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圧縮空気の硬岩内貯蔵に関する研究 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 中 田 雅 夫

学 位 論 文 題 名

圧縮空気の硬岩内貯蔵に関する研究 学位論文内容の要旨

  夏場あるいは昼間に先鋭化する電力負荷の平準化を図るための電力貯蔵技術とし て、 圧縮空気 エネルギー貯蔵ガスタービン発電システム(CAES‑Gf)が注目されて いる。このシステムでは、夜間などのオフピーク時の余剰電カを数NIPaの圧縮空気に 変換し、地下深部の岩盤内に設けた空洞に貯蔵しておき、電カのピーク時にこれを利 用して発電を行うものである。

  従来、CAES‑Gfシステムは圧縮空気を岩塩空洞に貯蔵する方式だけが成功してい る。岩塩のないわが国でこのシステムを実現させるために、圧縮空気の硬岩内貯蔵の 実用化を目的として本研究を進めた。亀裂を含む硬岩中の空洞に圧縮空気を貯蔵する ためには、人工的な気密を施す必要がある。また、わが国においては空洞の出入口に 設ける耐圧プラグの合理的な設計・施工法が確立されていない。この2っを低コスト で実現するための技術開発を本研究の目的とし、必要な調査・設計と室内試験を実施 した。そして、研究開発した要素技術の実用性を総合的に検証するために、神岡鉱山 の硬岩を対象に諸調査を行った上で、原位置貯蔵試験施設を構築し、種々の実験を試 みた。本論文はこれらの諸研究を通して得られた知見を8章に亘って述べたものであ る。各章の概要は以下のとおりとなっている。

  第1章は序論で、本研究の目的と意義にっいて記載するとともに、既往の研究をま とめている。

  第2章 は 、CAES ‑ G/Tシス テ ムを 構 成 する 地 下 構造 物 であ るCAES空 洞と 耐 圧プ ラグを硬 岩中に設 けるにあ たっての 設計法を提 案してい る。発電 諸元が与 え ら れた と き に、CAES空 洞の 深 度 を決 定 する 方 法 と、 空 洞の気密 方式を岩 種 に よ って 選 択 する 基 準と を 明 らか に して い る 。ま たCAES空洞の出 入口に設 置 する プラグは 、耐圧性 の観点か らコニカ ルプラグが 有利であ ることを 指摘した 上で 、数値計 算に基づ ぃて合理 的な形状 を提案し、 さらに鉄 筋コンク リート製 とす べき根拠 を示して いる。本 研究で提 案するプラ グの長さ は、従来 の代表的 な 設 計法 に 従 って 求 めた 値 の1/3と なり大幅 に短くなる ことを見 出してい る。

  第3章 は 、 圧 縮 空気 の 硬 岩内 貯 蔵に よ るCAES‑G/Tシ ス テ ム計 画 を 立ち 上 げ てか ら硬岩内 空洞が完 成するま でに行う べき調査内 容とその 流れを具 体的に示 した 後、神岡 鉱山にお ける貯蔵 試験施設 の建設に先 立って実 施した周 辺の地質 と岩 盤状況の 調査結果 ならぴに 種々の原 位置試験と 室内試験 結果にっ いて記し てい る。貯槽 空洞軸に 沿った水 平ボーリ ング孔での 真空透気 試験から 、試験坑

(2)

道に 沿う 岩盤 の透 気係 数に っいて1.2X10・7cm/sの平均値を得、この値を基に漏 気量を評価して、素堀り空洞でも気密性能は十分にあるという判断を得ている。

また 、坑 道壁 から 奥に 拡が るゆ るみ の深 さに ついて 、弾 性波トモグラフィー、

RQD、透気試験から、Im前後という評価を得ている。

  第4章は、提案したコニカル形状の鉄筋コンクリート製プラグの耐圧性能を確認す るために行った縮尺模型試験にっいて記している。模型プラグの載荷試験によって、

プラグの加圧側から反力側端面の左右の支承部に向かう応カの流れが形成されるこ と、プラグは最終的には圧縮破壊を起こして構造体としての耐カを失うことなどを明 らかにしている。また、メンブレン方式による気密工法を原位置空洞で採用すること を想定して、最適なメンブレン材を見出すために、耐圧容器を用いた気密性能試験を 行い、吹付け施工が可能で経済陸に優れたゴムアスファルト.エマルジョンを中心と し た3層 の 気 密 ラ イ ニ ン グ 構 造 が 要 求 性 能 を 満 た す こ と を 確 認 し て い る 。   第5章は、神岡鉱山の地下深部の硬岩中に建設した223m3の容積を持っ坑道タイプ の素堀り空洞と長さ7mの鉄筋コンクリート製のコニカル形標準プラグについての施 工実績を述べている。

  第6章は、建設した貯蔵試験施設の気密性能と耐圧性能に関する試験結果にっいて 述べている。素掘り空洞は0.6MPaの圧縮空気を保持するために、3.5 kg/min〜15kg/min の空気供給を必要とし、要求される貯蔵性能を全く満たさないことが判明したために、

空洞壁にゴム・アスファルトによるメンブレンを施工したが、調査の結果、貯蔵空洞 周囲の不連続面やプラグー岩盤境界が貯蔵された圧縮空気の漏気経路として卓越し ており、採用した気密対策では、これら2つの経路を完全にシールすることができず、

吹付けによるメンブレン工法は実用の水準に達していなぃことを明らかにしている。

一方、最大4.5MPaの水圧を負荷した耐圧試験において、当該プラグの長さは従来の設 計法に基づいた値の1Bしかないにもかかわらず、貯蔵圧を受けたプラグとこれに接 する反力側の岩盤は弾性的な挙動をしており、力学的に安定であることを確認してい る。

  第7章は、岩盤の透気係数から予想される空洞の気密性能を素堀り空洞で達成でき ない原因を明らかにしている。その上で、泥水工法を実証試験空洞に適用し、作業が 能率的でかつ短時間で済むこと、ならぴに、達成された気密性能は必要な水準に達し ていること、を確認している。

  第8章は、結諭で、2〜7章において得られた知見について簡単にまとめている。

(3)

学位論文審査の要旨 主査    教授    石 島洋二 副査   教授   金子勝比古 副査   教授   三田地利之 副査    教授    三 浦清一

学 位 論 文 題 名

圧縮空気の硬岩内貯蔵に関する研究

  電 力 貯 蔵 の 一 方 法 であ る 圧 縮空 気 エ ネル ギ ー 貯蔵 ガ ス ター ビ ン 発 電(CAES‑Gf) シス テ ム は、 オ ブ ピー ク時 の余剰電 カを数MPaの圧 縮空気に 変換し 、地下深 部の岩 盤 内に 設 け た大 容 量 の空 洞(CAES空 洞) に 貯 蔵し て お き、 電 カ のピ ー ク 時に こ れを利 用し て ガ スタ ー ビ ン発 電 を 行 うも の で ある が 、 現在まで に、CAES空 洞を岩塩 内に設 ける方式 だけが 実用に供 されて いる。本 研究の 目的は、 岩塩のな いわが 国でこのシス テムを実 現させ るために 、圧縮 空気の硬 岩内貯 蔵技術を 確立する ことに ある。硬岩は 内部に必 ず亀裂 を含むた めに、 空洞には 人工的 な気密処 理を施す 必要が あり、また、

空 洞 の 出 入 口 に 打 設 す る耐 圧 プ ラグ も 高 い気 密 性 能が 要 求 され る 。 本 研究 で は 、 CAES‑Gfl'シ ス テ ム を低 コ ス トで 実 現 する た め に必要 なこれ ら2っ の要素技 術にっ い て 、 合 理 的 な 設 計 ・ 施 工法 を 考 案し 、 室 内試 験 を 実施 し て 性能 を 調 べ 、そ の 上 で CAES‑Gfl'シ ス テ ム の実 用性を総 合的に 検証する ために、 神岡鉱 山におい て実規 模の 貯 蔵 試 験 施 設 を 構 築 し 、 種 々 の 原 位 置 実 験 を 行 っ た も の で あ る 。   以下、 本論文各 章の成果 を要約 する。

  第1章で は 、 研究 の 目的 と意義を 明らか にすると ともに、 関連す る既往の 研究を ま とめ、本 研究の 位置づけ をして いる。

  第2章 で は 、 発 電 諸 元 が 与 え ら れ た と き に 、CAES‑G/Tシ ス テ ム の た め の 硬 岩 内 空 洞 と 耐 圧 プ ラ グ を 合 理 的 に 設 計 す る 手 順 に っ い て 述 べ 、 岩 種 に よ っ て 空 洞 の 気 密 方 式 を 選 択 す る 基 準 を 明 ら か に す る と と も に 、 応 力 解 析 に 基 づ ぃ て コ ニ カ ル 耐 圧 プ ラ グ の 形 状 と 材 料 を 決 定 す る 根 拠 を 示 し て い る 。   第3章 で は 、CAES空 洞 を 構 築 す る 硬 岩 の 透 気 係 数 お よ び 空 洞 周 囲 に 発 達 す る ゆ る み の 調 査 、 な ら ぴ に 初 期 地 圧 お よ び 岩 盤 強 度 の 測 定 な ど が 重 要 で あ る こ と を 指 摘 し た 上 で 、 こ れ ら の 調 査 ・ 測 定 方 法 を 神 岡 鉱 山 の 原 位 置 試 験 場 に 適 用

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し、得られた諸結果について述べている。

  第4章では、提案したコニカル形状の鉄筋コンクリート製プラグの耐圧性能を確認 するために行った縮尺模型試験にっいて記し、圧カを受けてプラグ内に発生する応力 状態を詳細に解析するとともに耐圧性能を評価する方法を示している。また、メンブ レン方式による気密工法を採用することを想定して、耐圧容器を用いた気密性能試験 を 行 い 、 要 求 さ れ る 性 能 を 満 た す メ ン ブ レ ン 材 を 見 出 し て い る 。   第5章では、神岡鉱山の地下深部の硬岩中に、223m3の容積を持つ坑道タイプの素 堀り空洞と長さ7mの鉄筋コンクリート製のコニカル形標準プラグを施工した実績に っいて述べている。また、CAES空洞の漏気・漏水の発生個所と発生量を評価する原 位置試験法にっいていくっか提案している。それらの内で、簡単な方法によって漏水 の発生個所と量を知ることができる水張り試験法は著者の独創になるものである。

  第6章では、建設した空洞の気密性能と耐圧性能に関する試験結果について述べて いる。まず、圧縮空気の漏洩量と漏洩箇所の調査を行い、素掘り空洞は要求される貯 蔵陸能を全く満たさないこと、空洞壁に施したゴム・アスファルトによるメンブレン は、空洞周囲の不連続面やプラグ―岩盤境界などの卓越漏気経路を完全にシールでき ないことなどを見出している。っぎに、圧縮空気の空洞への出入りに伴う熱損失が空 気漏洩に伴うもの以外に、空洞周囲岩盤への熱伝導によってもたらされることを明ら かにしている。最後に、最大4.5MPaの水圧を負荷した耐圧試験において、当該プラグ の長さは従来の設計法に基づいた値の1/3しかないにもかかわらず、貯蔵圧を受けたプ ラグとこれに接する反力側の岩盤は弾性的な挙動を示し、力学的に安定であることを 明らかにしている。

  第7章では、岩盤の透気係数から予想される空洞の気密性能をメンブレン工法によ って達成できない原因を明らかにするとともに、泥水工法と名づけた工法を新たに提 案し、その特徴を明らかにしている。そして、原位置で予想されるき裂開口幅に対処 し得る泥水を設計し、本工法を神岡鉱山に建設した空洞に適用し、作業が能率的であ り短時間で済むこと、ならびに、気密性能が必要な水準に達していることなどを見出 している。

  第8章は、本研究の結論であり、得られた知見を総括し今後の展望と課題を述べて いる。

  これを要するに、著者は、圧縮空気を貯蔵するCAES空洞を硬岩内に構築すること に関して、要求される品質を満たす設計・施工が可能であることを実規模原位置試験 で実証しており、地下貯蔵技術ならびに岩盤工学の発展に貢献するところ大なるもの がある。よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと 認める。

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