Title
生食用パインアップルの選抜系統の特性
Author(s)
出花, 幸之介; 井上, 裕嗣; 新崎, 正雄; 池宮, 秀和
Citation
沖縄農業, 32(1): 11-15
Issue Date
1997-08
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/1365
Rights
沖縄農業研究会
生食用パインアップルの選抜系統の特性
出花幸之介・井上裕嗣・新崎正雄・池宮秀和
(沖縄県農業試験場名護支場)
KonosukeDEGI,HirotugulNouE,MasaoARAsAKIandHidekazulKEMIYA: CharactersofSelectedC1onesofPmeappleforFreshFruitMarket. 緒論 パインアップルの育種は,交雑と栄養系分離の両面 から,世界各地で行われてきた.ハワイ(Collins1960, Williamsl993)や,台湾(古賀ら1977),象牙海岸 (Chantal1987,1990)などで,優良品種が育成されて いる. 名護支場果樹育種研究室では,1989年からパインアッ プルの交配育種事業を開始した.主要品種N67-10や生 食用品種クリームパイン,ポゴールなどを交配素材と して,100以上の交配組合わせで,3万以上の種子から 実生を養成した(金城ら1994,高原ら1990).1992年に は,実生選抜において700個体が選抜され,2次選抜試 験に供試された 育種事業では,選抜途上にある系統集団の特性を知 ることにより,常に選抜法を改善していく必要がある. 本試験では2次選抜試験において,果実品質について の選抜系統を供試して,主要形質間の相関関係にもと づき,量的形質の選抜法や選抜基準について検討した 結果 収穫日はN67-10で9月4日,ポゴールで7月31日で あった供試系統は7月13日から10月4日にかけて収 穫されたが,全系統の平均収穫日は8月13日であった. 全40系統のうちN67-10より収穫日の遅い系統が6系統, ポゴールより早い系統が4系統あったが,多くの系統 の収穫日は両者の中間に分布した.果実重はN67-10で 19199,ポゴールで923gであった.供試系統の果実重 は665~36809に分布し,平均値±標準偏差は1356±550 gであった.果実重もN67-lOとポゴールの中間に分布 する系統が多かった.収穫日と果実重の間には有意な 相関は無く(r=0.15),夏実においては,早晩性にかか わらず十分な果実童の系統が存在することがわかった (図1). 果汁のブリックスはN67-10で13.3%,ポゴールで17.8 %であった供試系統のブリックスは125~19.4%に分 布し,平均値±標準偏差は164±1.5%であった.多く の系統のブリックスは両比較品種の問に分布したが, 4系統はポゴールよりもブリックスが高かった.収穫 材料と方法 21交配組み合わせ40系統(N67-10,ポゴール,クリー ムパインなどのF1)および比較品種としてN67-10,ポ ゴールを供試した.選抜系統は1~10株,比較品種は30 株である. 1992年9月に苗を植え付け,パインアップル栽培基 準に準じて肥培管理した.1994年7月~10月に,果皮が 1/4着色した時点で果実を収穫し,果実の重さや品質 を調査した育芽や吸芽の数や重さ,茎葉重などは10月 中旬に調査した.茎葉重=全重一栄養芽重一果実重と し,すべて生体重を秤量した. 4 3 2 ⑭望倒梛畷 0 6080 -40I-2002040 収穫日(8月1日基準) 図1収穫日と果圓E重CD関係 r=0.15 ★N67-lO ‐※ボゴール ○ ○⑪ > ○ ○○○ )○○○億炎室。
★ 、 ○○ ○ 、、 ○沖縄農業第32巻第1号(1997) 12 日とブリックスの間に有意な相関は無く(r=0.08),夏 実においては,早晩性に関わらずN67-10より果汁ブリッ クスの高い系統が存在することがわかった(図2). 20 o r=-035* ○○○
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○○ ’○ ○ ○ 12 34 茎菜重Kg 図4茎葉重とブリックスの関係 56 「J F」 果実重とブリックスの間にはr=-0.52."とやや強 い負の相関関係があり(図5),果実重が重い品種ほど 12 -40-20 020406080 収穫日(8月1日基RIQ) 図2収穫日とブリックスの関係 20 茎葉重はN67-10で31649,ポゴールで1488gであっ た.供試系統の茎葉重は866~50209に分布し,平均値 ±標準偏差は2508±864gであった.8系統の茎葉重が N67-10よりも重く,4系統はポゴールよりも軽く,残 りは両系統の中間に分布した.茎葉重と果実童との間 にはr=078霞。と強い正の相関関係があり,茎葉重の大 きい系統ほど果実重も大きくなった(図3). 8 6 4 1 - 次K心誌・「一m 12 4 23 果実重Kg 図5お実重とブリックスの関係 0 4 r=0.78** ★N67-10 糸ボゴール ○ 3 ブリックスが低い傾向があった. 商芽数はN67-10で15本,ポゴールで2.3本であった. 供試系統の商芽数は0~5.9本に分布し,平均値±標準 偏差は11±16本であった.吸芽数はN67-10で12本, ポゴールで2.3本であった.供試系統の吸芽数はO~7 本に分布し,平均値±標準偏差は1.5±1.0本であった 供試した40系統のうち商芽数がOの系統が21系統,吸 芽数がOの系統が5系統存在した.系統間において,商 芽数や吸芽数と茎葉重の間には有意な相関はなかった (図6;商芽数r=0.13,吸芽数r=0.11). 平均商芽重はN67-10で6339,ポゴールで106gであっ た供試系統の平均商芽重はO~6309に分布し,平均 ○ 2 ⑭z概胱蝶榔蕊二言
○タ 0 0 3456 茎葉重K9 図3茎葉重と果実麓の関係 ブリックスと茎葉重の間にはr=-0.35`と弱い有意 な負の相関関係があり(図4),茎葉重の大きな系統ほ どプリックスがやや低くなる傾向があった ○白
r=0.08 ○; の○ ○(出花・井上・新崎・池宮:生食用パインアップルの選抜系統の特性 13 地区における生食用品種群の特性として,ある程度の 普遍性を持つことを前提として考察する. 生食用品種の育種目標は,まずプリックスが16~20 度で,果実重が1~1.5kgである.本試験の供試系統は, 7月10日頃から10月のはじめにかけて収穫されたが, どの収穫時期でも高品質で適度な大きさの果実をもつ 系統が存在した(図1,2).またN67-10より晩熟であ るが,高品質の系統があった.パインアップルでは植物 調節剤により収穫時期を促進することができるので, 晩生の品種を育成すれば同一品種の長期出荷も可能と なる. 本試験の結果,茎葉重や果実童が大きい系統ほどブ リックスが下がる傾向があったので(図4,5),果実 重が大きくプリックスも高い系統の選抜はやや難しい ものと思われた.しかし,生食用品種ではブリックスが 高いことが最も重要であるので,初期選抜試験ではま ずブリックスを選抜指標として重視する必要がある. つぎに高プリックスの系統の中から,果実の大きいも のを選抜するのがよいと思われた.主要な量的形質の 中では,プリックスや果実重は形質発現の再現性が高 い(井上ら1996)が,プリックスは果実重に較べ同一 収穫期における環境変動も小さい(出花ら1989)ので 初期選抜における選抜指標にも適している. 生食用パインアップルでは,主に育芽を種苗とし,吸 芽からは株出し果実を得る.商芽数や吸芽数が多すぎ ると除芽作業が必要となり,また少なすぎると種苗の 自給や株出しの収量低下をまねく.よって,育種目標は 商芽が2~3本で吸芽は1~2本となっている.選抜 試験ではなるべく旺盛な株に育て上げた後,株が小さ いのに関わらず商芽数や吸芽数の多いものや,大きな 株で商芽の発生がないものは淘汰した方がよい. 本試験の結果,供試系統の喬芽数の平均値は1.1本と やや少ないので(図6),今後は商芽数のやや多い系統 を選抜する必要がある 商芽数は環境変動の大きな形質である(出花ら1989) が,系統内では茎葉重が大きな株ほど育芽数が多い (出花ら1986).両者に相関がなかった(図6)のは,茎 8 ○爾芽「=0.13 ●吸芽r=0.11 ● ○ ○ ○ ●●● ● ●○○
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●○○○ ○ 4 蘓沐猟級 ● 2 ● 0 23456 茎葉重K9 0 図6茎葉重と栄養芽数の関係 値±標準偏差は125±170gであった.平均吸芽重はN67‐ 10で10479,ポゴールで337gであった.供試系統の平 均吸芽重は0~18309に分布し,平均値±標準偏差は 759±503gであった.また商芽や吸芽のない系統を除 くと,茎葉重と平均青芽重の間にはr=0.54蟻愈,茎葉重 と平均吸芽重の間にもr=0.54鉢とやや強い有意な正 の相関があった(図7). 2000 0 0 0 0 00 5 0 5 ⑪倒輪蝋級盃丹 0 0 23456 茎葉重Kg 図7茎葉重と栄饗芽の平均麓との関係 注)rは商芽や吸芽の無い系統を除外して算出した 考察 本試験に供試された系統は,主要品種を親とした交 配に由来し,生食用品種の育成を目的として果実品質 を中心に選抜した系統群である.本試験の結果は,沖縄沖縄農業第32巻第1号(1997) 14 葉重が小さくても商芽数の多いポゴールのような系統 が親となっているためだと思われる. 本試験の結果,果実重は茎葉重の強い影響を受け (図3),さらに茎葉重が大きいと平均商芽重や平均吸 芽重が増加する傾向があった(図7).また,主要系統 の生態的特性としても同様な関係が報告されている (出花ら1986).パインアップルの栽培では,種苗の種類 や大きさが果実の大きさや作型,収穫時期に大きな影 響を与える(Collins1960,Madhusudananら1983, Pyら1987).生食用パインアップルでは喬芽を苗とす るので,次代の新植の果実重は商芽重の強い影響を受 け,株出し栽培の収量は吸芽の大きさに左右される.本 試験では,系統によって花芽分化しうる株の大きさが 異なることも観察されている.パインアップルの選抜 試験では栄養芽の大きさや経歴性などにも考慮しつつ 系統選抜を進める必要がある. する. Summary Charactersofselectedclonesofpineapplefor freshmarketwereobservedandselectionmethod wasinvestigatedFortycloneswhichhavehigh qualityandgoodshapeoffruitwereselectedfrom offspringscrossedbetweenN67-1qCreamPineapple andBogolwereusedforthetestmaterial Summerfruitsofthecloneswereharvestedfrom Julyl3thtoOctober4thJuicebrixofclones wererangedfroml2.5%to19.4%andfruitweight werefrom678gto3680g・Thereisnorelationship betweenearlinessoffruitmaturityandfruit weightaswellasjuicebrix・ Juicebrixnegativelycorrelatedwithfruitweight (r=-052態。)」twasrathermoreimportantas criterioninearlyselectiontrialofpineapplefor freshmarket・ Stem-leafweightwaspositivelycorrelatedwith fruitweight(r=07W),averageweightofslips (r=0.54..)andaverageweightofsucker (r=0.54軸).Whileweightofslipandsuckerused asthepropaguleareusuallyassociatedwiththe followedcrops,thecarry-overeffectsofclone shouldbeconsideredinselectionofpineapple. 要約 生食用パインアップルの特性と選抜法について検討 した.生食用品種の育成を目的に,N67-10やクリーム パイン,ポゴール等を親として交配し,果実の品質や形 態などを中心にして選抜された40系統を材料とした 供試系統の夏実のブリックスは125%~19.4%,果実 重は6789~36809で,7月13日~10月4日に収穫された. 収穫時期と果実童やブリックスとの間に相関はなかっ た. 果実重とブリックスの間にはr=-0.52.戦の相関があっ た.しかし生食用品種の選抜では,ブリックスを選抜指 標として重視した方がよい. 茎葉重と果実重の間にはr=0.78愈痩,茎葉重と平均商 芽重や平均吸芽重の間にはr=0.54戦.の相関があった. 選抜試験では,栄養芽の大きさや経歴性なども重要で ある. 参考文献 LChan,Y、K1993Recentadvancementsin hybridizationandselectionofpineapplein Malaysia・ActaHorticulturae334:3343 2.ChantalCabotl990Agenetichybridization programmeforimprovingpineapplequality・ ActaHorticulturae275:395-400 3.ChantalCabotl987Practiceofpineapple breedingActaHorticulturael96:25-36 4.Collins,JL1960Thepineapple-Botany, 謝辞: 本報告をまとめるにあたり農水省生物研放射線育種 場の永富成紀博士のご指導を頂いた.記して謝意を表
出花・井上・新崎・池宮:生食用パインアップルの選抜系統の特性 15 の基礎的問題点,熱帯農研集報31:88-94 10.Madhusudanan,KN.,Nabeesa,Ⅱ,Umadevi, V・andNandakuma,S1983Differentiationof propagulesandcropgrowthpaterninmpineapple cultivers・ScientiaHorticulturael8:215-224 11.Py,C,Lacoeuilhe,J、J・andTeisson,C1987 ThePineapple-CultivationandusesG・P・ MaisonneuveetLarose,Paris568pp l2高原利雄・金城鉄男1990生食用パインアップ ル育種の現状と将来展望,育種学最近の進歩32:94-100 13.Williams,DDnandFleisch,H1993 HistoricalreviewofpineapplebreedinginHawaii・ ActaHorticulturae334:67-76 cultivation,andutilization、IntersciencePublishers lnc・NewYork295pp78-l27 5・出花幸之介・中西建夫1989パイナップルの選 抜における標本数と推定精度,沖縄農試報13:27-34 6.出花幸之介・宮城恒夫・中西建夫1986形質間 相関からみた夏実パイナップルの生態,沖縄農試報 11:31-40 7.出花幸之介・井上裕嗣・金城鉄男・池宮秀和1995 パインアップルの選抜試験における主要形質の年次 間の再現性,沖縄農業講要28-29 8.金城鉄男・池宮秀和1994生食用パインアップ ルにおける育種法の知見と可能性,沖縄農業29(1)51‐ 66 9.古賀義昭・工藤政明1977パインアップル育種