言葉を選び合いながら,言葉の感覚を磨く : 俳句づ くりを通して,言葉の魅力を探る(国語科第3学年)
著者 ?原 有紀
雑誌名 福井大学教育実践研究
巻 32
ページ 69‑75
発行年 2008‑01‑31
URL http://hdl.handle.net/10098/1648
1 学びの姿
!俳句を鑑賞し,言葉のおもしろさに気づく
(第1時〜第2.5時)
俳句の表現の特徴や工夫を味わいながら,「言葉って 楽しい。」と感じてほしい。そう考えて,子どもたちに まず,「風・街頭・売る・風車」の四つの単語をすべて 使って文を作るよう投げかけた。すると,「街頭で少女 が売っていた風車が風で回っていた。」,「おだやかな風 の日に街頭で風車が売られていた。」のように,ほとん どの子どもが「『風車』を『売る』」という内容の文を作 った。そこで,三好達治の「街頭の風を売るなり風車」
という俳句を紹介すると,子どもたちの中から「おー っ。」という声が上がった。このときの気持ちを実樹が 次のように振り返っている。
三好達治さんの「風を売る」というような表現が好き。
こんな風に,「おおっ。」と思わせるひと味違った感じが いいと思った。
現実をふまえながらも,現実を超える表現を取り入れた 作者の視点に気づいたようである。その感動を全員で共 有しながら,次の俳句を紹介する。
教師:次は久保田万太郎という人の俳句です。
にあてはまる言葉を考えてみてください。
「竹馬やいろはにほへと 」
章市:「ちりぬるを」や。(他,多数の子どもがこれ を挙げている。)
千波:「あいうえお」じゃない。
済人:「ととととと」。
教師:リズムがいいよね。どうして,「ととととと」
だと思ったの。
済人:竹馬で歩いている感じだから。
良介:「タケコプター」。
教師:おもしろい発想ね。どうして「タケコプター」
にしたの。
良介:「竹」を掛けたんです。
子どもたちは,リズムや響きによって,または,俳句の 前の部分との意味のつながりを考えて言葉を選んでいる。
久保田万太郎は,幼い頃にともに過ごした友達がそれぞ れ違う道に進んでいく様子を表現するために,「ちりぢ りに」と結んでいる。彩子は,
「いろはにほへと」の後が言葉遊びみたいになってい ておもしろかった。「ちりぢりに」にはいろいろな意味 が込められていると思った。
と振り返っている。言葉の持つリズムや響きに着目し,
言葉遊びの要素を取り入れつつも,そこに作者の思いが 込められていることを感じ取っているのである。
次に,俳句の基本的な作り方の一つとされる「二物取 り合わせ」を用いた,与謝蕪村の「菜の花や月は東に日 は西に」を提示した。かつて高浜虚子がヨーロッパへの 船旅の途中,この句の上五「菜の花や」を替えて詠んだ ことを紹介し,どのような言葉が当てはまるかを子ども に問いかけた。子どもたちは「船旅」,「高浜(福井県大 飯郡高浜町)」という二つのイメージから,「太平洋」「地 中海」など,海の名前を思いつくままに挙げていった。
答えが「印度洋」であることを伝えると,正解を当てた 子どもは満足げであった。「菜の花畑」と「印度洋」で は,俳句のイメージが変わってしまうことを実感し,「印 度洋」の方が壮大なイメージがするからいいと感じる子 どももいた。
言葉を選び合いながら,言葉の感覚を磨く
― 俳句づくりを通して,言葉の魅力を探る(国語科 第3学年) ―
福井大学教育地域科学部附属中学校
!
原 有 紀 教育実践報告第2学年では,短歌の学習を通して歌人の生き方や短歌が詠まれた背景についてとらえることで,選 び抜かれた言葉に込められた作者の思いを読み取った。そして,その思いを下敷きにして,歌に込めた い自分の思いを明確にし,自作の短歌を詠んだ。しかし,よりよい表現を目指して,子どもたち同士で 添削を行った際には,込めたい思いは明確でも,それをどのようにして言葉にすればよいのか悩む姿が 見られた。
そこで,本実践では,俳句の鑑賞を通して,言葉同士が互いに支え合い影響し合う中で,言葉が生き 生きと働くことを実感し,獲得した語彙や表現の工夫を自作の俳句に取り入れさせたいと考えた。その ことが,言語表現について考え,豊かな言語感覚を身につけることにつながると考える。
キーワード:国語教育,俳句,作句指導
― 69 ―
俳句づくりへのつながりを意識して,「切れ字」につ いて押さえたいと考え,「大根の葉が早く流れて行く」
という文を俳句にしてみようと投げかけた。五七五の定 型に当てはめるために,言葉の順序を入れ換えたり,助 詞を置き換えたりしていく。和磨は次のように考えた。
早々と大根の葉は流れ行く
和磨も他の子どもたちも,言葉を並べ替えてみたものの,
納得のいく俳句が作れないようだった。そこで,前出の 与謝蕪村の俳句や松尾芭蕉の俳句「古池や蛙飛び込む水 の音」に注目させ,切れ字の存在に気づかせた。子ども たちは切れ字について説明を聞いた後,もう一度課題に 取り組む。
教師:ここでは「早く」のところに「かな」という切 れ字をつけてみましょう。
将也:「早く」を少し変えてもいいんですか。
教師:いいですよ。
子どもたちは「早いかな」や「早きかな」などに直し,
自分がつくったものを見直している。俳句の定型を確認 するために,和磨がつくり直したものを紹介する。
教師:こんな風に並べ替えた人がいます。「大根の葉 の流れ行く早きかな」どうかな。
将也:はじめが七音で字余り。「大根の葉」は六音だ から真ん中じゃないとだめだし,「流れて行く」
を「流れ行く」にしたら五音だから,これを組 み合わせて「流れ行く大根の葉の早きかな」じ ゃない。
教師:そうだね。この俳句を詠んだのはさっき出てき た高浜虚子なんだけど,虚子は何に一番感動し てこの俳句を詠んだのかな。
亮太:大根の葉が流れること。
真治:早く流れていくこと。
教師:なぜ。
真治:切れ字がついてるから。
教師:そう。この句は早いことに感動してつくられた ものです。だから,「早きかな」じゃなくて,
もっといい言葉ないかな。
沙耶:「早さかな。」
教師:その方がぴったりくるね。
声に出して響きを確認する子どももいた。切れ字を使う 効果を感じ取ったようである。この句は教科書に掲載さ れている。次時では教科書の俳句について学習すること を確認した。
!俳句に描かれた情景を想像し,交流する
(第2.5時〜第3.5時)
教師:「どの子にも涼しく風の吹く日かな」飯田龍太 この俳句から分かることは何ですか。
生徒:子どもがいること。
生徒:涼しい風が吹いていること。
生徒:子どもが複数いること。
教師:あとの部分は読み手が自由に想像すればいいん だよ。俳句は十七音しかないからね。子どもた ちはどこにいると思う。
生徒:学校のグラウンド。
生徒:公園。
教師:時間はいつかな。
生徒:昼間。
生徒:夕方。夕焼けがきれいな感じ。
教師:季節はいつかな。
生徒:夏。
教師:どうして夏って分かるの。
生徒:季語があるから。
教師:そう俳句には季節を表す「季語」を入れるんだ よね。この句の季語は「涼し」です。
「季語」という言葉が出てきたため,俳句の決まりにつ いて確認した。子どもたちは「五七五」で,「季語を入 れる」ことを挙げた。そこで,「有季定型」,「歳時記」,
「切れ字」について押さえた。すると,「季語を入れる」
という決まりに疑問を持った実樹が尋ねてきた。
実樹:先生,この間やった「印度洋〜」の句の季語は 何ですか。
教師:確かにあの句には季語がないよね。
実樹:じゃあ,季語は入れなくてもいいんですか。
教師:教科書を見てみよう。
尾崎放哉の「咳をしても一人」を紹介すると「これが 俳句なの。」と驚きの声を上げている。
教師:みんなで次の句の情景について想像してみよう。
「稲妻にへなへな橋を渡りけり」小林一茶 葉月:雷が恐くてへなへな歩いているんじゃない。
説子:橋がへなへなしているように見えるのかな。
亮太:雷雨が激しいから,景色がよく見えなくて,人 も橋もへなへなしているように見えるんだと思 う。
教師:ということは,一茶はどこにいるの。
亮太:家の中にいて外を見てる。
説子:えーっ,一茶が渡ってるんじゃないの。
教師:そういうふうに考えることもできるね。
「へなへな」に注目し,多くのグループが,橋の様子か,
!原 有紀
― 70 ―
橋を渡っている人の様子かの2点で意見の交流をしてい たが,風景全体が「へなへなしている」と感じ取る子ど ももいた。
これまでの俳句の鑑賞を通して,俳句の表現の特徴や 工夫に触れたり,自由な鑑賞の楽しさを感じ取ったりし たことが振り返りからも読み取れる。
俳句と聞くと型にはまった苦しいものが多いと思って いたけど,「咳をしても一人」や「印度洋〜」など,今 までのイメージと違うものがあって,びっくりしたし,
とても楽しかった。(将也)
俳句をいろいろと見てきて,自分が思っていた俳句の 世界が広がりました。不思議な俳句もあったけど,込め た思いが伝わってくるものが多かったです。(拓也)
俳句は苦手だけど元々ある句に自分で予想して語を当 てはめるのは楽しかったです。(済人)
俳句という詩型式に対して,苦手意識を持っていた子ど もも,今回の鑑賞で少し身近に感じることができたよう だ。しかし,賢人は次のように書いている。
俳句を作るときには語順を替えたり,切れ字を入れた り,五七五にしたりといろんな決まりがあって難しかっ たです。
実際の作句の場面では,表現したい情景や思いに合っ た言葉を探し,選び,並び替えるという作業が必要にな る。このままでは,自分たちが俳句を作ることになった とき,表現したい思いや情景はあっても,それをどのよ うに言葉で表せばよいのかという点で壁にぶつかるだけ だと改めて感じた。そこで,みんなで一句つくる機会を 設けることで,作句の過程を共有できないかと考えた。
!作句の現場を追体験する (第3.5時〜第4時)
クラスでの俳句づくりに向けて,第2時の終わりに次 のような課題を出した。
教師:4時間目に「若葉」という季語を使って俳句を 作ります。五感を使って「若葉」感じてきてく ださい。
子どもたちは休み時間や放課後に若葉の観察を行った。
教師:味わってきたことを文で表現しましょう。
教師:みんなに書いてもらった文章の中から,イメー ジが一番浮かんでくるものを選んで,それをも とに俳句を作りたいと思います。まずは,グル ープで一番イメージが浮かぶ文章を選んでくだ さい。
このように投げかけ,最終的にクラスで一つの文章を選 んだ。選ばれたのは史菜のものである。
校庭に立つ木から若葉を一枚とってみた。なん だか鼻につんとくるにおい。さわるとつるつる している。木を見上げるとあざやかな緑が広が っていた。風がふくとさわさわという音ととも に若葉はゆれる。
教師:史菜さんの文章をもとにみんなで俳句を作りま す。まずは,史菜さんの文章から浮かんだこと を,文や単語で表し,黒板に貼りましょう。同 じものがあった場合は重ねてください。
教師:黒板に挙げられた言葉を参考にしながら,グル ープで俳句を作りましょう。
休み時間にグラウンドで若葉の観察
若葉観察ワークシート(史菜)
史菜の文章から浮かんだ言葉 味
覚 嗅
つ覚 ん とく る
視 覚 こも れび 緑 もっ さり あざ やか
そ の 他
触 覚 つ るつ る しゃ わし ゃわ する り
聴 さ覚 わ さわ ざー
② 味 わ っ た こ と を 文 で 表 現 し よ う
︒
今 日 か ら 私 も 俳 人 名 前
①
﹁ 若 葉
﹂ を 五 感 で 味 わ お う
︒
― 71 ―
グループごとに,自分が使いたい言葉を付箋に書いて,
紙に貼り,それらを組み合わせたり,並べ替えたりしな がら俳句に作り上げていく。
将也:「木もれ日」,「一つの命」,「あざやか」を組み 合わせたらどうだろう。どんな言葉を足すとい いですか。
教師:切れ字を入れたら。
将也:順番をどうしたらいいか分かりません。
教師:付箋に切れ字や助詞を書いてみて,それを貼り 付けたり,並び替えたりしてみたら。
(みんなで並べ替えてみる。)
将也:「木もれ日や一つの命あざやかに」か。
教師:木もれ日が命をあざやかに照らしているの。一 つの命って誰の,何の命を表しているの。考え てごらん。
将也:木の命,葉の命。それが木もれ日によって照ら されている。
済人:他の人には分かってもらえないんじゃない。み んなに分かるようにしないと。
将也:俳句は,人それぞれ感じ方があったから分から なくてもいい。
済人:(何も言えなくなる)
作句が思うように進まないグループもあったため,ここ でヒントを与えた。
教師:悩んでいるグループがあるようなので,秘策を 伝授します。五七五をすべて決めようとすると 難しいので,下五を「若葉かな」と固定して,
それに上五と中七を組み合わせてみてください。
1班はこのヒントを元に,「さわさわと風にゆられる若 葉かな」という俳句をつくった。これで,とりあえずは 俳句ができあがったわけであるが,子どもたちは,自分 たちの思いが込められた俳句を作ることに精一杯取り組 んでいる。作るのが難しい班には,ヒントを与えた方が
よいと考えていたが,言葉に対する子どもたちの思いは 予想以上に深かった。「一人」という言葉を使いたい亮 太は,何とか俳句を作り上げようとしていた。
亮太:「一人」という言葉を使いたいんですけど,う まくつながらなくて。
教師:「一人」は三音だから,切れ字を使ったり,一 人を強調するために「ただ一人」としたりして みたら。他に組み合わせたい言葉はないの。
彩織:「木もれ日」を入れたい。
教師:じゃあ,「木もれ日」の付箋を「一人」のとこ ろに貼って,考えてごらん。
研究集会当日の授業だったため,参観されていた先生か ら「他の言葉を補ってもいい。」とアドバイスされ,「受 ける」,「朝」という二語を補って「ただ一人木もれ日受 ける夏の朝」という俳句を作った。
つくったときの過程が分かるように説明した上で,で きあがった俳句を紹介した。
将也:僕たちの班は「木もれ日」,「一つの命」,「あざ やか」の3つの言葉を入れたいと考えました。
でも,できあがった俳句は何を伝えようとして いるかわかりにくいという意見が出ました。こ の俳句では,木に差し込む「木もれ日」が「命」
を表しています。
彩織:私たちは「一人」,「木もれ日」,「朝」の3つを 選びました。「一人」では足りないので,「た だ」という言葉を付けました。はじめは「夏の 日に」と考えたのですが,「日」だと時間がは っきりしないので,この俳句のイメージに合う ように「朝」にしました。
言葉から浮かぶイメージを共有しながら,俳句全体のイ メージを考えて作句を行っていた。しかし,個人が言葉 の持つイメージにこだわりすぎたために,全員で納得の いく俳句を作れなかったグループも見られた。
!言葉の持つ意味の深さやイメージの広がりを合評で味
わう (第5時〜第6時)
言葉の持つ魅力をさらに深めるために句会の開催を提 案した。「作句」,「出句」,「清記」,「選句」,「披講」,「合 評」という流れの中で,最も大切にしたいのは,合評で ある。句会で互選された句はもちろん,選ばれなかった 句も含めて,互いの作品や句に使われた言葉について感 じたことや浮かんだ情景を話し合わせたいと考えたから である。
教師:まずは,「作句」です。今回は,共通の季語を 使って俳句を作りたいと思います。今は季節が 付
箋 を 貼 っ て 俳 句 づ く り
!原 有紀
― 72 ―
「夏」なので,夏の季語の中から,使いたいも のを選んでください。
歳時記を見ながら,使いたい季語を話し合い,「祭」と
「風鈴」に決定した。
前時で行った「若葉」を使った俳句づくりのときのよ うに,まずは,思い浮かぶイメージを文や単語にして,
それをもとに作句を行う子どももいた。また,つくった 俳句の言葉の順序を入れ替えたり,イメージに合う言葉 に直したりしている様子も見られた。
彩子のメモ
風鈴がなると,夏の出来事を思い出す。
↓
風鈴や夏の思いで運んでく
千波のメモ
WORD:音色,チリンチリン,涼しい,かわいい,
すいか,風,子ども,縁側,そよ風,まるい
↓
縁側に涼しく響く音色かな 風鈴やチリンと笑う風うけて
将也のメモ
甲子園応援つづける風鈴や
はしまきに想いを巻いた夏祭り ゆれる
夏祭り淡い想いを巻いてみた あなたの想いもすくいたい
将也:「はしまき」と「巻く」っていうのを掛けたい んですけど。「まく」っていうのを1回しか使 わずに表現したいんです。
教師:「夏祭り淡い想いを巻いてみた」だと,「はし まき」が浮かんでこないかもね。
将也:そうなんです。そこがうまくいかないんです。
教師:「はしまき」が難しいのかな。お祭りによくあ る他のもので表現してみたら。
将也:お祭りによくあるものって。
真治:「金魚すくい」とか。
将也:「すくう」んか。「あなたの想いもすくいたい」
わー,これいいな。「淡い想い」とも合ってる し。
今までの学習を通して,直接的ではない表現を使って自 分の思いを表したいと考えていたようである。振り返り にも次のように書いている。
俳句は五七五の音が決まっていて,自分の伝えたいこ
とをうまく伝えられず,昔から苦手だったが,今回の学 習を通して,内容を明確にせず,含みを持たせて書くこ とや言葉をつなぐ文字の大切さを知れたと思います。
一人2点以内で投句したものを無記名で一覧表にする。
「選句」では,68点の俳句の中から,次の4点が票を多 く集めた。
4番 夏祭り過ぎゆく人皆夢を見る 真治 20番 夏祭り暗い夜道に色灯る 悠紀 25番 夜に咲く祭の灯喜の光 利恵
27番 朝早くきれいでしょってゆかたきて 愛子
教師:グループで「合評」をします。得票数の多いも のでもいいし,グループで選んだ俳句でもいい ので,どんな情景が浮かぶか話し合ってくださ い。
智子:どれ選んだ。
葉月:25番。「灯りが咲く」という表現がいいと思う。
花火を見て喜んでるのが分かる。それと,38番 の「風鈴が空を泳ぐ」っていうのもけっこう好 き。
説子:私も38番の「泳ぐ」っていう表現いいと思った。
亮太:俺は25番が一緒。祭についてきれいに書いてい ると思う。22番は「ソーダ水」って祭に合った ものが最後にあるから情景をイメージしやすい。
智子:私は59番がイメージしやすかった。「風鈴」っ て一言も書いてないのに「風鈴」ってすごく分 かる。
このグループの話題に上った俳句 22番 祭きて喉が欲するソーダ水 仁史 25番 夜に咲く祭の灯喜の光 利恵(得票数多)
38番 縁側の風鈴空に泳ぎけり 泰造 59番 縁側に涼しく響く音色かな 千波
この班の泰造は自分の俳句が話題に上ったので,恥ずか しそうである。授業後には,自分の俳句の得票数を確か
合評の様子
― 73 ―
めにきたので,「4票入ってたよ。」と告げると満足そう だった。
合評の際には,俳句の言葉だけを見て自分のイメージ を広げてほしいと考え,作句の段階から自分の作品は人 に見せないように伝えていた。
教師:クラス全体で合評してみましょう。得票数の多 かった4番の俳句はどうかな。
葉月:夏祭りは,年とか立場とかを忘れて楽しめるの で,そういうのが表現してあると思います。
千波:祭の雰囲気に流されて,夢を見ているようだと いう気持ちが表れていると思います。
章子:夏祭りはとても特別なものだと思います。漂っ てくる綿あめの甘い匂い,たこ焼きソースの香 ばしい匂い,また,人々の笑顔や熱気,赤いち ょうちんのまぶしすぎない光が,屋台を通った 人全員にいっぺんに降り注いできます。そのに ぎやかさ,温かさが心地よく,夢のような世界 にいる気分になります。
教師:では,この俳句の作者にどんな思いを込めたか 聞いてみましょう。真治くんお願いします。
(作者を聞いて,「おーっ。」という声が上がる。)
真治:祭の日に屋台の前を通ると,大人も子どもも,
みんな幸せな気持ちになっている様子を俳句に しました。
教師:友達の鑑賞を聞いてどう思った。
真治:僕が思わなかったことまで想像していて,すご いなと思いました。
合評によって,お互いの作品や俳句に使われた言葉につ いて感じたことや浮かんだ情景を話し合い,作り手と読 み手の感じ方の違いを交流し合うことで,言葉の持つ魅 力を少なからず感じ取っていたようである。振り返りか らは,人によって読み取りがさまざまであることを楽し んでいる様子がうかがえる。
俳句は意外と簡単につくれますが,なかなかよい俳句 はつくれないなと思いました。俳句は同じものでも,人 によって,感じることに違いがあり,また,そこからい ろんな情景や心情を読み取ることもできるので,とても おもしろく感じました。(晴美)
また,協働作句の経験が自分の俳句づくりに活かせた と感じている様子もうかがえた。
2年生のときも短歌を授業で作ったけれど,何にもア イディアが浮かばなくてぜんぜんできませんでした。で も,今回のように入れたい単語を決めてから俳句をつく っていくと,カンタンにできました!自分の考えとか思 ったことがちゃんと表現できたのでよかったです。(歩美)
俳句をつくるのって感性とかが必要な気がして,難し く考えすぎてあんまり得意じゃないし,好きじゃない。
でも,研究授業で付せんを動かしながら作っていくのは,
分かりやすくてやりやすかった。切れ字を使うなどコツ が少しつかめた。初めにした「風を売る風車」とか,常 識をくつがえすような新しい発想が,みんなの作った俳 句にも見られた。比喩が多いと思う。私は,擬音語や擬 人法や比喩などが使われている俳句が好き。(彩織)
さまざまな俳句の鑑賞や,俳句づくりの活動を通して,
言葉の持つ魅力を実感することができたようである。
2 省察
!協働作句から学んだこと
「感じたり思ったりしたことを言葉にするのは難し い。」2年次の短歌の学習を通してそう感じていた子ど もたち。そんな子どもたちに,今年度も韻文を通して言 葉の感覚を磨かせたいと考えた。いろいろなものを想像 するところに韻文の魅力があり,だからこそ,思いを伝 える表現を探り合えるのではないかと考えたからである。
しかし,有名な俳句を鑑賞し,それから,個人で俳句を 作ることになれば,昨年度と同じように,込めたい思い はあっても,それをどのように表現すればよいかでつま ずいてしまう。「言葉って楽しい。」という実感から俳 句づくりができないだろうか。そこで,一つの季語を五 感で味わい,そこから文章を作り,協働で言葉を探し,
言葉の組み合わせで俳句を作るという試みに挑戦するこ とにしたのである。
前出の振り返りにもあるように,俳句を楽しんで作る ことができた子どもが多い。付箋の並べ替えで俳句がど んどんつくれるからだ。しかし,言葉が持つイメージに は人それぞれ違いがある。「香り」にするか「におい」
にするかでイメージの相違が見られたり,グループの中 の一人の子どもの言葉に対するこだわりが強いために,
その子どもの意見を中心に話し合いが進んでしまったり する様子が見られた。この単元のはじめに,「俳句は決 まりがあるから難しい。」と感じていた賢人は,
昔,学校で俳句を作ったことはあるけど,あまり上手 くできなかったし,いきなり作り出すのはどうかと思い ました。しかしそうではなくて,まず,俳句のもととな る文章を自分で作り,そのあと,俳句を作る際に,入れ たい言葉をいくつか出して,その中から選ぶ練習をしま した。でも,自分で俳句を作ったときには,俳句の決ま りを活かしながら作るのは難しいと判断しました。
と振り返っている。彼は,俳句をつくるときには,協働 作句の手法を用いていた。季語や切れ字を活かしてイ メージしやすい俳句づくりを心がけていたが,やはり難 しさは感じていたようである。ただ,彼が協働作句を「練
!原 有紀
― 74 ―
習」と感じ,それを活かしていたなら,昨年度よりは一 歩進めたのではないかと思う。
!合評から学んだこと
言葉の持つ魅力の一つは,同じ言葉でも人によって感 じ方がさまざまであることだと思う。それを実感できた のが合評であろう。
有名な人たちがつくった俳句もとてもよいですが,ク ラスの人たちがつくった俳句も,身近なものに感じられ て,とてもよいものがたくさんあったと思います。(晴美)
誰が作ったのかは分からないが,クラスの友達が作った 俳句だからこそ,俳句の言葉一つ一つと向き合い,作者 の思いを読み取ろうとしたのだろう。優れた表現はもち ろん心を動かすが,いかに感動を共有できるかというこ とも,作品の読み取りの上では欠かせないことであると 再認識した。その点においては,今回,協働作句という 手法を試みたが,作句のもととなる物語に描かれている 感動を,最後まで共有しきれなかったために,一人一人 の思いが優先され,協働作句が進まないグループも見ら れた。この点については,さらに見直していきたい。
"教科における探究のとらえ直し
「この授業はコミュニティとしては初期的に成功だろ うけど,ちゃんと注意していかないと危険だと思います。
お遊び的な言語感覚が育てられてしまうと思います。」,
「グループでキーワードのようなものを出して,協働で 作っていく俳句づくりは,俳句という文化を味わってい くのに本当にいいことなのかどうか,議論する余地があ ると思います。」協働作句の授業について,研究会や鼎 談での参観者からのご助言が頭から離れない。
前述したように,この単元は昨年度の反省から出発し ている。言語感覚を豊かにし,感じたり思ったりしたこ とを言葉で表現する力を付けたいとこの実践を行った。
俳句そのものについて理解を深めることが第一のねらい ではなかったにせよ,国語科の探究として,やはり俳句 を扱う際のねらいがあいまいだったように思う。もちろ
ん,季語や定型,切れ字などの俳句の約束事の知識を鑑 賞の中で習得し,それが自身の作句へとつながるように 導いたつもりであった。しかし,俳句の中にどんな感動 を詠み込むのか,感動の中心の焦点化という視点が欠け ていたように思う。それでも,子どもたちは自身の経験 と重ね合わせながら,グループの中で,言葉遊びと感動 の焦点化を行ったりきたりしていたように思う。今後,
授業者として,国語科の観点から子どもたちに何をどの ように追究させるのかという視点を明確に持たなければ ならないことを改めて実感した。
#核となるカリキュラムとのつながり
国語科の核となる学びは「言葉を通して他と関わり,
追究を深める」である。コミュニケーションが探究のプ ロセスであると考えている。今回の実践では,俳句と,
俳句に描かれた情景や心情と,友達と,そして自分自身 と対話しながら言葉と向き合ってきた。言葉に込められ た思いの深さを知ること,これは,国語科の核となるカ リキュラム「国語研究録」や「文学的文章での学び」に 欠かせないものである。特に,後者では「書く」という ことを大切にしている。実際に自分たちが書くことで,
自分の考えや思いを言葉で表現することの難しさを実感 し,文学的文章についてより深く検討できると考えるか らである。協働作句での強いこだわりはコミュニティづ くりには妨げになることもあるが,そのこだわりが個人 の学びに活かされる。国語科としての視点を明確にした 上で,コミュニティでの協働探究によって,子どもたち の個々の学びが深まる授業づくりを今後も目指していき たい。
参考文献
鍵和田!子(1991)俳句をつくる 供文社 西郷竹彦(1992)俳句を授業する 文芸教育60号
明治図書
福井大学教育地域科学部附属中学校(2007)研究紀要 第35号
福井大学教育地域科学部附属中学校(2007)研究紀要 第35号別冊国語科
Choosing expressions by group discussion and Improving the understanding of the words.
−To prove the attraction of words through makinghaiku(Japanese Course the third grade of junior high school)−
Yuki YANAGIHARA
Key words: language education,haiku, makinghaiku
― 75 ―