Title
[報文]黒糖より分離した抗酸化物質
Author(s)
高良, 健作; 松井, 大吾; 和田, 浩二; 仲宗根, 洋子
Citation
南方資源利用技術研究会誌 = Journal of the society tropical
resources technologists, 15(1): 11-15
Issue Date
1999-10-01
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/14161
黒糖 より分離 した抗酸化物質
高 良 健 作 ・松 井 大 書 ・和 田 浩 二 ・仲宗根 洋 子
●琉球大学農学部
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KensakuTAKARA,DaigoMATSUI,KojiWADA andYokoNAKASONE
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uLture,UniversityoftheRyukyus,Senba7
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,Nishihara,Okinawa903-0213,Japan緒 言 黒糖は独特の風味をもちあわせ 、多 くの ミネ ラル成分が含 まれた甘味素材である1)。 この黒 糖中に原料のサ トウキ ビに由来す る多 くのフ ェ ノール性化合物が存在す ることが知 られ るが、 これ らは黒糖 におけ る着色物質やその前駆物質、 も しくは揮発性物質2)と して取 り扱われてきた にす ぎず、これ ら非庶糖成分の詳細 な研究は完 全でない。 これ まで著者 らは、黒糖か ら分離 したフェノー ル性化合物が リノール酸の 自動酸化を抑制す る 作用を有 していることを明 らかに して きた3)0 日常に摂取す る植物性食品中の抗酸化成 分は単 に食品の酸化的劣化の抑制効果だけでな く、近 年生体内におけ る活性酸素、フ リー ラジカルに 起因す る酸化的傷害を抑制 し種 々の疾病の予防 に寄与す るものと して注 目されている4)。 本研 究では黒糖 よ り新たにフェノール性抗酸化物質 を分離 し、 リノール酸に対す る自動酸化抑制効 果とinvitT10の生体モデル系 におけ る抗酸化活 性について検討す ると同時に、黒糖 に含 まれ る フェノール化合物の成 分を明 らかにす ることを 目的と した。 ●沖縄 県西原 町千 原1番 地 実 職 1.試 料 試料 と しては宮古製糖株式会社多良間工場で 1996年に製造 された黒糖を供 した。 2.黒糖のジクロロメタン抽出および分離 抽 出および分離方法は既報3)と同方法にて行 っ た。す なわ ち、粉砕 した黒糖30kgをジクロロ メタンにて4回抽出を行い、 これ を まとめ て濃 縮 しジクロロメタ ン抽 出物 (20.6g)を得 た。 ジク ロロメ タ ン抽 出物 は シ リカゲ ル (Wako gelC-100;和光純薬 ) カラムにてn-ヘキサ ン および酢酸エチルのステ ップワイズにより分離 した。このうちn-ヘキサ ン :酢酸 エチル
-5
:5
、 3:7、および0:
10溶出画分をそれぞれ 濃縮後、シリカゲル(WakogelC-200:和光純 秦 )カラムにてクロロホルムおよびメタノールの 混合溶媒 によ り溶 出 した。溶 出 した各 画 分は LiChroprep Rp-8 (Merck)中庄 分取 用 カ ラ ムで粗精製 した後、最終精製 を0.01%ギ酸 を含 む水/ メタノールを移動相 と してODS-5 (250 ×8.0mm LD.野村化学 )分取用 カラムで行な っ た。各物 質 の純 度 は 、各 種 移 動 相 とODS・5 (250×4.6mm I.D.野村化学 )分析用 カラムを 用いて調べた。 3.構造解析I
R
測定 は フー リエ変換赤外 分光光度計FTS南方資源利用技術研究会誌 H
3
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H3Cこ
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OCHa R c_1:R=CHO D2:R=COOHこ
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2 E-2‥R幻CH3 CH2CN Ftg.1.ChemlCalstructureoftheisolatedcompoundsfrom Kokuto 3000(BIO-RAD)を用い、EIMS (70eV)は、 二重収束質量分析計M-2500(日立製作所 )で、 また、IH一、13C-NMRは核磁 気共 鳴装 置J NM-500(日本電子)にてCD。ODを溶媒 にNMRス ペク トル (lH :500MHz;13C:125MHz)を測 定 した。4.
リノール酸に対する過酸化脂質抑制能の測定 リノール酸に対する抗酸化力の測定 はOsawa らの方法5)を修正す ることによ り行 な った。 すなわち、メタノール に溶解 した試料 を10ml 容褐色バ イアル瓶 に取 り、溶媒を留去後、0.05 M リン酸緩衝液 (pH7.0)0.8ml、 リノール酸 (東京化成 ;生化学用 )0.052mlを含むエタノー ル(99.5%)0.8ml、及び蒸留水0.4mlを加え こ れを反応液 と し、40℃の恒温器に遮光状態で放 置 した。この反応液を経時的に100FLl採取 し、 75%ェタノール4.7m1、30%チオ シア ン酸 ア ン モニウム溶液0.1m1、0.02M塩化第 一鉄3.5%塩 酸溶液0.1mlを加えよく混合 し、正確 に3分後 に500mmの吸光度 を測定 した。 なお、結果 は 試料無添加区を100%とす る過酸化脂質量で表 した。 5.ヒドロキシラジカル消去能の測定2・deoxy-D-riboseは、Fenton反応 によ って 生 じたヒドロキシラジカル (・OH)により酸化 を受け、最終的にマロンジアルデヒド(MDA) へ と分解す る。 この系 において、TBA法 にて MDAを定量す ることにより測定試料が有する ・ OH消去能を測定 した6)7)。 最終濃度で試料2.5pg/mlに2-deoxy-D-ribose (ナカライテスク ;特級)1.4mM、塩化第二鉄100 〟M 、EDTA104〟M 、 リン酸緩衝液2叫 M、お よび過酸化水素125〟M を含む反応液 2mlを37℃ で2時間反応 させた後、TBA法8)により測定 し た。抗酸化活性測定値は、サンプル(S)、反応時 間0時間のサンプルバ ックグラウンド (SB)、試 料無添加区のコントロール
(
C)
、および試料無添 加区のバ ックグラウシド(CB)を用いて以下の 式によりヒドロキシラジカル生成阻害率 (%)と して評価 した。 ヒドロキシラジカル生成阻害率 (%) -(1
- (S-SB)/(C-CB))×100 結 果 1.黒糖から得 られたフェノール化合物 分離 した化合物の構造をFig.1に示 した。 ジ クロロメタン抽出物のシ リカゲル (Wako gel C・100)カラムにてn-ヘキサ ン/酢酸 エチル -5/ 5匝i分(-C画分 )よ り得 られたC-1、C-2 およびC-3の収量は、それぞれ24mg、64mg、1 2 3 1 2 3 1 2 a a a a Ef) d LL LLI
0
20 40 60 80 10
0
Lipidp飢)Xidation(%)Fig.2.Antioxidativeactivityofisolated compoundsfrom Kokuto bythiocyanato methodafter7days.BHA andTocopheroJ(Toe)wereusedasstanderd sample.Eachsampleof0.01%lnreaCttOnmixturewasused. Valuesare meana:standerddevlatlOn(SD).n-3. お よび12.3mgであ った。 C-1は、IR (cm 1 )` 3270,1670,1330,1105,EIMSm/Z:182(M+), 167,139,111,お よびlH-NMR [CD30D]6 : 9.81(1H,S),7.15(2H,S)3.96(6H,S)よ
り4-hydroxy-3,5-dimethoxybenzaldehyde (シリンジアルデヒド)と同定 され た9)。 C-2は、 IR(cm-1)3486,1680,1599,1300,EIMS
m/Z
:
168(M十),153,125,97,1H-NMR [CD30D]∂: 7.55-7.53(2H,m),6.83(1H,d,
∫
-8
.
5
Hz)
, 3.88(3H,S),また13C-NMR [CD30D]6:170.1, 152.6,148.6,125.3,123.2,115.8,113.8,56.4よ り3-hydroxy-4-methoxy-benzoicacid(イソバ ニ リン酸 )と同定 され た9)。 さ らに
C
-3
は、IR(cm 1)3320,1657,1261,1170,EIMS
m/
Z:
136 (M+),121,107,93,また1H-NMR[CD30D]∂:7.87 (2H,dJ-4.6Hz),6.83(2H,dJ-4.6Hz),2.51 (3H,S)よ り1-(4-hydroxyphenylトethanone (p-ヒドロキシアセ トフ ェノン)と同定された9)。 同様 に、n-ヘキサ ン/酢酸 エチル- 3/ 7画 分 (-D画 分 ) か らは D-1 (ll.2mg)、 D-2 (73.4mg)およびD・3(40.4mg)が得 られ た。 D-1はIR(cm 1)3400,1669,1331,1117,EIMS m/Z:226(M'),181,153,138,123,lH・NMR [CD30D]∂:7.31(2H,S),5.18(1H,dd,
∫-7
.
0
, 6.7Hz),3.90(6H,S),I.40(3H,d.I-7.0Hz), また13C-NMR [CD30D]♂:201.9,149.1,142.9, 126.2,107.7,70.0,56.9,22.0より2-hydr oxy-1-(4-hydroxy-3,5-dimethoxyphenyl)-1-pro panoneと同定 された。D-2はIR (cm 1)3470, 1678,1215,1115,EIMS m/Z:198(M+),183, 155,127,109, lH-NMR [CD30D] ♂:7.32 (2H,S),3.87(6H,S),また13C-NMR[CD,OD] ♂:170.0,148.8,141.7,122.0,108.3,56.8より 4Ihydroxy-3,5-dimethoxybenzoicacid(シリン ジ酸 )と同定 された9)。さらにD-3がIR (cm 1) 3400,1684,1271,EIMS
m/
Z:
194(M+),179, 133,1H・NMR [CD30D] 6:7.54-(lH,d,I
-16.0Hz)7.13(1H,S)7.01(lH,dd,∫-8
.
0
,
2.0Hz),6.77(1H,d,∫-8.5Hz),6.26(lH,dJ
-16.0Hz),3.85 (3H,S),また13C-NMR [CD。 OD]♂:171.1,150.4,149.3,146.8,127.9,123.9, 116.5,116.1,111.7,56.5よりれn
s
-
4-hydroxy-南方資源利用技術研究会誌 C・1 C・2 C-3 D-1 D・2 D・3 E・1 E・2 E・3 BHA 0.0 20.0 40.0 60.0
8
0
.
0
100.0 InMbftbnriLtO(%)Fig.3.HydroxylRadicalScavengingEffectsbydeoxyriboseoxidationmethod valuesaremeans±standerddeviation(SD).n-3.
cinnamicacid(trams-フェルラ酸 )と同定され た9)
。
シリカゲル(WakogelC-100)の酢酸エチル 溶出画分 (-E画分)からはE-1(4.3mg)、およ びE-2(55.8mg)が得 られた。E-1はIR (cmー1) 3400,1655,1278,1029,EIMSm/Z:196(M+), 178,151,123,1H-NMR[CD30D]♂:7.57(1H,d, ∫-8.2Hz),7.55(1H,d,∫-2.0Hz),7.32(1H,S), 6.87(1H,dJ-8.2Hz),3.93(2H,
t
,∫-5.9Hz), 3.90(3H,S),3.16(2H,t,∫-6.1Hz),また13 C-NMR[CD。OD]♂:199.8,153.9,149.2,130.4,124.9, 115.9,111.9,58.9,56.4,41.7より、3-hydroxy-ト (4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-1lPrOPanOne と同定 された10)。E-2はIR (cmJAl)3498,3100, 1665,1320,1118,EIMSm/Z:226(M+),208, 196,181, 167, 153, lH-NMR [CD30D]∂: 7.30(2H,S),3.94(2H,t,∫-6.1Hz),3.89(6 H,S),3.18(2H,
t
,I-6.2Hz),また13CINMR[C D30D]6:199.8,149.0,142.4,129.2,107.2,58.9, 56.9,41.7より著者 らが先に粟国島産黒糖 より分 離 した3-hydroxy-1-(4-hydroxy-3, 5-di一 methoxyphenyl)-1-propanoneと同 定 された10)。
2
. リノール酸に対する過酸化脂質抑制能 分離 したフェノール化合物8種 の リノール酸 における過酸化脂質抑制能を測定 した。 また比 較 としてa-トコフェロール (Toc)およびプチ レー トヒドロキシアニソール (BHA)を用 いた (Fig.2)。なお、結果は7日目の値を示 した。 全ての化合物ともTocと同等かそれ以上の活性 が認め られた。特にC-2、D-2、D-3およびE-2は BHAと同程度の極めて強い過酸化脂質抑制効 果が見 られた。 3.分離 Lたフェノール化合物の ヒ ドロキシラ ジカル消去能2-deoxy-D-riboseを基質とするヒドロキシラ ジカル消去能について、 分離 したフ ェノール化 合物8種を測定 した (Fig.3)。反応液1mlあ たり2.5〟gの試料濃度 において、ほとん どの分 離物質に対 し生成 した ヒドロキシラジカルの約 90%を消去 した。これはBHAとほぼ同程度の極 めて強い消去能であった。弱いものでもD-3の80 %弱であった。
考
察
黒糖には原料 とするサ トウキ ビに存在す る色 素、 ミネラル、脂質など甘煮以外 の成 分や製糖 工程中に生ずる化学物質を含む含蜜糖 である。 前報3) とともに今回黒糖から分離されたフェノ-ル化合物は、C-I,C-2,C-3,D-2のC6-Cl化合物、 またD-1,D-3,E-1,E-2の一般にフェニルプロパ ノイドと称されるC6-C,化合物に分類 され る11)0 これ らは植物に広 く存在す る物 質であ り、 サ ト ウキビ中にも存在する物質であ ることは容 易に 推察される12)。 また一方で 、バ ガスにおけ る リ グニンのアルカリ分解物 の報告13)か ら、製糖工 程中の リグニンの分解生成物14)であるとも推 察 されるが、刈取 り、加熱、石灰乳添加や濃縮 と いった各工程における成分変化 の追跡 は今 後の 検討課題 となろう。既報 に引 き続 き今 回 さ らに 8種類の抗酸化性物質が得 られたが、黒糖 中に はこれ ら以外にも抗酸化性物質が数 多 く存在す ることが推察 され、また これ らの相乗効果 も予 想 される。 以上のことか ら、黒糖は食品素材 と して利用 される際の食品の酸化的劣化の抑制 効果 はもち ろん、生体 内でのラジカル消去能 も期待 される。要
約
黒糖 より抗酸化性を有するフ ェノール化合物 8種、シリンジアルデ ヒド、イソバニ リン酸、
♪ -ヒドロキシアセ トフェノン、 2-hydroxy-1-(4-hydroxy-3, 5-dimethoxyphenyl) -1
-propanone、シリンジ酸、trans-フェルラ酸、3
-hydroxy-1-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)
-トpropanoneおよび3-hydroxy-1・(4・hydro xy-3, 5-dimethoxyphenyl)-1-propanoneを 分離 した。これ らの化合物 は リノール酸 に対す る過酸化脂質の生成を抑制 し、 また強 力な ヒド ロキシラジカル消去能を有 していた。 参考文献 1)仲宗根洋子,志茂守孝,玉城 典子,細 山田 義行,1989,琉大農学報,36,67-72 2)和 田浩二,1993,FFIジャーナル,156,58-65 3)Y.Nakasone,K.Takara,K.Wada,∫.
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