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直接原価計算による期間損益の意味

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(1)

直接原価計算による期間損益の意味  

田 中 嘉 穂  

Ⅰはじめに−一関  題   

従来,全部原価計算制度から得られる製品原価および期間原価のデータを使   って期間損益計算が行なわれる場合と,直接原価計算制度から得られる同様の   原価デー・タにもとづいて期間損益計算が行なあれる場合とでは,計上される営   業利益が異なることはよく知られている。そ・れぞれめ利益の優劣をめぐって実   に多くの議論が繰り返されたのである。   

それぞれの期間損益計算に.おける対応の意義づけ,利益の計算式の異臥 そ   れぞれの利益の機能などをめぐってこ執拗紅議論が行なわれたが,′それでも,も   し両者の利益が金額的に全く同じであっねとすれば,これはどまでに熱心に・議   論が行なわれることほなかったであろう。「様々な議論は,それぞれの原価計算   法が異なる結果を生むという前提紅立っており,当然ながらそれぞれの方法が  

(1)  

全く同じ結果になる場合には,論争がむだに・なる。」といえるからである。いう   までもな.くそ・のような場合は,議論は単なる解釈ないしは考え方の問題砿・すぎ  

なくなるであろうd   

そこでわれわれは,拙論において,直接原価計算または全部原価計算に・よる   期間損益が,どのような意味のある営業成績を示すかを検討するに・あたって,  

できるかぎり,単なる解釈論と異なる利益の異なる意義を認めるという立場と   を区別する,という立場から議論をすすめること紅したい。   

ところでこのような議論の手掛りとしては,まず直接原価計算またほ全部原  

(1)YujiIjiri,RobertK.Jaedicke andJohnLLivingstone, TheEffect of    InventoryCostingMethods on Fulland DirectCosting ,JournalofAccount−   

ing Research,Vol.3,No.1,Sprring,1965,p・63・   

(2)

第50巻 第2号  

ー ∂6−  242  

価計算紅よる利益の計算方法がどのよう紅異なるのかを,具体的な計算式で知   ることが有益であろう。このような計静方法の違いについての問題は,比較的古   く,すでに直接原価計算制度を提唱した初期の文献の−・つといわれるJonatban  

(2)  

N.HaIIisの論文に率いて億識されてこいた事柄である。そ・れに・よると,伝統   的な標準全部原価計算に.よれば,「わが社の売上高は先月よりも100,000ドル以  

(3)  

上も多くなっているのに,利益ほ.20,000ドルも減っている‥…1・1」が,それほ,  

今月は「……・われわれの生産高ほ売上高のおよそ・半分しかなかったため,未配   戚製造間接費が総利益(thegross margin)の増加分を,おまけに・それを若干  

(4)  

越えて噴いつぶしてしまった。」からである。そこで「製造活動の大小紅関係な   く,売上高上昇のときに利益の増加,売上帝減少のときに利益の減少を示す損  

(5)  

益計算書……」を作成する目的のために・,標準直接原価計算が提案されたので   ある。しかし,Haf・risの論述でほ,利益と利益作用因との数愚的な関連が意   識されているのは.明らかであるけれども,直接原価計算に、よる利益と全部原価   計算による利益の具体的な計算式ほ纏示されなかった。   

直接原価計算による利益と全部原価計算紅よる利益との差を計算式で表わ   し,その大小関係を検討した早い文献の−・つはおそ・らく N.A.A.の調査報告  

(6) 書第23号であろう。そこで展開された算式ほ,その後他の論者にも引き払が  

れ,利益の性格を検討するに.当ってよく用いられ,またそれを数行して新ら   たな検討が加えられている。′そのいくつかをひろえば,たとえばGilbert  

(7)  

Amermanの論文,YujiIiiri,RobertIざ.Jaedicke,John L.Livingstone  

(2)Jonathan N.Harris,郎What Did we Earn Last Month?〃,N.A.C.A・  

Bulletin,Vol.17,No.10,−Tan.15,1936.  

(3)Ibid,p.501.山辺六郎,「ジョナサンNノ、リスの直接原価計静」,企業会計,算12   巻,第12号,昭和35年10月,16ぺ−ジ。  

(4)Ibid.p.502.山辺六郎,繭掲論文,18ぺ−ジ。  

(5)Ibid.p.502.山辺六郎,前掲論文,18ぺ一−ジ。  

(6)N..A.A。, DirectCosting ,1953,pp・染谷恭次郎監訳,藤田幸男,森藤一男    共訳,「直接原価計算」,昭和3β年,192〜3ぺ「ジ㌔  

(7)GilbertAmerman,砧FactsaboutDirectCostingforProfitDeteImination〃,   

the Accounting Research,Vol.5,April,1954. 

(3)

直接原価計算に.よる期間損益の意味  

− 57−  

243  

(8)  

の共同論文,最近では,Don.T.Decoster,ⅩavasseriV∴R争manatharl  

(9)   (10〉  

の啓蒙的な/J\論;Donald E.Ricketts,Charles R.Purdyの共同論文など  

(11) 把,数式的な展開が見られる。またわが国でほ,小倉栄一・郎教授の論稿紅.も数  

式にもとづいた展開がなされて1、る。   

これらの藷論の展開をここで−・々検討することはできないけれども,そこで   の数式的な展開ほ,およそ・次のような課題を検討するために.利用されている・ム   すなわち直接原価計算紅.よる利益を全部原価計算方式の利益へ謝整するための   算式の設定,それぞれの原価計算紅よる利益の大小関係,生産盈・販売盈等で   表わされる営琴患と利益との関係,そ・れぞれの利益の平準化の度合,損益分岐   点または損益分岐線の公式設定,棚卸評価法の相違がそれぞれの利益の大小関   係に・およぼす影響,それぞれの原価計算紅.よる利益の予算。実績差異がどのよ  

うな相違をあらわし,どのような特色をもつかの問題,異なる原価計算方式紅   よる利益差額の生産患またほ販売盈粧対する感度分析,現実に様々な費用・収   益構造をもつ企業に・おいてそれぞれの原価計静が利益紅およばす影響度合を測   定する一・般式等の検討がなされている。   

いうまでもなく,これら二つのタイプの利益を算定する公式を使った様々な   分析は,それぞれの利益がもつ様々な特性を引き出そうとしたものである。し   かし,そ・こでの分析の特色は,それぞれの原価計算に・よる利益が数盈的紅.どの  

ような特性を示すかを検討するところにあり,いわば直接原価方式の利益と全   部原価方式の利益の根拠,あるいはどちらの利益が正しい営業成績を表示する   かの質的な判断は他紅委ねてい卑点紅共通の特色がみられる。どちらかという  

と,そのような質的な判断は回避しているよう乾さえ∴思われるのである。その  

(8)YujiIiiriapd others,Op,Cit・  

(9)Don T.DeCoster and王【avasser iV.Ramanathan,砧An Algebraic Aidin    Teachingthe DifferencesBetween DirectCostingandFulトAbs?rPtionCostq    ing Models,〃the Accounting Review,Vol.48,No.4,Oct.1973.  

(10)Donald E.Ricketts and Charles R.Purdy,以The Effect of Cost−IVolume−  

Profit Structure on Fullムnd Direct Costing NetIncome:A Generalizable   Approach〃,the Accounting Review,Vol.49,No.3,July,19テ4.  

(11)小倉栄一郎,「純利益と売上高の関係」,産業経理,2巻4号,昭和36年4月′。   

(4)

第50巻 第2号  

ー 5g 岬  

244  

ため,数量:的な関連紅ついての分析自体が,実際にどのような意味をもつのか   については論述が曖昧となる傾向があり,それぞれの分析が脈絡もなく孤立し   ていて,分析そ・れ自体が議論の方向を見失っているとさえいえるのではなかろ  

うか。   

むしろ,われわれは,そのような議論の根底におくものとして,両者の利益の   数量的な関係のみでなくで,それぞれの利益が表わそうとしている営業成績の   意味を,計算式紅よりながら,具体的に解明すべきでほなかろうか。もっとも,  

従来も,直接原価計算またほ.全部原価計算による利益を正当化する理論的ない   しは概念上の換討は数多く行なわれて:きた。なかでも期間計算における対応   概念の在り方をめぐって−,それぞれの立場から固定費の対応に・関する意義づけ   が主張されたことは広く知られている。しかしそ?ような理論的検討において  

も,利益の概念上の問題と利益の金額の相違に関する問題との区分があまり意   諭されず,なお全部原価方式の利益と直接原価方式の利益の相互の関連ほあら   た紅検討される余地があるといえるのではなかろうか。異なる原価計算に・もと   づく利益額が−・般に一・致しないこと,およびそ・れぞれの利益が対応思考を異紅   する利益であることはよく知られている■としても,それぞれの利益が営業成績   表示としてどのように.異なる機能を有するのか,またそれぞれの利益は果た 

て.一本当紅全部原価計算または膚接原価計算紅固有な利益概念であるといえるの   かどうか,といった点はむしろ意外なほど等閑視されているのが現状である。  

計れぞれの意味を少しでも明白に・認識することにより,直接原価計算および全   部原価計算の期間損益算定の意義を正しく理解すれば,やがて様々な計盈的分   析も正しく方向づけられることとなるであろう。   

そこで拙論でほ.,それぞれの計算式紅よりながら,それらがどのような営業   成続を表わそうとしているのかを具体的紅・検討し,それぞれの利益の関係を正   しく位直っけたいと考える。   

しかしながらこのような展開の仕方は,必ずしもわれわれ独自のものではな   い。たとえ.ば小倉教授ほ,「小…り・二つの原価計算方式疫よる損益計算と,そ切基   盤となる計算原理の合理性という段階で論じあってみても,いづれも根拠があ   

(5)

直接原価計算に.よる期間損益の意味   − β9一−  

245  

って水かけ論に.陥ってしまうのである。むしろ,この論争を脱皮してその計算   原理のもつ合理性はそれぞれ紅承認し,問題の所在をむしろ両方式の損益計算   のもつ特質,あるいは,両方式に.よる純利益額の性格を検討し,これを利用す   るにあたって,いかなる注意が必要で,いかなる効果が期待できるかを正しく   認識して,利用払方全を期す方紅より重大な意味が存するとV、わねばならな  

(12) い。」とされて1、る。その点でまず墾要なことほ次の点である。「値接原価計算  

方式で棚卸資産を評価するという形をとると,貢献差益は完全に売上高紅.比例   するし,固定費が同額である限り純益ほ売上高紅応じることに.なる。……・売上   高の単純な函数紅なるということは,販売努力を,経営努力の唯一・のものとみ  

(13) ているということでもあるb」しかるに,「全部原価計算方式によるときに.は,期  

間損益ほ売上と生産(従って棚卸高)の双方の変化の組合せ紅よって様々紅.変   化する。それぞれが決めるのでもなく,三者の総合的管理によって,ある組合   せに・なったときに期間利益ほ最大となる。最も有利なよう紅総合的匿.調整する   のが経営者の機能セある。このようにして,全部原価計静による損益計算は,  

経営における総合的判断の計数的表現であるとV、うところ紅.,この方式の強味  

(14) がある。」しかしこのような論述にとどまる限り,はたして個々の利益作用因の  

どのような変化を通して営業宿動の成果がどのように.正しく利益軋反映するの   かが必ずしも明らかでなく,利益は抽象的に理解されている紅.すぎないといえ   よう0全部原価計算方式の損益計算が,「『販売能率に限定された喝挙計算碇製造  

(15)  

能率の評価を参画せしめた』もの」であるとい・つても′,どのような形態で製造   能率の影響が利益紅反映するのかが明らかでなければ,全部原価方式の利益と   藩接原価方式の利益の利用を適切紅使い分けることはできない。   

拙論の趣旨は,全部原価計算および直接原価計昇のそれぞれの原価計算紅.よ   って適切に・算定される利益の意味を,あらためて検討し,両者の関係を正しく  

(12)小倉栄一郎,「直接原価計算と期間損益計昇」,彦根論茸,欝97号,昭和38年3月,  

38ぺ・一汐。  

(13)小倉栄一郎,「直接原価計算と期間損益計算」,前掲誌, 39ぺ一一汐。  

(14)小倉栄一郎,「直接原価計算と期間損益計算」,前掲誌,40人し一汐。  

(15)小倉栄一郎,「純利益と売上高の関係」,前掲誌,26ぺ一汐。   

(6)

籍50巻 算2号  

ー・・60・− 

246  

位置づけることに.ある。そのような検討の手掛りを,従来展開されてきた計算   式にもとめ,その計算式の意味を解明したい,とするのがわれわれの展開の方   溢である。  

ⅠIi利益の計勢式   

具体的な公式に.よって利益の性格を検討する場合に漉,計算式が暗匿前提し   ている条件を明らかにし,そ・の限定的な意味を理解することが必要である。ま   たそれと同時に,より−・般的な状況での利益を理解するた′めに他の計算条件の   場合をも合せて考え.ることが必要であろう。   

そ・こでまず,原価計算制度や会計制度に関する次のような前提条件をおいた   場合,全部原価計算紅よる利益と直接原価計算による利益ほ.どのよう紅静定さ   れるかを検討しておきたい。  

(1)標準原価計算制度を採用サる。  

(2)標準原価差異は,すべて当期の費用とんて損失計上する。  

(3)製造間接費の予定配戚率の算定のための基準操業度は,達成可能最大   操業度である。  

(4)製造間接費の操業度差異以外の原価差異および営業外損益項目は,損    益計界の計静要素から除外する。(これらの藷項目は,両者の損益計静紅共   通するから,それらを除いても,原価計算制度の逢い紅・よる利益への影響   を検討するのに.は差支えないであろう。)  

(5)ひとまず,一・般管理・販売費を考慮外に‥おき,製造原価のみで原価が   構成されるものとす−る。   

この場合には,全部原価計算に・よる利益(PF)と直接原価計算紅よる利益  

(PD)は次のように表わされる。   

PF=売上高−(標準総売上原価十生産塁にもとづく操業度差異)①   

PD=売上高−(標準変動売上原価十製造固定費予算)   ⑧   この算式は.もちろん全部原価計算および直接原価計鮮紅よって,収益に贋用を   対応させる方法が異なることを反映したものである。しかしこの計算式でほ対   

(7)

患按原価計算による期間損益の意味  

247   

−・6ヱ〜  

応の考え方の相違が強圃されるあまり,双方の利益の意味がどのような関連紅   あるかを把握することができ難い。そこで,各利益をそれぞれ他の対応の仕方   紅.表現しなおすとすれば,次のように変形することができるであろう。まず,  

PDを全部原価計算方式で表わすと,   

PD=売上高−((標準変動売上原価+標準固定売上原価)  

十(製造固定費予鈴一棟準固定売上原価)〉  

=売上高−(標準総売上原価+販売急に.もとづく操業度差異)⑨   

①式および⑨式は,いずれも,全部原価計算方式で表わされているが,さら   に.両者を比較しやす−くするため紅.,損益勘定形式で示すとt 第1図のようにな  

るであろう。  

損  益  勘  定  

第1区l全部原価計算方式に.よるPDとPF  

また同様に.,全部原価計算による利益PFを直接原価計静方式に・よって表わ   すこともできる。たとえば,①式は次のように・変形することができる。  

pF=売上高・−(標準変動売上原ふ+標準固定売上卵+  づ 

)   

(8)

ー 62 −  

算50巻 第2号  

248  

=売上高−(標準変動売上原価+標準固定売上原価・十(製造固定費予算   一製造固定費予定配戚額))  

=売上高−(標準変動売上原価一十製造固定糞予算・十(標準固定売上原価   一製造固定費予定配賦額))  

期首棚卸品製造   固定費配臆額  

1・   

=売上高−(標準変動売上原価+製造固定費予算十  

−・期末棚卸品製造固定費配戚額)〉  

やはり④式と④式にもとづいて,PFとPDを比較すると,損益勘定形式に  よって第2区lのように表わせるであろう。  

損  益  勘  定  

算2図 直接原価計算方式によるPDとPF  

このように・PFとPDの算式のそれぞれを全部原価計算および直接原価計算   の両方式で表わすこと,およびそ・の図解を示すことに.よって,次のような議論   の展開紅役立てることができるであろう。PFあるいはPDといっても,通常   は,それらが異なる対応思考に・もとづいて算定される利益であるところから,  

互い紅関連のない別個の利益であるかのように腰解されることが多い。あるい   

(9)

直接原価計罫による期間択益の意味  

− 63・−  

249  

は,両者の関連を意識するとしても,その関連は抽象的な理解に.とどまることが  

多心、。いずれにしても,両者の利益の関連は必ずしも明白であるとはいい難   い。しかしたとえば,通常のPDの式⑧を全部原価計算方式で表わし,しかも  

そのように表わされた利益PDを全部原価計算的な立場から一一・定の意味をもつ  

利益として:解釈することができるのであれば,直接原価計算に・よる利益あるい   は全部原価計算による利益といっても,それは単なる利益の解釈をめぐる問題   であって,それぞれの原価計算思考が何か全く異なる利益を生むということを   意味しないであろう。すなわち,同∵額の利益を,直接原価計算方式で表わすこ  

ともできるし,全部原価計算方式で表わすこともでき,それぞれ私有意味な利   益の解釈を提供することができるのであれば,利益データが作成および利用さ   れる全体的な状況紅あわせて,より有利な利益の解釈を選ぺばいいのであっ  

て,全部原価計算方式か直接原価計算方式かいずれか一方でなければならない   という決定的な対決の問題とはならないであろう。そ・の意味では,PDとPF   の相違に償,単私利益を表現する表わし方の相違軋すぎない,という解釈論的   な一億が含まれているといえるのでほなかろうか。   

もちろんPDとPFの相違は単なる利益の解釈の違いとしでのみ理解するこ  

とはできない。よく知られているように,PDとPFとでは利益額が異なるの   が通常であり,そ・の金額の違いを異なる意味をもつ異なる利益として別個に・解   説する必要があるであろう。そ・のために・,たとえば全部原価計算方式に膚き改   められたPD(⑧式)を,同じく全部原価計算方式のPF(①式)と比較する  

ことに.よって,全部原価計算思考という同一・の観点から二つの異なる利益を比   較することができる。そ・れ虹よって一両者の利益の相違を一層明瞭私議識するこ  

とができるで為ろう。その皐うな方法に・よって実質的に・PbとPFが計算要素   的に.どのよう牢展なるのか,したがってまたそ・のような違いが利益の意味の違   いとしてどのように.理解されるのかを検討することができるであろう。もしそ  

のようなPpとPFの利益としての異なる意味が見出しうるとすれば,PDと   PFのそれぞれの利益情報としての有用性ほ明らかとなり,それらが適用され   る目的に即して合理的な利用が可能となるであろう。   

(10)

欝50巻 第2号   250   

ー64 −−・  

以下の所論では,このような点軋留意しながら,PFと一.PDの意味を検討す   ることとしたい。  

ⅠⅠⅠ.全部原価計簸方式の利益の意味   

本筋では,全部原価計算方式によって表わされるPFとPDの利益の意味を   考察することとしたい。それ紅よって,PDとPFという異なる利益の意味,  

および全部原価計静的な損益計算の特色を明らかにすることができるであろ   う。   

ところで,一腰に何らかの利益数値が様々な目的のため私有効紅利用される   ためには,算定される利益とその利益を構成する計算諸要素,したがってまた  

それら軋影響力を行使することのできる様々な営業活動との間に単純額機能的  

関連が存在することが望ましい。、営業活動上の好ましい努力がよりすぐれた成   果として利益にはねかえるという明瞭な関連があるのでなければ,利益ほ営業   活動の総合的な指標として有用であるとはいえないであろう。たとえば,直接   原価計算方式による利益計算法が,利益計画に.おいて有効であるとされるの   も,そのような利益が単純なCVPの関連として表わされるところ紅負うとこ   ろ大であろう。   

そこでまず本節では,①式および⑧式の計算式,あるいは算1図によりなが   ら,PFとPDの意味について検討を進めることとしたい。それらを一見して   利益紅ついて明らかに.異なる点は,PF紅.おいては,売上高に対して生産盈に  もとづく操業度差異が対応されてヽ、るの軋射し,PDに・おいてほ,販売盈に・も   とづく操業度差異が対応されているという点である。  

それぞれの操業度差異は,製造間接費の配戚基準としで,標準作業能率に.よ   る時間(作業時間または磯城時間)を選んだ場合,次のように虜二定されるであ   ろう。  

纂藁豊覧真とづく=製造固定費予定配讐率×(蓑葦時間一義寒露間)⑤  

琵藁葺豊島とづく=製造固定糞予定配賦率×(藁葺時間一芸鶴間)⑥   

(11)

直接原価計算碇・よる期間損益の意味  

− 65 −−  

251  

前節において計算式の条件をあげでおいたように,製造間接費の予定配戚率の   算定のための基準操業度が,達成可能最大操業度であり,また製造固定費略は   ば当該企業の能力費を表わすとの見方をあらたに付け加え.るならば,操業度差   異ほ,⑨・⑥のいずれに.してもそれらは遊休能力費を表わすといえよう。もっ   とも,達成可能最大操業度は,技術的に.達成可能な操業度という意味を含むか   ら,特私見込生産様式の経営のような場合,個々の原価部門がもつ余剰生産能   力,つまり陸路部門の達成可能最大漁業度を越える他の部門の生産能力ほ遊休   能力に考慮されないことに.なるであろう。   

かくして−,・それぞれの操業度差異であらわせる遊休能力費としての特色はど   のようなものであろうか。まず生産恩に.もとづく操業度差異は,保有してし、る   生産能力が十分利用されず,当該期間の生産愚償もとづく標準時間が基準標準   時問匹・達しないことから生ずる遊休能力費であるといえよう。各期間の生産恩   は,通常,在庫鼠を調整するために,同一・期間中の販売恩に.かかわらず・−−一小定急   が確保されるであろう。したがって生産盈ほ,その時々の販売患および在庫調   整の必要性を加味して一決定されるといえよう。適切な在庫管理活動払おいて   は,将来の需要や生産活動の−・時的中断等に備えて必要な在庫藍を確保してお  

くことが考慮されるが,その在庫量は必ずしも毎期一雇であるとは限らない。  

必要とあれば当該期間の販売量に.かかわらず,生産畠を諷饗するごとによって   在庫鼠が変更されるであろう。たとえば期首在庫盈紅プラスして新たに在庫患   が追加生産される場合,その追加生産分だけ生産能力が有効に.利用されるか  

ら,在庫鼠を変更しない(したがって販売藍に.等しい生産盈が確保される)場   合紅較べて,遊休能力は減少するであろう。逆に・期首在庫鼠の一・部を販売畠に 

まわす場合ほ,在庫鼠の減少分だけ生産能力を利用する機会が少なくな早か   ら,在庫崖を変更しない場合紅較ぺて,遊休能力は増加す−るであろう。要する   に.,ある企業で在庫患の調整がなされると,調整しないと仮定した頃合に・較ぺ   て生産盈が変化することに.なり,それを塞から見れば未利用の遊休能力もそれ   だけ変化するということに.なる。結局,生産鼠に.もとらく操業度差異ほ.,その期   間の販売曳と在庫調整のために必要な生産最を産出しても,なお生ずる未利用   

(12)

第50巻 第2号  

ー 66 −  

【252  

能を力費であるということができる。その実体は,生産患不足のため,エ場全   体比.遍在する実際の遊休能力である。   

他方,販売鼠に.もとづく操業度差異も,同様な考え方に従って,期間中の販   売鼠の生産紅必要な標準時間が基準時間におよばないことから生ずる遊休能力   費であるといえよう。つまり販売盟と等しい生産巌のみが確保されるとした場   合の遊休能力貿である。もちろん通常の場合,毎期少なくともいくらかの在庫   量の調整が行なわれるであろうが,販売患に.もとづく遊休能力費は,そのよう   な在庫調整のために.未利用能力が変化する部分を除外した,純粋に販売巌不足   から生ずる遊休能力費を示している。それは,製品市場の社会的状況,販売能   力の不足,不適切な販売促進等のため,工場紅生ずるほずの遊休能力費であ   る。(しかし,一時的紅ほ,エ場をフルに.稼動させても生産量が需要患に‥およば   ず,在庫量で不足分を補う場合のように.,販売恩標準時間が基準時蘭を越え.る   場合がありうる。その場合は,基準時間を越える販売量標準時間は,能力の遊   休を示すのではなくて,少なくとも−・時的な能力の不足があることを表わして  

いる。)   

このように.見てくると,PFとPDの利益額の違いの意味も自ら明らかであ   る。計算式に.よるとPFとPDの相違は,操業度差異に・あることは前述の通り   であり,それ故,両者の差額は操業度差異の差額として示されるであろう。  

pF−PD= 

とづく一とづく   ⑦  

=×釘間 撃豊臣窟葦(羞寒露憲豪畏  )   ⑧    生産盈に.もとづく操業度差異と販売盈紅・もとづく操業度差異の違いは.,先程   説明したように,前者は在庫調整を加味した遊休能力費であるのに・対し,後者   はいまだ在庫調整が行なわれる前甲,販売盈と同量紅生産盈を維持する場合の   遊休能力費である。両者の違いは,遊休能力費が在庫盈の調整分を反映してい   るか否か紅あることは明らかである。計算式の上では⑧式がそのことを表わし   ている。   

結局,このようなPFとPDの相違の理解に・よると,両者の利益としての意   

(13)

遼接原価計算濫・よる期間損益の意味   ・・・− 67 −−・・  

253  

味の違いほ,次のよう紅言い表わせるであろう。前述のように.PFは,PDと   比較した場合,在庫調整をも考慮に入れた実質的遊休能力費を費用として控除  

した利益であり,PDほ,在庫調整を行なう前の遊休能力費を控除した利益で   ある。したがって両者の違いは,相対的なものであって:,費用として計上すべ   き操業度差異ないしは遊休能力費の見方いかんにかかっている。つまり,在庫   調整を考慮した遊休能力費といっても,考慮する前の遊休能力費といって.も,  

遊休能力費という有効私利用されない費用を控除するという考え方においそは   共通である。そ・の限りでは,PFとPDの意味の違いといっても,そ・の違いは   相対的であって,どちらか−・・方が正しい利益を表わし,他が誤りである  絶対的な違いとはいえないのではなかろうか。   

期間損益計算の立場から,費用として−控除されるぺき遊休能力費とは果たし   てどのようなものでなければならないであろうか。標準原価計算的な観点から   無効費用としての遊休能力費の全体を正しく把えるとすれば,生産患に.もとづ  

く操業度差異ということ紅なるであろう。そ・こでほ,実在する遊休能力費の全   体が正しく費用化されているという点でほ,適切な費用計上がなされていると   いえるであろう。しかし限定的な意味で理解するならば,販売盛:紅.もとづく操   業度差異も,−・種の「生産盈に.もとづく操業度差異」であるといえる。す−なわ  

ち,それは,販売鼠と等しい生産量を確保したと仮定した場合,したがって在   庫調整がなされなかったとした場合の,「生産藍に・もとづく操業度差異」であ  

る。販売患に.もとづく操業度差異は,その限りでほ,正しく費用化されるべき   遊休能力費を反映しているといえるであろう。そのような意味でPDも,限定  

的な意味ではあるが,正しい利益を測定しているといえ.るのではなかろうか。  

結局,PFもPDも相対的な利益の違いしか含んでいないといえるよう軋思も   れる。   

在庫調整を加味しない利益PDは,販売活動の成果,生産能率の成果を反映   する総合的な指標として意味歓もつであろうし,在庫調整を加味した利益PF   は,PDが果す役割りのみならず,その上紅在庫調整をすること紅・よっていく   ぶん生産能力の利用状況が有利またほ.不利紅変化することを反映するものとし   

(14)

第50巻 第2号  

ー 6β・−  

254  

て意味をもつであろう。このような両者の限定的な意味を理解することによLつ   て,一層有効な利益情報の利用が可能となるであろう。   

上記の論述で,全部原価計静思考にもとづいた利益PFとPDの利益額の相   違が,どのような意味をもつかを検討したけれども,ここでわれわれほ,全部   原価計算思考に.もとづく損益計算がどのような特色をもつかを概観しておくこ  

とが有益であろう。   

今までみてきたよう紅.,PFのみならず,PDをも全部原価計算思考に.もと   づいて算定すれば,・それぞれの相対的な意味を解釈することが可能であった。  

−・般に.,全部原価計算に‥おいてこは,製品の生産のため軋必要な原価,したがっ   て何らかの形で製品の生産紅有効紅・利用されるあるいほ貢献すると見られ卑原  

(16)  

価は製品原価として扱われている。売上高紅対応される,総売上原価ほそのよ   うな製品原価に.もとづいて算定されている。標準原価計算制度による場合ほ,  

原価管理的な観点から見て有効に利用されると思われる原価を売上高に対応さ   せるから,当該企業の原価の利用効率が利益匹反映されることとなるであろ  

う。他方,原価の有効な利用のみならず,生産活動町有効私利用されないまま   価値を喪失するものもあるが,そのような原価は,期間計算上は,一腰に・損失  

として期間費用処理され学のが通常である。ここで,何を損失と見なすかは様々   な見方があり,それによって届先の把握の仕方も異なるであろうが上棟準原価   計算制度では,主として標準原価差異を損失として考慮する点が特色である。  

そのような損失の費用計上に.よって,同じ期間の廉価管理上の効果が利益に反   映することとなるであろう。ここでほ操業度差異のみを費用計上しているが,  

その他の標準原価差異が,期間原価として扱われる点ほ.同様である。   

このよう軋考えると,全部原価計算データに.もとづく期間損益計算〜の特色   は,まず有効に.生産活動紅利用される原価部分を製品原価を通して費用計上  

(16)こ.のような理念に.よる製品原価が,期間損益計静に.おける正当な貴用こ収益対応を    保証すると意識されるようになったのほ.,アメリカでは1940年頃であった上いえよ  

う∠拙稿,「成立当初の『贋用・収益対応』の概念」,香川大学経済学部研究年報14,  

昭和49年を参照されたい。   

(15)

直接原価計算に.よる期間損益の意味  

・−・69・−  

255  

し,効果的な原価の利用効率を反映した利益を算定し,次いで生産清勒に.利用  

(1了) されることなく無駄となる原価,すなわち無効原価を期間費用として費用計上  

し,有効な原価と区別するととも紅,無効費用が利益紅どのようにネ利な影響   を潜よぼすかを示そうとしている点である。つまり,標準原価計算紅よれば,  

原価の有効または無効な消費の区別を基礎とした利益の認識が,全部原価計舞   思考に.よる利益であるといえよう。その点ほ,PFであっても,PDであって  

も基本的に.は同じである。   

しかしPFとPDの利益としての意味は,全部原価計算方式に.よってのみ解   説されるわけでほない。次節隆一おいて,直接原価計算紅よった場合,PFとP   Dの意味はそれぞれどのように理解されるかを検討サーること紅しよう。  

ⅠⅤ.直接原価計算方式の利益の意味   

まずPFの通常の計算式を変更して■,直接原価方式で表わせば④式のよう紅  なることは既に.述べたところである。これをPDの算式④と比較してみると,  

売上高収益阻対応される費用項目としで異なるのほ.,PDほ製造固定予算の全   額を対応させているのに射し,PFは,状況に・よって異なるけれども,製造配   定費の予算の一部の魂またほ製造固定費予算プラス若干の追加固定費を対応さ   せている点である。   

ところでPDに.おいて,なぜ製造固定費予算額を対応させるのが翼当である   かについてほ,多くの直接原価計算支持者紅よって様々な論拠が提唱されてい  

(18)  

る。その主張でほ,たとえば次のような論拠があげられるであろう。それほ,  

まず第一・に.,製造固定費の代表である機械・設備の減価償却費ほ,伝統的な会   計認識においてはまず期間の経過とともに発生・消滅す為ものとして把えら  

(17)「企業活動の一切の無駄」(宮本匡茸,「無効費用の理論」,昭和42年,16ぺ−ジ。)をで    きるだげ排除するという観点からのより厳格な意味セの無効費用の概念もあるが,と   こでは標準原価管理的な意味での無効費用概念で,限定的に.理解されている。  

(18)溝口一機,「製造上の固定費はプロダクト・コストかピリオド・コストか」,企業会   計,第12巻,第4号,昭和35年4月。   

(16)

第50巻 第2号  

ー 7ク ー   256  

れ,そ・の他の固定費も機械・設備に.付随して発生するものとして把握されて1、  

ること,寮二に.そ・のような製造固定費をそれでもなお製品盈に.依存するものと   してプロダクト・コスト的紅押えなおすとしても,配賦計算の慈恵性が期間損   益の測定結果を不合理なものにすることなどである。伝統的な全部原価計静を   擁護する側からほ,そのような主張に対して疑問や反論が提起され,費用・収   益対応の本属を論ずるという点でいまだその論争ほ.決着を見ていないといえる  

であろう。しかしこのような論争に.おV、て重要な点は,収益に対する費用の対   応の考え方を介して利益をどのよう匿ノ解釈するか,という利益の単なる解釈に 

関する問題と,対応される愛用額の相違によって生ずる異なる利益額の意味を   どのよう紅理解するかの問題とを区別すべきことである。費用・収益対応紅係   わる問題のこれら二つの側面を同時紅論ずるぺきでほない。その点で従来の対   応論争は,論点の整備が不−†分であったため,全部原価計簸的な対応と直接原   価計算的な対応の関係を明確に整理することができなかった,といえるのでほ  

なかろうか。  

そ・こでわれわれは,このような点を留意するため,まずPFとPDの利益額   の違いを直接原価計算方式紅よって理解することが有益であろう。計算式の上   でほ,費用として異なるのは,PDでは固定費予算額が費用計上され,PFで   は製造固定費予算十(期首棚卸品製造固定責配威額一期末棚卸品製革固定費配   賦額)が費用化されている点である。いずれもまず変動費が対応され,次いで   固定費が対応されるという点では直接原価計算的な考え方を麟嚢しているとい   えよう。しかし直接原価方式での製造固定費の特色は,先程のように.,期間の   経過とともに、発生。消滅するものとして期間原価処理することにあるから,P  

Fの瘍合めよう紅.,製造固定費予算+(期首棚卸品製造固定費配賦額一期末棚   卸品製造固定費配賦額)を糞用化するのは直接原価思考ではない,と反論力手錠   起されるかもしれない。つまり,そこでは在庫畳の変動に.よって,前期からの   あるいは次期への固定費の繰越がなされ,そ・のために・は固定費の製品原価的な   会計処理が必要であるから,・それ特恵接原価計算思考紅よるものではない,と  

されるであろう。確かに,当期製造固定費の期間原価処理を不動のものとすれ   

(17)

直接原価計算に.よる期間損益の意味  

ー 7ユ ー  

257  

ば,当期の固定費発生額を期間原価処理する以外の処理は認めがたくなるであ   ろう。しかしそのような処理の背景には,固定費ほ現有製造設備を中心とした   生産能力費を表わすという見方が根底にあり,製造固定費を売上高紅対応させ  

ることの理由は,当該期間の生産活動の程度のいかんに・よらず,同一・期間中生   産活動のため私利用可能である能力はその期間の経過ととも紅消滅するから,  

その能力費を収益紅対応させるのが正しいとするものであろう。製造周定責の   対応は,期間中の能力の利用という点から意義づけられるのである。   

もしこのような考え方が是認されるのであれば,これとよく似た対応思考で   ある次のような考え方も是認されるのでほ.なかろうかムすなわち,当該期間の   販売盈のいかんによらず,同一・期間の販売のために・利用可能である売上品の供  

給能力は消滅するから,その期間中に.売上品の提供のため紅利用可能な能力費  

は売上高阻対応され声べきである。  

そ・の意味するところほ次のようである。同じく能力といっても生産の時点で   見るか,販売の時点で見るかに・よって能力の意味するところほ若干異なるので   はなかろうか。販売活動の時点から見れば,前期からの棚卸資産の繰越があれ   ば,その分だけ当期の売上品の生産のために・当期生産能力を利用せず紅販売盈   を確保することができるのであるから,実質的紅当期の売上品の供給能力は追   加されると考えられる。逆紅,次期への棚卸資産の繰越は,・それ磨け前期繰越   による供給能力の追加を含めた当期総供給能力の」・一・部を放棄することを意味す   るのであるから,当期の売上品の供給能力はそ・れだけ減少したと見ることがで   きるであろう。結果としては前期繰越と次期繰越の売上品の供給能力鱒相殺   されて,売上品を提供する当期の能力糞ほ,製造固定費額に,当期紅増減する   棚卸′盈分の固定費を追加または.減少したものであるといえよう。そのような能   力貿が,まさに.製造国定盤予算十(期首棚卸品製造固定費配賦額一期未棚卸品   製造国定糞配戚琴)である。   

つまりPDは,どの程度当該期間の製品の生産紅利用されるかに.かかわりな   く,そ・の期間中の製品の生産に・利用可能である能力糞,すなわち当期発生の製   造固定費を費用化しているの紅射し,PFは,どの程度有効紅売上品の提供の   

(18)

第50巻 第2号   258  

− 72 −  

ため紅利用されるかいなかにかかわらず,当該期間の売上品の提供のために利   用可能である能力費を示す製造固定費を費用化している。要するに,、pDとP  

Fにおいて収益に対応される固定費の違いは,期間中の生産量の生産のために   準備される固定費か,売上品の提供のために準備される固定費かの違いである  

といえよう。   

なおここで,PDとPFの相違を一層明らかにするために.,両者の差額の意   味も簡単町見ておくことに.しよう。上記のように二PDとPFは費用化される固   定費か異なることから,両者の実質的な相違ほ次のように.なる。   

PF−PD=期末棚卸品製造固定費配戚額一期首棚卸品製造固定費配戚額  

=製造固定費予定配戚率×(期末棚卸鼠⊥期首棚卸屋)  

これは計算式で見る限り,当該期間の棚卸資産の増減分に・含まれる固定費であ   るといえる。その意味するところは,先程述べたよう紅,PDに・おいて費用化   される固定費は,生産鼠のために.準備される能力費であり,PFの固定費は,  

売上品のために.準備される能力資である。両者の違いほ同じ能力空であっても   生産鼠紅関わるか販売鼠に.関わるかの違いである。したがって両者の利益の違   いは,生産盈と販売藍の逢い,したがって在庫鼻の増減分に・関わる能力費であ  

ることがわかる。それを計算式で表わしたものが上式である。   

PDとPFの速いをこのように.理解すると,それぞれの意味および関連は次   のように小えるのではなかろうか。見てきたように・,両者の導いは,PDに・おい   ては,当該期間の製品の生産能力費としての製造固定費が費用化されるけれど   も,PF紅おヤ、ては,売上品の供給能力費としての製造固定費が費用計上され   る点である。いずれも利用のいかん紅かかわらず当該期間に・準備された能力   費を対応させている点では共通であるが,能力盛が生産鼻紅係わるか,販亮鼠   紅係わって理解されるかの違いがある。それ故PDとPFの違いは,売上高に  対応すべき固定費ないしは能力費の見方いかんにかかっているということがで  

きるであろう。期間損益計算としてほどちらがより正しい利益を算定するとい   えるであろうか。   

周知のよう紅今日の期間損益計算は,発生主義会計を前提とする実現主義紅 

(19)

直接原価計算紅よる期間損益の意味  

・− 7β・−  

259  

もとづいて,費用。収益を計上している。まず収益の計上は,製品の販売を基   準として一語諭され,費用の回収の確実性が期されるのが通常である。そのため   費用の計上も売上品匹・係わるものとして認識され,その結果,期間損益ほ直接   的に・ほ売上品の販売業繚に強く影響されるものとして認識されるであろう。そ   のような期間損益の基本的な立場からいえば,能力費の費用計上という観点か  

ら費用を確定する場合でも,単に.完成品の生産能力費という観点よりほ,製品   を売上品として提供することのできる能力費という観点から,能力費を費用計   上する方が,実現主義に.よる期間損益の趣旨に.より合致してヽ、る といえるであ  

ろう。生産能力概念と製品の販売を規準とする実現主義思考とは,原価を考察   する時点が異なるのではなかろうか。同じく能力費といっても生産時点で能力   を見るのと販売時点で能力を見るのとでは若干異なることは前紅見たところで   ある。少なくとも,期間損益計算聡おける能力費の費用計上で,をれが生産能   力費でなければならないとする根拠ほ存しないように思われる。   

しかし,たとえ∴そうであるとしても,生産能力糞としての製造固定費予算を費   用として計上することが,全く誤りであるとか全く意味がないというのではな   い。蓋し,PDの場合に・おいて,能力費を生産愚に周適させて理解するという  

ことは,換言するとその能力璧は,販売愚が生産患と等しい場合,したが‥っで   在庫調整がな「されないと仮定した場合の売上品の供給能力費であるということ  

もできる。そのように理解すると,たとえ生産能力費であっても,特殊な場合   の売上品の供給能力費であ卑と見倣すことができ,生産時点から見た能力費も   販売時点から見た能力費も両者の違いは,屈的な違い紅すぎないということが   できる。生産能力費は,在庫調整が行なわれないと仮定した場合の売上品の供   給能力費であり,販売時点から見た能力費は,在庫調整をも考慮した売上品の   供給能力盟である。したが・つて,また,PDは在庫調整が行なわれ率いと仮定   した場合の利益であり,PFは在庫調整をも考慮した実際の供給能力費に.もと   づく利益であるということができる。   

かくし■て,PDは,⑨式からも窺えるよう紅,販売活動甲成果,および単位   当り変動原価や固定費額を通して反映する生産効率の成果を表わす総合的な緒   

(20)

欝50巻 第2号   260  

ー 74 −  

標としての意味をもつであろうし,PFは,PDと同様の成果を含むととも   匿.,在庫鼠の変動紅よって売上品の供給能力費ほどのような影響をうけるか,  

をも考慮した指標として意味をもつであろう。堺の⑲式はそのことを示してい   る。もちろん在庫管理の成果といっても,たとえば在庫量を増やすこと自体が   好ましいことかどうかは,業種紅.よって,また時々の経済環境匿よってその評   価の仕方は.異なるであろうが,PFはそ・のような活動の結果をも反映した最終   的な成果を表わすものとして意味をもつであろう。   

PD=(売価・一単位当り標準変動原価標準)×販売敏一製萄固定費予算 ⑨   

PF=PD+(期末棚卸品製造固定配賦疲一期首棚卸品製造固定費配賦額)⑳    このような意味で,直接原価計算方式の利益においても,PFとPDは相対   的な意味の違いを含むものであって,それぞれの限定的な意味を了解しなが  

ら,有効私利益情報として利用すべきでなかろうか。   

以上,PDもPFも連接原価計算思考紅・もとづいてその意味を検討してきた   が,全部原価計算思考との相違を明らか紅するため,直接原価計算思考紅.よる   損益計静の特色を概観するこジとは有益であろう。直接原価計算では,変動費と   固定費が区分され,変動費ほ従来通り製品原価として扱われるが,固定費は利   用の程度のいかんにかかわらず期間の経過とともに消滅する能力費であると見   なされ,そのような原価は,全体として期間原価として扱われるぺきとされて   いる。その状況は算2図の示す通りである。ただPDの場合の能力費,?まり   在庫調整が行翠われないと仮定した場合の能力費ほ,製造固定費額が一定であ  

る限り,変化しないけれども,PFの場合の能力費は在庫調整をも考慮に、入れ   た能力貿であるから,月々の在庫調整の状況紅よって若干変化するであろう。   

それに.もかかわらず,直接原価計算思考に.おいて変動費。固定費を基本的な   区分とす卑ことの意義は次のいうにいえるであろう。変動費は,消費のつど必   要なだけその原価財を提供することができるカラら,予め一億盈を確保しておく  

という考え方ほほとんど必要でない。そのような原価に対する経営者の関心   は,生産活動に原価財が直かに・利用される効率紅ついての状況であり,利益は   すぐれた効率の上昇紅よって増加するという関係払おかれることが好ましい。   

(21)

直接原価計算に.よる期間損益の意味  

ー 7∂−・  

261  

変動費を売上品の生産紅必要なだけ対応させているのほ,そのような関係を反   映するものとして意義があるとV、えよう。それ紅対して固定費は,消費のつど   原価財の必要愚だけを用意しておくことは.できないから,むしろどれだけの能   力ないしほ能力費を予め準備しておくかが経営者の直接の関心となりうるであ   ろう。固定費の消費の効率や利用の程度の問題は,能力中間題の背後紅あっ   て,鱒二次的な関心事であるといえよう。そ・こで能力黄金体を売上高に対応さ   せて,能力費の準備の効果が利益に.どのよう紅影響力をもつかが重視されると   いえるのでほなかろうか。   

したがって,特紅固定費に.注目していえ.ば,全部原価計算でほ製品の生産の  

ために.どの程度有効紅利用されるかという点紅.関心のウェイトがあるけれど  

も,直接原価計算では,たとえ同じ利益額であって−も,利用のいかんというこ   とよりほ,能力の準備という点に.関心のウェイトを移動させて利益を眺めてい   るといえるのではなかろうか。  

Ⅴ むすび一期間損益計算に=おけるPDとPF   

これまでの展開でわれわれほ,PDとPFの相互関係に/ついてその意味を正   確に把握するよう努めてきた。そ・こでは問題の側面を二つに・分けて,利益の見   方の相違に関する問題と利益の金額の相違に・関する問題とに・区分して展開を試   みた。   

まず利益の見方ないしは解釈の問題としてほ,PD,PFともに.,全部原価   計算思索世.よっても,直接原価計算思考紅よっても利益としての意味を理解す  

ることが可能であった。たとえばPDは,通常いわれるように,盾接原価計静   思考に.よってのみ利益としての意味をもつものではなく,それと同→額の利益   を全部原価計静思考紅.よっても解説することができるであろう。・そのことは,  

pFに.ついても同様である。要する紅全部原価計算思考は,利益を説明する紅  あた・つて,原価の有効・無効という見方を根底におくのに.対し,直接原価計算   思考は,原価の変動性・固定性ないしは能力の利用の慮価か能力維持の原価か  

という見方を重視しているように・思われる。   

(22)

欝50巻 算2号   262   

・−・76・− 

したがってPDといいPFといっても,それらは直ちに全部原価計静思考ま   たほ澄渡原価計静思考と直時するものではなく,したがってまた全部原価計算   制度や直接原価計算制度とも直接的な関連があるわけではない。PDとPF   は→ 若干の制度上の修正によっていずれの原価計算制度とも関連しうるといえ   るのでほなかろうか。いずれの原価計算制度が実施されるにせよ,損益計算は   損益計算として,独自紅, その時々の問題解決湛最も有利であると思われる利   益の解釈を選択すべきであろう。   

他方,利益の金額の相違の問題としてほ,PDとP針玖どのように億層づけ   られるであろうか。われわれの見てきたところでほ,全部原価計算思考紅もと   づいても,直接原価計算思考紅もとづいても,PDとPFの利益の金額の違い   ほ,在庫調整紅.よる利益への影響であることがわかった。金額の相違ゆえにど   ちらの利益を選ぶぺきかの問題ほ,聴局,様々な営業活動の総合的な成果を表   わすものとしての利益の中に,在庫調整活動の成果をどのよう軋位置づけるか   の問題に係わっているといえ.るであろう。もちろん実現主義を基盤とする会計   に.おいてほ,基本的紅揉,在庫変動のいかん,したがってまた生産鼠のいかん   ということにLよって営業成績が上下することよりは,販売活動のいかんおよび   生産活動紅おける原価の消費効率のいかん紅よってより高い利益を実現すべき   であると考えられるから,在庫調整を考慮する前の利益PDの方が利益として  ほより重要な意義をもつといえるであろう。その点では,従来PF紅おいて,  

生産。販売活動の成果と在庫活動の成果とが渾然−・体となっていたことによっ   て,本来生産■一販売活動の成果と思われるものが在庫調整に.よってうやむやに  されていたことこそが,伝統的な全部原価計算に.よる利益紅対して基本的に.耐   えがたかったこと、.である,といえるのでほなかろうか。そのような利益のあい   まいさは,生産・販売活動の成果と在庫調整宿動の成果とを利益紅.おいて分離   すること紅よって本来的紅解決され,PDとPFはそのような分離に役立つも   のとして有益であ.ろう。   

これまで見てきたように.,PDとPFの差額は在庫調整の結果が利益紅及ば   す影響であることは明らかである。そのよぎな利益の差額自体紅どのような意   

(23)

患接原価計静による期間損益の意味  

ー 77 −−  

263  

義があるかはそのつど慎重な検討を要するが,たとえば,PDとPFが大きく   喰い違うような事態が生ずれば,そのこと自身何か事態の重要性を感受させる   何かが存することを凝わせる点に,差額の存在意義があるので紘なかろうか。  

蓋し,在庫長の絶対患ではなくて,在庫鼠の変動の結果とし七PDとPFの差   額が生ずるわけであるから,それがどのような意味での在庫調整なのかた注目  

させるものとして重要であろう。その意味で,PD紅加えてPFの利益データ   を作成することは有効であるといえるのではなかろうか。   

PDとPFの利益額の相違をこのように.考え.ると,期間損益計算把・おけるP   DとPFの関係は多段階的損益計算の−・環として両者を位置づけることが適切   であろうと思われる。たとえ.ば多段階的な損益計算の一例をあげれほ,3図の  

よう紀行なわれるであろう。それを概観すれば,まず,④は限界利益としてよ   く知られているものである。それは販売活動の成果およ、び変動費の消費効率把   よる生産活動の成果を反映しているといえるであろうし,また見方をかえれ  

損  益  勘  定  

欝3図 多段鱒的な損益計静 

参照

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NAA,AMA (American Management Asociation) の会員である.