奈良教育大学学術リポジトリNEAR
マウスの血液性状に及ぼす鍛錬の影響 2. 発育期マ ウスの鍛錬後の安静時における血漿中の中性脂肪量
、遊離脂肪酸量、総コレステロール量、血糖量、乳 酸量及び非蛋白窒素量の経過的変動
著者 中牟田 正幸, 中谷 昭
雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学
巻 28
号 2
ページ 111‑121
発行年 1979‑11‑15
その他のタイトル Effects of Physical Training on Blood
Properties in Mice 2. Changes of triglyceride, free fatty acid, total cholesterol, blood
glucose, lactic acid and non protein nitrogen concentrations in the plasma during the week elapsed after the cessation of physical
training in young male mice
URL http://hdl.handle.net/10105/2464
マウスの血液性状に及ぼす鍛練の影響
2.発育期マウスの鍛練後の安静時における血祭中の中性脂肪量, 遊離脂肪酸量,総コレステロール墨,血糖量,乳酸量及び非蛋 白窒素量の経過的変動
申牟田 正幸・中谷 昭
(奈良教育大学生理学及び衛生学教室) (昭和54年5月1日受理)
Effects of Physical Training on Blood Properties in Mice
2. Changes of triglyceride, free fatty acid, total cholesterol, blood glucose, lactic acid and non protein nitrogen concentrations in the plasma dur‑
ing the week elapsed after the cessation of physical training in young male mice
Masayuki NAKAMUTA and Akira NAKATANI
{Laboratory of Physiology and Hygiene, Nara University of Education, Nara, Japan) (Received May 1, 1979)
Summary
In previous paper, the authors suggested that tnglyceride, free fatty acid, total choト esterol, blood glucose and lactic acid concentrations were significantly lower on the trained group than on the untrained, and on the contrary non protein nitrogen concen‑
tration was significantly higher on the former than on the latter just after the cessa‑
tion of moderate physical training by the treadmill on 5 days/wk for the duration of 10 weeks in mice, with reference to the resting state. The experiments were carried out to investigate the changes of blood components described above during the week elapsed after the cessation of moderate physical training in mice. Blood samples were collected on one, two, four and six weeks after the training. Results obtained are as fol・lows:
1) Triglyceride, total cholesterol, blood glucose and lactic acid concentrations were significantly (P<TO.01) lower on one week after the training on the trained group than on the untrained, but they recovered to the untrained level on two weeks after the
training.
2) Free fatty acid concentration was significantly (P<CO.01 and P<^0.05) lower on two and four weeks after the training on the trained group than on the untrained, but it recovered to the untrained level on six weeks after the training.
IMI
112 中卒山止幸IjJ谷 昭
3) Non protein nitrogen concetration was significantly (P<0.01) higher on one week aHer the training on the trained group than on the untrained, but it recovered to the untrained level on two weeks after the training.
From the facts mentioned above, it seemed that there was a close relationship be ‑ tween blood components and physical training.
緒 昌
さきに,著者ら(1976, 1977, 1978, 1978)はマウスを対象とし,週5日の割合で10週間にわた る中等度の鍛練を行った場合,鍛練群と非鍛練群の悶において総血渠蛋白,中性脂肪,遊離脂肪 酸,総コレステロール,血糖,乳酸及び非蛋白窒素が鍛練中止直後にどのような差異があるか,換 言すれば鍛練によって影響を受けるかどうかについて検討した.その実験成績を要約すると,総血 渠蛋白は鍛練によって影響がなく,非鍛練群の水準を維持するが,中性脂肪,遊離脂肪酸,総コレ ステロール,血糖及び乳酸は鍛練によって有意に減少し,これに反して非蛋白窒素は鍛練によって 有意に増加することを知った.
本実験では,前報の場合と同様に,材料としてマウスを用い,週5日の割合で10週間にわたる中 等度の鍛練を行い,それを中正してから1週間後, 2週間後及び4週間後(必要に応じて6週間 後)において,上記血液成分(総血梁蛋白を除く)が経過的にどのように変動するかを検討し.鍛 練による影響を究明した.
材 料 と 方 法
1)供試動物
供試動物として4週令の雄マウス(ICR‑JCL系) 600匹を用い,非鍛練群と鍛練群に分け,さら に鍛練群は10週間の鍛練終了直後, l過問後, 2週間後及び4週間後(必要に応じて6週間後)の 5群に区分した.各群とも試験細了T.伸は同一条件下で飼育した.なお,飼料(日本クレアの固型鋼 料CE‑2)と水は白山に給与した.
2)運動負荷の方法
運動負荷の方法は,前職と同株に, '1<等度の運動(各週におけるft大走行能力の60‑70^程度の 運動)をi'l荷した.すなわち,鍛練群は動物用treadmillを用い,過5日の割合で10週間にわた って週毎に運動負荷量を増加し,いわゆる漸増i′白帯法をとった. iXVil始の第1週目は treadmill アでの走行に馴れさせる意味を含め,マウスの状態をみながら10m/分の速度で10分間(100m)の
走行を行った.その後は走行の速度と時間を次第に増加し,第2週目は10m/分で15分間(150m), 第3週目は15m/分で15分出(225m),第4週目は15m/分で20分間(300m),第5週目は20m/分 で20分間(400m),第6週目からは20m/分で週毎に走行時間を2分間宛延長し,第10週目には30 分間(600m)になるようにした. 10週間の全走行距離は18875mとなった.
3)採血と試料
血液は10週間の鍛練終了後の各時期(市後, l過問後, 2週間後, 4週間後及び6週間後)にマ
ウスの頚動脈を切断して採取した.これらの血液は6‑8匹分をプ‑ルして1sample とし,血架 を得て試料とした.なお,非鍛練群のマウスについてもそれぞれ同時に採血し供試した.
4)定量法
中性脂肪は内藤らの方法,遊離脂肪酸はDuncombe 法.総コレステロ‑ルは柳沢法,血糖は Blood Sugar‑GOD‑Perid‑Test,乳酸はLactate‑UV‑Test及び非蛋白窒素はKjeldahトNessler 法を採用して定量を行った.なお,第1報における乳酸値はBarker‑Summerson法によったが, その後種々の定量法を検討したところ,本実験における酵素法が最も信頼性があると考えたので, その方法による測定値を採用した.
結 果 と 考 察
1)中性脂肪量の変動
鍛練中正後における中性脂肪の経過的変動については表1に示すとおりである.豪に示すよう
Teble 1. Changes of triglyceride concentration in plasma during the week elapsed after the cessation of physical training (mg/dl)
Week Group 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 M±SD Index
Just after
One
Four
Untrained 265 255 265 260 255 265 255 250 260 255 258.5±5.0 100 Trained 225 232 237 228 225 232 223 230 235 225 229.2±4.5 5.7
Untrained 271 215 263 268 270 240 225 248 250 252 Traind 203 221 241 252 220 235 213 228 225 226
Untrained 260 252 276 268 238 245 223 252 248 250 Trained 268 243 268 260 231 260 245 248 253 250
Untrained 252 272 253 257 235 235 250 235 253 244 Trained 272 244 272 235 255 267 247 272 238 272
250. 2±18. 1 100 226.6±13.1 90.6 251. 2±14. 1 100 252.6±11.1 100.6 248. 6±11. 2 100 257.4±14.5 103.5
に,鍛練酷後の群においては,非鍛練群258.5±5.0mg/dlに対し,鍛練群229.2±4.5mg/dlとな り,両群問に有意差(P<0.001)を,また鍛練後1週間の群においては,非鍛練群250.2±18.lmg /dlに対し,鍛練群226.6±13.lmg/dlとなって,両群問に有意差(P<0.01)を示し,さらにこれ らの値を指数で示すと,前者は 3.7,後者は90.6となって,いずれの場合においても鍛練によって 有意に低下した.しかし,鍛練後2週間の群においては,非鍛練群251.2±14.lmg/dlに対し,鍛 練群252.6±11.lmg/dl,また念のため鍛錬後4週間の群について調べると,非鍛練群248.6±11.2 mg/dlに対し,鍛練群257.4±14.5mg/dlを示し,さらにこれらの値を指数で示すと,前者は100.6 後者は103.5となって,いずれの場合においても両群問に有意差がなかった.これらの結果から,
中性脂tUjは鍛練後1週間までは有意に低下するが, 2週間後では鍛練の影響がなく,鍛練前の水準 に回復することが分った.
近年,中高年の肥満者において, iflL中脂TiJと動脈硬化症との関係が強調され,また多くの疾患に おいてJflllllB旨贅の上界が認められることなどから,血中脂質が盛んに測定されるようになった.と
114 中蝣T‑iiiji‑:幸'!';・> iw
くに動脈硬化症と血中コレステロールとの関係については古くから多くの研究が行われているが, 血中中性脂肪との関係が研究しはじめられたのは比較的最近のことである.本研究における中性脂 肪と鍛練との関係を知ることは,動脈硬化症を予防する上において重要なことではないかと考えら れる. Holloszy et al. (1964), Siegel et al. (1970),伊藤ら(1973)及び後藤ら(1976, 1978) は,中高年の肥満者,あるいは鍛練者と非鍛練者を,またPapadopoulos et al. (1969)はラット を対象とし,鍛練後の中性脂肪を調べたところ,鍛練によって有意に低下したと報告している.こ れに反して,後藤ら(1974)は中高年の鍛練者と非鍛練者における中性脂肪を比較したところ,両 者間に有意差はなかったが,鍛練者の方がいくらか低かったようであると報告している.後藤ら (1978)は鍛練によって中性脂肪が低下するのは,組織への中性脂肪の取り込みの増大と組織から の中性脂肪の放出の低下に起因するのではないかと説明している.さらに, Borensztazn et al.
(1975)及びMorgan et al. (1969)はラットにおいて組織へのTGの取り込み増大にはIipo・
protein lipase活性の増加を,また組織からのTGの放出低下にはcatecholamine などのホルモ ンに対する感受性の低下をみると報告しているが,これらのことからして血ill TG星は減少する のでないかと推察される.
以上の研究は主として中高年者の鍛練直後の成績であって,鍛練中止後の経過的変動,すなわち 鍛練後どの時期において鍛練前の水準に回復するかということについての検討がなされていないよ
うである.木研究はマウスを対象とし,鍛練中止後における中性脂肪の経過的変動を究明しようと した.その結果, 'I'性脂肪は鍛練中止後1週間までは有意に低下するが, 2週間後には鍛練前の水 準に同復した.したがって,マウスにとって10週間の鍛練はかなり長期間のようではあるが,鍛練 を中止すると,中性脂肪は案外早い時期に鍛練前の水準に回復することからして,鍛練効果をあげ るためには.ある強度の運動を継続して行うことが必要であると分った.
2)遊離脂肪酸量の変動
鍛練中止後における遊離脂肪酸uj経過的変動については表2に示すとおりである.遊離脂肪酸に
Table 2. Changes of free fatty acid concentration in plasma during the week elapsed after the cessation of physical training (!JM!dl)
Week Group 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 M±SD Index
Just after
lira!
Six
Untrained 308 323 347 377 377 354 370 354 339 347 349.6±21.3 100 Trained 254 308 300 310 310 323 308 300 339 308 306.0±20.5 87.5
Untrained 400 330 360 325 370 325 350 360 340 360 352.0±25.4 100 Trained 280 310 285 310 285 320 320 310 290 310 314.0±23.4 89.2
Untrained 390 325 330 390 330 380 430 315 320 330 354.0±37.8 100 Trained 310 310 375 275 340 380 340 325 330 330 331.5±29.2 93.6
Untrained 316 397 316 331 309 331 316 370 323 382 349.1±39.2 100 Trained 331 390 309 360 353 390 353 382 353 360 358.1±24.1 102.6
ついては鍛練後4週間を総ても非鍛練群と鍛練群の間において有意差を認めたので, 6週間後のも のについても検討した.豪に示すように,鍛練直後の紬こおいては,非鍛練鮮349.6±21.3mMMl
に対し,鍛練群306.0±20.3〃′M/dlとなり,両群問に有意差(P<0.001)を,鍛練後2週間の群に おいては,非鍛練群352.0±25.4yuM/dlに対し,鍛練君1314.0±23.AfiM/dlとなり,両群間に有意差 (P<0.001)を,また鍛練後4週間の細こおいても,非鍛練群.354.0±37.8/tM/dlに対し,鍛練群 331.5±29.2〝M/dlとなって,両群問に有意差(P<0.05)を示し,さらにこれらの値を指数で示 すと,前者は87.5,中開者は89.2及び後者は93.6となって,いずれの場合においても鍛練によって 有意に低下した.しかし,鍛練後6週間の君封こおいては,非鍛練群349.1±39.2JAM/dlに対し,鍛 練群358.1±24.1JJM/dlを示し,さらにこれらの値を指数で示すと,鍛練群は102.6となって,両群 間に有意差がなかった.これらの結果から,遊離脂肪酸は鍛練後4週間までは有意に低下するが,
6週間後では鍛練の影響がなく,鍛練前の永準に同復することが分った.
鍛練とJfn中遊離脂肪酸との関係については,後藤ら(1974, 1978)が中高年の肥満者.あるいは 鍛練者と非鍛練者を対象とし調べたところ,鍛練によって著しく低下したと報告している.木実験 においても,後藤らの報告と同様に,鍛練によって有意に低下したが,発育期のマウスを対象とし たため,その低下の割合は小さかった.他方, Papadopoulos et al.(1969)はラットを対象とし, 鍛練後の遊離脂JUj酸を調べたところ,鍛練の影響がなかったと械告している.このように,ラット
において鍛練の影響がなかったのは,鍛練期間が痕かかったことや運動方法に「鼎迅があったのでは ないかと考えられる.
後藤ら(1978)は,鍛練によって遊離脂JUj酸がlLrFするのは,脂肪組織における遊離脂nJj酸の放 出の低下と組織における取り込みのit;大に起因するのではないかと説明している.この遊離脂肪酸 の故lt山こついては, Shepherd et al. (1977)がラットを対象とし,鍛練の影響を調べたところ, 脂]¥li細胞中の norepinephrine による adenylate cyclase の生j'kが少なくなったこと,また Owens et al. (1977)もラットにおいて脂肪代謝の様相を追究したところ, fat cell voluille の 低下をきたしたことをあげ説明している.これらの 事実からして,遊離脂肪酸は鍛練によって低下 するのでないかと推察される.
本研究は,中性脂nJjの項で述べたように,マウスを対象とし,鍛練中出女における遊離脂w酸の 経過的変動を究明しようとした.その結果,遊離脂肪酸は鍛練中正後の4週間までは有意に低下し たが,他の5つの血液成分の変動と比較すると,鍛練の影轡が比較的に長く継続するものの, 6週 間後には鍛練前の水準に回復することが分った.この頂関については明らかではないが,今後,中 性脂RJj及び総コレステロールの動態と比較し検討したい.
3)総コレステロール量の変動
鍛練中正後における総コレステロールの経過的変動については豪3に示すとおりである.豪に示 すように,鍛練直後の飾こおいては,非鍛練群151.0±7.9mg/dlに対し,鍛練群127.3±4.4mg/dl となりに,両群問に有意差(P<0.001)荏,また鍛練後1週間の群においても,非鍛練群150.9±
12.2mg/dlに対し,鍛練鮮130.9±11.2mg/dlとなって,両離間に有意差(P<0.01)を示し,さ らにこれらの値を指数で示すと,前者は1.3,後者は 3.7となって,いずれの場合においても鍛練 によって有意に低下した.しかし,鍛練後2週冊の群においては,非鍛練群152.2±9.5mg/dlに対 し,鍛練群144.6±6.2mg/dl,また念のため鍛練後4週間の群について調べると,非鍛練群151.6
±3.7ilig/dlに対し,鍛練群150.7土8.4mg/dlを示し,さらにこれらの値を指数で示すと,前者は 95.0,後者は99.4となって,いずれの場合においても両群問に有意差がなかった.これらの結果か
ら,総コレステロールは鍛練後1週間までは有意に低下するが, 2週間後では鍛練の影隼がなく,
日6 中卒mrr.辛・中谷 昭
Table 3. Changes of total cholesterol concentration in plasma during the week elapsed after the cessation of physical training (nig/dl)
Week Group 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 M±SD Index
Just after
One
Two
Four
Untrained 162 155 145 155 138 155 145 140 140 155 151.0±7.9 100 Trained 135 130 123 125 130 127 120 125 125 125 127.3±4.4 84.3
Untrained 135 136 140 165 170 168 145 151 151 149 150.9±12.2 100 Trained 110 124 122 154 131 135 133 125 125 135 130.9±11.2 86.7
Untrained 132 154 165 165 141 155 155 150 150 155 152.2±9.5 100 Trained 141 141 141 155 136 140 145 155 155 150 144.6±6. 95.0
Untrained 150 150 147 144 156 156 153 153 153 152 151.6±3.7 100 Trained 146 150 146 146 133 162 149 161 161 156 150.7ゴ:8.4 99.4
鍛練前の水準に回復することが')Tった.
前述したように,血中総コレステロ‑ルと動脈硬化症とは深い関係があり,古くから病HI'学的立 場から研究されてきたが,近年とくに動脈硬化症の予防という‑>r│nから鍛練の効果が注目されはじ めた.この柿の研究は必ずしも多くなく,従来の研究成績を通覧すると,鍛練によって血中コレス テロ‑ルが低下するとかしないとか違った意見があるようである.すなわち, Rochelle (1961), Kilbom et al. (1969), Siegel et al. (1970)及び芝山ら(1977)は中高年の肥満者,あるいは鍛 練者と非鍛練者を,またPapadopoulos et al. (̀1969)はラットを対象とし,鍛練後の総コレステ
ロールを調べたところ,鍛練によって有意に低下したと報吾している.これに反して Holloszy et al. (1964), Goode et al. (1974)及び後藤ら(1974, 1978)は中高年者において,また広田ら (1977)はマウスやラットにおいて調べたところ,総コレステロールは鍛練によってほとんど変わら なかったと報告している.このような成績の違いについて,後藤ら(1978)は鍛練の方法の違いに よるとも考えられるが,総コレステロ‑ルが鍛練後によって低下した研究では,被検者が中高年者 で鍛練前においてすでに高かったことによるのかも知れないと述べている.また,後藤ら(1978) によると,血中総コレステロ‑ルはjflU中性脂肪と相関し,さきの後藤ら(1974)の研究において
も近似する変動を示し,総コレステロールも中性脂IWと同じようにエネルギ‑源として酸化される と述べている.さらに,後藤ら(1978)は総コレステロールの運動時の変動は極めて小さく,エネ ルギーとしての寄与も少ないものと考えられるので,鍛練による影響も中性脂肪に比較して小さ
く,総コレステロールの低下を認めなかったのかも知れないと述べている.
総コレステロールが鍛練によって低下するとかしないということは,鍛練の種類,強度,持続時 間,期間,栄養,個体差及びその他の条件によって大きく左右されるものと考えられる.しかし, 木実験における発育期のマウスでは,総コレステロールが鍛練直後及び1週間後においても有意に 低下することを明らかにした.この事実からして,後藤ら(1978)のいう鍛練の強度や期間は別と
しても,被検者が中高年の肥満者であったため,鍛練の影轡があったのでないかという説には賛成 できない.著者ら(末発表)はマウスを対象とし,鍛練強度(中等度運動及びalトoLIt運動),過 当りの鍛練回数及び鍛練期間を変えて実験を行っているが,碓かに鍛練の方法は総コレステロ‑ル の変動に大きく13射系するように思われる.
4)血糖量の変動
Table 4. Changes of blood glucose concentration during the week elapsed after the cessation of physical trainig (mg/dl)
Week Group 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 M ±SD Index
Just after
Four
Untrained 176.4 185.6 188.0 165.2 172.8 186.0 182.0 176.1 176.7 186.0 179.6±7.3 100 Trained 147.2 155.6 159.6 149.6 151.6 156.3 145.6 153.4 155.1 147.8 152.3±5.7 84.8 Untrained 179.0 168.0 175.6 188.7 173.1 177.3 178.5 174.3 182.0 180.0 177.7±5.3 100 Trained 151.3 167.7 171.0 169.8 158.8 169.3 160.3 165.0 168.4 162.5 164.4±5.9 92.5 Untrained 174.0 166.5 175.5 180.0 170.4 189.6 175.5 174.5 177.0 177.0 176.0±5.8 100 Trained 178.0 176.0 186.3 175.7 177.8 178.2 180.0 174.4 163.6 183.0 177.6±5.6 100.9 Untrained 176.5 185.5 185.5 176.5 180.0 180.0 175.2 173.8 177.4 182.6 179.3±3.9 100 Trained 176.5 175.5 184.0 177.0 183.4 180.6 178.2 177.8 180.0 177.0 179.0±2.8 99.8
鍛練中正後におけるJfll糖の経過的変動については表4に示すとおりである.表に示すように,鍛 練直後の群においては,非鍛練群179.6±7.3mg/dlに対し,鍛練群152.3±5.7mg/dlとなり,両 君鞘T3に有意差(P<0.001)荏,また鍛練後1週間の群においても,非鍛練群177.7±5.3mg/dlに 対し,鍛練群164.4±5.9mg/dlとなって,両群「制こ有意差(P<0.01)を示し,さらにこれらの値
を指数で示すと,前者は84.8,後者は92.5となって,いずれの場合においても鍛練によって有意に 低下した.しかし,鍛練後2週間の群においては,非鍛練群176.0±5.8mg/dlに対し,鍛練群 177.6±5.6mg/dl,また念のため鍛練後4週間の群について調べると,非鍛練群179.3±3.9mg/dl に対し,鍛練群179.0±2.8mg/dlを示し,さらにこれらの値を指数で示すと,前者は100.9,後者 は99.8となって,いずれの場合においても両群間に有意7kがなかった.これらの結果から, Jfll糖は 鍛練後1週間までは有意に低下するが, 2週間では鍛練の影轡がなく,鍛練前の水準に回復するこ とが分った.
血糖と鍛練の関係については, LeBlanc et al. (1977)は鍛練者と非鍛練者の血糖を調べたとこ ろ,前者は後者と比較し有意差を示したと報告している.しかし,芝山ら(1977)及び後藤ら(1978) は鍛練によって一定の傾向を示さなかったと述べ,またGalbo etal. (1977)もラットにおいて鍛 練の影響を認めなかったと報告している.
これに反して,本実験におけるマウスでは,鍛練直後にJT封氏を示し, 1週間後まで有意に低下す るものの2週間後には鍛練前の水準に回復した.この違いは,前述したように,鍛練の方法,すな わち鍛練の強度,週当たりの回数及び期間などが大きく陳】係するものと考えられる.血糖は主に肝 臓を中心に調整され,肝臓からの放出量と組織での取り込み量に左右される.とくに鍛練によっ て,骨格筋内の glycogenが増加し,またinsulinに対する感受性が増大することからして,良 期間の鍛練は血糖を低下させることになるのではないかと推察される.
5)乳酸の変動
鍛練中l日射こおける乳酸の紡射勺変動については豪5に示すとおりである.豪に示すように,鍛 練直後の蹄においては,非鍛練群4ユ.7±4.2mg/dlに対し,鍛練群34.4±2.6mg/dlとなり,両群
118 「[1牟miE幸 *谷 昭
Table 5. Changes of lactic acid concentration in plasma during the week elapsed after the cessation of physical training (mg/dl)
Week Group 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 M±SD Index
Just after
One
Two
Four
Untrained 33.6 46.6 44.0 43.2 38.442.4 40.8 41.6 44.0 42.4 41.7±4.2 Trained 33.0 33.8 33.0 38.3 38.3 33.8 29.3 33.8 36.8 33.8 34.4±2.6 Untrained 40.6 37.6 42.4 44.036.8 38.4 42.4 40.6 44.038.4 40.4±3.8 Trained 35.2 36.2 31.2 31.2 35.2 36.2 37.6 35.2 36.8 36.0 35.1±4.8 Untrained 40.0 37.6 42.4 42.4 46.4 49.6 36.8 37.6 45.6 38.4 41.7±5.2 Trained 46.4 43.2 47.2 41.6 41.6 44.0 40.0 43.2 43.2 36.0 42.6±3.8 Untrained 44.8 44.8 43.2 36.8 41.642.4 43.2 38.4 40.8 35.2 41.1±3.9 Trained 36.8 36.2 40.0 40.8 36.0 37.6 44.0 58.4 44,0 44.8 38.5±4.5
100 82. 5
100 81.6
icri 102. 2
100 93. 7
冊に有意差(P<0.001)を,また鍛練後1週間の群においても,非鍛練群40.4±3.8mg/dlに対 し,鍛練群35.1±4.8mg/dlとなって,両群問に有意差(P<0.001)を示し,さらにこれらの値を 指数で示すと,前者は82.5,後者は81.6となって,いずれの現合においても鍛練によって有意に低 下した.しかし,鍛練後2週間の群においては,非鍛練群41.7±5.2mg/dlに対し,鍛練群42.6士 3.8mg/dl,また念のため鍛練後4週間の飾こついて調べると,非鍛練群41.1±3.9mg/dlに対し, 鍛練群38.5±4.5mg/dlを示し,さらにこれらの値を指数で示すと,前者は102.2,後者は93.7と
なって,いずれの場合においても両州制こ有意差がなかった.これらの結果から,乳酸は鍛練後1 週間までは有意に低下するが, 2週間では鍛練の影響がなく,鍛練前の水準に回復することが分っ m
ffu中乳酸と運動との「剃系については,従来から鍛練者と非鍛練者を対象とし,運動前,運動時及 び運動後において経時的にどのように変動するかについて検討されてきた.これらの報i‑iによる と,一般に鍛練者は非鍛練者と比較して乳酸の上昇が小さく,このことは前者が鍛練によって乳酸 に対する耐性が増大したためでないかと述べている.しかし,乳酸の鍛練後における経過的変動に ついては,著者らの知る限り非常に少なく,わずかに後藤ら(1978)がヒトを対象とし,長期間の 鍛練をイrったところ,鍛練による影響がなかったことを,また Galbo et al. (1977)がラットに おいて有意ではないがいくらか低下の傾l"Jがあったと報告しているにすぎない.これに反して,本 実験におけるマウスでは,鍛練1‑吊射こ最低を示し, 1週間後まで有意に低下するものの2週間後に は鍛練前の水準に回復した.この違いは,前述したように,鍛練の方法が大きく[則系し,やはりあ る程度以上の鍛練の強度と期日用が必要でないかと考えられる. Dohm et al. (1977), Baldwin et al. (1977)及びHenricksson et al. (1977)によると,筋組織における乳酸は無酸素的解糖によ
り生産されるが,この乳酸をピルビン酸にかえる乳酸脱永素酵素, TCA回路ではたらくクエン醸 合成酵素及びコ‑ク醸脱水素酵素の活性は鍛練によって増大すると述べている.このm実からし て,これらの酵素が鍛練によって増大し, ll'llll堵L酸」一代下させているのではないかと推察される.
6)非蛋白窒素量の変動
鍛練中正後における非出自空Mの経過的変動については去6に示すとおりである.豪に示すよう
Table 6. Changes of non protein nitrogen concentration in plasma during the week elapsed after the cessation of physical training (mg/dl) Week Group 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 M±SD Index
Just after Untrained 44.0 44.0 46.0 44.0 52.050.0 52.0 53.0 54.0 50.0 48.9±3.8 100 Trained 56.0 66.0 62.0 51.5 51.5 58.0 57.0 62.0 55.0 56.0 57.6±4.5 117.6
One
UE7!
Four
Untrained 52.0 54.5 48.6 52.0 50.0 49.7 53.3 49.7 54.046.0 51.0±2.4 100 Trained 54.0 56.0 54.5 58.0 58.0 56.0 49.7 62.0 56.0 57.0 56.1±2.6 110.0 Untrained 48.6 53.3 53.3 52.0 49.7 52.0 54.5 50.0 50.0 51.1 51.5±1.8 100 Trained 49.7 54.5 53.3 52.0 47.4 52.0 52.0 47.4 54.5 54.5 51.7±2.2 100.4 Untrained 52.0 50.2 48.6 47.4 47.4 49.7 50.2 52.0 50.2 47.4 49.5±1.6 100 Trained 52.0 47.4 48.6 50.9 50.2 47.6 52.0 50.9 50.0 47.6 49.7±1.7 100.4
に,鍛練直後の群においては,非鍛練群48.9±3.8iTlg/dlに対し,鍛練群57.6±4.5mg/dlとなり, 両群間に有意差(P<0.001)を,また鍛練後1週間の群においても,非鍛練群51.0±2.4mg/dlに 対し,鍛練群56.1±2.6nlg/dlとなって,両群冊に有意差(P<0.01)を示し,さらにこれらの値
」tff数で示すと,前者は117.6,後者は110.0となって,いずれの場合においても鍛練によって有意 に増大した.しかし,鍛練後2週間の飾こおいては,非鍛練群51.5±1.8mg/dlに対し,鍛練群 51.7±2.2illg/dl,また念のため鍛練後4週間の群について調べると,非鍛練酎49.5±1.6mg/dlに 対し,鍛練鮮49.7±1.7mg/dlを示し,さらにこれらの値を指数で示すと,前者は100.4,後者も 100.4となって,いずれの場合においても両群問に有意差がなかった.これらの結果から,非蛋白
究素は鍛練後1週間までは有意に増大するが, 2週間後では鍛練の影響がなく,鍛練前の水準に回 復することが分った.
鍛練後におけるJfll中非蛋白窒素の経過的変動に関しては,著者らの知る限りほとんど研究がなさ れていないようである.そこで,この点を明らかにするため,著者ら(1978)はさきにマウスを対 象とし,鍛練直後の非裏白窒素を調べたところ,鍛練によって有意に上昇することを知った.本実 験は非出自窒素が鍛練中正後どの時期まで上昇を示すかを知るため行った.その結果,前述の中性 Jmjら 遊離脂肪酸,総コレステロ‑ル,血糖及び乳酸の場合とは興って,鍛練前後に最高を示し,
1週間後まで有意に上昇するものの2週間には鍛練前の水準に[朝夏した.
著者ら(末発豪)はさきに激しい運動によって血い非至勘′l窒素が上昇することを明らかにした.
これは運動によって蛋白代謝の元進をきたしたため,組織内に非蛋白窒素が増加し,これが血中に 吸収されたものと考える.この血中非蛋白窒素の上昇は一過性であり,運動後短時間で運動前の水 子榊こ回復した.しかし,長期間の鍛練を続けていくと,組織内に非蛋白窒素が増量し,それが血中 により多く吸収されるものの,腎臓をとおして十分に排潤されないため,血中非蛋白窒素が鍛練中 正後においても上昇をきたすのではないかと推察される.しかし,この程度の増量は生理的範囲内 にあってとくに考慮する必要はないと考えられる.
摘 要
鍛練後の血液成'j)が経過的にどのように変動するかを知るため木実験を行った.そのため,発育
120 中牟m正幸・中谷 昭
規の雄マウス(ICR‑JCL系) 600匹を対象とし,動物用treadmillを用い,過5日の割合で10週 間にわたって中等度の運動負荷を行った.血液は鍛練直後, l過問後, 2週間後, 4週間後及び必 要に応じて6週間後も採取した.その結果は次のとおりである.
1)鍛練群における中性脂肪量,総コレステロ‑ル童,血糖量及び乳酸室は非鍛練群のものと比 較し,鍛練1週間後において有意(P<0.01)に低く,鍛練による影響を認めたが, 2週間後には 非鍛練群の水準に回復した.
2)鍛練群における遊離脂肪酸量は非鍛練群のものと比較し,鍛練2週間後において有意(P<
0.01)に,また4週間後においても有意(P<0.05)低く,鍛練による影響を認めたが, 6週間後 には非鍛練群の水準に回復した.
3)鍛練群における非蛋白窒素量は非鍛練群のものと比較し,鍛練1週間後において有意(P<
0.01)に高く,鍛練による影響を認めたが, 2週間後には非鍛練群の水準に回復した.
以上の結果から,上記血液成分は鍛練を中止すると割合に早い時,1釦こ鍛練前の状態に回複するこ とが分った.
本研究の要旨は昭和53年第33山口本体力医学会大会において報告した.なお,実験に当たり多数 の専攻学生の協力を得た.ここに深く謝意を表する.
文 献
(1) Baldwin, K. M., D. A. Cooke, and W. C. Cheadle. J. Appl. Physiol. 42 (2), 267‑272, 1977.
(2) Borensztajn, J., M. S. Rone, S. P. Babirak, J. A. McGarr, and L. B. Oscai. Am. J. Physiol. 229
(2), 394‑397, 1975.
(3) Dohm, G. L.( G. R. Beecher, T. P. Stephenson, and M. Womack. J. Appl. Physiol. 42(5), 753‑
757, 1977.
(4) Galbo, H., E. A. Richter, J. J. Hoist, and N. J. Christensen. J. Appl. Physiol. 43(6), 953‑958, 1977.
(5) Goode, R. C, J. B. Firstbroon, and R. J. Shephard. Can. J. Physiol. and Pharmacol. 44, 575‑
580, 1974.
(6)後藤芳雄・提 達也.体力研究. 28, 17‑25, 1974.
(7)後藤芳雄.日本体育学会.第27回大会号. 1976.
(8)後藤芳雄・喜多尚武・提 達也・江藤 博・芝山秀太郎.体力研究. 39, 38‑55, 1978.
(9) Henriksson, J., and J. S. Reitman. Acta Physiol. Scand. 99, 9ト97, 1977.
(10) Holloszy, J. 0., J. S. Skinner, G. Toro, and T. K.Cureton. Am. J. Cardiol. 14, 753, 1964.
(ll)広ftl公一・束 雇彦・北 博正・井川正治. E]本体育学会.第28回大会号. 1977.
12)伊藤 朗・河北尚夫・大平 宣・岩本圭史.日本体育学会.第24回大会号. 1973.
(13) Kilbom, A., L. H. Hartley, B. Saltin, J. Bjure, G. Grimby, and I. Astrand. Scand. J. Clin. Lab.
Invest. 24, 315, 1969.
(14) LeBlanc, J., M. Boulay, S. Dulac, M. Jobin, A. Labrie, and Suzanne Rous‑seau‑Migneron.
J. Appl. Physiol. 42(2), 166‑173, 1977.
(15) Morgan, T, E., F. A. Short, and L. A. Cobb. Am. J. Physiol. 216(1), 82‑86, 1969.
(16)中卒Hhl二幸・中谷 昭.第31回円本体力医学会大会予稿集. 1976.
(17)中牟間正幸・中谷 昭. 「j木体育学会.第28回大会号. 1977.
(18)中卒HIIE幸・中谷 昭.第33回日本体力医学会大会予稿集. 1978.
(19)中牟用正幸・中谷 昭.奈良教育大学紀要. 27(2), 153‑164, 1978.
(20) Owens, J. L., E. O. Fuller, D. O. Nutter, and M. DiGirolamo. J. Appl. Physiol. 43(3), 425‑430, 1977.
(21) Papadopoulos, N. M., C. M. Bloor, and J. C. Standefer. J. Appl. Physiol. 26(6), 760‑763, 1969.
(22) Rochelle, R. H. J. Sports Med. and Physical Fitness. 1, 63‑70, 1961.
(23) Shepherd, R. E., W. L. Sembrowich, H. E. Green, and P. D. Gollnick. J. Appl. Physiol. 42(6), 884‑888, 1977.
(24)芝山秀太郎・江橋 博. H本LL理学雑誌. 39, (8, 9). 1977.
(25) Siegel, W., G. Bbmqvist, and J.H, Mitchell. Circulation. 49, 19‑29, 1970.