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著者 中牟田 正幸, 中谷 昭

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

マウスの血液性状に及ぼす鍛錬の影響 第10報 発情 期マウスの中等度鍛錬群と非鍛錬群の運動負荷後に おける血糖量及び血中乳酸量の変動

著者 中牟田 正幸, 中谷 昭

雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学

巻 33

号 2

ページ 81‑87

発行年 1984‑11‑26

その他のタイトル Effects of Physical Training on Blood

Properties in Mice Part 10. Changes in blood sugar and blood lactate concentrations in young male mice after termination of exercise load in untrained and moderately trained

groups

URL http://hdl.handle.net/10105/2230

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マウスの血液性状に及ぼす鍛練の影響

第10報 発育期マウスの中等慶鍛練群と非鍛練群の運動負荷後に おける血糖景及び血中乳酸黄の変動

申牟 田正幸・中 谷   昭

(奈良教育大学生理学及び衛生学教室) (昭和59年4月28R受理)

Effects of Physical Training on Blood Properties in Mice

Part 10. Changes in blood sugar and blood lactate concentrations in young male mice after termination of exercise load in untrained and moderately trained groups

Masayuki Nakamuta and Akira Nakatani

{Laboratory of Physiology and Hygiene, Nara University of Education, Nara 630, Japan) (Received April 28, 1984)

Abstract

Experiments were undertaken to investigate changes in blood sugar and blood lactate concentrations after termination of exercise which was exhaustively loaded with the same intensity for 10 minutes on the treadmill in untrained and trained groups. Animals examined in these experiment were 700 young male mice and they were divided into untrained and trained groups. The latter was moderately trained on the treadmill for 10 weeks at the rate of 5 days per week. Results obtained were as follows.

In untrained and moderately trained groups, blood sugar concentration significantly decreased, reaching the lowest measured values, and blood lactate concentration markedly increased, reaching the highest measured values immediately after and 15 minutes after termination of exercise, but these blood components recovered to the resting level 30 minutes after exercise. And also the ratios of decrease in blood sugar concentration and of increase in blood lactate concentration in moderately trained group were much smaller in comparison with those in untrained group.

From results mentioned above, it was found that concentrations of blood sugar and blood lactate were controlled by physical training.

各種強度の運動を負荷すると,血糖量3'▲'7 9>11>14‑18>20 22)や血中乳酸量l‑6>8 12.16‑22)

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が運動中,運動後に変動することは,従釆からよく知られている.しかし,鍛練者と非鍛練者 に対し運動を負荷LT:磨,血糖量及び血中乳酸量が運動終了後どのように変動するかについて の報告3>17>20>22)は比較的少なく,殊に鍛練度(激度,中等度及び軽度)の違いによってど のような差異があるかについてはほとんど検討されていない.その理由は,鍛練度め異なる被 検者を対象としての実験が実際上容易でないことである・

さきに著者ら13)は.マウスに対し過当たり5日の割合で10週間にわたり中等度鍛練及び激鍛 練を行ったところ,両群とも血糖量及び血中乳酸量が有意に減少し,しかも前者は後者に比べ て明らかに減少の程度が小さいことがわかった.

そこで本研究では,その一段階として,上述したように,マウスを用い,週当たり5日の割 合で10週間にわたり運動を行ったいわゆる中等度鍛練群と非鍛練群に対し,同一強度の激運動

を負荷した際,血糖量及び血中乳酸量が運動終了後どのように変動するかについて比較検討し た.

材料と 方法

(1)実験動物

実験動物としては, 4週齢の雄マウス(ICR‑JCL系) 700匹を用い,中等度鍛練群350匹と 非鍛練群350匹に分けた.なお,マウスは1ケージ当たり5匹ずつ収容し,飼料(日本クレア の固型飼料CE‑2)と水は自由に給与した.

(2)鍛練方法

鍛練に当たっては.第4報と13)同様に,動物用トレッドミルを用い,週当たり5日の割合で 10週血にわたり中等度運動を行った.すなわち,運動開始の第1週目は10m/分の速度で10分 間,第2週目以降は漸増負荷法に従って走行の速度と時閲を増やし,最終の第10週目は20m/分 で30分間の運動に',アるようにした.この際の運動強度は激運動の大体60‑70%に相当した.

(3)運動負荷方法

車等度鍛練群と非鍛練群に対する運動負荷に当たっては,動物用トレッドミルを用い, M‑

強度の激運動を10分間行った.すなわち,運動開始の1分間目は15m/分, 2‑3分間Hは 20m/分, 4  分間日は25m/分,最終の10分間日は 30m/分 の速度となるようにした.ら お,この種の運動負荷は,非鍛練群にとっては激度であったが,中等度鍛練群に対する生体負 担度は必ずしも大きくt‑かったように観察された.

(4)採血と試料

採血は両群とも運動前,運動終了直後, 15分後, 30分後及び60分後の計5回にわたり頚動脈 を切断して行っf=.血液は6‑8匹分をプールして1サンプルとし,遠心分離後血菜を得て試 料とした.

(5)定 量 法

血糖はBlood‑Sugar‑God‑Perid‑Test及び血中乳酸はLactate‑UV‑Testにより測定した.

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結     果 (1)血糖量の変動

非鍛練群及び中等度鍛練群の運動前と運動終了後における血糖量の変動は図1 (濃度) , 2 (指数)に示すとおりである.なお,以下の( )内の数値は運動前の濃度を100とした場合

Fig. 1. Changes in the absolute concentration of blood sugar before and after exercise load in untrained and moderately traind groups. Values are means 士SD.

; Untrained group, ○ '. Moderately trained group.

rest 0  15  30       60 Time(min)

Fig. 2. Changes in the relative concentration of blood sugar before and after exer‑

cise load in untrained and moderately trained groups (index after exercise load, relative to the value before it)'

0.'Untrained: group, ○ : Moderately

trained group.

の運動後の濃度を指数で示したものである.図に示すように,非鍛練群の血糖量は運動前では 176.8士6.3mg/dl (100)であるのに対し,運動終了直後では136.3士3.0mg/dl (77.1)で最

も低く, 15分後では142.0士9.7 (80.3)となり,いずれもが運動前に比べて有意(P<0.001) に減少するが, 30分後では179.3士9.4mg/dl (101.4)となって運動前の水準に回復した.〜

万,中等度鍛練群の血糖量は運動前では164.4士8.7mg/dl (100)であるのに対し,運動終了 直後では146.2士2.5mg/dl (89.9)で最も低く, 15分後では151.7士7.2mg/dl (92.3)とな り,いずれもが運動前に比べて有意(前者はP<0.01,後者はP<0.05)に減少するが, 30分 後では170.0土4.lmg/dl (103.4)となって運動前の水準に回復した.いま,非鍛練群と中等 度鍛練群の血糖量の変動を指数で比べると,前者は後者よりも運動終了直後においてその差 12.8%, 15分後においてその差12.0%の減少を示した.

(2)乳酸量の変動

非鍛練群及び中等度鍛練群の運動前と運動終了後における乳酸量の変動は図3 (濃度) , 4 (指数)に示すとおりである.図に示すように,非鍛練群の乳酸量は運動前では29.3ア1.0

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中牟田正幸・中谷 昭

300

rest O  15  30      16O Time(min)

Fig. 3. Changes in the absolute concentration of plasma lactate before and after ex・

ercise load in untrained and moderately trained groups. Values are means土 SD. # :Untrained group, ○ : Mod‑

erately trained group.

rest 0  1   30       60 Time(min)

Fig. 4. Changes in the relative concentration of plasma lactate before and after exercise load in untrained and moder‑

ately trained groups. £(index after ex.

ercise load, relative to the value before

it). # :Untrained group, ○ :Mod‑

erately trained group.

mg/dl (100)であるのに対し,運動終了直後では83.8土7.7mg/dl (286.0)で最も高く, 15分 後では41.7士5.4mg/dl (142.3)となり,いずれもが運動前に比べて有意(P<0.001)に増 加するが, 30分後では27.7土4.4mg/dl (94.5)となって運動前の水準に回復した.一方,中 等度鍛練群の乳酸量は運動前では24.6土0.9mg/dl (100)であるのに対し,運動終了直後では 42.0土5.9mg/dl (170.7)と最も高く, 15分後では34.5土5.0mg/dl (140.2)となり,いずれ

もが運動前に比べて有意(P<0.001)に増加するが, 30分後では 24.6土1.8mg/dl (100)と なって運動前の水準に回復した.いま,非鍛練群と中等度鍛練群の乳酸量の変動を指数で比べ ると,前者は後者よりも運動終了直後においてその差115.3%の増加を示すが, 15分後におい ては両群間にほとんど差異がみられなかった.

考     察 (1)血糖量の変動

上述のように,運動を負荷した際の血糖量の変動については,鍛練者または非鍛練者を対象 とした多くの研究があるが,両者の間にどのような差異があるかについての報告は少ない.

Crescitelli et al.3)は鍛練者と非鍛練者にM一塁の運動を行ったところ,血糖量は両者とも運 動後減少するが,前者は後者よりも変動が小さかったことを,吉岡22)は長距離選手と一般学 生に10‑20Kmの走行を行ったところ,前者はIOKm以上で,後者は1‑2Kmで血糖量の増 加することを認め,鍛練効果のあることを,まtz Rennie et al.17)は自転車競技選手と非鍛練

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者に同一強度の運動を行ったところ,前者は後者よりも運動後50分まで高い値を示すが, 60分 後ではほぼ同量まで減少し, 2‑3時間後では運動前の水準に回復することを報告している.

さらに Tsutsumi et al.20;>はトレ‑ニングされた長距離走者と非トレーニング者に運動時の 心拍数がほぼ同じになるように,そしてはぼオールアウトになるような運動を行ったところ, 前者は運動直後著しく増加するが,後者ではほとんど変動がないか,むしろ減少の傾向を示す

ことを報告している.以上の結果は研究者によってまちまちで一定していないが,これは運動 の種白,程度,時間,鍛練の状態その他の条件によるものと考えられる.

一般に,短時間の激運動を行うと,運動後一過性の高血糖が現われ,その反対に長時間の激 運動を行うと,運動申,運動後いきなり低血糖が現われる2つの型があるといわれ.著者ら12) もヒトにおいて激運動を1分間と10分間にわたって行ったところ,同様の結果を得た.本実験 のマウスにおいても,非鍛練群と中等度鍛練群に同一強度の激運動を10分間負荷した際,血糖 量は両群とも運動後減少の程度を異にするものの,低血糖型を示した.これは運動によって筋 肉内のグリコーゲンがエネルギ‑源として大量消費されるため,運動筋による血中のぶどう糖 の取り込み量が増加するのに対し,肝臓からの血中へのぶどう糖の補給が追いつかないことに よるものと考えられる.

ところで,中等度鍛練群と非鍛練群における血糖量の変動を指数で比べると,前者は後者よ りも運動直後でその差12.8%, 15分後でその差12.0%の低い値を示し,鍛練効果のあることが わかった.このことは,鍛練されたラットの肝臓や筋肉内のグ.)コーゲンが非鍛練群のものよ りも多量含まれている22)という事実から考えてみると,中等度鍛練群が持久性鍛練の過程にお いて獲得した運動に対する適応効果によるものと考えられる.

(2)乳酸量の変動

血糖の場合と同様に,運動を負荷した際の血中乳酸量の変動についても多くの研究がある が,両者の問にどのような差異があるかについての報告は少ない. Crescitelli et al.3)は鍛練 者と非鍛練者に同一量の運動を行ったところ,血中乳酸量は両者とも運動後著しく増加するが, 前者は後者よりも有意に低い債を示すことを,またTsutsumi et al.20)も鍛練された長距離走 者と非鍛練者に運動を行ったところ,血中乳酸量は両者とも運動後著しく増加するが,前者は 後者の1/3量にすぎなかったことを報告している.一万 Rennie17>も自転車競技選手と非鍛 練者に同一強度の運動を行ったところ,血中乳酸塁は両者とも運動後増加するが,その増加量 はほぼ同じで両者間に有意差がみられなかったと報告している.以上のように,血中乳酸塁が 運動後増加することは一致しているが,鍛練状態の程度によってかなりの違いがあるように思

われる.

一般に,激運動を行うと,筋グT)コ‑ゲンは分解して乳酸を生成し,これが血中へ吸収され て増加するといわれている.短時間の激運動では,無酸素状態で運動が行われるので,筋肉‑

の酸素の供給が間にあわなく,筋中に多量の乳酸が蓄積し,血中乳酸量が運動後最高に達する までの時間がかかる.一万,長時間の激運動では,酸素摂取量は十分でなくとも,有酸素状態 で運動が行われるので.血中乳酸量は運動直後に最高値に達するといわれ,著者ら12)もヒトに おいて激運動を1分間と10分間行ったところ同様の結果を得た.本実験のマウスにおいても, 非鍛練群と中等度鍛練群に同一強度の激運動を10分間負荷した際,血中乳酸量は運動直後に最

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中‑T‑inir:.」‑ >い古 uli

高値を示し, 15分後も有意に増加したが, 30分後では運動前の水準に回復した.

ところで,中等度鍛練群と非鍛練群の血中乳酸量の変動を指数で比べると,前者は後者より も運動直後でその差115.7%の低い値を示し,鍛練効果が著しいことがわかった・しかし, 15 分後では両群とも運動前に比べて有意に高い伯を示すが,回復の割合はほぼ同じであった・血 中乳酸畳と体力との間には密接な関係があるといわれている3).本実験においても,中等度鍛 練によって血中乳酸量が非鍛練群に比べて著しく少ないということは,運動中の酸素摂取能力 及び耐乳酸性能力が高まったためでないかと推察される.

今回は中等度鍛練群と非鍛練群の血糖量及び血中乳酸量の違いについてのみ実験を行った が,今後,激鍛練群と軽鍛練群についても検討し,三者の関係について追究したい・

摘     要

マウスを用い,週当たり5日の割合で10週間にわたり運動を行った中等度鍛練群と非鍛練群 に対し,同一強度の激運動を10分間負荷した際,血糖量及び血F一博L酸量が運動終了後どのよう に変動するかについて比較検討した.その結果は次のとおりである.

中等度鍛練群及び非鍛練群の血糖量は運動終了直後と15分後において有意に減少するのに対 し,血中乳酸量は著しく増加するが,いずれもが30分後には運動前の水準に固復した・また, 前者における血糖量の減少率及び血rfl乳酸量の増加率は後者のものに比べて小さかった.

以上の結果から,運動を負荷した際,血糖量及び血中乳酸量は鍛練によって抑制きれること がわかった.

なお,本実験に当たり専攻学生の協力を得た.ここに深く謝意を表する.

文     献 1)阿久津邦雄(1960) :体力研究, 13 (4), 1‑5.

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参照

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