企業の維持 とその生活能力
菅 家 正 瑞
Abs t rac t
Mo de r nc o r po r a t i o nl i ve si nmo de r ns o c i e t ya sas o c i a l be i ng, a ndi ti s unde r s t o o da ss o c i a ll i vi nge xi s t e nc ewhi c hl i ve se t e r na l l yi no urs o c i e t y f
ro mapr a c t i c a l vi e wpo i n t . Be c a us eo urmo d e r ns o c i e t yha save r yc o m‑
pl e xs ys t e m,f o rc o r po r a t i o n, l i vi n gi nt hi ss o c i e t yc a l l e de nvi r o nme n to f c o r po r a t i o n,i sve r yI mpo r t a nta ndd i f f i c ul ta ndc o r po r t i o nne e d si ns t r u 一 me nt so fa nyl i vi ngpo we ra ndpo t e nt i a l ,f o re xa mpl e,e vi r o nme nt ma na ge me nt . Thet a s ko fe nvi r o nme n tma na ge me n ti st oma kec o r po r a ‑ t i o nl i vee t e r na l l ybyke e pl ngha r mo n ywi t hi t se n vi r o nme nta ndma ke a bi l i t yo fl i vi ngpo we rs t r o nge r.
I nt hi spa pe r , wewi l lt r yt oe xpl a i na nda na l yz eo b j e c t i ve , e s s e nt i a le l e 一 me nt s ,phi l o s o ph ya ndc o nc e pto fe nvi r o n me n tma na ge me n t ,a nds ho w a bi l i t yo fl i vi ngpo we ro fc o r po r a t i o n. Wea na l yz ea ndc r i t i c i z ee n vi r o n‑
me n tt he o r yo fC.MBl l e r ,whot r i e st oe xpl a i ne nvi r o n me ntma na ge ‑ me nta nda bi l i t yo fl i vi ngpo we rf r o m as pe c i a le t hi c a lvi e wo fI .Ka nt ' s phi l o s o phya ndA.H.Ma s l o w' st he o r y.Wet hi nkt ha te nvi r o nme nto f c o r po r a t i o ni sno to nl yna t ur a le nvi r o nme nt ,b uta l s os oc i a le n vi r o n一 me nt ,a nda bi l i t yo fl i vi ngpo we ri st or a t i na l i z epr o d uc t i o nma na ge ‑ me nt ,l a borma na ge me nt ,c or por at ec i t i z e ns hi pma nage me nt ,a nd ge ne r a lma na ge me nt .Thi st ho e r yi sba s e do nmyt ho ug hto fma na ge 一 me nts ys t e m o fmo de r nc o r po r a t i o nwhi c hi sde ve l o pe df r o m Mo hr i The o r y ,a ndus e sMa s l o w' st he o r y・
Keywords:Li vi ngAbi l i t yo fMode r nCo r po r a t i on,The o r yofC.
Mt i l l e ra ndS.Mo hr i ,Envi r o nme n tMa na ge me nt
1
.序企業は,社会的存在 として社会の中で生活す る生活体であ り,実践的 には 無限持続的な存在であ ると解 される。企業管理の究極的な課題は,企業活動 を合理化 し企業 を無限持続的存在 として維持 し発展 させ るこ とを志向す る
「 企業維持活動」であ ると解 される。 したがって,企業を持続的に生活 させ 得 るためには,その 「 生活能力 」( Le b e n s f 急 h i g ke i t ; po t e n t i a l a b i l i t yo fl i v i n g)
を維持 ・増大 させなければな らない。それでは,企業 に とって重要な概念で ある 「 生活能力」とは,具体的 にはいかな る内容を持つ ものなのであろうか。
本稿の課題 は,企業の生活能力を環境管理 との関連 において本格的な研究 を行 っているミューラー ( Ch r i s t o fM也 l l e r ) の所論 を取 り上げ,それを検討 することによって,企業の 「 生活能力」の内容 を具体的に解 明することであ
る (1)0
(注)
(1)本稿 で検討 す る ミュー ラーの企業 の生活能 力についての見解 は,次の著書の中で述 べ られてい るものであ る。 この著書 か らの引用 と参照 については,本文 中に ( )で 示す こととする。
Chr i s t o fMt i l l e r ,St r a t e gi s c heLe i s t un ge ni m Umwe l t ma n a ge me ni ‑e i neAn z at zz ur Si c he r ungd e rLe b e ns f dhi gke i tde sUnt e r ne hme ns
‑ ,De rUni ve r s i t a t ‑ Ve r l a gWi e s ba de n1 9 9 5.
なお,本稿 は,拙稿 「環境管理 と企業の生活能力
」
『経営 と経済』第85
巻第3・4
号 長崎大学経済学会2 0 0 6
年2
月 と,同 「企業 の環境適応 と生活能力」
『研究年報』長崎大 学経済学部 第22
号20 06
年3
月 を中心 として,改めて企業の生活能力 に焦点 を当てて 改稿 した ものであ る。 したが って, よ り詳 しい内容 については同論文 を参照 されたい。2
.研究の前提条件( 1 )研究の方法論
( ∋ 研究動機
企業 を研究対象 とす る経営学 に要求 されてい る課題の一 つは,環境問題 ( Umwe l t pr obl e m ;e nvi r onme nt alpr obl e m) を解 明 しその解決策 を提示す ることである, とい う主張 に異論はないであろう。 ミューラーの研究動機 も まさにそこに求め られる。彼は この問題を解決 しうる企業管理 を構想 し, こ こ1 0 年間の研究成果を基 に,「 パ イオニア企業者」 ( Pi oni e r unt e r ne hme r )の 精神 に基づ く 「 環境管理」 ( Umwe l t manage me nt )の中に 「 新結合」を見出
し,革新的環境管理 を企業 に提示 しようとする
。 (Vgl .
,S.1.)( ∋ 研究 目的
ミューラーの研究 目的の一つは, 環境を「 戦略的成果要因
」(1 ) ( s t r a t e gi s c l l e r Er f ol gs f akt or ) ( 以下,SEF と略記する)として確認 し,環境 を環境管理 にお ける重要な要因 として認識することである。その二つは,企業の 「 生活能力」
を確保するために環境管理を構築することである。彼 に よれば, これ らの 目 的を達成するためには何 らかの価値判断が必要であ り,その研究は 「 価値 自 由」 ( Wer t f r ei hei t )の原則 と関連す る。彼 は,その考察 の出発点 を基礎的 科学論 に求める 。 ( Vg l . , S.2 ‑ 3. )
( 9 科学の 目標
科 学 の 目標 として,彼 は ,1) 要素 的科学 目標 ,2) 理論 的科学 目標 , 3 )実践的科学 目標 ,4) 規範的科学 目標 ,を挙 げ る ( 2 ) 0 1) は物事のエ ッセ ンスを正確 に概念化 し定義 し ,2) は因果関係を解 明し ,3) は技術論 として 目的 ・手段関係 を思考 し ,4) は認識でな く評価 が問題 となる価値判断を伴 い ,3) と 4 )は彼のテーマに強 く関連す る 。 ( Vg l . ,S.7 ‑ 9. )
④ 規範的科学 目標
彼が求める科学 目標 は , 「 価値判断 自由」 ( Wer t ur t ei l s f r ei he i t ) とい う論
議を回避で きない。 ミューラーは,経営経済学 ( Be t r i e bs wi r t s c ha f t s l e hr e)
は価値 自由に よ り企業 目標 の判断をすべ きでない とい う見解 に強 く反論 す
る。経営経済学は応用科学であ り研究成果は実践へ応用 されなければな らな
い, と主張 し,応用の対象は企業の未来であ り,それは不確実性 と不 明瞭性
を含むか ら,「 評価」 とい う価値判断問題 が不可避的に現れざるをえない ( 3) 0 (
vgl.,S・9 ‑l l. )彼 はこの問題を どの ように解決 しようとするのであろうか。
⑤ 研究方法 と価値判断
ミューラーは,実践志 向性の観点か ら実践主義的科学 目標 を前面 に押 し出 し,③ で述べ られたあ らゆ る科学 目標 を利用す る。1)は概念 と研究 目的の ために ,2) は環境管理の戦略的重要性の説 明のために ,3) は実践的管理 の 行動 を推奨するために ,4) は この研究の全領域 において利用 され る。
彼の研究の認識対象は 「自然環境 」 ( nat B r l i c heUmwel t ) であ り, この科 学的活動 には 「 価値判断」が必要であると言 う。なぜな らば,生活 に価値 あ る環境は一般的な価値 があ り,それは経営経済学 にも価値があるということ で もあ り, したがって, ミューラーの研究 には 「 倫理 」 ( Et hi k) とい う価値 の問題が入 り込み,彼の研究では,必然的に価値 自由の問題 が考察 されざる をえないか らである
。 (Vgl .
,S.l l ‑1 2. )
( 2) 環境管理 と倫理
研究が実践 に何 らかの提言を行 うには,研究が実践 に即 した ものであ ると 同時に,それが持つ基本的価値 に一般妥当性が求め られる。そこで, この科 学 は適切 な価値判断 とい う困難 な問題 を解決 しなければな らない。 ミュー
ラーは,その考察を 「 倫理」の問題 か ら始める。
( ∋ 倫理 と価値 自由の原則
研究が言明 と推奨を しうるためには,判断の基礎 に何 らかの客観的価値 か 少な くとも一般的に妥当する価値が必要である ( 4) 。そのためにミューラーは,
「 規範的 ・倫理的アプローチ 」 ( nor mat i v‑ e t hi s c herAnz at z) を採 る。
このアプローチの課題 は,一般妥当的な倫理的基礎 として 「 人間の至高善」
( dash6c hs t eme ns chl i c heGut ) ( S.1 5. ) を導 出し,倫理的な行動規則を発見
することである。倫理的基礎 を獲得するのが経営哲学の課題であ り,それは
管理者 の基本的態度 ,思考や価値観念 に意味 を与 え,倫理的価値 も含 む。
(Vgl.S.15‑16.)
(参 倫 理 的 基 本 立 場
倫 理 的価 値 の考 察 に , ミ ュー ラー は ,1)倫 理
的基礎 主義 ,2)倫 理 的相対
主 義 ,3)功 利 主 義 ,4)義 務 論 , とい う四 つ の基本的理論 を検討 し,1)・2)・
3)は 彼 の 研 究 目的 に そ ぐわ な い と し て こ れ
らを排 し,4)義 務 論 ( di e
Deontologie) を採 り上 げ て検 討 す る。義 務 論 の 代 表 者 は カ ン ト (Ⅰ.Kant) で あ り,
彼 に よれば ,純 粋 な倫理 的
行 為 は ,合 理 的 人 間 の す べ て が 時 と場 所 とを問わず何 らかの法則 ( すなわち
命 令 ;Imperativ) に服 従 す る もの で あ る。 そ の法 則 は普遍性 , 自己 目的性 ,
理 性 的 行 動 とい う特 徴 を持 ち , そ こか ら一 般 妥当性 を持 つ規範 を設 定 す る 目
的 を持 つ三 つ の命 令 が導 出 され る(5)。 この よ うに ミュー ラー は, カン トの義
務 論 に価 値 判 断 の 客 観 性 の根 拠 を求 め る(6)0 (vg l . ,S.1 6 ‑ 1 9. )
(丑 経 済 倫 理 的 命 令
経 済 倫 理 は ,一 般 的倫 理 とい う基 礎 か ら引 き
出された経済 的生活 に当ては
ま る特 殊 な倫 理 で あ る。 そ れ らは ,次 の三 つ の経済倫理 的命令 であ る。
1) 物 的 に正 当 な経 済 (W irtschafte sachgere
c l l t ):現代 の市場経 済 で は,
何 らか の 法 則 の 存 在 を 明示 す る経 済 倫 理がな い。 この法 則 が 「公正 で
あ る」 と見 られ う る に は倫 理 的 な 全 体 文脈 が必要 で , これ は他 の二 つ
の命 令 との共 鳴 に お い て見 られ うる, と彼は主張 す る。
2) 人 間 的 に正 当 な経 済 (W irtschaftemensch
enger ec ht ):この命 令 の意味
は 「人 間 的 品 位 の 基 本 的 要 求 は経 済 過 程 にも要 求 され る」 ( S,2 0. )こ と
で あ る。 そ の 意 義 は ,経 済 は人 間 に よ って人 間の ため に営 まれ る とい う
事 実 か ら生 じる。3) 社 会 的 に正 当 な経 済 (W irtschafte gesel
l schaf t sger ecl l t ):こ こには
「連 帯 性 原 理 」 (Solidalitatsprinzip)」 と 「
扶助性原理」 ( Subs i di ar i t 畠t s‑
prinzip) とい う, 最 重 要 な 人 間 社 会 の構
築原理 が現 れ る( 7 ) 。 これ らの
原 理 は 相 互 に関 連 し, 常 に社 会 ・経 済 倫 理の 中心原則 で あ る。 ( Vgl . ,S.
19‑21.)
( 3) 命令の意義
① 研究基盤 としての倫理
ミューラーによれば, これ らの倫理は,資本は物的正 しさを,協働者 は人 間的正 しさを,外界は社会的正 しさを求めることで,同時的かつ同列的に企 業者的 目標問題 を秩序づけ解決する。彼は,カン トの一般的な 「 定言的命令」
( ka t e go l i s c heI mpe r a t i ve ) か ら導 出された経済的倫理 を研究の基礎 に置 く 。
その際,「 企業者的行動 は倫理的原則 と一致 しなければな らない 」 ( S.2 1 . )こ とが確認 され,それ らは次の ような意義 を持つ 。 ( Vg l . ,S.21 ‑ 2 2. )
1 )企業倫理 ( Unt e r ne hme ns e t hi k) :重要なのは,倫理 は常 に十分 に価値 あ る戦略的活動 であ る とい う認識 であ る。倫理 的要求は,公正 さ,正 しさ,正直 さ,権力の行使 , とい う四領域 に現 れ,それ らは任務 ,檎 理的標準,企業戦略,企業 の操作的行動 とい う四つの レベルで評価 さ れる 。 ( Vg l リS.2 2 ‑ 2 3. )
2 )管理倫理 ( Ma n a ge me nt e t hi k) :行動 と意思決定が個人的価値 と一致 し ない, とい うジ レンマは数多 く見 られ る。 この解消は困難であ り多 く の コンフ リク トが繰 り返 されて来たりで, ここに管理者 の倫理 が必要 にな る。管理者 は 自己の利害 と思考 を得 よう とするか ら,管理者の倫 理は重要である ( 8) ら ( V g l . ,S. 2 4 ‑ 2 5. )
3 )多国籍経済倫理 ( Mdt i na t i o na l eWi r t s c ha f t s e t hi k) :これは,多国籍企 業 は各 国でいかなる倫理的原則 に従 って行動 すべ きか, とい う問題 で ある。 ここには,i) 母国の倫理原則 を守 る ,i i) 進 出国の倫理的原則 に 従 う, とい う両極端 な解決方法があ り,現時点での行動 はそれ らの妥 協である。 ここで も三 つの命令が役立ち,国際的に も当然利用 される。
国際的 にも統一的 に実現 される 「 攻め」の環境管理 ( 9 ) が,それを示 して いる。
( 参 倫理の効果
1 )倫理 と生態系 :経済的倫理の観点か ら,環境管理の意義 とその必要性が
架橋 される, とミューラーは考 える。豊かな社会のみが環境問題を意識 し,そ うでなければ人は 目前の生活の維持 しか考 えない。 しか し,人間 は環境の一部で もあるか ら,人は環境 に配慮 し経済活動 を行 う責任 を意 識するとい う倫理が生 まれ る。
2 )人 間の責任 :人間の責任 は,人間的 に弁 明 ( Re c he ns c ha f t ) す る義務 と定義 され る。 自然 とい う動態的システムは,今 日の人間のためだけ でな く,明 日の人間のために もあ る。そ こか ら未来 を形成す る権力が 生 まれ,権 力は現在 だけでな く未来の人 間のために も責任 を負 う。現 在 の人間 も将来の人間 も,生活 と資源の利用の権利 を持 っている。 し
たが って,現在 の人 間は将来の人間に対 して資本の予備 を残 さなけれ ばな らない とい う倫理 が生 まれ る。重要 なのは,禁欲ではな く理性で あ り,人間の責任 は,ポス ト産業的生活 に不十分な 自然秩序 の完全化 であ り,その克服ではない。
3 )経済倫理的命令 :我 々の技術支配の時代 に環境倫理 を考 えれば,重要な のはやは りカン トの 「 定言的命令」の意味での一般妥当的な規範の探求 である。 ミューラーの研究の基礎 にあ る経済倫理的命令はこの要請 を満 た し,環境倫理的理解の基礎で もあ る。前面 に立つのは,「 人間的に正 当な経済 」 「 社会的 に正当な経済」 とい う命令であ る。環境倫理 は規範 の設定だけでな く,その利用 も要求す る。環境管理 に とって, これ らの 規範は常 に指導的命令の基礎 となるのである。
これ らは,戦略 と執行 において首尾一貫性を持たなければな らない。
これ らの命令が本質的な影響を与 えるのは,企業の生活 目標の定義およ び企業哲学の倫理である。長期的に倫理的に必要 な ことは,経済的理性 に反 しない。企業は権力を持つが,それは常 に責任 に結びつけ られ,倫 理志向q) 行動 は必要だけではな く,可能で もある ( 1 0) 0 ( vg l . , S. 2 8 ‑ 3 2. )
以上が,環境管理を展開す るに当たって ミューラーの思考的基礎 を形成す
る基本概念の概要である。
ここで我 々が確認で きるのは,①彼は,環境管理を企業の存続 にかかわる
「 戦略的管理」 として認識 し,その構築を意図 している,②彼は,戦略的環 境管理 に とって決定的に重要な要因は企業の 「 生活能力」であ り,環境管理 の 目標は この 「 生活能力」の構築 にある と認識 している,③ 「 環境」 とい う 概念は企業を取 り囲むすべての諸要因 として理解 されているのではな く,明
らかに 「自然」 という要因に限定 されている, というこ とである。
同時に我 々が注意すべ きことは, ミューラーにおいては,個人の行動 は も ちろん,企業 も何 らかの倫理的行動 が求め られ,それは一般妥当性 とい う基 準によって評価 される, とい うことである。換言すれば,企業は市民社会の 一員 として一般妥当性 を持 った倫理的行動が求め られている, とも表現で き る。物的にも,人間的にも,社会的にも,企業は正当的な行動が求め られ, それ らは企業の 「 生活能力」 に密接 に関連 している と考 え られるのである。
(注)
(1
)SEF
とは,企業成果 に決定的影響を与 える重要 な企業 内外の諸要因, と理解 される。拙稿 「環境管理 と企業の生活能力」
,3
頁 参照。( 2 )vg
l.,K.Che mi e l e wi c z ,Fws c hun gs k o n z e pt i o nd e rm' r t s c ha ft s u ) i s s e nns c ha ft e n ,2.
Auf
1. ,St ut t ga r t1 9 7 9・S.9.
( 3 )vg l . , M. We be r ,Ge s a me l t eA
ufs at z ez urWl ' s s e ns c h a ft s l e hr e , J . Wi nc ke l ma n n( Hr s g. ) , 3.
Auf
l. ,Ti i bi nge n1 9 5 8.
Vg l .
,K.R.Po ppe r ,Lo gi kde rFo r s c hun g,8・Au f l . ,Tt i bi nge n1 9 8 4.
Ⅴg l. ,G.W6 he,Ei n f i i hnmgi ndi eAl l ge me i neBe t r i e b s wi r t s c h a ft s l e h y l e ,1 7.Auf l . , M也nc he n1 9 9 0.
( 4 )
ピュッツ( T.Pt i t z )
は企業の 目標設定を評価する時,
「客観的に拘束的な 目標( di e‑・
o bj e ki vve r bi ndl i c he nZi e l )
」 とい う 「あ らゆる経営に一般的に妥当する目標設定」を 取 り扱 うことによって,価値判断の客観性を確保 しようとしている。これについては,以下の文献 を参照の こと。
T.PBt z ,The o r i ed e rAl l ge me i ne nWi r t s c ha ft s Po l i t i kundWt ' r t s c ha Ps l e nkun g
,Wi e n1 9 48 ,S.7 5.
C.Sa ndi g ,Be t r i e b s u J i r t s c ha ft s Po l i t i k ,2・Auf
l. ,St ut t ga r t1 9 66 ,S.3 2.
拙著 『企業政策論の展開』千倉書房 昭和
6 3
年,1 8
頁。(5)
カン トの命 令 に三 つ の経 済 的倫 理 命 令 を対 応 させ た の は , シ ャ ッシ ソ グ (∫.Sc ha s c hi ng)
である。Vg
l.,J .Sc ha s c hi ng,Re na i s s a nc ede rWi r t s c ha f t s e t hi k , R.Es c he nbac h,( Hr s g. )
,Au fde m wa gB um b e s s e r eUnt e me hmun g,Os t e r r e i c hi s c he r Co nt r o l l e r t a g1 9 8 8 ,Wi e n,S.7 9f f .
( 6 )vg
l.,Ⅰ .Ka nt ,Gr undl a ge nZ urMe t a pk ys i kd e rSi t t e n
,1・Auf
l. ,Wi e s ba de n1 7 8 5u n d Kr i t i kde rp7 1 a kt i s c he nVe r nun
ft,1・Auf l . ,Wi e s ba de n1 7 8 8.
Ⅰ
.
カン ト (著) (波多野精一訳)『実践理性批判』岩波書店 1 9 7 9
年,参照。( 7 )
メレロヴ ィッツ (K.Me r e l l o wi c z )
によれば,
「連帯性原理」( So l i da l i t a t s pr i nz i p)
と 「扶助性原理」( Subs i di a r i t a t s pr i nz i p)
とは,社会的原則 と経済的原則か らなる経営 的社会政策の原則の中で,前者に相当する原則である。彼 によれば
,
「連帯性原理」 とは,個人は 自分の同胞を考慮 しないで利己的な 自由主 義で生活 してはな らず,経営 も共 同体の一員であるか ら,常 に共 同社会の一員である ことを意識 し,その従業員 と結局は人間か ら成 る共 同体 に対する責任 を満たさなけれ ばな らず,協働者 を助けなければな らない, とい う原則である。「扶助性原理」 とは,個人は社会福祉へ参加する欲求を持ち,全ての人 々は社会福 祉のために要求 されることを作 り出 し維持 しなければな らず, この原理 によって社会 の構成員に為 さなければな らない補助,救済が成立することにその本質がある, とい
う原則である。
これについて詳 し くは,次を参照 されたい。
K
.Me l l e r o wi c z ,Unt e r ne hme ns Po l i t i k ,Bd.2 ,3・Auf
l. ,Fr e i bur g1 9
77,S.3 6 8 ‑ 3 69.
拙著 『企業政策論の展開』千倉書房 昭和
6 3
年,第3
章 処理学 としての企業政策論‑ メレロヴ ィッツの所論 を中心 として‑
,1 0 9
頁。( 8 )
ドラ ッカー (P.F.Dr uc ke r )
もこの ような管理者への要請 を述べている。管理者倫 理の基礎 にあ るのは企業の倫理的志向であ り,カン ト,シ ャッシソグ とドラ ッカーの 要請が ミューラーの研究の倫理的基礎 となっている。Cf . ,P.F.Dr uc ke r ,TheEt hi c so fRe s po s i bi l i t y ,P.Ma ds e n
,∫.M.Sha f r i t z
,Es s e nt i al so fBu s i ne s sEt hi c s ,Ne wYo r k1 9 9 0,pp. 2 7 ‑ 3 8.
Ⅴg
l.,MBl l e r ,a .a .
0. ,S.2 5.
( 9)「
攻め」の環境管理 については,本稿1 41
貢以下 を参照 されたい。( 1 0)
ドイツの経営学的研究における倫理問題については,次を参照 されたい。鈴木辰治 「ドイツにおける企業倫理論」鈴木 ・角田 (編著)『企業倫理の経営学』
ミネルヴ ァ書房
2 0 0 0
年,第2
章5 5
頁以下。同 『企業倫理 ・文化 と経営政策』文展堂
1 9 9 6
年。笠原俊彦 『企業の営利 と倫理
M.
ヴ ェ‑バー研究』税務経理協会 平成1 5
年。3
.研究の基本概念( 1 )企業概念
ミュー ラーは,環境問題を取 り込んだ意思決定志向的 ・システム志向的ア プローチか ら企業概念 を定義する。特 に,システム志向的アプローチか ら, 企業 を利害関係者 か ら構成 される 「 連合 」( Ko a l i t i o n) と捉 える。
( ∋ 研究アプローチ
1 )システムアプローチ :ウル リッヒ ( H. Ul r i c h) ( 1 ) を代表的研究者 とす る
1 9 7 0 年代 に成立 したアプ ローチであ り,企業 をサイバネ テ ックなシス テム として捉 える。 ミュー ラーは, このアプ ローチを,異論 があ る と
して も,企業 の全体関連 を適切 に把握 し,その観察方法 を決定的 に発 展 させ,経営経済学の形成 目標 を大 き く前進 させた,と高 く評価する ( 2 ) 0
( Vg l. , S. 3 4 ‑ 3 5. )
2 )意思決定志向的アプローチ :ハ イネソ ( E. He i ne n) によって展開 され た実践的で現実的な意思決定論 であ り,人間 を理論的認識の中心 に置 き,実践的内容 と現実的検証可能性 を持 つ理論 であ る。人間の非合理 性 を含 んだ意思決定 をテーマ とし,それ らは 「連合」 とい う企業組織 の基礎 モデル に反 映 され, ドイツ語圏で高い評価 を受けた ( 3 ) 0 ( vg l . ,S.
3 5. )
( 参 企業モデル
ミューラーは,上の二 つのアプローチを基礎 に,次の二つの企業モデルを 展開する。
1 )連合モデル :企業は,多種多様 な要求を持ち権力を行使する利害関係者
( s t a ke ho l d e r ) か ら構成 され る 「 連合」であ り,組織維持のため企業 目 標 は連合者 ( Ko a l i t i o n a r e ;利害関係者) によって形成 された共通 目標
を追求する, というモデルである. このモデルは, ミューラーの研究の 基礎 をな し,管理職分は適合者の企業への要求間に均衡 を達成す ること である, と解 されている 。 ( Vg l リS.3 6. )
2) 均衡モデル :エ ッシ ェソバ ッハ ( R.Es c h e n b a c h ) は連合モデルを応用 し, 彼の均衡モデル に取 り入れ ( 4) ,連合者 として 「出資者 」( Ka p i t a l g e ‑ b e r ) , 「 協働者 」( Mi t a r b e i t e r ) ,「 外界 」( Umf e l d ) のみを区別 した ( 5) 0
ミュー ラーは, これを企業 内外 の要求集団が明確化 された と高 く評価 し,さ らに有効性志向 と能率志向 ( 6) 活動 の秩序化に特に重要であ るとし て,彼の考察 に取 り入れる 。( Vg l . ,S.3 6 ‑ 3 7. )
③ 連合者
1 )出資者 :出資者 は, 自己資本家であれ他人資本家であれ,長期的で適切 な利払い と投下資本の維持および収益性が 目標で,投下資本の処理は企 業 内部の問題であるか ら彼等は内部要求集団である。
2)協働者 :協働者 は,労働力 として企業の将来 に とって重要要因 として決 定的役割を演 じ,人間 として企業 と人間的関係を持 つ。協働者の要求は 労働力の代償だが,それは物的 ・財務的対価のみな らず非物的な もの も 含むか ら,具体的 ・共通的な 目標形成は困難であ る。協働者は企業の価 値創造過程を形成するか ら,内部的要求集団である。
3 )企業者的外界 :外界は,企業内部領域 に属 さないあ らゆる関係者であ り, 企業存続 に対 して,経済的,技術的,社会 ・文化的,法律 ・政治的,物 理的条件を構成す る。外界は企業を取 り巻 くシステム としてあ らゆる外 部要求集団の上位概念だが,決定的な外界は 「自然環境」である。
4)管理者 :管理職分は,連合者要求間の均衡化 と,彼等のあ らゆ る利害に
対する共通的方 向づげである。 しかし,企業の 目標 は不安定であ り,逮
合者の最大公約数的 目標 は 「 市場で生 き残 ること 」( z ut i be r l e be na m
Ma r kt ) と言 える。管理者は協働者の一員であるか ら,内部要求集団に 属す る 。( V
gl . ,S.3 7 ‑ 4 0. )
④ 外界 とそのセグメン ト
1 )外界の定義 :外界 とは,企業外部 に存在す る全体 としてグローバルな上 位概念であ り,「 企業 に何 らかの形 で手段的関連 もが成立す る,個人 と 組織の全体システム」( S.4 1 . )と定義 され,次の特徴を持つ。
2 )外界の特徴
i )相互依存的関連 : 「 依存性がない企業は依存性がない個人の ように存 在 しない 」 ( S. 4 2. )と同 じ く,オープンシステムた る企業の外界の構 成要因は相互依存的関連を持つ。
i i)複雑性 :外界は常 に変化 し複雑性は増大する。複雑性は全体の客観的 把握を不可能 にするので,主観的意思決定 と重点設定が必要 になる。
そ こで ミューラーは,操作可能性を容易にするモデル構築を試みる。
( vg l . ,S. 4 2 ‑ 4 3. )
3 )外界の区分
図
1 :外界 とセグメン ト ( S. 4 5. )
ミュー ラーは,図 1 の ように外界 を三 つの集 団に区分す る。
i )環 システム ( Ums ys t e m) Ⅰ :市場 に関連 す る外界 の集 団 ( 納 入業 者 ,顧客,競争者) 0
i i)環 システム ( Ums ys t e m) Ⅱ :社会 に関連 す る外 界の集 団 ( 経済的, 技術的,社会 ・文化的,法律 ・政治的セグメン ト ) 。′( Vg l り S.4 3 ‑ 4 4. )
i i i )生態的環 システム ( 6 ko l o g is c he sUms ys t e m) :決定的 に重要 な認識 は,企業 は もち ろん市場 関連 的集 団や社会 関連 的集 団は 「生態 的環 システム」 に取 り囲 まれ,相互 に影響 しあ う絶 えざ る相互作用 の中 にあ るこ とであ る。 これ らの関係 の 「重要性」 の定義 は困難 だが,
「 企業 に対す る環境 の本質的特徴 は少 な くとも確認 で きる 」 ( S. 4 4. )
か ら , 「企業管理 の職分 は, この影響 を確認 し,透 明化 し,結果 とし て企業 に利用す ること 」 ( S.4 4. ) である 。 ( Vg l . ,S.4 4 ‑ 4 5. )
( 2) 環境保護 ( Umwe l t s c h ut z )
( ∋ 定義 :ミューラーによれば,環境 とは,経営的外界の一部 であ る自然 すなわち生態系の全体である生態的環 システムであ る。 これには,生命 ある全体のみな らず 自然が作 り出した風景や美的価値 もが含 まれ,企業 か ら見 れば,インプ ッ トとアウ トプ ッ トの媒体であ り,一方では インプ ッ ト要素 として他方では生産 ・分配の媒体 として利用 される 。( Ⅴg l . , S.4 6. )
( ∋ 環境保護 :この用語 は現代 に作 られた概 念なので確 固 とした定義 も語 法 もな く, ミュー ラーは一般妥 当的な定義 を試 みる。人間行動 は 自然 に 負 荷 を与 え , そ の ま まの状 態 は守 れ な い か ら, 「環 境 保 全 」 ( Um‑
we l t be wa h r ung) とい う静的概念 とは同一視 も実現 もで きない.
③ エン トロピーの法則 ( Ent r o pi e ‑ Sa t z ) ( 6 ) :環境問題 には熱 力学の法則 が,特 にその第二法則が重要 な意味を持 つ。
1 )第一法則 :人間は物質やエネルギーを作 ることも無 くす こともで きな
いので,それ らは失われれず,生産や消費は物質やエネルギーの単な
る変形 にす ぎない。
2)第二法則 :閉鎖的システムでは,エン トロピーは決 して低下せず同一 か時間 と共 に増大する。利用で きないエネルギーは増大 し,利用で き るエネルギーはいかに努力 しようとも最終的にはゼ ロになる。
3 )エン トロピー法則 と太陽エネルギー :地球は部分的な閉鎖システムな ので太陽エネルギーが地球 に低いエン トロピーを もた らし,新 し く作 られた資源に限 りエン トロピー法則は経済過程 に何の問題 もないが, 新 しくない資源を利用す る限 りエン トロピーは高まる。「エン トロピー 法則 は,人間が設定 しなければな らない特別 な責任 を基礎づけ る」
( S. 4 9. )と同時 に,我 々はエン トロピー増大 を回避 しなければな らな い。環 境 保 護 の意 義 は環 境 負荷 が最 小 とな る 「環 境保 存 」 ( um‑
we l t s c honung) の追求だが, これは無責任なエン トロピー増大の可 能性があるので,倫理的 に 「 攻め」の環境管理の理解 には不十分であ る, とミューラーは指摘する。倫理的行動の根拠 は,エン トロピー増 大の回避可能性 にある 。 ( vg l . ,S. 4 7 ‑ 4 9. )
④ エン トロピー法則 と環境保護 ( vg
l.,S.4 9 ‑ 5 2. )
1 )環境正当的行動の必要性 :ミューラーの研究の基礎 には 「 環境保護 ・ 環境正当性 」 ( Umwe l t ge r e c ht i gke i t ) の哲学がある。あ らゆ る人間行 動 は環鏡 を利用 し , 「それ故,人間の行動 は常 に環境 に負荷を及ぼす が,我 々は 『 環境正当的 に』経済 す ることに努力 しうる 」 ・( S.4 9. )か ら , 「自然の過程 と負荷限界 を科学的 に正確 に把握 し, 自然循環の中 でで きる限 り摩擦 がない ように利用す る行動方法 を毎 日行 うこ と」
( S. 4 9. ) すなわち 「 循環均衡 」 ( Fl i eBgl e i c hge wi gt ) の達成が我 々の 義務であ り,それは可能である。
2)人間行動の限界値 :科学 は限界値 を求めるが,その時の科学的知識 と
政治プロセスの影響で,限界値 は 「 環境保護 」 と 「 環境正当性」を制
限す る補助手段 にす ぎない。 しか し,「 科学的 に測定 され倫理的に基
礎づけ られた限界値は,環境正当性 と環境保護の限界の尺度 として」
( S.51 ‑ 5 2. )役立つ 。 ( Vg
l.,S.51 ‑ 5 2. )
3)企業行動 の環境正当性 :「 理想型的 に言 えば,環境正当的行動 は 自然 の限界値 を達成 しようとす る行動であ る 」 ( S.5 1 . ) 。エン トロピー増大 は低 いエン トロピーのエネルギー供給 よ り少 なければな らず,企業 行動の環境正 当性は ここに求め られ る。「 環境管理の活動 は,常 に少 な くとも企業 とその製 品の環境正 当性 を 目標 に持たなければな らな い。企業の 目標体系 が倫理的部分 だけ拡 げ られ るな らば,それ以上 に環境保護の要求にも正当化が求め られ よう 」 ( S.5 2. ) 0
以上が, ミューラーによる研究 アプローチ と企業理解に関する概念規定 と 見解の概要である。
ここで我 々が確認すべ きことは,( ∋連合 としての企業の構成員 ( 連合老) は,出資者,協働者 と外界の三要因のみであること,( ∋外界は企業のあ らゆ る外部要因を含む全体であること,③その中で企業環境は 「自然環境
」のみ であること( 既述),④管理者は協働者の一員であること,⑤管理者の職分は 連合者要求間の均衡維持であること, ⑥倫理的行動の基礎 には「エン トロピー の法則」 とい う自然科学的法則があること,( ヨエン トロピーの増大はエン ト
ロピーの減少 によって均衡 させ られなければな らないこと,である。
この ような ミュー ラーの見解の中に,我 々は,新たな環境管理の職分 と環 境倫理の必要性が求め られる根拠の一つを見出す ことがで きる。
(注)
(1)ウル リッヒ (H.
Ul r i c h)
は,現代企業 を,動態的, 目標志向的,社会的,開放的で 複雑 なシステム と定義 してい る。Vg
lリH.Ul r i c h ,Di eUnt e r ne hmu n gal spr o dukt i v e ss o z i al e sS ys t e m,Ber nund St ut t ga r t1 9 7 0,S.1 5 3
ff.拙著 『企業政策論の展開』千倉書房 昭和
6 3
年 ,第4
章 ウル リッヒの企業政論 ,1 1 2
頁以下 参照。拙著 『企業管理論 の構造』千倉書房 平成
3
年 ,第 1章 企業管理の構造 ‑ウル リッヒの所論を中心 として ‑,1頁以下,参照。なお,研究アプローチ としては,さらに
3
)進化論的アプローチ,4)
状況的アプロー チ,5)労働志向的アプローチが提示 されている。( 2 )vgl
りH.Ul r i c h ,α.α. 0 . 1 5 3f f .
( 3 )vg
l.,E. He i ne n , Ei n f i i hr un gi ndi eBe t r i b s wi r t s c ha ft s l e h
yle ,9・Auf
1. , Wi e s ba de n1 9 8 5.
ハ イネソ,溝 口一雄 (監訳)『経営経済学入門』千倉書房 昭和
4 8
年。拙著 『企業管理論の構造』,第 2章 企業の 目標体系の構造‑ハ イネソの所論 を拠 り所 として‑
,4 0
頁以下,第3
章 企業 目標 と企業組 織‑ハ イネソの所論 を中心 として‑, 6 2
頁以下 参照。( 4 )vg
l.,R.Es c he nba c h
,Di ene ueEmo t i o na r i s i e r u ng:Or ga ni s a t o r i s c heundUnt e me h‑
mungs f t i hr ung,Es c he nbac h( Hr s g. ) ,Ne ueTe nde n Z e nund We r k z e u gei m Co nt r ol l i ng,Os t e r r ei c hi s c he rCont r ol l e r t a ge 1 9 8 4,Wi e n1 9 8 5.
( 5 )R.Es c he nba c h,a.a.0. ,S.9 9.
( 6 )「
有効性」 と 「能率」は, ミューラーの展開する環境管理論 における鍵 となる重要な 概念である。これ らに関 しては,本稿
1 2 9
頁以下を参照 されたい。( 7 )エン トロピー法則 と環境保護の関連については,以下の文献 を参照 されたい.
U.St e ge r ,Umwe l t ma na ge me nt ‑Er f ahr un ge nundZ ns t r u me nt ee i ne rumwe l t o r i e n‑
t i e r t e n Unt e r ne hme ns s t r at e gi e
‑,2・Auf
l.,Wi e s ba de n1 9 93 ,S.2 8 ‑ 2 9undS.3 6 2.
拙稿 「企業環境 と企業行動 ‑シ ュテ‑ガ‑の所論 を中心 として
‑
」『経営 と経済』第
8 0
巻第3
号 長崎大学経済学会2 0 0 0
年,8 6
頁および9 0
頁 注( 4)
04
.企業管理 と環境( 1 )生産要素 と しての環境 ( ∋ 環境 と企業
「環境」 は生産要素の一 つであ るが, ミュー ラー に よれば,それは低 く評
価 され実 際 に経 営経済 学 が環 境 に関心 を持 ち始 め たり もつ い最近 で あ っ
た( 1 ) 。 しかし,環境 は次第 にコス ト財 とな り,環境を企業の構成部分 として 理解 し始めた。そ こで彼は,「 環境 はいかな る場合で も注意 され るべ き生産 要素であ り,それはコス ト的見解 か らのみ評価 されてはな らない
」 (S.61.)とい う規範 を設定する。
( ∋ 環境財の一般的特徴
生産要素 「 環境」は原則的 に,1)公共的消費財,2)有害な材料 の受容媒 体 ,3) 原料 , として利用で きる。 また,環境 は,1) 非分割性 ,2) 非移動 性 ,3) 限界性 ,4) 代替的利用性 とい う潜在的生産要素の基準を満た し,さ らに ,1) 分割希少性 ,2) 累積的希少性, とい う特徴 を持つ。 しか し,環境 には 「コモンズの悲劇 」( 2 ) ( Al l me nde ‑ Tr a g6di e ) 的現象が現れ る危険があ り, 環境問題の本質的原因は ここにある, と指摘する 。 ( Vg l . ,S.61 ‑ 6 2. )
③ 環境問題へのアプローチ
環境問題の特殊性 か ら, ミューラーは重ねて言 う。「 近代的経営経済学 に とって,環境 とい う新たな本質的研究対象は,コス ト的観点か らのみ考察 さ れてはな らない 」 ( S.6 4. ) , と。経営経済学 に環境 が取 り入れ られたのは 7 0
年代の初めで,それに挑戦 したのは,1)意思決定志向的アプローチ,2)シ ステム志向的アプローチ,3) 進化論的アプローチ,4) コソテンジ ェソシー
・状 況的 アプ ローチで あ り, これ らに よって伝統 的経 営経 済学 で環境 を 取 り扱 う基礎 が作 られ た 。 今後 どの よ うな 「生 態 志 向的経 営経 済 学 」 ( 6 ko l o gi e o r i e nt i e r t eBe t r i e bs wi r t s c ha f t s l e hr e) とい う新たなアプローチが どれほ ど展開され るかが期待 される。
ミューラーは,伝統的アプローチを基礎 に意思決定志向的アプローチによ り , 「連合」 と 「 均衡」 とい う基礎モデルの意義を明 らかにしようとする0
( Vg l . ,S.6 2 ‑ 6 4. )
( 2) 「有効性」 と 「能率」
「 連合モデル」では,企業維持のために各連合者の要求 を満足 させなけれ
ばな らない。 しかし,満足は どの ような基準で どの ように測定 されるのであ ろうか。 この疑問に応 えるのが,彼の独 自の概念である① 「 有効性 」( Ef f e k‑
t i v i t え t ) と( ∋ 「 能率 」( Ef f i z i e n z ) である ( 3) 。
① 有効性の概念
これは,外部利害関係者の関連性 を表す概念である。企業の維持 には企業 内部 か ら生ずる効果が外部者 に十分でなければな らないか ら,有効性は企業 の生活能力の指標であ り,均衡モデルに応用すれば, これは外界か ら企業へ の生態的要求の満足度 を示す指標で もある 。 ( vg l . ,S.6 5 ‑ 6 6. )
( ∋ 能率の概念
これは,企業 内部の機能力の尺度である。能率は,内部要求集団間の対立 関連 に依存 し,成果は企業制度職分の満足度 に依存するので, これは企業 目 標達成の度合い と定義 される。均衡モデルに応用すれば,能率 とは出資者 と 協働者の要求満足度を意味す る 。 ( Vg l . ,S.6 6. )
③ 企業管理の職分
管理職分は,要求集団の月標間に均衡 を達成す ること,すなわち有効性 と 能率の確保 であ り,両者は対概念 と理解 される。企業が持続的に存続 しうる には,常 に有効性 と能率を考慮 しなければな らない。両者は相互依存的関連 にあ り, この両者の依存性を認識 し均衡 させることが管理職分であ り,特 に 自然環境は外部要因なので,環境管理は有効性志向的考察 か ら 「 戦略的成果 要因 ( SE『) 」( 4 )と確認 される 。 ( V g l . ,S.6 6 ‑ 6 8. )
( 3) 戦略 と外界
① 戦略的企業管理
これは成果潜在力 ( Er f o l g s po t e n t i a l )の最高の実現 と利用 を意味 し,港
在力 とは企業の存続 目標 に極めて重要な種 々の成果源泉であ り,それを得 る
努力は企業生活 に不可避であ る。あ らゆ る戦略的構想 ( 5) にある最終的企業
目標の前提条件 は,市場で 「 生活するこ と 」( z ul e be n) あ るいは 「 市場で
生 き残 ること 」( z ul i b e r l e b e na mMa r k t ) である 。 ( Vg 1 . ,S.7 4 ‑ 7 5. )
② 戦略的成果要因 ( SEF)
これは, ミュr ラーの研究の基礎概 念であ り,生活能力の確保 には SEF
か ら企業への要求を満たす必要があるが,生活能力の確保 にはまだ不十分な 条件である。彼は SEF を均衡モデルか ら定義 し,彼が掲げ るのは ,1) 資本 の処理 自由性,2) 努力に値する職場の存在,3) 外界 と調和 して生活する能 力 ,4) 管理者の力,であ る 。S EF が より良 く特徴付けされればされるほ ど, それだけ潜在力が よ り良 く開拓 される。 そ こで,「 環境 と調和 して生活する 能力 」( Fa h i g ke i t , i nHa r mo n i emi td e rUmwe l tz ul e b e n) ( S.7 6. ) も S EF と して確認 される。「 攻め」の環境管理 は企業の生活能力の確保だけでな く, 典型的な環境潜在力の開拓 も可能にする 。 ( vg l . ,S.7 4‑ 76. )
( 9 戦略的管理の意味
戦略の意義は企業の生活能力の確保 にあるか ら,戦略的管理は動態的外界 では常 に必要である。問題は,複雑性 と不 明瞭性にもかかわ らず企業を上手 く目標へ と操作で きるか否かだか ら, この議論では外界の特別な意義が認識 で きる。ミューラーは,環境管理 に対 して戦略的アプローチを採 る と同時に,
「 成功 した管理者は論理 ( Lo g i k) と直感 ( I n t u t i o n) を結合で きる 」 ( S.79. )
と述べ , 「 戦略的計画過程 と直感の支援力に よって,企業管理 はその固有の 個別戦略を見つけることがで きる 」 ( S. 80. ) と,管理者の直感の重要性 に も 言及 している 。 ( Vg l . ,S.7 7 ‑ 8 0. )
以上が,環境問題の分析 と考察 にあたって必要な概念 に関するミューラー の見解の概要である。我 々は,以上の彼の概念規定か ら,以下の ような注意 すべ き見解を指摘することがで きる。
( ∋ 特別な生産要素 としての 「 環境」
彼は 「自然環境」のみを環境 として定義 している。それは, 自然環境が環
境適応システムた る企業に とって戦略的に決定的な要因 と解 されているか ら
であ り,だか ら自然環境は 「 戦略的成果要因 ( S EF) 」 と定義 されてい る。
しかもそれだけではない。彼は企業管理 における倫理性を強調するが,その 必要性は熱力学的法則すなわちエン トロピー法則か ら生み出された ものであ る。人類が永久 に存続すべ き存在であるな らば,企業は 自然環境を保護する 倫理的責任 を負 うことになる。
② 有効性 と能率
「 連合」 として理解 される企業は, 連合者の要求に適切 に応 えることでその 存在を確保 しなければな らない。そのためには,その適切性 を測定 ・判断す る基準が必要 となる。そ こで, ミューラーは 「 有効性」 と 「 能率」 とい う紛 らわ しい概念を導入 し,連合者の要求の満足度を測定 しようとする。しか し, この基準 については何が どの ようになった ら適切なのか, とい う基本的問題 が依然 として残 されている。
( 診 管理の職分
管理の職分 については文脈の違いに応 じていろいろな表現がなされている が,それ らは結局企業の 「 生活能力」を維持 ・拡大することによって企業の
「 存続確保」あるいは 「 企業維持」を 目指す, ということに他な らないであ ろう。問題 は, ミューラーの主張 をさらに究明 し,企業の 「 生活能力」 とは 一体何であるかを具体的に解明す ることにある。
④ 戦略的環境管理の構築
上述 の課題 は特殊 な生産 要素 とされてい る 「環境 」 を戦略 的成果要 因
( S E『) として取 り入れた戦略的環境管理 を適切 に構築 し,企業全体 として 環境志向的な管理活動 を展開 してい くことに見出す ことがで きる。環境管理 の本質は物理的な 「 仕組 み 」 ではな く,彼 も述べるように企業成員の 「 精神 保持」にあ り,それが 「 横断職分」 といわれる環境管理の特質をなす。
(注)
(1)ミューラーによれば,『環境 と経営経済』 とい うタイ トルを持 った最初のモ ノグラフ が現れたのは
1 9 8 0
年であった。Vg
l.,H.St r e be l ,Umwe l tundBe t r i e bs wi r t s c ha f t ,Di enat ar l i c heUmwe l tal s Ge ge ns t andd e rUnt e r ne hme ns Po l i t i k ,Be r l i n1 9 8 0・
( 2 )
コモンズの悲劇( t r a ge dyo fc o mmo ns )
とは,「共有地 (コモンズ) に農民が牛 を放 牧す るとい うとい う状況を設定 し,農民がそれぞれ より多 くの利益を求めて1頭で も多 くの牛を共有地 に放牧 しようとす るこ とによ り,共有地 は過放牧 とな って,結果的に すべての農民が被害を被 るという」 ことを意味する現象である。植木和弘 『環境経済学』岩波書店
1 996
年,1 61
頁以下 参照。上 の引用文 は 『同』1 6 2
貢。( 3 )
ミュー ラーの鍵概念 とも言 うべ き 「有効性」 と 「能率」 とい う用語は,バーナー ド (C.Ⅰ .Ba r na r d)の 「
管理者職能論」で使用 されている 「能率性」(e f f i c i e nc y)
と 「有 効性」 (e f f e c t i ve ne s s )
とい う概念 との類似す る可能性 を想起 させ られる。 しか し,両 者の概念 にはほ とん ど関連性がない と考 えて よいだろ う。確 かに大 き く考 えれば両者 は何 らかの 目標達成 に関連 している概念であ るが, よ り具体的な内容 を見れば,両者 間にはほ とん ど関連性がない ことが判明する。 この点に関 しては次を参照の こと。C.I .Ba r na r d ,TheFunc t i o n so ft heEx e c ut i v e ,Ha r va r dUni ve r s i t yPr e s s1 9 3 8・
山本安次郎ほか(釈)
,
『新訳 経営者の役割』ダイヤモン ド社 昭和43
年。( 4 )sEF
とは,st r a t e g is c he rEr f o l gs f a kt o r
の ことで, ミューラーが創出 した概念であ り, 企業活動 に重要な影響を与 えうる諸要因, と理解 される。Vg
l.,C.Mt i l l e r , α . α .
0リS.8
1.
( 5 )
多 くの研究者たちが戦略的企業管理を採 りあげたが,クー ノ ・ピュソピソ (C.Pt i m‑
pi n)は8 0
年代初めに 「戦略的成果ポジシ ョン( SEP)
」 とい う概念 を定義 し,成果潜 在力を機能的 レベル まで拡大 した。 しか し, この構想の問題点は成果潜在力の暖味 な 定義にあった, とミューラーは批判 している。Vg
l.,C.Mt i l l e r ,a a .0. ,S.7 7.
Ⅴg
l.,C. Pt i mpi n
,J .Pr a nge , Mana ge me ntde rUnt e me hme ns e nt wi c kl un g ,Fr a nkf ur t / Ma i n,Ne wYo r k1 9 9
1,S.3 4.
5.
企業 と環境管理(1) 企 業 の 生 存 目標 (丑 生 存 目標 の 意 味
ミ ュー ラ ー に よれ ば , 生 存 とは , 変 化 す る範 囲 条 件 の 中 で 持 続 的 な 「存 在
確保 」( Ex i s t e z s i c he r u n g) を意味す る。彼 は人間生活 を例 にあげなが ら,
「 企業 も,市場経済で生存 しうるためには,企業 内外の要求 を満たさなけれ ば生 き残 ることはで きない」( S.8 5. )とい う基本言 明を得 る。 その際,彼 は
「 有効性」 と 「能率」の観点か ら,生存の条件 を説 明す る。企業が有効的で 能率的な らば,企業の存在確保 が,すなわち生存能力が得 られる と説 明す る。
( 参S EF としての潜在力
有効性 と能率はその潜在力 ( Po t e n t i a l ) に決定的 に依存す るか ら,潜在 力 は SEF であ る .SEF 管理 は,有効性 ・能率志向的活動 によ り,一方 では潜 在 力志 向的な企業管理 の戦略的前提条件 を作 り,他方 では SEF 特殊的 な潜 在 力の利用 と開発 を可能 にす る 。( vg l . ,S.8 4 ‑ 8 5.
)「実 りあ る管理 は,企業 を 少な くとも競争者 と同 じように有効的で能率的 に保 ち,それ によって企業 が 市場 におけ る持続的な生存 を確保 す るためには, これ らの要 因は必要条件 だ が, もちろん不十分な条件 である 」 ( S.87 . ) 0
ミューラーは この考察 の最後 に,生存能力 目標 の上位 目標 として,次の よ うな生活 目標 を定義す る。「 企業 の 目標 は,動態的 に展開す る範 囲条件 の下 での持続的な存在確保 である 。 」 ( S.8 7. )
( 2) 企業の生活能力 ( ∋ 生活の質
ミューラーは,生 き残 りとは存在確保 だけではな く,その質 とあ らゆ る高 度な問題が含 まれている と考 える。 その際,彼 は図 2で示 され るように,マ ズ ロー ( A. H.Ma s l o w) の欲求 ピラ ミッ ド( 1 ) を基 に,最下層 の生理的欲求 レベルを生存 目標 と匹敵 させ,それ以上の欲求 レベルを生活能力 目標 と考 え る。企業活動 と人間生活の質への努力 との間 には何 らかの関連性が確認 され, 企業管理 も存在闘争 を永久 に続けない し,意思決定者の欲求 も上昇す る。 こ
こで,考察 の基礎 として , 「管理哲学 」( Ma na ge me n t p hi l o s o p hi e ) が現 れ
る ( 2 ) 0
(vgl.,S.88 ‑ 8 9. )
図 2 ニマズ ローの欲求 ピラ ミッ ドと企業 目標 ( S. 88)
( ∋ 生活能力の定義
管理哲学は倫理的な企業活動 を拡大 させ,三つの命令は同時的 ・同格的に 追求 されるか ら,生活能力の上位 目標である生活 目標 は次の ように定義 され る。「 企業の 目標 は,動態的に展開す る範 囲条件の中で,企業 内外 の要求集 団に対 する倫理的に基礎づけ られた責任 ( 命令 ! )を同時 に守 りなが ら,拷 続的 に存在 を確保 す ることであ る 」 ( S.9 0. ) 。 この定義 には,存在確保 と倫 理的 に基礎づけ られた責任 とい う二つの次元があ り,前者はマズローの生理 的欲求 に対応す る生 き残 り目標 であ り,第二の次元は,生存 目標 に倫理的部 分を含んだ内容的に拡大 された階層的な 目標である
。 (Vgl
.,S.9 0. )
③ 目標の正当性
管理哲学では生活 目標の 「正当性 」 ( Le g it i mi t a t ) が問題 とされ 正当性
ある 目標値 として重要なのは生活能力で,正当性を保証 するのが規範的管理
の職分であ り, この意味で環境管理は規範的管理である。企業行動 の規範性
を証 明するりには価値尺度が必要で,規範 は倫理か らしか生 じないか ら,そ
れは倫理的に基礎付け られた ものである
。 (vg1
.,S.91 ‑ 9 2. )
( 3 )戦略的要因としての環境 ( ∋ 環寛 と環境管理
企業 に とって特別 に重要 なのは,「外界 と調和 して生活す る能力 」 ( di e Fa hi gke i t ,i nHa r mo ni eni tde m Um i e l dz ul e be n) ( Sl9 2. ) である。 この能 力は,生存 目標 を実現するための本質的な事前操作値である。企業者的外界 は企業毎 に管理 によってその重要性 か ら分額 され, SEF として確認 され, その管理が 「 環境管理」 と呼ばれる。均衡モデルでは,外界,出資者,協働 者が適合者 として総括 され,戦略的管理の職分は成果能力の創造 と確保 であ り,その基礎 には企業は全ての要求集団の満足が満たされる時にのみ長期的 に生 き残 ることがで きる, とい う言 明がある 。 ( Vg l . ,S. 9 2. )
( ∋ 環境 と有効性
企業の存続のためには論理的には外界の満足化が必要だが,実践的には企 業に とって重要で具体的な外界要因は何か とい う問題が生ず る。実践的調査 によれば, 自然環境は企業に とって重要な要因であ り , 「 環境」が SEF と証 明され,直感的にもその ように認識 され うる。その際,有効性 と能率が大 き な影響 を及 ぼ し,まず有効性志 向的な観察方法 によって環境 とい う SEF が 確認 され る。環境管理 の職分は, この SEF に注 目し他の要請 と同 じように 対応 して企業 を運営す ることであ り, 目標 は有効性の高揚である ( 3 ) 0 「 環境 管理は原則 として戦略的で,実行 に当たっては長期的展望が必要であ り,そ の際,意思決定者 は 自分 に課せ られた責任 を意識 しなければな らない 」 ( S.
1 4 2. ) ことを, ミューラーは強調す る 。 ( vg l . , S.9 3 ‑ 9 4. )
( 4 ) 企業内連合者
企業外の要素 とな らんで企業内要素 も重要であ り, ミュー ラーは特 に出資 者 と協働者の要求を重視する。有効性志向の方策 を実行する場合には,少な
くともこれ らが制限的条件 として常 に注意 されなければな らない 。 ( Vg l リS.
1 5 8. )
① 目標間の関連
均衡モデルによれば内部要求集団は出資者 と協働者であ り,企業管理は彼 等の要請 に対応 しなければな らない。 ここで注意すべ きことは,あ らゆる連 合著 聞 には ,1 )目標 コン フ リク ト ( Zi el konf l i kt e),2) 目標 中立 ( Zi el
‑ne ut r a l i t a t e n),3) 目標 シナジー ( Zi e l s ynagi e n) が,特 に内部集団 と外部集 団 との間に現れることである( 4 ) 。期待 されるのは 目標シナジーであ り,望ま し くないのは 目標 コンフ リク トであるが,注意 されるべ きことは,少な くと も企業生 き残 りの保証であ り,最適なのは,有効性 と能率の同時的高揚であ る . ( vg l . ,S.1 4 3 ‑1 4 4. )
( ∋ 出資者 と環境
自己 ・他人資本家の共通の関心事は,投下資本への適切な利払いであ り, その前提 は価値生産 コス ト以上の価値 を創造する企業能力である。環境管理 は新たなコス トを生みだ し,それ らは,内部化 された環境管理 か ら生ずるコ ス トと環境要請 により企業が負担するコス トとに分け られる。 調査 によれば, 驚 くべ きことに環境管理はコス ト減少あるいは純益の増大 を,すなわちコス
ト低減能力をもた らしている 。 ( Vg l . ,S.1 4 4 ‑1 4 6. ) ( 参 コス ト節約能力の発展段階
さ らに驚 くべ きことは,コス トに対する 目標 コンフ リク トが生 じた として ち,環境管理の発展は以下の ような三段階のコス ト節約能力をももた らして いることである。
1 )第一段階 :被害克服の段階で,イメージ保持のための方策がコス ト上昇 を招 く。
2 )第二段階 :急速 に変化する法律的範囲条件へ適応する段階で,環境対策 コス トは追加 コス トを生み出す。
3 )第三段階 :環境管理は成果要因 とな り,コス ト低下以上の機会が現れ,
競争優位が磨 かれ 成果潜在力が構築 される段階で,部分戦
略が高い 目標達成率の前提条件 を作 り,環境管理は価値連鎖
におけ る全体 コス トを最適化 し,環境 と出資者 間 に 目標 シナ ジーが もた らされる。
この段階ではもはや終始一貫 した 「 攻め」の環境管理 しかあ りえないが, それで も企業管理はコス ト最適 に行動する とい うコス ト管理の原則か らは解 放 されない。「 環境管理の 目標 は,企業がその可能性の中で コス ト的 に最高 能率を, したがって コス ト最適化 を導 くことである 」 ( S.1 49. ) 。
④ 環境管理 と金融
環境保護 のために投資需要が生ずれば,適切な金融形態提供者 に機会が開 かれ,その機会は特殊 な外界,特 に市場関連的要求集団の要請 に利用で きる。
彼等は市場能力を利用す るか ら,「 環境保護 に投資す る企業 の観点か らは, この金融提供は近代的環境管理 によって克服 されるべ き本質的要請である。
なぜな らば,投資への適切な金融 によってコス トが節約 されるだけでな く, それによってほ とん ど初めて可能 にされることが しば しばあるか らである」
( S.1 5 0. ) 。総括すれば,傾 向 として環境志向的企業 に対 して金融的な機会が 開かれつつある。顧客の価値構造の変化は環競重視の投資家の増大を招 き, 環境フ ァン ドは大 きな成果を実現 しつつある 。 ( V
gl . ,S.1 5 0 ‑1 5 3. )
⑤ 出資者 と環境管理
通常,重要な ことは投下資本への適切な利払 いである。環境管理は,収益 を確保 ・改善 し,戦略的にコス ト意識的に行動 しようとし,特殊な金融形態 も開かれている。 これ らの長所は完全 に出資者の要求に適合 し,企業の能率 を確保 し高揚 させる。今 日では環境管理をコス ト側 と金融側か ら能率化 しよ う とす る要請 が現 れ,両 側 か ら 「攻 め」 の環境管理 が要請 されてい る。
( V g
l. ,S.1 5 4. )
( 5)協働者 と環境 ( ∋ 協働者の二面性
協働者 は環境管理で鍵の役割を演 じ,彼等 と外部要請間には,均衡モデル
か ら証明される最 も簡単なシナジーが成立 し利用 される。 これは,彼等は協 働者であ ると同時に社会 と消費者の一部である ( 5 ) , とい う二つの役割 を持つ ことで説 明される。 この二重の役割が一貫 して認識 され注意 されなければ, 協働者 と企業の価値 が一致せず,管理が混乱 し組織 が不効率 になる 。 ( Vg l . , S.1 5 5. )
② 消費者 としての協働老
消費者行動 と協働者への社会的要請の議論 は重要であ るが,人間は喜んで 不協和音の中で生活 しないか ら,彼等は外部 とは異なった ように考 え行動す る。 ここで重要な役割 を演ずるのが企業哲学であ り, これによって彼等は消 費者 としての環境意識 を発展 させ る。協働者は環境管理の意味を認識 し,環 境特殊的期待 と自己の処理用意を高める。多 くの協働者は環境管理への構想 あるいは方策を実現 しようとす るし, 自分の活動 に意味 と意義を与 えようと 試みる。人間は他の経営資源 と違 い能力ある協働者は交換で きないので,実 践的研究が証明 しているように 「 人間資本 」 ( Huma nka pi t a l ) として彼等の 要求に応 える意義は明 らかである 。 ( Ⅴg l . ,S.1 5 5 ‑1 5 8. )
③ 有効性 と能率
以上の ミューラーの所論は,攻 めの環境管理 は常 に企業の有効性を高め,
企業の存続能力 と生活能力の確保 を助けることを示 しているO彼は,能率性
と有効性 に関 して結論的に次の ように述べ る。「能率性志 向的考察か ら環境
テーマに関 して本質的に二つの結果が生ずる :最初は能率基準が大事で,い
かなる場合で も注意 されなければな らない。なぜな らば,それ らは有効性の
基準 と並んで同じように重要であるか らであ る。すなわち,企業 には商品生
産の過程 に とって資格がある人間が存在するように,投入 される資本の適切
な利子化 といかなる時で も流動性 を確保することが同じ く保証 されなければ
な らない。別の箇所で環境 とい う物事 において出資者 と協働者 によって明瞭
にされ るあ らゆる要請 に応 じることが,第二 に大切 である 」 ( S.1 5 9 ) 0 ( Vg l . ,
S.1 5 8 ‑1 5 9. )
( 6 )環境管理の特徴
①. 環境管理の横断職分
環境管理は一つの完結 した管理システムではな く,他のあ らゆる完結的管 理システムの全てに貫徹する環境保護思考 が具体化 された ものであ る。それ は,あたか も人間の肉体の一部 を切断 した時に,その切断面 に必ず見出しう る血管 と流出する血液のご ときものである。血管は, ‑人体のあ らゆ る組織 に 血液 を循環 させることを通 して各組織 を活性化 させ,人間の肉体を維持 ・強 化 しうる重要な機能を持つ。環境管理は,まさにこの ような生命体 における 血管 と血液のご とき役割 りに相当する機能を持つが故 に, ミューラーやシ ュ チ‑ガ‑ ( U. St ege r ) は環境管理の役割 を指 して 「横断職分 」 ( 6 ) ( Que r ‑ s c hni t t s a uf ga be ) と呼ぶのである。
市民化管理
生産管理
図
3 :環境管理の横断職分
労務管理