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博士(工学)佐藤康治 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)佐藤康治 学位論文題名

酸 素 を 用い た PHA 合成に関 する研究 学位論文内容の要旨

  現在、経済社会の発展が地球環境問題を深刻化させつっある。これらの問題を解 決するため、環境への負荷が少ない「循環型社会」を形成することが急務となって いる。このような背景から、土壌や水中の微生物により分解され、自然界の物質循 環系に組み込まれ、環境に調和する新しい高分子材料「生分解性プラスチック」の 開発が注目されている。

  多くの微生物は、ある種の栄養源(窒素やりンなど)が欠乏した条件下において hydroxyalkanoate (HA)を モ ノ マ ー ユ ニ ツ 卜 と す る 高 分 子 量 ポ リ マ ー ` polyhydroxyalkanoate (PHA)を菌体内に蓄積することが知られている。これは合 成プラスチックと同様に熱可塑性を示すとともに自然環境中で分解される性質を有 することから、生分解性材料としての応用が期待され様々な研究が行われるように なった。・

  本論文で は、酵素 を用いたPHA合成に関する研究を行った。本論文は6章から 構成されており、それぞれの概要を以下に示した。

  第1章では 、生分解性プラスチックおよびPHAについての背景を記述し、本研 究における目的を明らかにした。

  第2章では、従来のPHA synffiaseよりも利用価値の高いPH'A synthaseを得る という目的からPHA合成細菌の単離を試みた。特殊な環境下には有益な能カを有 する細菌が存在していると考えられたため、ガス田採掘土壌をターゲットとした。

その結果、PHA合成能を有する5種類の菌株が得られた。・そのうちでもっとも合 成能の高かったINT005株についてさらに解析した。INT005株を同定するため種々 の試験を行ったところ、B, cereusによく似た性状を示すがいっかの相違点も確認 された。したがって、本論文ではB・'acillus sp. INT005とした。本菌株は様々な炭 素源より 短鎖長のHAを構成ユ ニットとす るPHAを合成 したこと から、そ のPHA synthaseはclassIまたはIIIに分類されると示唆された。また代表的なPHA合成 細菌(Ralstonia eutropha)よりも高い培養温度においてPHAを合成可能であった。

  第3章では、B ・acillus sp. INT005のPHA生合成遺伝子群のクローニングとその 解析について述べた。第2章の結果より本菌株のPHA synthaseはclassIまたはIII に分類さ れると推 測された。クロ―ニングされたPHA生合成遺伝子群には2っの サプユニ ットPhaCとPhaEか ら構成さ れるclass III PHA synthaseのphaCに相 同性を示すopen reading frame (ORF)が発見された。しかしながら、もう一方の サブユニ ットであ るphaEに相同 性を示すORFは 見っからなかった。さらなる解 析の結果 、PhaEの半分 の分子量 しかないPhaRBspが本菌株のPHA synthaseのサ     ―871−

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ブユ ニッ トで ある こと が明 らか に なっ た。 本PHA syntllaseのkineticsはlag phase を示 し、class III PHA synthaseのkineticsと は異 なる こと が判明した。このよう な 結 果 よ り 、Bacillus sp. INT005由 来PHA synthaseは 新 規 のPHA synthaseで あると考えられた。

  第4章 で は 、Bac川ussp.INT005由 来PHAsynthaseと ほ か の2つ の サ ブ ユ ニ ッ ト か ら な るPHAsynthaseと の 比 較 を 行 っ た 。 ま ず は 、 同 じBad〃 え 心 属 のB. J刀eg召 絶 ガwね と 比 較 し た 。B.megar臼IuJ門 由 来PHAsynthaseもPhaRBmとPhaCm か ら 構 成 さ れ て い る こ と を 確 か めた 。こ の結 果お よび 各サ ブユ ニ ット (PhaRBmと PhaRBsp、PhaC。111とPhaCBsp)の高い相同性より、それらのサブユニットは交換して もPHAsynthase活 性 を 発 現 で き る と 考 え ら れ た 。 解 析 の 結 果、 そ れら は交 換し て もPHAsynthase活 性 を 発 現 で き る こ と が 認 め ら れ た た め 、PhaRBmとPhaRBspお よ びPhaCBmとPhaCBs卩 は 同 様 の 機 能 を 有 し て い る と 示 唆 さ れ た 。 次 にclassmPHA synthaseに 分 類 さ れ る5カ 】ecカ 〇s卩dssp.PCC6803由 来PHAsynthaseサ ブ ユ ニ   ッ ト (PhaCsn`PhaEsyカ ) とBac川ussp.INT005由来PHAsynthaseサ ブユ ニッ ト を 交 換 し てPHAsynmase活 性 の 発 現 に つ い て 検 討 し た 。 し か し な が ら 、PHA synthase活性 は検 出さ れな かっ た ため、PhaEsy‥とPhaRBsI) は異なる機能を有して い る と 考 え ら れ た 。 ニ の よ う に 、Ba甜Jussp.INT005由 来PHAsynthasetよclassIH PHAsynthaseと は 異 な る 新 規 のPHAsynthaseで あ る こ と が 強 く 示 唆 さ れ た た め 、     一

新規のclassIVに 分類されるべきであると考えられた。

    第5章 では 、R.eu觚りmaのP(3HB)生合成機構を参考にしてacetateを原料とし たP(3HB) 酵 素 合 成 系 の 構 築 を 試み た。aceゆ トCOAsynthetase(Acs)、gluCose   dehydrogenase(GDH) 、 ロ ‐ketothiolase(PhaA) お よ びNADPH―dependent   aCetoaCetyl‐COAreduCtaSe(PhaB)を用いてモノマー合成を行ったところ、COAを   り サイ クル 、NADPHを 再生 しな がら モノ マー 合成 可能 であ るこ と が明 らか とな っ た 。 そ こ で 、 そ の 反 応 系 にPhaCを添 加し てポ リマ ー合 成を 試み た 。そ の結 果、 反 応液 が白 濁す るこ とが 確認 され た 。生 じた 沈殿 物を 集め クロ ロホルム抽出し、それ にメ タノ ール を添 加し たと ころ 白 い沈殿物が得られた。これをd一クロロホルムに溶 解 し てlHNMR解 析し たと ころ 、P(3HB)で ある と判 明し た。 合成 さ れたP(3HB) の Mwお よ びMnfま3x106ガmol以 上 で あ り 、 分 散 度 は1.5以 下 で あ っ た 。 合 成 さ れ たP(3HB) 量 を も と にCOAの り サ イ ク ル 回 数 お よ びNADPH再 生 回 数 を 計 算 し た   と こ ろ 、 そ れ ぞ れ 少 な く と も26回 反 応 し て い る こ と が 確 認 さ れ た 。   第 6章 は 総 括 で あ り 、 本 研 究 で 得 ら れ た 成 果 に つ い て ま と め た 。   本 研 究 に お い て 新 規 のPHA合 成 酵 素 遺 伝 子 群 を 発 見 し 、 機能 の 解析 を行 った 。   さ らに 、酵 素を 用い た補 酵素 のり サ イク ルお よび 再生 を有 したPHA合 成系 の構 築

、、に成功した。本反応系では用いる酵素や原料を改良することで様々なモノマーを合 成可 能で ある と考 えら れる 。さ ら に微 生物 体内 では 合成 でき ないようなモノマーの 合 成 も 可 能 と な り 、 新 規 の 特 性 を 有 す るPHAの 合 成 が 期 待 され る 。今 回ク ロー ニ   ン グ に 成 功 し た 日 瓜 刈ussp.INT005由 来PHAsynmaseは 広 い 特 異 性 を 有 す る こ   と から 、こ の酵 素合 成系 ヘ応 用 することで新規のモノマーから構成される新規PHA が合成可能となると期待される。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

酸 素を 用 いた PHA 合 成に関する 研究

  近年、経済社会の発展が地 球環境問題を深刻化させつっある。これらの問題を解決するため、

環 境へ の負 荷が 少な い「 循環 型社 会」 を形成することが急務となっている。このような背 景か ら 、土 壌や 水中 の微 生物 によ り分 解さ れ、自然界の物質循環系に組み込まれ、環境に調和 する 新 し い 高 分 子 材 料 「 生 分 解 性 プ ラ ス チ ッ ク 」 の 開 発 が 注 目 さ れ て い る 。   多 く の 微 生 、 物 は 、 あ る 種 の 栄 養 源 ( 窒 素 や り ン な ど ) が 欠 乏 し た 条 件 下 に お い て hydroxyalkanoate (HA)をモ ノ マー ユニ ット とす る高 分子 量ポ リマー、polyhydroxyalkanoate (PHA)を歯 体内に蓄積することが知 られている。これは合成プラスチックと同様に熱可塑性 を示 す とと もに 自然 環境 中で 分解 され る性 質を有することから、生分解性材料としての応用が 期待 され様々な研究が行われるよ うになった。

  本論 攵で は、 酵素 を用 いたPHA合 成に 関す る研 究を 行っ た。 本論 文は6章か ら構 成さ れて お り、それぞれの概要を以下に 示した。

  第1章で は、 生分 解性 プラ ス チッ クお よびPHAにつ いて の 背景 を記 述し 、本 研究 にお ける 目 的を明らかにした。

  第2章で は、 従来 のPHA synthaseより も利 用価 値の 高いPHA ̲synthaseを得 ると いう 目的 か らPHA合成 細菌 の単 離を 試み た 。特 殊な 環境 下に は有 益な 能カ を有する細菌が存在してい ると 考 えら れた ため 、ガ ス田 採掘 土壌 をタ ーゲ ット とし た。 そ の結 果、PHA合成 能を 有す る5種 類 の 菌株 が得 られ た。 その うち でも っと も合成能の高かったINT005株についてさらに解析し た。

INT005株を 同定 する ため 種々 の試 験を 行っ たと ころ 、B.cereusによく似た性状を示すが いつ かの相違点も確認された。し たがって、本論文では'Bacillus sp. INT005とした。本菌株は様々 な 炭 素 源 よ り 短 鎖 長 のHAを 構成 ユニ ット とす るPHAを 合 成し たこ とか ら、 そのPHA synthase は ク ラ スIま た はIIIに 分 類 さ れ る と 示 唆 さ れ た 。 ま た 代 表 的 なPHA合 成 細 菌(Ralstonia eutropha)よりも高い培養温度においてPHAを合成可能であった。

  第3章 で は 、Bacillus sp.INT005のPHA生 合成 遺伝 子 群の クロ ーニ ング とそ の解 析に つい て 述 べ た 。 第2章 の 結 果 よ り 本 菌 株 のPHA synthaseは ク ラ スIま た はIIIに 分 類 さ れる と推 測 さ れ た 。 ク ロ ― ニ ン グ さ れ たPHA生 合 成 遺 伝 子 群 に は2つ のサ ブュ ニッ トPhaCとPhaEから 構 成さ れる クラ スIII PHA synthaseのphaCに相 同性 を示 すopen reading frame (ORF)が発 見 さ れた 。し かし なが ら、 もう 一方 のサ ブユ ニッ トで あるphaEに 相同性を示すORFは見っか らな か った 。さ らな る解 析の 結果 、PhaEの 半分 の分 子量 しか な いPhaRBSpが本菌株のPHA synthase の サ ブ ュ ニ ッ ト で あ る こ と が明 らか にな った 。本PHA synthaseのkineticsはlag phaseを示

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信 男

一 夫

授 授

授 授

   

   

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し 、ク ラスIII PHA synthaseのkineticsと は 異な るこ とが 判明 した 。こ のよ うな 結果 より 、 Bacillus sp. INT005由 来PHA synthaseは 新 規 のPHA synthaseで あ る と 考 え ら れ た 。   第4章 で は 、Bacillus sp. INT005由 来PHA synthaseと ほか の2つ のサ ブュ ニッ トか らな る PHA synthaseとの 比較 を行 った 。ま ずは 、 同じBacillus属のB.IUegateriumと比較 した。B. megaterium由 来PHA synthaseもPhaRBーとPhaCBmか ら構 成さ れて いる ことを確かめた。この結 果および各サブュニット(PhaRBーとPhaRBsp丶PhaCB。とPhaCBsp)の高い相同性より、それらのサブ ユニ ット は交 換し てもPHA synthase活性 を発現できると 考えられた。解析の結果、それらは交 換しても.PHA synthase活性を発現できることが認められたため、PhaRBカとPhaRBspおよびPhaCB扛 とPhaCBspは 同 様の 機能 を有 して いる と示 唆さ れた 。次 にク ラスIII PHA synthaseに分類され るSynechosystis sp. PCC6803由来PHA synthaseサブュニット(PhaCSyn丶PhaESyIl冫とBacillus sp.

INT005由 来PHA synthaseサ ブュ ニッ トを 交換してPHA synthase活性の発現について検討した。

しかしながら、PHA synthase活性は検出されなか ったため、PhaEs,‥とPhaRBspは異なる機能を 有していると考えられた。このように、Bacillus sp.INT005由来PHA synthaseはクラスIII PHA synthaseと は異 なる 新規 のPHA synthaseで あ るこ とが 強く 示唆 され たた め、 新規 のク ラスIV に分類されるべきであると考えられた。

  第5章 で は 、 兄eutrophaワP(3HB)生 合 成 機 構 を 参 考 に してacetateを 原料 とし たP(3HB)酵 素合成系の構築を試みた。acetylーCoA synthetase (Acs)、glucose dehydrogenase (GDH)、ロ―

ketothiolase (PhaA)お よびNADPH−dependent acetoacetyl‑CoA reductase (PhaB)を用いてモ ノマ ー合 成を 行っ たと ころ 、CoAをり サイ クル、NADPHを 再生しながらモノマー合成可能である こと が明 らか とな った 。反 応系 にPhaCを 添加してポリマ ー合成を試み、反応液が白濁すること を確 認し た。 生じ た沈 殿物 を集 めク ロロ ホルム抽出し、 メタノールを添加したところ白い沈殿 物が 得ら れた 。d−クロロホルムに溶解してIH NMR解析し たところ、P(3HB)であると判明した。

合 成 さ れ たP (3HB)のMwお よ びMnは3Xl06 g/mol以 上 で あ り、 分散 度は1.5以下 であ った 。 合成 され たP (3HB)量を もと にCoAの りサ イ クル 回数 およ びNADPH再生 回数を計算したところ、

それぞれ少なくとも26回反応していることが確認 された。

  第6章は総括であり 、本研究で得られた成果についてまとめた。

  本研 究に おい て新 規のPHA合 成酵 素遺 伝子 群を 発見 し、 機能 の解 析を 行 った 。さ らに 、PHA 合成 酵素 群を 用い 、補 酵素 のり サイ クル お よび 再生 を有 したPHA合成 系の構築に成功した。本 反応系では用いる酵素や原料を改良することで様 々なモノマーを合成可能であると考えられる。

さら に微 生物 体内 では 合成 でき ない よう なモノマーの合 成も可能となり、新規の特性を有する PHAの合 成が 期 待で きる 。今 回ク ロー ニン グに成功したBacillus sp. INT005由来PHA synthase は広 い特 異性 を有 する こと から 、こ の酵 素合成系ヘ応用 することで新規のモノマーから構成さ れる新規PHAが合成可 能となると期待できる。

  これ を要 する に、 著 者は 生分 解性 プラ スチ ックPHA合 成に関する新規の酵素群の 遺伝子クロ ー ニン グに 成功 する と とも に、 それ ら酵 素群 と補 酵素 のり サイクル系を構築し、PHA合成のバ イ オリ アク ター 化の 基 礎的 知見 を得たものであり、生物化学工学、酵素工学に対し て貢献する と ころ 大な るも のが あ る。 よっ て著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与さ れる資格あ る もの と認 める 。

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参照

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