EU競争法におけるライセンス拒否 : マイクロソフ
ト事件判決を手掛かりとして (【退職記念号】 佐
藤 俊一 教授 三沢 元次 教授 盛岡 一夫 教授)
著者名(日)
多田 英明
雑誌名
東洋法学
巻
53
号
3
ページ
135-158
発行年
2010-03-01
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00000736/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja︽論 説︾
EU競争法におけるライセンス拒否
マイクロソフト事件判決を手掛かりとして
はじめに多 田
英 明
知的財産権を有する事業者による競争者へのライセンス拒否は、競争法による競争秩序の維持と、知的財産権法 による知的財産権の保護の要請との間でどのように折り合いをつけるかという、競争法と知的財産権法が交錯する 場面の問題である。知的財産権を有していることは、当該事業者が支配的地位にあるることを必ずしも意味するも のではない。しかしながら、当該事業者の競争者は、知的財産権で保護されている商品を権利者の同意なく製造・ 販売することができないため、知的財産権の存在が参入障壁となる場合もある。他方、知的財産権を有する事業者 に対し、競争促進の観点からライセンスの強制実施を求めると、知的財産の創造に対するインセンテイブが失わ れ、知的財産権の価値を減ずることが懸念される。 EU競争法において、支配的地位を有する事業者︵以下、支配的事業者とする。︶による競争者へのライセンス拒否は、濫用行為として欧州連合の運営に関する条約︵以下、EU運営条約。なお、特に断りのない限り本文中の条文は ︵1︶ 本条約のものとする。︶一〇二条︵旧欧州共同体を設立する条約11EC条約八二条︶により禁止されうることが、欧州司 ︵2︶ ︵3︶ ︵4︶ 法裁判所の先例であるζ謎旨事件判決︵一九九五年︶、Hζω=S一跨事件先決裁定︵二〇〇四年︶により確立されて ︵5︶ ︵6︶ いる。その後、総合裁判所によるマイクロソフト事件判決︵二〇〇七年︶では、知的財産権︵具体的には著作権︶と しての実質の伴ったコンピユーターのオペレーティング・システム︵以下、OSとする。︶の﹁相互運用性情報﹂に ついて、著作権者であるマイクロソフトによる競争者へのライセンス拒否が支配的地位の濫用と認定された。 本稿では、マイクロソフト事件総合裁判所判決を手掛かりに、一〇二条により濫用行為と認定されるライセンス 拒否について考察することを目的とする。以下、一〇二条における商品・サービスの供給拒否と不可欠施設の理論 が問題となった事例︵第一章︶、および知的財産権のライセンス拒否が濫用行為とされた事例を総括した上で︵第二 章︶、マイクロソフト事件総合裁判所判決を概観する︵第三章︶。しかる後、ライセンス拒否を濫用行為と認定する ことについて、若干の考察を加えることとしたい︵第四章︶。 ︵1︶ 二〇〇八年一二月一日の﹁リスボン条約﹂︵欧州連合条約および欧州共同体設立条約を修正するリスボン条約︶発効により、 従前の﹁欧州共同体を設立する条約﹂︵EC条約︶は、﹁欧州連合の運営に関する条約﹂と改称された。これに伴い、条文番号も変 更されている。 ︵2︶ リスボン条約の発効により、EC条約下の﹁欧州共同体司法裁判所︵日房02旨9甘呂89浮①国ξ・篇き○・ヨヨ琶誌霧︶﹂ は、﹁欧州連合司法裁判所︵↓箒O・霞け9冒昌80P冨国霞8①磐d巳8︶﹂と改称された。以下、本稿では﹁欧州連合司法裁判 所﹂については、﹁欧州共同体司法裁判所﹂時代からの一般的呼称であった﹁欧州司法裁判所﹂を用いることする。 ︵3︶9ω80−圏一−N\O節力↓国印目℃く6・B巨ωω一8[H8㎝]国○幻H−置9 136
︵4︶9の①O−合・ Q\OH響冒ω浮巴跨○ヨ臣帥○・○頃○ダZUO浮曽一昌OB臣帥O・因○[80鼻]鴇刀H−㎝。G 。9 ︵5︶ リスボン条約の発効により、EC条約下の﹁第一審裁判所︵↓箒02旨9固お二霧け簿⇔8︶﹂は、﹁総合裁判所︵↓冨○窪震9 〇〇自け︶﹂と改称された。なお、↓冨09R巴○・霞けについては、現時点では訳語が確立されていないため、本稿では過渡的な訳語 として﹁総合裁判所﹂を用いることとするが、同裁判所の機能に鑑みて、﹁総合﹂裁判所というのは必ずしも適切な訳語ではない ことを付言する。 ︵6︶9ω①↓幽・一\・毒言R・ω・津○・∈ζO§邑ωω一8[8。コ目固H−ω。・一■ 供給拒否と不可欠施設の理論 ︵一︶商品・サービスの供給拒否 契約自由の原則の下、取引先事業者の選択は、事業者に委ねられており、自己の提供する商品・サービスの供給 先についても、事業者が自由に決定するのが原則である。支配的事業者による濫用行為を禁止する一〇二条には、 支配的事業者による自己の提供する商品・サービスの供給拒否、および自己の保有する施設へのアクセス拒否を濫 ︵7︶ 用行為として禁止する明示的な禁止規定は置かれていない。かかる拒否を濫用行為として禁止することは、裁判所 判決、および欧州委員会決定により確立されてきた。 ︵8︶ 欧州司法裁判所が、支配的事業者による供給拒否を濫用行為と認定したのは、O・BB段。巨ω・一奉旨ω事件判決 ︵一九七四年︶においてであった。原材料︵アミノブタノール︶の製造において支配的地位にある○○日B①8巨ω♀ <①旨ω︵米国︶は、派生物質︵エタンブートル︶を製造することを決定し、同社のイタリア子会社国毘ε80冨巨♀ ①鍔官8H琶一き○を通じて、エタンブートルの製造において競争関係に立つこととなるアミノブタノールの取引先
N・す︵イタリア︶に対し、アミノブタノールの供給を拒否することとした。欧州司法裁判所は、供給拒否により共 同市場におけるエタンブートルの主要製造業者二社の一方が排除される可能性を認定し、○OBB震・巨ω・一奉耳ωに よるアミノブタノールの供給拒否は濫用行為に該当すると判示した。 ︵9︶ その後、欧州司法裁判所は、¢巳け8騨き房事件判決︵一九七八年︶では、バナナ市場において支配的地位にあ るd巳汁8甲き房︵米国︶が、バナナの燵蒸・販売業者である9ω窪︵デンマーク︶に対し自己の商品︵9δ嘗霧ブ ランドのバナナ︶の供給を拒否したことについて、当該供給拒否が9ω窪によるd巳け8甲磐房の競争者ω什彗量巳 閃毎詳の商品︵U・一①ブランドのバナナ︶の優遇、および宣伝面での協力を受けたものであっても、濫用行為にあたる ︵10︶ と判示した。また、寓罐ぎ事件決定︵一九七八年︶において欧州委員会は、主たる製品市場︵金銭登録機︶では、市 場占拠率が二一−一四%に留まることから支配的地位を有していないものの、自社製品の補修部品市場では支配的 地位を有している頃罐ぎ︵スウェーデン︶が、自社製品の修理事業を立ち上げた同社製品の英国における排他的販 ︵n︶ 売業者であったロ讐9︵英国︶に補修部品の供給を拒否したことが、濫用行為と認定された。 ︵二︶欧州委員会決定にみる﹁不可欠施設の理論﹂ 欧州委員会は、商品・サービスの取引拒絶に加え、支配的事業者が自己の所有する施設・資源へのアクセスを拒 ︵12︶ 否することについても、いわゆる﹁不可欠施設の理論﹂を用いて一〇二条違反を認定するようになった。その背景 として、欧州委員会は一九八○年代以降、従前いわゆる自然独占が認められ、市場メカニズムには馴染まないと考 えられており、加盟国によっては国営となっていた電気通信、エネルギー、運輸事業等における独占的な状態を解 消すべく、自由化の推進を開始したことがある。これらの産業への競争原理の導入には、支配的事業者が所有して 138
いることが多い重要な施設、すなわち電話線︵電気通信事業︶、送電線網・ガスパイプライン︵エネルギー事業︶、港 湾・空港・鉄道網︵運輸事業︶等へのアクセス供与が前提となる。 ︵13︶ まず、欧州委員会は、8&9国震8①き−ωぎ窪曽事件決定︵一九八八年︶において、ベルギー国内のコンピユー ター予約システム市場において支配的地位を有していたωぎ①轟航空︵ベルギー︶が、自己の予約システムの容量 に余裕があったのもかかわらず、競争関係にあった8包9−国巽8①磐航空︵英国︶による予約システムの利用を 拒否したことを問題視した。ω筈Φ轟航空の拒否について欧州委員会は、8区9山棄○冨碧航空がロンドンーブ リュッセル路線から撤退するか、運賃を引き上げざるをえない状態に追い込まれ、また8且8向霞8①碧航空が ωぎΦ冨航空の地上サービスを利用できなくなるおそれがあることを理由に、濫用行為と認定した。その後、欧州 ︵14︶ 委員会は、㌍庄警匡色弩曼>Rロロ磐ω事件決定︵一九九二年︶において、ロンドンーダブリン間の路線について 支配的地位を有する>段ロ鑛房航空︵アイルランド︶が、卑獣筈ζ巨磐α航空︵英国︶の同路線就航を機に相互運 航︵巨亀巨鑛︶を取り止めたことについて、㌍置号ζ芭磐α航空に対して競争上の不利益を課し、同路線の競争 を制限することになるとして、濫用行為と認定した。本件では、﹁不可欠施設﹂という用語自体は用いられていな いが、不可欠施設概念の萌芽を見ることができる。 ︵15︶ 欧州委員会が、明示的に不可欠施設という表現を用いたのは、ω窪冒ζω智=・膏冨包事件決定︵一九九二年︶に おいてであった。本件では、英国ウェールズとアイルランド間の中央回廊︵8耳琶8霞箆&航路でフェリーを就 航していたω①呂嘗餌巽ぴ・巽︵英国︶が、同時にウェールズの=○一旨①鑑港を所有・運営していることから、同港の 港湾施設について支配的地位を有していると認定された。B&1︵英国︶は、=○辱冨包港の︾α日ぼ巴蔓埠頭を利 用し、同航路に就航していたが、=・一旨Φ包港が狭隆なため、ω①讐爵のフェリーが航行する度に押し寄せる波によ
り乗下船を中止せざるをえない状況にあった。B&1は、ω①呂爵がこれまで以上に乗下船の妨げとなる新たな運 航時刻表を導入する計画であることを知り、欧州委員会へ申告した。欧州委員会は、次のように判断し、初めて ﹁不可欠施設﹂という表現を用いてω①毘爵による濫用行為を認定した。 ﹁﹃不可欠施設﹄、すなわち、アクセスできなければ競争者が顧客に対してサービスを提供することができない施設ない しインフラ・ストラクチャーを所有ないし管理した上で、自らも利用しており、また当該施設へのアクセスを拒否、な いし自己のサービスに与えている条件よりも不利な条件によってのみ競争者にアクセスを与えることにより、競争者を 競争上不利な地位に置く支配的事業者は、[一〇二条]に規定される他の要件を満たす場合には、同条に違反すること となる。支配的事業者は、関連市場において自己の活動に有利になるように差別してはならない。⋮⋮ある市場におい て市場支配力を利用する不可欠施設の所有者が、別の関連市場における自己の地位を強化するために、とりわけ競争者 に対して、自己のサービスに対する条件よりも不利な条件で関連市場へのアクセスを与えることにより客観的な正当化 事由なく競争上の不利益を強要する場合には、[一〇二条]違反となる﹂︵四一段︶。 ︵16︶ その後、欧州委員会は、港湾に関する三事件、すなわち、ω窪09邑器おげ巳くあ8墨ω8一一嘗事件決定︵一九九三 ︵17︶ 年︶、ぽ旨9園9冴︵国員εRけ︶ダU窪B㊤詩事件決定︵一九九三年︶、およびHOO\○OH家・匿ぼ︵℃・詳9寄ω8中︶事 ︵18︶ 件決定︵一九九五年︶において、不可欠施設理論を展開し、濫用行為を認定した。ω臼○・導巴器お事件は、ω8冨 ωΦ讐爵︵前ωΦ普蒔︶が、軽量双胴船によりウエールズ・アイルランド問の中央回廊航路で新たに高速フェリー就 航を希望していた事業者に対して港湾施設の利用を拒否した事件であり、℃・昌9園匿ξ事件は、デンマーク政府 ︵19︶ による一〇六条違反とともに一〇二条違反が認定された事件である。欧州委員会は、両事件決定において、 ω①筈爵\国駝寓・辱冨毘事件で示した不可欠施設に関する見解を繰り返しつつ、不可欠施設の理論は、既存の事業 140
︵20︶ 者だけではなく、新規参入者の場合にも適用されるとの判断を示した。 他方、HOO\OOHζ○量ぼ事件では、日跨09鼠窪琶9・唇︵アイルランド︶がアイルランドからフランス切葺− 鐙薯間にフェリーを就航することを希望していたところ、○OHζ9巨図︵フランス︶が管理運営する殉○の8崩港の利 用が必要であった。○OHζ・匡巴図は、フランス政府から同港の管理運営権限が与えられている行政組織であり、自 身ではフェリーを就航していないものの、アイルランドと切葺$昌間にフェリーを就航する唯一の船会社であっ た閃葺$ξ頴旨8株式の約五%を保有していた。欧州委員会は、同港の利用交渉においてOOHζ9巴図が示した 困難な姿勢が供給拒否となるとして、○OHζ9巨図による濫用行為を認定した。 ︵三︶裁判所判決にみる﹁不可欠施設の理論﹂ ︵二︶でみたように、欧州委員会は不可欠施設の理論に依拠して、支配的事業者による自己の施設へのアクセス 拒否を濫用行為として一〇二条違反を認定していた。一方、欧州司法裁判所は、以下検討する○ωo貰犀○目R事 ︵21︶ 件先決裁定においても、当事者の主張を要約した中で﹁不可欠施設の理論﹂という用語を用いたに過ぎず︵二四 ︵22︶ 段︶、同理論への採用には慎重な姿勢を示していた。 本件は、オーストリアの日刊新聞市場において市場占拠率が発行部数べースで三・六%、広告売上高べースで 六%に留まるUR望き量巳紙を発行する○ω8﹃野○目R︵以下、㌍・目βRとする。︶︵オーストリア︶が、同国内に おいて日刊新聞の全国規模での宅配制度を有している唯一の事業者である霞①9巷日導︵オーストリア︶に対し、同 社の配達網の利用を求めたところ拒否された事案である。なお、ζa一8民導は、同国の日刊新聞市場において発 行部数べースで四六・八%、広告売上高べースで四二%の市場占拠率を有する日刊二紙︵Z①⊆①寄8窪N魯巷騨内午
H属︶を発行していた。卑o目段はオーストリアの国内裁判所に対し、家①98践旨に対して適切な代金を支払うこ とで、同社の宅配制度へ自己のUR望彗量巳紙を加えることを認める命令を求め提訴した。その際卑・目Rは、 郵便配達等他の販売方法は宅配よりも利点が少なく、∪震即き3巳紙の発行部数が限られていることから独自の 宅配制度開設は、事業として経済的に成り立たないと主張した。同裁判所は、本件を欧州司法裁判所に付託し、 竃①9巷工旨による宅配制度利用拒否が濫用行為に該当するか否かについて先決裁定を仰ぐこととした。 ︵23︶ ︵塞︶ 欧州司法裁判所は、○・BB震o巨ω○一奉旨ω事件判決、○ω国ζ事件判決において同裁判所が示した、ある市場にお いて支配的地位にある事業者が、隣接市場において競争関係にある事業者に対して、事業継続に不可欠な原材料 ︵○・B日震。巨の・一お耳ω事件︶ないしサービス︵○ω国ζ事件︶の提供を拒否することは、競争を完全に消滅させる可能 ︵25︶ 性がある場合には濫用行為となるとの判示事項に言及し︵三八段︶、またζ囲筐事件判決において同裁判所が示し た、知的財産権者によるライセンス拒否は、支配的地位を有する事業者によるものであっても、それ自体は支配的 地位の濫用とはならないが、﹁例外的な状況﹂においては濫用となるとの判示事項に言及した︵三九段︶。その上で 同裁判所は、﹁例外的な状況﹂を認定する要件として、一.ライセンス拒否が当該事業を継続する上で不可欠な製 品に関するものであること、二.当該拒否が潜在的な顧客需要のある新製品の誕生を妨げること、三.当該拒否が 客観的に正当化されず、二次市場における競争が全面的に消滅する可能性があることを挙げた︵四〇段︶。 本件において欧州司法裁判所は、上記の三要件に加え、当該施設の現実的、潜在的代替の欠如を要件として提示 した︵四一段︶。その上で、一。新聞によっては利便性の劣る配達方法ではあるが郵便配達ないし店舗・駅売店で の販売等の販売方法が存在し、実際に他の日刊新聞発行者が利用していること︵四三段︶、二。他の日刊新聞発行 者が単独または共同で独自の新聞宅配制度を整備することは、技術的、法的、経済的困難が存在するものの、不可 142
能ないし少なくとも不合理に困難であるとは思われないこと︵四四段︶、三.独自の新聞宅配制度の整備は現実的 な代替手段ではなく、既存の制度へのアクセスが不可欠であることを示すためには、配達される新聞の発行部数が 僅少であるという理由により経済的に成り立たないということを主張するだけでは不十分であること︵四五段︶、 四.既存の新聞宅配制度へのアクセスが不可欠とされるためには、少なくともζaσ冥巨の日刊両紙の発行部数 に匹敵する発行部数のある日刊新聞であっても、新たに新聞宅配制度を創設することが経済的に成り立たないとい うことを示さなければならない︵四六段︶として、竃脅一8ユ昌による同社の新聞宅配制度へのアクセス拒否は濫用 行為とはならないと判示した。 ︵7︶ 以下、本稿では欧州司法裁判所と総合裁判所を区別する必要のない場合には、﹁裁判所﹂と総称する。 ︵8︶9ω①ω①脚刈\刈。 。−H霧餓ε89Φ巨・醇巷一8H琶一き。ω冨磐α○・BB①﹃。巨ω・一<Φ旨ω○・壱ダO・目巨ωω一8ロS癖司O力認ω, ︵9︶ ○器①ミミρd嘗a団N彗房‘○・ヨ巨量8[ごお]両○カ8Sこのほか、一九八七年のω国\切・・ω亀即田㊤≦羅ω事件における欧 州委員会の仮差止決定︵Hく\o 。器お山国\ゆ8ω亀印頃曽≦屏①ω昌旨9Bヨ9霊おωロOo 。Σ9陀o 。費ま︶でも、自己の潜在的競争者に 対する取引拒否が濫用行為と認定された。 ︵10︶ 口宮90器げ力Φ四ωけRω\缶仁閃ぎロ箋o 。]○一陀N\Nω● ︵n︶ その後、欧州司法裁判所は一九七九年、加盟国問通商への影響がないことから本決定を取り消したが、欧州委員会による 缶罐ぼが支配的地位を有しているとの認定自体は支持した︵9器旨ミ○ 。−頃轟巳囚器鐙Nの四磐震︾ω<OOB日一のの一8[るお]団○カ 一〇 。①O︶。 ︵12︶本理論は、一九一二年のd耳巴望讐8<﹄↓R日β巴園巴3匿︾紹8舜一8。団望8巳ω事件︵⑲濠O■ωるO QG。︵る砧︶︶以降、米国 反トラスト法の下で発展してきた理論である。本理論については、勺匡言︾お①量、国ののΦ旨巨厨9置葵︾5国且けげ9β2Φa9 ロ巨け一躍勺言書一Φω.︵お8︶㎝。 。ぎ鼻歪ω什ε。 。“一し・ぎ日①Bb一①霊紹㌧u魯巳禮いΦ讐ぎ9 D80・BもΦ琶・巨O・ヨ冨幕ω、u昌Φω8ω∈−
E U競争法におけるライセンス拒否〔多田 英明 陽○。暑①窪・おきα>8のωω8雰ωΦ含巴評。淳一①ω.︵一8斜︶一。 。男・巳げ弩日、F云。 。8喜σ・辞中ξ跨く噂旨.印旨9Φ閃・員ω浮F、国ω− のΦ呂巴評。一一幕ω.︵H8。︶凹ω富鼠・巳U署力Φ<一睾巨。 。刈.扇震蔓∪・冨量噛.冒ωけ≦冨什︾お雰ωΦ昌巴評。旨Φω.︵N・・H︶ω・ 。Oζ舅Φく。 ωO刈等参照。米国とEUにおける本理論の発展を比較したものとして、︾昌・巳○080暫き8、↓箒霧器且巴富&蔓α8巳需あ一巨− 再鼠Φω磐α象浄お目のωび①ヨ①窪9Φ︾日①旨きき牙冨国q8需讐8冥89.︵8。じま国舅の<。罐。 。るの。躍・二の什く魯尋撃、幻Φ富巴 8号巴磐α9Φα8鼠冨・胤窃器昌巴賦9三霧一づdω睾α国08B冨窪一8冨≦る8ヨ冨声身①需あ冨鼠お磐α曽實88巴8同四 ぎ詩餌σ一①き巴旨。巴富B睾・蒔.︵N・・刈︶認国舅①く。①①介⊆剛ζ自R帥︾窃Φぎ力。α①旨蝉ロω①戸、穿Φ空ω①曽邑評一一・P箒国ωのΦ且巴 評島身U8巳器、︵800 。︶国OU力窪○等参照。 19 18 17 16 15 !4 13 いて規︷疋する ω 22 2! 20 0 ⇒ 認識されていたと指摘されている >B魯8pきα浮Φ国ξ8Φき8賓○蝉魯 Hく\ωN■ω一〇 。一ビo注8国霞8Φき−ωぎの轟[一〇〇 。○ 。]9冨嵩\“N Hく\ωω■鰹倉田置筈ζ窪蝉&く,>震ロ畠霧ロ8凶95①\巽 Hく\ω占鐸ω$一一嘗\ω智=○一旨Φ巴−H昌ΦユBζ8ω員Φω[一8N]㎝○ζい幻謡㎝● 署\ωま○ 。◎あ800日巴冨おい巳くあ8轟ω8冒三お濾]9口望○ 。● 評答・弟且耳︵国貫呂9け︶く●U窪B巽江お婁9頴q\縄 HOO\OOHζ・同巨図︵勺・旨9力・ω。・中︶[一8α]㎝○ζ舅嵩N 旧EC条約八六条︵現EU運営条約一〇六条︶は、公共事業体︵窟喜。琶号ほ爵一p鴨︶に対する条約上の競争規則の適用につ O 前掲・注16ω808琶器あ簿冨蚕鶏噂前掲・注17勺o旨9力亀ξ讐冨轟一N 9器O当\爲○零巽零○暮段OBび自鱒○ρ囚○く,ζa冨冥一日N①一ε甚ωロ80 。]国O閃H−ミ箪 なお、本件に先立つ一九九七年の目巽鼠い匿ぼ・匿事件総合裁判所判決︵9器日ふ○劇貫出段皐[蝉33囹ω︾く.OO目巨甲 [る零]国○閃HH6認︶では、﹁不可欠施設の理論﹂という用語こそ用いられていないが、不可欠施設へのアクセス権が明示的に ︵>日・巳・O碧・蔑磐。ρ.曽①①ωωΦ且巴鱒一一尋α・。鼠壼ω一昌漂葺の鐘包9中R①蓉Φωσ①ヨ①窪爵Φ ︵NOO一︶8両い力①く﹃竃○ 。−讐㎝田︶Q !44
25 24 23 ) ) ) 前掲・注8。 ○器Φω=\O o全○閃国ζく■O[日曽⇒α弓o o[這O o凹国O力o oま一● 9ω①ωO−N命\津勺印?Nお\O一℃勇↓国<hoBB一ωω一8[一8㎝]国○閃H−置ω’ 二.知的財産権の一フイセンス拒否が濫用行為とされた事件 EU競争法においては、上記の商品・サービスの供給拒否、および自己の所有する施設・資源へのアクセス拒否 を濫用行為と認定する議論と並行する形で、知的財産権のライセンス拒否を濫用行為と認定する議論が展開されて きた。 ︵26︶ ︵27︶ ︵一︶<〇一<o事件欧州司法裁判所先決裁定、刀Φ⊃①葺事件欧州司法裁判所判決先決裁定 <○一<・事件先決裁定︵一九八八年︶では、く○一く・︵スウェーデン︶向けの自動車補修部品の製造販売を希望する 甲民く①鑛︵英国︶に対し、また認轟巳什事件先決裁定︵一九八八年︶では、勿①冨爵︵フランス︶向けの自動車補修 部品の製造販売を希望する臼○○カ>︵イタリア︶に対し、<○ぞ○、カΦ轟巳叶が適切なロイヤルティの支払いを受けて も意匠権のライセンスを拒否したことが濫用行為となるか否かについて、それぞれ英国、イタリアの国内裁判所か ら先決裁定を求めて欧州司法裁判所に事案の付託がなされた。欧州司法裁判所は、く・一く・事件において以下のよう ︵28︶ に判示し、所定の濫用的な行為を行う場合には、ライセンス拒否が濫用行為と認定される可能性があるとした。 ﹁法的に保護された意匠権者が、同意の無い当該意匠を実施した商品の第三者による製造、販売、輸入を阻止する権利 は、意匠権者の排他的権利の本質に関わる問題である。従って、意匠権者に対して、当該意匠を実施した商品の供給に
関するライセンスを第三者に供与する義務を課すことは、適切なロイヤルティの支払を受けるものであっても排他的権 利の本質を奪うこととなるため、ライセンス拒否それ自体では支配的地位の濫用となることはない︵第八段︶。しかし ながら、自動車車体パネルの登録意匠権者による排他的な権利の行使は、支配的地位事業者による場合、独立系修理業 者に対する補修部品の供給を恣意的に拒否する場合、補修部品の価格を不適切な水準で決定する場合、対象車種が多数 流通しているにも関わらず当該車種向けの補修部品の製造を行わない決定をする場合等、所定の濫用的な行為を行う場 合であり、加盟国問の通商に影響を与えるものであれば、口〇二条]により禁止される可能性があることに留意しな ければならない﹂︵第九段︶。 ︵29︶ ︵二︶ζ①σQ≡事件欧州司法裁判所判決 本件は、テレビ放送番組表の著作権に関する事件である。英国とアイルランドでは、他のEU諸国とは異なり、 ︵30︶ テレビ放送番組表も著作権による保護の対象とされていた。一九八五年当時、アイルランド国内のテレビ放送につ いてはRTE︵評§↓Φ匡ω匹同8巨︶の独占、英国国内のテレビ放送についてはBBCとIBAの複占が国内法に より認められていた。放送番組表の著作権については、RTEとBBCは各々自己の放送番組表について著作権を 有しており、IBAの放送番組表についてはITP︵H且8窪8旨↓Φ一①<巨8評巨一8ぎ霧︶が著作権を有していた。 RTE、BBC、IBAのテレビ放送局三社は、ζお一=が一九八六年にアイルランドと北アイルランドの視聴者 向けに全放送局の番組が収録されている週刊テレビ放送番組情報誌の出版を開始したことを受け、アイルランド、 英国の国内裁判所に仮差止を求めたところ、国内裁判所により認容された。これを受けζ謎旨は、欧州委員会に 対し、テレビ放送局三社が同社に対して事前にテレビ番組情報を提供せず、著作権を行使して自己の番組を保護す 146
るのは、一〇二条に違反すると主張した。なお、他のEU諸国の著作権法はテレビ放送番組表を保護しておらず、 匡禮臼が出版したようなテレビ番組情報誌も広く刊行されていた。 欧州委員会は、テレビ放送局各社は自己の週間放送番組表市場において支配的地位にあり、放送番組情報の利用 ︵3 を制限するのは、川下市場において自己の週刊テレビ放送番組情報誌を保護するためのものであるとした。RTE ︵32︶ とITPは、本決定の取消を求め総合裁判所に提訴したが、同裁判所が本決定を支持する判断を下したため、さら に欧州司法裁判所へ上訴した。欧州司法裁判所は、テレビ放送局各社が知的財産権を有していること自体は各社に 支配的地位を与えるものではないが、各社の放送番組情報は総合テレビ放送番組情報誌を発行する事業者にとって 唯一の情報源であるため、当該情報について支配的地位を有していることを認定した︵四六ー四七段︶。その上で、 同裁判所はく○一<・事件先決裁定に依拠し、排他的複製権は著作権者の権利の一部を構成し、ライセンス拒否それ 自体は、支配的事業者によるものであっても支配的地位の濫用とはならないが、例外的な場合には権利者による排 他的権利の行使は濫用行為となりうると判示した︵四九−五〇段︶。具体的には、一定かつ恒常的な潜在的消費者の 需要のある総合テレビ放送番組情報誌の代替商品がないこと︵五二段︶、テレビ放送局の番組情報提供拒否により 潜在的顧客需要のある新商品の誕生が妨げられること︵五四段︶、かかる拒否に対して正当化事由がないこと︵五五 段︶、原告は当該市場におけるあらゆる競争を排除することにより第二次市場︵テレビ放送番組情報誌市場︶を自己 のために保持していること︵五六段︶を理由として、テレビ放送局によるライセンス拒否を濫用行為と認定した。 ︵33︶ ︵=︸︶IMS事件欧州司法裁判所先決裁定 本件では、Hζω=8一些︵以下、IMSとする。︶ が郵便番号、行政区・選挙区、病院・薬局の所在地に基づいて策
定したドイツ国内を一八六〇に細分化した﹁区割﹂について、同社によるライセンス拒否が問題となった。本区割 は、ドイツ国内における地域ごとの医薬品販売データを表示するために用いられており、IMSが著作権を有して いた。欧州委目ハ会は、IMSの競争者からの申し立てを受け、IMSに対し本区割について競争者からの要請に応 ︵3 4︶ じて無差別的にライセンスを供与することを内容とする仮処分︵耳豊Bヨ8ωξ①ω︶決定を下した。その中で欧州 委目ハ会は、本区割が事実上の業界標準となっており、本区割の使用はこれに代わる実在ないし潜在的な代替物がな いため、事業を遂行する上で不可欠であることを認定した。その上で欧州委員会は、IMSが本区割のライセンス を拒否すると、競争者はIMSの著作権を侵害することなく顧客に受け入れられる方法で医薬品販売データを提供 することができず、また顧客の側にもIMSの区割とは大きく異なる区割へ変更する実益がないため、顧客に対し て医薬品販売データを提供することができないとする競争者の主張を認めた。ゆえに本区割に代わる現実または潜 在的な代替がなく、IMSによる本区割のライセンス拒否により、事業活動を継続することは不可能となるため、 関連市場における競争を全面的に消滅させる虞があることは明らかであり、客観的に正当化することはできない。 よって、㌍・目R事件先決裁定で示された例外的な状況に該当するとした︵欧州委員会決定第一八一段︶。 これに対しIMSは、欧州委員会決定は著作権の本質を奪うものであり、ζ品田事件で示された﹁例外的な状 況﹂の概念を超え、確立された共同体の判例法とそれに先立つ欧州委員会決定と矛盾しているとして、仮処分を求 めて総合裁判所へ提訴したところ、同裁判所はIMSの訴えを認め、欧州委員会決定の執行を停止する命令を下 ︵35︶ した。 他方、ドイツの国内裁判所を舞台にIMSとNDCの間の訴訟が進行していたところ、同裁判所は二〇〇一年七 月、IMSのライセンス拒否に関する一〇二条の解釈を巡り本件を欧州司法裁判所に付託した。これに対し欧州司 148
︵36︶ 法裁判所は二〇〇四年四月、概要以下のとおり先決裁定を下した。すなわち、確立された判例法によると、排他的 複製権は著作権者の権利であり、ライセンス拒否は支配的事業者によるものであっても、それ自体が支配的地位の 濫用となるものではなく、濫用行為となるのは例外的な場合に限られる︵三四−三五段︶。家禮e事件判決におい て、欧州司法裁判所が例外的な状況が存在したと判示したのは、一.ライセンス拒否が当該事業を継続する上で不 可欠な製品に関するものであったこと、二.当該拒否により潜在的な顧客需要のある新製品の誕生が妨げられるこ と、三.当該拒否が客観的考慮により正当化されないこと、テレビ放送番組情報誌という二次市場における競争が 全面的に消滅する可能性があったことによる︵三六ー三七段︶。判例法により、著作権を有する事業者による特定の 事業を遂行する上で不可欠な商品やサービスヘのアクセスを拒否することが濫用的であるとされるためには、三要 件、すなわち、一.当該拒否により潜在的顧客需要のある新製品の誕生が妨げられること、二.当該拒否が正当化 できないこと、三。二次市場におけるいかなる競争も排除することである︵三八段︶。 その上で、欧州司法裁判所は、上記三要件について概要以下のとおり判示した。まず、第三の要件である二次市 場における競争の排除について、特定の事業を遂行するために不可欠である商品またはサービスヘのアクセス拒否 が濫用であるか否かを評価するためには、当該商品またはサービスで構成される川上市場︵日刊新聞の宅配市場︶ と、当該商品又はサービスが他の商品の製造または他のサービスの供給のために使用される川下市場︵日刊新聞市 場︶を区別することを要する︵四二段︶。宅配サービスが別個に販売されていないとしても、別個の市場を認定する 可能性は排除されず、当該商品またはサービスが特定の事業を遂行する上で不可欠なものとして、当該事業の遂行 を希望する事業者側に需要が存在する場合であれば、別個の市場については潜在的市場、さらには仮想的市場が認 定されれば足りる︵四三−四四段︶。したがって、製造の異なった段階が特定可能であり、両者が相互に関連し、川
上製品が川下製品の供給に不可欠であることが重要である︵四五段︶。本件における事実関係に当てはめてみると、 一八六〇の区割は、ドイツにおける地域ごとの医薬品販売データの供給という川下市場にとって不可欠な要素であ る川上市場となる︵四六段︶。その上で、上記の判断が本件に当てはまるかを判断し、当てはまる場合にはIMS による本区割の使用に関するライセンス拒否がドイツにおける地域ごとの医薬品販売データ市場におけるあらゆる 競争を排除するかを決定するのは、国内裁判所であるとした︵四七段︶。 次に、第一の要件である潜在的顧客需要のある新製品の誕生が妨げられることについては、支配的事業者による 著作権で保護されている製品へのアクセス拒否は、当該製品が二次市場での事業遂行に不可欠である場合、ライセ ンスを要請した事業者が自己を専ら著作権者により第二次市場に既に提供されている商品またはサービスを複製す ることに限る意図はなく、著作権者により提供される潜在的な顧客需要のある新しい商品またはサービスを製造す る意図がある場合にのみ、濫用的であるとみなされる︵四九段︶。上記の判断が本件に当てはまるかを判断するの は国内裁判所である︵五〇段︶。 最後に、第二の要件である取引要件の正当化事由については当事者の弁論がなかったため、判断はドイツの国内 裁判所に委ねるとしつつ、①ライセンスを要請した事業者が、当該データの提供市場において、著作権者により提 供されておらず、潜在的な顧客需要のある新たな商品またはサービスの提供を意図している場合、②客観的考慮要 素により当該拒否が正当化されない場合、③当該拒否が、当該市場におけるあらゆる競争を消滅されることによ り、当該加盟国に医薬品の販売データ提供市場を著作権者に留保する場合の三要件が満たされる場合には濫用行為 となる︵五一−五二段︶。 150
30 29 28 27 26 H①○ 。○ 。︶ qoミ辱魁駐§卜負ミミミ、ミら融80跨a
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客需要のある新製品の誕生を妨げること、四.当該拒否が客観的に正当化されないことの四条件が認定される場合 である︵三二二⊥二三三段︶。 一.の不可欠性について総合裁判所は、二つの別個の市場、すなわち供給拒否する事業者が支配的地位を有して いる市場と、別の製品の製造または供給のために使用される製品またはサービスの隣接市場を区別することが必要 であるが、不可欠な製品が別個に販売される必要はなく、潜在的または仮説的市場が認定されれば足りる。二つの 異なる製造の段階が特定可能であり、両者が相互に関連し、川上製品が川下製品の供給に不可欠であることが決定 的であるとした︵三三五段︶。その上で同裁判所は、九五%の市場占拠率を有するウインドウズは、クライアント PC用OSの事実上の標準となっており、ウインドウズとの相互運用性情報がWGS用OSの重要な要素であると ころ、求められる相互運用性の程度として、マイクロソフト以外のWGS用OSの開発者が本件市場において生き 延びるために必要な程度とした欧州委員会の認定は妥当であると判示した。 二.の隣接市場における有効競争について、マイクロソフトは乞○く色や口壼図の等の競争者の存在は、相互運 用性情報の開示がOS市場における競争者の活溌性に不可欠ではないことを示していると主張した。この点、総合 裁判所は、競争者の中にはマイクロソフトを凌ぐ技術上の優位を持っているものもあるが、マイクロソフトの市場 占拠率は一貫して上昇していること︵四二八段︶、マイクロソフトの市場における地位と競争者に対する優位性は、 相互運用性によるものであり、同社のソフトウェア製品の性能によるものではないこと︵四〇七段︶を指摘した。 その上で、相互運用性を欠くことは、WGS用OS市場におけるマイクロソフトの競争上の地位を強化する効果を 有し、当該市場における競争が消滅する危険性を認定した欧州委員会決定は妥当であると判示した︵六一八段︶。 三.の新製品の誕生についてマイクロソフトは、競争者はWGS用OS市場において、同一の製品を提供するに
過ぎず、欧州委員会の認定は誤りであると主張した。この点、総合裁判所は、新製品の条件は顧客の利益を損ねる という文脈において判断されるべきであり、製造や販売の制限だけではなく、技術的発展の制限によっても利益が 損なわれる場合にも妥当するとした︵六四三−六四八段︶。したがって、マイクロソフトの相互運用性情報の提供拒 否は、一〇二条の意味における消費者の利益を損ねる形で技術的発展を制限したものであり、欧州委員会の認定は 妥当であるとした︵六六五段︶。 四.のマイクロソフトは、同社によるライセンスの拒否は、関連する技術が知的財産権により保護されているた め客観的に正当化されると主張した。これに対し総合裁判所は、確立された判例法によると、知的財産に与えられ た保護と技術開発へのインセンティブは、﹁例外的状況﹂を相殺する客観的な正当化事由ではないと判示した ︵六九〇1六九一段︶。 ︵37︶ 本判決については、拙稿﹁EU法の最前線 第九五回 EC条約八二条における市場支配的地位を有する事業者のライセンス 拒否﹂﹃貿易と関税﹄第五六巻第三号︵二〇〇八年三月︶において、判決要旨を詳細に紹介した。 ︵38︶ O器ΦOOζ℃\OIω\鴇。おN]≦ROω○坤[NOO刈]○旨いG oN\No o■ 四、考察 本件判決においては、マイクロソフトによる相互運用性情報と技術の提供拒否を支配的地位の濫用と認定した欧 州委員会決定が支持された。支配的事業者によるライセンス拒否が濫用行為と認定されるまでには、先に見た欧州 委員会決定、裁判所判決による先例の積み重ねを待つ必要があった。すなわち、○・BB段。巨ω・守①旨ω事件欧州司 154
法裁判所判決︵一九七四年︶により、支配的事業者による商品・サービスの供給拒否が濫用行為として一〇二条違 反と認定され、ω$臣ζω智=○一旨8α事件欧州委員会決定︵一九九二年︶では、支配的事業者による自己所有の施 設・資源へのアクセス拒否についても、不可欠施設の理論に依拠して一〇二条に違反する濫用行為と認定された。 支配的事業者によるライセンス拒否を濫用行為と認定する本件につながる先例は、いずれも著作権のライセンス 拒否が濫用行為とされたζ囲旨事件欧州司法裁判所判決︵一九九五年︶、IMS事件欧州司法裁判所先決裁定 ︵二〇〇四年︶である。しかしながら、著作権により保護されていたものは、ζ禮旨事件においては各放送局の放 送番組表、IMS事件においてはドイツ全土を細分化した地域ごとの医薬品販売データであり、創作性という観点 からは、いずれも知的財産権︵著作権︶としての実質に乏しいものであった。これに対し、本件におけるライセン ス拒否の対象は、マイクロソフトの競争者のWGS用OSと、同社のPC用OSとの相互運用性情報であり、 ζ謎巳事件、IMS事件と比べると、格段に知的財産権︵著作権︶としての実質を伴ったものである。本件判決 は、支配的事業者によるライセンス拒否が濫用行為とされる知的財産権の対象を広げたものとみることができる。 また、本件判決において総合裁判所は、マイクロソフトによる相互運用性情報のライセンス拒否を濫用行為と認 定したことについて、欧州司法裁判所がζ品田事件判決とIMS事件先決裁定において示した見解を踏襲してい る。すなわち、事業者は原則として取引先を選択する自由を有し、知的財産権の保護対象を使用するライセンスを 与えるか否かあるいは誰に与えるかを決定する自由を有するが、例外的な場合には支配的地位にある事業者による 供給拒否は濫用行為を構成する場合があるとしつつ︵一一二九段︶、このような例外的な場合は、一。関連する商品 またはサービスが隣接市場における特定の行為の実施に不可欠であること、二.当該拒否が隣接市場における有効 競争を排除するものであること、三.当該拒否により潜在的顧客需要のある新製品の誕生を妨げること、四。当該
拒否が客観的に正当化されないことの四条件が認定される場合である︵三二二−三三三段︶。しかしながら、本件判 決では、三.の﹁新製品の誕生﹂について、両先例より一歩踏み込み、﹁新製品の誕生を制限する場合に限られ ず、技術的発展を制限する場合であってもよい﹂︵六四七段︶と判示した。この点、本件判決は濫用行為と認定さ れるライセンス拒否の認定要件を緩和したものとみることができるが、ライセンス拒否による﹁技術的発展の制 限﹂の場合も含めることにより、ライセンスを受けて生産される製品は技術的発展を体現するものと主張すること ︵39︶ も可能である。このため、支配的事業者によるライセンス拒否が容易に濫用行為と認定される虞が指摘されている。 これにより、知的財産権者を有する事業者の技術革新に向けたインセンティブが失われることが懸念される。 本件判決において、マイクロソフトによる相互運用性情報のライセンス拒否が濫用行為と認定された背景には、 一.同社のPC用OS市場における地位、二.情報技術産業におけるいわゆる﹁ネットワーク効果︵冨暑・詩①い 剛8邑﹂がある。すなわち、マイクロソフトはPC用OS市場本件市場において九〇%を超える市場占拠率を有し ており、同社のOSは﹁準標準︵ρ⊆鐘衷目3益︶﹂としての地位を獲得している。このため、同社のOSは企業等 組織内の事実上全てのPCに搭載されており、ウインドウズ以外のWGS用OSはウインドウズとの高い互換性が なくては販売を継続できないほか︵三八六−三八八段︶、ウインドウズ以外のWGS用OSは、ウインドウズPC用 OSのみならず、ウインドウズWGS用OSと等しい条件でウインドウズ・ドメイン・アーキテクチャ︵蓋&・語 9目§鴛。耳9ε邑に接続できなければならないという事情があった︵三八九ー三九〇段︶。また、情報技術市場 における﹁ネットワーク効果﹂については、コンピュータ・プログラムはネットワーク環境では単独では機能せ ず、他のコンピュータ・プログラムや機器と通信して協働するように設計されている。このため、本件判決でも、 企業等の組織において導入されたコンピユータネットにおいてはPC用OSとWGS用OSが協働できることが重 156
要であり、商品購入の際にはWGS用OSのPC用OSとの相互運用性が考慮されることが認定されている︵三八三 −三八五段︶。 ︵39︶㎏●冨躍①お9Φ08昌9閃一曇H霧け翠8.ω言R・ω坤U。。一ω一・巨冒の岳09魯&・図評爵讐昌磐○亭○講げ・α・図9の①曽い日Hω㎝︵N︶ 一〇 〇G Q−る9簿おN 結語 本件判決は、マイクロソフトによる欧州委員会決定の遵守状況監視を支援するため、同社から独立した監視受託 者︵B。巳8巨鵬け歪ω5Φ︶の選任を含む機構の設立に関する提案の提出を求めた一点︵同決定主文第七条︶を除き、同 社に対して約四億九七二〇万ユーロに上る制裁金の賦課を含め、欧州委員会決定を全面的に支持するものであっ た。本件で賦課された制裁金額は、EU競争法において単独の事業者に課されたものとしては過去最高額に上るも のであり、マイクロソフトにとっては極めて厳しい判決となった。しかしながら、同社は本件判決の取消訴訟を欧 ︵40V 州司法裁判所へ提起しない意向を表明し、本件判決は確定している。 なお、本件判決では、マイクロソフトが自己のストリーミング・メディア㌔フレーヤー︵ウインドウズ・メディ ア・プレーヤー、WMP︶をPC用OSに組み込むことにより、WMPの同時購入をPC用OS入手の条件とした 抱き合わせ販売について濫用行為に該当︵一〇二条⑥項違反︶するとした欧州委員会の認定についても支持してい る。抱き合わせ販売を巡っては、欧州委員会決定、裁判所判決にみる先例のほか、二〇〇五年一二月に欧州委員会
︵41︶ が公表した﹁排他的濫用行為への条約八二条の適用に関する競争総局ディスカッション・ぺーパー﹂ 議論がみられる。抱き合わせ販売を巡る諸問題については、稿を改めて検討することとしたい。 に も 興 味 深 い 158 ︵40︶ 二〇〇七年一〇月二四日付マイクロソフト・プレスリリース︵拝8一\\≦≦≦■巨ROω990B\冒8ω冨のω\賓8ω\NO8\090ミ一〇− 圏ζωω聾Φ日①鼻日ω貨︶。 ︵4 1︶、uOo。暮①臣8α一ω霧の一8冨も震・日冨8讐聾言・隔≧け一。一①。 。N。P冨々Φ昌け。①図。一琶・葛蔓ゆどω①ω.、︵げ唇\\Φ8ξ・冒 窪\8BB\8日冨鼻一8\四昌霞仁磐\震け○ 。N\α一ω88Φ鴎○09色、 1ただ ひであき・法学部准教授1