厚生労働科学研究費補助金(難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究事業(再生医療関係研究分野))
(総括・分担)研究報告書
「再生アソシエイト細胞による iPS 細胞移植時の免疫寛容治療研究」
研究代表者 浅原 孝之 (東海大学医学部 基盤診療学系 再生医療科学 教授)
研究要旨:
再生アソシエイト細胞の免疫寛容効果を確認・最適化し、iPS 細胞由来組織移植時におけ る再生環境治療法を開発し、iPS 細胞由来心筋細胞シート(拠点大阪大学:澤グループ)治療への応用 を目指すプロジェクトである。東海大学・大阪大学・順天堂大学それぞれの研究進捗を調整し、製品 再生アソシエイト細胞を用いた前臨床研究を目標とする。本年度の大きな目標である、ヒト・マウス再生アソシエイト細胞培養法およびその評価法の再現性確 立の点においては、目標は達成された。同種同系移植実験では、マウス再生アソシエイト細胞の血管 再生・抗炎症効果は確認されつつあり、同種異系移植へと展開して、iPS 細胞移植実験に繋げていく予 定である。
研究分担者名
増田治史(東海大学医学部基盤診療学系 再生 医療科学 准教授)
福嶌五月(大阪大学医学部心臓血管外科 助教)
田中里佳(順天堂大学医学部形成外科学 准教授)
A.研究目的
H25 年度は、東海大学・大阪大学・順天堂大学各 施設でのヒト再生アソシエイト細胞・マウス再生 アソシエイト細胞の培養・評価法の統一化を進め ることと、本プロジェクトでの評価実験系の確率 を中心として、各分担研究を本格化させることが 目標である。
B.研究方法
1. 課題①:再生アソシエイト細胞移植の免疫寛 容研究
(1)再生アソシエイト細胞の獲得免疫反応に対 する免疫寛容効果のin vitro研究
(2)再生アソシエイト細胞(同種同系)移植実 験
上記両課題のために以下研究が進められている。
(A)東海大学
(A-1)マウス・ヒト再生アソシエイト細胞の培 養・評価法の確立とその技術指導:それぞれの 培養法・評価法を項目化・文章化し、他大学の 培養に対する指導を、班会議・メール・電話に より進めた。
(A-2)同種同系移植試験:マウス下肢虚血モデ ルへの同種同系マウス再生アソシエイト細胞移 植実験を進めた。
(B) 大阪大学
(B-1)マウス・ヒト再生アソシエイト細胞の培 養・評価法の確立:東海大学からの情報を元に、
マウス・ヒト再生アソシエイト細胞の培養を試 み、その確認を進めた。免疫寛容作用のin vitro 評価法として、マウス脾臓からのリンパ球を採 取しリンパ球混合培養試験を試みた。
(B-2)同種同系移植試験:実験系確立ために、
マウス心筋梗塞モデル作製実験を行った。
(C) 順天堂大学
(C-1)マウス・ヒト再生アソシエイト細胞の培 養・評価法の確立:ヒト再生アソシエイト細胞 は確立しているので、マウス再生アソシエイト 細胞の培養を試み、その確認を進めた。マウス 再生アソシエイト細胞のEPCコロニーアッセ イ・FACS解析を進めた。
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(C-2)同種同系移植試験:実験系確立のため、
健常マウス(C57BL6J)と糖尿病マウス(db/db) に潰瘍を作成し、組織評価による局所M1/M2 細胞活性・血管新生を解析した。
2. 課題②:iPS組織移植のための再生アソシエ イト細胞免疫寛容研究
該当無し
3. 課題③:再生アソシエイト細胞基盤・応用研 究
(1)再生アソシエイト細胞免疫寛容メカニズ ムの最適化研究
東海大学において、再生アソシエイト細胞免疫 寛容メカニズム基盤研究の為に、ヒト再生アソ シエイト細胞の評価法を確立し、免疫寛容の最 適化に関しての候補因子とその組み合わせなど 調査・検討を開始した。
(2)臨床再生アソシエイト細胞培養開発 臨床検体測定の開始が目標である。ヒト再生ア ソシエイト細胞評価研究がほぼ終了したことで、
臨床再生アソシエイト細胞培養確立のための培 養データを蓄積するため、順天堂大学および東 海大学における糖尿病患者・動脈硬化患者検体 での解析を開始した。
(倫理面の配慮)
ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針
(平成25年文部科学省・厚生労働省・
経済産業省告示第1号)、疫学研究に関する倫理 指針(平成19年文部科学省・厚生労働省告示 第1号)、遺伝子治療臨床研究に関する指針(平 成16年文部科学省・厚生労働省告示第2号)、
臨床研究に関する倫理指針(平成20年厚生労 働省告示第415号)、ヒト幹細胞を用いる臨床 研究に関する指針(平成18年厚生労働省告示 第425号)、厚生労働省の所管する実施機関に おける動物実験等の実施に関する基本指針(平 成18年6月1日付厚生労働省大臣官房厚生科 学課長通知)及び申請者が所属する研究機関で 定めた倫理規定等を遵守した。動物実験は、各
施設の実験動物委員会承認のもと動物愛護法を 遵守、臨床研究については各施設臨床研究委員 会の承認のもとに実施している。
C.研究結果
1. 課題①:再生アソシエイト細胞移植の免疫寛 容研究
(1)再生アソシエイト細胞の獲得免疫反応に対 する免疫寛容効果のin vitro研究
(2)再生アソシエイト細胞(同種同系)移植実 験
(A)東海大学
(A-1)マウス・ヒト再生アソシエイト細胞の培 養・評価法の確立とその技術指導:東海大学増 田はマウス・ヒト再生アソシエイト細胞の培 養・評価法の標準化プロトコールを記述し、計 2回の班会議(第一回:2013年10月15日東海 大学、第二回:2014年3月5日京都国際会館)
および各施設との連絡を重ね、大阪大学・順天 堂大学にて再現性のあるマウス・ヒト再生アソ シエイト細胞の培養・評価法の標準化の向上が 確認された。
(A-2)同種同系移植試験:マウス下肢虚血モデ ルへの同種同系マウス再生アソシエイト細胞移 植実験を行い、毛細血管増加・末梢循環増加な どの血管再生効果、iNOS発現現象などの抗炎 症効果の確認が終了した。免疫寛容効果につい て検証中である。
(B) 大阪大学
(B-1)マウス・ヒト再生アソシエイト細胞培 養:培養細胞群の免疫寛容作用in vitro評価法 としてのリンパ球混合培養試験を開始した。現 時点では実験系の調整中で、免疫寛容作用の程 度などの確認はまだできてはいない。
(B-2)同種同系移植試験の実験系確立ために、
マウス心筋梗塞モデルを作成し移植試験を開始 した。モデルの成功率がまだ低いため、モデル 作成技術の確立に努めている。
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(C) 順天堂大学
(C-1)マウス再生アソシエイト細胞の培養:東 海大学からのプロトコールに従い。マウス再生 アソシエイト細胞を培養したところ、EPCコロ ニー形成細胞の増加を確認し、培養の再現性を 確認できた。
(C-2)同種同系移植試験の実験系確立:健常マ ウス(C57BL6J)と糖尿病マウス(db/db)に潰瘍 を作成し、組織学的に確認したところ、健常マ ウスでは炎症性マクロファージ(M1)はD1 に上昇してから減少し、抗炎症マクロファージ
(M2)はD7.10で増加するが、DMマウスで はM1上昇が遷延化し、M2の増加が抑制され ていることが判明した。
2. 課題②:iPS組織移植のための再生アソシエ イト細胞免疫寛容研究
該当無し。
3. 課題③:再生アソシエイト細胞基盤・応用研 究
(1)再生アソシエイト細胞免疫寛容メカニズ ムの最適化研究
東海大学:再生アソシエイト細胞免疫寛容メカ ニズム基盤研究:ヒト再生アソシエイト細胞の 血管再生作用・抗炎症作用をin vitroおよびin vivo実験で確認した。このデータはJournal of American Hear Association に投稿し受理され ている。この細胞群の免疫寛容作用も制御性T 細胞の増幅、Th2細胞の増幅から、強く示唆さ れるデータが出ている。
(2)臨床再生アソシエイト細胞培養開発 順天堂大学では、DM患者において再生アソシ エイト細胞はEPC、M2マクロファージ数を約 10倍に増幅し、EPCコロニーアッセイと
RT-PCRにおいても抗炎症効果・血管再生能を
示すデータが確認された。その細胞移植実験で は、DM再生アソシエイト細胞移植群において 高い創傷治癒効果と組織内血管再生効果が示さ れた。
東海大学では、脳血管障害患者を対象とした臨 床サンプルの再生アソシエイト細胞培養が試み られているが、まだ進行中である。
D.考察
本年度の大きな目標である、ヒト・マウス再生 アソシエイト細胞培養法およびその評価法の再 現性を全施設で確立する点において、ほとんど が達成されたと考える。各施設での再現性達成 は、本技術の信頼性を示すもので、この細胞群 の移植実験に進めることが可能になる。
移植実験は、同種同系実験が進行中で、東海大 学での下肢虚血モデル実験は完成し、潰瘍モデ ル・心筋虚血モデルでの移植実験を開始すると ころである。同種同系移植では、血管再生・抗 炎症作用しか評価が出来ないが、この実験系終 了後に進める同種異系移植にてin vivoでの免 疫寛容作用を評価することになる。
ヒト再生アソシエイト細胞培養法、および免疫 寛容作用評価法の確立に伴い、免疫寛容作用を 強化する培養法に着手し始めている。
臨床血液での再生アソシエイト細胞培養におけ る不安定性を危惧しているが、現時点では糖尿 病患者での培養法は効果が確認されており、さ らに臨床研究を進める予定である。
E.結論
ヒト・マウス再生アソシエイト細胞培養法およ びその評価法の再現性確立の点においては、目 標は達成された。同種同系移植実験では、マウ ス再生アソシエイト細胞の血管再生・抗炎症効 果は確認されつつあり、同種異系移植へと展開 して、iPS細胞移植実験に繋げていく予定であ る。
F.健康危険情報 特記なし。
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G.研究発表 1 論文発表
1.Masuda H, Asahara T et al. Vasculogenic Conditioning of Peripheral Blood
Mononuclear Cells Promotes Endothelial Progenitor Cell Expansion and Phenotype Transition of Anti-inflammatory Macrophage and T Lymphocyte to Cells with Regenerative Potential. Journal of American Heart
Association. 2014.(in press)
2.Tanaka R, Masuda H, Asahara T, et al.
Autologous G-CSF-mobilized peripheral blood CD34+ cell therapy for diabetic patients with chronic nonhealing ulcer. Cell
transplantation. 2014;23:167-179.
3.Tsukada S, Masuda H, Asahara T. et al.
Identification of mouse colony-forming endothelial progenitor cells for postnatal neovascularization: a novel insight
highlighted by new mouse colony-forming assay. Stem cell research & therapy.
2013;4:20
4.Tanaka R, Masuda H, Asahara T. et al.
Quality-control culture system restores diabetic endothelial progenitor cell
vasculogenesis and accelerates wound closure.
Diabetes. 2013;62:3207-3217.
5.Masuda H, Asahara T. Clonogenic assay of endothelial progenitor cells. Trends in
cardiovascular medicine. 2013;23:99-103.
6.Kamata S, Asahara T, Sawa Y. et al.
Improvement of cardiac stem cell-sheet therapy for chronic ischemic injury by adding endothelial progenitor cell transplantation:
Analysis of layer-specific regional cardiac function. Cell Transplant. 2013
H.知的財産権の出願・登録状況
特願第2012−218206号「血管内皮前駆細胞を 含む細胞群の生体外増幅方法」
基礎出願の番号:特願2012−218206 PCT出願番号:PCT/JP2013/76 618
国際出願日:2013年9月30日(基礎出願 日:2012年9月28日)
発明者:浅原孝之、増田治史、田中里佳
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