CFRP 製ロードバイクフレームの最適設計
卒業論文要旨 機能性材料工学研究室 1170022 大島 隆太朗
1. 諸言
優れた材料特性を持つCFRPは,近年では盛んにロードバ イクフレームの材料として使われるようになっている.CFRP の採用により,従来フレームとして使われてきたスチールや アルミ合金に比べて格段にフレーム設計の自由度と調整範囲 を高めることが可能になった.その一方で,強い異方性を持 つCFRPフレームを経験的に最適化するのは難しく,近年で は数値解析ソフトウェアによる最適化が行われることも多く なりつつある.しかしこのような最適化では,3Dモデルを用 いることが多く,形状を大きく変更する概念設計の段階では 非常に使いにくい.
そこで本研究ではCFRP製ロードバイクフレームの概念設 計におけるシンプルで,扱いやすい最適化手法の構築を目指 して,はりモデルをベースとする手法を考案した.
2. 最適化手法 2.1 最適化スキーム
本研究で提案する最適化スキームを図1に示す.ロードバ イクフレームをはりで表現し,本研究では,これを skeleton モデルと呼ぶ. skeletonモデルの作成後,フレーム全体の剛 性に影響の大きい変数を調べるために感度解析を行い,設計 変数を決定する.これにモンテカルロ法を用いて,設計変数 範囲内で乱数によるサンプリングを行い,有効な最適化目標 を決定する.さらに,非線形最適化を行い,最適設計変数(最 適解)を求める.そして,これを満たす最適な積層構成を求 める.なお,本研究では最適設計変数の決定までを行った.
2.2 Skeletonモデル
本研究では,実際のロードバイクフレームのデータから,
skeletonモデルを作成した.その各パーツ名称を図2に示す.
負荷条件
本研究では,図3(a)~(d)に示す4種類の負荷条件を考慮し
た.図3(a)は縦への曲げ,(b)は横への曲げ,(c)は引張,(d)は
ねじりに相当する.
2.3 感度解析および.設計変数の設定
各パーツの厚みを半分に減らした時の剛性変化率を図4に 示す.図より, top, down, seat tubeの3パーツの感度が大き いことが分かった.また図5より本研究で考慮する積層構成 では,縦剛性E1と横剛性G12の関係は1本の曲線で表すこと が出来ることが分かる.よって, top,down ,seat tubeの各パ ーツの厚みtと縦剛性E1の合計6個の設計変数を用いて最適 化を行う.表1に,本研究で用いた設計変数の範囲を示す.
Table.1Details of Design variable range Min. Max.
厚み 0.6 1.4
E1 94 120
厚み 0.6 1.4
E1 91 120
厚み 0.6 3
E1 130 89
Top tube Down tube
Seat tube
Fig.1 Optimal design scheme of road bike frame
]
Fig.2 Skeleton model of road bike frame
(a) Case 1: 3-points Bending (b) Case2: Transverse Bending
(c) Case 1: Tension (d) Case2: Twisting Fig.3 Four load and boundary conditions
3. 最適化結果および考察
3.1 モンテカルロシミュレーション
設計変数の範囲で乱数を振り,モンテカルロシミュレーシ ョンを行った.図6 (a)~(d)に,得られた質量と無次元化ひず みエネルギーの関係を図中緑点で示す.ここで,無次元化ひ ずみエネルギーとは,各負荷条件でのひずみエネルギーをオ リジナル形状の値(図中赤点)で無次元化したものである.
また,図中には,非線形最適化の解を黒点で示されている.
条件1,2,4では重量1.4~1.8kgに分布しているので,重
量5%減もしくは10%増を目標とすることができる.またひ
ずみエネルギーにおいては20%減にすることが出来る.また 条件3のひずみエネルギーはほとんど変化しないので,本研 究では考慮しなくてよい.よってひずみエネルギー20%減,
重量目標値をオリジナルの 95%から 110%の値を最適解の目 標値とする.
3.2 非線形最適化
本研究では,応答曲面法を用いて非線形最適化を行った.
まず,中心複合計画を用いてサンプリング点を求め,FEM解 析によりその点の重量およびひずみエネルギーを計算する.
そして,得られた値から2次の応答曲面を作成した.
目的関数をそれぞれの負荷条件でのひずみエネルギー,制 約条件を重量目標値(90-110%)として,ひずみエネルギー 最小化(剛性最大化)を行った.なお,計算にはMathematica の大域的最適化(Nelder-Mead法)を用いた.図6 (a)~(d)に,得 られた最適解を黒点で示す.
条件1はほぼ下限値が得られており,最適化が上手くいっ た.しかし一部で下限値ではない値が見られたため,応答曲 面の精度がほかの条件よりも悪いと考えられる.最適解の厚 みとE1はtop tube≒down tube<seat tubeであり,厚みを減少さ せ,E1を増加させることで最適値が得られる.
条件2については,厚みがtop tub< down tube < seat tube,剛 性がdown tube < top tub < seat tubeであり,厚みを減少させ,
剛性を増加させることで最適値が得られる.よって,条件 1 と2では,パーツによる影響度が若干異なるものの,設計方 針としてはよく似ていることが分かる.
一方で条件4は厚みがtop tube≒seat tube < down tubeとなっ たが,目標重量値100%を超えるとtop tube < down tube < seat tube と途中で変化する.剛性では最適化をはずした解を除け ばseat tube <top tube≒down tubeとなった,E1の値を変えても 最適値は得られない.つまり条件4は条件1,2と設計方針は 全く異なっており,厚みを減少させ,E1を増加させることで 最適値が得られる.
3.3 最適解の選択
最適解の傾向より条件 4 で最適化すると条件 1 に対する剛 性が大きく低下する。条件 1,2 での最適解は最適値を外した 解は除いて,6 個存在する.その中から全ての負荷条件に対 して 1 番剛性が高い解を本研究の最適解とした.表 1 に最適 解の詳細を示す.この最適解により条件 1 では 17%、条件 2 では 20%、条件 4 では 32%の剛性上昇が期待できる.しかし重 量は 10%増加となってしまった.
Table.2Details of optimal solution
4. 結言
はりモデルに対し,フレームの変更を行わず,FEM解析と
応答局面法を用いた最適化手法を構築することができた.ま た重視する負荷条件での最適化により,従来モデルに比べて 10%の重量の増加だが,その欠点以上のフレーム縦剛性と横 剛性の上昇を得られた.
厚み(mm) E1(GPa) G12(GPa) 重量(kg) wight ratio
top tube 1.40 98.0 15.3
down tube 1.40 95.7 15.7
seat tube 2.74 110.5 24.0
1.77 1.1
Fig.4 Sensitivity analysis of frame stiffness
Fig.5 Relationship between E1 and G12 of CFRP
(a) Case 1 (b) Case 2
(a) Case 3 (b) Case 4 Fig.6Relationship between mass obtained and dimensionless
strain energy