男性
5人 3人
1人 ○人 1人0人 0人
女性
7人 7人 8人 2人 2人 1人 1人
計
12人 10人 9人 2人 3人 1人 1人
考察するにあたって、5段階評価を以下の3段階評価に分かりやすくまとめて考えること
とする。
○
△
×
5「かなりあてはまる」、4「ややあてはまる」
3「どちらともいえない」
2「ややあてはまらない」、1「かなりあてはまらない」
なおパーセンテージについては、小数第一位を四捨五入して整数で表示する。
はじめに、I1の【i.小学校低学年(1〜3年生)の頃】、【i.小学校高学年(4〜5年生)
の頃】、【血.中学生の頃】でそれぞれ対応する項目について比較する。
◆■■(1)、II一(5)、一II一(9)の比較
設問:r日常生活の中で音楽に接することを好んでいた。」
O
△ ×小学校低学年 67人(56%) 29人(24%) 24人(20%)
男性15人(31%) 男性16人(33%) 男性17人(36%)
女性52人(72%) 女性13人(18%) 女性7人(10%)
小学校高学年 85人(69%) 25人(20%) 14人(11%)
男性21人(44%) 男性14人(29%) 男性13人(27%)
女性64人(84%) 女性11人(15%) 女性1人(1%)
中学生 89人(72%) 26人(21%) 8人(7%)
男性25人(52%) 男性17人(36%) 男性6人(12%)
女性64人(85%) 女性9人(12%) 女性2人(3%)
学年があがるにつれて音楽に接することを好む者が増え、音楽への関心が徐々に高 まっていることが分かる。男女の数字を比較すると、女性の中では幼い頃から音楽に 接することを好んでいる者が多いのに対して、男性は中学生の頃になってやっと半数 が関心を示すようになる。
◆lI一(2)、1I■(6)、1I一(10)の比較 設問:「音楽科の授業が好きだった。」
○ △ ×
小学校低学年 83人(67%) 20人(16%) 21人(17%)
男性21人(44%) 男性12人(25%) 男性15人(31%)
女性62人(81%) 女性8人(11%) 女性6人(8%)
小学校高学年 88人(70%) 19人(15%) 18人(15%)
男性24人(50%) 男性9人(19%) 男性15人(31%)
女性64人(83%) 女性10人(13%) 女性3人(4%)
中学生 85人(68%) 22人(18%) 18人(14%)
男性22人(46%) 男性12人(25%) 男性14人(29%)
女性63人(93%) 女性1人(1%) 女性4人(6%)
学年があがっても、音楽科の授業に対する態度に大きな変化は見られない。しかし 男女差は大きく、女性の8割以上が音楽科の授業が好きだったと回答したのに対し、
男性はその半数種しかいない。
◆■ (3)、■■(7)、1I凹(11)の比較 設問:「歌うことが好きだった。」
<全体>
O △
×小学校低学年 77人(62%) 26人(21%) 21人(17%)
男性18人(37%)
乱ォ59人(78%)
男性13人(27%)
乱ォ13人(17%)
男性17人(36%)
乱ォ4人(5%)
小学校高学年 82人(67%) 23人(19%) 18人(14%)
男性24人(50%)
乱ォ58人(77%)
男性9人(19%)
乱ォ14人(19%)
男性15人(31%)
乱ォ3人(4%)
中学生 84人(68%) 24人(20%) 15人(12%)
男性24人(50%)
乱ォ60人(80%)
男性13人(27%)
乱ォ11人(15%)
男性11人(23%)
乱ォ4人(5%)
「歌うことが好きではなかった。」と答える男性の割合が、学年が進むにつれて増加す るだろうと予想していたのだが、大きな変化は見られず、むしろその割合は若干ではあ るが減少した。また、全体としても学年間の大きな変化は見られなかった。そして前二 つの設問と同様、男女間の意識の差は大きい。
◆1I一(4)、1I一(8)、II一(12)の比較
設問:r音楽科の授業で歌唱する際、教師は裏声に関する指導をしていた。」
<全体>
O
△ ×小学校低学年 13人(11%) 34人(28%) 75人(61%)
小学校高学年 35人(29%) 32人(26%) 56人(45%)
中学生 56人(45%) 23人(19%) 44人(36%)
この設問は個人の意識に関するものではなく、小中学校で受けた歌唱指導に関する ものなので、男女に分けて比較する必要はないものとする。
低学年で裏声発声の指導を受けたのは11%程度だったが、高学年では29%、中学校 では45%と、徐々に増えている。しかしながら、中学生になっても裏声発声の指導を 受けていない者が36%いるということも着目しておきたい。
次に裏声による歌唱指導の実態について、現職教員の回答を参考にしながら考察する。
◆皿一(2)と皿一(4)、(8)、(12)との比較 設問:r児童・生徒に裏声による歌唱の指導をしている。」
△
11人(38%) 8人(28%) 10人(34%)
また、r(自身が小中学生だった頃)音楽科の授業で歌唱する時、教師は裏声に関する 指導をしていた。」という設問への回答は以下の通りである。
皿一(2)で O(二裏声による歌唱の指導をしている)とした11人の回答
○
△
×小学校低学年 1人(9%) 3人(27%) 6人(55%)
小学校高学年 4人(36%) 3人(27%) 3人(27%)
中学生 7人(64%) 3人(27%) 1人(9%)
皿一(2)で ×(:裏声による歌唱の指導をしていない)とした10人の回答
.○ △ ×
小学校低学年 0人(0%) 2人(20%) 8人(80%)
小学校高学年 2人(20%) 2人(20%) 6人(60%)
中学生 3人(30%) 3人(30%) 4人(40%)
ここから分かるように、小中学生の時…こ裏声発声による歌唱の指導を受け、裏声で歌 う意識を持っていた者は、自身が教師となった時にも裏声発声による歌唱の指導を行う ことができる場合が多いという傾向が見られる。逆に小中学生の時に指導を受けていな ければ、なかなか裏声発声による歌唱指導を行うことができないという傾向も見られる。
◆I一(5)、lI一(14)、1I一(15)について
設問:「裏声で歌うことができる。」
O
△ ×全体 68人(55%) 26人(21%) 29人(24%)
男性 21人(44%) 9人(19%) 18人(37%)
女性 47人(63%) 17人(23%) 11人(14%)
設問:「変声期以前に裏声で歌うことができた。」
O
△ ×全体 29人(25%) 39人(34%) 47人(41%)
男性 1O人(22%) 10人(22%) 26人(56%)
女性 19人(28%) 29人(42%) 21人(30%)
設問:「変声期に歌唱する際、裏声で歌うことを意識していた。」
O
△ ×全体 22人(20%) 34人(31%) 54人(49%)
男性 5人(11%) 8人(17%) 34人(72%)
女性 17人(27%) 26人(40%) 21人(33%)
変声期以前に裏声で歌う技術を身にっけていない男性は56%にも及んだ。また、変 声期に歌唱する際、裏声で歌唱することを意識している男性は、11%だけである。
またI一(5)とI1一(14)を比較すると、変声期以後に裏声で歌唱する技術を 身につける者が男性にも女性にも多くみられる。
また変声期に裏声で歌うことを意識していたと回答した22人は、I一(2)の「歌 うことが好き」という設問について以下のように回答している。
△
19人(86%) 2人(9%) 1人(5%)
このことから、変声期に裏声で歌うことができると、その後の歌唱活動に対する意 識に肯定的な影響が及ぼされる場合が多いということが読み取れる。
◆I一(5)、I一(2)について
設問:「歌うことが好きだ。」
I一(5)で O(=裏声で歌うことができる)とした者の回答
O
△ ×全体 61人(90%) 7人(10%) 0人(d%)
男性 20人(95%) 1人(5%) 0人(0%)
女性 41人(87%) 6人(13%) ○人(0%)
I一(5)で ×(=裏声で歌うことができない)とした者の回答
O
△ ×全体 17人(59%) 5人(17%) 7人(24%)
男性 9人(50%) 3人(17%) 6人(33%)
女性 8人(73%) 2木(18%) 1人(9%)
裏声で歌うことができることと、歌うことが好きだということには、関連性が見う けられる。特に男性では裏声で歌うことのできる者のうち95%が歌うことが好きだと 回答している。
◆I一(5)、I一(3)について
設問:「歌うことが得意だ。」
I一(5)で O(=裏声で歌うことができる)とした者の回答
O
△ ×全体 36人(53%) 24人(35%) 8人(12%)
男性 15人(71%) 6人(29%) 0人(0%)
女性 21人(45%) 18人(38%) 8人(17%)
I一(5)で ×(=裏声で歌うことができない)とした者の回答
O
△ ×全体 5人(18%) 12人(41%) 12人(41%)
男性 1人(5%) 6人(34%) 11人(61%)
女性 4人(36%) 6人(55%) 1人(9%)
一っ前の設問と同様、裏声で歌うことができる男性は、歌うことが得意であると自 己評価する傾向が強い。しかし女性の場合、裏声で歌えることと自己の歌声への評価 との関連性は、男性よりも希薄なようである。
おわりに
第一章では、まずr裏声」やr地声」をはじめとする様々な発声に関する用語について、
定義づけを行った。また児童発声の特徴や変声期の「声」についても述べた。
第二章では小学校学習指導要領(声楽)における発声に関する用語の変遷に着目して、
児童発声の目指すところについてまとめた。学習指導要領では1998(平成10)年の改訂以 降、「自然で無理のない声」という言い回しが用いられるようになったが、あくまで児童へ の発声指導の中心は頭声的発声、広く言えば裏声発声であるべきだと述べた。
第三章ではフィールドワークをもとに、児童発声の現状について述べた。NHK全国学 校音楽コンクールのブロック大会や全国大会に臨むような子どもたちは裏声発声の技能を 身につけており、低音域でも豊かな響きをもった歌声で歌っていた。充実した裏声発声に よる歌声は全体の響きを一点に集中させ、明澄で美しいハ]モニーを作り上げていた。し かし地区大会では裏声発声を十分に習得できておらず、話し声に近い地声で歌う子どもた ちも多く見られた。このことから、各学校の音楽科の授業おいても裏声発声による歌唱指 導が行き届いていないところがあるというのが現状であろうということが想像される。
第四章ではアンケート調査をもとに、裏声発声による歌唱ができることが変声期やその 後の歌唱活動にどのような影響を与えるのかについて考察した。変声期以前に裏声で歌う
ことができたと記憶している者は全体の3割もおらず、.変声期に歌唱する際に裏声で歌う ことを意識していた者は全体の2書11にとどまった。しかし変声期に意識的に裏声で歌唱し ていたものの多くは歌うことが好きだと回答しており、その後の歌唱活動に対する意識に 肯定的な影響が及ぼされている。これは変声期に限って言えることなのではなく、変声期 後に裏声発声による歌唱の技能を身につけた者であっても同様の結果が得られた。また男 性と女性とでは、音楽科の授業や歌唱行動に対する意識に大きな差が生じるということに
も気づくことができた。
また第一章でも触れたとおり、裏声発声は地声発声と異なり声帯の辺縁部のみの振動で
発声できるため、喉への負担を軽くすることができる。そのため児童期の未成熟な発声器 官や変声期の炎症を起こしやすい発声器官でも、無理なく発声することが可能である。
ここまでに述べたとおり、裏声発声には様々な有用性がある。しかしながら第三章と第 四章の結果から分かるように、小中学校の音楽科の授業において裏声発声の指導が十分に 行われていないところが多々見られる。特に小学校低学年では61%もの人が裏声に関する 指導を受けていないという結果が出ている。
裏声発声による歌唱指導を小学校低学年のうちから継続的に行い、児童に裏声発声の確 かな技能を身につけさせることが今後の発声指導の課題であると考えられる。
近年、音楽科の教材として取り上げられるもののジャンルは多岐に渡っている。頭声的 発声だけでは表現しきれないというのはもっともではあるが、それが飛躍して裏声発声に
よる歌唱の指導は行わなくて良いという間違った解釈が広がりつつあるように思う。
しかし合唱する際に焦点が1点に集中した明徴なハーモニーを求めるのであれば、裏声 発声による歌唱は不可欠となる。また変声期に歌唱指導を継続的に行おうとするならば、
喉に負担をかけない裏声発声は重宝される。また本研究のアンケート調査により、裏声に よる歌唱ができるということは、その後の歌唱活動に対する意識に良い影響を及ぼすとい
うことが立証された。
したがって裏声発声による歌唱を指導することは有意義で依然として必要とされており、
今後も重要視されるべきである。
発声指導はすぐに実を結ぶものではなく一、継続的に行ってはじめてその技能を身につけ させることができるものである。そのためには、子どもの発達段階に応じて段階的に指導 していくことが必要となる。今後は裏声発声による段階的な歌唱指導法について、実際に 教育現場に立ち長い時間をかけて研究していきたい。