児童への発声指導についての研究~裏声発声の有用性に着目して~
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(2) 目 次 1. はじめに. 第一章 発声について. 第1節 発声に関する用語の定義づけ. 2. 第2節児童発声の特徴 第3節変声期の「声」について. 7 9. 第二章 児童発声の目指すところ. 第1節 小学校学習指導要領成立以前の児童発声について. 11. 第2節 小学校学習指導要領(音楽)における発声に関する用語の変遷. 14. 第三章 児童発声の現状. 第1節 フィールドワーク【岡山市立K小学校コーラス部の活動観察】から 19 第2節 フィールドワーク【NHK全国学校音楽コンクールの観察】から 第四章. 25. アンケート調査について. 第1節. 調査の目的. 28. 第2節. 項目について. 29. 第3節. 実施方法. 36. 第4節. 結果. 37. 第5節. 考察. 40. おわりに. 48. 参考文献及び資料. 50. 謝辞. 52. 資料【アンケート結果】.
(3) はじめに. 小学校高学年から中学生の時期に、男子は変声期をむかえる。また男子ほど顕著ではな いものの、女子も大人の声へと変声する。それまでは歌うことが好きでも、この時期に歌 うことが嫌いになったり、歌うことをやめてしまったりする児童・生徒は少なくない。教 師も変声期には歌唱指導を避ける傾向があるとよく言われており、段階的に歌唱指導を続 けることが難しくなる。. 児童・生徒が歌わなくなる原因としては、変声期に一時的に声が出づらくなることや、. 変声後の1オクターブ音域が低くなった声では音がとりづらくなることが挙げられる。そ の他にも思春期にみられる反抗、他者とのコミュニケ]ションの回避、また日本人特有の 同調志向などの心理的問題、さらに「一音楽科教師と個人としての児童との人間関係の問 題か、または現代の青少年と社会との在り方の問題としてとらえるべきもの」*ユという考 え方もあり、多種多様である。. しかし歌唱能力の向上には継続した指導が不可欠であり、たとえ変声期であっても歌唱 指導を継続させられることが望ましい。そのため、変声期の炎症を起こしやすい喉でも歌 唱することができる技術を、変声期以前に児童に身につけさせる必要があると考えた。こ こで着目したのが裏声である。裏声発声でなら、変声期の喉にかかる負担を軽減し、継続 的に歌唱指導を行うことができるのではないだろうか。. ただ近年の小学校学習指導要領では、以前用いられていた「頭声発声」や「頭声的発声」. という用語は姿を消し、それに代わって「自然で無理のない声」という用語が用いられる ようになった。そのため教育現場では裏声発声による歌唱指導に重きがおかれていないよ うに感じることがある。. そこで本研究では裏声発声の有用性について提起し、児童への発声指導がどうあるべき かについて考察していきたい。 *1. エ本静一『小学生のヴォイス・トレーニング』音楽之友社、1995,p,8.
(4) 第一章 発声指導について. 第1節 発声に関する用語の定義づけ. 発声に関する用語は数多く存在する。しかしそれらの用語は、使う人によって定義が異 なっていたり、また識別されることなく混同1して使われたりする場合が多い。本論文内で も「裏声」や「地声」をはじめとする、様々な発声に関する用語を使うことになるのだが、. それらについて本節で定義づけをしておくこととする。ここで定義づけするのはあくまで 本論文内で使う用語について一貫性をもたせ、一定の共通認識を持っという目的のためで ある。. ○声区にらいて. 発声に関する用語の定義づけをするには、まず声区についての理解が必要となる。 岩崎洋一は声区について、「発声用語は、声区の解釈から派生した発声に関する用語である。. その声区(VoCa1regiSter)は、音域により音色が異なることから分けられた感覚的用語で あり、一般的には低音域、中音域、高音域の三つの声区に分けられる。」*1と記している。. また、カール・ホクセットは著書『コーラスアンサンブルのためのSinging他。hnique』 の中で声を大きく二種類に分類し、重く力強い声をr重いメカニズムの声」・r胸声」、軽く 明るい声を「軽いメカニズムの声」・「頭声」と呼んでいる。そしてこれら二種類の声のあ いだを滑らかに移行させるために「中声」(胸声と頭声がミックスされた声)を使用しなけ ればならないと述べている。*2. 竝阯m一『小学生の発声指導を見直す』音楽之友社、1997,p.90 Jール・ホクセット著/藤森数彦訳『コーラスアンサンブルのためのSinging Technique』サニーサイトミュージック、1997,pp.16−17 *1. *2.
(5) また品川三郎も、現在ではあまり一般的でない用語ではあるが「The“Grea士Break’’」. という用語を以下のように定義づけし、それを用いて声帯の振動様式に着目しながら次の ように声区を分類している。. 「ハ調の音階を下からゆっくり歌って行くと、これは訓練のできていない者程、ハッ キリ分かることであるが、」点へ音あたりで今までの声と、質の違った声になってくる。. この声の質の顕著な変化をする境界を名づけてrThe“GreatBreak”」と呼ぶ。」. A,声帯の一部分の振動. 一声 中間の声. Great Breakより. B,全長、半幅、半厚振動. C,頭声区… 頭声 中声区…. 中声. a,声帯の凡ての部分の振動. 一声. b,全長、全幅、全厚振動 C,胸声区… 胸声. *3. また岩崎も、頭声発声について「頭部に共鳴しているように感じる発声。声帯辺縁部は 薄く声帯の辺縁に近い部分のみ振動し、声門は完全には閉じない。」とし、胸声発声につい. て「胸部に共鳴しているように感じる発声。声帯は厚く声帯の全幅が振動し、声門は完全 に閉じる」*4としている。. 以上のことから分かるように、声区は声帯の振動様式という観点からは大きく二つに分 類される。しかしそれぞれの声区に円滑に移行するための中間的な部分も」つの声区とし て感覚的に捉える場合が多く、声区を三つに分類するという考え方をする場合が一般的に. *3. *4. i川三郎『児童発声』音楽之友社、1955,p.10,pp.26−27 竝阯m一『小学生の発声指導を見直す』音楽之友社、1997,p.99 3.
(6) は多いようである。. ○発声に関する用語の原語と訳語について. 発声に関する用語の捉え方に違いが生じている原因について、岩崎は「発声用語の解釈 に差異が出てきたのは、あくまで感覚的に捉えられてきた用語であることと、音楽様式の 異なる発声用語を指導用語として並列に位置付けてきたところに起因している」*5といっ. た2点を指摘している。そのうち後者の暗楽様式の異なる発声用語を指導用語として並 列に位置付けて去た」とは、「…(西洋の)発声用語を日本の発声様式に置き換えた…」*6. ということである。つまり現在日本で用いられている用語には、西洋音楽で用いられる用 語の原語訳と、日本の伝統音楽で用いら.れてきた用語とが混在しているということが分か る。これについて岩崎は、歴史的に以下のように位置づけられてきたとまとめている。. 組1Setto… 頭声、仮声、裏声. *6. 西洋音楽で用いられる発声用語。hest voice,mi舳e・voice,head voiceの原語訳がそれ. ぞれ胸声、中声、頭声である。そして地声、上声、裏声、また上の表にはないが地声と同 義となる表声などが日本の伝統音楽で用いられてきた用語である。また血1Setto(ファルセ ット)とはhead voiceよりもさらに高い音域の声区を表す用語である。. *5 *6. 竝阯m一『小学生の発声指導を見直す』音楽之友社、1997,p.92 竝阯m一『小学生の発声指導を見直す』音楽之友社、1997,p.91. 4.
(7) ○本論文内での発声用語の意味について 特に言及しておくべきものや区別が必要なものについて、以下に述べる。. まず述べておかなければならないのは「裏声」という用語の扱いについてである。第二 章で詳しく述べるが、近年の学校音楽教育においては多岐にわたる教材を扱うようになっ たため、発声法は頭声的発声一つだけではなく曲に応じて工夫しなければならないとされ ている。その点に考慮し、あえて頭声発声や頭声的発声という用語は用いず、西洋音楽の 発声用語の訳語ではない「裏声」という用語を用いることとした。その意味合いとしては、. 声帯の振動様式に着目して、声帯の辺縁に近い部分のみ振動するものを裏声、声帯の全幅 が振動するものを地声(=表声)と分類して記述することとする。そのため裏声の一部に ファルセット、頭声発声、頭声的発声、中声発声(ただし胸声に近いものは除く)などが 含まれるものとして考えることとする。. 次に「ファルセット」について述べる。ファルセットは裏声と同義語だとする場合も多 いのだが、一方でrフラジョレット」と同義語として用いられる場合もある。. フラジョレットとは、もともとは弦楽器の特殊な奏法、またはその奏法によって生じる 音のことを示す用語であり、広辞苑には「弦楽器の弦に特殊な技巧を加えて出す、笛のよ うな音色を持っ倍音。バーモニクス。」と記されている。その意味が転じて声楽の発声用語 として用いられることがある。フラジョレットについてホクセットは、「頭声をさらに伸ば. して行くともうひとつの声が出ることがあります。これをフラジョレット・ヴォイスと呼 んでいます。(中略)これが簡単にできるようになると、このフルートのような音が非常に 高い音程の頭声を出すきっかけになります」*7と述べている。ファルセットがフラジョレ. ットと同義で使われた場合、頭声区よりさらに高音域で共鳴や音量に欠ける声という意味. *7カール・ホクセット著/藤森数彦訳『コーラスアンサンブルのためのSinging Technique』サニーサイトミュージック、1997,p.19.
(8) に限られてしまうこととなる。したがって本論文では裏声とファルセットを別のものとし て区別し、混乱を避けるために本論文中ではギファルセット」という用語は用いないよう にする。. そして噸声発声」とr頭声的発声」についてだが、この二つの用語は意味の異なるも のとして区別して扱う。頭声発声は前述のとおり「頭部に共鳴しているように感じる発声。. 声帯辺縁部は薄く声帯の辺縁に近い部分のみ振動し、声門は完全には閉じない。」というも. のだが、それに対して頭声的発声は「学校教育のみに位置付けられた発声。頭声発声を主 体にするが、胸声も使い、楽曲を表現するのに必要な声」*8といったものである。またこ の一. つの用語は学習指導要領に用いられているため、その変遷に深い関係がある。この点. について詳しくは第二章第1節に後述することとする。. *8. 竝阯m一『小学生の発声指導を見直す』音楽之友社、1997,p.99.
(9) 第2節 児童発声の特徴. 岩崎は児童発声という言葉について、「『児童発声』という言葉が使われだしたのは、大. 正期に入ってからです。学校教育が始動した明治期の歌唱指導は、子どもに限定しない普 遍的な発声指導が導入されていました。それが大正期の新教育の動きとともに子どもの音 声陶冶が叫ばれ、子どもの発声は大人と違うと主張されたのです」*1としている。しかし. 岩崎自身の児童発声に対する意見としては、逆に「声を出すという行為は、声帯という筋 肉を使い全身を使って発声することから考えてみると、声帯や共鳴腔、体格の違いにより 音色は異なるものの、特殊な発声が子どもだけにあるとは思われません」*2と記している。. 岩崎のいうように、発声という行為自体には、成人であっても子どもであっても大きな 差はない。つまり、児童発声の特徴というのぽ、大人とは異なった声帯や共鳴腔、体格に より生じる、児童特有の音色にあると考えられる。. 品川三郎は、「児童声」の良い姿について「澄み切った美しい声で、声に濁りがなく、如. 何にも軽々と歌っている。その声から受ける感じは、子供が少しも、その繊細な声帯を酷 使することなく、如何にも楽し気である」*3としている。 また、混声合唱や男声四部合唱とウィーンの少年合唱隊の合口昌とを比較して、「混声合唱. の美しさは、その声質音色から来る幅の広さであるが、その代り焦点が一点に集中したよ うなハーモニーは無い…(中略)…これに対してウィーンの少年合唱隊には、混声合唱や 男声四部合唱の持つ様な、幅の広さや、ボリュームは欠けているが、その代りハーモニ] の焦点が実に清澄である。これに着しその様な要求をするならぱ、それはあの合唱団の本 質を壊すものである」*4と述べている。. これら二つの記述から、ハーモニーの焦点が清澄であるのは、子どもたちの声が澄み切. *1. *2 *3. *4. 竝阯m一『小学生の発声指導を見直す』音楽之友社、1997,p.86 竝阯m一『小学生の発声指導を見直す』音楽之友社、1997,p.86 i川三郎『児童発声』音楽之友社、1955,p.12 i川三郎『児童発声』音楽之友社、1995,p.67.
(10) った美しい声であるということに起因するのではないかと考えられる。. また発声器官の未熟性とも関連して、低学年の児童にはよく嘆声児(声がれしている児 童)が見られることがある。腹声児の声帯の状態について酒井は、「医師の説明によると、. がんらい声帯は普通の状態では白い帯のようであり、発声時にはこの両方の帯が密着して 声が出るものである。しかし腹声の状態では白いはずの声帯が赤くはれて、しかも両方の 帯がノコギリの歯のようになり、正常のときのように密着しないのが原因ということであ る。」*5と述べている。. 益田慎は嘆声児の傾向について「圧倒的に男子に多く、性格上、活発で多弁で、その半 面神経質な子どもに多い。」*6としている。活発・多弁というところから想像できるように、. 嘆声の原因.は大声で叫んで自己主張をするというところにあるようだ。このような児童に. は、早い時期に「大声を出すことが自分の意見を通す際にあまりいい手段ではないという ことを自覚」させれば良い*7と、益目ヨは述べている。. *5酒井弘『新版 発声の技巧とその活用法』音楽之友社、1974,p.131 *6 g富功修編『音楽科重要用語300の基礎知識』明治図書、2001,p.200 *7吉富功修編『音楽科重要用語300の基礎知識』明治図書、2001,p.200.
(11) 第3節変声期の「声」について. 変声について、酒井弘は以下のように述べている。. 「変声(こえがわり)は身心の発達にともなって、少年期から青年期に移行する時期(思. 春期)におきる自然的現象である。したがって男女を問わず誰もが、この時期を経て青 年期に入るわけであるが、それには個人差があって時期や程度など全部が同一の状態で. はない。平均年齢からみると男子は大体13∼14歳、女子は大体12∼13歳ころに現われ るが、現代ではもっと早く現れることが多いようである。」*/. ここに書かれているとおり、変声というのは男女問わず誰もが経験するものである。し かし男子だけでなく女子にも変声があるということについては、周知の事実というわけで はなく、知らない人も多い。また、女子の場合は変声が起こったことに気づかない場合が 多い。この変声に関する男女間の差は、声帯の発達形態における男女差に由来していると 考えられる。酒井は変声期における声帯の発達の仕方について、r男子の声帯は前後にその 発達がいちじるしく現われ、女子のぱあいには上下に発達するものである。」*2と述べてい る。. 男子は声帯が前後に伸びることによって声帯の長さが長くなり、声の高さが変声前に比. べて1オクターブほど低くなるあである。喉仏が突起するのは、声帯の長さが長くなるこ とが原因である。. 」方女子の声帯については、男子ほどの劇的な変化はなく、若干上下に発達する程度で ある。このことによって声帯の厚みが増し、音域の大きな変化はないものの、音色には変 化が起こる。. *1. *2. 井弘『新版 発声の技巧とその活用法』音楽之友社、1974,p.146 井弘『新版 発声の技巧とその活用法』音楽之友社、1974,p.147 9.
(12) 変声期の男女それぞれの声の特徴について、渡辺陸雄は以下のように述べている。 ○変声期の男子の声. r男児の場合は、声帯がだんだんと伸びてくるので、声がかすれたり、頭で考えて出 した音程とはかなり違った音程が出たりして、“ハッ”とする場合がある。また、話し. 声も、従来の高い声に男っぽい声が混じって、コントロールのきかない声になってく る。」*3. 0変声期の女子の声 r女児の場合は、初潮とも深い関係があるといわれているが、今までの、子どもらし いつやのある清純な声から、徐々につやがなくなり、柔らかさをもった大人っぽい感 じの声に変わってくる。」*3. 渡辺が記しているように、男子の場合は変声によって声がかすれたり、出づらくなった りする。このように変声期の声が不安定になる理由について、酒井は「変声は身体の発達 に伴って喉頭も急激に発達し、それにつれて声帯が一時的に強く前後に引っ張られ、.その ためにおきる充血が原因である」*4とし、また「変声が始まってか弓普通は2∼3週間から、. 長くても1∼2箇月で落ち着くものである。しかし完全に大人の声に落ち着くまでにはさら に期間が必要で、普通3箇月から6箇月あるいは1年位がかり…」*4と述べている。 このように、変声期というのは声帯がデリケートになっているため、出来るだけ負担の かからなレー. Aようにしなければならない。酒井は「この期間は声にとっては大変重大な時期. であるので、大声で叫んだり長時間歌い続けるということのないよう、喉を大切にいたわ る心掛けが必要である。」*5と言及している。. n辺陸雄『児童期・変声期・成人へつながる発声と合唱の指導』音楽之友社、1983,. *3. P.87 *4. 井弘『新版 発声の技巧とその活用法』音楽之友社、1974,p.147. *5. 井弘『新版 発声の技巧とその活用法』音楽之友社、1974,p.147 10.
(13) 第二章 児童発声の目指すところ. 第1節 小学校学習指導要領成立以前の児童発声について. 第一章第2節では、児童発声の特徴について述べてきた。本章ではその目指すところに ついて、小学校学習指導要領(音楽)における発声に関する用語の変遷に着目しながら述. べる。そのために、第1節では小学校学習指導要領成立以前の児童発声についてまとめて おくこととする。. 1872(明治5)年に学制が制定された。音楽科としてはr唱歌」という教科が位置づけ られ、ここから近代日本の学校音楽の歴史が始まることとなる。. ○明治期の児童発声. 岩崎は明治期の児童の歌声について、r日本音楽の表声(地声)を旨とした歌い方だった と思われます。」‡1と記している。また「日清、日露の戦争を背景に小学校でも軍歌が盛ん. に歌われるようになり、その影響で、大声にせよ学校の歌を楽しんで歌うことが定着して いったのです。」‡1とも記している。これら二つの記述から分かるように、明治期の子ども の歌声は、地声かつ大声を張り上げるものであったと考えられる。. ○大正期の児童発声 岩崎は大正期の児童の歌声について、「強声で歌ってきた明治期の児童の歌声は、大正期 を迎え、デモクラシー運動と符合して音楽陶冶が唱えられ、「頭声発声」「中声発声」が提 唱されます。」‡2と述べている。また岩崎は、頭声発声を唱えた草川宣雄の主張と、中声発 ヰ1. ヰ2. 竝阯m一r小学生の発声指導を見直す』古楽之友社、・…、。.…. 竝阯m一『小学生の発声指導を見直す』音楽之友社、1997,p.104 11.
(14) 声を唱えた福井直秋の主張とを比較し、以下のように述べている。. 「二人に共通するところは、胸声を良しとしないで弱声で歌わせたことで、高音域から. 下降形を使った発声指導は、胸声、すなわち地声が使えない裏声を使った発声だったと 思われます。こうした考えは他の指導者にも広がりを見せ、弱く柔らかく歌わせれば、. 児童の声に誤りを起こすことが少ないとした点で一致しています。しかし、声を弱く歌 わせれば良いのだと曲解されたところがあり、弱々しい声で歌わせる歌い方がひろがっ たのでした。」北3. つまり、明治期の軍歌を歌うことに適した地声かつ強声による児童発声の実態から脱却 するために、児童の音声陶冶に適した裏声発声が提唱されることになったと解釈すること ができる。しかし上に抜粋したとおり、r声を弱.く歌わせれば良いのだ」という誤った認識 が学校教育の場に広がったということにも着目しておきたい。. ○昭和初期め児童発声 岩崎は昭和期の児童発声について、「弱く歌えば良いとした発声は見直しを迫られ、単な る弱い声ではなく、音量のある発想にも配慮がなされた表現へと変わっていきます。」と記. している。大正期の裏声かつ弱声による発声から、徐々に音量の伴った発声へと陶冶され っっあったということを読み取ることができる。. しかしその後の太平洋戦争の戦時下において、児童発声の実態はまた明治期のような軍 歌に適した歌声へと逆戻りすることとなる。このことについて岩崎は、「戦争の拡大ととも. に、士気を鼓舞する軍歌調が要求され、音声陶冶をめざしてきた児童の発声は顧みられな くなったのです。」‡4としている。. ‡3. ‡4. 竝阯m一『小学生の発声指導を見直す』音楽之友社、1997,p.105 竝阯m一『小学生の発声指導を見直す』音楽之友社、1997,p,106 12.
(15) そして戦争が終わると学校教育は大きく転換し、学習指導要領(試案)が登場すること となる。. 13.
(16) 第2節 小学校学習指導要領(音楽)における発声に関する用語の変遷. 小学校学習指導要領の初版は、戦後商もない1947(昭和22).年に発表された。その後、. 1951(昭和26)年、1958(昭和33)年、1968(昭和43)年、1977(昭和52)年、1989 (平成元)年、1998(平成10)年と、ほぼ10年に一度のぺ一スで改訂を重ねた。そして 2011年度からは2008(平成20)年改訂版の学習指導要領に移行することとなっている。. それぞれの指導要領の中で用いられている発声に関する用語について次項の表にまとめ、 その変遷について後に述べることとする。. 14.
(17) 小学校学習指導要領. 1947(昭和22)年. 発声に関する用語 「自然な充実した発声」. 「自然な発声を重んじ、のどをつめないようにする」. 1951(昭和26)年改訂版. 「頭声発声」. r軽く頭上に抜けるような気持ちの発声」. 1958(昭和33)年改訂版. 「頭声的発声で歌う。」. 1968(昭和43)年 改訂版. 「頭声的発声で歌い、声域を広げること」. 「響きのある頭声的発声で珠い、声域を広げること」. 1977(昭和52)年改訂版. r呼吸の仕方に気を付けて頭声的発声で歌うこと。」. r呼吸の仕方に気を付けて響きのある頭声的発声で歌う こと。」. 1989(平成元)年 改訂版. r発音及び呼吸の仕方に気を付けて、頭声的発声で歌うこ と」. 「発音及び呼吸の仕方に気を付けて、豊かな響きの頭声的 発声で歌うこと」. 1998(平成10)年改訂版. r呼吸及び発音の仕方に気を付けて、自然で無理のない声 で歌う土と。」. r呼吸及び発音の仕方を工夫して、豊かな響きのある,白 然で無理のない声で歌うこと。」. 2008(平成20)年 改訂版. r呼吸及び発音の仕方に気を付けて、自然で無理のない歌 い方で歌うこと。」. 「呼吸及び発音の仕方を工夫して自然で無理のない、響き のある歌い方で歌うこと。」. ※ただし、1953(昭和28)年までは学習指導要領(試案)という名称。 15.
(18) 初版となる1947(昭和22)年の小学校学習指導要領(試案)には、児童の歌声について 「自然な発声を重んじ、のどをつめないようにする」と記されている。このことについて 岩崎は、「戦前の斉唱主体から、合唱を多く取り入れられるようになり、児童の発声はハー モニーする声が求められていきます。」と解釈している。ここにあるrハーモニーする声」. というのは、大正期に提唱された「頭声発声」や「中声発声」といった裏声による発声法 のことを指していると考えられる。. 第1次改訂が行われた1951(昭和26)年の小学校学習指導要領(試案)には、児童の「よ い発声」について以下のように記されている。. 「児童の発声は、だいたい頭声発声を主体として指導するのがよい。これはことさらに、. のどで声を作ろうとするのでなく、軽く頭上に抜けるような気持ちの発声であって、特 に、地声で高い声を張り上げたり、叫び声で歌ったりすることは、努めて避けさせなけ ればならない。(中略)この際注意して避けなければならないことは、首に青筋を作った. りして無理な力がはいったり、また、その指導の初期に強い声を期待したりすることで あって、じゅうぶん児童がその要領を得てから鼻腔(くう)に美しく響かせ、そして音域の 拡張に努めさせることがよい。」. ここで目をひくのはr頭声発声」という用語である。このとき初めて頭声発声という用 語が学習指導要領上で用いられ、公に位置づけられたのである。頭声発声の意味合いとし ては、「軽く頭上に抜けるような気持ちの発声」というように記されている。しかし岩崎は. 頭声発声に対する当時の解釈について「頭声発声に対する理解は浅く、弱声の唱法だと考 える傾向が強い状況でした。」と述べている。このことについて、大正時代に頭声発声とい う用語は音量を減少させ柔らかく歌わせるための対処的用語として用いられ、叫声をなく. すための一つの方法として考えられていたことや、学習指導要領上に「…この際注意して 避けなければならないことは、(中略)…その指導の初期に強い声を期待したりすること」. 16.
(19) という記述があったことが誤った解釈の原因になったのではないかと、私は捉えている。. このように、昭和20年代は地声で歌うことをタブーとし、裏声による頭声発声の指導を 行ってきた。しかし、頭声だけでは低音域の響きが充実しないということを問題視してい たことは明らかで、岩崎は「昭和20年代のできるだけ胸声を使わせない頭声発声指導から、. 昭和30年代になると、頭声だけで歌うことは生理的に不自然で、胸声も混ざり合っている 声が児童本来の発声とする意見が多く見られるようになりました。」と述べている。. そこで1958(昭和33)年の学習指導要領改定では、r頭声発声」に代わってr頭声的発声」. という発声用語が記されるようになった。頭声的発声とは、第一章第1節にも述べたとお り、頭声区に属する音は頭声で歌い、胸声区に属する音は頭声に近い響きをもった胸声で 歌うことを意味する。胸声を用いることによって、頭声だけでは音量に乏しいという点を 回避することができるのである。また、頭声へ移行するための発声法として考えられてい た。. 1968(昭和43)年の改定では「頭声的発声で歌い、声域を広げること」や「響きのある頭 声的発声で歌い、声域を広げること」という記述に、1977(昭和52)年の改訂では「呼吸 の仕方に気を付けて頭声的発声で歌うこと。」や「呼吸の仕方に気を付けて響きのある頭声 的発声で歌うこと。」という記述に、そして1989(平成元)年の改訂では「発音及び呼吸の. 仕方に気を付けて、頭声的発声で歌うこと」や「発音及び呼吸の仕方に気を付けて、豊か な響きの頭声的発声で歌うこと」という記述に変更された。しかしこの「頭声的発声」と いう発声用語は約40年にも渡って長く公のものとして学習指導要領上で提示され続け、児 童発声の目標となっていたことが分かる。. しかし1989(平成元)年の改訂の小学校学習指導要領にはr発声の指導については、頭 声的発声を中心とするが、楽曲によっては、曲想に応じた発声の仕方を工夫するようにす ること。」という記述が加えられている。近年教科書には多岐にわたる歌唱教材が載るよう. になり、頭声的発声だけでは全ての歌唱教材を歌いこなすことはできなくなってきたとい うことが分かる。. 17.
(20) そうした流れを汲み、1998(平成10)年改訂の小学校学習指導要領では長く用いられてき た「頭声的発声」という用語は消え、「呼吸及び発音の仕方に気を付けて、自然で無理のな い声で歌うこと。」や「呼吸及び発音の仕方を工夫して、豊かな響きのある,自然で無理の. ない声で歌うこと。」という表現に変更された。また2011年度から実施される2008(平成 20)年改訂の小学校学習指導要領においても、「呼吸及び発音あ仕方に気を付けて、自然で 無理のない歌い方で歌うこと。」一や「呼吸及び発音の仕方を工夫して自然で無理のない、響 きのある歌い方で歌うこと。」という言い回しが用いられている。. ここで着目しておきたいのは、・あくまで発声指導の中心は頭声的発声であるべきだとい. う点である。1989(平成元)年の改訂の小学校学習指導要領にr発声の指導については、 頭声的発声を中心とするが、楽曲によっては、曲想に応じた発声の仕方を工夫するように すること。」と記された経緯を考慮すれば、明記はされていないが、現行の学習指導要領下. や2011年度より実施の学習指導要領下においても、頭声的発声で歌唱することを目標とし て発声指導することが望ましいと解釈できる。. 18.
(21) 第三章 児童発声の現状. 第1節 フイ』ルドワーク【岡山市立K小学校コーラス部の活動観察】から. 第二章では児童発声の目指すところについて、文献や歴代の小学校学習指導要領(音楽). を参考にして述べた。これに対し第三章では、現在の児童発声がどのような状態にあるの かについて述べていく。. そのための方法として、フィールドワークを行うこととした。学校教育において授業と しての音楽科では、歌唱だけでなく器楽、音楽づくり、鑑賞といった分野も扱っており、 また授業数も限られているため、毎回十分な歌唱指導が出来るというわけではない。」方、. 授業よりも比較的時間をかけ集中的に歌唱指導が成されている音楽活動として、部活動で の合唱を挙げることができる。特別な訓練を受けた者が集まっているのではなく、あくま で学校教育の中で行われている活動であるため、音楽科の授業の延長線上にある発展的な ものとして位置づけても差し支えないと考えられる。. そこで観察の的を部活動として行われている合唱に絞り、参考文献としている『うら声. から歌声へ 初めての歌声づくり』の著者である藤原勇が赴任している岡山市立K小学校. コーラス部の活動観察と、NHK全国学校音楽コング]ルの観察をすることにした。本節 では、岡山市立K小学校コーラス部の活動観察をもとにして児童発声の現状について述べ ることとする。. 19.
(22) (1)活動内容. ○岡山市立K小学校コーラス部について. 顧問… 音楽専科の乙倉寧子 部員…. 3∼6年生、約50人が参加している. ○観察日時 0場所. 2009年7月31目(金) 9:00∼11:45. 岡山市立K小学校 体育館・教室(I・■). ○練習の目的 2009年8月11日(火)に行われるNHK全国学校音楽コンクール 岡山県大会に向けての練習. 時間. 活動内容. 9:00∼. 出欠確認、お語. 9:10∼. ストレッチ、体ほぐしの運動. 9:20∼. 発声練習. 9:30∼. 休憩、教師打ち合わせ. 9:40∼. 自由曲「春に」の練習. 3グループに分かれて、ローテーション練習 ① 主に表現に関する指導(2パート)…. 体育館にて. EX.1 「♪この気持ちはなんだろう∼」の「この気持ち」ってど んな気持ち?. 20.
(23) Ex,2 クレッシェンドやf f,pなど意識して歌う. Ex.3ハーモニーの確認 ② 歌詞に関する指導(1パート)… 教室Iにて 国語が得意な先生に歌詞の読み聞かせをしてもらう 好きな言葉、作者の心の色、分からない言葉等を文字や絵で自由 に書く. ③ ②のパートの児童のうち、努力が必要な者への少人数指導 … 教室■にて 表情や音程、発声や口の開け方など個別に指摘して指導する → 指導後、最終オーディション. 11:10∼. 歌詞を読んでみる. パートごとに、自分たちで考えた身振り手振りを交えて歌詞を表現豊かに読 む. ※③のグループに呼ばれたものは最終オーディションを受ける. 11:25∼. オーディションの結果発表. 11:35∼. 最後に全員で課題曲「夢の太陽」と自由曲「奉に」を歌う. 11:45∼. 終礼、解散. 21.
(24) (2)練習を観察して. この日の練習はNHK全国学校音楽コンクール岡山県大会まで1O目程しかないという ことで、歌詞の理解や表現に関する指導に力を入れているようだった。練習の冒頭で行 った発声練習にかける時間も思ったよりは短く、簡素なものだったように感じた。しか しストレッチ後の体ほぐしの体操で十分に身体が温まってほぐれていたためか、その後 よく声が出ていたので、発声練習が不足しているようには感じられなかった。. 発声について述べると、高音部の裏声発声はソプラノパートの多くの児童ができてい た。しかし声が目立ってしまう児童が数名見られ、そのことによって全体の響きがまと まっていないように聴こえた。声が目立ってしまう原因としては、正確な音程で歌えて いないこと、地声で高音域の音を無理矢理歌おうとしていること、裏声がまだ十分に訓 練されていないこと等が原因であろうと考えられる。また高音域の音を何とか地声で出 せたとしても、苦しそうに聞こえ、周囲の音から特に突出して聞こえていた。この地声 の気になる児童に対しては、休憩時間に教師が軽く声がけをしていた。メゾやアルトパ ートの児童は、基本的には響きのある地声で歌っていた。ソプラノパートの児童も、低 音域は響きのある地声であった。また課題曲「夢の太陽」と自由曲「春に」とでは、曲 想に合わせて音色の異なった声を使い分けていたところが印象的であった。. 3つのグループに分かれてローテーション練習をする際に、各パートの努力が必要な 児童への指導は、私立中学校で非常勤講師をしている女性が行っていた。市から派遣さ. れ、サポーターのような形でK小学校コーラス部の合唱指導に加わっているそうだ。こ の女性は声楽を専門としており、表情や音程、発声や口の開け方などを中心に個別に指 摘・指導していた。苦手な部分を何度も繰り返し練習することによって、何人かの児童 は最初よりも正しい音程で歌うことができるようになったり、弱々しい裏声から音量の ある裏声へと変わることができたりしていた。. また体育館での指導の際、藤原がアルトパートの児童たちの前に立ち、裏声発声による. 22.
(25) 範唱をしながら指導している場面が見られた。藤原の著書には、次の記述がある。. r女性の指導者がうら声を響かせて頭声で歌うことはとても易しいことでしょう。しか し、話声と歌声の差が男性の場合より小さいと思います。また、普段頭声で話す人もいる でしょう。…(中略)…歌は歌声で歌うんだということを身をもって示すという意味では、. もしかすると女性の指導者より男性の指導者の方がちょっぴり有利がもしれません」*I. rr歌声』=『うら声を響かせた歌声』のつもりで、意味を狭めて使っています」*2. つまり、話し声と歌声の差が大きいという男性指導者の有利な部分を活用しようとする 意図が藤原にはあり、それがこの指導場面で行わ札でいたのである。 また、ソプラノパートのある男子児童に声をかけてみると、以前はアルトパートで歌っ ていたが、最近ソプラノパートで歌うことにしたのだという。ソプラノパートの方が歌い やすいのだと言っていた。彼はまだ変声しておらず、裏声で歌うことに違和感はないとい う旨のことも言っていた。. 練習後、藤点と乙倉に「変声後の男児はどのパートに入れているのか」という質問をす. ると、裏声で歌うのか1オクターブ低く歌うのかは教師が決めるのではなく、子どもの判 断に任せているということだった。. また指導用語についてだが、「裏声」という単語は練習中一度も使っているところを耳 にしなかった。r話し声衿歌声」、r地声く⇒そうじゃない声」という言いまわしを使ってい. た。つまり、K小学校では「歌声」や「地声じゃない声」もしくは「話し声じゃない声」 という言い回しをつかってr裏声」・の意味を指し示しているということである。また高音 域の声を出す時のイメージとして、具体的には「胸を張る感じ」、「空気を入れると弾む感 じ」、「高いけど低いイメージ」、r高くとぱす感じ」、「花に水やりをする時に、ホースをギ. *1. *2. @藤原勇『うら声から歌声へ はじめての歌声づくり』サーベル社、2008,p.14 @藤原勇『うら声から歌声へ はじめての歌声づくり』サーベル社、2008,p.17 23.
(26) エッとする感じ」などの例えを用いて、裏声発声の指導をしているということである。. 藤原は、身近にモデルがあるかどうかが裏声発声を定着させる要因になりうると考えて いる。それは例えばコーラス部ρ児童がクラスの歌声の核となったり、下の学年の児童が 上の学年の児童の歌声を聴いで憧れたりすることによって、「歌声とはこういうものだ」. という文化を学校に根づかせるということである。また裏声発声の指導は学年があがって も基本的にやっていることは変わらず、発達段階に応じて無意識から意識化させていると 述べていた。. 24.
(27) 第2節 フィールドワーク【NHK全国学校音楽コンクールの観察】から. 次に本節では、NHK全国学校音楽コンクールの観察をもとに、児童発声の現状について 述べることとする。まず、筆者が鑑賞したコンクールを下に挙げる。. <会場で鑑賞したもの〉. ①2009年7月18日(土) 滋賀県コンクール. (小学校の部). 8月 5日(水) 兵庫県大会. (小学校の部). 8月 6目(木) 兵庫県大会. (中学校の部). 8月11日(火) 岡山県コンクール. (小学校の部). 8月19目(水) 京都府コンクール. (小学校の部). 8月21目(金) 大阪府コンクール. (小学校の部). 9月 6日(目) 近畿ブロックコンクール. (小学校の部). 〈テレビで鑑賞したもの>. ⑧2009年10月10目(土) 全国コンクール. (小学校の部). 最初に鑑賞した①滋賀県コンクール(小学校の部)では、裏声の音域になっても音量が. 落ちず、地声にも若干響きが感じられたA小学校が金賞を受賞した。逆に裏声の音域にな ると極端に声量が落ち、声区のチェンジがあからさまに分かるB小学校は銅賞という結果 になった。また地声で高音域の音を出そうとするため、下降形の旋律の音程がことごとく ずれてしまっていたことがとても印象深かった。. 次に②兵庫県大会(小学校の部)を鑑賞したが、評価の良かった小学校に共通して言え 一ることは、裏声発声がよく訓練されているという点である。中音域から低音域にかけても、. 裏声発声ではないようだが豊かな響きが感じられた。また③兵庫県大会(中学校の部)と. 25.
(28) 比較すると、音色の違いに驚かされた。小学校の部では澄んだ響きのある甲高い子どもの 声といった印象を持ったが、中学校の部では一転して充実した響きで芯のある声といった. 印象を持った。この音色の顕著な違いは、第一章第3節で触れた変声によって生じたもの であると考えられる。. 続く④岡山県コンクール(小学校の部)でも、裏声発声がいかに訓練されているかとい う点が評価に大きく影響していると感じた。特に金賞を受賞したC小学校は、個が目立つ のではなく一つのパートとしてよくまとまって聞こえ、柔らかく美しいハーモニーとなっ ていた。. 次に⑤京都府コンクール(小学校の部)を鑑賞したが、コンクール誌の審査員評価でも 触れられていた通り、多くの小学校で声が出来上がっておらず、発声の習得に時間と努力 を費やすべきだと感じた。大人の声を目指すのではなく、曲を表現できる声を目指すよう にとも指摘されていた。. さらに⑥大阪府コンクール(小学校の部)も鑑賞した。金賞を受賞したD小学校は、響 きが前頭に当たったようなはっきりとした裏声で、子どもらしい澄んだ響きのハ]モニー をつくり出していた。また、アルトパートが低音域の音を話し声に近い地声で歌ったがた めにハーモニーがきたなくなってしまった小学校もあった。. ⑦近畿ブロックコング]ル(小学校の部)へは各都道府県の上位校が参加しており、ど の小学校においても無理なく裏声で歌唱することはできていた。全体の響きが一つにまと まっているか否かと、歌声の音色とが、評価に差をつけたのではないかと筆者は捉えてい る。歌声の音色については、大きく二つのタイプに分類することができる。一つは中学校 の部の女声合唱の響きに似た厚みのある音色で、もう一つは素朴で澄んだ響きのある音色. 26.
(29) である。前者のタイプの音色だった小学校が金賞、銀賞に揃って入賞していたため、前者 のタイプの方がこのコンクールで良い評価を得ていたように感じられる。. ⑧全国コング]ル(小学校の部)で特に気になったのは先に記した点の他に、響きの明 るさ、低音域でも響きが豊かであること、子音がそろっていることといった点である。コ ンクール後の講評では、母音「ウ」「オ」の発音に奥行きがなく響いていないとして、日本. 語の発音をもっと勉強すべきといった指摘があった。また小学生らしい選曲をし、基礎的 なところにカを入れてほしいということも指摘していた。. 27.
(30) 第四章 アンケート調査について. 第1節 調査の目的. 第三章では岡山市立K小学校コーラス部の活動観察とNHK全国音楽コンクールの観察 をもとに、児童発声の現状について述べた。. 本章では、裏声発声による歌唱ができることが変声期やその後の歌唱活動にどのような 影響を与えるのかについて考えたい。. そこで小学校・中学校と歌唱指導を受けてきた高校生以上の人を調査対象としてアンケ ートを実施することとした。そこから読み取れるr現在の自分の歌声に関する意識」とr過 去の自分の歌声に関する意識」とを比較することによって、「裏声発声」、「歌唱」、「音楽へ. の積極性」、r変声期」にそれぞれ関連性があるのかを考察する。. 28.
(31) 第2節項目について. アンケートは何度も修正を繰り返して作成した。その中で、様々な問題が起こった。本 節ではそのことについて、(A)回答者の基礎情報、(B)回答欄、(C)アンケートの項目 の3つに分け、それぞれ修正したり工夫したりした箇所を具体的に記述することとする。. (A)回答者の基礎情報 まず回答者の基礎情報として、以下の項目を用意した。 ①性別 ②教職経験の有無 ③年齢 ④音楽関係の習い事や活動歴の有無と具体的な年数. 年齢については、指導要領改訂の時期と照らし合わせて考察することができる。しか し具体的な数字を書くことに抵抗を感じる人がいるであろうということが予想される。 その点に配慮して、記述式ではなく、例えば「21歳∼25歳」、「26歳∼30歳」、…. と. いうように5歳分割の選択肢をあらかじめ用意し、該当の部分に○をつけてもらうとい う形式にした。このことによって、年齢についてより多くの回答を得ることができると 思われる。. また音楽関係の習い事や活動が、歌唱行動や自身の歌声に対する関心に影響している のではないかという観点から、④の項目を設けることとした。. (B)回答欄. アンケート項目は基本的に疑問形ではなく言い切りの形とし、その項目に記述されて. いる事柄に対して「5・4・3・2・1」の5段階で評価をする、あるいは「はい・い いえ」の2段階で評価をする。そしてそのあてはまる数字や言葉にOをつけるという回. 29.
(32) 答形式にした。5段階評価については次のように段階分けし、アンケート用紙に記入例 として明記しておいた。. 5…. かなりあてはまる. 4…. ややあてはまる. 3…. ξちらともいえない. 2…. ややあてはまらない. 1…. かなりあ七はまらない. また、回答が記述式になる項目はアンケート項目全体の中で3項目のみとし、できる 限り簡素化させて回答しやすいものとなるよう配慮した。. (C)アンケートの項目. アンケートの項目は、以下のように大きく3つに分類することができる。 I.. 現在の自分の歌声に関する質問. 1I.. 過去の自分の歌声に関する質問. 皿.. 現職教員に対する質問. 【Iについて】. Iでは、現在の自分の歌声に関する質問を10項目設けた。. 30.
(33) I.現在のご自身についてお答え下さい。 (1)日常生活の中で、好んで音楽を聴く。 (2)歌うことが好きだ。 (3)歌うことが得意だ。 (4) 「裏声」を知っている。. (5)裏声で歌うことができる。 (6)裏声で歌うことに抵抗はない。 (7) 「歌声」と「話し声」を使い分けている。. (8)歌った後に声がかれることがよくある。 (9)よくカラオケに行く。. (10)男性だけでなく、女性にも声変わりがあることを知っている。. 特に説明が必要なところについて、以下に挙げる。. (4)について…. 岡山市立K小学校コーラス部の活動観察に行った際、裏声とい. う用語は教育の現場ではあまり用いられないのではないかとい う指摘があった。そのため、裏声という用語に馴染みのない人 がいるであろうということに考慮して、(4)に裏声を知ってい るか否かを質問する項目を設けた。. (9)について… 今日ではカラオケが全国的に普及し、歌う機会の大部分がカラ オケであるという人も少なくない。しかしカラオケでポピュラ 一音楽を歌うときの発声法と一、学校教育で使われている発声法. とでは、同一のものではない場合が多い。そのため(9)にカ ラオケに行く頻度についての設問をすることとした。. (10)について…. Ilの中で変声についての設問があるのだが、女性は自身の変声. 31.
(34) に気づかない場合が多く、変声について間う項目に違和感を覚 える人が多くいるであろうと考えられる。そのため、(10)に 女性にも変声があるという項目を設けて、この事実を暗に示し て前置きしておくこととした。. 【1Iについて】. ■では、過去の自分の歌声に関する質問を16項目設けた。. 32.
(35) lI.過去のご自身についてお答え下さい。. 【i.小学校低学年(1∼3年生)の頃】 (1) 日常生活の中で音楽に接することを好んでいた。 (2) 音楽科の授業が好きだった。 (3) 歌うことが好きだった。 (4) 音楽科の授業で歌唱する時、教師は裏声に関する指導をしていた。 【五.小学校高学年(4∼6年生)の頃】 (5) 日常生活の申で音楽に接することを好んでいた。 (6) 音楽科の授業が好きだった。 (7) 歌うことが好きだった。 (8) 音楽科の授業で歌唱する時、教師は裏声に関する指導をしていた。 【血.中学生の頃】. (9) 日常生活の中で音楽に接することを好んでいた。 (10) 音楽科の授業が好きだった。 (11) 歌うことが好きだった。 (12) 音楽科の授業で歌唱する時、教師は裏声に関する指導をしていた。 【iV.声変わり(変声)した頃】. (13) 声変わり(変声)が起こったことに気づいた。 →それはいつ頃でしたか? (14) 変声期以前に裏声で歌うことができた。 (15) 変声期に歌唱する際、裏声で歌うことを意識していた。. (16) 変声期やその前後に困ったこと等、記億に残っていることを自由に 記入して下さい。. 33.
(36) 特に説明が必要なところについて、以下に挙げる。. (1)∼(4)、(5)∼(8)、(9)∼(12)について …. これらはそれぞれ同一の質問内容となっていて、「小学校低学年 (1∼3年生)の頃」、r小学校高学年(4∼6年生)の頃」、「中. 学生の頃」の3つの時期に分けて回答できるようにした。これ は、変声期とその前後を明確に区別するためである。そうする. ことによって、過去の自分の歌声に関する意識の変化と変声期 との関連性が、把握しやすくなるのではないかと考えられる。. (13)について… 用語としてr声変わり」=r変声」ということを知らない人や、 どちらか一方の用語しか知らない人がいるとし)うことが予想さ. れる。また、(14)以降ではr変声期」という用語も用いる。 用語の統一性をはかるために、(13〉では「声変わり(変声)」. という書き方をし、これら二つの用語が同一の事象を指してい ることを示した。. (16)について…. 当初はr変声期に困ったこと等、記憶に残っていることを自由. に記入してください。」という質間内容にしていた。しかし変声. 期の最中だけでなくその前後の時期においても、歌唱や発声に 困難を覚える可能性はある。そのため「変声期とその前後に困 ったこと等、… (以下同文)」という内容に修正して、質問の. 封家となる時期の幅を広げることにした。. 【皿について】. 皿では、現職教員の人のみを対象として質問を3項目設けた。. 歌唱指導や子どもたちの歌唱行動の現状について、フィールドワークで得た情報だ けでなく、少しでも多くの教育現場の声を聞くことを目的としている。. 34.
(37) 皿.現職教員の方のみ以下の質問にお答え下さい。. (1)歌唱指導をする機会がありますか? (2)【→皿一1で「はい」と回答の方】. 児童・生徒に裏声による歌唱の指導をしている。 (3)赴任されている学校の子どもたちはどのような声で歌っていますか? (自由記述). 特に説明が必要なところについて、以下に挙げる。 (2)について・. ・・. 柾奄虫剴カ・生徒に裏声で歌うことを教えることができる」と. いう質問内容にしていたが、現在実際に行っているのかどうか という意味合いを強めるために、r児童・生徒に裏声による歌唱. の指導をしている」という内容に変更した。また、歌唱指導を する機会のない教師もいることが予想される。より正確なデ] タをとるために、(1)に「歌唱指導をする機会がありますか?」. という質問を設問することとし、(1)の質問にrはい」と答え た人にだけ(2)の質問に答えてもらうこととした。. 35.
(38) 第3節 実施方法. 本アンケート調査を実施する際、幅広い年齢層に対して行えるように配慮した。 20歳代前後の回答としては、本学学部生・大学院生を中心に集めることができた。. また筆者が団員として参加しているK合唱団にもアンケートヘの協力を依頼した。K合 唱団は、老若男女間わず音楽経験のない者でも気軽に参加できる地域の合唱団である。団 員は特に50歳代∼60歳代が多く、その年代を中心としてたくさんの回答を回収することが できた。. 教職経験者としては、本学大学院生の他に加東市立Y小学校の現職教員にも協力しても らい、20歳代∼50歳代からの回答を多く集めることができた。. 36.
(39) 第4節 結果. アンケートの結果は表にまとめ、論文未に資料として載せることとする。その際、各回 答者の回答を!ぺ一ジにおさめることができないため、以下の通り分割して記載する。. ぺ一ジ数. 内容. 1∼10ぺ一ジ. 下記の設問以外の結果. 11∼12ぺ一ジ. Il一(16)の結果. 13∼14ぺ一ジ. 皿一(3)の結果. ※■一(16)と皿一(3)は自由記述の設問である。. なお、各へ一ジの最も上の欄は設問番号(もしくは設間内容)欄、最も左の欄は回答者 番号とし、ともに鯛かけをしておく。. また、回答者が未回答のままの設問については、空欄にしておくこととする。ただし、 11∼14ぺ一ジについては回答のあったもののみ記載し、未回答のものは空欄として残さず、 省略することとする。. 以下、アンケート結果を表にするにあたって特筆すべき点について述べる。. ○音楽活動の欄. r音楽関係の習い事や活動をしたことがありますか?」という設問にrはい」と回答し た場合、具体的な内容と年数を回答してもらっているので、「音楽活動」「内容」「年数」の. 三つの欄に分けて載せることとする。「内容」欄に複数のものを挙げていて、さらにそれら. がそれぞれ何年間なのか分かる場合は、記した順番どおり対応しているものとする。次頁 に例を挙げておく。. 37.
(40) 例:. 内容. 年数. ピアノ、合唱. 6年、3年. =ピアノを6年間、合唱を3年間、それぞれ習ったり活動したりしている (していた)ということ. ○年齢の欄 表を見やすくするため、年齢については以下の通り表記する。 表記. 年齢. 1. 20歳以下. 2. 21∼25歳. 3. 26∼30歳. 4. 31∼35歳. 5. 36∼40歳. 6. 41∼45歳. 7. 46∼50歳. 8. 51∼55歳. 9. 56∼60歳. 10. 61∼65歳. 11. 66∼70歳. 12. 71∼75歳. 13. 76∼80歳. 14. 81歳以上. 38.
(41) O■一(13)について 「声変わりが起こったことに気づいた」という設問と、その設問に「はい」と回答した 人には「それはいつ頃でしたか?」という設問があるので、欄を二つに分けて載せる。な. お、後者の設間の設問番号欄にはrいつ?」と記載しておく。また、この設問にr覚えて いない」と回答した場合は記号で「×」とつけ、未回答の場合は空欄とする。. 39.
(42) 第5節考察 本節ではアンケートの結果について考察する。. アンケートは男性48人、女性77人、計125人から回収することができた。年齢の内訳 は、以下の表の通りである。. 20歳. 21∼. 26∼. 31∼. 36∼. 41∼. 46∼. ネ下. Q5歳. R0歳. R5歳. S0歳. S5歳. T0歳. 男性. 3人. 13人. 4人. 4人. 6人. 4人. 4人. 女性. 5人. 21人. 5人. 5人. 3人. 4人. 6人. 計. 8人. 34人. 9人. 9人. 9人. 8人. 10人. 51∼. 56∼. 61∼. 66∼. 71∼. 76∼. 80歳. T5歳. U0歳. U5歳. V0歳. V5歳. W0歳. ネ上. 男性. 5人. 3人. 1人. ○人. 1人. 0人. 0人. 女性. 7人. 7人. 8人. 2人. 2人. 1人. 1人. 計. 12人. 10人. 9人. 2人. 3人. 1人. 1人. 考察するにあたって、5段階評価を以下の3段階評価に分かりやすくまとめて考えること とする。. ○. 5「かなりあてはまる」、4「ややあてはまる」. △. 3「どちらともいえない」. ×. 2「ややあてはまらない」、1「かなりあてはまらない」. なおパーセンテージについては、小数第一位を四捨五入して整数で表示する。. 40.
(43) はじめに、I1の【i.小学校低学年(1∼3年生)の頃】、【i.小学校高学年(4∼5年生) の頃】、【血.中学生の頃】でそれぞれ対応する項目について比較する。. ◆■■(1)、II一(5)、一II一(9)の比較. 設問:r日常生活の中で音楽に接することを好んでいた。」. O 小学校低学年. 小学校高学年. 中学生. △. ×. 67人(56%). 29人(24%). 24人(20%). 男性15人(31%). 男性16人(33%). 男性17人(36%). 女性52人(72%). 女性13人(18%). 女性7人(10%). 85人(69%). 25人(20%). 14人(11%). 男性21人(44%). 男性14人(29%). 男性13人(27%). 女性64人(84%). 女性11人(15%). 女性1人(1%). 89人(72%). 26人(21%). 8人(7%). 男性25人(52%). 男性17人(36%). 男性6人(12%). 女性64人(85%). 女性9人(12%). 女性2人(3%). 学年があがるにつれて音楽に接することを好む者が増え、音楽への関心が徐々に高 まっていることが分かる。男女の数字を比較すると、女性の中では幼い頃から音楽に 接することを好んでいる者が多いのに対して、男性は中学生の頃になってやっと半数 が関心を示すようになる。. 41.
(44) ◆lI一(2)、1I■(6)、1I一(10)の比較 設問:「音楽科の授業が好きだった。」. ○. 小学校低学年. 小学校高学年. 中学生. △. 20人(16%). 83人(67%). ×. 21人(17%). 男性21人(44%). 男性12人(25%). 男性15人(31%). 女性62人(81%). 女性8人(11%). 女性6人(8%). 88人(70%). 19人(15%). 18人(15%). 男性24人(50%). 男性9人(19%). 男性15人(31%). 女性64人(83%). 女性10人(13%). 女性3人(4%). 85人(68%). 22人(18%). 18人(14%). 男性22人(46%). 男性12人(25%). 女性63人(93%). 女性1人(1%). 男性14人(29%) 女性4人(6%). 学年があがっても、音楽科の授業に対する態度に大きな変化は見られない。しかし 男女差は大きく、女性の8割以上が音楽科の授業が好きだったと回答したのに対し、 男性はその半数種しかいない。. 42.
(45) ◆■’(3)、■■(7)、1I凹(11)の比較 設問:「歌うことが好きだった。」. <全体>. 小学校低学年. 小学校高学年. 中学生. O. △. ×. 77人(62%). 26人(21%). 21人(17%). 男性18人(37%). 男性13人(27%). 男性17人(36%). 乱ォ59人(78%). 乱ォ13人(17%). 乱ォ4人(5%). 82人(67%). 23人(19%). 18人(14%). 男性24人(50%). 男性9人(19%). 男性15人(31%). 乱ォ58人(77%). 乱ォ14人(19%). 乱ォ3人(4%). 84人(68%). 24人(20%). 15人(12%). 男性24人(50%). 男性13人(27%). 男性11人(23%). 乱ォ60人(80%). 乱ォ11人(15%). 乱ォ4人(5%). 「歌うことが好きではなかった。」と答える男性の割合が、学年が進むにつれて増加す. るだろうと予想していたのだが、大きな変化は見られず、むしろその割合は若干ではあ るが減少した。また、全体としても学年間の大きな変化は見られなかった。そして前二 つの設問と同様、男女間の意識の差は大きい。. ◆1I一(4)、1I一(8)、II一(12)の比較 設問:r音楽科の授業で歌唱する際、教師は裏声に関する指導をしていた。」 <全体>. O. △. ×. 小学校低学年. 13人(11%). 34人(28%). 75人(61%). 小学校高学年. 35人(29%). 32人(26%). 56人(45%). 中学生. 56人(45%). 23人(19%). 44人(36%). 43.
(46) この設問は個人の意識に関するものではなく、小中学校で受けた歌唱指導に関する ものなので、男女に分けて比較する必要はないものとする。. 低学年で裏声発声の指導を受けたのは11%程度だったが、高学年では29%、中学校 では45%と、徐々に増えている。しかしながら、中学生になっても裏声発声の指導を 受けていない者が36%いるということも着目しておきたい。. 次に裏声による歌唱指導の実態について、現職教員の回答を参考にしながら考察する。. ◆皿一(2)と皿一(4)、(8)、(12)との比較 設問:r児童・生徒に裏声による歌唱の指導をしている。」. △. 11人(38%). 8人(28%). 10人(34%). また、r(自身が小中学生だった頃)音楽科の授業で歌唱する時、教師は裏声に関する 指導をしていた。」という設問への回答は以下の通りである。. 皿一(2)で O(二裏声による歌唱の指導をしている)とした11人の回答 ○. △. ×. 小学校低学年. 1人(9%). 3人(27%). 6人(55%). 小学校高学年. 4人(36%). 3人(27%). 3人(27%). 中学生. 7人(64%). 3人(27%). 1人(9%). 44.
(47) 皿一(2)で ×(:裏声による歌唱の指導をしていない)とした10人の回答 .○. △. ×. 小学校低学年. 0人(0%). 2人(20%). 8人(80%). 小学校高学年. 2人(20%). 2人(20%). 6人(60%). 中学生. 3人(30%). 3人(30%). 4人(40%). ここから分かるように、小中学生の時…こ裏声発声による歌唱の指導を受け、裏声で歌. う意識を持っていた者は、自身が教師となった時にも裏声発声による歌唱の指導を行う ことができる場合が多いという傾向が見られる。逆に小中学生の時に指導を受けていな ければ、なかなか裏声発声による歌唱指導を行うことができないという傾向も見られる。. ◆I一(5)、lI一(14)、1I一(15)について 設問:「裏声で歌うことができる。」. O. △. ×. 全体. 68人(55%). 26人(21%). 29人(24%). 男性. 21人(44%). 9人(19%). 18人(37%). 女性. 47人(63%). 17人(23%). 11人(14%). 設問:「変声期以前に裏声で歌うことができた。」. O. △. ×. 全体. 29人(25%). 39人(34%). 47人(41%). 男性. 1O人(22%). 10人(22%). 26人(56%). 女性. 19人(28%). 29人(42%). 21人(30%). 45.
(48) 設問:「変声期に歌唱する際、裏声で歌うことを意識していた。」. O. △. ×. 全体. 22人(20%). 34人(31%). 54人(49%). 男性. 5人(11%). 8人(17%). 34人(72%). 女性. 17人(27%). 26人(40%). 21人(33%). 変声期以前に裏声で歌う技術を身にっけていない男性は56%にも及んだ。また、変 声期に歌唱する際、裏声で歌唱することを意識している男性は、11%だけである。. またI一(5)とI1一(14)を比較すると、変声期以後に裏声で歌唱する技術を 身につける者が男性にも女性にも多くみられる。. また変声期に裏声で歌うことを意識していたと回答した22人は、I一(2)の「歌 うことが好き」という設問について以下のように回答している。 △. 19人(86%). 2人(9%). 1人(5%). このことから、変声期に裏声で歌うことができると、その後の歌唱活動に対する意 識に肯定的な影響が及ぼされる場合が多いということが読み取れる。. ◆I一(5)、I一(2)について 設問:「歌うことが好きだ。」. I一(5)で O(=裏声で歌うことができる)とした者の回答. O. △. ×. 全体. 61人(90%). 7人(10%). 0人(d%). 男性. 20人(95%). 1人(5%). 0人(0%). 女性. 41人(87%). 6人(13%). ○人(0%). 46.
(49) I一(5)で ×(=裏声で歌うことができない)とした者の回答. O. △. ×. 全体. 17人(59%). 5人(17%). 7人(24%). 男性. 9人(50%). 3人(17%). 6人(33%). 女性. 8人(73%). 2木(18%). 1人(9%). 裏声で歌うことができることと、歌うことが好きだということには、関連性が見う けられる。特に男性では裏声で歌うことのできる者のうち95%が歌うことが好きだと 回答している。. ◆I一(5)、I一(3)について 設問:「歌うことが得意だ。」. I一(5)で O(=裏声で歌うことができる)とした者の回答. O. △. ×. 全体. 36人(53%). 24人(35%). 8人(12%). 男性. 15人(71%). 6人(29%). 0人(0%). 女性. 21人(45%). 18人(38%). 8人(17%). I一(5)で ×(=裏声で歌うことができない)とした者の回答. O. △. ×. 全体. 5人(18%). 12人(41%). 12人(41%). 男性. 1人(5%). 6人(34%). 11人(61%). 女性. 4人(36%). 6人(55%). 1人(9%). 一っ前の設問と同様、裏声で歌うことができる男性は、歌うことが得意であると自 己評価する傾向が強い。しかし女性の場合、裏声で歌えることと自己の歌声への評価 との関連性は、男性よりも希薄なようである。. 47.
(50) おわりに. 第一章では、まずr裏声」やr地声」をはじめとする様々な発声に関する用語について、 定義づけを行った。また児童発声の特徴や変声期の「声」についても述べた。 第二章では小学校学習指導要領(声楽)における発声に関する用語の変遷に着目して、. 児童発声の目指すところについてまとめた。学習指導要領では1998(平成10)年の改訂以 降、「自然で無理のない声」という言い回しが用いられるようになったが、あくまで児童へ の発声指導の中心は頭声的発声、広く言えば裏声発声であるべきだと述べた。. 第三章ではフィールドワークをもとに、児童発声の現状について述べた。NHK全国学 校音楽コンクールのブロック大会や全国大会に臨むような子どもたちは裏声発声の技能を 身につけており、低音域でも豊かな響きをもった歌声で歌っていた。充実した裏声発声に よる歌声は全体の響きを一点に集中させ、明澄で美しいハ]モニーを作り上げていた。し かし地区大会では裏声発声を十分に習得できておらず、話し声に近い地声で歌う子どもた ちも多く見られた。このことから、各学校の音楽科の授業おいても裏声発声による歌唱指 導が行き届いていないところがあるというのが現状であろうということが想像される。. 第四章ではアンケート調査をもとに、裏声発声による歌唱ができることが変声期やその 後の歌唱活動にどのような影響を与えるのかについて考察した。変声期以前に裏声で歌う ことができたと記憶している者は全体の3割もおらず、.変声期に歌唱する際に裏声で歌う ことを意識していた者は全体の2書11にとどまった。しかし変声期に意識的に裏声で歌唱し. ていたものの多くは歌うことが好きだと回答しており、その後の歌唱活動に対する意識に 肯定的な影響が及ぼされている。これは変声期に限って言えることなのではなく、変声期 後に裏声発声による歌唱の技能を身につけた者であっても同様の結果が得られた。また男 性と女性とでは、音楽科の授業や歌唱行動に対する意識に大きな差が生じるということに も気づくことができた。. また第一章でも触れたとおり、裏声発声は地声発声と異なり声帯の辺縁部のみの振動で. 48.
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