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博 士 ( 工 学 ) 柏 村

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 工 学 ) 柏 村    聡      学位論文題名

Hierarchical DNA Memory Implemented in Nested PCR     (Nested PCR を利用した階層型DNA メモりの構築に関する研究)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  近 年,DNAの高 い安 定性 , 高い 情報 密度 ,微 小性 などの優れた性質に着日して,DNA をナノ構造体や分子マシン等の構成素材として利用する 試みが注目されている.その1つ に , DNAを 記 憶 媒 体 と し て 利 用 す る メ モ リ (DNAメ モ リ ) の 開 発 が あ る .   DNAメモりは,高い情報密 度を持った大容量情報媒体や,すかしの媒体等への適用が期 待されている.しかし,それらを実現するには,まだ解決すべき問題が数多く存在する.

そのーっとして,データの読み出しエラーが挙げられる.従来のDNAメモりの読み出しは,

目的 デー タの アド レス に対 応するDNA配列に相補鎖を結 合させて取り出すことで行われ ている.しかしながら,DNAは相補鎖以外にも結合するために(非特異的結合),非目的 DNAも多 数取 り出 され ,結 果 とし て, 目的 デー タの 読み出しが妨げられる.さらにDNA メ モ り の 大 容 量 化 に 伴 いDNA分 子 数 が 多 く な る と ,本 問題 はよ り一 層深 刻化 する .   本学位論文は,大内・山本によって提案された階層ア ドレスをNe8tedP(mによって段 階 的 に 指 定 す るDNAメ モ リ モ デ ′ レNe8tedPrimerMolecularMem0でy(NPMM) によ る 大容量DNAメモりの実現を目 的とした研究成果について述べている.主要な成果は以下に 示す通りである.

(1)DNA配列設計アルゴリズムの開発:

    大容 量化 に伴 ってDNA配列数が増加すると,非特異 的結合が増加する問題を解決す     るた め, 非特 異的 結合 を起こさないDNA配列を従来 よりも多量に設計可能な手法を     開発 して いる .本 アル ゴリ ズム によ り, 大容 量NPMMを表現するために必要な多数     のDNA配列が確保された .

(2)NPMMの限界容量の理論 的考察:

    NPMMが 適 切 に 動 作 可 能 な 物 理 的 な 条 件 を 定 義 し ,NPMMが 適 切 に 動 作 可 能な 要     件に つい て理 論的 な考 察を 行っ てい る. これ によ り,NPMMを適切に動作させるた     め に は , 保 存 デ ー タ を 数 億 種 類 以 下 に す る 必 要 が あ る こ と が 示 さ れ た .

(3)大容量NPMMの実証実験 :

    百 万 種 類 の デ ー タ を 保 存 し たNPMMを 大 容 量DNAメ モり のテ スト ベッ トと して ,     大容 量NPMMの 実証 実験 を行 って いる .実 験結 果よ り,読み出しの阻害因子である     非 目 的DNAの 抽 出 を 抑 え , 大 容 量NPMMか ら 目 的デ ータ の読 み出 しが 正確 に実 行     されることが確認された.

    ―1035−

(2)

  各章の内容を以下に要約する,

  第1章で は ,DNAの 性質 とDNAメ モ り に関する 従来研究 を概観 し,研究 背景・ 研究意 義について述べている.

  第2章 で は ,NPMMの説 明 を 行っ て い る. ま た ,27種 類 のデ ー タ を格 納 し たNPMMを 用いて, 目的のDNA集合が段階的に取り出され,最終的に目的のデータのみが取り出され ることを初めて実証している.

  第3章で は ,NPMM大容 量 化 に伴 うDNA配 列 数 の増 加 が ,非 特 異 的結合を 増加さ せる 問題に対する解決法を主として述べている.ここでは,HDと呼ばれる配列間の相補塩基数 に基 づ ぃ たDNA結合 強 度 を測 る 指 標を 用 い ,HDが 閾 値以 上 のDNA配列を 探索す ること で,非特 異的結 合を防ぐDNA配列 集合を 求めてい る.ま た,閾値 を大きく超えたHDを持 つ配列は ,他の 配列生成 の阻害因 子とな ることが確認されたため,閾値付近のHDを持つ DNA配 列の みを 設計す る手法を 提案する ことに より,従 来より も多くのDNA配 列が設計 可能であることを示している.

  第4章 で は ,NPMMの限 界 容 量を 理 論 的に 考 察 して い る . ここ で は ,NPMMを 正 し く 動作させ るため の理論的 ・物理的 条件を 制約条件として,NPMMの記憶容量を最大化する 組み合わ せ最適 化問題を 定式化し ている .全探索により最適解を求めることによって,

NPMMが適切に動作可能な記憶容量・アドレス構成を示している.

  第5章で は , 第3章 , 第4章 の 結果 を 踏 ま えて ,1万種 類 の デー タを 格納す るNPMMを 対象とし,目的のデータの読み出しが実行可能であることを化学実験によって示している.

しかしな がら, 非目的DNAの抽出 も同時 に確認さ れたた め,その 原因を考察している.

  第6章 で は , 第5章 で 考 察 さ れ た 問 題 点を 解 決 する た め ,NPMMの配 列 設 計指 針 と NPMMのアドレ ス構成 を改善し ている ,それら を踏ま えた化学 実験の結 果,100万種類の データを 格納す るNPMMから, 目的の データの読み出しが高精度に実行されることを示し ている.

  第7章では,本学位論文の結論について述べている.

1036

(3)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査    教 授    大 内    東 副 査    教 授    大 森 隆 司 副 査    教 授    和 田 充 雄 副 査    助 教 授    山 本 雅 人

     学位論文題名

Hierarchical DNA Memory Implemented in Nested PCR     (Nested PCR を利用した階層型DNA メモりの構築に関する研究)

  DNAは,高い安定性,高い情報密度,微小性等の記憶 媒体としての優れた性質を有して お り, 近年DNAを記 憶媒 体 として用いたメモリ(DNAメモ リ)の開発が進められている.

DNAメモりは,高い情報密度を持った大容量記憶媒体や ,高い機密性を持った透かし媒体 等への運用が期待されてい る.しかしながら,それらを実現するためには,まだ解決すべ き問題が数多く存在する. 特に,データの読み出しエラーの抑制は重要な課題である,従 来 のDNAメ モり の読 み出 し は, 目的 デー タの アド レス に対応するDNA配列に相補鎖を結 合させて取り出すことで行 われている.しかしながら,DNAは相補鎖以外にも結合するた めに(非特異的結合),非目的のアドレスに対応するDNAも多数取り出され,結果として,

目 的デ ータ の読 み出 しが 妨げ られ る. さら にDNAメモ りの大容量化に伴いDNA分子数が 多くなると,本問題はより ー層深刻化する.

  本学位論文は,大内・山本によって提案された階層ア ドレスをNested PCRによって段 階 的 に 指 定 す るDNAメ モ リ モ デ ルNested Primer Molecular Memory  (NPMM)によ る 大容量DNAメモりの実現を目的とした研究成果について 述べている.主要な成果は以下の 通りである.

(1)大容量NPMMのためのDNA配列設計手法の開発:

    大 容量NPMMを表 現す るた めに は, 非特 異的 結合 を 起こ さな いDNA配 列を 多量 に設     計する必要がある.一 般に,DNA配列数が増加すれ ば,非特異的結合が起こりやすく     なる傾向があるため, 多数のDNA配列を設計するこ とが困難である.そこで,非特異     的結合を防ぐための性質と多数の配列を生成するための性質を考察し,,これら2つの     性質を併せ持ったDNA配列のみを選択的に設計する 手法を提案することにより,大容     量NPMMを 表 現 す る た め に 必 要 な 多 数 のDNA配 列 を 確 保 し て い る .

(2)NPMMの限界容量の理論的考察:

    理論的・物理的な制約のために,NPMMの容量には限 界がある.この限界値を考察す

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(4)

  る ため に ,NPMMを正 し く 動作 さ せ るた め の 要件 を 制 約 条件 と し て,NPMMの 記 憶   容量を 最大化する組み合わせ最適化問題を定式化している.全探索により最適解を求   めるこ とにより ,NPMMが適 切に動 作可能な 理論的な 限界容 量と,それを達成するた   めのア ドレス構 成を提 示してい る.

(3)大容量NPMMの実証 実験:

    (1),(2)の結果を踏まえ,百万種類のデータを保存した大容量NPMMの実証実験   を行っ ている. 本実験 結果を通 して,データ読み出しの阻害因子である非目的DNAの   抽出を 抑え,大 容量NPMMか ら目的 データの 読み出し が正確 に実行されることを実証   してい る.

  こ れを 要 す るに , 著 者は , 大 容量NPMMを表現す るため に必要な 多数のDNA配列 を確 保 す る ため のDNA配 列 設計 法 を 提案 し ,NPMMが 動作可能 な限界 容量の理 論値を 求めて い る . さら に , 大容 量NPMMの 読み 出 し を実証し たもので あり,DNAメモ りの開 発及び 複雑系工学の進歩に寄与するところ大なるものがある.よって著者は,北海道大学博士(工 学)の学位を授与される資格があるものと認める.

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