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呼吸器外科雑誌23巻2号

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Academic year: 2021

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は じ め に

近年,MALTリンパ腫を始めとする肺リンパ増殖性 疾患は,CTなどの画像診断の普及とその解析能力の 向上,加えて疾患概念の浸透に伴い,報告例が増加し ている.今回,多発結節影を呈した結節性リンパ組織 過形成(nodularlymphoidhyperplasia:NLH)の1例 を経験したので報告する. 症 例:65歳,女性. 主 訴:胸痛. 既往歴:高血圧で内服加療中,31歳時扁桃摘出,58 歳時ラクナ梗塞. 喫煙歴:2本/日×12年. 飲酒歴:ビール350 ml/日. 粉塵曝露歴:なし. 家族歴:特記すべきことなし. 現病歴:2006年7月,近医で胸部異常陰影を指摘さ れ,当院呼吸器科に紹介となった.胸部 CTで数 mm 大の両側多発結節影を指摘され諸検査施行したが,確 定診断には至らず経過観察となった.2007年2月,胸 部 CT上結節影の増大を認めたため,悪性腫瘍を疑い, PET-CT検査を施行したが,集積像はなかった.その 後,結節影に変化はなかったが悪性病変を否定できず, 2007年10月,確定診断目的に当科紹介となった. 入院時現症:身長154.7 cm,体重65.3 kg,意識清 明.体温36.1℃,脈拍61回/分・整,血圧134/78 mm Hg,胸部聴診上異常所見はなく,その他身体所見に異 常を認めなかった. 検査所見(Table1):明らかな異常値はなく,腫瘍 マーカーも正常範囲内であった.抗核抗体が160倍で あったが,リウマチ因子,抗 SS-A抗体は陰性であった. 喀痰培養検査で抗酸菌,真菌とも陰性,ツ反検査は陽 性であった.Ca9.8 mg/dl,ACE10.4 IU/lと正常範 囲内,抗 TBGL抗体,クリプトコッカス抗体はともに 症 例

多発結節影を呈した結節性リンパ

組織過形成(NLH)の1例

吉川 拓磨

*1*2

,神崎 正人

*1*2

,小原 徹也

*1

,大貫 恭正

*2 症例は65歳女性.近医で胸部異常陰影指摘され,当院呼吸器内科を受診した.胸部 CT上両側に数 mm大の多発結 節影を認めた.身体所見,血液検査所見に異常なく,喀痰培養検査,ツ反検査等から結核,真菌症,サルコイドーシ スは否定的であった.PET検査でも,集積はなかったが,増大傾向を認めたため,確定診断をつけるため胸腔鏡下肺 部分切除術を施行した.病理検査では,結節性リンパ組織過形成(NHL)と診断された.NLHは MALTリンパ腫と 鑑別すべき疾患の1つであり,今後報告例はさらに増加すると思われる.NLHの中でも多発結節を呈する症例はいま だ報告例が少なく,病態,予後,治療方針に関し不明な点が多いことから,今後の症例の蓄積が必要と思われる. 索引用語:結節性リンパ組織過形成,肺リンパ増殖性疾患,多発結節陰影,胸腔鏡下手術

nodularlymphoidhyperplasia(NLH),lymphoproliferativedisorder,multiplenodularlesions video-assistedthoracoscopicsurgery(VATS)

*1都立府中病院 胸部外科 *2東京女子医科大学 第1外科 原稿受付 2008年4月3日 原稿採択 2008年8月28日

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陰性であった. 胸部 X線所見(Fig.1):両肺野に多数の粒状陰影を 認めた. 胸部 CT所見(Fig.2):やや右側優位の両肺野に小 結節陰影を多数認めた.結節の大きさは多くは数 mm 大で,最大径は12 mmであった.辺縁は比較的明瞭 で,石灰化は認めなかった. PET-CT所見(Fig.3):FDGの集積を認めず,中 葉に存在する最大径の腫瘤の SUVmaxは1.23だった. 以上より結核,真菌症,サルコイドーシスは否定的 であり,確定診断のために胸腔鏡下肺生検を施行する 方針とした. 手術および術中所見:術前に右中葉の腫瘤に対し CT下にマーキングを行い,全身麻酔,分離肺換気下に 手術を行った.3ヵ所にポートを挿入し,内腔を観察 すると,肺の分葉は良好で,癒着はなく,胸水貯留も 認めなかった.表面からは腫瘤を確認できず,マーキ ングの糸を目標とし自動縫合器で中葉部分切除を行っ た.腫瘍を触知するとやや弾性軟であった. 摘出標本(Fig.4):割面では境界明瞭な白色結節を 多数認め,最大のものは長径8 mmであった. 病理組織所見(Fig.5):細気管支中心性に胚中心を 伴うリンパ濾胞の増生を認めた.免疫染色では胚中心 付近に抗汎 B細胞抗体である CD20(L26),CD79aが 陽性,濾胞辺縁には抗汎 T細胞抗体である CD3, CD45RO(UCHL-1)が陽性であり,ポリクローナル なパターンを示していた.形質細胞も混在していたが, 著明な浸潤像は目立たず,MALTを疑う細胞の異型や リンパ上皮性病変(lymphoepitheliallesion)は認めな かった.病変周囲の肺胞は虚脱し,内腔に泡沫細胞が 多数認められ,閉塞性肺炎を呈していた.以上より, MALTリンパ腫は否定的で結節性リンパ組織過形成と 診断した. 術後経過:術後経過は良好で,術後2日目にドレー ン抜去し,術後5日目に退院した.後療法は行わず, 外来経過観察中である. 肺では,結節状あるいはびまん性にリンパ球系細胞 が浸潤増生し,組織学的に反応性病変か腫瘍性病変か の鑑別が困難なものをリンパ増殖性疾患と呼んできた.

結節性リンパ組織過形成(nodularlymphoi dhyper-plasia:NLH)は,胚中心を伴ったリンパ濾胞形成の 目立つ豊富なリンパ組織の増生から成る限局性反応性 病変で,肺の気管支血管束沿いに分布する節外性のリ ン パ 網 で あ る mucosa-associated lymphoid tissue (MALT)1)の結節性過形成病変とみなされている2,3)

また,NLHは以前 Saltzstein4)により提唱された偽リン

Table1 LaboratoryData Hematology&Biochemistry

nl 428×104 RBC /nl 4700 WBC % 40.9 Ht g/dl 13.3 Hb g/dl 4.3 Alb g/dl 8.1 TP U/l 16 ALT U/l 23 AST mg/dl 0.4 T-Bil U/l 188 LD mg/dl 0.7 Cre mg/dl 22.9 BUN mEq/l 4.7 K mEq/l 141 Na mg/dl 0.1 CRP mg/dl 9.8 Ca IU/l 10.4 ACE Immunology 497 sIL-2ReAb CryptcoccusAb(-) 1.8 TBGLAb

Rheumatoidfactor<×40 ×160

ANA

antiSS-AAb(-) Tumormakers /ml 24.1 SLX ng/ml 2.0 CEA U/ml 7.6 CA125 ng/ml 0.9 SCC ng/ml 4.1 AFP

Antiacidbacteria

TbDNAPCR(-)MACDNAPCR(-)

Fig.1 Chestradiographshowedmultiplenodular shadowsinbothlungfields.

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パ腫(pseudolymphoma)と同意語と認識されていた. しかし,免疫組織化学的および分子生物学的検索法の 発達により,現在では偽リンパ腫のうちポリクローナ ルな反応性病変を結節性リンパ組織過形成(NLH),モ ノクローナルな病変は腫瘍性病変として肺 MALTリ ンパ腫と認識されている5) NLHは稀な疾患であり,Abdondanzoら6)の報告に よると,やや女性に多く,中高年に発生する.多くの 症例は無症状で,胸部 X線で孤立性結節陰影を示すも のが多いが,稀に多結節性のものも認められるとされ ている. 肉眼的には,胸膜下の肺組織内に境界明瞭な2~4 cm大の灰白色ないし黄褐色調の結節が単発ないしは 多発性にみられるとされ,組織学的には,既存の気管 支,肺構造を置換して胚中心を有する多数のリンパ濾 胞形成を伴い,成熟したリンパ球,形質細胞が結節性 に増殖し,病変の中心部に密な膠原線維からなる線維 痕跡が認められる.MALTリンパ腫に特徴的なリンパ 球の気管支上皮浸潤である lymphoepitheliallesionの 像はみられないとされている.免疫組織化学的には, 浸潤するリンパ球は T細胞と B細胞が混在して反応性 の性格を呈し,また免疫グロブリン L鎖では明らかな バンドはみられず,数本のバンドを認めるポリクロー ナルのパターンを示すとされている.遺伝子解析では 免疫グロブリン H鎖の再構成バンドを示さないとさ れている.所属リンパ節の腫大をみる場合があるが, 組織学的には benignfollicularhyperplasiaの像を示す. 少量の好中球や好酸球を含むことや病変周囲に器質化 Fig.2 ChestCTscanrevealedmultiplenodulesinbothlungfields.

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肺炎を伴うこともあるとされている6,7) 鑑別診断には MALTリンパ腫,リンパ球間質性肺炎 (LIP),濾胞性気管支炎・細気管支炎(FB),炎症性 偽腫瘍などがある.MALTリンパ腫とは組織学的所見 が類似しているので,組織学的鑑別が困難な場合には 免疫組織化学的および遺伝子学的検索が必要となると されている. 今回の症例では浸潤したリンパ球は免疫染色で T細 胞,B細胞が混在したポリクローナルなパターンを示 し て お り,MALTに 特 徴 的 な リ ン パ 上 皮 性 病 変 (lymphoepitheliallesion)も 認 め な い こ と か ら, MALTリンパ腫は否定的と判断し,遺伝子解析による 免疫グロブリン軽鎖制限や遺伝子可変領域の再構成の 確認は行わず,NLHと診断した. いくつかの報告では,NLHの多くは術前未確診のま ま,外科的生検ではじめて確定診断が得られている. 単発例に関しては外科的切除のみで,その後再発の報 告はない8).本症例のように多発例の場合,術後も多 くの結節が残存することや経過中増大傾向を認めた経 緯などから慎重な観察を要すると思われる.ただ,い まだ報告例が少なく,長期経過観察された例もないこ とから,適切な治療方針を決定するためにもさらなる 今後の症例の蓄積が必要と思われた. NLHは MALTリンパ腫と鑑別すべきリンパ増殖性 疾患の1つであり,画像診断の普及と解析能力の向上 に伴い,報告例はさらに増加すると思われる. NLH,特に多発結節を呈する症例はいまだ報告例が Fig.4 Specimen obtained bythoracoscopiclung

biopsy(from rightS4).Thereweremany white nodulesin the cutsurface ofthe specimen.

Fig.3 PET-CTshowednoFDGaccumulation.

Fig.5 Histologicalfindingsofthe thoracoscopic lung biopsy specimen (H.E.staining) showingnumeroushypertrophiclymphoid follicles and prominentbenign lymphoid aggregates.

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少なく,病態,予後,治療方針に関し不明な点が多い ことから,今後の症例の蓄積が必要と思われる.

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8.菊池昌弘.肺リンパ増殖性疾患.気管支学 2000;22:92-7.

Acaseofmultiplenodularlymphoidhyperplasia(NLH)

TakumaKikkawa,MasatoKanzaki,TetsuyaObara,TakamasaOonuki

ThoracicSurgery,TokyoMetropolitanFuchuHospital

Wereportararecaseofmultiplenodularlymphoidhyperplasia(NLH).A65-year-oldfemalewhohadhypertension wasadmittedtoourhospitalbecauseofabnormalshadowsonchestX-ray.Chestcomputedtomography(CT)scan revealedmultiplenodulesinbothlungfields.Thephysicalfindingsandlaboratorydatawerealmostallwithinnormal limits,andweconsideredthepatienttobenegativefortuberculosis,mycosis,andsarcoidosis.Wesuspectedprimary lung cancerormetastatic lung tumors.PET-CT showed no FDG accumulation.Biopsy by video-assisted thoracoscopicsurgery(VATS)yieldedadiagnosisofmultiplenodularlymphoidhyperplasia(NLH).MultipleNLHis rareandnon-elucidatedentity,anddifficulttodifferentiateitfrom MALTlymphoma.Furtherinvestigationwith accumulatedcaseswillberequired.

参照

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