• 検索結果がありません。

キンク損傷及び紫外線照射がPBO繊維の引張強度に及ぼす影響に関する研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "キンク損傷及び紫外線照射がPBO繊維の引張強度に及ぼす影響に関する研究"

Copied!
103
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)キンク損傷及び紫外線照射が PBO 繊維の引張強度に及ぼす影響に関する研究. 2015 年 9 月 川野. 優希.

(2) 目次 第1章. 緒論. 1・1. 研究背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1. 1・2. 従来の研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8. 1・2・1. 高強度繊維のキンク損傷に関する研究 ・・・・・・・・・・・8. 1・2・2. PBO 繊維のキンク損傷に関する研究 ・・・・・・・・・・・10. 1・2・3 1・2・4. 高強度繊維の紫外線劣化に関する研究. ・・・・・・・・・・11. PBO 繊維の紫外線劣化に関する研究 ・・・・・・・・・・・13. 1・3. 本研究の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13. 1・4. 本論文の構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14. 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17. 第2章. PBO 繊維におけるキンク損傷発生. 2・1. 緒言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20. 2・2. 供試材料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21. 2・3. 単繊維圧縮試験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24. 2・3・1. 単繊維圧縮試験片作製方法・・・・・・・・・・・・・・・・24. 2・3・2. 単繊維圧縮試験方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25. 2・3・3. FEM による繊維の応力解析方法 ・・・・・・・・・・・・・28. 2・3・4. 単繊維圧縮試験結果および考察・・・・・・・・・・・・・・29. 2・3・5. FEM による応力解析結果および考察 ・・・・・・・・・・・32. 2・4. TEM 観察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35. 2・4・1. TEM 観察方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35. 2・4・2. TEM 観察結果および考察・・・・・・・・・・・・・・・・・37. 2・5. 結言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39. 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39 i.

(3) 第3章. キンク損傷が PBO 繊維の引張強度に及ぼす影響. 3・1. 緒言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41. 3・2. 供試材料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41. 3・3. 試験片作製方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42. 3・3・1. キンク損傷導入方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42. 3・3・2. 単繊維引張試験片作製方法・・・・・・・・・・・・・・・・44. 3・4. 単繊維引張試験方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45. 3・5. 結果および考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46. 3・5・1. 表面圧縮ひずみとキンク損傷密度の関係・・・・・・・・・・46. 3・5・2. 引張強度とキンク損傷密度の関係・・・・・・・・・・・・・49. 3・5・3. キンク損傷の形状と引張強度の関係・・・・・・・・・・・・52. 3・6. 結言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57. 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・58. 第4章. キンク損傷を導入した PBO 繊維の引張強度のワイブル統計 解析. 4・1. 緒言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・59. 4・2. 供試材料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・59. 4・3. 単繊維引張試験方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・59. 4・4. 結果および考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60. 4・4・1. ワイブル統計解析結果および考察・・・・・・・・・・・・・60. 4・4・2. 破面観察結果および考察・・・・・・・・・・・・・・・・・68. 4・5. 結言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・72. 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・72. ii.

(4) 第5章. 紫外線照射が PBO 繊維の引張強度に及ぼす影響. 5・1. 緒言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・73. 5・2. 供試材料・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・73. 5・3. 単繊維引張試験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・74. 5・3・1. 単繊維引張試験片作製方法および単繊維引張試験方法・・・・74. 5・3・2. 紫外線照射方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・74. 5・3・3. 引張試験結果および考察・・・・・・・・・・・・・・・・・76. 5・4. EPMA 観察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・81. 5・4・1. EPMA(Electron Probe MicroAnalyser) ・ ・・・・・・・・・・・81. 5・4・2. EPMA 観察方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・83. 5・4・3. EPMA 観察結果および考察・・・・・・・・・・・・・・・・85. 5・5. 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・87. 5・6. 結言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・92. 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・92. 第6章. 結論. 6・1. 結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・93. 6・2. 今後の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95. 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・96. 謝辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・97. 研究業績の一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・98. iii.

(5) 第1章. 緒論. 1・1 研究背景. 繊維材料は衣類として古くから人間の生活と深く関わっており,非常に古い 歴史を持っている.紀元前には,麻,絹(中国),羊毛(中央アジア),綿(イ ンドアメリカ大陸)などが登場し,世界的規模でほぼ定着していたと考えられ る.これら天然繊維は主に衣類として使用され,絹織物は貴族のような一部の 階層が独占していた.その後,産業革命によって綿,毛の生産量が飛躍的に向 上し,一部の階層だけが使えた衣服が大衆化し,下着類が普及した 1). 日本においても紀元前数世紀以降には麻が使われており,紀元前 300 年頃に は機織りも始まっていたと言われる.絹については 2,3 世紀に中国より伝わり, 貴族が主に使用していた.明治,大正時代には日本の全輸出量の 5 分の 1 を絹 が占めており重要な外貨獲得産業であった.また,木綿は日本で栽培され 16 世 紀頃から庶民の衣服素材として用いられた.羊毛は明治以降に軍用衣料製造の ために輸入された 1). 一方,化学繊維については,1664 年に Hooke が”Micrographia”にて化学繊維の アイデアが初めて記述された.その後科学技術の進展により 19 世紀後半にレー ヨンに代表される再生繊維が実際に発明され,20 世紀前半に工業化された.ま た,合成繊維は 1938 年に最初の合成繊維であるポリ塩化ビニル繊維(商品名, Pe Ce Faser,ドイツ)が工業化され,その後ここ 60~80 年の間にポリエステル やナイロンなどの合成繊維が普及した.このように,天然繊維は非常に深い歴 史を持っているのに対して,化学繊維は発明されてから 200 年ほどであり歴史 が短いことが分かる.それにもかかわらず,現在では,身の回りにある繊維の ほとんどは合成繊維で占められており,我々の生活に欠かせない材料であると 言える 1). このように,長い歴史の中で人類の生活と密接な関係にある繊維材料である が,現在,用いられている主な繊維材料を出発原料によって分類したものを図 1-1 に示す 1).天然繊維は主に織布や不織布などの衣料用繊維として,化学繊維. -1-.

(6) Plant fiber. Cotton. Animal fiber. Animal hair, Silk. Natural fiber. Organic fiber. Chemical fiber. Regenerated Fiber. Viscose Rayon Cuprammonium rayon. Semi-synthetic Fiber. Cellulose diacetate Cellulose Triacetate. Synthetic Fiber. Polyester Polyamide Polyacrylonitrile. Fig. 1-1 Classification of organic fiber by raw materials. は,複合材料やケーブルの緊張材などの補強繊維として使用され,生活必需品, スポーツ,娯楽用品,産業用機材,自動車,船舶から宇宙や航空にいたる輸送 機の機内・外など,各種分野において重要な役割を果たしている.特に,化学 繊維は技術革新により繊維の高強度化が進み,ガラス繊維や炭素繊維,パラ系 アラミド繊維,超高分子量ポリエチレン繊維,ポリアリレート繊維,PBO (Poly-p-Phenylene Benzobisoxazole)繊維などの繊維は高い引張強度,引張弾性 率を有することから高強度繊維と呼ばれている 2)~5). ここで,高強度繊維の特徴について述べる.まず,代表的な高強度繊維であ る炭素繊維は高い引張強度を持ち比重が軽いため「軽くて強い」繊維として多 くの分野で使用されている.特に炭素繊維を用いた炭素繊維強化 複合材料 (Carbon Fiber Reinforced Plastic:以後,CFRP と表記)は,鉄の約 10 倍の比強 度を持ち,比重が鉄の約 1/4 であり,金属材料の代替材料として航空機や自動車 に使用されている.また,炭素繊維の短所としては,コストが高いこと,CFRP も含め非常に硬い繊維であるため加工が困難であること,リサイクルが困難で あることが挙げられる. 一方,高強度繊維の高分子繊維(以後,高強度高分子繊維と表記)の特徴は, 炭素繊維と異なり,分子鎖の配向性や結晶化度などの内部構造を調整すること, 副成分を加えることで,耐食性,耐熱性,導電性や耐摩耗性など様々な機能を -2-.

(7) 付与することができる点である.高強度高分子繊維は高い引張強度・引張弾性 率に加え用途に合わせた機能を追加することができるため,衣料用繊維やスポ ーツ用品のような日常用品,消防服・宇宙服のような特殊衣服,ロープのよう な産業用資材や光ファイバーケーブルのような通信機器など幅広い分野で使用 されている.例えば,アラミド繊維は図 1-2 に示すように分子構造に剛直な分子 構造である芳香環を含有することで,引張強度・引張弾性率・耐熱性を向上さ せた繊維である 6).また,高強度高分子繊維の短所としては,屋外での使用など 使用環境によって光酸化劣化(紫外線)や加水分解(湿度)などという劣化反 応を起こすことにより,強度低下,変退色,光沢現象などの製品の使用性能の 劣化を起こす点である 7).しかしこれらは紫外線吸収剤の塗布やビニール等によ る被覆等の光劣化の対策をすることにより実用化されている. このような高強度繊維の中で,最も高い引張強度・引張弾性率を有する繊維 が PBO 繊維である.PBO 繊維はアラミド繊維の登場後,アラミド繊維よりも耐 熱性があり,引張弾性率が高い繊維として開発された繊維であり 8),図 1-2 に示 したようにアラミド繊維が芳香環含有のポリマーであるのに対し,PBO 繊維は 図 1-3 に示すような非常に剛直な分子構造である芳香環とヘテロ環含有のポリ マーであり 9),この分子鎖を繊維長さ方向に高配向することで引張強度,引張弾. NH. NHOC. CO n. Fiber length direction. Fig. 1-2 Structural formula of an Aramid fiber.. N. N. O. O Fiber length direction. Fig. 1-3 Structural formula of a PBO fiber.. -3-. n.

(8) 性率を向上させている 10), 11).そのため,引張強度はアラミド繊維の約 2 倍,引 張弾性率は約 2.5 倍と非常に高い力学的特性を有している.ここで,PBO 繊維 の内部構造の模式図を図 1-4 に示す 12),13).繊維内部には剛直な分子構造からな るミクロフィブリルと呼ばれる微小繊維束が繊維長さ方向に配向している.こ のミクロフィブリル同士は完全に結合しているわけではなく,フィブリル間の 未結合部はミクロボイドと呼ばれる非晶域である.また,PBO 繊維はスキン-コ ア構造であり繊維表層にはミクロボイドが散在しない薄さ 0.2 µm 以下のスキン 層が形成されている.図 1-5 に主な高強度繊維の比強度と比弾性率の関係を示す.. Core. Skin region. Microvoid. (Thickness: <0.2 μm). Skin region. Microfibril. Surface. Fiber Microvoid. Specific modulus, MN ・m/kg. Fig. 1-4 Illustration of internal structure of PBO fiber12), 13).. 300 ZYLON. 200 Carbon. 100 p-Aramid Steel. 0 0. P olyester P BI. 1 2 3 4 5 Specific strength, M N・m/kg. 6. Fig. 1-5 Relationship between specific modulus and specific strength of any fiber. -4-.

(9) 図からも分かるように高い引張強度・引張弾性率から,PBO 繊維は図 1-6 に示 すような光ファイバーケーブルやポータブル機器の充電ケーブルの緊張材のよ うな強化繊維としての使用が期待されている. 14). .特に光ファイバーケーブルに. ついては,実用化に至っていないものの長距離通信用の太径のケーブルでは PBO 繊維を使用することで直径約 80 mm のケーブルが約 50 mm まで細くでき るとの報告もある 11).. Optical fiber Flooding jelly compound. Tension member. Fig. 1-6 Internal structure of the optical fiber cable14). : Kink damage. 20 µm Fig. 1-7 Optical microscope photograph of typical kink band occurred to the PBO fiber.. 一方,PBO 繊維の圧縮強度は,他の高分子繊維と同様に低い値を示し,引張 強度の 10 分の 1 程度である.そのため,繊維表面に圧縮荷重が負荷した際に図 1-7 に示すようなキンクバンドと呼ばれる模様が現れる.本論では,力学的観点 から考えると次章で述べるがキンクバンドが損傷となるため,キンク損傷と記 述している.図 1-7 は PBO 繊維のキンク損傷を光学顕微鏡で観察した様子を示 しており,光の屈折によりキンク損傷部分が黒い筋となって観察される.高強 -5-.

(10) 度繊維の中には,炭素繊維やアラミド繊維などキンク損傷のような圧縮損傷が 発生することが報告されている.しかし,これらの繊維において圧縮損傷が引 張強度の低下に影響を及ぼすという報告はなく,PBO 繊維についてもキンク損 傷と引張強度の関係について不明な点が多い.PBO 繊維は図 1-3 に示す PBO を 液晶紡糸して製造されるが. 11). ,製造時にキンク損傷が僅かながら発生すること. が予想される.図 1-8 に PBO 繊維の紡糸過程の簡略図を示す 11).PBO を補給タ ンクに充填し,押出ピストンによって紡糸浴を通して紡糸機から吐出する.そ の後,水を凝固剤とし固化させ水洗いした後,ゴデットロールを用いて引取り しワインダーにて巻き取る.この過程においてロールやワインダーにて巻き取 られる際にキンク損傷が発生することが考えられる.また,PBO 繊維をケーブ ルの緊張材として使用した場合,ケーブルを曲げるなどして PBO 繊維に曲げ変 形が生じた際に曲率によってはキンク損傷が発生することが考えられる.PBO 繊維の現在の用途は主にケーブルなどの緊張材であるが,ケーブルをロールに 巻く際や配線の際のケーブルの曲率を大きくすることで PBO 繊維のキンク損傷 の発生を少なくしている.また,キンク損傷が発生することを前提として,緊 張材である PBO 繊維の本数を多くすることでケーブルの許容荷重を大きく設計 している.しかしながら,キンク損傷が PBO 繊維の引張強度に及ぼす影響を明. Extrusion piston. Valve. Replenishment tank. Spinning bath Spinning machine. Wash bath Godet roll Winder Coagulan t Fig. 1-8 Simple figure of the spinning process of PBO fiber11). -6-.

(11) らかにすることで,緊張材である PBO 繊維の最適な本数を設定することができ コスト削減や製品の軽量化につながることが予想される. 高強度高分子繊維は短所でも挙げたように,主に温度や湿度,光によって機 械的強度の劣化を起こす 15), 16).PBO 繊維の分解温度あるいは融点は 650℃と高 分子繊維の中でも高いため温度による劣化は見られない.また,PBO 繊維は加 水分解を起こす置換基を持っていないため湿度による劣化も見られない.しか し,光による劣化については,紫外線による引張強度の低下が報告されている 17). .PBO 繊維の紫外線劣化は,紫外線のエネルギーによって繊維表面の水素の. 結合が切断され,そこに大気中の酸素が反応して分子鎖の切断が繊維表面から 繊維内部方向に連鎖していく自動酸化と呼ばれる化学反応によって引き起こさ れることが報告されている.そのため,PBO 繊維は外層が塩化ビニルや耐熱性 ポリエチレンなどで被覆され紫外線の照射による影響がないケーブルの緊張材 としての使用が主である. 用途拡大の観点から,PBO 繊維を紫外線が直接照射されるような環境下で使 用することを考えると,PBO 繊維に紫外線吸収剤. 18). を塗布することで紫外線劣. 化を防ぐことが考えられる.しかし,現在コスト的理由から製品使用の長期化 が望まれており,近年の異常気象やケーブルの配線の複雑化など使用環境も 年々厳しくなっている.そのため,紫外線吸収剤のような紫外線対策について も長期の使用によってその効果が低下することが予想される.このような,長 寿命化の観点から,紫外線が繊維の劣化に及ぼす影響について明らかにする必 要がある.さらに,長期間 PBO 繊維を使用することによりキンク損傷が発生す ることが考えられ,キンク損傷が発生した PBO 繊維に紫外線が照射されること が予想される. 以上のことから,キンク損傷が PBO 繊維の機械的強度にどのような影響を及 ぼすかについて明らかにすることで,製品の使用中に発生するキンク損傷を考 慮した強度設計を行うことができる.さらに,キンク損傷の発生した PBO 繊維 の紫外線劣化の影響を定量的に評価することができれば,製品の使用期間と用 途によって紫外線吸収剤の使用の有無や使用する繊維の本数など最適な強度設 計を行うことができ,コスト削減にもつながる.. -7-.

(12) 1・2 従来の研究. 1・2・1. 高強度繊維のキンク損傷に関する研究. キンク損傷は圧縮による座屈損傷であるため高強度繊維の圧縮に関する研究 が行われている. 高強度繊維の一つである炭素繊維においても圧縮座屈が確認されており,炭 素繊維の圧縮座屈に関する研究が行われている. H. M. HAWTHORNE ら 19)は,弾性率の異なる 10 種類の炭素繊維をエポキシ樹 脂に埋め込み繊維軸方向に圧縮荷重を加えることで,圧縮損傷発生の詳細な観 察を行っている.そこでは,繊維の軸方向圧縮破壊強度は繊維表面に発生する 初期段階の破壊から推定することができることを報告している.また圧縮強度 は繊維の弾性率と密接な関係があり,弾性率の高い炭素繊維ほど圧縮強度が低 いことを明らかにしている.炭素繊維の圧縮破壊は繊維の弾性率の増加による 局所的な座屈かねじれモードのせん断によって変わると報告している. 田川ら. 20). は,異なる引張強度・引張弾性率の炭素繊維 10 種類以上を用いて,. リコイル試験とループ試験を行うことで,炭素繊維が圧縮弾性波で破壊すると きのしきい値と圧縮損傷の評価を行っている.リコイル試験は,引張予負荷を 加えた繊維の中央部を鋭利なはさみにより強制破断させ,そこで発生する圧縮 弾性波を利用して繊維を圧縮破壊する方法であり,段階的に引張予負荷を増加 させていき,繊維が破断した時のしきい値(リコイル強度)を算出する方法で ある.また,ループ試験は異なる曲率で繊維をループ状にし,繊維の主に圧縮 側を SEM(Scanning Electron Microscope)観察することで圧縮損傷が発生したと きのループ径より応力(圧縮損傷発生限界応力)の評価を行っている.リコイ ル試験結果より,引張弾性率の高い繊維ほどリコイル強度が低いことを明らか にしている.また,ループ試験結果より,圧縮損傷発生限界応力はリコイル強 度と同様に引張弾性率が大きいほど,圧縮損傷発生限界応力が小さいことを明 らかにしている.しかし,すべての繊維において圧縮損傷が観察されたわけで はなく,引張弾性率の低い繊維では圧縮損傷が発生しないまま破断に至ってお り,引張弾性率のみで圧縮強度の大小を議論することはできないと結論付けて -8-.

(13) いる. これらの研究は圧縮損傷の発生から得られる圧縮強度と引張弾性率を比較し た結果であり,圧縮損傷が引張強度の低下に及ぼす影響について検討なされて いない. また,高強度高分子繊維についてもアラミド繊維などで圧縮損傷(キンクバ ンド)の発生が確認されており,主に圧縮損傷の発生に関する研究が行われて いる. R. Edmunds ら. 21). は , ア ラ ミ ド 系 繊 維 で あ る PPTA ( Poly-p-phenylene. terephthalamide)繊維について,層状材料を用いたキンクバンドの 2 次元モデル の解析結果と実験により観察したキンクバンドの内部構造から,結晶配向とフ ィブリル構造,弾性的性質とキンクバンドの傾向を明らかにしている.繊維配 向の観察結果より,PPTA 繊維のキンクバンド部分はフィブリルの配向のずれが 起きていることを確認している.この配向のずれから 2 次元モデルを作製し解 析を行うことで,キンクバンドの発生モデルのパラメーターはキンクバンドの 幅が重要であることを報告している. STEVEN J. DeTERESA ら 22)は,配向性高分子の圧縮座屈について引き延ばさ れたポリマー鎖をモデル化することで解析を行っている.モデルは層状構造を 仮定した 2 次元モデルであり,上記の R. Edmunds らのモデルと同様である.解 析の結果,曲げ剛性と臨界座屈荷重は曲げおよびねじれ方向の原子価結合力定 数に比例することを明らかにしている.高配向ポリマー繊維は横方向に作用す る弾性鎖の集合体として取り扱うことで,繊維強化複合材料の圧縮強度を予測 することができると報告している.また,試験結果と予測値を比較すると,理 論値は圧縮強度を過大評価しているが,せん断弾性が圧縮強度と相互関係にあ ることを示している.よって,圧縮強度はせん断弾性かせん断強度のどちらか と比例すると結論付けている. これらの研究は,アラミド繊維の圧縮損傷の発生を 2 次元モデルで解析する ことで,キンクバンド発生のメカニズムについて検討を行っているが,キンク バンドが引張強度に及ぼす影響については検討がなされていない. また,Y. Cohen ら 23) は PBO 繊維と似た分子構造を持つ PBT(Poly-p-Phenylene Benzobisthiazole-2, 6-diyl)繊維に関して,TEM(Transmission Electron Microscope) を用いてキンク損傷を生じさせた繊維の内部構造の観察を行っており,キンク -9-.

(14) 損傷部の内部構造について報告している.図 1-9 に PBT 繊維の分子構造を示す. 図より,PBT 繊維の分子構造が図 1-3 に示した PBO 繊維と非常に近いことが分 かる.TEM 観察の結果,PBT 繊維のキンク損傷部はミクロフィブリルの配向の ずれのような座屈が観察されており,キンク損傷はミクロフィブリルの座屈に よることを報告している. 現在のところ,PBO 繊維についても,PBT 繊維と同様にキンク損傷はミクロ フィブリルの座屈と分離によるものと考えられているが,PBO 繊維のキンク損 傷部を実際に観察された報告はない.. N. S. S. N. n. Fiber length direction. Fig. 1-9 Structural formula of PBT fiber.. 1・2・2. PBO 繊維のキンク損傷に関する研究. PBO 繊維については,通常タイプの PBO 繊維の引張強度や疲労強度,通常タ イプよりも配向度を向上させた高弾性率タイプの PBO 繊維の引張強度,疲労強 度などの基本的特性に関する研究が行われている. S. Fidan ら 24) は PBO 繊維の Bending beam test を行い,キンク損傷の発生と成 長過程の詳細な観察を行っている.Bending beam test は,PBO 繊維を図 1-10 の ように樹脂中の中立軸からずらした位置に埋め込み,繊維に圧縮荷重が負荷す るように曲げ変形を与える圧縮試験方法である.その結果,キンク損傷は圧縮 ひずみの増加に伴い太くなり,圧縮荷重を除荷するとキンク損傷が細くなるこ とを報告している.また,除荷後に残ったキンク損傷は永久損傷になる可能性 を指摘している. 堀川ら 25)は,キンク損傷についての研究は行っていないが,PBO 繊維に関し て異なるゲージ長さで単繊維引張試験を行い,引張強度は繊維長さ方向と繊維. - 10 -.

(15) Neutral axial Bending moment. Bending moment. Fiber. Resin Fig. 1-10 Schematic view of bending beam test. 直径方向の両方向に寸法効果を示すことを報告している.そこでは,PBO 繊維 内部に存在するミクロボイドと呼ばれるミクロフィブリルの未結合部やミクロ フィブリルの末端部が内部欠陥として働くことを導き出している.このことは, キンク損傷を導入した PBO 繊維の引張強度を考える上で有益なデータである. これらの結果はキンク損傷の発生と成長過程やキンク損傷の導入していない PBO 繊維の引張強度について明らかにしているがキンク損傷が引張強度に及ぼ す影響については報告されていない. 1・2・3. 高強度繊維の紫外線劣化に関する研究. 高分子繊維の紫外線劣化のメカニズムに関する研究や紫外線照射による PBO 繊維の引張強度の低下に関する研究が行われている. Lipika Ghosh ら 26)は,高弾性率タイプのアラミド繊維の機械的特性に与える酸 素原子と真空紫外線照射の相乗効果について明らかにしている.そこでは,真 空紫外線照射のみ行ったアラミド繊維は引張強度,ヤング率とも低下は見られ ず,酸素原子と真空紫外線照射を同時に行ったアラミド繊維は引張強度・ヤン グ率ともに著しく低下することを報告している.これは,X 線光電子分光によ り,酸素原子がアミド基の分解と酸化を引き起こすためであることを明らかに している. Huapeng Zhang ら 27)は,アラミド系繊維 PPTA 繊維における太陽紫外線照射が 引張強度に与える影響について明らかにしている.そこでは,紫外線を照射し た繊維の機械的特性は明らかに低下しており,紫外線劣化した繊維の表面は紫 外線によって分子鎖の切断もしくは末端基の酸化が生じていることを報告して - 11 -.

(16) いる.機械的特性の低下の主な原因は,紫外線照射による繊維表面のエッチン グと収縮であると結論付けている. Shineng Li ら 28)は,アラミド系繊維 PPTA 繊維における短期間紫外線を照射し たときの構造と機械的特性について明らかにしている.紫外線照射は短期間と して 1~18 時間行っており,SEM や AFM(Atomic Force Microscope)による表 面観察や WAXD ( Wide-Angle X-ray Diffraction)や ATR-IR(Attenuated Total Reflection infrared)などによる元素分析を行っている.また機械的特性は,引張 試験より,引張強度,破断伸び,破断エネルギー,引張弾性率について検討を 行っている.実験結果より,紫外線を照射した繊維は化学構造が変化すること なく結晶度が減少しており,繊維表面では酸素原子が多く取込まれていること を確認している.また,繊維表面は紫外線照射時間が 1 時間程度で表面粗さが 増加していることを明らかにしている.機械的特性はいずれの特性においても 紫外線照射時間 3 時間までに大きく低下しており,その後 18 時間までほぼ一定 の値を示すことを報告している. また,高分子繊維ではないが,高分子材料について紫外線劣化のメカニズム や強度低下の評価の研究が行われている. 松田は. 29). ,高分子材料の紫外線劣化について,紫外線のもつエネルギーによ. って化学変化を起こすことで分子鎖の切断,架橋反応が進行するためであるこ とを説明している.この化学反応には,波長の影響,温度と水分の影響,酸素 の影響,増感剤の影響が大きく影響していると報告している. 高田ら 30)は,ポリスチレンの 1 mm 厚シートに降伏応力の 50%に相当する引 張応力を負荷した状態で異なる放射照度で紫外線を照射し,引張試験を行うこ とで,紫外線と応力の相互作用が機械的特性に及ぼす影響について明らかにし ている.これによると,放射照度が大きくなると破断伸びが低下しており,こ の要因は破断後の試料の表面観察から,紫外線の照射面に多数のき裂が発生し ており,紫外線を照射することで分子鎖の切断,架橋反応が進行したためであ ると報告している. 高強度繊維の紫外線劣化に関する研究はアラミド繊維を中心に行われており, 紫外線劣化による機械的特性の評価や紫外線劣化のメカニズムに関する報告が されている.しかしながら,キンク損傷のような圧縮損傷を含んだ繊維の紫外 線劣化に関する研究報告は見受けられない. - 12 -.

(17) 1・2・4. PBO 繊維の紫外線劣化に関する研究. PBO 繊維についても紫外線劣化の強度評価の研究が行われている. 堀川ら 31)は,異なる条件で紫外線を照射した PBO 繊維の引張試験を行い,紫 外線照射による引張強度の低下について明らかにしている.その結果,PBO 繊 維の引張強度低下は紫外線の放射照度と照射時間から求められる総エネルギー 量で一義的に整理できることを示している. M. A. Said ら 32)は,4 種類の商業的な高強度繊維を用いて紫外線に対する耐光 性について明らかにしている.そこでは,連続した繊維の状態で紫外線を長時 間照射し強度評価を行っている.その結果,Spectra®繊維を除いて他の 3 種類の 繊維は紫外線を照射することで強度が大きく低下することを示している.また, これらの繊維は紫外線の耐光性を向上させるために紫外線遮断剤がある.これ らの調製された紫外線遮断剤のコーティングは高強度繊維の紫外線の耐光性の 重大な改善につながる.しかし,この研究では紫外線遮断剤を塗布せず,紫外 線照射前後の機械的挙動を報告している. これらの結果はいずれも PBO 繊維の紫外線劣化について明らかにしているが, キンク損傷の発生していない PBO 繊維の強度評価である.PBO 繊維の用途拡大 のためにキンク損傷と紫外線照射の複合損傷が PBO 繊維の強度に及ぼす影響を 明らかにする必要がある.. 1・3 本研究の目的. 前節で述べたように,繊維材料のキンク損傷の発生メカニズム 23), 24)や PBO 繊 維の引張強度や疲労強度などの基本的特性については明らかになりつつある. また,高分子繊維の紫外線劣化のメカニズムや PBO 繊維の紫外線照射による引 張強度の低下についても明らかにされつつある 31), 33). しかし,PBO 繊維のキンク損傷の発生を前提とした際の設計パラメータとし て重要なキンク損傷の発生メカニズムやキンク損傷が PBO 繊維の基本的特性に 与える影響についての報告例は少ない.また,キンク損傷と紫外線照射の複合 損傷が PBO 繊維の引張強度にどのような影響を与えるかについて明らかにされ - 13 -.

(18) ていない. そこで,本研究は,キンク損傷と引張強度に注目し,PBO 繊維のキンク損傷 が引張強度に与える影響,キンク損傷と紫外線照射が PBO 繊維の引張強度に与 える影響を明らかにすることを目的とする. 本研究で目的とする事項は以下のとおりである. (1) PBO 繊維の軸方向圧縮試験を用いたキンク損傷発生のその場観察と PBO 繊 維のキンク損傷の TEM 観察を行い,キンク損傷の発生メカニズムを明らか にする. (2) PBO 繊維に異なる条件でキンク損傷を発生させ,単繊維引張試験を行い,キ ンク損傷の個数と引張強度の低下率の関係を明らかにする. (3) キンク損傷を発生させた PBO 繊維の引張強度についてワイブル統計解析を 行い,キンク損傷が引張強度の内部欠陥として働いているのかについて検討 する. (4) PBO 繊維に異なる条件でキンク損傷を発生させた後,紫外線を照射し単繊維 引張試験を行い,キンク損傷と紫外線照射による複合損傷が PBO 繊維の引 張強度に与える影響について評価する. (5) 以上(1)~(4)を総合してキンク損傷の発生した PBO 繊維の強度評価から,キ ンク損傷を考慮した設計方法を検討する.. 1・4 本論文の構成. 本論文は図 1-11 に示すように 6 章から構成されており,その概要は以下の通 りである. 第1章. 緒論. 本研究の背景として高強度・高弾性率である高分子繊維の PBO 繊維を取り上 げ, キンク損傷による引張強度の低下と紫外線照射による引張強度の低下に関 する課題について述べ,高分子繊維の強度評価に対する従来の研究に対する本 研究の位置付け,目的について述べる. 第2章. PBO 繊維におけるキンク損傷発生. この章では,PBO 繊維のキンク損傷が引張強度の低下に影響を及ぼすのかに - 14 -.

(19) ついて検討するためにキンク損傷の発生メカニズムについて考察を行う.まず, キンク損傷の発生に注目し,繊維を軸方向に直接圧縮することのできる軸方向 圧縮試験を用いて,その場観察から得られた結果について述べる.また,PBO 繊維のキンク損傷の TEM 観察を行い,軸方向圧縮試験の結果と合わせてキンク 損傷の発生メカニズムについて考察する. 第3章. キンク損傷が PBO 繊維の引張強度に及ぼす影響. 第 2 章においてキンク損傷の発生メカニズムの考察より,キンク損傷は永久 損傷であるので引張強度に影響を及ぼすことが予想される.この章では,異な る条件でキンク損傷を導入した PBO 繊維について,単繊維引張試験を行うこと でキンク損傷が PBO 繊維の引張強度に及ぼす影響を明らかにする.さらに,キ ンク損傷の数が PBO 繊維の引張強度の低下率に与える影響について考察する. 第4章. キンク損傷 を導入した PBO 繊維の引張強度のワイブル統計解析. 第 3 章においてキンク損傷の数や形状から引張強度の低下に及ぼす影響につ いて明らかにしたが,個々のキンク損傷部分の強度が曲率によって変わるのか, 変わらないのかについては不明である.キンク損傷の発生した PBO 繊維の引張 強度を考えるうえで,キンク損傷部分の強度は重要である.この章ではキンク 損傷を発生させた PBO 繊維の引張強度について,ワイブル統計解析を行うこと でキンク損傷を内部欠陥として考えた時のキンク損傷部分の強度について検討 する. 第5章. キンク損傷と紫外線照射が PBO 繊維の引張強度に及ぼす影響. 第 4 章までにおいて,キンク損傷が PBO 繊維の引張強度に及ぼす影響につい て明らかにした.ここで,PBO 繊維の用途拡大のためには紫外線下での強度特 性の評価が必要である.PBO 繊維を紫外線下で使用する際には紫外線吸収剤な どを用いて紫外線劣化を防ぐが,長期間の使用を考えると紫外線吸収剤の効果 が低下することが予想される.また,長期間使用することによりキンク損傷が 発生することが考えられる.そのため,紫外線下での長期の使用により製造時 や使用中にキンク損傷が発生した後,紫外線が照射されることが予想される. この章では,キンク損傷の発生した PBO 繊維の紫外線照射による影響について 検討する.実験では異なる条件でキンク損傷を導入した後紫外線を照射した PBO 繊維について,単繊維引張試験で得られた結果について考察する.. - 15 -.

(20) 第6章. 結論. この章では,第 1~5 章の結果をふまえてキンク損傷が PBO 繊維の引張強度 に及ぼす影響,キンク損傷と紫外線照射が PBO 繊維の引張強度に及ぼす影響に ついて明らかにし,PBO 繊維のキンク損傷を考慮した強度設計に用いることで PBO 繊維の用途拡大につながることを示した.. 1. Introduction. 2. Consideration of the Mechanism of Kink Damage Outbreak in PBO Fiber. 3. Effect of Kink Damage on Tensile Strength of PBO Fiber. 4. Weibull Statistical Analysis of Tensile Strength of PBO Fiber with Kink Damage. 5. Effect of Kink Damage and UV-Irradiation on Tensile Strength of PBO Fiber. 6. Conclusions. Fig. 1-11. A flow chart of structure in this research.. - 16 -.

(21) 参考文献. (1) 新井康允ほか著,“繊維工学(Ⅱ)繊維の製造・構造及び物性”,日本繊維機械 学会編集,(1983) pp. 1-2 (2) 本宮達也,“ハイテク繊維の世界”,日刊工業新聞社,(1999) p.9, p.66 (3) 宮本武明,本宮達也, “新繊維材料入門”,日刊工業新聞社,(2004) pp. 64-74. (4) 功刀利夫,矢吹和之,太田利彦, “高分子 One Point 9 高強度・高分子繊維”, 共立出版,(1990) pp. 1-5, pp. 106-111. (5) 矢吹和之,“スーパー繊維の強さの秘密”,繊維機械学会誌,Vol. 48, No. 12 (1995) pp. 448-454. (6) 本宮達也,“ハイテク繊維の世界”,日刊工業新聞社 (1999) p.92 (7) 黒田真一, “高分子材料の劣化”,化学と教育,Vol. 60, No. 12 (2012) pp. 506-510 (8) 本宮達也,“ハイテク繊維の世界”,日刊工業新聞社 (1999) p.109 (9) 夏原豊和, “次世代のスーパー繊維 PBO Fiber 「ZYLONTM」”,加工技術,Vol. 31, No. 9 (1996) pp. 566-569. (10) 矢吹和之,加藤克彦, “ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO) 繊維‐Ultra High Performance Fiber”,繊維学会誌,Vol.52, No. 3 (1996) pp. 143-147. (11) 本宮達也,“ハイテク繊維の世界”,日刊工業新聞社,(1999) pp. 111-114. (12) Kitagawa, T., Murase, H. and Yabuki, K., “Morphological study on poly-p-phenylene benzobisoxazole (PBO) fiber”, Journal of Polymer Science: part B: Polymer Physics, Vol. 36 (1998) pp. 39-48. (13) Kitagawa, T. and Yabuki, K., “A relationship between the stress distribution and the peak. profile. broadening. of. meridional. X-ray. diffraction. from. poly-p-phenylenebenzobisoxazole (PBO) fiber”, Journal of Polymer Science: part B: Polymer Physics,Vol. 38 (2000) pp. 2937-2942. (14) 本宮達也,“ハイテク繊維の世界”,日刊工業新聞社,(1999) p. 97. (15) 海老沢文博,星野光利,佐藤行彦, “分子量および分子量分布からみたポリ エチレンの紫外線劣化”,高分子論文集,Vol. 36, No. 12, (1979), pp. 791-795. (16) 鯨井忠五,“セルロースの紫外線劣化”,高分子,Vol. 11, No. 6, (1962) pp. - 17 -.

(22) 412-417. (17) Horikawa, N., Nomura, Y., Kitagawa, T., Haruyama, Y., Sakaida, A., Imamichi, T., Ueno, A. and Nakagawa, K., “Tensilefracture behavior of UV light irradiated PBO fiber”, Journal of Solid Mechanics and Materials Engineering, Vol. 3, No. 1, (2009). pp. 1-9.. (18) 島田潤一,“紫外線吸収剤”,高分子,Vol. 19, No. 11, (1970) pp. 1027-1031 (19) H. M. HAWTHORNE and E. TEGHTSOONIAN, “Axial compression fracture in carbon fiber”, JOURNAL OF MATERIALS SCIENCE, Vol. 10, (1975) pp. 41-51 (20) 田川哲哉,纐纈智隆,宮田隆司, “炭素繊維の圧縮損傷と結晶構造”,材料, Vol. 48, No. 3, (1999) pp. 269-274 (21) R. Edmunds and M. Ahmer Wadee, “On kink banding in individual PPTA fibers”, Composites Science and Technology, Vol. 65, (2005) pp. 1284-1298 (22) STEVEN J. DeTERESA, ROGER S. PORTER and RICHARD J. FARRIS, “A model for the compressive buckling of extended chain polymers”, JOURNAL OF MATERIALS SCIENCE, Vol. 20, (1985) pp. 1645-1659 (23) Yachin Cohen and Edwin L. Thomas, “Microfibrillar Network of a Rigid Rod Polymer. 1. Visualization by Electron Microscopy”, Macromolecules, Vo. 21, (1988) pp. 433-435. (24) S. Fidan, A. Palazotto, C. T. Tsai and S. Kumar, “Compressive properties of high-performance polymeric fibers”, Composites Science and Technology, Vol. 49, (1993) pp. 291-297. (25) 堀川教世,野村幸弘,北河享,春山義夫, 境田彰芳,今道高志,佐々木信也, 竹川英明,“PBO 繊維の引張強度とその寸法効果”,日本材料強度学会誌, Vol. 41, No. 3, (2007) pp. 57-65. (26) Lipika Ghosh, Mohammad Harris Fadhilah, Hiroshi Kinoshita and Nobuo Ohmae, “Synergistic effect of hyperthermal atomic oxygen beam and vacuum ultraviolet radiation exposures on the mechanical degradation of high-modulus aramid fibers”, Polymer, Vol. 47, (2006) pp. 6836-6842 (27) Huapeng Zhang, Jianchun Zhang, Jianyong Chen, Xinmin Hao, Shanyuan Wang, Xinxing Feng ang Yuhai Guo, “Effects of solar UV irradiation on the tensile properties and structure of PPTA fiber”, Polymer Degradation and Stability, Vol. - 18 -.

(23) 91, (2006) pp. 2761-2767 (28) Shineng Li, Aijuan Gu, Jie Xue, Guozheng Liang and Li Yuan, “The influence of the short-term ultraviolet radiation on the structure and properties of poly(p-phenylene terephthalaramide) fibers”, Applied Surface Science, Vol. 265, (2013) pp. 519-526 (29) 松田種光,“高分子材料の紫外線劣化”,日本ゴム協会誌,Vol. 30, No. 11, (1957)pp. 869-871 (30) 高田貴大,小熊博幸,中村孝, “引張応力を加えた高分子材料の紫外線劣化 評価”,日本機械学会北海道支部第 50 回講演概要集,(2011) pp. 69-70. (31) 堀川教世,野村幸弘,北河享,春山義夫,境田彰芳,今道高志,上野明, “高 弾性率タイプ PBO 繊維の引張強度に及ぼす紫外線照射の影響”,日本機械 学会論文集 A 編,Vol. 78, No. 790, (2012) pp. 865-878. (32) M. A. Said, Brenda Dingwall, A. Gupta, A.M. Seyam, G. Mock and T. Theyson, “Investigation of ultra violet (UV) resistance for high strength fibers”, Advances in Space Research, Vol. 37, (2006) pp. 2052-2058. (33) Takahashi, T., Miura, M. and Sakurai, K., “Deformation band studies of axially compressed poly(p-Phenylene Terephthalamide) fiber”, J. Appl. Polym. Science, Vo. 28 (1983) pp. 579-586.. - 19 -.

(24) 第2章. PBO 繊維におけるキンク損傷発生. 2・1 緒言. PBO 繊維をはじめ,多くの高分子繊維や炭素繊維は繊維に圧縮負荷が加わる ことでキンク損傷と呼ばれる図 2-1 のような圧縮損傷が発生する.S. Fidan ら 1) は PBO 繊維のキンク損傷の発生メカニズムを明らかにするため,Bending beam test を用いてキンク損傷の発生と成長の過程の詳細な観察を行っている.その結 果,キンク損傷は圧縮ひずみの増加に伴い太くなり,圧縮荷重を除荷するとキ ンク損傷が細くなることを報告している.また,除荷後に残ったキンク損傷は 永久損傷になる可能性を指摘している.しかし,この Bending beam test は PBO 繊維を樹脂中に埋め込み,繊維が圧縮応力領域になるように曲げ変形を与える ことで,樹脂と繊維の界面に発生するひずみによって圧縮負荷を与えている. そのため PBO 繊維に与えている圧縮負荷が間接的であり,繊維内部の応力分布 も不均一となる.Bending beam test は,複合材料における強化繊維の評価に適し た方法であるが,PBO 繊維は樹脂との密着性が良くないため複合材料として使 用されることは少なく,繊維単体として使用されることが多い.そのため Bending beam test で発生したキンク損傷の発生メカニズムは,実際の使用下で発 生するキンク損傷の発生メカニズムとは異なると考えられる.実際の使用下で 発生するキンク損傷の発生メカニズムを評価するためには,PBO 繊維に一様な 応力状態で直接荷重を負荷する必要がある.しかし,繊維材料を軸方向に直接 圧縮する試験方法は試験片の作製が困難であることから Bending beam test のよ うな方法によって評価されてきた.本研究では UV リソグラフィ技術を用いる ことで軸方向直接圧縮試験を行うことのできる試験片を作製し,圧縮試験を行 うことでキンク損傷の発生過程の観察を行った. 一 方 , Y. Cohen ら. 2). は PBO 繊 維と 似た構 造 の高 分 子繊 維であ る PBT. (Poly-p-Phenylene Benzobisthiazole-2, 6-diyl)繊維に関して,キンク損傷を TEM (Transmission Electron Microscope)を用いて断面観察を行うことで,PBT 繊維 のキンク損傷は繊維内部のミクロフィブリルの座屈によることを報告している.. - 20 -.

(25) PBO 繊維のキンク損傷についても同様であると考えられているが,実際に観察 された報告はない. そこで,本章では軸方向直接圧縮試験を行うと同時に繊維のその場観察を行 うことで,一様な圧縮応力状態でのキンク損傷の発生過程の観察と圧縮試験よ り得られた荷重-変位曲線とキンク損傷の発生挙動の考察を行った.また,PBO 繊維の断面の TEM 観察を行うことで,PBO 繊維のキンク損傷の内部構造の観察 を行った.. 1. 2 3. 4. 5 6. 10μm Fig. 2-1 Optical microscope photograph of typical kink band occurred to the PBO fiber.. 2・2 供試材料. 供試材料には通常タイプの PBO 繊維(ザイロン®-AS,東洋紡)を使用した. PBO 繊維は,ポリリン酸を溶媒としてテレフタル酸を重合し,乾湿式紡糸によ り製造される繊維である.化学繊維の製造工程は繊維の原料となる高分子の溶 液または融液をノズルから吐出し一定の速度で引取ることからなり,この工程 は一般に紡糸と呼ばれている.代表的な紡糸法は,溶融,乾式,湿式紡糸法で ある.それぞれの紡糸法について,簡単に説明する.溶融紡糸は加熱融解した 高分子の溶液をノズルから空気中に吐出し,空気中で冷却しながら定速で引取 る方法である.乾式紡糸は,吐出した高分子溶液を加圧気体中で蒸発させ固化 させることで繊維化する方法である.湿式紡糸は,対象となる高分子もしくは その変性体の溶液を凝固溶媒中に吐出し,その後,脱溶媒もしくは化学反応を 伴う脱溶媒が行われることで繊維化する方法である.PBO 繊維の製造方法はこ れらの紡糸法の中では,湿式紡糸法にあたる.PBO 繊維の紡糸技術の簡略図を 図 2-2 に示す.テレフタル酸をポリリン酸中で重合した重合ドープを補給タンク - 21 -.

(26) に充填し,押出ピストンによって紡糸浴通して紡糸機から吐出する.その後, 水を凝固剤とし固化させ水洗いした後,ゴデットロールを用いて引取りしワイ ンダーにて巻き取る.表 2-1 にカタログデータに記載されている通常タイプの PBO 繊維(以降,AS 繊維)の機械的特性を示す 3).引張強度・引張弾性率がそ れぞれ 5.8 GPa,180 GPa と他の高分子繊維と比べ非常に高い値を示している. また,図 2-3 に PBO 繊維の断面と側面の写真を示す.断面写真は繊維をエポキ シ樹脂に埋め込み,直径方向に切断・研磨し,SEM を用いて撮影したものであ る.図 2-3 より,PBO 繊維の表面は比較的なめらかであり,断面は直径が約 10 µm の円に近い形状をしており,繊維全体は円柱形であることが分かる.また, PBO 繊維の繊維直径は大きなばらつきを持っている.図 2-4 に AS 繊維の 40 本 の直径を正規確率紙上にプロットしたグラフを示す.繊維直径の平均値は 11.0 µm であり,標準偏差は 0.71 µm であり,繊維直径のばらつきが大きいことが分 かる.. Extrusion piston. Valve. Replenishment tank. Spinning bath Spinning machine. Wash bath Godet roll Winder Coagulan t Fig. 2-2 Simple figure of the spinning process of PBO fiber. - 22 -.

(27) Table 2-1 Mechanical properties of PBO fibers. Type. Tensile Elastic Modulus, GPa. Tensile Strength, GPa. Filament Decitex. Density, g/cm3. AS. 180. 5.8. 1.7. 1.56. PBO fiber. 5 μm 10 μm (a) Sectional area (b) Surface area Fig. 2-3 Scanning electron micrographs of PBO fiber.. Cumulative probability Pi , %. 99.9 99.0 95.0 90.0 80.0 70.0 60.0 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 5.0 1.0 0.1 6. 8. 10. 12. 14. 16. Fiber diameter d, m Fig. 2-4 Didistributions of fiber diameter of AS fiber.. - 23 -.

(28) 2・3 単繊維圧縮試験. 2・3・1. 単繊維圧縮試験片作製方法. 本実験で使用する繊維は単繊維であり試験機への固定が困難であるため,UV リソグラフィ技術を用いて単繊維固定台を作製した.繊維を固定する樹脂には 厚膜用レジスト SU-8(MICROCHEM 社製),レジストを剥がしやすくするため のコート剤には OmniCoat(MICROCHEM 社製),現像液には SU-8 Developer (MICROCHEM 社製)を使用した.図 2-5 に本研究で行った単繊維固定台の作 製方法を示す.まず,15 mm × 20 mm の大きさに切断した Si ウエハを準備し, ウエハ上にコート剤を塗布し,スピンコーターによってレジストを剥がしやす くするための犠牲層を作製する(図 2-5 (a)).次に,犠牲層の上に一定量のレジ ストを塗布し,スピンコーターで厚さ約 100 μm の膜を作製する(図 2-5 (b)). 次に,かみそりを用いて先端を平滑に切断した単繊維をレジスト上に配置し, 再度,繊維の上にレジストを塗布し繊維をレジスト中に埋め込む(図 2-5 (c)). この後,65℃で 20 分,95℃で 50 分のベーキング処理を行い,樹脂を焼き固め る.次に,フォトマスク(Cr マスク)のマスク部分で繊維端部を覆い,マスク アライナーによって紫外線を照射し露光を行う(図 2-5 (d)).露光後,再び 65℃ で 10 分,95℃で 5 分のベーキング処理を行った後,現像液に浸け,フォトマス クにより紫外線が遮断されていた部分のレジストを溶解・除去する.この時, フォトマスクにより紫外線が遮断されていた部分のレジストは除去され,除去 されなかったレジストから単繊維が飛び出している状態になる(図 2-5 (e)).最 後にエタノールで洗浄した後,ピンセットを用いてフォトレジストを Si ウエハ から剥がし取る(図 2-5 (f)).. - 24 -.

(29) Si wafer. Sacrificial layer. (a) Substrate pretreatment procedure. Resin. (b) Coat. Ultraviolet rays. Fiber. Resin. Photo mask. (c) Arrangement of fiber. (d) Expose. (e) Post expose bake and develop. (f) Remove. Fig. 2-5 Fabricating process of pedestal to fix a fiber made of resin using UV lithography.. 2・3・2. 単繊維圧縮試験方法. 圧縮試験には微小圧縮試験機(MCT-W500,島津製作所製)を用いた.図 2-6 に圧縮試験機全体の様子を図 2-7 に圧縮試験部の詳細を示す.試験機には先端に 直径 50 µm の平たん部を持つ角錐圧子が取り付けられており,この圧子で直接, 繊維を軸方向に圧縮する仕組みとなっている.また,圧縮試験部には 2 台のカ - 25 -.

(30) メラが単繊維に対して直交するように設置されており,正面と側面から試験中 の繊維の変形挙動を観察・録画することができる.正面のカメラ(図 2-7 中 Camera 1)は動き解析マイクロスコープ(KEYENCE 製,VW-5000)に接続されており 試験の様子を録画することができる.図 2-8 にマイクロスコープ本体の様子を示 す.また,側面のカメラ(図 2-7 中 Camera 2)はロープロファイル PCI 対応高 画質ビデオキャプチャボード(I-O DATA 製,GV-VCP3R/PCI)を用いてパソコ ンに接続されており,キャプチャソフト I-O DATA Video Recorder を用いて試験 の様子を録画することができる.単繊維の固定台は L 字型の治具に貼り付けら れ,試験機のステージに固定されるようになっている.試験機のステージは 2 軸傾斜ステージとなっており,治具を試験機に固定した後,2 台のカメラで繊維 が垂直になるように観察を行ないながら角度を調節するようになっている.2 軸 傾斜ステージの角度調節は左右 20°ずつ傾けることができ,ステージについて いるメモリの最小メモリは 1°であり角度調整の精度は十分であるといえる.圧 縮試験では,負荷速度 4.46×10-2 mN/s で行い,負荷開始直前から圧縮破壊に至 るまでその場観察を行い,画像を記録した.圧縮強度を計算する際の繊維の直 径は,繊維断面を円と仮定し,その場観察の画像データから測定した.その場 観察には光学顕微鏡(倍率 1000 倍)を用いて行い,繊維の直径は画像データに 繊維と一緒に撮影されている角錐圧子の平たん部の長さ(直径 50 µm)を基準と して求めた.なお,光学顕微鏡を用いた場合,繊維側面の境界部分がぼやける ため誤差が生じる可能性がある.しかしながら,本研究では焦点の合わせ方及 び繊維側面の境界部分の特定方法を統一することで直径の測定誤差を小さくし た.数本の単繊維について本方法により測定した繊維直径と SEM によるそれと 比較した結果,その差は平均で±0.17 µm であった.繊維直径を 10 µm とした場 合,実験で得られる破壊荷重相当の圧縮応力に換算したときの差はおおよそ 3% となるため,本実験における直径の測定方法及び測定精度は十分であると考え られる.. - 26 -.

(31) Fig. 2-6 Whole view of direct compressive testing machine.. Camera 1. Indenter Specimen (Fiber) Pedestal made of resin Camera 2 L – shaped jig One axis tilting stage. Finger grip Fig. 2-7 Experimental set-up.. - 27 -.

(32) Fig. 2-8 State of the microscope.. 2・3・3. FEM による繊維の応力解析方法. 本研究で作製した試験片は,繊維の一端を樹脂で固定した形であり,繊維に 直接圧縮荷重を負荷する際に,樹脂による繊維保持部では付近では応力状態が 不均一になることが考えられる.本研究では,一様な応力状態で発生したキン ク損傷を評価することを目的とするため,試験片の繊維固定部の影響を明らか にする必要がある.そこで,図 2-9 に示すような軸対象モデルを用いて FEM に より応力解析を行った.解析は MARC MENTAT を用いて,要素は 3 接点三角形 要素,繊維を異方性材料として表 2-2 に示す材料物性を用いた.繊維の直径は 10 µm とし,繊維の長さを 5,10,20,30,40,50 µm の 6 条件とした.また, 圧縮荷重は繊維上端面に均一な応力を作用させた.. - 28 -.

(33) Stress. Resin. Fiber. X Y (b) Boundary conditions. (a) Schematic illustration of compressive specimen. Fig. 2-9 Analysis model for FEM. Table 2-2 Mechanical properties for finite element analysis. material PBO fiber Resin. 2・3・4. Young’s moduli(MPa). Poisson’s ratios. E11. E22. E33. ν11. ν22. ν33. 180000. 2400. 2400. 0.4. 0.02. 0.02. 3200. 0.4. 単繊維圧縮試験結果および考察. 図 2-10 に圧縮試験における荷重-変位線図の一例を示す.繊維の長さは 50 µm である.図中の破線は圧縮負荷初期の荷重-変位線図を直線近似したものであ る.図より,圧縮負荷初期では荷重と変位の関係は破線で示すように直線で近 似でき,その後,破線から外れる挙動を示した. 図 2-11 に圧縮試験中のその場観察結果を示す.図 2-11 (a)~(d) はそれぞれ図 2-10 中の (a)~(d) における写真である.図 2-11 (a) は圧縮試験前の様子を示し ており,写真中央の棒状のものは繊維である.水平の黒線は樹脂の表面であり, 黒線より下側は樹脂である.図 2-11 (b) は圧縮負荷初期の様子であり,フラッ ト圧子により繊維が垂直方向に圧縮されていることが分かる.この時,図 2-10 中の (b) に示すように,荷重-変位線図の関係においては線形の挙動を示した. 図 2-11 (c) はキンク損傷が発生した時の様子を示している.この時,荷重-変位 - 29 -.

(34) 線図では図 2-10 中の (c) に示すように直線から外れる挙動を示す.図 2-11 (d) は繊維が圧壊を起こした様子を示したものであり,キンク損傷の発生をきっか けに繊維が急激に圧縮破壊を起こした.なお,繊維の根元部分において繊維と 樹脂の界面剥離が生じた後,キンク損傷が発生したケースもあったが,この時 も界面剥離を起こさなかった時と同様にキンク損傷の発生と同時に荷重-変位 線図の関係は非線形になった.ここで,キンク損傷の発生を内部構造から考え ると,2・1 節の緒言で前述したようにミクロフィブリルの座屈であると考えら れる.PBO 繊維の内部構造について 1・1 節の図 1-4 に示しているが,これは非 常に重要なデータであるため,図 2-12 に再記する. 4),5). .PBO 繊維の内部構造は. ミクロフィブリルと呼ばれる微小径繊維が束になって繊維方向に配向している. ミクロフィブリル同士は完全に結合しているわけではなくフィブリルとフィブ リルの間には繊維軸方向に引き伸ばされたミクロボイド(直径 20~30 Å)が存 在する.また,ミクロフィブリルの末端部にも未結合部が存在する.PBO 繊維 の最表面にミクロボイドが散在しない薄さ 0.2 µm 以下の非常に薄いスキン層が 形成されている.なお,繊維内部についても同じ構造をしておりミクロフィブ リルの密度は中心方向にはあまり変化しない.PBO 繊維は繊維長さにミクロフ ィブリルが高配向された繊維であり弾性率が高いため圧縮荷重負荷後しばらく は荷重が線形的に増加する.その後,繊維内部の未結合部であるミクロボイド やミクロフィブリルの末端部においてフィブリルの滑りが生じることで荷重の 増加が非線形なったと考えられる.この時,その場観察においてキンク損傷の 発生が観察されているため,フィブリルが滑りを起こしたことでミクロフィブ リルの座屈が起きキンク損傷が発生したと考えられる.以上のことから,PBO 繊維に関しては荷重-変位線図の関係が線形から外れるときにキンク損傷が発 生しており,その時にミクロな永久損傷が発生していると考えられる.. - 30 -.

(35) Compressive load, mN. 30. 20. (c). 10. (d). (b) (a). 0. 0. 10. 20. 30. Displacement, μm Fig. 2-10 Typical load – displacement curve of PBO fiber obtained by direct axial compression test.. 50 µm (a) Non loading. 50 µm (b) Early stage of compressive loading. kink band 50 µm. 50 µm (d) Collapse of the fiber. (c) Occurrence of kink band. Fig. 2-11 Microscope photographs of the fiber under compressive loading obtained by in-situ observation.. - 31 -.

(36) Core. Microvoid. Skin region Microfibril. Skin region (Thickness:<0.2 μm). Surface. Fiber Microvoid. Fig. 2-12 Illustration of internal structure of PBO fiber4),5).. 2・3・5. FEM による応力解析結果および考察. 図 2-13 に一例として繊維長さ 40 μm での応力解析結果を示す.図のグラデー ションは繊維軸方向の応力の変化を表しており,色が濃くなるに従って応力が 高くなっていくことを示している.図より,繊維根元部分の表面の応力は非常 に高くなっていることが分かる.そこで,本論文では,繊維上端面に作用させ た応力の 110%以上の応力が作用している部分を高応力領域とし,その領域の繊 維表層の軸方向長さを高応力領域長さ(図中の白矢印)と定義した.なお,繊 維根元部分では樹脂固定により繊維の直径方向の変形が拘束されるためせん断 応力成分も影響を受ける.そのため,せん断応力成分についても調べたが,高 い応力は繊維軸方向の高応力領域内で発生していたため,本研究では繊維固定 部の影響範囲が過小評価にならないように高応力領域が大きい繊維軸方向の応 力により繊維固定部の影響を評価している. 図 2-14 に繊維長さと高応力領域長さの関係を示す.図より,繊維長さが 20 μm 未満では繊維長さの増加に伴い高応力領域長さも増加しているが,繊維長さが 20 μm 以上になると高応力領域長さは約 7 µm とほぼ一定値を示している.本研 究で使用した試験片の繊維長さは 20~50 µm であるため,繊維固定部に発生す る高応力領域は繊維固定部から 7 µm であり,均一な応力下でのキンク損傷の発 生を評価するためには,繊維固定部より 7 µm 以上離れた位置で発生したキンク 損傷について評価する必要があるといえる. - 32 -.

(37) -113 MPa -115 MPa -118 MPa -120 MPa -123 MPa -125 MPa -128 MPa -130 MPa -133 MPa -135 MPa -138 MPa. X. 50 µm. Y. Length of high stress region, μm. Fig. 2-13 Distribution of σx in the fiber of 40μm. length under compressive load.. 10 8 6 4 2 0. 0. 20. 40. 60. 80. Fiber length h,μm. Fig. 2-14 Relationship between the length of high stress region and fiber length.. 図 2-15 に圧縮試験で得られた圧縮強度をワイブル確率紙上にプロットしたも のを示す.圧縮強度はキンク損傷の発生荷重と実験前の繊維の直径から計算し た.○は繊維の破壊(キンク損傷の発生)が繊維の根元部分から 7 μm 以上離れ た部分で起こったデータ,●は 7 µm 未満のデータを示している.図より,両デ ータとも直線で近似できることから 2 母数ワイブル分布に従うことが分かる. また,7 µm 以上の位置で破壊が起こったデータの形状母数は 6.2 であり,7 µm 未満の位置で破壊が起こったデータの値(形状母数:3.4)より大きいことから, ばらつきが小さくなっていることが分かる.強度の代表値となる尺度母数につ いては,7 µm 以上の位置で破壊が起こったデータの尺度母数は 234 MPa であり, - 33 -.

(38) Cumulative probability P i , %. Adoption data Rejection data. 99.9 99.0 95.0 90.0 80.0 70.0 60.0 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 5.0 3.0 2.0 1.0 0.5 50. 100. 500. Compressive strength  f , MPa. Fig. 2-15 Influence of fracture in high stress region on the compressive strength of PBO fiber.. 7 µm 未満の位置で破壊が起こったデータ(尺度母数:147 MPa)はそれより 低い値を示した.このことから,繊維固定部よりも 7 µm 以上離れた位置で発生 したキンク損傷について発生過程を観察することで,繊維固定部の影響を受け ない一様な応力下で発生したキンク損傷の発生メカニズムを評価することがで きるといえる.また,繊維固定部の影響を受けない一様な応力下でキンク損傷 が発生したデータの尺度母数は 234 MPa となりカタログデータの圧縮強度(561 MPa)よりも低い値を示した.カタログデータは緒言で前述した Bending beam test を用いて算出している.Bending beam test は,繊維を樹脂中に埋め込み繊維に圧 縮荷重が負荷するように曲げ変形を与えることでキンク損傷を発生させている. そのため,繊維は樹脂に拘束されたており,過負荷状態での強度評価であると 考えられる.本研究で得られた試験結果はキンク損傷発生部において繊維が拘 束されることなく圧縮荷重を直接負荷することができるため,カタログデータ よりも低い値を示したと考えられる.他の高分子繊維についても同様の報告が されており 6),本研究で得られたデータは妥当であると考えられる. なお,繊維固定部に高応力領域が発生しているため圧縮試験では,通常はす べての試験片で繊維の根元の高応力領域において破壊が生じるはずであるが, 高応力領域の外側でも試験片が破壊している.この理由については,PBO 繊維 - 34 -.

(39) 内の欠陥密度が起因していると考えられる.PBO 繊維の内部構造については前 述したように過去の研究で明らかにされており,内部構造の簡略図は図 2-12 の 通りである.PBO 繊維の内部構造から破壊因子を考えると,ミクロボイドや非 晶部等の欠陥が挙げられる.PBO 繊維内部のミクロボイドや非晶部の密度を考 えると,PBO 繊維は液晶紡糸により連続的に紡糸されるため,こうした欠陥の 密度は長さ方向に均一であると考えられる.過去の研究で堀川らは,引張強度 であるが,2~100 mm の間で長さの異なる PBO 繊維の引張試験を行い,強度は 有効体積で近似できることを報告している 7).このことはミリメートルオーダと いったマクロレベルでは破壊に寄与する欠陥の密度は長さ方向に均一であると 近似できることを示すものである.しかしながら本論文においては,繊維長さ は 20~50 µm 程度とミクロレベルであり,このような場合には欠陥間隔と繊維 長さの差が小さく,繊維内部に存在する破壊に寄与する欠陥の密度に不均一性 が現れると考えられる.キンクバンドの発生する位置は破壊に寄与する欠陥の 存在する場所により決まるため,欠陥が高応力領域に存在せず固定部から 7 µm 以上離れた位置に存在する場合では本実験結果で得られたような高応力領域以 外でのキンク損傷の発生が起こると考えられる.また,7 µm 以下の高応力領域 で破壊が起こったデータの中に 7 µm 以上の領域で破壊した繊維よりも高い強度 値を示すものがある.この理由については個々の欠陥が持つ強度のばらつきが 影響していると考えられ,マクロレベルでは個々の欠陥が持つ強度を平均値で 近似することができるが,ミクロレベルでは個々の欠陥が持つ強度のばらつき が大きく影響するため,このようなデータが得られるものと考えられる.. 2・4 TEM 観察. 2・4・1. TEM 観察方法. PBO 繊維のキンク損傷部分の内部構造を観察するために透過型電子顕微鏡 (Transmission Electron Microscope; TEM)を用いて観察を行った.繊維の観察面 はキンク損傷部を観察するため繊維長さ方向の断面とした.繊維断面の切り出 しにはウルトラミクロトーム(ライカ(株)製,ウルトラカット UCT)を用い - 35 -.

(40) た.図 2-16 にウルトラミクロトームの様子を示す.切り出す加工工程について 示す.まず,キンク損傷を導入した PBO 繊維をエポキシ樹脂に埋め込み繊維の 固定を行った.図 2-17 に繊維を埋め込んだエポキシ樹脂の様子を示す.ここで キンク損傷の導入方法については 3・3. 試験片作製方法の 3・3・1. キンク損. 傷導入方法にて詳しく述べる.キンク損傷を導入したループ直径は 0.65 mm と した.次に,カミソリを用いてエポキシ樹脂で固定した PBO 繊維の観察部を 2 mm 角程度にトリミングした.この試料をウルトラミクロトームのガラスナイフ で 2.5 µm ずつ切り出してエポキシ部の面出しを行う.面出し後ダイヤモンドナ イフを用いて 2.5 µm ずつ繊維部まで切り出しを行う.その後,仕上げ用ダイヤ モンドナイフを用いて 100 nm ずつ切り出した.切り出した薄片試料をグリッド スクエアーメッシュ(VECO 社製,VECO Cu 100/400 メッシュ)に乗せた後,グ リッドスクエアーメッシュ(VECO 社製,VECO Cu Double Grid D100/100B メッ シュ)に挟み込むことで,TEM 観察用試料を作製した.図 2-18 に作製した TEM 観察用試料の様子を示す.. Fig. 2-16 State of ultra-microtome.. 作製した TEM 観察用試料に対して透過型電子顕微鏡 TEM(日本電子(株) 製,JEM-2100)を用いて加速電圧 100 kV,暗視野で,PBO 繊維のキンク損傷部 の内部構造を観察した.繊維内部構造を観察するために,倍率は 3 千~25 万倍の 広い範囲で観察を行った.. - 36 -.

(41) Fiber Fiber. 2.5 mm (b) State of buried fiber. 5 mm (a) Overall state. Fig. 2-17 Epoxy resin which buried PBO fiber.. 1 mm. 10 µm. (a) Overall state. (b) State of the foil sample. Fig. 2-18 Sample for TEM observation.. 2・4・2. TEM 観察結果および考察. 図 2-19 に観察した PBO 繊維断面の TEM 画像を示す.図 2-19 (a)は PBO 繊維 断面 5 万倍で観察した様子,図 2-19 (b)は図 2-19 (a)の A 部を 10 万倍で観察した 様子を示す.今回行った TEM 観察ではキンク損傷部の観察を行うことができな かったが,PBO 繊維のミクロフィブリルを観察することができた.図 2-19 中の 矢印で示したようなで繊維長さ方向に見られる筋がミクロフィブリルであると 考えられる.また,図 2-19 (a)中の B 部は電子銃の熱によって PBO 繊維が裂け た部分であるが,図 2-19 (b)より分かるように裂けた部分がミクロフィブリルで 繋がっていることが分かる.本章の緒言にて述べたように,Y. Cohen ら 2)は PBO - 37 -.

Fig. 2-7 Experimental set-up.
Fig.  2-10 Typical  load  –  displacement  curve  of  PBO  fiber  obtained by direct axial compression test
Fig. 2-13 Distribution of  σx in the fiber of 40μm  length under compressive load.
Fig. 2-15 Influence of fracture in high stress region on  the compressive strength of PBO fiber
+7

参照

関連したドキュメント

[r]

糸速度が急激に変化するフィリング巻にお いて,制御張力がどのような影響を受けるかを

The larger the amount of Co in the three alloys is, the higher the dislocation density in the alloys peak-aged and rolled to a 25% and a 90% reduction is. The amounts of

[r]

 1)血管周囲外套状細胞集籏:類円形核の単球を

3 学位の授与に関する事項 4 教育及び研究に関する事項 5 学部学科課程に関する事項 6 学生の入学及び卒業に関する事項 7

原子炉本体 原子炉圧力容器周囲のコンクリート壁, 原子炉格納容器外周の壁 放射線遮蔽機能 放射線障害の防止に影響する有意な損

(Yc) 、有楽町層砂質土層(Ys) 、埋没段丘堆積層(Bts)、東京層第一粘土層上部層(Tcu) 、東京