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脳波の振幅・位相の時空動特性と揺らぎに関する研 究

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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

脳波の振幅・位相の時空動特性と揺らぎに関する研 究

西藤, 聖二

九州大学工学研究科電子工学専攻

https://doi.org/10.11501/3065513

出版情報:Kyushu University, 1992, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

2. 5

まとめ

本章では覚醒閉限時のα波と睡眠脳波リズムであるθ波、 δ波お よび紡錘波について、 振幅 ・位相の時空動特性を調べ、 以下のよう

な結果を得た。

( 1

)α波のスペクトルは1 (単峰〉型とn (多峰〉型の2つの

タイプに分けられ、 この違いは振幅 ・位相の時空変動の大 きさに反映されることを確認した。

( 2 )タイプに関わらず、 α波の振幅と位相は時間的にも空間的 にも揺らぎ、 α波は決して安定した波ではなく動的に 振舞 う波であることを示した。

( 3

)α波の位相は時間的には振幅極小に対応してジャンプし、

空間的には200---300ms程度の時間で振幅優勢領域の移動 ・ 交替に併せて位相ギャ ップが前頭部から後頭部へ移 動する。

これはα波の活動源が少なくとも頭部前後の2箇所に等価 的に存在することを示唆してい る。

( 4

)睡眠脳波リズムの時空特性はα波と全く 対照的であり、 振

幅優勢部位の局在化と揺らぎの少ない同相ノfターンを示し、

局所的なリズムと推定された。

(3)

以上、 正常被験者におけるα波と睡眠脳波リズムの時空動特性の 一端が明らかにされ、 これをベースとした臨床診断応用および脳波 のモデル化に基礎的な知見を与えた。

- 68

(4)

第3章 周期閃光刺激に対する

α波の非線形応答

3.

1 序 論

前章までに述べたように、 α波は多自由度な振動子系によって作 り出され、 しかも時間的には極めて非定常な振舞いを示すことが分 かった。 ここで、 α振動子系がどのようなタイプの振動子によって 構成され、 相互結合の様子がどんなものであるのかを 知るのは容易 ではないが、 神経細胞では、 電気刺激を 周期的にパルス、 あるいは 正弦波的に強度変調しながら与え、 電位応答を調べることによって 引き込み、 調波振動などの神経系に関する有益な知見が得られてい る108)109)。 このような挙動は、 理論的な立場からは非線形振動系を 周期外力で駆動したときの強制振動系のダイナミクスに対応する52)。

脳波、 特にα波においても同 様な研究が行われ、 引き込み現象を始 めとした様々な性質が報告されていることは第1章で述べた。 この 事実は、 α波が非線形振動であることを示唆するものであるが、 こ のとき の解析はスペクトルや相関解析によるものが大多数を占め、

引き込み中には果たして安静時にみられたような振幅 ・ 位相動 特性 がどう変化するのかは分かっていない。 つまり、 引き込みによる特 性の変化は周波数 の安定化やスペクトルパワーの増大という形で知 られているが、 安静時α波の揺らぎを象徴する位相ジャンプや振幅 変動が 同様に観測されるのか、 あるいは消失するかということもα

(5)

振動子系の非線形性と動特性を知る上で極めて重要な問題である。

実際、 興奮性細胞や単一神経で得られた現象もその動的な応答 を解 析したものが多く、 カオス的応答など がその代表例108)109)である。

また、 光刺激に対してα波 が 引き込みに至る過程、 いわゆる過渡応 答の解明は強制振動子系との 対応から重要な知見 をもたらすと考え られるが、 これに関する報告も非常に少ない11 0)のが現状である。

また、 臨床的には閃光刺激は光過敏性てんかんの誘発等に応用され ており11 1)、 健常人のα波における引き込みのダイナミクスの研究は、

将来的な臨床応用にとっても基礎的な知見となることが期待される。

以上のような状況を踏まえ、 本章では3. 2で述 べる測定方法に 基づき、 閃光刺激に対する健常者の覚醒時α波の引き込み現象に関 して、 過渡応答から引き込み 中、 さらには刺激停止後の安静状態に 至るまでの時空勤特性を検討した。 前章で述べたCD法を中心とし、

周波数スペクトルや3. 3で示すローレンツプロ ット112)による解析 も併せて行い、 振幅と位相の時間空間的な揺らぎを調べた。

まず、 3. 4. 1では、 光刺激を印加したとき、 停止した ときのα 波の振幅 ・ 位相の過渡的な応答を明らかにする113)。 続く3. 4. 2 では 引き込み 時と 安静時の原波形、 スペクトルや 振幅 ・ 位相の比較 により、 引き込み現象を概観する114)115)。 特に引き込み 時の位相揺 らさ、に関しては3. 4. 3において、 時空動特性とその周波数依存 性を述べる11 6)。

3. 5では、 安静時も含め、 本研究で得られた健常者の時空動特 性がどのような力学系の振舞いに対応するか議論を行う117)O

- 70

(6)

3.

2 測 定

22,._,26歳の健康な男女学生のべ100名以上を対象として安静時 および間欠閃光刺激時の脳波を採取した。 脳波の測定や記録、 解析 を行った装置は前章と同様である。 空間マッピングについて動特性 を数秒にわたって 調べるた めにクロノトポグラフを用いた。 従って、

導出部位は右頭部縦断線上のF p2から02までの9部位とした。

閃光 刺激照射には脳波計付属のストロボ装置を使用し、 閉眼仰臥 状態、にある被験者に試験的に間欠閃光照射を行った。 閃光照射 の周 波数は10Hzとし、 この試験刺激に対してのスペクトル変化を調べ、

良好な引き込みを示した被験 者5名を抽出して本測定を行った。 本 測定に おける刺 激 周波数は7 Hz、 8 Hz、 9 Hz、 1 OH z、 11Hz、

12Hzおよび13Hzの7通りに設定し、 各周波数で35秒x 2固と9秒×

15回の刺激照射を試みた。 各 試行は最低でも数分 間の間隔をとって 行われ 、 被験者の状態、に配慮、した。 特に、 前述のように閃光刺激に はてんかんを賦活する危険性があるため 、 各試行 の前後で被験 者の 気分や精神状態を確認し、 疲れや不快感を訴えた場合には即座に 測 定を中止した。

(7)

3. 3 解 析

解析 は主に前述のCD法とFFT法によって行ったが、 本章では これらに加えてローレンツプロット解析11 2)を用いた。 この方法 は、

一見不規則な現象 がカオスな どの決定論的法則に従って生み出され ている場合、 その生成規則を発見するのに有効であり心電図118)等の 様々な時系列に応用されている。 ここで、 プロットの要素にはピー ク値やその時間間隔など様々な量が対象となるため、 より明瞭な形 で系の法則性を抽出するためには、 まず着目する量の選択が重要と なる119)。 具体的に川上ら120)、 生駒ら121) が行った指尖脈波(指先 より得た心拍リズム、 実際に観測されるの は拍出された血液の容積 変動〉の時系列に関する研究を例示する (図3 - 1 )。 これらの場 合 で は 、 脈 波 のピ ー ク 間 隔を対象と し て 得 ら れた時系列 XO,X1,...Xn,Xn+1,...について、 Xjを横軸に、Xjバを縦軸にした

(Xj,Xjサ1)を2次元平面上の座標点としてi=O,l,...n,...の順に埋め込 んでロ ーレンツプロットを求めている。 ピーク間隔の周期が1、 即 ち等間隔であるときプロットはXj+1=Xj上の一点となり、 規則的なリ ズムを刻む健常者 の場合 がこれにほぼ対応する。 一方 、 不整脈出現 時には 図3 - 2の ようにプロットが3点に分裂して健常者と大きく

異なる パターンを 示す。 現在、 脈波では報告されて いないが、 もし ピーク間隔がカオス的に不規則変動するときは図3 - 3に示すよう に、XjけがXjの 関数として表される。 即ち、 ローレンツプロット解析 は、 時系列を生み出す力学系の探索だけでなく、 時系列の長時間変 動を分類するのにも極めて 有効であり、 しかもパターン認識という

72

(8)

x X .

l ←叫 〈 n+l �1

tcコ.0」MW

3

/

nu o

1 2

time (sec)

2

\,,ノLU

1←

+ c

×

(00ω)

(sec) 2

x n

健常人脈波のローレンツプロ ットの推定方法 a)脈波とピーク間隔Xnの決定.

b)ピーク間隔のローレンツプロ ット.

図3

-

1

(9)

2

.:,v

?

/

/

/

(oωω) 「 + c ×

2

(sec)

x

n

。 。

不整脈発作時のローレンツプロ ット

x

n

。 。

図3 - 2

← + C ×

カオスの場合のローレンツプロ ット ( X n+ 1 =4 X

n

(1-X n) ) .

74 図3 -3

(10)

直感的な方法で行うことができる。 従って、 臨床応用という観点か らも有用と考えられている1 1 8)・1 21 )。

本研究では、 引き込み時におけるα波の不規則な 位相変動にこの 解析を適用した。 ここで、 安静時では位相が+ 1800→・1800に推移す る瞬間、 あるいはその逆の場合に時系列が切断され てしまうという 問題があり、 また、 振幅の場合はその値自体に個人差が大きい ため プロットの対象にする量の選択が難しく、 ローレンツプロット解析 には適さない部分も多いと考えられる。 一方、 引き込み時の位相変 動に関し ては連続性が高いため、 安静時にみられる時系列の切断が 殆どなく、 またピーク推定が容易に行えるこ とで解析が可能となる。

後述するように、 引き込み時 でも位相は 不規則に ジャンプするが、

このジャンプの間隔を対象としてローレンツプロットを求め、 α振 動子系の力学的性質や刺激周波数依存性などを検討した。

(11)

3.

4 結 果

3.

4. 1

過渡応答

図3 - 4 ,こ10Hz閃光刺激開始前後のα波成分の重ね書きを示 す。

刺激の開始 は図中の"s ta r t"で示されている〈以下同じ〉。 刺激開始 前に お いて各部位のα成分は試行毎に任意に推移するため、 位相が バラバ ラであり、 重ね書きすると共通した成分を見いだすこと は殆 ど不可能である。 ところが、 刺激が開始されるとα成分は一旦抑制 されな がら位相が揃っていき、 その後増大して一本のトレースのよ

うに重なっていく。 即ち、 α波は刺激前にどのような 状態にあって も、 閃光刺激が印加されると、 必ずといっていいほど同じ道筋を辿 ってから引き込み状態に移行していくものと考えられる。

図3 - 5に は10Hz刺激前後における02とF p2の振幅ならびに位相 と頭部前後の位相差(02基準〉の重ね書きが示されて いる。 02と F p2の位相値については刺激との位相差を表しており、 従ってO。は 刺激とα波の位相が 同期している状態を、 ::t1800は双方が逆相関係

にあることをそれぞれ示している。 刺激開始直後より振幅は抑制さ

れ、 約150---400ms 後に一旦極小値をとるが、 この時多くの試行で位

相ジャ ンプが起こっている。 その後、 振幅は 増大し 、 位相が安定化 すると共に定常値に漸近し、開始後約1 s後に は後 頭部の位相が刺激 と同期 して引き込 み状態に入ると考えら れる。 各部位の位相ジャン プに対応して頭部前後の位相関係も大 きく変動する が、 その後位相 周期 に伴って安定した逆相分布が形成され、 各部位の時間変動と前 後の位相関係の関連を示唆している。

- 76

(12)

O2

P4

C4

F4

今んnr EA 4・t v且a117 4・t Qリ

-2 。 2

time (sec)

図3

-

4 10Hz閃光刺激開始前後のα成分の重ね書き C"start"で刺激開始, 15試行) .

(13)

a) O2

FP2 b)

O2

FP2 c)

憾議主続当二 》拶アタ寸~

----ー、\

1800

A

\二三ノ「 J

-180'

可ヂヤ号室曹司

!大吋執事出J芸�� �奇妙き巳�ニ�竜三旨?淀む汚時烹努自 180。

Fpi02 lJ九月ピ沿込沿d佐平ン� l

�岳地 吋�百四了ノ)[�ノ与 l←--,<._� 守山d九�昌広で町=<9 -1800

-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

time(sec)

図3 - 5 10Hz刺激開始前後におけるo 2とF P2の a)振幅とb)位相 および c)右頭部前後の位相差の重ね書きく15試行)

- 78

(14)

別の被験者に対する結果を図3

-

6に示す("last"で最終刺激〉。

部位による位相変動の相違を観察するため、図ではF p2"""" 0 2の9部 位の位相変動が縦方向に並べられている。 02では図3 - 5とよく似

た振幅 ・ 位相変動が観測され、 F p2においても位相ジャンプの方向 が逆になっている ことを除けば応答の基本的な道筋は同様である。

他の部位に関しては、 例えばC 4付近では刺激開始後 約300m sで位相 ジャンプした 後、 位相曲線が各試行毎にばらけてま とまりがな くな る傾向がみられ、 F p2や02ほどに全ての試行で刺激 に対する明瞭な 位相同期は観測さ れない。 従って、 この領域では引き込みの程度が 弱く、 試行によっては刺激 中 に引き込み状態から逸脱している可能 性もあ る。 しかしなが ら、 これらの部位に関しでも、 図3 - 5の場 合と異なる 応答が認められたわけではなく、 他の被験者 や異なる周 波数でも同様であった。 即ち、 α波の過渡応答におい て、 刺激開始 後200'... 400msでの位相ジャンプとそれに続く刺激への位相周期は個 人や部位、 あるい は引き込みを起こす刺激周波数に依存しない、 共 通した特性であることが示された。

図3 - 7に刺激開始前後の振幅と位相差クロノトポグラフを示す。

位相差基準は02であり、 図中のo . 0 s ( " s t ar t " )で刺激が開始されてい る。 前章で述べ た ように、 刺激前の安静時では頭部 の 前後で逆 相分 布が支配的 であるが、 刺激開始直後より 前後の位相差が急速に減少 して約200... 250ms 後に殆ど平坦化され、 その後は徐々に増加して刺 激開始後約650... 750msで典型的な逆相ノマターンが形成されている。

各部位における位 相の時間変 動でいえば、 前者は位 相ジャンプに、

後者は位相同期に 対応する。 多くの場合で刺激 直後 より空間分布が

(15)

02

C4

Fp2

R\(i\ \\除札1

-2 -1 。 1 2

t ime

(sec)

3 4 5

図3 - 6 10Hz刺激開始前後における02'""Fp2の a)振幅とb)位相 および c)右頭部前後の位相差の重ね書き( 15試行, 被験

者は図3 - 5の場合と異なる) .

80

(16)

図3 - 7 11 Hz刺激開始前後の a)振幅とb)0 2基準の位相差クロノ トポグラフ. トレース間隔は25ms. O.Osで刺激開始.

(17)

乱れ て いたにも関わらず、 前者の時間帯になると平坦な分布を示す ことか ら、 この位相差の小さ い状態は各部位の位相ジャンプおよび 過渡応答の道筋と何らかの関係があるものと思わ れる。

一方、 刺激を停止したときの時間的振舞いを図3 - 8に図3 - 5

と同じ形式で表す。 引き込み中にまとまっていた各試行の位相は、

刺激が終わ ると扇状に拡がっていき、 300---500msで安静状態に戻る の がみられる。 前後の位相差もほぼ 同様にして明瞭で安定した逆相 から複雑な変動を示す ようになる。 振幅は刺激停止直後 より減少し、

やはり位相とほぼ時を同じくして安静時の状態に戻っている。振幅 ・ 位相共に刺激開始時と異なるの は特異的な過程が存在しない点であ り、 応 答は速やか に行わ れている。 この場合も図3 - 6の最終 刺激 ("last")の前後にも示されているように、 被験者や特定部位聞にお ける数百msレベルでの応答遅れも なく、 刺激周波数に対する依存性 も観察されなか っ た。 以上の過渡応答をまとめた模式図を 図3 - 9 に示す。

3. 4. 2 引き込み

図3 - 1 0にタイプE被験者の安静時および10Hz閃光刺激時の脳 波原波形を示す。 第2章で述べたように、 安静時の α 波にはwaxing and waningが顕著であるが、 閃光刺激を印加すると頭部全体でα活 動 が活発になり、 特に02ではα波が連続的に出現する ようになる。

図3 - 1 1にはタイプE被験者の安静時と10Hzおよび11Hz閃光刺 激時の脳波スペク トルが示されており、 スペクトル成分が 刺激の周 波数に集中するいわゆる「引き込み」が7 ---13Hzの広い刺激周波数

一82

(18)

Iast

a)

μV

民ぶレ

ぞL�

ふム

J

50

O2 f えム対V宍Pヘ

FP2

b)

1800

O2 �乙一|

-1800

FP2

c)

膜訟で�rヤt「内庁�て加柑�荘d方切れ人日仏外向1800

FP2-02 1\ \ I1 �述調、活戦や差込l刈

戸方ロヨ品千晶も。コ汁'B?àf'::'\Y, Arふ1ふ半平塙弓\v\. \ \\.� I今幻A月M勺-1800

-1.0 - 0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

time (sec)

図3 - 8 10Hz刺激停止前後におけるo 2とF P2の a)振幅とb)位相 および c)右頭部前後の位相差の重ね書き( 15試行) .

(19)

a)振幅

02

b)位相+1800

02 00 -1800

Fp2

c)位相差 +1800

FP2 - 02 00 -1800

-0.5

start last

1.0 -0.5

time(s) time (s)

図3 - 9 刺激応答の模式図. a) 0 2の振幅, b) 0 2とF p 2の位相 および c)頭部前後の位相差.

- 84

1.0

(20)

02

P4

c4

F4

ma UA

02

P4

c4

F4

。 2 4 6 8

time

(s)

図3

-

1 0 脳波の原波形. a)安静時およびb)lOHz閃光刺激時.

V μ ハu nU Tむi

10

(21)

a) 02

P4 C4

F4 �_・

Fp2

b)

02 P4 C4 F4 Fp28

c)

O2

P4 C4 F4

Fp2 2 6

r' 'J,Iヘ

1100μ'VYHz

二千

� 4

「一「一一一寸

10 14 18

22

( Hz)

1000

図3 - 1 1 脳波スペクトル a)安静時, b)lOHz閃光刺激時

および c)llHz閃光刺激時.

- 86

(22)

帯域にわた ってみられる。 この現象はタイプEの被験者に共通して おり、 引き込み時のスペクトル分布はタイプIによく似てくる。 し かし、 たとえタイプEであっても顕著な引き込みを示さない者 も多 く、 さらにタイプIでは殆どの場合に刺激に対して鈍感であるか、

あるいはα波の抑制をみる。 これまでの測定経験から いえば、 光刺 激に対して良好な引き込みを示したのは被験者全体の約15'""'20%で あり、 少数派に属する。

図3

-

1 2に安静時と10Hz刺激による引き込み時の振幅と位相お

よび位相の微分(瞬時周波数〉を示す。 図3 - 1 1から予想される ように、 引き込みによりα波の振幅は増大していることが分かる。

引き込み時の位相と瞬時周波数の変動はかなり緩やかになり、 安静 時ほどの激しい位相ジャンプ はみられず、 α波が 刺激にある程度同 期していることを示唆しており、 原田らの報告53)と一致する。 とこ ろが、 も し周期状態が持続するならば位相はo 0を保って時間軸に平 行な直線になるは ずであるが 、 実際にはのこぎり波のような変動が みられ、 小さいながらもα波は揺らいでいることが分かる。

さて、 この時の揺らぎは安静時とは異質の、 全く新しいタイプに 属するのか、 あるいは本質的に一致するのであろうか?図3 - 1 3 には10Hz刺激による引き込み時の振幅と02基準の位相差クロノトポ グラフが20ms毎に描画されている。 前章の安静時の場合と比較して、

引き込み時では振幅 ・ 位相差の分布変動が共に安定しており、 特に、

振幅では後頭優勢、 位相差では典型的な逆相分布を示す時間が大部 分を占めている。 しかしながら、 図中には安静時α波の揺らぎを代

表する位相ギャップの後頭部への移動、 振幅の山の競合等もみられ、

(23)

い仇 μJトμv

+180。

-180。

nu

+3

。 -3

(羽山)同寸

\、EF/.,EA .,EA 、、,F/ .,EA .,EA .,・A

引� 14い

+180。

-180。

ハU

+3

。 -3

(NE)中d

\‘EaFノ・ '・・a .,EA \B,ノ.,EA -盲目A .,EA

10 4 6 8

time

(s)

2

a)安静時およびb)lOHz閃光刺激時の ii)位相とiii)瞬時周波数の変動

(瞬時周波数は基準波の周波数に対する差で 表されており, この場合安静時では8.84Hz,

刺激時はlO.OOHzが基準となる) .

i)振幅,

図3

-

1 2

一88

(24)

a)

amp.

O2 C4 E且 qζ nr o っι C 4 EA ワιnv

図3 - 1 3 10Hz刺激時の a)振幅およびb)0 2基準の位相差クロノ トポグラフ. トレース間隔は20ms毎.

(25)

引き込み時でも揺 らぎの質そ のものは変化していないこ とが示され ている 。 従って 、 引き込み によってα波は時間的に も空間的にも安 定する が 、 特徴的な揺らぎは残存しており、 α波 の動特性に 依然と

して影響を与え続けているものと考え られる。

3. 4. 3 位相揺らぎと周波数依存性

再び、 図3 - 6に目を 転じると、 引き込みがほぼ安定した刺激開 始後1 sを過ぎた頃から各部位の位相にはある一定値をベースとして 三角波状の変化が 目立って来る。 これは図3 - 1 2に おける位相変 動にも観測される現象であり、 安静時の 揺らぎがかなり単純化され た形で表されていると解釈さ れる。 以下、 ベースラインの 値、 即ち α波と刺激との平均的な位相差を応答位 相、 特徴的な変動を位相揺 らぎと呼ぶ。 刺激 と常にどれだけ の位相差が ある のかを表すの が応 答位相であり、 そこから進み、 遅れ のどちら の方向 に 揺らぎが生じ る のかを示すのが位相揺らぎといえる。

図3 -

1

4は3人の被験者における02での応答位相 の刺激周波数 依存性 を表す。 周 波数が高くなると応答位相が徐々に 遅れ方向に向 かい、 10Hzを境として正から負へと転じる傾向が 共通してみられる。

ここ で、 刺激位相は発火時をO。 としている。 即ち 、 引き込まれた α波の位 相は、刺激周波 数が低いときは先行し、高いと遅れて追随す る。 これより、 α波と 刺激は10Hz付近の刺激で最も平均位相差が小 さく、 同期しやすい状態に あると推定される。

一方 、 位相揺らぎについても共通した周波 数 依存性が観測さ れた。

図3 -

1

5に7、10、12Hz刺激時に対する位相揺らぎの変化について

- 90

(26)

phase difference from stim.

subject o 1 o M

x Ku

180

ハリ @

'

9

11 12 stim. freq. 13

×

(Hz)

× ×

7 8

-180

(0 :被験者1 , 口:被験者Mおよびx 被験者Ku) 図3 - 1 4 応答位相の刺激周波数依存性.

(27)

a) EE且til-v H14V

b)

TJ引li C) ハリハリ

0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

t i m e (sec)

図3-15 a)7Hz. b)10Hz. c)12Hz刺激時におけるo 2の位相曲線

92

(28)

典型例を示す。 これから、 α波の位相は刺激からのずれ( 1 )と位相ジ ャンプによる刺激への同期( II )を繰り返 し、 しかもその方 向 性 は 10Hzを境として刺激に対する(進み一戻り〉と(遅れ-戻り)の間 で反転していること が分かる。 実際、 図のりとりは10Hzをは さんで 鏡像関係に近い。 さらに揺らぎは10Hzから遠ざかるにつれて増大し、

間欠性も明瞭になってくる。 これらの位相曲線を微分した周波数変 動は図 3 - 1 6に例示するように、 位相 ずれに対応する比較的安定 した周波数成分が間欠的にジャンプする形で表されている。 一方、

10Hz刺激時(b))にも揺らぎが存在するが、 小さく、 特徴的な方向 性は認められない 。 これらの特性は 図3 - 1 7に示した埋め込み間 隔25msの2次元位 相空間プロットに も表されている。 7Hz と12Hz 刺激の場合、 位相ジャンプのために位相 p(t )の位相空間での軌跡は

三角形状になり、 また、 その方向性の違し、から2つの軌跡はp(t+T)

= p (t)に対称的である。 一方、 10Hzのときはp(t+T)=p(t)にほぼ 対称で細長い軌跡を描いており、 位相揺らぎの方向に特徴がないこ とを示している。 さらに、 大き な位相ジャンプがないために、 第E、

第W象限への軌道の広がりも小さくなっている。 一般に、 タイプE の安静時脳波スペクトルは 10Hz付近に多くの成分が林立するため、

これを固有周波数モードと考えると、 7Hz は固有周波数モードより 2 ,_, 3 Hz低く、 12Hzは同程度高い。 従って、 引き込み中のα波は完 全には 位相ロックされず、 常に固有周波数モードの自発状態、に復帰 すべく刺激への抵抗を試みては引き戻されるといった振舞いを繰り 返していると考えられる。

図3 - 1 8には位相揺らぎ の周期性に関して、 FFTによる周波

(29)

。 -2

ls

H う」 LU TJ i a F 1 M 06 \lノ.,EA .,EA

ハU ウム

ls

図3

-

16 a)7Hz, b)12Hz刺激時におけるO2のi)位相曲線と ii)瞬時周波数変動.

一94

(30)

a)

p( t)

-900

b)

c)

p(t+r)

+90�

図3 - 1 7 2次元位相空間における位相p(t)の軌跡(部位はO2)

a)7HZ, b)lOHzおよびc)12Hz刺激時.

(31)

f

c

\、,ノ hu

f c

4.0

ハU HHq引・ - 1 一 11A 1 目 I R -- R 、... ,, ,s--z、

. ,

、tji--‘、

3.0

/ー""'"

ザ〉

高2.0

0

、.Frs・‘、 1i

」0 0 1.0 -1.5

ハU 噌EA 、.Epi--、 • 、-Ea'i- ハリ 噌zi

(∞)∞O{

-2.0

-1.5 -1.0

log(freq)

ハリ

log(freq)

-1.0

a)振幅とb)位相のスペクトル (10.24s, 2回加算) . (νは傾きの絶対値を, f cはCD法におけるローパス

フィルタの遮断周波数をそれぞれ表す)

図3

-

1 8

- 96

(32)

数スペ クトルを推定した結果が示されている。 振幅 ・ 位相のスペク トルは共に卓越した周期成分を持たず、 1 / f J/タイプの周波数特性

を示し ている。 ただし、 長時間にわ たる刺激照射は 被験者の健康状 態への配慮もあって困難であ り、 スペクトル推定に用いたデータ点 数は高々数十秒で ある。 そのため、 周波数分解能を含め、 推定に関 する信頼性は十分 でないことに注意する必要があるが、 本研究にお いて、 100試行にわたるスペクトル推定からは顕著な周期性はみられ ず、 引き込まれたα波の揺らぎは安静時と同様に非周期 ・ 非定常的 な性質を示すことが分かった。

以上の結果は、 位相揺らぎの周期 性が位相周期の間隔に大きく依 存することを考慮 すると、 位相周期の間隔も一定し ていないことを 示唆する。 よって、 位相同期、 即ち位相ジャンプの不規則性を詳細 に検討することにより、 位相 揺らぎのダイナミクスを同定できる可 能性がある。 図3 - 1 9には11Hz刺激における位相ジャンプの時間 間隔(T i )の推定とローレンツプロット解析を行った結果が示され ている。 要素点(Ti, Ti+l)のばらつきは大きく、 カオスを明示す る一価関数は得られていないが、 間欠性を表すL字型の特徴的な分 布がみられる。 即ち、 位相ジャンプの生成は非周期的ながらも、 あ る決定論的な規則に従う可能性が考えられる。 この被験者について、

図3 - 2 0にローレンツプロットの刺激周波数特性を示す。 11Hzと 同様、 安静時の固有周波数帯域(9---10Hz)から数Hz外側の周波数 である7 Hzの場合には図3 - 1 9に似た間欠的なプロットが得られ ている。 一方、 固有周波数帯域内と考えられる9 Hzの場合は、 プロ

ットが広範囲に散らばって間欠性は不明瞭となる。 以上のように、

(33)

0 0 8 4E'

ト-Ti ニトTi+1 �

1

s

、E,Jhu

1.0

+

同0.5

s

‘ ..

/

.

. . .・

.・・

. .

(ω)

.

0.0 0.5

Ti (5)

1.0

図3

-

1 9 11 Hz刺激時における a)位相ジャンプ間隔Tiの推定と

b) T iのローレンツプロ ット(30秒)

98

(34)

1.0

,_、、

ω

、._."

5

0 F+一H

.

0.0

.

.

H

,、ωー F

-"、

0.5 ト

.

- S . . . /ど"

. .

. .

0.0

0.5

Ti (s) 1.0

図3 - 2 0 a) 7 Hzとb) 9 Hz刺激時のローレンツプロ ット(30秒) .

(35)

9 Hzの場合は10Hzと同様、 位相ジャンプが不明瞭なために推定誤差 が他より大きくなるとい う問題点は ある が、 概ね図3 - 1 5、 図3

- 1 7に示した位相 揺らぎの周波数特性 がローレンツプロットにお いても間欠性の強弱という形で表出したと思われる。

位相 揺らぎと空間分布の変動との関係を調べる ため、 図3 - 2 1、

図3ー22に図3 - 1 3と異なる被験者の10Hzおよび11Hz 刺激時の クロノトポグラフとそれに対応する02の位相曲線をそれぞれ示す。

図3 - 2 1では図3 - 1 3と同様に 、 振幅は後頭部優位、 位相差分 布は 逆相ノ守ターンをそれぞれ基調とし、 位相曲線の変動に対 応 して 緩やかに推移している。 とこ ろが、 10Hz�外の刺激では これと異な り、 特に位相差分 布には図3 - 2 2にみら れるような動的な振る舞 いが観測された。 例えば、 1.2s付近の位 相同期(L )に伴い、 位相 差分布は 02付近のギャ ップのために大きく乱れ(p )、振幅は一様 に低レベルで平坦に 分布している(A )。 ところがその後、 02で位 相ずれが始まるとF p2--- C 4にギャップのある逆相ノミターンが形成さ れ、 振幅 分布では後頭部が優勢になる。 この 時(1. 5 s付近〉の 振幅 ・ 位相差分布は 10Hz刺激下での典型的ノマターンと合致する。 このよう な位相のずれと戻りは0.6、 1.6 、 2.8s付近でも繰り返されており、

その都度、 同様の特徴的な分布変動がみられた。

この ように、 位相の間欠的な時間変動 は空間分布の変動として等 価的に捉え得ることが示唆され、 α波の多様な揺らぎ、 中でも 位相 揺らぎ の本質を探る上で、 時間的かっ空間的挙動を併せて研究する 重要性が示された。

100 -

(36)

、EE, hu

02 C4 Fp2 02 C4 Fp2

c)

σコ

れj

�、

ω

、ー_.,

ωに』

4・4

T""-

00∞←

o

図3

-

2 1 1 OHz刺激時の a)振幅とb)0 2基準の位相差 クロノトポグラフおよび c) 0 2の位相曲線

(37)

a) b) c)

σコ

れj

�圃、

ω

、-ωに』

...

r-

02 C4 Fp2 02 C4 Fp2

00∞?

図3

-

2 2 11 Hz刺激時の a)振幅とb)0 2基準の位相差 クロノトポグラフおよび c) 0 2の位相曲線

102

(38)

3.

5 議 論

安静時の振幅 ・ 位相挙動は複合 振動子 系のみ ならず、 ニューラル ネットワークやセルオートマトンなど広範なシステムでシミュレー

トが可能であり、 候補の多様さに較べて得られて いる情報は少な く、

それだけでは具体的なシステムを特定するのは容易ではな い。 確か に、 逆 相や振幅の前後優勢等の巨視的秩序とも いえる ある程度まと まった構造を示す以上、 複数の振動子が相互結合して引き込み合う 協同作用を生み出していることは容易に推察される が 、 それにも関 わらずリズムが複雑に揺らぐのは、 振動子全体が完全に周期する程 強力に結合しておらず、 むしろ振動子聞の結合力が弱いため個々の 振動子 がかなり勝手に振舞っていることを示唆している。 この よう な観点に立って、 本章では、 α振動子系に振動ペースメーカとして 様々な周波数の強制外力〈閃光刺激〉を加えて各振動子を拘束する

ことにより、 集約 ・ 単純化された系の非線形動特性の抽出を試みた。

その 結果、 閃光 刺激に対して良好な引き込みを起こす被験者は既 述の通りタイプEの内でも限られており、 この事実 からもα振動子 系の多様性が示唆 されている。 つまり、 振動子相互の結合力が強 い と外力によって駆動されにく いし、 逆に弱いと 引き込まれ易 い。 さ らに、 相互結合の弱い場合は集団の協同作用も弱く、 各振動子固有 の挙動が反映される形で系全体の揺らぎが大きくなると考えれば、

タイプIよりも複雑 な挙動を示す事実を説明することが可能である。

加えて、 タイプEの脳波スペクトルが多数の成分によって構成され ていることもこのことを支持している ように思われる。 従って、 タ

(39)

イプI のα波は比較的結合 の強い系に由来し、 一方、 タイプE は結 合の弱いルーズな 系によ るものと推定される。 引き込み状態での振 幅 ・位相ノ々ターンがタイプIのそれと似ていることからしても53)、両 者のシステムに本質的な相違を見い出すのは難しい。

また、 タイプEの過渡応答 は刺激に対する柔軟な性質を示してお

り、 既に述べたように刺激開始から引き込み状態、に至る 時間 はわず か1 s以下であった。 この間にα波は大きく分けて2つの過程を経由 するこ と が分かっ た。 最初の過程において、 各部位でみられる 振幅 極小と 位相ジャンプはその時点の前後におけるα波の時間的コ ヒー レンスの切断を、 振幅 ・ 位相分布の平坦化は安静時の空間的特性で ある頭部前後の振幅優勢と逆相関係の解 消をそれぞれ意味すること から、 これによって時間的にも空間的にも刺激以前の記憶を消去し、

状態の初期化を行っていると考えられる。 一方、 後者の場合、 振幅 増大と位相の緩や かな変化 はコヒーレンスの増大を、 後頭部振幅の 増大と 逆相の形成は新しい空間関係の構築を示しており、 刺激への 周期過程といえる 。 このこと はα波が引き込み状態へは連続的に遷 移でき ないことを示唆しており、 その非 線形性に関連して 非常に興 味深い。 振幅の時間変動との対応でいえば、 このよう な現象はvan

d er P 01やDu ffing振動子などの非線形系でもみられており、 示唆に富 んでいる。 また、 刺激停止応 答に関して は、 外からの刺激に合わせ るよりも、 束縛を解かれた ときの方 が状態移 行は容易であろうから、

特別な過程を必要とせずに速やかに安静状態に復帰しているものと 思われる。

良好な引き込み を起こす被験者の場合、 かなり広い刺激周波数範

104 -

(40)

囲で十分な反応が認められる。 刺激に対する慣れの問題や被験者の 耐性への配慮も あって、 正確な共鳴特性の評価は困難であるが、 ほ ぼα帯域すべて(7 ---13Hz)で引き込みを起こす例も稀ではない。

この時、 刺激に対する平均的な位相差は概ね周波数に比例 して変化 し、 周波数が速く なるほど追随が遅れる傾向がみられた。 このよう な位相特性については既に中沢らの詳細な報告52)があり、 定性的に は我々の結果もこれに一致しているが、 その意義について は未だ明 らかでない。 また 、 刺激周波数の上昇、 下降時に、 引き込みの程度 がヒステリシスを示すとの報告も あって52)122)、 これ らの結果から、

かなり具体的な非線形方程式が検討されている。 しかしながら、 先 に指摘した個人差の問題や刺激に対する過渡な応答、 振幅 ・ 位相の

空間ノぐターンなどを併せて考えた場合、 単純なモデルで説明可能か どうかは疑問であり、 さ らに振動子系の性質を統合的に捉える こと が必要と思われる。

本研究において最も注目するのは、 引き込み状態、における位相の 間欠揺らぎであり、 しかもそれが空間的にも、 逆相関係が崩れ た後 に再び形成されていく振舞いと 結びついている点である。 即ち、 引 き込み状態にあっても、 位相は刺激に完全に同期しているわけでな く、 そこには刺激とα波の競合によって生じた位相ギャ ップのよう な 空間的な歪みを蓄積し伝送するメカニズムがあると考えられる。

このような現象を表現するためには、 系にある種の冗長性、 言い換 えれ

付加的な自由度が必要 であって、 少なくとも2次元位相平面 内での記述は難しいと思われる。 位相揺らぎの大きさが単なる揺ら ぎと呼び得る範障を越えて位相変動に支配的となっている事実から

(41)

も、 再び多自由度複合系の必然性が理解される。

この間欠位相揺 らぎについて、 本研究で得られたローレンツプロ ットは 、 強制外力 の周波数とα波の固有周波数帯がずれている場合 に強い間欠性 を示し、 固有周波数帯域内の刺激に対してははっきり とした性質を示さなかった。 後者の場合 はα波が刺激に強力に引き 込まれているため に揺らぎ自体がかなり抑制されている状態と推察 される。 いわ ば過同期状態と も解釈されるが、 その 様な場合におい ても振幅 ・位相のスペクトルは1/ f J,/タイプを示し、 また、 空間分 布の変動か らみても揺らぎの本質は安静時と較べて不変である 可能 性が考えられる。 一方、 前者 の場合では強制外力とα波が競合する ことによって特徴的な揺らぎが現れるも のと考えられるが、 こ の場 合も質的変化が起こったとする証拠は得られな かっ た。 これまで述 べてきたように、 安静時α波の場合は様々な固有周波数を持つ振動 子が相互作用していることが予想され、 異なる周波 数の振動子間で 競合が起こること は十分に考えられる。 従って、 競合の対象が内在 振動子 か ら強制外力へと移り 、 同時にその強さが増大したと解釈す れば、 間欠的な位相揺らぎは 安静時の揺らぎを端的に集約した もの と捉えることも可能と思われる。 ま た 、 タイプIでも全ての振動子 が同ーの固有周波 数を持っていることは考え難く、 むしろタイプE よりも固有周波数の分散が小さいために相互引き込みがより強力に なって 安静時でも閃光刺激下のタイプEと同様の状況になっている と推定される。 即ち、 ローレンツプロ ットに示された位相ジャンプ の間欠性はそのま ま安静時α波の位相ジャンプの間欠性に対応する と思われる。

106

(42)

間欠カオスとの 対応からは、 図3 - 1 9のようなプロットはカオ スに至る直前の過 程で得られることが多く、 カオスへの一つのルー トとして捉えられているが123)124)、脳波の場合は記録に高レベルの ノイズやアーティ ファクトが混入し、 またフィルタ処理による波形 の平滑化等のために、 明瞭なカオスやそれに至る分岐過程を示すプ ロット が得られる可能性は非常に低いといわざるを得ない。 本研究 では結果的に図3 - 1 9、 図3 - 2 0のいずれから もカオスを明確 に裏付ける一価の写像関数は得られなかったが、 間欠性 の強いパタ ーンを示し、 図3 - 1 8の1 / f).lタイプの周波数 特性 と併せて考え ると、. その可能性は否定できない。 間欠カオスは周期的な運動〈ラ ミナー運動)がランダムに、 かっ間欠的に現れるバーストによ って 切断されて その振幅と位相が次々とジャンプすることで生み出され るとされており125)126)、 図3

-

1 5や図3

-

1 6の振舞いによく似 ている。

一方、 個々の神経細胞や興奮性細胞レベルでは特に周期刺激下で カオス と結論される結果が得られており108)109)、 Hodgkin-Huxley 方程式を始めとした多くの非線形方程式が強制振動下でカオス解を

与える事実127)と対応している。 間欠カオスでいえば、 周期刺激下に おけ

イソアワモチのペースメーカニューロン 1 28)や、イカg ia n t

axonのパルス列109)に関して の報告が詳細な分析結果とともに提出 されている。 果たして、 α波の間欠位相揺らぎは同じようなカオス である のだろうか。 現象の複雑さという点では単一ニューロン系よ りも高 い階層に位置するとみ られるα波であるが、 カオスとい う立 場から みたとき、 どのようなレベルに位置するのか、 脳波を理解す

(43)

る上でも極めて興味深い。 現在のところ、 この問題に対する解答は 得られておらず、 0、 lで表されるインパルス列のカオスと、 α波 のそれとが同じ階層の現象として理解できるかどうかも明らかでな く、 改めてデータの集積と、 位相揺らぎの定量化を進め る必要があ る。

108

(44)

3. 6

まとめ

本章では、 様々な周波数の周期閃光刺激に対するα波の非線形応 答を調べた。 その結果、 以下に示す知見が得られた。

( 1

)刺激開始時、 α波は2つの過程を経て引き込み状態、に入る。

第一の過程は開始後約200--400msの振幅極小と位相ジャン プ、 振幅 ・ 位相差の雨空間分布の平坦化であり、 第二は約 700ms--

1

sの振幅増大と位相周期、 空間分布における後頭 部優勢と逆相構造の形成で特徴づけられた。 各過程 の応答 への寄与に関連して前者は初期化過程、 後者は同期過程と 解釈される。

( 2 )刺激停止後、 振幅は減少、 位相は徐々に変動 が大きくなり、

約500 ms程度で速やかに安静状態、に復帰する。

( 3

)引き込みにより、 α波の挙動は時間的にも空間的にも安定

するが、 刺激への同期は不完全であり、 安静時と同様の揺 らぎが残存する。 特に位相は刺激に対する同期を表す位相 ジャンプと脱同期を示す位相ずれを繰り返して揺らぐ。

( 4

)引き込み時の位相ジャンプ間隔に関するローレンツプ ロッ

トは概ね間欠性を示すL字型のパターンを示し、 刺激周波 数 が10Hzから遠ざかるに連れて間欠性 が強くなる。 この位

(45)

相揺らぎ は卓越した周期成分を持たず、 不規則であること から間欠カオスの可能性が示唆されている。

( 5 ) 振幅 ・ 位相の時間的揺らぎに伴って空間分布も変動し、 α

波の揺らぎは時空的なカオスであることが推測された。

以上、 正常被験者における閃光刺激に対するα波の時間空間的な 非線形応答が明らかとなり、 安静時を含めたα波のカオスの可能性 が示唆された。

110

(46)

第4章 振幅 ・ 位相の時空動特性と

揺らぎの臨床応用

4.

1 序 論

これ まで述べてきたように、 健常者の覚醒時α波、 睡眠時脳波リ ズム、 および引き込まれたα波のそれぞれについて時間空間特性の 一端が明らかにされた。 特に、 位相の時間空間特性に関しては これ までに原田ら43)・45)53 )5 4 )を除いて全くと言っていいほど報告されて いなかった。 従って、 臨床応用を考える上でも、 従来の振幅を用い た解析に位相分析 を加えることによって、 相補的効果が期待され得 る。 即ち、 健常者 と疾患者の振幅 ・ 位相に関する解析結果を比較 ・

検討することによ り、 診断や治療の際に一層有用な情報となり得る 可能性が考えられ 、 し かもその範囲を従来の解析で十分な所見が得 られなかった領域にまで拡張できるのではない かと期待される。

以上のような見地に立って、 本章では 本研究で提案した解析法の 臨床応用への可能性を探ることを目的とする。 特に現代社会で大き な問題となってい る精神疾患、 中でも代表的な精神分裂病の脳波を 対象として分析を試み、 健常者との異同を調べる。 即ち、 精神疾患 あるい は総合的な意味での薬物投与の効果が脳波リズムの位相動特 性等に反映される か否か、 もし反映されるとすればどのような特性 の違いが生じるかを調べるのが本章の目的である。

まず、 4. 2で は従来の精神分裂病の脳波に関する知見および向

(47)

精神薬が脳波に与える影響について述べる。 4. 3で対象とした被 験者と方法について述べ、 4. 4では解析結果の比較と考察を行う。

112

(48)

4. 2

精神分裂病ならびに向精神薬と脳波

精神分裂病患者の脳波が変化する原因は、 脳器質性疾患がない場 合、 主に2つ考えられる。 ひとつは疾患そのものが 脳波活動に与え る影響 であり、 もうひとつは向精神薬の効果である。 本研究では入

院患者を対象としたため、 慢性 的な薬物投与の影響は不可避で あり、

これまで多くの研究がそうであったように、 2つの原因が絡み合っ た時の脳波を調べたことになる。

精神分裂病と脳波の関連はB er g e r以来、 多くの研究者が取り組ん できたが、 精神分裂病に特異な脳波の異常は見られないというのが 現在の共通した見解であり129)-132)、異常は あってもその程度は軽 く130)、 診断や治療に決め手となる有用な材料として用いられるまで には至っていない。 従って、 従来の研究では、 精神分裂病に比較的 多くみられる脳波変化を中心とした 報告がなされてきた133)・135)。

突発的な異常波に 関する検討は本研究の範囲を越えるため、 以下で は覚醒時脳波リズムを中心とした基礎律動に限定して従来の知見を 述べる。 Sh ag a s s 1 36)のまとめによると、振幅変動においては(1)時間 的変動性が乏しくなる、(2)女性において振幅が大、(3)半球聞の異常 な非対称が報告されている129)。 また、α波について言えば、(1)高 周波数のα波、(2)低周波数のα波、(3)α活動に乏しい、(4)α活動が ないのが多い、(5)導出部位相互間の組織化に乏しい等の様々な変化 がみられている。 概して言えば速波成分が目立ち、 α波の出現量や 連続性が乏しく、 徐波化傾向がほぼ共通した特徴132)137)であるが、

精神分裂病に特異的なものではないとされている。 そのほか、 安静

(49)

時脳波の0、 δ帯域におけるコヒーレンス が半球内 、半球間で健常 者よりも高いという報告 がなされているが、半球内では低く、半球 間で高いと するものもある138)。 しかし、安静閉限時で最も優位に出 現するα波のコヒーレンスについては高、 低、有意差なしのあらゆ る結果が提出されて おり、一致をみない138)。 このような状況におい て、 臨床家からは脳波と 臨床の関係の解明と治療法の確立が切望さ れている139)。

一方、 向精神薬 の 脳波に対する影響についても様々な分析に より 検討が重ねられて おり140)-144)、脳波所見からはむしろ薬物 投与に よる脳波の変化の方が大きいと考える向きも多い140)。 実際、 向精神 薬は臨床効果 、薬理学的作用 などの異なる多くの種類 が開発されて おり、 脳波所見に与える影響 も多種多様であ る。 また、 現在では数 種類の薬物を併用して用いること が多く、 その場合には単純に各薬 物効果の加算としては現れない場合もあり142)、統合的な見地からの

研究が望まれている。 従って、本章では代表的な抗精神病薬であり、

脳波への影響も比較的よく調べられているchlorpromagine (C P Z )、

haloperidol (H P D) および本章の被験者が服用中のth i 0 t h ix e n e、

fl oropipamideに関する知見を越野と大塚140)-142)、 菅野143)の総説 に従い予備的に述べる程度に留める。

CPZの慢性経口投与により、(1)振幅増大、αリズムの 徐波化、

(2) もともと αリズムの乏しい脳波にαリズムが出現する等の変化が 指摘されている。 HPD投与による脳波変化は一般に軽度であり137)、

(1)徐波の出現、(2)α波の増加と同期性の増強、(3) α波の連続性の 乱れ等が報告されている。 thiothixeneもHPDの(1)(2)の効果や遅

114 -

(50)

いα波の増加が指摘されている 。 floropipamideはHPDと同じ butyrophenone誘導体であるが、 鎮静、抗精神病作用共にHPDより 弱いとされており、 脳波に与える影響は上記の3つの薬物ほど詳細 に調べられていない。 また、 これら の薬物効果の判定には視察や振 幅、 スペクトル変化による方法やt検定、 主成分分析、 あるいはク ラスター分析 などの統計的手法が よく用いられている144)。

しかしなが ら、 向精神薬による脳波の変化は未知の部分も多く、

これを定性 ・ 定量的に知るこ とによって、 薬物治療効果や新薬 の効 果の判定が可能になると期待されている140)143)。

(51)

4. 3 対象と方法

某病院精神科病棟に 入院中の精神分裂病3名( 53歳、 60歳、 70歳、

全て男〉を対象として覚醒安静閉限時の脳波を採取した。 全員通常 の服薬状態にあるが、 服薬量は中~少量程度である。 対照群として 第2章で示した 健常者および新たに1名の健常者(男2 3歳〉より脳 波を採取した。

脳波の導出 ・ 記録には病院備え付けの日本光電製脳波計EEG6514 を用い、 1試行4分40秒間の測定を3回行って 脳波を採取した。 導 出した脳波は�_a TEACの4 チャネル データレコーダMR・1 0に記録し、

500Hz低域通過フィルタにより高周波ノイズを低減させた後、九州大 学中央計数施設のFACOM-F7740ラボステーションにより200Hz/ch でAD変換した。 尚、 予めこの低域通過フィルタの位相特性を調べ、

60Hz以下では入出力信号の位相遅れが最大100以下で、チャネルによ る 位相 差は無視できる程度 に小さいことを確認している。 データの 処理はラボステー ションにLAN接続された大型計算機センターの FACOM M1800/20に転送した後に行った。 基準電極については第2 章と同様であるが 、 導出部位はデータレコーダのチャネル数が限定 されていたため、F れから 02までの距離をおよそ3等分する2箇所 に設定 し、 F p2と02を含めて計 4つの電極を装着した。 以下、 これ

らの部位を前頭側から FP2、 F4C4" P4C4、 02とする。

分析は第2章と同様であるが、 空間分布に関して はマップやクロ ノトポグラフの作成には導出部位数が不足するため、 最も振幅が大 きい 部位からの部位間 位相差 についてのヒストグラムを作成 して検

116

(52)

討を行った 。 また、 本測定においては睡眠脳波測定は行わず、 覚醒 時ではどの被験者にも顕著なθ波やδ波は見られなかったため、 α 波のみを分析対象とした。

(53)

4. 4 結果および健常者との比較

図4 - 1に4名の被験者(A, B, C, D)に関する脳波スペク

トル を示 す。 A (60歳〉、 B (53歳〉およびC (70歳〉はすべて精 神分裂病疾患者であり、 被験者Dは健常者である。 表示部位は上側 が後頭部、 下側が前頭部である。 Aの各部位のスペクトルは健常者 の分類で言えば典型的なタイプIに該当 する。 しかしながら、 空間 的にみる と、 後頭部のパワーは前頭部よりもか な り小さく、 F p2が 最大パ ワー部位となる 前頭優勢分布を示し ており、 同じタイプIで も 健常者のDとは対照的であ る。 また、 Aのピーク周波数 は9.2HzïW 後であ り、 中高年期以降で一般にはα波の周波数が低下する こと を 考慮に入れるとそれほど低周波数ではな いと思 われる。 Bはスペク

トル成分が広範囲に広がっており、 健常者ならばタ イプEに分類さ れる で あろう。 しかしながら、 この場合は02よりもP4C4 (C4よ りもP4"即ち頭頂部に近い部位)のパワーが大きく、 F 4 C 4 (前頭 部F 4に近しけのパワー も02に匹敵す る ほどであり、 健常者Dと大 きく異な っている。 Cの場合はタイプIに該当し、 健常者Dのスペ クトル分布とよく似ており、 空間的にも 前後のパワ ーが大きい例は

健常者にも多い。 ピーク周波数が8. 5,...8. 7Hzと低いのには年齢が寄 与するところが大きいと思われる。

Aが通常服用し ているHPDに前頭脳波の振幅増大作用があるこ とはすでに知られており137)、 本研究の結果もこれを支持している可

能性がある。 但し、 通常の投与量ではその変化の出現率は低く、 変 化の度合も顕著でないとされており、 Aへの投与量も決して大量で

118

(54)

門司G

G 刀 ( h

ln円

A

F4C4

FP2凡�ヘー

ι , 、

1

02 P4C4 02

P4C4

F4U一一一一"'-­

Fp♀\_____J l_

一- F4U

1

14 18

frequency(Hz)

F戸~,ャムl

2 6 10 14 18

22

frequency(Hz)

図4 - 1 被験者の脳波スペクトル

(A'"'-' C :精神分裂病患者, D:健常者〉

(55)

はないことから、併用するthiothixeneとの複合的な効果も考えられる。

いずれにしても、 これまで健常者の脳波を採取した 経験からいうと、

α波の見られなかった例はあってもA, Bのようなケースは稀であ り、 ス ペクトルにおいても空間分布を調べることの重要性が示唆さ れている。

図4-2には同じ被験者の a)振幅、 α成分とb)位相の経時変化が 示されている。 示した部位は各被験者で最も高振幅な部位を選んで いるため、 AはF p2、 BはP4C4, C、 Dは02と、それぞれ異なる。

Aの振 幅自体はそ れほど大きくはないが位相にはジャンプら しいジ ャンプが殆どみられず、 安定して推移しており、 第3章で述べ た 10Hz閃光刺激下で引き込みを起こした健常者α波の位相ダイナミク スに良く似ている。 従って振幅にお けるwaxing and waningも健常者 Dほど動的でなく 、 変動は比較的小さいことが分かる。 Bの場合は waxing and waningが顕著にみられ、 位相が振幅極小時のジャンプを 含んで極めて不安定に変動しており、 いわゆる健常者タイプEの挙 動と共通点が多い ように思われる。 Cの位相は全般的に安定してい る が、 ジャンプも みられ、 健常者Dよりも変化 に乏しいが、 Aより もかなり大きい振幅 ・ 位相の変動が観測されている。

一つの部位では同様のスペ クトル分布を示したA, C, Dである が、 そ の位相 ・ 振幅変動のダイナミクスには多少なりとも相違がみ られる 。 即ち、 Aの位相変化は、 「完全に安定しているわけではな いが、 大きな変動もない」というのが特徴的であり、 他の被験 者 と 比較しでも特異的ですらあるように 思われる。 健常者でいえば安静 時というよりも10Hz閃光刺激によって引き込みを起こしたときの挙

- 120 -

(56)

A(部位:Fp2 )

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C( 02)

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図4

-

2 図4

-

1と同じ被験者の a)振幅とα成分 およびb)位相の時間変化

(57)

動の方が近 いといえる。 一方、 CもタイプIより位相の変動に乏し いが、 振幅のwaxing and waningは高振幅からO付近に至るまで大き く増減しており、 健常者よりも変動 に時間を要しているだけのよう

にもみえる。 即ち、 基本的な挙動に は健常者タイプIと共通点が多 いと思われる。

振幅のスペクトルを図4- 3に示す。 それぞれの 部位は図4 - 2

と同じであ る。 それぞれのスペクトルの傾き は異なっているが、 共 通して1 / f}.lタイプを示し、 卓越した周期性は認められない。 νの 値は0.1---1.0に分布し、 平均的にはBが最大で D→C→Aの順に低 下した。 但し、 この範囲での変動は健常者α波の個人差に吸収され る程度の大きさであり、 図4 - 2で示した振幅動特性とこれらの数 値を結び付けて考えるのは適切ではな いと考えられる。

図4- 4には優勢部位を基準とした頭部前後の位相差が示されて いる (Bの場合は最優勢部位が中心部 付近のため便宜上F p2とした〉。

この図にお いて、 位相差を表す曲線が上下端付近に位置して中央部 分が空白となる場合は逆相を表し、 中央付近に推移している場合に は同相を示す。 健常者Dの場合(02基準〉はかなり明瞭な逆相がみ てとれる。 しかしながら、2"'3sに一回程度、 位相関係が乱れる時 があり、 位 相差曲線が+1800付近 からO。の線を横切って- 1800ま

で大きく変動する様子がみられる。 これに対し、 A (F p2基準〉は 逆相が不明瞭 であり、 02での位相差は大部分がo 0から- 180。まで に分布し、 変動もかなり大きくなっている。 B (F p2基準〉も位相 差は安定していないが、 概ね+900---+180。の範囲で推移しており、

Dに近い逆相分布が示唆されている。 C は明瞭な逆相を表しており、

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