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マウスの血液性状に及ぼす鍛錬の影響 第12報 発育 期マウスの鍛錬終了後における赤血球数、ヘマトク リット値及びヘモグロビン量の鍛錬強度の違いによ る経過的変動
著者 中牟田 正幸, 中谷 昭
雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学
巻 34
号 2
ページ 37‑43
発行年 1985‑11‑25
その他のタイトル Effects of Physical Training on Blood Properties in Mice Part 12. Changes in erythrocyte count, haematocrit value and haemoglobin amount in young male mice during the lapse of weeks after termination of
physical training with different intensities
URL http://hdl.handle.net/10105/2179
奈良教育大学把要第34巷第2号(自然)昭和60年 Bull. Nara Univ. Educ. Vol. 34, No. 2 (Nat.), 1985
マウスの血液性状に及ぼす鍛練の影響
第12報 発育期マウスの鍛練終了後における赤血球数,ヘマトクリット値 及びヘモグロビン量の鍛練強度の違いによる経過的変動
申牟田正幸・中 谷 由
(奈良教育大学生理学及び衛生学教室) (昭和60年4月30口受理)
EHects of Physical Training on Blood Properties in Mice Part 12. Changes in erythrocyte count, haematocrit value and haemoglobin amount
in young male mice during the lapse of weeks after termination of physical training with different intensities
Masayuki Nakamuta and Akira Nakatani
{Laboratory o/ Physiology and Hygiene, Nara University of Education, Nara 630, Japan) (Received April 30, 1985)
Abstract
The purpose of this study was to determine how physical training brings about chan‑
ges in erythrocyte count, haematocrit value and haemoglobin amount during the lapse of weeks after the termination of physical training with different intensities. 148 young male mice were divided into an untrained group and three trained groups. They were mildly, moderately and exhaustively trained on the treadmill for 10 weeks at the rate of 5 days per week. Results obtained were as follows.
1 ) Erythrocyte count, haematocrit value and haemoglobin amount in the mildly trai‑
ned group were not influenced by the physical training.
2 ) Erythrocyte count signi丘cantly decreased in the]moderately trained group immedi‑
ately after and in the exhaustively trained group immediately after and 1 week after the termination of physical training, but thereafter it recovered to the level before the train‑
ing in the former in 1 week and in the latter in 2 weeks.
3 ) Haematocrit value signi丘cantly decreased in the exhaustively trained group immedi‑
ately after the termination of physical training, but thereafter it recovered to the level before the training in 1 week.
4 ) In both moderately and exhaustively trained groups, haemoglobin amount signi6‑
cantly decreased immediately after and 1 week after the termination of physical training, but thereafter it recovered to the level before the training in 2 weeks.
37
38 中卒田正幸・中谷 昭
緒 言
さきに著者ら11)はマウスを用い,鍛練強度,鍛練頻度及び鍛練期間の異なる種々な組み合わ せによる各種の鍛練を行ったところ,赤血球数及びヘモグロビン量は週当たり5日の割合で6週 間以上の激鍛練により,また同一頻度で10週間の「fl等度鍛練により,さらにヘマトクリット値は 同一頻度で6週間以上の激鍛練によって有意に減少したが, ・均血球容積値及び白血球数はいず れの鍛練によっても影響されなかったことを報告した.
ところで,従来からヒトを対象とし,上記の血液有形成分が鍛練によって,あるいは非鍛練者 と鍛練者の間にどのような差異があるかについては多くの報告がある1 3i5i8‑10サ15‑21.23)が,そ の結果はまちまちで一定せず,また鍛練終了の経過に伴う変動についてはほとんど報告がない.
そこで本研究では,マウスに対し,週当たり5日の割合で10週間にわたり軽鍛練,巾等度鍛練 及び激鍛練を行った際,赤血球数,ヘマトクリット値及びへモグロビス量が鍛練終了後どの時期
において鍛練前の水準に回復するかについて比較検討した.
材料と 方法
(1)実験動物
実験動物としては, 4週令の雄マウス(ICR‑JCL系) 148 匹を用い,非鍛練群,軽鍛練群, 中等度鍛練群及び激鍛練群の4つに分けた.マウスは1ケージ当たり5匹収容し,飼料(日本ク
レアの固型飼料CE‑2)と水は自由に給与した.
(2)鍛練方法
鍛練に当たっては,動物用トレッドミルを用い,週当たり5日の割合で10週間にわたり軽鍛 練,車等度鍛練及び激鍛練を漸増負荷法に従って行った.なお,鍛練の具体的内容については, 第9報(中等度鍛練及び激鍛練)及び第11報(軽鍛練)に記載したとおりである.
(3)採血と試料
各群の採血は鍛練終了直後, 1週間後及び2週間後の計3回にわたり頚動脈を切断して行っ 7こ.なお,マウス1匹分の血液を1サンプルとして供試した.
(4)測 定 法
赤血球数,ヘマトクリット値及びヘモグロビン量はTOA Micro cell counter を用いて測定 した.
結 果 (1)赤血球数の変動
帯鍛練群,中等度鍛練群及び激鍛練群の鍛練終了後に伴う赤血球数の変動は表1に示すとおり
マウスの血液性状に及ぼす鍛練の影響(第12報)
Table 1. Changes in erythrocyte count after termination of physical training with different intensities
M ± SD
(xlOVmmS) Index
39
Untrained Group
dnOJf)D9U│BJト
947.5 ± 31.2 100.0
‑immediately after 970. 8土13. 9 1 week after 952.6土36.2
‑2 weeks after 942.2 ± 16.1
‑Immediately after 898. 8 ± 27. 3*
1 week after
‑2 weeks after
‑Immediately after 1 week after
‑2 weeks after
946.7 ± 34.4 940.5 ± 31.2
838.0 土 37.7**
901.1 ± 20.5**
933.5 土 53.6
94.8 99. 9 99. 3
3.4 95. 1 98. 5
P<0.001, ** P<0.01, * P<0.05 MiT : Mildly trained group
MoT : Moderately trained group ET : Exhaustively trained group
である.なお,以下の( )内の数佃ま非鍛練群の伯を100とした場合の各鍛練群の指数を示す ものである.非鍛練群の赤血球数は947.5土31.2万(100)であるのに対し,軽鍛練群では鍛練終 了tEl後, 1週間後及び2週間後の値のいずれもが非鍛練群のものと比べてほとんど変わりなく, 鍛練の影響がみられなかった.しかし, Ffl等度鍛練群では鍛練終了直後898.8ア27.3力(94.8) の値を示し,非鍛練群のものと比べて有意(P<0.05)に減少し,その後増加して1週間後には 非鍛練群の水準に回復した.また,激鍛練群でも鍛練終了直後838.0士37.7 (88.4)及び1週間 後901.1土20.5万(95.1)の値を示す.非鍛練群のものと比べて有意(前者はP<0.001,後者は
P<0.01)に減少し,その後増加して2週間後には非鍛練群の水準に回復した.
(2)ヘマトクリット値の変動
軽鍛練群,中等度鍛練群及び激鍛練群の鍛練終了後に伴う ヘマトクリット値の変動は表2に示 すとおりである.非鍛練群のヘマトクリット値は47.5土3.6% (100)であるのに対し,軽鍛練群 及び中等度鍛練群では鍛練終了迫後, 1週間後及び2週間後の柄のいずれもが非鍛練群のものと 比べてほとんど変わりなく,鍛練の影響がみられなかった.しかし,激鍛練群では鍛練終了直後 41.8土2.7% (88.0)の僻を示し,非鍛練群のものと比べて有意(P<0.01)に減少し,その後増
加して1週間後には非鍛練群の水準に回復した.
(3)ヘモグロビン量の変動
軽鍛練群,中等度鍛練群及び潮鍛練群の鍛練終了後に伴うヘモグロビン量の変動は表3に示す
40 申牟田正幸・中谷 昭
Table 2. Changes in haematocrit value after termination of physical training with different intensities
M 士 SD
(形)
Untrained Group
dn oj Q ds ui bj t
47.5 ± 3.6
汗Immediatelyafter4 1weekafter4::70:::80
‑2weeksafter47.3士0.9
LO
‑占
‑Immediatelyafter47.6ア1.9 1weekafter47.3ア3.0
‑2weeksafter48.0士1.9
‑Immediately after 41.8土 2.7***
i 1 week after I‑2 weeks after
47.3 ± 2.8 48.2 土 3.4
3.0 99. 5 101. 5
*** P<0. 001 MiT : Mildly trained group MoT : Moderately trained group ET .* Exhaustive】y trained group
Table 3. Changes in haemoglobin amount after termination of physical training with different intensities
M ± SD (g/dl)
Untrained Group
dn oj Q pa ui Bi T
14.8 士 0.3
‑Immediately after 14.8 ± 0.5 1 week after 14.5 土 0.3
‑2 weeks after 14.7 士 0.6
‑Immediately after 14.1土 0.4*
1 week after 14.3 土 0.5*
‑2 weeks after 15.1ア 0.3
‑Immediately after 13.2 ± 0.5*
1 week after
‑2 weeks after
14.2 土 0.4**
14.9 ± 0.6
*** pくく0.001, ** P<0.01, * P<0.05 MiT : Mildly trained group
MoT : Moderately trained group ET : Exhaustively trained group
マウスの血液性状に及ぼす鍛練の影響(第12報) 41
とおりである.非鍛練群のヘモグロビン量は14.8ア0.3g/dl (100)であるのに対し,軽鍛練群で は鍛練終了直後, 1週間後及び2週間後のいずれもが非鍛練群のものと比べてほとんど変わりな く,鍛練の影響がみられなかった. しかし,中等度鍛練群では鍛練終了直後14.1土0.4g/dl (95.2)及び1週間後14.3士0.5g/dl (96.6)の値を示し,非鍛練群のものと比べて有意(前者 はP<0.001,後者はP<0.05)に減少し,その後増加して2週間後には非鍛練群の水準に回復 した.また,激鍛練群でも鍛練終了直後13.2士0.5g/dl (89.2)及び1週間後14.2ア0.4g/dl (95.9)の伯を示し,非鍛練群のものと比べて有意(前者はP<0.001,後者はP<0.01)に減少 し,その後増加して2週間後には非鍛練群の水準に回復した.
考察
上述しだように,各種の鍛練を行った場合,赤血球数,ヘマトクリット値,ヘモグロビン最, 平均血球容積偵及び白血球数が増加する,減少する,あるいは変わらないとするなど,その結果 は研究者によりまちまちで一致していない.その理由として,鍛練の種類,強度,頻度及び期間 をはじめその他の条件が大きく影聾しているものと考えられる.一般に鍛練処方の条件として, 鍛練強度,鍛練頻度及び鍛練期間の3つがあげられるが,ヒトを対象としての各種の鍛練処方を 長期間にわたり実施することは実際上容易でない.そこで著者ら11)は,マウスを用い,鍛練強 皮(激度,申等度),鍛練頻度(週当たり50,3日)及び鍛練期間(10週間,6週間,3週間)
の異なる種々な組み合わせによる鍛練を行ったところ,赤血球数,ヘマトクリット値及びヘモグ ロビン量が週当たり5日の割合で10週間にわたる鍛練によって特に鍛練終了直後に著しく減少す ることを明らかにした.
したがって,本研究では上述の結果を参照し,あらためて過当た05I」の割合で10週間にわた り軽鍛練,中等度鍛練及び激鍛練を行った際,赤血球数,ヘマトクリット値及びヘモグロビン量 が鍛練終了後の経過に伴ってどのように変動するか,換言すれば鍛練後のどの時期に鍛練前の水 準に回復するかについて鍛練強度の違いの面から比較検討した.その結果によると,赤血球数は 軽鍛練群では鍛練の影響がみられなかったが,中等度鍛練群では鍛練終了直後に,また激鍛練群 では教練終了商後と1週間後において有意に減少し,そして前者は1週間後に,後者は2週間後 に鍛練前の水準に回復した.ヘマトクリット佃ま軽鍛練群及び中等度鍛練群では鍛練の影響がみ られ,なかったが,激鍛練群では鍛練終了直後において有意に減少し,そして1週間後には鍛練前 の水準に回復した.ヘモグロビン量は,赤血球の場合と同様に,軽鍛練群では鍛練の影響いみら れなかったが,中等度鍛練群及び激鍛練群では鍛練終了直後と1週間後において有意に減少し, そして2週I'M
In]後には鍛練前の水準に回復した.以上の事実から,特に赤血球数及びヘモグロビン
量は鍛練強度が大きいほど鍛練前の水準に回復する時期が遅くなる傾向,換言すれば鍛練を中止 すると1‑2週間後の比較的早い時期に鍛練の影響がみられないことがわかった.
ところで,身体運動を継続して鍛練効果を積んだ運動選手の赤血球数及び血色素量は一般人に 比べて増加しており20.21)また常に激しい筋運動に従事している熟練選手は鍛練FFTでも貧血を 認めないといわれている23)これに対して,二鍛練途上の選手は赤血球数が少なく貧血傾向にある と述べられているLie)このような貧血は運動性貧血Sportsanemia25)と名づけられた.これら の鍛練による赤血球数の減少についてはコレステロ‑ルの減少17)あるいはアドレナリン13)t
42 申年田正幸・中谷 昭
1)ゾレシチン11)及び乳酸▲)などの溶血物質に囲係あるであろうと推察されている.また,回復 については鍛練初期における赤血球数の減少が刺激となり増加元進をあらわす説25)や骨髄内血 液の圧Uはいう物理的原因と考える説14)などがあるが,末だ一致した見解は得られていない.
さらに言貧血発生の機序について,蜂須賀ら8)は激しい身体鍛練時には赤血球の破壊が大で新生 がおよばないためとし,また破壊の原因については赤血球の機械的衝突の増大及び渉透圧の低下 をあげ,さらに山田 , ・松17)は赤血球の鉄,燐の影響を,吉村ら24サ26)は蛋白不足をあげて いる・以上のように,激しい鍛練は著しく赤血球数の減少をきたし貧血を起こすが,これを中止 すると赤血球の破壊がやみ,しかも造血機能が元進するため,赤血球数及び血色素量はしだいに 増加し,貧血が回復するものと考えられる.したがって,一定の休息をとりながら激しい鍛練を 年中繰り返えしていると,安静時をはじめ鍛練期酔いでも造血機能の元進が盛んになり,また網 状赤血球数も流血中に多く出現し,ひいては赤血球数及びヘモグロビン量の増加をきたして鍛練 効果をあげることができると推察される.
摘 要
マウスに対し,適当た'; 5aの割合で10週間にわたり軽鍛練,中等度鍛練及び激鍛練を行った 磨,赤血球数,ヘマトクリット値及びヘモグロビン量が鍛練終了後の経過に伴ってどのように変 動するかについて比較検討した.その結果は次のとおりである.
1)軽鍛練群の赤血球数,ヘマトクリット値及びヘモグロビン量は非鍛練群のものに比べてほ とんど変わりなく,鍛練の影響がみられなかった.
2)中等度鍛練群の赤血球数は鍛練終了直後に,また激鍛練群では鍛練終了前後と1遡胤後に おいて有意に減少したが,前者では1週間後に,後者では2週問後には非鍛練群の水準に回復し た.
3)中等度鍛練群のヘマトクリット値は非鍛練群のものに比べてほとんど変わりなく,鍛練の 影響かみられなかったが,激鍛練群では鍛練終了直後において有意に減少したものの, l過問後 には非鍛練群の水準に回復した.
4)中等度鍛練群及び激鍛練群のヘモグロビン最は鍛練終了道後と1週間後において有意に減 少したが, 2週間後には非鍛練群の水準に回復した.
なお,本実験に当たり専攻学生の協力を得た.ここに深く謝意を表する.
Kt^^^^m
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