瘤の組織の大 部分をなすものは嚢胞を形成する腫瘍実質で,嚢 胞内壁は比較的高円柱形を呈する腺上皮により覆 われている。腺上皮は大なる嚢胞においては圧排 されて比較的平坦なるも,中等度異なる嚢胞にお いては,上皮は乳嚇様,あるいは充実様配列を営 み,極めて異型を呈する。間質は比較的僅少にし て,浮腫状,血管僅少,小円形細胞を中等量に認 める。腺上皮のムチカルミン反応は陽性である。 第 3 乙 甲卵巣・卵巣門附近リンパ管内転移腫瘍細胞 左卵巣腫瘍実質は鋭利に卵巣実質と境界され, 実質は対側卵巣とほぼ同様の所見を呈するが,実 質の辺縁部即ち卵巣実質に近き部においては多数 の拡大されたリンパ管と,同管内に腫瘍細胞の点 在が認められる。(第3図) 子宮:子宮筋層及び内膜には全く腫瘍細胞の転 移は認められず,内膜はやや萎縮像を呈してい る。 組織学的診断:右卵巣:続発性癌即ち偽ムチン 性嚢腺腫の癌変化,熱感;巣:癌の転移,子宮=萎 縮内膜 術後経過:術後10日目よりレントゲン深部照射 を開始した。(総量5600r)全身状態良好で入院後 2ヵ月で退院,約1カ月後の7月中旬来院時,自 覚症状全くなく,再発は認められず経過良好であ る。 考 按 卵巣腫瘍中卵巣癌の占める頻度は,Pflaum10.7 %, Lippert 11.27%, Sclmidlechner 13.5% Eler 25.9%, Ravano 28.09%, A Mayer 24.5

%,Stitble u. Brandesは乳肝腫45.2%,偽ム チン嚢腫6,7%,Frankl, Kermaunerは類皮嚢 胞腫1∼2%と述べ,又A.Mayerの統計による と偽ムチン嚢腫8.4%,類皮嚢胞腫3.6%,漿液 嚢腫29.2%で続発性卵巣癌は全卵巣癌の41.2% を占めていると報告している。又卵巣嚢腫中癌変 一778一

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57 性の頻度はSchmidlechner 88.3%, Ravano13.4 %,AMayer 19.6%であると述べその頻度は種 々である。 本邦においては,樋口教授の昭和32年5月末現 在の卵巣腫瘍統計によると嚢胞性腫瘍89. 3%で, 嚢腺腫:の続発性癌は1.3%であり,続発性卵巣癌 は全充実性腫瘍中15%を占めている。これは転 移性卵巣癌22.24%についで多く原発性は5.3% と述べている。 年令的に見ると一般癌腫と同様4ρ∼60才に認 められ続発性卵巣癌の平均年令は47.2才で最低年 令は20才,最高は68才に認められている。:最近 Drewes E工.等ユ。)は19才の偽ムチン性嚢腺腫の 癌変性を報告している。一般に卵巣癌は子宮癌よ りも高年者に多いとされている。本四においては 46才で最も頻度の高い年令である。1 症状としては腹部膨隆が最:も多くG7.7%を占 め,腹痛33.3%,性器出血12.7%,無月経5.6% がこれに次ぐ,その他悪心,嘔吐,頻尿,発熱, 便秘等であるが,卵巣嚢腫の癌変性として特別な 臨床症状はない様であるが,特に腹部膨隆は最も 多く,旧例においても腹部膨隆をヰ訴し,その後 腹痛,悪心,頻尿,便秘の圧迫症状を訴える様に なった。2年前に小卵巣嚢腫が存在し,約1カ月 間で急激に増大したことは悪性化を思わしめる。 腹水は良性,悪性をとわず認められる事が多く特 に悪性腫瘍においては,Frank17)によると原発癌 32.2%,転移癌63.3%,A. Mayerは32.2%と 報告し,今野5・によると原発癌60%,続発癌64.5 %と述べているが,本症例でも腹水は多量に認め られ,その性状は漿液性であった。転移は,卵巣 には血管が少くかつ広靱帯のみにて周囲と連結す る関係上転移は少いとPfannenstei1 ii)は報じて いるが,他側卵巣への転移が極めて多くSchott−

Iander i2♪によると90%, K:aufner, Herrich,

Richelnerは92%に認められたと述べ,更に子宮 への転移を認めたものは加藤2ノによると58例中 準則で75.8%の高頻度を示している。又Frank1 も卵巣癌と共に呼野せる子宮83例中続発性卵巣癌 の17例の子宮には殆んどすべて転移を見たと述べ ている。本例では右側の続発性卵巣癌より他側卵 巣ヘリンパ性転移を認めた事は,組織所見により 明らかである。しかし子宮には転移を認めなかっ たQ 診断は通常困難で本症例の如く以前に卵巣嚢腫 を有し,急激なる腹部膨隆更に種々の圧迫症状が 出ると悪性化が考えられるが,一般には困難なこ とが多く,その適中率は今野7J)によると原発癌町 中皆無,続発癌では29%弱であると雪い術前診断 は困難である。赤沈はKlaftenによると壊疽のお こる原発性卵巣癌の時には上昇すると述べている が,旧例では術前赤沈値上昇し術後正常となっ た,捌出腫瘍中には壊疸組織を認めた。登倉等は 子宮卵管造影術を行ったがこれも決定的な所見は 認められない様である。更にMcGarvey 9)は膣 内容検査で腺癌と考えられる悪性細胞を認め,卵 巣癌と診断し手術によりごのことを確認した例を 報告しているが,本望においてもスメアーテスト を行ったが腫瘍細胞を認め得なかった。いずれに しても述前診断は困難で組織学的診断以外には確 痒しにくい。 治療は腫瘍の罷出であるが,A.Mayerの続発 性卵巣癌では90%が両側性であること,及び前記 の他側卵巣,更に子宮への転移が高頻度であるこ とから老えて出来るだけ両側附属器及び子宮企捌 出術を施行すべきであると考える。卵巣癌の放射 線療法は子宮癌の如き良結果は得難く,ラジウム, レントゲン,Co 60等の放射線療法のみにより認 むべき効果の収められた報告例は未だ見ない。し かし根治手術をなし得たものでもこれら放射線療 法及び制癌剤の投与は,再発の予防或は生命の延 長に有効に作用するものと考えられる。 予後については一般に不良とされている。本症 例は術後3カ月になるが,全身状態良好でレント ゲン照射によりやや食慾減退を来したが血液所見 も良好で,手術によりほぼ目的を達したと思われ るが文献上予後不良の症例が多く今後厳重な観察 が必要であると思われる。 結 語 1) 本症例は46才,4回経産婦の続発性卵巣癌 で,両側卵巣及び子宮全摘除術後レントゲン照射 により一次的治癒を認めた一例を報告した。 2) 腫瘍は組織学的に右卵巣は偽ムチン性嚢腺 腫の癌変性で,左卵巣は右側卵巣癌のリンパ性転 eelCよるものである。 3) 術後3カ月間,自覚症状全くなく再発を認 めない。 欄筆に当り恩師柚木教授の御懇篤よる御指導,三校 一779一

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58 閲に深謝すると共に・慈恵医大樋口教授並びに加藤講 師の組織学的方面の御指導に対し心より感謝の意を表 します。 丈 献 1)樋ロー成・加藤俊・他:産婦入科の実際,6, (11), 621 (B” 32) 2)加藤俊・籾木和穗・他:産婦人科の世界,9, (4),452(日召32) 3)今野亨彦:東京慈恵会医科大学雑誌,69,(4) 314 (日吾 29) 4)登倉正博・小山茂男・他:東北医学雑誌,55, (3),257(昭32) 5)馬場 弘・後藤 鴎・楠 登:産婦人科の世 界, 7, (8), 943 (口召 30) 6)山岡一行・木原康産・日山成吾:広島医学原著 号,4, (4),331 (日召31)

7) Frankel, O.:Arch. f. Gyntik. Bd. 113, s.

29 (1920)

8) Miller, J.:Henke’ Lubarsch’s Handb, d.

spez. Path. Anat. u..Hist.皿tei1(1937)

9) Garvey, Mc. : Obst..& Gynec. 5, 257 (1955) 10) Drewes, E.L., Salome, J.,一Preacher, C.B. :

Am. J. Obst & Gynec. 73, (5), 112 (1957) 11) Pfannensteil, H.J.:Arch. L Gynak’ 4”,507

(1895)

12) Schottlgnder, H.:Zentra]b. f. Gyntik. 39,

170 (1915) 13)安信宏:産科と婦人科,24,(2),185(昭 32) 14)金沢太郎・山田fi・一:臨床婦人科産科,19, (12),835(昭31) 15)林義夫・ヰ塚好勝;北海道産科婦入科,学会 雑誌,6,(1),.80(昭30) 16)山田広道:産科婦入科,f4,.(8),739(昭32)

一780n

参照

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