Title
パインアップル果実中の糖類、有機酸類の分離固定(第1
報)
Author(s)
比嘉, 信吉; 屋我, 吉一; 大城, 豊政
Citation
沖縄農業, 7(1): 31-35
Issue Date
1968-05
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/1067
Rights
沖縄農業研究会
パインアップル果実中の糖類、有機酸類の分離固定(第1報)
比嘉信吉・尾我吉一・大城豊政
(琉大農化)(沖縄煙草)(オリエンタル煙草)ShinkiChiHiga,YoshiichiYaga,andToyomasaOshiro:Separationandldentificationof
SacChoroidandorganicacidsinfruitofpinapPle(1)
第1図糖類試料調整法I緒
一 目 パイン果実 パインアヅプル果実中の糖および酸類については多く の研究があるが,それは食品加工資料上から検討された ものが多い。例えばBrix,pH等の果実生育期間中の変 化などである.しかし,どのような種類がどれだけ含ま れているかということについては研究が少ないようであ 1) ろ.現在までに知られている糖類としては蕨糖の外に転 2) 化糖カヌ含まれていること,酸類としてはクエン酸,酒石 酸,リンゴ酸が含まれることなどである.筆者等はこの 成分を追究することは食品加工の面ばかりでなく生物学 的にも意義をもつものと考え,先づペーパークロマトク ラフイーによってパインアップル果実中の糖類および酸 類を分離固定し,さらに定性反応(酸類のみ)によって も確認することができたので,取敢えず第1報として報 告する.]I実験方法および結果
1糖類 A試料の調製法 糖類試料の調製は第1図および下記補足説明の順序で 行なった. 1)パインアップル果実は1967年12月26日羽地村字源河 より,スムースカイエン種の5果を採取し,糖類および 酸類分析の試料とした. 2)除蛋白は中性錯酸鉛Pb(CH3CO2)3Hz0の飽和液老 沈でんが生じなくなるまで加える.さらに過剰の錯酸鉛 を除くため炭酸ソーダを加えろ過する. 4) 3)イオン交換樹脂処理:除蛋白したろ液は前処理した イオン交換樹脂(AmberliteCG-120Na型,Amberlite lR-4BOH型)を順次にとおして糖以外の物質をできる だけ吸着せしめろ. 4)濃縮:イオン交換樹脂より流出した糖質果汁は60° Cの温湯で,ロータリーエパポレターによって約10剛ま ←-果頂,果底,果皮,果芯除去 ←-細断,破砕(ホモジナイザー) 毛-ガーゼ2枚重ね,搾汁 11 搾汁’100桃1-遠心分離(3000回転15分)
'上清 ←-除蛋白 ←-濾過 濾液’80砿Iイオン交換樹脂処理
流出液’60秘l濃縮(ロータリーエバポレター)
濃縮液l60oC
義一′・愚|Ⅳ
で濃縮し,ペーパークロマトグラフィ用試料とした. 5)糖類の標準試料はすべて水で約1%溶液としてスポ ットした. 5) Bペーパークロマトグラフィー実験 1)ろ紙はすべて東洋ろ紙No.50を使用し,原線上2“ 間隔に濃縮試料およびスタンダード溶液を径51,Mz位にス ポットし,室温,上昇法によって15~17噸位に1次元展 開を行なった. 2)溶媒は(a)、-プタノール:酢酸:水(4:1:5) (b)n-プタノール:ピリジン:水(2:3:1.5)の2 種類を,発色剤はアニリンフタル酸を用いた. 3)実験は(a),(b)2種類の溶媒を用いて各2回以上展開 を行なった.沖縄農業第7巻第1弓(1968) 32 C実験結果 1)溶媒(a)による展開結果は第2図のとおりで濃縮試料 のスポットは明らかに3つに分離しており,そのRf値 はスタンダードの糖類(薦糖,葡萄糖,果糖)のRf値と 一致していることを3回の実験から確認できた. 4)有機酸のスタンダード液はすべて濃縮液同様にpH 調整,アンモニア塩またはエステル化してヒドロオキサ ム酸として標準試料を調製した. Bペーパークロマトグラフィー実験および結果 1)クロマト用ろ紙,スポット間隔,展開法等はすべて 糖類に準じ,1次元展開を行なった. 2)溶媒および発色剤は各表のとおりである. 3)実験結果は下記,第1,第2,第3表のとおりであ る. 第2図溶媒(α)による展開 Rf値09876543210 結果 ●●●●●●●●●● 1000000000 第1表水蒸気蒸溜によって得た濃縮液をアンモニア 塩とした場合のペーパークロマトグラフィー 実験結果 (1)溶媒n-プタノール:1.5N,NH3(1:1) 発色剤:プロムフェノールブルー
◎0.265
00.19 .○ 0.1020.102 ◎ 0.26 0 0.19孟讓塗=~|発色強度|展開距離|移動距離|Ⅲ[
試料薦糖葡萄糖果糖
iliI
lll
董ポョ勤
酢酸|カブ。ン酸i
プロピオン酸’
0.0231 0.019 0.10 0.52 0.41 0.5 0.4 + + 十+++十 2)溶媒(b)の展開結果からは環縮試料が第2図のように 分離しないで,一点となり,そのRf値は0.75であった. またスタンダードの蘇糖,葡萄糖,果糖溶液のRf値も 0.71,0.75,0.76と接近し,判定ができなかった. 2.141 11.1818.821
|酢
|カブ
|プ。
2酸類 A試料の調製法 酸類試料の調製は第3図および下記補足説の順序によっ て行なった. 6) 1)前処理した果汁(上清)は常法により,水蒸気蒸 溜,エーテル抽出,イオン交換樹脂法で,できる限り酸 以外の物質を除去して試料調製を行なった. 6),7),8) 2)イオン交換樹I旨法では前処理したAmberliteCG‐ 400CO3型およびAmberlite[R-120H型を順次使用し て有機酸を吸着せしめ,1N炭酸ナトリウムおよび1N 硫酸アンモンで溶出した.溶出液はロータリーエパポレ ターを用いて45゜~47°Cの温湯で約20カMm'に濃縮した. 3)前記3法によって得た濃縮液は定性反応供試料とす る外,pH7.5~9.0のアンモニア塩としてペーパークロ マト用とした.またイオン交換樹脂法による濃縮液は上 9) ドロオキサム酸法によるペーパークロマト用試料調製も 行なった. (2)溶媒95%アルコール:濃NH3(100:1) 発色剤:ブロムフェノールブルー1-~~実験区分’
発色強度展開距離移動距離lRf値
|酸の種類~~濃縮試料|
#…iim
lプロピオン酸’ 25.01 24.812481
25.125.11
0.781
7441
M31
16.32,,.041
0.0311 0.30 0.34, 0.65 0.44 十 十 ++ 十十十+十比嘉・屋我・大城:パインアップル果実中の糖類、有機酸類の分離同定 33 第3図酸類試料調製法 風乾 果底除去 破砕(ホモジナイザー) 2枚重ね搾汁 遠心分離(3000回転15分) 上漬llOOml lOOml 上漬 100mI (2以下)調整 (硫酸酸性) pH(1.4~2.6)調整 (硫酸酸性) 醜樹脂処j1f 水蒸気蒸溜(A) エーテル抽出(B) 受器に5%NaOH50ml を入れ試料の3倍容を 溜出せしめる ぐ--連続抽出40br 溶出液
」300m’
濃縮(60。’ 抽出液 )溜出液l300ml
-R縮,…肱,ト鞠テ獺」
濃縮液l20ml 5m’ lOmI 濃縮液辮灌L,幕
液一ス lOml pH(7.5~9.0)調整 (アンモニア塩) ←-pH(7.5~9.0)調整(アンモニア塩) テル化ロオキサ(アンモニア塩)kヒド
酸 ム ペークロ試料 ペークロ試料 ペークロ意i科FiLi
「
pHし
パイン果実 上清 イオン (C)交換樹脂1m理沖縄農飛業…第7巻第1号(1968) 34 第3表⑧,(c)法によって得た濃縮液をヒドロオキサ ム酸とした場合のペーパークロマトグラフィ ー実験結果 第2表エーテル抽出(B),交換樹脂法(C)によって得た 濃縮液をアンモニア塩とした場合のベーパー クロマトクラフィー実験結果 (1)溶媒:アルコール:NH3:水(80:5:15) 発色剤:アンモニア性硝酸銀 試料lRt値|試料IRt値
⑧濃縮試料'8:i1,M6マレイン酸|M2
,-醜M7轍プリM4
鯵酸U72HBフ蓮カブ。OBO
コハク酸'077鼠ロピオンJ02O
酒石酸10.32’ギ酸0.008
Lリンゴ酸Ⅲ61酢酸Ⅲ0
烈芝lIiii’:濃縮試:」癖…
溶媒イソアミルアルコール:ギ酸:水(75:25:75) 発色剤:5%塩化第2鉄のアルコール溶液 第4表定性反応試験結果hi1l恥'1
特料川
。:蕊
○鯛■
〒・棚’
Rf 0.68 0.68iiWtl
'・濃縮試料'1:Mo8,
0.605 0.732 0.645 0.80 082 0.5試料|(A)液,(B)液,に)液
(2)溶媒:n-プタノール:ギ酸:水(4:1:1) 発色剤:0.1%プロムフェノールプルー 反応 リンゴ酸反応 +++ 十十試料Rfm試料|Rt値
臓)濃縮試料lIw754マ川ン酸|Ⅲ
〃〃l8w7551呈藪川1
酒石酸〃〃 リンゴ酸〃〃 + 備考1.クエン酸反応は石灰水,酢酸鉛,酢酸バリウ ム添加反応によって判定した. 2.酒石酸反応は,硝酸銀添加反応によって判定 3.リンゴ酸反応はカメレオン,酢酸銀,硝酸銀 反応によって判定. b第1表の(1)(2)から果汁濃縮試料のRf値は他のいづ れの揮発性酸に比較しても異なっていることがわかる.従って試料中にはこれ等の揮発性酸以外の物質が存在し
ていることが窺わオ'iii.
c定性反応試験 上記の含有酸をさらに確認するため(A),(B),に)の濃縮 液について,クエン酸,酒石酸,リンゴ酸反応を行なっ た結果第4表を得た.讓筥。I釘
ii鯛l1lLi1J
 ̄------ 0756 ○クエン酸 鯵酸 コハク酸 ○酒石酸 ○L-リンゴ酸 0.15 0.619 0.842 フマル酸 0.79 マロン酸 0.480 a第2~3表から果汁濃縮試料のスポットは明らか に3つの成分が分離しており,そのRf値はスタンダード の酸類(クエン酸,酒石酸,リンゴ酸)のRf値とよく一 致していることがわかる.Ⅲ考察
1第2図の実験結果より,冬実果実中には蕨糖,葡 萄糖,果糖の存在が認められるが溶媒(b)の展開実験から比嘉。屋我・大城:パインアップル果実中の糖類、有機酸類の分離同定 35 マトグラフィーおよび定性反応(酸類のみ)試験を行な った結果,糖類では,蕨糖,葡萄糖,果糖の存在が認め られ,有機酸類ではクエン酸,酒石酸,リンゴ酸の外未 知の揮発性の物質が含有されることを確認した. 引用文献 1)渡辺正一1961.パインアップルの栽培と加工 2)緒方邦安1963.園芸食品の加工と利用:57 3)尾崎準一1955.果汁ハンドブック(下巻):596 4)佐竹一夫1960.クロマトグラフィー:45~46 5)紫田村治1959.ペーパークロマトクラフ法の実際 :12~28,94~97 。)東大農化教室1963.実験農芸化学(下巻):502 ~504 7)山口一考1946.植物成分分析法(下巻):215~216 8)本田,垣花,吉野1963.イオン交換樹脂:115~ 131,248~251 9)井上,野田1951.農業化学会誌24:291 1o)宮道悦男1949.植物成分研究法:83~85 }よ試料を各糖類に分離することができなかった.今後他 の展開溶媒も検討すると同時にさらに定性反応によって もこれを確認し,定量まで実施することが必要と考え る. 2酸類では前記のペーパークロマトグラフィー実位 および定性反応の結果から明らかにクエン酸,酒石酸, リンゴ酸を含むことが確認できたが,今後それらの定量 も実施する必要があり,またこのような低級脂肪酸ばか りでなくさらに高位の脂肪族および芳香族有機酸につい ても検討しなければならないと考えろ. 3第1表の(1)(2)の試料側からRf値0.023,0.031の験 置にある未知の物質が検出された.一般の水蒸気蒸溜法 では揮発性酸(ギ酸,酢酸,プロピオン酸,カプロン酸 など)を分離するといわれているが,それぞれのスタン ダード酸のRf値とは明らかに異なっており,今後さらに 検討する必要があろう.