マウスの血液性状に及ぼす鍛錬の影響 第13報 発育 期マウスの鍛錬終了直後における血漿諸酵素活性値 の鍛錬強度、鍛錬頻度及び鍛錬期間の違いによる変 動
著者 中牟田 正幸, 中谷 昭, 松田 正昭
雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学
巻 35
号 2
ページ 95‑107
発行年 1986‑11‑25
その他のタイトル Effects of Physical Training on Blood
Properties in Mice Part 13. Changes in various plasma enzyme activities in young male mice immediately after termination of physical training with different intensities,
URL http://hdl.handle.net/10105/2100
奈良教育大学紀要 第35巻 第2号(自然)昭和61年 Bull. Nara Univ. Educ, Vol.35, No.2 (Nat.) ,1986
マウスの血液性状に及ぼす鍛練の影響
第13報 発育期マウスの鍛練終了直後における 血祭諸酵素活性値の鍛練強度,鍛練頻 度及び鍛練期間の違いによる変動
中牟田 正 幸・中 谷 昭・松 田 正 昭
(奈良教育大学生理学及び衛生学教室) (昭和61年4月30日受理)
Effects of Physical Training on Blood Properties in Mice
Part 13. Changes in various plasma enzyme activities in young male mice immediately after termination of physical training with different intensities, frequencies and durations
Masayuki Nakamuta, Akira Nakatani and Masaaki Matsuda {Laboratory of Physiology and Hygme, Nara University of Education, Nara 630, Japan)
(Received April 30, 1986)
Abstract
Experiments were undertaken to investigate changes in丘ve plasma enzyme activities (GPT, GOT, LDH, CPK and AトP) immediately after the termination of physical training with different intensities, frequencies and durations. 320 young male mice were divided into an untrained and 丘fteen trained groups. They were exhaustively, moderately and mildly trained on the treadmill for 10 and 6 weeks at the rate of 5 and 3 days and also for 3 weeks at the rate of 5 days per week. Results obtained were as follows.
1) In all trained groups, plasma GOT and LDH activities were not innuenced by the physical training.
2) Plasma GPT activity was signi丘cantly lower in both exhaustively and moderately trained groups for 10 weeks at the rate of 5 and 3 days and also in exhaustively trained group for 6 weeks at the rate of 5 days per week than in untrained group.
3) Plasma CPK activity was signi丘cantly higher in both exhaustively and moderately trained groups for 10 weeks at the rate of 5 and 3 days and also for 6 weeks at the rate of 5 days per week than in untrained group.
4) Plasma Al‑P activity was significantly lower in both exhaustively and moderately trained groups for 10 weeks at the rate of 5 days and also in exhaustively trained group for 10 weeks at the rate of 3 days and for 6 weeks at the rate of 5 days per week than in untrained group.
From the above‑mentioned results, it was found that plasma GPT and AトP activities signi丘cantly fell and plasma CPK activity signi丘cantly rose as the intensity, frequency and duration of physical training increased more than a certain degree.
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緒 言
血清(東)中の諸酵素〔グルタミン酸‑ピルビン酸トランスアミナーゼglutamate‑pyruvate transaminase (以下, GPTと略),グルタミン酸‑オキザロ酢酸トランスアミナーゼglutamate‑
oxaloacetate transaminase (以下, GOTと略) ,乳酸脱水素酵素Iactate dehydrogenase (以下, LDHと略),クレアチンフォスフオキナーゼcreatine phosphokinase (以下, CPKと略)及び アルカリ性フォスファクーゼalkaline phosphatase (以下, AトPと略)〕活性値の測定は,臓器 や筋疾患の1つの診断法として,臨床医学上重要視されている.しかし,近年必ずしも器質障害 がなくても,運動負荷や身体鍛練により血清(渠)中の諸酵素活性値に変動のあることが多くの 研究者によって報告されている.殊に井川及び伊藤14'は糖尿病や肥満症などの運動療法による血 宿(衆)酵素活性値の改善を認め,また運動生理学的にも,鍛練により運動の影響が減少し,こ れを運動に対する適応能として捉えた場合興味深いものがあると述べている.
ところで,鍛練による血清(輿)諸酵素活性借の影響について従来より少なからぬ研究がなさ れてきているが,これらの成績を通覧すると,鍛練により低下する(GPT1.7.H.16.17.19‑22.24.29) GOTI AトP9)),上昇する(GPTn>27¥ GOT11.18.271, LDH13.20) CPK5.8.10.12.14.25) LP
'),あるいは変わらない(GPT2 GOT2 り7,19,20,24,26) LDJJ16‑18) CPK16. 26), Al‑P231) など種々の結果が得られ,研究者によりまちまちで一様でない.その理由として,運動の種類, 強度,頻度及び期間などによる鍛練度の違いをはじめ,栄養その他の条件などが影響していると 考えられる.
一般に鍛練処方の条件として,鍛練強度,鍛練頻度及び鍛練期間の3つがあげられるが,その 処方に当たっては,それらの条件のうち1つを対象とするか,あるいはそれらの条件の組み合わ せをとりあげて行うことになる.しかし,ヒトを対象とする実験では,それらの条件を種々組み 合わせて実施することは実際上容易なことでなく,鍛練度を異にした被検者についての研究はほ
とんどない.
そこで本研究では,マウスを用い,鍛錬強度(激度,中等皮,軽度),鍛練頻度(過当たり5, 3日)及び鍛練期間(10, 6, 3週間)を異にした各種鍛練群(15群)と非鍛練群について,鍛 練終了直後における血東中のGPT, GOT, LDH, CPK及びAl‑P活性値が鍛練度の違いにより どのように変動するかを比較検討し鍛練の影響を知ろうとした.
材料と 方法 (1)実験動物
実験動物として4週令の雄マウス(ICR‑JCL系) 320匹を用い,鍛錬群と非鍛錬群に分け,さ らに前者は, 1)過当たり5日の割合で10週間, 2)週当たり3日の割合で10週間, 3)週当た り5日の割合で6週間, 4)過当たり5日の割合で3週間, 5)過当たり3日の割合で6週間に わたり鍛練したいわゆる激鍛練群,中等度鍛練群及び軽鍛練群の15群とした.なお,マウスは1 ケージ当たり5匹ずつ収容し,飼料(日本クレアの固型飼料CE‑2)と水は自由に給与した.
(2)鍛練方法
鍛練に当たっては,動物用トレッドミルを用い,週毎に走行速度と走行時間を増やしていくい
マウスの血液性状に及ぼす鍛練の影響(第13報) 97
わゆる漸増負荷法に従った.なお,鍛練期間が6週間の群は10週間の鍛練群の鍛練開始後第5過 冒,また3週間の群は第8週目から第10週目までそれぞれ鍛練した.
1)激 鍛 練
運動開始の第1週目は,マウスをトレッドミル上での走行に馴れさせる意味を含み,その状態 をみながら10m/分の速度で10分間,次いで第2週目は10m/分の速度で10分間,第3週目は 13m/分の速度で10分間,第4週目は15m/分の速度で10分間,第5週目は15m/分の速度で15 分間,第6週目は18m/分の速度で20分間,第7週目は20m/分の速度で20分間,第8週目は 22m/分の速度で20分間,第9週目は23m/分の速度で23分間及び第10週目は25m/分の速度で
25分間の走行を課した.なお,第2週目以降は上記走行後各週とも1分毎に1m/分ずつの速度 を増やし, 5分前後でalLout もしくはそれに近い状態になるようにした.
2)中等度鍛練
運動開始の第1週目は激鍛練の場合と同じ要缶で10m/分の速度で10分間,第2週目は10m/
分の速度で15分間,第3週目は15m/分の速度で15分間,第4過日は15m/分の速度で20分間, 第5週目は20m/分の速度で20分間,第6週目以降は20m/分の速度に固定し,走行時間のみを 週毎に2分間ずつ増やしていき,第6週目は22分間,第7週目は24分間,第8週目は26分間,節 9週目は28分間及び第10週目は30分間の走行を課した.この際の鍛練度は激鍛錬の大体60‑70^
に相当した.
3)軽 鍛 練
運動開始の第1週目は激鍛練の場合と同じ要領で10m/分の速度で7分間,第2 ・ 3週目は 10m/分の速度で9分間,第4 ・ 5週目は15m/分の速度で12分間,第6週目は20m/分の速度 で13分間,第7週目以降は20m/分の速度に固定し,走行時間のみを週毎に増やしていき,第7 週目は14分間,第8週目は16分間,第9週目は17分間及び第10週目は18分間の走行を課した.こ の際の鍛練度は激鍛練の大体30‑40^に相当した.
(3)採血と試料
各鍛練群及び非鍛練群の採血は鍛練終γ後1日おいて頚動脈を切断して行った.この際,非凝 固剤として微量のヘパリンを混入した.血液は直ちに遠心分離し,血祭を得て試料とした.なお, マウス1匹分の血液を1サンプルとし供した.
(4)定 量 法
定量に当たっては,和光(Wako)の指示する条件で行った.すなわち, GPT及びGOT
はTransaminase CII‑Test Wako (POP・TOOS法), LDHはLactate dehydrogenase CII‑Test Wako (乳酸基質・ジアホラーゼ法), CPKはCPK‑Test Wako及びAトPはAlkaline phosphaK‑Test Wako(フェニルリン酸法)を採用し, U‑1080光電光度計(日立製)を用いて 測定した.なお, GPT及びGOT活性値はKarmen単位(1 Karmen単位/mlは, 0.482国 際単位/lに相当する), LDH活性値はWroblewski単位(1 Wroblewski単位/mlは0.482国 際単位/1に相当する), CPK活性値はmU単位(1 mU単位/1は, 0.482国際単位/1に相当 する)及びAl‑P活性値はKing‑Armstrong 単位(1 King‑Armstrong単位/mlは,血清 100mlが37‑Cで15分間基質に作用してフェノール1mgを生成する醇素量)で表示した.また, 測定時の室温は21‑22‑Cであった.
結 果
各鍛錬群と非鍛練群の鍛練終了直後における血東GPT (表1), GOT (表2), LDH (表3) CPK(表4)及びAトP (表5)活性値の変動については次のとおりである.なお,以下の( ) 内の数値は非鍛練群の絶対量を100とした場合の各鍛練群の指数を示したものである.
(1)血捷GPT活性値の変動
1)週当たり5日の割合で10週間にわたり鍛練した場合
非鍛練群の血衆GPT活性値は38.2K.U/ml (100)であるのに対し,激鍛練群では27.5K.U/
ml (72.0)及び中等度鍛練群では29.OK.U/ml (75.9)の値を示して,両鍛練群とも非鍛練群に 比べ有意(P<0.01)に低下したが,これに対して軽鍛練群では33.3K.U/ml (87.2)で低下の傾 向がみられるものの,有意差がなかった.
2)週当たり3日の割合で10週間にわたり鍛練した場合
激鍛錬群及び中等度鍛練群の血衆GPT活性値はそれぞれ28. 7K. U/ml (75. 1) , 29.5K. U/ml
Table 1. Changes in plasma GPT activity immediately after termination of physical training with different intensities, frequencies and periods (K. U/ml).
Group UT
Activity 38. 2ア7. 7 Index 100 Activity 38. 2土7. 7 Index 100 Activity 38. 2土7. 7 Index 100 Activity 38. 2士7. 7
Index 100 Activity 38. 2士7. 7 Index 100
Index : Value of various trained
ET MoT MiT
27.5ア5.3紳 29.0土4. 7軸 33.3土5.6 72. 0 75. 9 87. 2 28.7土4. 1** 29.5土5.2* 33.8士6. 1
75.1 77.2 3.4 31.1土3.4* 33.6±3.5 33.9士4.7
81.4 87. 0 3.7 38.6土3.3 37.4士5.8 37.1土6.7
101.0 97. 9 97. 1 38.6士6.1 37.1土3.6 38.1士6.1
101.0 97. 1 99.7
**P<0.001, *P<0. 05
groups, relative to the activity of untrained group UT: Untrained group
ET: Exhaustively trained group MoT : Moderately trained group MiT : Mildly trained group
A group was trained for 10 weeks at the rate of 5 days per week, B group was trained for 10 weeks at the rate of 3 days per week, C group was trained for 6 weeks at the rate of 5 days per week, D group was trained for 6 weeks at the rate of 3 days per week and E group wastrained for3 weeks at the rate of 5 days per week.
マウスの血液性状に及ぼす鍛練の影響(第13報) 99
(77.2)の倍を示し,両鍛練群とも非鍛練群に比べ有意(前者はPく0.01,後者はP<0.05)に 低下したが,これに対して軽鍛練群では33.8K.U/ml (88.4)で低下の傾向がみられるものの, 有意差がなかった.
3)週当たり5日の割合で6週間にわたり鍛練した場合
激鍛練群の血祭GPT活性値は31.1K.U/ml (81.4)の値を示し,非鍛練群に比べ有意(P<
0.05)に低下したが,これに対して中等度鍛練群及び軽鍛練群ではそれぞれ33.6K.U/ml (87.0), 33.9K.U/m王 3.7)で低下の傾向がみられるものの,有意差がなかった.
4)週当たり3日の割合で6週間にわたり鍛練した場合
激鍛練群,中等度鍛錬群及び軽鍛練群の血衆GPT活性値は37.l‑‑38.6K.U/ml (97.1‑
101.0)の範匡酎こあり,いずれもが非鍛練群に比べ有意差がなかった.
5)週当たり5日の割合で3週間にわたり鍛練した場合
激鍛練群,中等度鍛練群及び軽鍛練群の血費GPT活性値は37. 1‑38. 6K. U/ml(97. 1‑101. 0) の範囲にあり,いずれもが非鍛練群に比べ有意差がなかった.
以上の結果から,血衆GPT活性値は週当たり5, 3日の割合で10週間にわたる激鍛練及び中 等度鍛練により,また週当たり5日の割合で6週間にわたる激鍛練によって有意に低下すること がわかった.
(2)血渡GOT活性値の変動
1)週当たり5口の割合で10週間にわたり鍛練した場合
非鍛練郡の血祭GOT活性値は160.5K.U/ml (100)であるのに対し,激鍛練群,中等度鍛 練群及び軽鍛練群では154.3‑160.5K.U/ml (96.1‑100)の範囲にあり,いずれもが非鍛練群 のものに比べ有意差がなかった.
2)遇当たり3日の割合で10週間にわたり鍛錬した場合
Table 2. Changes in plasma GOT activity immediately after termination of physical training with different intensities, frequencies and periods (K. U/ml).
Group UT ET MoT MiT
E
Activity 160. 5土34. 3 Index 100 Activity 160. 5士34. 3 Index 100 Activity 160. 5士34. 3 Index 100 Activity 160. 5士34. 3 Index 100 Activity 160. 5土34. 3 Index 100
154.3士22. 0 155. 1士32.8 160.5土26. 1 96. 1 96. 6 100 150.7土31.9 154.3士28.8 165.2士26.4
94.0 96. 1 103.0 156.0士27.5 163.4士24.3 153. 1士27.9
97. 2 102. 0 95. 4 161.9土29. 1 159. 1士24.7 158.0士30.4
101.0 99. 1 98.4 160. 5土35.6 158.7士26.4 156.4士25. 6
100 98. 9 97. 4
激鍛練群,中等度鍛練群及び軽鍛練群の血祭GOT活性値は150.7‑165.2K.U/ml (94.7‑
103.0)の範囲にあり,いずれもが非鍛練群に比べ有意差がなかった.
3)週当たり3日の割合で6週間にわたり鍛練した場合
激鍛練群,中等度鍛練群及び軽鍛練群の血泉GOT活性値は153.1‑163.4K. U/ml (95.4‑
102.0)の範囲にあり,いずれもが非鍛練群に比べ有意差がなかぅた.
4)過当たり3日の割合で6週間にわたり鍛練した場合
激鍛錬群,中等度鍛練群及び軽鍛練群の血祭GOT活性値は158.0‑161.9K.U/ml (98.4‑
101.0)の範囲にあり,いずれもが非鍛練群に比べ有意差がなかった.
5)過当たり5日の割合で3週間にわたり鍛練した場合
激鍛錬群,中等度鍛錬群及び軽鍛練群の血衆GOT活性値は156.4‑160.5K.U/ml (97.4‑
100)の範囲にあり,いずれもが非鍛練群に比べ有意差がなかった.
以上の結果から,血東GOT活性値はいずれの鍛練群においても有意差がなく,鍛練の影響 がないことがわかった.
(3)血兼LDH活性値の変動
1)週当たり5日の割合で10週間にわたり鍛練した場合
非鍛錬群の血祭LDH活性倍は2027W.U/ml (100)であるのに対し,激鍛練群,中等度鍛練 群及び軽鍛練群では2044‑2100W.U/ml (101.0‑103.8)の範囲にあり,いずれもが非鍛練群に 比べ有意差がなかった.
2)週当たり3日の割合で10週間にわたり鍛練した場合
激鍛練群,中等度鍛錬群及び軽鍛練群のLDH活性値は1968‑2133W.U/ml (97.2‑105.4) の範囲にあり,いずれもが非鍛練群に比べ有意差がなかった.
3)週当たり5日の割合で6週間にわたり鍛練した場合
Table 3. Changes in plasma LDH activity immediately after termination of physical training with different intensities, frequencies and periods (W. U/ml).
Group UT ET MoT MiT
Activity 2047土97 Index 100 Activity
Index Activity Index Activity Index Activity Index
f‑t‑h‑t‑C^CT>CTiO^土oO土oO士oO士o0t‑i‑It‑I‑It‑r‑Ht‑T‑I^J"‑tf‑*Tl"cDOOOtN(NloqC^I
2061土188 2044土135 2100土224 101.8 101.0 103.8 1968土234 2043土 90 2133土203
97. 2 100. 9 105. 4 1994士237 2003土103 2098土167
3. 5 99.0 103.7 2190士220 2157土209 2082土121
108. 2 106.6 102.9 2123土252 2027土202 2041土249
104. 9 100. 1 100. 8
マウスの血液性状に及ぼす鍛錬の影響(第13報) 101
激鍛錬現車等度鍛錬群及び軽鍛練群の血祭LDH活性値は1994‑2098W. U/ml (98. 5‑103. 7) の範囲にあり,いずれもが非鍛練群に比べ有意差がなかった.
4)週当たり3日の割合で6週間にわたり鍛練した場合
激鍛練群・中等度鍛練群及び軽鍛練群の血衆LDH活性債は2082‑2190W.U/ml (102.9‑
108.2)の範囲にあり,いずれもが非鍛練群に比べ有意差がなかった.
5)週当たり5日の割合で3週間にわたり鍛練した場合
激鍛練群,中等皮鍛練群及び軽鍛練群の血祭LDH活性値は204ト2123W. U/ml (100. 8^104. 9) の範囲にあり,いずれもが非鍛錬群に比べ有意差がなかった.
以上の結果から,血祭LDH活性値はいずれの鍛練群においても有意差がなく,鍛練の影響 がないことがわかった.
(4)血兼CPK活性値の変動
1)退当たり5日の割合で10週間にわたり鍛練した場合
非鍛練群の血東CPK活性楢は1963mU/ml (100)であるのに対し,激鍛練群では2364mU/
ml (120.5)及び中等度鍛練群では2180mU/ml (111.1)の倍を示し,両鍛練群とも非鍛練群に 比べ有意(P<0.001)に上昇したが,これに対して軽鍛練群では2065mU/ml (105.2)となり有 意差がなかった.
2)週当たり3日の割合で10週間にわたり鍛練した場合
激鍛練群及び中等度鍛練群の血衆CPK活性値はそれぞれ2250mU/ml (114. 6), 2180mU/m]
(111.1)の楢を示し,両鍛練群とも非鍛練群に比べ有意(P<0.001)に上昇したが,これに対 して軽鍛練群では1956mU/m] (99.6)となり有意差がなかった.
3)週当たり5Hの割合で6週間にわたり鍛練した場合
Table 4. Changes in plasma CPK activity immediately after termination of physical training with di斤erent intensities, frequencies and periods (m. U/ml).
Group UT
Activity 1963士63 Index 100 Activity 1963土63
Index 100 Activity 1963士63 Index 100 Activity 1963土63 Index 100 Acitvity 1963士63 Index 100
ET MoT MiT
2364ア134叫 2180ア105*軸 2065士98 120. 5 111. 1 105.2 2250土72*榊 2180土63書棚 1956ア53
114.6 111. 1 99. 6 2302士120軸 2230土127榊 1897士120
117.2 113. 6 96.6 1945土61 1906士29 2031士55
99. 1 97. 1 103. 5 2015士53 1984± 1971士81
102. 6 101. 0 100. 4 軸*P<0. 001
激鍛練群及び中等度鍛練群の血祭CPK活性値はそれぞれ2302mU/ml (117.2), 2230mU/
(113.6)の値を示し,両鍛練群とも非鍛練群に比べ有意(P<0.001)に上昇したが,これに対 して軽鍛練群では1897mU/ml (96.7)となり有意差がなかった.
4)週当たり3日の割合で6週間にわたり鍛練した場合
激鍛練群,中等度鍛練群及び軽鍛練群の血祭CPK活性値は1906‑2031mU/ml (97. 1‑103. 5) の範囲にあり,いずれもが非鍛練群に比べ有意差がなかった.
5)過当たり5日の割合で3週間にわたり鍛練した場合
激鍛練群,中等度鍛錬群及び軽鍛錬群の血衆CPK活性値は1971‑2015mU/ml (100. 4‑102. 6) の範囲にあり,いずれもが非鍛練群に比べ有意差がなかった.
以上の結果から,血衆CPK活性値は週当たり5日の割合で6週間以上,また過当たり3日の 割合で10週間にわたる激鍛練及び中等度鍛練によって有意に上昇することがわかった.
(5)血兼Al‑P活性値の変動
1)週当たり5日の割合で10週間にわたり鍛練した場合
非鍛練群の血東ALP活性倍は5.9K‑A.U/ml (100)であるのに対し,激鍛練群では4.8K‑
A.U/ml (81.4)及び中等度鍛練群では5.1K‑A.U/ml (86.4)の値を示し,いずれもが非鍛練 群に比べ有意(P<0.05)に低下したが,これに対して軽鍛練群では5.4K‑A.U/ml (91.5)と なり有意差がなかった.
2)週当たり3日の割合で10週間にわたり鍛練した場合
激鍛練群の血祭CPK活性値は5.1K‑A.U/ml (86.4)の値を示し,非鍛練群に比べ有意(P
<0.05)に低下したが,これに対して中等度鍛練群では5.2K‑A.U/ml (88.1)及び軽鍛練群で は5.3K‑A.U/ml (89. となり有意差がなかった.
Table 5. Changes in plasma AトP activity immediately after termination of physical training with different intensities, frequencies and periods (K‑A. U/ml).
Group UT
Activity 5. 9土0. 8 Index 100 Activity 5. 9士0. 8 Index 100 Activity 5. 9土0. 8 Index 100 Activity 5. 9土0. 8 Index 100 Activity 5. 9士0. 8 Index 100
ET MoT MiT
4.8土1.2* 5.1土0.9* 5.4土1.3 81.4 86.4 91.5 5.l上o.9* 5.2土0.9 5.3士0. 5
3.4 3.1
4.9土1.0* 5.5土0.9 5.8土0.9 83. 1 93.2 98.3 5.8士0.7 6.0士0.7 6.1士0.9
3.3 101. 7 103.7 5.8土0.9 6.1士0.9 5.9土0.7
3. 3 103. 4 100
*P<0. 05
マウスの血液性状に及ぼす鍛練の影響(第13報) 103 3)週当たり5日の割合で6週間にわたり鍛練した場合
激鍛錬群の血祭Al‑P活性倍は4.9K‑A.U/ml (83.1)の値を示し,非鍛練群に比べ有意(P
<0.05)に低下したが,これに対して中等度鍛練群では5.5K‑A.U/ml (93.2)及び軽鍛練群で は5.8K‑A.U/ml (98.3)となり有意差がなかった.
4)週当たり3日の割合で6週間にわたり鍛練した場合
激鍛練群,中等度鍛練及び軽鍛練群のAトP活性債は5.8‑6.IK‑A.U/ml (98.3 103.7) の範囲にあり,いずれもが非鍛練群に比べ有意差がなかった.
5)週当たり5日の割合で3週間にわたり鍛練した場合
激鍛練群,中等度鍛練群及び軽鍛練群のAトP活性値は5.8‑6.IK‑A.U/ml (98.3‑103.7) の範囲にあり,いずれもが非鍛練群に比べ有意差がなかった.
以上の結果から,血衆AトP活性値は週当たり5日の割合で6週間以上の激鍛練及び10週間 の中等度鍛練により,また週当たり3日の割合で10週間の激鍛練によって有意に低下することが わかった.
考 察
上述したように,鍛練による血清(東)諸酵素活性債の変動については多くの研究者により報 告されているが,これらの成績は鍛練の種類,強度,頻度及び期間など鍛練度の違いによってま
ちまちで一致していない.
まず第1に, GPT活性倍についてみると,青木及び高岡1)は一般成人男子(日常定期的に運 動していない者)にトレッドミル走(10分/冒, 3日/過, 5週間)香,畑ら7)は一般成人男子 にサーキットトレーニングやジョギングなど14‑16種目の運動(3‑5回/ 2週間, 20‑38回) 香,井川及び伊藤14)は一般成人男子,肥満成人男子,一般車高年者男子に自転車エルゴメータ‑
走(60‑80%最大酸素摂取量, 10‑20分/日, 3‑6日/過, 6週間)杏,井川ら15)は一般成人 男子,女子にグランド走やトレッドミル走(40‑705」最大酸素摂取量, 20分/日, 3 日/過, 2‑5カ月間)を,伊藤ら20‑22)は一般成人男子に自転車エルゴメータ走(ウオーミングアップ+
定量的トレーニング5分/日, 3日/過, 3 週間),日常比較的に運動している中高年者男子 に自転車エルゴメーター走m%最大酸素摂取量, 20分/日, 6日/過, 6週間)及び一般成人 女子に自転車エルゴメーター走やランニング(20分/回, 3回/日, 4日/過, 8週間)香,井 関ら19'は一般車高年者男子に自転車エルゴメーター走(60‑70^最大酸素摂取量, 2 日/過, 3カ月間)を行ったところ,また井川ら16)は一般成人男子,女子と日常定期的にランニングして いる成人男子,女子(20‑30分/日, 3 日/過),山岡ら29)は軽作業者,中等度作業者,香 作業者及び中谷ら24'はラットの鍛練群(水車式自由運動, 11週間)と非鍛練群について比較した ところ, GPT活性倍は鍛練により,あるいは日常身体運動をしている者は一般成人よりも有意 に低下,もしくはその傾向を示したと報告している.これに対して星ら11)は大学陸上中長距離選 手男子と一般大学生男子及び富原ら27)は平均10年以上走行運動を継続している中高年者男子と一 般中高年者男子について比較したところ, GPT活性値は鍛練者(群)が非鍛練者(群)よりも有 意に上昇もしくはその傾向を示し,またFowlerら2)は一般成人男子にトレッドミル走(5マイ ル/時, 15分)を,池上ら18)は自衛官に器械体操,長距離走,バレーボール,ハンドボール,サ
ッカー,柔道,銃剣這,水泳など(2時間10分/日, 6日/過, 10カ月間)を行い,また臼谷
ら28'は農業従事者と一般市民及び白石ら26)はラットの鍛練群(水車式自由運動)と非鍛練群の6 8・10・15・20過令時について比較したところ, GPT活性値は鍛練により,あるいは鍛練者 (群)と非鍛練者(群)の問に有意差がなかったと報告している.
以上のように, GPT活性値は鍛練により,また鍛練者(群)と非鍛練者(群)の違いによっ て低下する,上昇する,あるいは変わらないなど種々の結果が得られている.しかし,本実験に おけるマウスのGPT活性値は,週当たり5, 3日の割合で10週間の激鍛練群及び中等度鍛練群, また週当たり5日の割合で6週間の激鍛練群において,有意に低下したが,その他の鍛練群では 鍛練の影響がみられなかった.すなわち, GPT活性値は過当たり3日の割合で10週間にわたる
中等度以上の鍛練により,また週当たり5日の割合で6週間以上にわたる激鍛練によって有意に 低下することが明らかになった.
第2に, GOT活性値についてみると,上記のFowlerら2',畑ら7',井川ら16,17)井関ら19' 及び伊藤ら20)は一般成人男子に鍛練を, Hunter and Cntz13'は一般成人男子に自転車エルゴメ ータ‑走(毎分心拍数150, 30分/0, 3日/過, lo過問)を行い,また上記の中谷ら24'及び白 石ら26'はマウスの鍛練群と非鍛練群について比較したところ, GOT活性値は鍛練により,ある いは鍛練群と非鍛練群の間に有意差がなく,これに対して上記の星ら11),池上ら18)及び富原ら27) は鍛練者のGOT活性値が非鍛練者よりも高く,一方上記の青木及び高岡1)と伊藤ら21,22)は一 般成人男子に鍛練を行ったところ,有意に低下もしくはその傾向を示したと報告している.
以上のように, GOT活性債は鍛練により,また鍛練者(群)と非鍛練者(群)の違いによっ て変わらない,上昇する,あるいは低下するなど種々の結果が得られている.しかし,本実験に おけるマウスのGOT活性値は,いずれの鍛練群においても,非鍛錬群に比べ有意差がなく, 鍛練による影響がないことが明らかになった.
第3に, LDH活性値についてみると,上記の青木及び高閲l',井川ら16,17)池上ら18)t 富原 ら27)は一般成人男子に鍛練を行い,また上記の白石ら26'はマウスの鍛練群と非鍛練群について比 較したところ, LDH活性値は鍛練により,あるいは鍛練群と非鍛練群の間に有意差がなく,こ れに対して上記のHunter and Critz131及び伊藤ら20)は一般成人男子に鍛練を行ったところ,育 意に上昇したと報告している.
以上のように, LDH活性値は鍛練により,また鍛練者(那)と非鍛練者(群)の違いによっ て変わらない,上昇するなどの結果が得られている.しかし,本実験におけるマウスのLDH活 性値は,いずれの鍛練群においても,非鍛練群に比べ有意差がなく,鍛練による影響がないこと が明らかになった.
第4に, CPK活性値についてみると,撮居ら12'は大学運動部員(12種目)と一般大学生につ いて種目別に比較したところ,前者は後者よりも有意に高く,またHaralambie61, Hess8), Highmanl 長嶺25)上記の井川及び伊藤14)は日頃定期的に運動している者はCPK活性伯が高 いか,もしくはその傾向があり,これに対して上記の井川ら16'及び白石ら26)は鍛練者(群)と非 鍛練老(群)の間に有意差がなかったと報告している.
以上のように, CPK活性値は鍛錬により,また鍛練者(群)と非鍛錬者(翠)の違いによっ て上昇する,あるいは変わらないなどの結果が得られている.しかし,本実験におけるマウスの CPK活性値は,週当たり5日の割合で10週間の激鍛練群及び中等度鍛練群,また週当たり3日 の割合で10週間及び5日の割合で6週間の激鍛練群において,有意に上昇したが,その他の鍛錬 群では鍛練による影響がみられなかった.すなわち, CPK活性値は週当たり5日の割合で6過
マウスの血液性状に及ぼす鍛練の影菅(第13報) 105
間以上,また過当たり3日以上の割合で10週間にわたる中等度以上の鍛練によって有意に上昇す ることが明らかになった.
第5に, Al‑P活性値についてみると,日野ら9'は空手熟練者と未熟練者の修練前後を比較し たところ,前者は後者よりも有意に低く,これに対して上記の臼谷ら28'は農業従事者は一般市民 よりもやや高く,また伊藤ら23'は大学陸上競技男子選手と一般大学生男子の間に有意差がなかっ たと報告している.
以上のように, AトP活性値は鍛練者と非鍛錬者の違いによって低下する,上昇する,あるい は変わらないなど種々の結果が得られている.しかし,本実験におけるマウスのAトP活性値 は,過当たり5日の割合で10週間の激鍛錬群及び中等度鍛練群,また週当たり3日の割合で10週 間及び5日の割合で6週間の激鍛練群において,有意に上昇したが,その他の鍛練群では鍛練に よる影響がみられなかった.すなわち, Al‑P活性値は週当たり5日の割合で6週間以上及び週 当たり3日以上の割合で10週間の激鍛練,また週当たり5日の割合で10週間にわたる中等度鍛練 によって有意に低下することが明らかになった.
ところで,血清(輿)諸酵素活性倍の鍛練による変動の機序については現在のところ不明な良 が多い.後藤及び提4'は運動負荷時に血清(輿)諸酵素活性値が増加する理由として, 1)細胞 の損傷による細胞からの放出, 2)細胞膜透過性の変化に伴う遊出, 3)細胞内における酵素産 生の上昇または低下, 4)酵素の排浬分泌の障害, 5)血流中における酵素の活性化ないし阻害 物質による変化などをあげている.本実験では,上記酵素のうち,鍛練により血衆GPT及び Al‑P活性値が低下し,一方血祭CPK活性値が上昇することを認めた.まずGPTやAトP は主に肝細胞に多く含まれているが,上記の機序に鑑みれば,激しい運動は肝臓への血流量の低 下をきたして低酸素血症hypoxiaの状態を起こし,そのため肝細胞の損傷・破壊,あるいは細 胞膜透過性の増大となり, GPT及びAトPが肝細胞から逸脱して血流中へ遊出すると考えられ る.しかし,鍛錬を長く継続していくうちに,体重や体脂肪の減少に伴い,肝機能の改善も進む ことによって肝臓の負担も軽減され,その結果肝臓からのGPT及びAトPの逸脱が減少し,血 祭GPT及びAトP活性値が鍛練前よりも一層低下したのでないかと推察される.また, CPK は主に骨格筋に多く含まれているが,これも上記の機序に鑑みれば,激しい運動は筋細胞の損傷
・破壊,あるいは細胞膜透過性の増大をきたし,その結果筋肉からのCPKの逸脱が起こり血流 中へ遊出すると考えられる.しかし,鍛練を長く継続していくうちに,筋量の増加に伴い,筋 収縮エネルギー代謝が盛んになり,アデノシン三燐酸(ATP)の再合成に深く関与するCPK が筋細胞内に多く生成され,その結果血祭CPK活性値が鍛練前よりも一層上昇したのでないか
と推察される.上述のような鍛練による血東GPT及びAトP活性債の低下,あるいは血衆CPK 活性値の上昇の機序については不明の点が多く,今後の検討を要する.一方, Gardeer and Bratton31, Halonen and Konttmen61及び Hunter and Critz13'は鍛練により血東GOT 及び LDH活性値が変わらなかった理由として,行われた運動の強さや期間が細胞内酵素の生成を元 進させるのに十分でなかったと述べているが,本実験におけるマウスの結果からみて鍛練の強度, 頻度及び期間は影響がないものと考えられる.
摘 要
マウスを用い,鍛錬強度(激度,中等皮,軽度),鍛練頻度(週当たり5, 3日)及び鍛練期
間(10, 6, 3週間)を異にする各種鍛練を行った際,血祭諸酵素(GPT, GOT, LDH, CPK 及びAトP)活性倍が鍛練終了直後にどのように変動するかについて比較検討した.その結果は 次のとおりである.
1)血東GOT及びLDH活性値はいずれの鍛練群においても非鍛練群に比べ変わらなかっ た.
2)血衆GPT活性値は,週当たり5, 3日の割合で10週間にわたる激鍛練群及び中等度鍛 練群,また週当たり5日の割合で6週間にわたる激鍛練において,非鍛練群に比べ有意に低下し た.
3)血東CPK活性値は,過当たり5, 3日の割合で10週間,また週当たり5日の割合で6 週間にわたる激鍛練群及び中等度鍛練群において,非鍛練群に比べ有意に上昇した.
4)血東AトP活性値は,週当たり5日の割合で10週間にわたる激鍛練群及び中等度鍛練群, また週当たり5日の割合で6週間及び逓当たり3日の割合で10週間にわたる激鍛練群において, 非鍛練群に比べ有意に低下した.
以上の結果から,鍛練の強度,頻度及び期間がある程度以上増すにつれて,上記諸酵素のうち 血衆GPT及びAトP活性値は有意に低下し,また血東CPK活性値は有意に上昇することがわ かった.なお,本研究の要旨は昭和61年第41回日本体力医学会大会において発表した.なお,実 験に当たり専攻学生の協力を得た.ここに深く謝意を表する.
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