「直接原価計算と価格政策」(一)
その他のタイトル Direct Costing and Price Policy (1)
著者 末政 芳信
雑誌名 關西大學商學論集
巻 2
号 1
ページ 50‑67
発行年 1957‑05‑30
URL http://hdl.handle.net/10112/00021845
最近原価計算の新しい理論として直接原価計算
( D i r
e c t
Co
st
in
g)
が脚光を浴びて来た︒原価計算はその背後の
時代的要求によって全体実際原価計算1標準原価計算—|‘予算統制を伴う標準原価計算ーー直接乃至限界原価計
算へと展開された︒即ち直接原価計算は原価を操業度との関聯の元に考察し︑変動費・固定費に分解した︒この変
動費を生産物原価
a n a l
y s i s
)
並びに原価計画
( c o s
t p r
o j e c
t )
等に役立つものとして
w .
R
・マープル氏等によって近年論じられてき
1 ) 0
この様に直接原価計算はPで>比率並びにCVP関聯によって行われる原価管理及び経営政策的観点から強調
されたのであった︒
(p
ro
du
ct
c o
s t )
さて経営政策的観点から強調される直接原価計算の重要な問題の︱つは価格政策
( p r i
c e
p o l i
c y )
り︑この点に注意を向けなければならぬと思う︒しかしながら︑ここでは勿論価格計算乃至価格政策の問題を全面
的に取上げて論ずるのではなく︑あくまでも基本的には価格と原価の接触点の問題であり︑従って又︑価格政策も
この面についての問題である︒凡そ原価と価格の問題については古くから経済学者等によって論じられ︑経済学の
は し が き
直接原価計算と価格政策︵末政︶
﹁直接原価計算と価格政策﹂
固定費を期間原価
( p
e r
i o
d
c o s t
)
(一)
として取扱うと云う形で原価分析
( c o s
t
末
政
芳 五〇
との関聯であ
信
主要な領城を構成するものである︒だが当面の主題は一般的な原価論ではなく︑原価計算論の問題である︒従って
原価計算との関聯における価格及び価格政策の問題である事に注意を要する︒尚又直接原価計算の問題として取り
上げるが故に︑価格政策に対する全体原価計算と直接原価計算の比較考察に重点をおいて考えて見よう︒
1拙稿﹁限界原価計算への発展過程﹂
関西大学商学論集第一巻第二号
価格計算乃至価格政策の問題は古くから原価計算によって取り上げられた︒所謂非組織的な原価会計制度の行わ
の問題が売価算定と一ぞう問題と結びついて考えられた︒即ち見積の原価計
算によって価格形成が行われたのであった︒しかし原価計算はその背後の時代的要請によって何をその目的とする
かについては種々の見解に相違が見られ︑叉その重点の置き所もかわって来る︒例えば我国でも第二次大戦中は原
価計算の目的は﹁適正な価格﹂の決定であり︑製造原価計算要綱も価格決定目的を中心としては構成された事は明
らかである︒さて原価計算目的については種々の見解がある︒即ち原価計算目的として何を取り上げるかについて︑
又其等目的の内何れを第一目的となすかについても異説が錯綜している︒これらの問題は原価計算の性格決定に重
要な意味を持つ事は一云うまでもないが︑ここでは価格計算乃至価格政策に関聯する原価計算目的を中心にして考え
て行きたい︒原価計算における価格計算乃至価格政策の重要な問題点には次に取り上げる三つの問題があると思う︒
その観点から諸学者の価格計算乃至価格政策に関する見解を見たい︒
その一は直接且積柩的に売価決定を行い得る可能性があるかどうかの問題である︒即ちこれは原価附加価格計算
直接原価計算と価格政策︵末政︶ れた時代から原価算定
(8 st fi nd in g)
註
ヽ
五
直接原価計算と価格政策︵末政︶
が個々の企業において自主的に成立する場合が存在するかどうかの問題であり︑ひいては原価附加法の存立可能性
̀‑
︑︑
︑︑
の問題である︒経営学者ディーン教授は原価が価格決定におけるより直接的役割を果す若干の状態があるとして次図
の四つの場合をあげている︒即ち田生産物註文仕立②拒絶価格計算③独占価格計算④公益価格計算である︒
彼は原価附加方式の価格計算について詳細に論じているが次の点は注目すべきである︒即ち﹁それは︵原価附加方③ 式価格計算︶は価格計算の方法よりもむしろ理想である﹂と述べた事である︒従ってディーン教授は原価附加方式
の価格計算についても頭から否定的でなく︑その長短について適切に論評されている︒
1 1 1
辺教授は英国の原価計算委員会の報告並びに米国のAAAの一九四七年の原価委員会の報告及び一九五一年の
原価委員会の報告につき論述され︑それらの報告は価格計算が経営上の諸決及び政策の中で考えられる所謂利益計
画の問題としてのみ取り上げられている事を批判された︒教授は﹁原価計算制度について⁝⁝売価算定︵単純な売④ 価政策︶を考えないことは︑や4行きすぎではなかろうか﹂とされ︑ついで﹁なるほど特殊原価︵たとえば限界原
価・置換原価・機械原価︶に基づく︑いわゆる売価政策は特殊原価調査の問題となろう︒しかし個別生産の経営が︑
その原価計算制度から月々算出される製造原価に若干の利益︵あるいは︑営業費プラス利益︶を附加して単純に売
価を算定することは︑しばしば行われるところである︒又量産の経営がその原価計算制度から月々算出され製品の
製造単費を市価と比較して採算可能性をみることは︑常に行われる所である︒要するに財務会計に役立つ棚卸資産固の単価は︑同時に又単純な売価算定に役立つ原価数値である︒﹂と論ぜられている︒従って山辺教授の見解では価
格計算目的を総て原価計算の臨時的目的とし特殊原価調査の問題として取り扱う事に反対し︑教授の述べられる売
価算定︵単純な売価政策︶は経常目的として考えるべきだとされた︒故に直接的な売価決定の可能性をも認められ
たものと見る事が出来る︒
五
五
しかしながらその問題につき久保田教授・黒沢教授並びに故林教授はその間に説明の相違があれど何れも否定的
な解答を与えられている︒久保田教授によると﹁原価計算の主要目的の一っとして価格計算の一般的基礎になり得
つまるところ︑自已の原価を算定してそれが市場価格に対していかなる順応性があるか︑叉順応するため
にはいかなる価格まで低下してもよいか等についての考慮を払うための資料たるところにある︒これを表面的には6 価格決定の基礎になり価格政策のための基礎資料になり得るというにほかならない︒﹂
種の価格政策を取りあげられ︑新規商品又は流行品の価格決定の問題についても﹁一見するところこれらには市場
価格はなく︑販売高も未知数であるから︑事情に応じて例えば正常操業度の原価を基準にして適当なる価格を試み
に定めるとしても︑市揚価格体形には類似の商品の市価があるから︑それに大きい決定力があってその価格は任意
性から社会性を帯びて来る︒かくて社会的に定まる価値となるとその売行に応じて操業度の大きさも予定され︑例
えば正常操業度以外の原価の算定となって︑その原価が当該価格といかなる開き︑つまり利澗があるかを判定され
る様になる︒この点について事情はちがうが入札又は請負価格の決定にも類似の事が一云える﹂と述べられたd教授
の基本的な立揚は次の言葉によって一層明確となる︒即ち﹁価格決定︑価格政策にしても︑原価の補償を全額につ
いて企図するか部分額を企図するかのいずれかの類型になる共通的な計算思考が潜めるのが看取出来るであろう︒
この意味において︑筆者は各種の価格決定又は価格政策も︑原価計算論からすれば﹁原価補償の原理﹂によって理8 解すべきであると考える︒Iと︑ここでは所謂原価補償の観点の強調が眼につく︒
g l
黒沢教授は﹁価格は原価にさきだって成立しむしろ原価が価格によって決定されることとなるd﹂その立揚から供
給価格計算の所で機械的なコスト・プラスの方法はきわめて不充分なもので︑過去の時代の造物にすぎず︑市揚価 る
のは
︑
直接原価計算と価格政策︵末政︶ 従ってその様な立揚から種
らぬ事が重要である︒ 尚又故林教授は販売方策の為にする原価計算目的として 直接原価計算と価格政策︵末政︶
一︑
有利
なる
製品
種目
の判
定︑
こ︑
売価
の算
定︑
,,
,ヽ
格の明日に存在しないところの個別生産物の生産及び純註文生産を行う工場においてもコスト・プラスの方法のみ
によって供給することを得ない︒即ち常に市場状態︑需要供給関係︑景気変動に対して考慮を払いながら利益附加
m u
・u 割合を変動せしめ︑場合によっては原価以下という価格政策をとらねばならぬと説明されている︒従って教授の考
え方も価格前提の関聯における原価補償を取り上げる立揚であると見られる︒
売価限界の算定をあげられ︑売価算定には︑需要の状況・景気の状態・競争者の費用等を考慮に入れなければなら
ず︑自己の製品単費が売価に影響する所が少である場合には売価算定目的の為の原価計算は無意味である︒かくて
売価方策の為の原価計算の存在は売価限界の算定目的の原価計算に見られるとされた︒従ってこの問題に対する教
授の見解も又基本的には価格前提の関係で考察する原価補償の立場であると思う︒
この問題における肯定乃至否定の見解の相違は社会経済的事情が個々の企業に対して与える影轡を直接的且短期
的なものに限定して見るか︑或は間接的且長期的な面も見るかによって生ずるものであると思う︒従って社会経済
的事情による影響を直接的且短期的なものに限定して見るならば個々の企業において或る種の場合には原価を基礎
として価格形成が可能であるが︑間接的且長期的影響をも見る立場からは価格は与えられたものとして︑それと原
価を対比する事に価格政策の問題を考えねばならず︑ひいては﹁原価補償の立場﹂からの考察となる︒尚又その問
題を考察するにあたって特殊な部面を注視する事なく︑やはり一般的な意味における価格政策の問題でなければな
第二の問題は価格計算乃至価格政策の問題が種々の内容に伴ってその意味も異る︒大別すれば︑その一は一般的 五四
(3) (2) (1)
の見解にふれると︑彼は製造原価計算の目的の項において︑
五五 ﹁製造原価の主要な利 の中で考えなければならず︑ひいてはかる経営政策の実4
な意味における価格計算乃至価格政策そのものを取り上げる立場である︒それは更に前述の売価の直接的且積極的 決定の問題と原価補償の問題に分ける事が出来る︒しかし一般的な問題としては原価補償の問題が中心となるべき である︒他の一は経営上の種々の決定及び経営政策乃至利益計画の一分野として価格計算乃至価格政策の問題を取 り上げる立場である︒この様な利益計画視点から
A A
Aの原価委員会の報告及びアンダーソンの所説は論じられて
2 1
A A
の一九五一年度の原価委員会の報告によれば原価計算の目的として次の三つを挙げている︒A
いる
︒ 財務諸表作成に必要な原価数値を集計すること 経営管理者の各層に対し原価管理に必要な原価資料を提供すること 経営者に対し経営上の種々の決定︑及び経営政策に必要な原価インフォメイションを提供すること
こ4
で問題となるのは第一︱一の目的であるが︑委員会はこの目的が原価計算の新しい且動態的な局面を指示し︑特 殊な性質の原価資料を要求する経営上の諸決定及び政策に関係すると述べている︒従って価格政策もか
4る経営上
の諸決定及び政策
( b u s
i n e s
d e s
c i s i
o n s a
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i c y )
現を計画する利益計画の問題とも云える︒
アンダーソン
(A
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用は
︑
統制1 1
I I ( "
c o n t
r o l "
)
と
I I
計画
I I (
ょ^ p
l a n n
i n g "
) てその目的は材料費︑労務費︑間接喪に対する支出の目的及び性質に関するインフォメイョンを与える事と︑或る 種の形式的叉は非形式的標準或は規準と対比してその様な支出を測定する事であり︑関聯する特別な問題に従って
直接原価計算と価格政策︵末政︶
の二つの用語で述べる事が出来る︒ついで統制の分野におい
ディヴァイン
( D e v i n e )
は原価計算の利用目的の項目で﹁原価組織の利益は一二つのグループになる︒即ち価格計
算に役立つ事︑原価の統制に役立つ事︑最も有利な経営
( o p e r a t i o n )
t
"
i
事で
ある
︒﹂
と述
べ︑
警告している︒又第三の問題に役立つ特殊計算は原価計算の領城であり且重要であるとし︑平均原価以下での販売︑
最も有利な規模の工場選択︑部門又は製品の取替乃至継続︑販売圧力の追加又は減少に関する決定の問題にふれていハる︒これは所謂利益計画の問題であると思う︒ のではなかろうか︒ 直接原価計算と価格政策︵末政︶
種々の形で計算し直される︒これと同じ様なイソフォメイションは製造活動の計画においても使用出来る︒けれど
も全般的な計画において又特に聰明な販売及び価格計算政策の形式においては︑尚各系列における種々の製品のそ
れぞれの原価を知る事が必要である︒この目的の為に製品原価イソフォメイションの準備が製造原価会計の第二の箇
u
大き
な目
的で
ある
︒﹂
と述べている︒彼の所説の特質は製造原価の主要な利用目的として統制と
計画の問I I
題に分け︑前者は原価管理の問題とし︑後者は利益計画の問題とした︒価格政策の問題も僅かしか述べられていな
いが︑利益計画における問題として取り上げられている︒この事は他の所で﹁価格計算問題に関する最近の文献がハ
u
利益計画接近法を強調している﹂と述べられている点より推察出来る︒この様にAAAの報告及びアンダーソンの所説によれば価格政策の問題は利益計画の一環と取りあげられている事が理解出来る︒
しかし両方の立場即ち一般的な意味における価格政策と利益計画面からする価格政策の両者を論ずる見解が見ら
れる︒ディヴァイン︑
ニッ
カー
ソン
︑
マッツ・カリー・フランク及び溝口教授の所説はこの立場と見る事が出来る
に導びくべき生産高及び生産物を決定する
ついで第一の価格計算の問題において原価は最も適切な要因であるが︑原価の無批判な利用を 五六
画
五七
③予算計
マ ッ ツ
・ カ リ ー
︒ フ ラ ン ク
(M
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z,
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&
Fr
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k)
によれば原価計算目的の問題として
山管理的諸決定の為の原価を取り上げている︒その内③価格計算の為の原価につ
いては生産物の可能な原価及びそれを以って有利な価格設定の可能性を見積るための基礎として取り上げられ︑経
営による売価の見積は種々の事情に左右されるが大部分は原価を基礎として行われると述べ山管理的諸決定の為
の原価については︑原価のインフォメイションに基づいて営業政策を基礎づける問題として取り上げられ︑
( a )
或
かどうかの問題
( C )
設備を拡張するか既存設備に依存していくかの問題
(d
)或る原価を配賦する
(a
bs
or
b)
為に全
( e )
或る販売地城を追加し他の地城を削減するかどうかという諸問題の為にt
1 1
有用なインフォメイションを原価計算が提供しなければならないと述べている︒
この様に見ると彼等の見解は一般的な価格政策の問題と利益計画の問題を区別して取り上げている︒だが所謂④
の利益計画の問題と見られるものの中には原価と価格との関聯の問題が含まれている︒従って彼等の所説は一般的
な意味における価格計算乃至価格政策と利益計画の一環としての価格政策に分けて考えているものと思う︒
尚 ニ ッ カ ー ソ ン
(N
ic
ke
rs
on
)
⑤原価切下 は原価計算の目的として山利益決定及び棚卸品評価②棚卸品管理
④ 原 価 管 理
⑥ 価 格 計 算
m代替的方法の選択を意味する種々の管理的諸問題における原価決定
をあげている︒価格計算の問題については︑彼は初期の原価計算の目的が価格計算目的の資料をあたえる事であっ
たが現在はその意味が変っていると述べ︑長期的には売価は全ての原価を補償しなければならぬが︑短期的には場
合によって全ての原価以下で価格を与えねばならぬとした︒そこで種々の価格計算目的の為に種々の事情の異なる
直接原価計算と価格政策︵末政︶ 体原価以下で価格を付けるかどうか る単位のものを生産するか外部から購入するかどうかの問題
(b
)新製品を追加するか又は現在の製品を削減する
価管理③価格計算の為の原価
田 原 価 確 定
② 原
予定したり︑総額としての利潤の最も高い点︵最有利操業度︶を確定して︑生産計画︑販売計画の基礎資料とし︑
訓
従って叉予算編成の起点として利用する﹂と述べ︑叉独占価格の場合の問題︑不況等による市場価格下落の場合の
e .
⑫
コスト回収の問題︑差別価格の問題にもふれられている︒この様な点を見ると価格政策の問題は多くの内容を持ち との関聯においてとらえ︑これをその価格と比較して︑
コストの総額と総売上高とが一致する点︵損益分岐点︶を
るものであり︑経営政策乃至利益計画の問頚であると思う︒
直接
原価
計算
と価
格政
策︵
政末
︶
e
タイプの原価を要求するとして︑その関聯で原価の性質を考える必要があるとした︒
尚m
代替的方法の選択を意味する種々の管理的諸問題における原価決定の問題については︑管理が原価を要因と 考える場合の活動の二つ乃至それ以上の代替的方法の中から選択せねばならぬ種々の問題に際して管理に最も役立 つ資料を与える問題であるとし︑その例として新型の製品を生産するか新販売地域を拡張するか等の問題をあげて
餅いな︒この様に価格政策に関聯する問題も含まれている︒これらは一般に特殊原価調査の問題として考えられてい
溝口教授によると原価計算の目的はそれが置かれた時代的環境によって異なり︑必ずしも常に固定的な性質を有 するものでないとし︑損益計算への補助手段︑経営過程の管理︑価格政策の支持を挙げている︒ここでは価格政策
の支持に関する所説を見ることにしたい︒教授は﹁価格政策
(p ri ce p ol i c y, Pr ei sp ol it ik )
といってもこれには多
くの内容が意味されるから︑原価計算の役立ちもまたそれぞれに応じて異なった仕方をとる筈である︒叉いま一っ
o l
⑫
の考慮すべき条件は当該経営の生産物の価格の性質である︒﹂と述べ︑独占価格︑競争価格︑国家の統制価格等の場 合に応じて原価計算の価格計算的な意味も技術も変化せざるを得ないとされた︒最も一般的な競争価格の場合も一 定の市場価格が与えられ且原則として販売量の多少に関係しないので﹁経営内部のコストの動きを生産量︵販売量︶
五八
五九
その意味も複雑な容相を示す︒しかしながら教授の基本的な考えは生産計画︑販売計画の基礎資料とし︑又予算編
成の起点とし利用すると述べられた点にうかがう事が出来る︒これは利用計画との関聯を重視する立場であり︑あ
わせて原価補償の問題を取り上げるものである︒
尚又久保田教授も直接原価計算と価格計算の関聯について価格計算そのものの面からと利益計画の面即ちCVP閾関聯の面からの二方面が考えられるとされ︑その観点から直接原価計算を論じられている︒
以上の様に原価と価格︵売価︶との関聯を価格計算乃至価格政策の問題として見ると︑
計算乃至価格政策の問題と利益計画の一環としての価格政策の問題が存在するものと考えられる︒ 一般的意味における価格
第三の問題点は価格計算又は価格政策目的をもつ原価計算をどの様な性格をもつものとして考えるかの問題であ
る︒即ち経営上の諸決定及び経営政策目的をもつ原価計算はAAAの委員会の報告等では臨時的目的をもつ特殊原
価調査の問題として取扱うが故にそこに含まれる価格政策考慮もその様な理解の元に考えられた︒この問題は単的
に一云えば利益計画に役立つ資料が正規の原価計算制度から得られるかどうかの問題であり且利益計画と原価計算の
問題である︒この点直接原価計算の重要な問題であるがここでは取り上げないで利益計画に役立つ原価の棚念・性格逼を考察の上考えて見たししかし価格計算そのもの即ち売価算定及び原価補償については一般的に経常的な原価計
算制度から資料の提供を受ける︒これは又前述山辺教授の強調された点でもある︒しかしここでは原価と価格︵売
価︶の関聯を中心として原価計算目的と価格計算乃至価格政策の関聯そのものを取り上げるが故に︑経常的計算に
よると又臨時的計算によるとに区別せずに原価計算目的としての価格政策の問題を併列的に取り上げた︒従って直
接且積柩的価格計算︑原価補償︑利益計画の一局面としてのそれの三つの価格計算乃至価格政策の問題及びそれぞ
直接
原価
計算
と価
格政
策︵
末政
︶
22 21 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9
註1
︑笹淵教授
財務会計と原価計算原価計算一九五六年十二月号1 1
De an ,
J.
Ma na ge ri al Ec on om ic s, p. 4 5 4 . De an ,
J.
i b i d . , p . 4 5 6 . 山辺教授﹁原価計算精説﹂
1一
十七 頁 山 辺 教 授 前 掲 害 二 十 七 頁 二 十 八 頁 久 保 田 教 授
﹁ 原 価 計 算 論
﹂ 十 五 頁 十 六 頁 久 保 田 教 授 前 掲 害 十 六 頁 久 保 田 教 授 前 掲 害 二 十 一 頁 黒 沢 教 授
﹁ 原 価 会 計 諭
﹂ 六 十 八 頁 黒 沢 教 授 前 掲 書 六 十 八 頁 六 十 九 頁 林 教 授
﹁ 原 価 計 算 諭
﹂ 百 四 十 七 頁 ー 百 四 十 九 頁 A. A. A. Rep or t o n t he o C mm it te e o
n C os t C on ce pt an d S ta nd ar ds , T he Acc ou nt in g R ev ie w. 1952̀April
. An de rs on , D . R . P r ac t i ca l C o n tr o l le r s hi p , p . 1 2 1 . An de rs on , D . R . i b i d . , p . 4 8 8 . De vi ne , C . T . Co st Ac co un ti ng n a d A n al y s is , p. 8 . De vi ne , C . T . i b i d . , p .
p . 8ー
9 . Ma tz , A . C ur ry
; 0 . T .
&
Fr an k,
G .
W .
Co st Acc ou nt in g, p . p 8 .
│1 0. Ni ck er so n, . C B . C os t A cc ou nt in g, p. 2 . p . 1 2 . Ni ck er so n, C. B . i b i d . , p . 1 3 . 溝 口 教 授
﹁ 原 価 計 算
﹂ 一
1 ‑ + 1
二頁
溝 口 教 授 前 掲 書 一
1 ‑ + ‑
=頁
溝 口 教 授 前 掲 書
︱
︱
︱ 十 四 頁
8 7 6 5 4 3 2 直接原価計算と価格政策︵末政︶
れに対する原価乃至原価計算の性格を次に考察しなければならない︒
三十四頁 六〇
六
久保田教授﹁直接原価計算論﹂九十五頁
特殊原価調査かどうかの問題は利益計画に役立つ原価が所謂原価計算制度から得られるかどうかの問題である︒従ってこ
の問題は本質的には財務会計即ち損益計算との関聯の元で原価の性格を考察し決定すべきであると思う︒又直接原価計算
が特殊原価調査かどうかの問題もやはり財務会計との結び付きの面で考察しなければならない︒
さきに指摘した様に価格計算乃至価格政策の重要な面は原価補償の面と利益計画における一局面であった︒その
原価補償の問題を取り上げて直接原価計算と全体原価計算の差異を考えて見ようと思う︒原価補償の問題は自己の
原価が市場価格に如何ほどの順応性を有するかの問題であり︑現実には全部補償又は部分補償の計算が問題になる︒
即ち全部補償の計算は全費用︵総費用︶を価格によって回収されるかどうかの計算であり︑又部分補償の計算は或
る一部の費用を価格によって回収されるかどうかの計算である︒これには二つの考え方の対立がある︒即ち総費用
と総売上高の対応で見るか又は単位原価︵平均費︶と単位価格との対応関係で見るかの問題である︒しかしここで
は価格は市場価格でしかも単位価格を中心として考えねばならぬ︒従ってそれに対応する費用も単位原価である︒
この点
NA
CA
24
号の会報の見解を見ると明らかである︒同会報は製品の価格計算の為の原価は次の一二性格を持つ
必要があると述べている︒即ち︑日原価ほ製品単位の特有の語で述べられるべきである︒口製造原価及び非製造費
用は価格計算に等しく重要である︒国価格計算の為に当座乃至期待原価
( c u r
r e n t
or
a n
t i c i
p a t e
d c o
s t )
が要求
されると述べている︒
24 23
二 ︑
又久保田教授は︑利益計画の一環としての
p r i c
i n g
がCVP関聯で取扱われるので︑価格
直接原価計算と価格政策︵末政︶
直接原価計算と価格政策︵末政︶
しかし久保田教授は従来の原価計算 ② 問題を取引高︑収益の問題に包括され︑他方価格計算自体の問題では単位当りの価格を取り上げられている︒この様に製品一個当りの価格と原価の関係で全部補償︑部分補償の問題を考えねばならぬ︒
③追加的注文の場合の価格低限︑及③
ぴ操業の調節を目的とするが︑基礎的重要問題は短期的休業の場合の価格低限である︒即ち一時的な休業を行うか︑
或は操業を続けるかの選択をなす場合︑基準となる原価の考慮である︒これは単位総原価を回収する事を目的とす
るのではなく︑その内の一部の原価を回収すれば操業を継続する場合︑その部分原価を如何に考えるかが問題であ心iる︒経営費用論では種々の部分原価がとりあげられそれにつき論ぜられている杭︑ここでは特に変動費がその任務
を果すかどうかの問題︑及びそれと直接原価計算との関聯で考えて見たい︒この価格低限の原価としては回避可能
原価との関係が問題となり︑この場合変動費が一般的に妥当なものと考えられる︒即ち変動原価をもって自己の価
格最低限にすれば︑仮りに市揚価格が低下しても︑それ以上の場合には自已の変動原価が補償される事になる︒し
かし注意しなければならないのは溝口教授によって指摘された次の事項である︒即ち﹁変動費を部分補償の基礎と
するというシュクッケルベルグ等の見解を単純に受け入れずに︑これを理論的に厳密に検討した上で︑補償の対象と
t なる回避可能費に近似値としてほぼ等しいとするのである︒その意味で我々はこれを変動費として説明しておく﹂
とされた点である︒従ってこの様な意味において変動費を論ずるのでなければならぬ︒次に変動費と直接原価計算
の関係であるが︑これは直接原価計算が初めから変動原価即ちプロダクト・コストと固定原価即ちピリオッド・コ
ストと分割計算しているが故に︑直接原価計算の︱つの特色として︑価格最低限の計算任務を果すものと多くの人
々によって論じられており︑この点直接原価計算の長所と認めねばならぬ︒ さて部分補償の問題から取り上げると︑部分補償は田休業図操業短縮
ノ9.
ると
思う
︒
ソンの所説に明らかであり︑
一ノ
︵全体原価計算︶でも総原価から各種の固定費を控除して価格最低限をする様に取扱っていたが︑直接原価計算はそ
の算出の手数が省略できる便宜があるにすぎず︑直接原価計算の特色とは認められないと論じられた︒これは原価
計算制度そのものよりその原価を得るか︑何らかの加工をしてその原価を得るかに相違が見られる︒全体原価計算
による場合︑原価計算が行われた後に総費用法︵数学法︶か個別費用法によって総費用を固定費と変動費に分解し︑
一方直接原価計算は初めから変動費を生産物原価のグループに︑固定費を期間原価のグルー
プに区分し集合する︒且直接原価計算は単なる変動費としてではなく変動費即ち生産物原価として取扱う︒この点
から考えると直接原価計算による変動原価が優れており︑やはり価格最低限の計算任務は直接原価計算の特徴であ
つぎに全部補償の問題を考えると長期的にほ原価ほ価格によって補償されなければならない事は前述のニッカー
叉その原価は所謂単位全体原価である事は一云うまでもない︒従って前述の価格最低眼
の計算を主要内容とする部分補償の問題は短期的な性格をもち︑且長期的な全部補償の問題に従属的な役割を果す︒
この様な意味でベイヤ
( B
a y
e r
) ︑ヘップワース
(H
ep
wo
rt
h)
等によって直接原価計算は短期の価格政策目的にの
み役立ち全部補償を内容とする長期の価格政策目的に役立たないと論じられ︑
全部補償計算に有利であるとされる︒しかし直接原価計算を単純に部分補償計算のみの役割を果すと見る事は誤り
である︒これは直接原価計算における固定費即ち期間原価をどの様な形で考慮に入れるかによって全部補償計算が
可能となるからである︒即ち直接原価計算の思考形式の中心になる限界利益と期間原価の組合せによって全部補償⑧ の問題を考えるのである︒それはNACA
の二十一ー一号の会報並びに久保田教授によって次の三つに類型化された︒
直接原価計算と価格政策︵末政︶ 変動費と算出するが︑
一般的には全体原価計算の方がこの
を認められた︒第三の類型については︑更に
の も現われない︒ 即ち久保田教授は次の如く述べられている︒ .
︐
. 第三は変動原価+期間原価である︒直接原価計算と価格政策︵末政︶
第一は変動原価+単純な意味の限界利益である︒
第二は変動原価+期間原価を考慮に入れた限界利益である︒
﹁第
一類
型
第二類型
第三類型
変動原価を基準にし︑総益をもって綜合的判断の手段にするもの︑
したがって︑期間原価はいずれに
変動原価を基準にするのは第一類型と同じであるが︑期間原価をその総益に含めて総益附加とするも 変動原価とともに期間原価も算入する︒したがって直接原価計算であるが総原価の形をとるもの﹂
O l ついでそれぞれの類型について久保田教授は批判を加えられ如︒即ち第一類型は直接原価計算の趣旨を貫徹して いるが︑期間原価の回収には確固たる計算的基準がない︒故に直接原価計算としては︑素朴な価格計算といえるで
あろうと述べられている︒
又第二の類型についてほ限界利益の中に単位当りの期間原価分とその希望利益が含まれ るから全部原価補償と希望純益の計算となる︒従って第一類型より期間原価回収の計算的基準がや
4明確ではある
が︑その基準の具体的な大きさについては漠然としていると述べ︑期間原価を単位取引毎に分割することについて
は直接原価計算は従来の原価計算と五十歩百歩であると論じ︑変動原価と期間原価とを別々に取扱う点にだけ差異 その全部補償の為の価格としては
切法として期間原価の正常叉は標準額を変動原価に加算し︑回法と
六四
れていると思われる︒
六五
して
m a r g i n a l in co me ra t i 0
による期間原価と変動原価を加える方法を挙げ︑り法は期間原価を消費主義で計算
し︑回法は負担能力主義で計算した点に対立的相違を認められた︒しかしこれらの価格計算については直接原価計
以上の問題を要約すると固定費即ち期間原価乃至それに相当する限界利益を変動費に附加すると一云う形で全体原
価を算出しようとするものである︒従って変動原価+固定原価
11
全体原価の方式となり全部補償の計算は達成出来
る事となる︒しかしここで注意しなければならないのは全体原価計算における固定費と直接原価計算における固定
費即ち期間原価が同じ性格を有するかどうかの点である︒生産量と販売量が同一の場合両者は同一になる︒だが生
産量と販売量の一致する事は殆んど少い︒この場合全体原価計算と直接原価計算の固定費の処理は明らかに相違し
て来る︒即ち全体原価計算においては製造の為に要した総固定費は全部製造原価に何等かの配賦基準によって一応
配賦され︑販売されたものに相応するものが売上原価となり︑在庫に相応するものは製品︑仕掛品等の棚卸資産と
なる︒しかし直接原価計算では製造の為に要した総固定費は全部期間の費用即ち期間原価として販売量に結びつけ
られる︒従ってこの考え方によれば原則として固定費即ち期間原価は売上原価部分︵変動費︶にのみ附加される︒
即ち固定費即ち期間原価を販売量によって分割され︑その分割された固定費が変動費に附加される︒故に全休原価
計算により製造の為の総固定費を製造量に分割した単位当り固定費と直接原価計算より導びき出された単位当り固
定費は相違する︒直接原価計算によると全体原価計算によるとで本質的な性格の差異を認めねばならぬ︒叉固定費
を設備費用と看傲し期間の費用として全部吸収しようとする立場から見ればかえって直接原価計算による方法が優
直接
原価
計算
と価
格政
策︵
末政
︶
算としての合理的基礎がないと論じられた︒
直接原価計算と価格政策︵末政︶
しかしながらその様な計算を行うのが直接原価計算の本質であるかは問題であり︑考えねばならない︒この点に
つき久保田教授は最後に直接原価計算の性格を表し︑その任務をつくすには︑﹁変動原価をそれぞれ計上してその
その計画の一環としての売上高収益計算に 補償額を示めすとともに︑期間原価は一括して補償する様な価格計算でなければならない︒そうなるとこの様な条
件を具備する価格計算は
CV Pr el at io ns hi p
によって利益計画をし︑
包括されている価格計算であると一云わねばならない︒その他の価格計算においては直接原価計算の合理的基礎また
はその計算的基準のいずれか一方を犠牲にしなければならない︒この意味において直接原価計算自体で価格計算的
任務をつくしているものには︑何らかの犠牲が払われていることが前掲の三つの類型から知り得るであろう︒﹂と結
O l
hu
論づけられた︒この点注目すべき見解であろうと思う︒
以上製品単位当りについて価格と原価の関聯即ち原価補償の問題を見て来たのであるが︑原価補償の問題につい
て別の見解が見られる︒これは原価と価格のみの関聯で取り上げる単なる意味における価格政策を問題とするので
なく︑操業度政策等の何らかの経営政策との関聯の元に取り上げるものである︒この点溝口教授は﹁いずれにして
も︑費用補償問題はたんなる費用と価格との関聯でなしに︑その関係がなんらかの経営の政策の問題としてとりあ
げられる所にその本質的意義を有するものである︒この経営政策とは具体的には価格政策ないしそれに伴う操業政
策を意味する︒かかる政策との関聯なしに費用自体の立場において補償問題をみることは意義が少いであろう︒要
するにこの問題は純粋の費用理論の領城にとどまるものではなく︑政策問題とのつらなりにおいて考察さるべきも
l l h u
のである︒又アメリカ的な呼称では利益計画ということになる︒﹂と述べておられる︒この見解は注目すぺきものと
考えられるが︑後述の利益計画の一環として価格政策を見て行く立場であると思う︒ 六六
︵未
完︶
11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 註1 N. A. . C A. B u l l e t i n , Re 器a rc h
Series•No.
2 4 . p . 1 6 7 1 .
六七
久 保 田 教 授 前 掲 書 九 十 六 頁 以 下 溝 口 教 授
﹁ 経 営 費 用 論
﹂ 百 七 十 五 頁 山 城 教 授
﹁ 経 営 費 用 論
﹂ 二 百 五 十 三 頁 以 下 溝 口 教 授 前 掲 忠 百 七 十 六 頁 以 下
・ 溝 口 教 授 前 掲 布 百 九 十 一 頁 久 保 田 教 授 前 掲 書 百 頁 百 一 頁 Ba ye r,
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" I s D i r ec t Cost in g t he An sw er
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Th e Jo ur na l o f A cc ou nt an cy . A p r i l . 1 95 5.
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Th e A cc ou nt in g R ev ie w. Ja nu ar y
19 54 .
N. A. C. A. B u l l e t i n , Re se ar ch Se r i e s , N o. 2 4 . p . p .
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久 保 田 教 授 前 掲 書 百 二 頁 以 下 久 保 田 教 授 前 掲 書 百 二 頁 久 保 田 教 授 前 掲 書 百 三 頁 ー 百 十 二 頁 溝 口 教 授 前 掲 書 百 五 十 五 頁
直接原価計算と価格政策︵末政︶ ︵以下次号掲載︶