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振幅 ・ 位相の時空動特性と

揺らぎの臨床応用

4.

1 序 論

これ まで述べてきたように、 健常者の覚醒時α波、 睡眠時脳波リ ズム、 および引き込まれたα波のそれぞれについて時間空間特性の 一端が明らかにされた。 特に、 位相の時間空間特性に関しては これ までに原田ら43)・45)53 )5 4 )を除いて全くと言っていいほど報告されて いなかった。 従って、 臨床応用を考える上でも、 従来の振幅を用い た解析に位相分析 を加えることによって、 相補的効果が期待され得 る。 即ち、 健常者 と疾患者の振幅 ・ 位相に関する解析結果を比較 ・

検討することによ り、 診断や治療の際に一層有用な情報となり得る 可能性が考えられ 、 し かもその範囲を従来の解析で十分な所見が得 られなかった領域にまで拡張できるのではない かと期待される。

以上のような見地に立って、 本章では 本研究で提案した解析法の 臨床応用への可能性を探ることを目的とする。 特に現代社会で大き な問題となってい る精神疾患、 中でも代表的な精神分裂病の脳波を 対象として分析を試み、 健常者との異同を調べる。 即ち、 精神疾患 あるい は総合的な意味での薬物投与の効果が脳波リズムの位相動特 性等に反映される か否か、 もし反映されるとすればどのような特性 の違いが生じるかを調べるのが本章の目的である。

まず、 4. 2で は従来の精神分裂病の脳波に関する知見および向

精神薬が脳波に与える影響について述べる。 4. 3で対象とした被 験者と方法について述べ、 4. 4では解析結果の比較と考察を行う。

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4. 2

精神分裂病ならびに向精神薬と脳波

精神分裂病患者の脳波が変化する原因は、 脳器質性疾患がない場 合、 主に2つ考えられる。 ひとつは疾患そのものが 脳波活動に与え る影響 であり、 もうひとつは向精神薬の効果である。 本研究では入

院患者を対象としたため、 慢性 的な薬物投与の影響は不可避で あり、

これまで多くの研究がそうであったように、 2つの原因が絡み合っ た時の脳波を調べたことになる。

精神分裂病と脳波の関連はB er g e r以来、 多くの研究者が取り組ん できたが、 精神分裂病に特異な脳波の異常は見られないというのが 現在の共通した見解であり129)-132)、異常は あってもその程度は軽 く130)、 診断や治療に決め手となる有用な材料として用いられるまで には至っていない。 従って、 従来の研究では、 精神分裂病に比較的 多くみられる脳波変化を中心とした 報告がなされてきた133)・135)。

突発的な異常波に 関する検討は本研究の範囲を越えるため、 以下で は覚醒時脳波リズムを中心とした基礎律動に限定して従来の知見を 述べる。 Sh ag a s s 1 36)のまとめによると、振幅変動においては(1)時間 的変動性が乏しくなる、(2)女性において振幅が大、(3)半球聞の異常 な非対称が報告されている129)。 また、α波について言えば、(1)高 周波数のα波、(2)低周波数のα波、(3)α活動に乏しい、(4)α活動が ないのが多い、(5)導出部位相互間の組織化に乏しい等の様々な変化 がみられている。 概して言えば速波成分が目立ち、 α波の出現量や 連続性が乏しく、 徐波化傾向がほぼ共通した特徴132)137)であるが、

精神分裂病に特異的なものではないとされている。 そのほか、 安静

時脳波の0、 δ帯域におけるコヒーレンス が半球内 、半球間で健常 者よりも高いという報告 がなされているが、半球内では低く、半球 間で高いと するものもある138)。 しかし、安静閉限時で最も優位に出 現するα波のコヒーレンスについては高、 低、有意差なしのあらゆ る結果が提出されて おり、一致をみない138)。 このような状況におい て、 臨床家からは脳波と 臨床の関係の解明と治療法の確立が切望さ れている139)。

一方、 向精神薬 の 脳波に対する影響についても様々な分析に より 検討が重ねられて おり140)-144)、脳波所見からはむしろ薬物 投与に よる脳波の変化の方が大きいと考える向きも多い140)。 実際、 向精神 薬は臨床効果 、薬理学的作用 などの異なる多くの種類 が開発されて おり、 脳波所見に与える影響 も多種多様であ る。 また、 現在では数 種類の薬物を併用して用いること が多く、 その場合には単純に各薬 物効果の加算としては現れない場合もあり142)、統合的な見地からの

研究が望まれている。 従って、本章では代表的な抗精神病薬であり、

脳波への影響も比較的よく調べられているchlorpromagine (C P Z )、

haloperidol (H P D) および本章の被験者が服用中のth i 0 t h ix e n e、

fl oropipamideに関する知見を越野と大塚140)-142)、 菅野143)の総説 に従い予備的に述べる程度に留める。

CPZの慢性経口投与により、(1)振幅増大、αリズムの 徐波化、

(2) もともと αリズムの乏しい脳波にαリズムが出現する等の変化が 指摘されている。 HPD投与による脳波変化は一般に軽度であり137)、

(1)徐波の出現、(2)α波の増加と同期性の増強、(3) α波の連続性の 乱れ等が報告されている。 thiothixeneもHPDの(1)(2)の効果や遅

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-いα波の増加が指摘されている 。 floropipamideはHPDと同じ butyrophenone誘導体であるが、 鎮静、抗精神病作用共にHPDより 弱いとされており、 脳波に与える影響は上記の3つの薬物ほど詳細 に調べられていない。 また、 これら の薬物効果の判定には視察や振 幅、 スペクトル変化による方法やt検定、 主成分分析、 あるいはク ラスター分析 などの統計的手法が よく用いられている144)。

しかしなが ら、 向精神薬による脳波の変化は未知の部分も多く、

これを定性 ・ 定量的に知るこ とによって、 薬物治療効果や新薬 の効 果の判定が可能になると期待されている140)143)。

4. 3 対象と方法

某病院精神科病棟に 入院中の精神分裂病3名( 53歳、 60歳、 70歳、

全て男〉を対象として覚醒安静閉限時の脳波を採取した。 全員通常 の服薬状態にあるが、 服薬量は中~少量程度である。 対照群として 第2章で示した 健常者および新たに1名の健常者(男2 3歳〉より脳 波を採取した。

脳波の導出 ・ 記録には病院備え付けの日本光電製脳波計EEG6514 を用い、 1試行4分40秒間の測定を3回行って 脳波を採取した。 導 出した脳波は�_a TEACの4 チャネル データレコーダMR・1 0に記録し、

500Hz低域通過フィルタにより高周波ノイズを低減させた後、九州大 学中央計数施設のFACOM-F7740ラボステーションにより200Hz/ch でAD変換した。 尚、 予めこの低域通過フィルタの位相特性を調べ、

60Hz以下では入出力信号の位相遅れが最大100以下で、チャネルによ る 位相 差は無視できる程度 に小さいことを確認している。 データの 処理はラボステー ションにLAN接続された大型計算機センターの FACOM M1800/20に転送した後に行った。 基準電極については第2 章と同様であるが 、 導出部位はデータレコーダのチャネル数が限定 されていたため、F れから 02までの距離をおよそ3等分する2箇所 に設定 し、 F p2と02を含めて計 4つの電極を装着した。 以下、 これ

らの部位を前頭側から FP2、 F4C4" P4C4、 02とする。

分析は第2章と同様であるが、 空間分布に関して はマップやクロ ノトポグラフの作成には導出部位数が不足するため、 最も振幅が大 きい 部位からの部位間 位相差 についてのヒストグラムを作成 して検

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討を行った 。 また、 本測定においては睡眠脳波測定は行わず、 覚醒 時ではどの被験者にも顕著なθ波やδ波は見られなかったため、 α 波のみを分析対象とした。

4. 4 結果および健常者との比較

図4 - 1に4名の被験者(A, B, C, D)に関する脳波スペク

トル を示 す。 A (60歳〉、 B (53歳〉およびC (70歳〉はすべて精 神分裂病疾患者であり、 被験者Dは健常者である。 表示部位は上側 が後頭部、 下側が前頭部である。 Aの各部位のスペクトルは健常者 の分類で言えば典型的なタイプIに該当 する。 しかしながら、 空間 的にみる と、 後頭部のパワーは前頭部よりもか な り小さく、 F p2が 最大パ ワー部位となる 前頭優勢分布を示し ており、 同じタイプIで も 健常者のDとは対照的であ る。 また、 Aのピーク周波数 は9.2HzïW 後であ り、 中高年期以降で一般にはα波の周波数が低下する こと を 考慮に入れるとそれほど低周波数ではな いと思 われる。 Bはスペク

トル成分が広範囲に広がっており、 健常者ならばタ イプEに分類さ れる で あろう。 しかしながら、 この場合は02よりもP4C4 (C4よ りもP4"即ち頭頂部に近い部位)のパワーが大きく、 F 4 C 4 (前頭 部F 4に近しけのパワー も02に匹敵す る ほどであり、 健常者Dと大 きく異な っている。 Cの場合はタイプIに該当し、 健常者Dのスペ クトル分布とよく似ており、 空間的にも 前後のパワ ーが大きい例は

健常者にも多い。 ピーク周波数が8. 5,...8. 7Hzと低いのには年齢が寄 与するところが大きいと思われる。

Aが通常服用し ているHPDに前頭脳波の振幅増大作用があるこ とはすでに知られており137)、 本研究の結果もこれを支持している可

能性がある。 但し、 通常の投与量ではその変化の出現率は低く、 変 化の度合も顕著でないとされており、 Aへの投与量も決して大量で

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門司G

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