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研究業績・活動報告2004

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(1)東 北 大 学 多 元 物 質 科 学 研 究 所. 研 究 業 績・活 動 報 告 2004 年(平成 16 年)12 月. Institute of Multidisciplinary Research for Advanced Materials Tohoku University Sendai, Japan.

(2) 多 元 物 質 科 学 研 究 所. 研 究 業 績・活 動 報 告 目. 次. 研究活動報告············································································ 1. 研究会報告············································································ 120. 学会発表講演目録··································································· 155. 研究業績目録········································································· 241. 業績目録著者索引··································································· 311.

(3) 研. 【研究活動報告】. 究. 活. 動. 報. 告. 物理機能設計研究分野. (2004.1∼2004.12). 教 授: 助 教 授: 助 手: 技 官: 共同研究員: 大学院生:. 岡 泰夫 村山 明宏 富田 卓朗,西林 一彦 相馬 出 氷見 恭子 萱沼 健太郎,佐久間 実緒,植竹 理人, 朝比奈 努,瀬尾 光平,青島 一朗,平野 裕之 学 部 学 生 : 小山 威,林 賢一郎,鈴木 誠之. 本研究分野では,「磁性半導体ナノ構造の創製とその光スピン機能性の開拓」に関する研究活動を 行っている.2004年の研究活動としては,以下のようなものがある. 1.. 磁性半導体ナノ構造の創製. II-VI 族半導体や磁性半導体の量子井戸や自己組織化量子ドット,磁性体との複合構造を,分子線エピ タキシー(MBE)法や超高真空スパッター法により作製している.また電子線リソグラフィー法を用いて, 10 nm オーダーの半導体量子ナノ構造を作製している.これらの方法により,磁性量子井戸、ナノスケ ールの磁性半導体量子ドット,量子細線,磁性金属と磁性半導体の複合ナノ構造の作製を行っている. 2.. 顕微分光法による磁性半導体量子ドットのスピン機能性の研究. MBE を用いた自己組織化法により ZnSe 上に CdSe 量子ドット配列を作製することができる. この CdSe 自己組織化量子ドットの励起子は強いゼロ次元量子. DMS QDs on nano-pillar. 閉じ込め効果を受け高効率の青色発光を示す.しかしなが らドットの面密度が高く,通常は個別ドットからの発光ス ペクトルを得ることは難しい.電子線リソグラフィー法に よりこの自己組織化ドット配列層を 50 nm 程度の直径を 持つピラー状に微細加工し,さらに顕微分光法を組み合わ せることで個別の単一ドットからの明瞭な発光スペクト ルを観測することに成功している.またこのような高密度 量子ドット系においては,励起子波動関数がドット間に拡 がりトンネル効果が生じるため,励起子のエネルギー緩和. Laser spot diameter ~ 2 µm. 過程にドット間の相関の影響が現れる.したがってそのド ット密度を調整することにより,制御された人工的局在ポ テンシャル系を作ることができる.さらに、同様にして作 製した Cd1-xMnxSe 磁性量子ドットには巨大磁気光学効果 が発現し,磁性半導体のもつ磁気光学効果に対する強い量. 5 µm 磁性半導体自己組織化量子ドット 層を含むナノピラー(上図),規則 ピラー構造と顕微発光分光による 単一ピラーの光励起(下図). 子閉じ込めの影響が現れる. また,電子線リソグラフィー法により,直径 10∼100 nmのZn1-xMnxSe系磁性半導体の結合型二重量子ドットの 作製を行っている.この二重量子ドットに対して光励起を 行うと,二つの量子ドット間でトンネルバリアを介した電 子・正孔スピンの注入過程を観測することができる.量子. −1−.

(4) 研. 究. 活. 動. 報. 告. ドットにおいては,スピン緩和過程が抑制されているため,量子井戸に比べて高いスピン注入効率を 達成することができ,磁性半導体量子ドットの特色あるスピン機能性を発現させることができる. 3.. 磁性半導体量子井戸における超高速光スピン注入現象の解明. Cd1-xMnxTe/Cd1-yMgyTe,Zn1-xMnxTe/ ZnTe および Zn1-xMnxSe/Zn1-yCdySe 系の「磁性・非磁性二重量子 井戸」 ,「スピン分離型量子井戸」 ,「ディジタル磁性量子井戸」の系統的な作製を行っている. 「磁性・ 非磁性二重量子井戸」においては,光励起キャリアスピンの輸送・注入を行うことが可能になってき ており,そのスピンダイナミクスを調べることにより,スピン注入過程の機構解明を行った.磁性量 子井戸で生成されるスピン分極した励起子は,非磁性量子井戸に高いスピン分極を保ったまま注入さ れ発光する.ピコ秒領域における発光の円偏光特性の実測により,各井戸におけるキャリアスピン緩 和時間とスピン注入時間を求めるとともにスピン注入効率との関係を明らかにした.さらに,磁場中 フェムト秒ポンプ・プローブ分光により,磁性半導体量子井戸におけるスピン分極励起子の形成と消 滅ダイナミクスを明らかにした.特に,磁場中における,0.5 ~ 1 ps という非常に速い時間領域でのス ピン分極励起子の生成過程とその電子・正孔スピン緩和過程を解明した.これらの知見は超高速スピ ン制御デバイスの基礎技術として活用される. 4.. 磁性半導体複合微細構造の磁気光学機能性の開拓. 電子線リソグラフィーとリフトオフ・エッチング 法を組み合わせて,Zn1-x-yCdxMnySe 系磁性半導体の 量子井戸とCo系磁性薄膜の複合ナノ構造を作製し, その磁気光学特性を調べている.100 nm前後の幅や 形状を持つ細線やドットなどの複合構造においては, Co磁化により発生する強い磁場が磁性半導体に作用 するため,外部磁場なしに磁性半導体の巨大磁気光 学効果を発現させることが可能になる.Co磁化が完 全に膜面垂直配向した場合の,Co磁化の作り出す垂 直磁場強度の分布を示す3次元シミュレーション結 果を図に示す.本複合構造の特長としては,細線構 造を交互に隣接させることにより半導体量子井戸に 対して垂直方向の強い磁場を印加できるようにした ことと,半導体量子井戸も細線状であるためその全 ての領域のキャリアや励起子にCoからの磁場が印加 されることが挙げられる.我々は,実際に,Coから 発生する局所磁場により誘導される磁性半導体量子 井戸の励起子巨大ゼーマン効果を解明した.このよ うな磁性体複合ナノ構造の特性を利用して,微細機 能性磁気光学素子の光集積回路開発が可能になる.. −2−. Zn 1-x- y Cd x Mn ySe 系磁性半導体量子井戸 (DMS-QW)とCo系磁性薄膜の複合ナノ 構造における磁化と磁場分布を示す模式 図(上図)と、垂直磁場強度のシミュレー ション結果(下図).

(5) 研. 【研究活動報告】. 究. 活. 動. 報. 告. 化学機能設計研究分野(2004.1∼2004.12) 教. 授:米田忠弘. 助 教 授: 助. 手:高岡毅、道祖尾恭之*. 機関研究員:Senthil Karupaan* 技. 官:猪狩佳幸. 大学院生:稲村美希、古橋匡幸、朱娜*、山口貴弘*、高柳篤史* 本年度,当研究分野では,職員の移動(道祖尾恭之着任(2004年5月1日))があった.また機関研究 員として2004年10月よりSenthil Karupaanが研究に参加している。また学生として3名の修士課程の学 生が新たに加わった。(*印は移動した職員,学生). 本研究分野においては表面における電子状態・構造・動的過程などを解析し得る計測手法を用いて ナノテクノロジーの要素技術の知見を得ようとするものである。2004年の活動を総括すると以下の通 りである. 1.シリコン微細加工技術と有機分子の接合 本研究では近年有機分子や生体分子の電子材料への応用の期待が高まっていることからシリ コン微細構造の作製とその表面上への有機分子の展開、その上で界面に形成される分子の化学状態や 電流・電界による分子の特性の変化あるいは分子の操作を考え、ナノテクノロジーの基礎としての知見 を得ようとする。。ターゲットとなる分子としてカーボンナノチューブでの研究を開始している。界 面で形成される電子状態の基礎的情報を得るため、よく規定された金表面上にCNTを展開し、低温超高 真空STMを用いて観測を開始し原子レベルでの構造・物性の情報を得ている。 1. 原子レベルで平坦な基盤の作成にマイカ上に蒸着された金薄膜が大気中で水素ガスバーナーで加 熱することにより原始的に平坦で清浄な表面が得られることを実証した。 2. マイカ上の金表面上に CNT を展開し個々の CNT についての原子分解能での内部構造の観察に成功 した。金表面に存在する原子ステップのために CNT が基板と直接に接触する部位と空中に浮いて いる部位が存在するが両部位で CNT の像に明瞭な差が観察された。これは CNT と下地の相互作用 による電子構造の変化と考えられる。 3. かつ内部構造には炭素―炭素間の距離の数倍の周期を持つ縞状の構造が観察され、これらは引き. 金(111)表面に吸着させた単層カーボンナノチューブのSTM像。(右)100x100nm2の領域 に2本のCNTが観察される。(左)高分解像。炭素の原子像と基板との干渉効果. −3−.

(6) 研. 究. 活. 動. 報. 告. 続き電子状態の計算とともに研究を継続している。. 2.単一スピンの検出 2004年10月よりJST CRESTプロジェクトによる単一スピン検出のプロジェクトが開始された。計測およ び装置開発が主なテーマであり、最近注目される量子コンピューターの基礎となる、単一のスピンを 検出する手法の開発を目指す。主たる手法としてはSTMを用い、磁場中でLamor歳差運動する孤立局在 スピンに影響されたトンネル電流の時間変化を周波数分解することにより、Larmor歳差運動の周波数、 およびそれから導かれるg因子の決定により、単一分子に関する化学分析を最終的な目標とするもの である。その検出のためには安定なSTM装置が不可欠であり、その実現のために希釈冷凍機を用いた極 低温STM装置を開発する。希釈冷凍機は科研棟向上で作製の経験があり、その知見をもとにして超高真 空STM装置との組み合わせという、世界でも例を見ない装置を建築中である。冷凍機本体の作製は2004 年度中に修了し、その動作を検討する段階である。 3.反応の場としての氷表面 氷の表面は大気化学の反応の場としても注目されている。今年は分子線とFTIRを組み合わせた装置に よって Pt(111)表面上に形成された氷表面上でアンモニア分子の挙動を調べることによって、氷表面 での分子の氷内部への浸透というテーマについて発表した。氷の厚さが薄い領域では金属基板の周期 に支配された氷が形成されるという理由からアンモニアの氷内部への拡散は低い障壁をもって行われ た。氷の厚さが数層におよぶと、氷独自の結晶構造へと構造が変化し(半導体成長当で見られるSK成 長に類似)その場合にはアンモニアの氷内部への拡散は非常に遅いものとなる。これは結晶性が改善 し、氷の拡散のパスが減少したためと解釈した。このような薄膜状態での氷の結晶性がそれに吸着し た分子の内部への拡散に影響するというのは初めての観測である。. −4−.

(7) 研. 【研究活動報告】. 究. 活. 動. 報. 告. 表面機能設計研究分野(2004.1∼2004.12) 教 授:一色 実 助 手:三村耕司, 王 吉豊 受託研究員:竹中伸也, 打越雅仁, 笹垣通仁,金原正典, 高野雅俊 研究留学生:紀 世陽 博 士研究員:林 載元, 宋 士恵, Georgi M. Lalev, 朱 永福 大 学 院 生 :呉 忠奉,飯島 純, 三上 充, 裵 俊佑, 今井一輝 江渡寿郎, 洪 相輝, 高山 航, 小谷祐介, 加藤士卓 齋藤 繁, 佐藤貴則, 佐藤 隆 研 究 生 :米倉 洋. 本研究分野では、金属および化合物半導体を対象に、主として超高純度素材作製のための新しい精 製手法およびプロセスの開発、高純度素材の特性解明、薄膜およびバルク特性に与える不純物の影響 解明等についてについて研究活動を行っている.2004年の研究活動としては,以下のように概括され る. 1. 3d遷移金属の高純度化プロセス開発に関する研究 現在、耐環境性に優れた鉄シリサイド化合物がオプトエレクトロニクス用材料として注目されており、 半導体グレードの超高純度鉄の供給が急務となっている。また、次世代ゲート電極用材料として、コ バルトシリサイドが注目され、シリサイド形成に必要なCoターゲットは高純度である必要がある。陰 イオン交換精製法および水素プラズマ溶解法から成る純度99.9998%以上の実用精製プロセス を企業と共同開発した。また、半導体プロセス用ターゲットとしてのニッケルについてもその高純度 化プロセスの開発に着手している。 2.. 希土類金属の高純度化に関する研究 希土類金属は、その特性の多様性からさまざまな分野への応用がなされている。今後、半導体分野. への応用も期待されているが、希土類元素は化学的に活性でその高純度化が遅れている。希土類金属 の特性解明および新たな応用範囲の開拓のためには高純度化が不可欠である。希土類金属の高純度化 の第一歩として、本研究室で開発された水素プラズマ溶解をCeの高純度化に適用し、その効果を明ら かにした。 3.. βーFeSi2単結晶成長に関する研究. ヨウ素を輸送剤として用いた化学気相輸送法により、βーFeSi2単結晶の成長を試み、直径約2mm、長 さ約10mmの針状単結晶が得られた。結晶成長に関する基礎的知見を得ると共に、電気的特性および光 学特性評価を行った。また、これまで、βーFeSi2の薄膜単結晶の成長に関してさまざまな手法が試み られているが、分子線エピタキシー(MBE)法による成功例は報告されていない。前記高純度化され たFeおよび高純度Siをソースとして水素終端したSi(111)基板上にMBE成長を試み、単結晶薄膜の成長に 初めて成功した。 4. 非質量分離型イオンビームデポジション法によるTa(N)/Si薄膜の作製と評価に関する研究 ULSIの銅配線化が進められているが、CuとSiとの反応を避けるためにバリア層が必要とされている。 Taは優れたバリア材として認識されているが、スパッタ堆積させたTa膜は、比抵抗の大きいβ相が得 られる。非質量分離型のイオンビームデポジション法を用い、比抵抗の小さいα単相膜の作製を目的. −5−.

(8) 研. 究. 活. 動. 報. 告. として、窒素の添加と基板バイアスの影響を明らかにした。両者の相乗効果によりほぼα単相膜の作 製が可能となった。また、そのバリア特性を評価した結果、650℃30分の加熱に対して安定であ ることを明らかにした。 5. 銅の低温酸化に関する研究 銅および高純度銅試料の、室温から100℃近傍における初期酸化機構を明らかにする目的で、分 光エリプソメーターを用いたその場観察法により、酸化速度の評価、および、酸素分圧依存性も評価 した。その結果、100℃では3乗則に、80℃では逆対数則に、50℃では対数則に従うことを明 らかにした。また、それぞれの温度範囲で、活性化エネルギーを求め、すでに超高純度銅に関して得 た高温域の活性化エネルギーも考慮することによって、ナノレベルの酸化機構を解明することが出来 た。 6. p型ZnSeに関する研究 低抵抗p型バルクZnSe単結晶の作製を目的として、アクセプター性不純物であるカリウム(K)およ びビスマス(Bi)の挙動を明らかにした。2重るつぼを用いたブリッジマン法によりBi添加ZnSe単結 晶の成長を行った。また、成長した単結晶を溶融Se-K中で熱処理を施すことにより、K添加ZnSe単結晶 を得た。KおよびBiのアクセプター準位を4.2Kにおけるフォトルミネッセンスにより評価した。ま た、KおよびBi添加により新たなドナーが形成されることを見出した。また、それらのドナー準位等を 明らかにすると共に、Pdを用いたp型結晶のオーミック接合の可能性を見出した。 7. 化学気相輸送法による酸化亜鉛単結晶の成長 前年の実験において、炭素を輸送剤として用いた化学気相輸送法によりZnO単結晶の成長を試み、長 さ1cmを越える比較的大きい単結晶を成長することができた。本年は、その輸送機構および反応機 構を明らかにすることができた。その結果を基に、新しい輸送剤を提案することができ、その結果、 結晶成長時に酸素分圧を制御することで、化学量論的組成からのずれに起因する結晶の黄色い着色を 消すことが出来た。 8. Al添加による銅の耐高温酸化性の向上 本研究では、銅の耐酸化性向上を目的としてCu-Al合金に着目し、その酸化機構とAlの優先酸化によ る高温耐酸化性の向上を認めることができ、その機構を明らかにした。 9. AlN:Er薄膜の作製に関する研究 透明ガラス基板上にEr添加AlN薄膜を作製し、その発光特性に対する、基板バイアス、アニールおよ びSiと酸素の共添加の効果を明らかにした。. −6−.

(9) 研. 【研究活動報告】. 究. 活. 動. 報. 告. 光機能設計研究分野(2004.1∼2004.12) 教 授 : 伊藤 攻 助 教 授 : 小野寺 信治 助 手 : 荒木 保幸 COEフェロー: モハメド エル・コーリー JSPS研究員 : Huimin Zheng 研 究 留 学 生 : ミオマオス 大 学 院 生 : 伊藤 光成,中村 巧, 甘 震海, 佐々木 幹雄, Atula, 大竹 翠子, 北爪 宏治, 日高 葵. Sandanayaka. 本研究分野では,長短パルスレーザーを用いた高速分光法を主に用いることによって,新規機能性物 質の光機能を評価することにより,更なる物性の向上を目指すとともに,高効率な光反応を設計するこ とを研究の目標としている. 2004年の研究活動としては,以下のように概括される. 1. フラーレン・電子ドナー連結分子の光誘起電荷分離に関する研究 本研究は,電子アクセプターとしてのフラーレンと電子ドナーを共有結合することにより,高速か つ高効率に電荷分離状態を生成させることができる.フラ ーレンをアクセプタ-にした場合には特に電荷分離状態が. H3C CH2. 11. N. N. 長寿命化することを我々は見出してきている.この長寿命 化は光起電デバイスへの応用において不可欠な物性である.. 1-n. n. 本年度は,ビニルカルバゾール(PVCz)とフラーレン(C6 )誘導体を結合させたPVCz− C60の光励起電荷キャリア生. 0. n=0.01, 0.03, 0.05. 成・消滅過程を検討した.PVCzにC60をドープすることで,. PVCz-C60 (n%). 光導電性の向上が達成することがすでに明らかとなってい るが,その原因はPVCzとC60間の光誘起電子移動反応であ. る.すでに当研究室によりC60の励起3重項からの電子移動過程が明らかにされているが,PVCzにC60 を直接結合するとC60の励起1重項からの電荷分離と引き続 き起こるホールのダイナミクスにより,電荷分離状態の存. CH3. 在時間が数百マイクロ秒に及ぶことが明らかとなった.. N. また,Benzothiadiazole(BTD)とTriphenylamine(TPA) を結合し、光捕集アンテナ分子かつ電子ドナーとしてフラ ーレンを共有結合させたC60-BTD-TPA. N N. S. N. 3元系分子の光誘. 起電子移動を検討した.電荷分離はC60励起1重項から進行 するため,BDT-TPA励起の場合はC60励起1重項へのエネル ギー移動後、電荷分離が進行することが明らかとなった.. −7−. C60-BTD-TPA.

(10) 研. 2.. 究. 活. 動. 報. 告. フラーレン−電子ドナー含有ロタキサンにおけるロタキサン内光誘起電荷分離過程に関する研究. 昨年度に引き続き,ロタキサン骨格により電子ドナーと電子アクセプタ-であるフラーレンを空間的 に配置した系の光電荷分離状態の生成・減 衰過程の発展を試みた.亜鉛ポルフィリン. O. O. NH. (ZnP)を両端に持つ軸分子をフラーレン を有するリングで囲んだロタキサン分子. H N. の光電荷分離過程は,軸分子の長さ,すな. O N. わちロタキサンのサイズに依存している. N. ことが明らかとなった.ロタキサンのサイ. O. HN. H N. R O. O. S. S. N. O. N. O N. N. Zn. Zn N. N. ズが小さい場合,光電荷分離はほぼ10 0%ZnPの励起1重項から進行するが,サイ ズが大きくなるに従って励起1重項からの 電荷分離が交換交差と競争するようにな り,ZnPの励起3重項からの電子移動も進行. a O. するため,トータルな電荷分離状態生成の R=. 量子収率はサイズに依存していなかった.. b O. また生じた電荷分離状態の寿命もロタキ. O. O. O. c. サンサイズに依存し,最大のものではベン ゾ二トリル中650 ns の寿命であった.. 3. 亜鉛ポルフィリンの軸配位を利用した自己組織化ドナー・アクセプタ-超分子内の光電荷分離に関する 研究 フラーレンを電子アクセプターとして用いた 光合成模倣システムを構築する困難さの一つに, 合成の困難さが挙げられる. これを克服するた め,配位結合を用いた自己組織化ドナー・アクセ N. プター超分子内の光誘起電荷分離過程の研究を 行ってきている.本年度は,フラーレンに2つの. N Zn. N. N. N H. N N Zn. N. ピリジル基を導入した誘導体と亜鉛ポルフィリ. N. ン2分子からなる超分子(3元系)において,顕著 な超分子形成定数の増大と,電荷分離効率の向上 が明らかとなった. 4.. O. N N. O. Self-assembled zincporphyrin dimer C60-triad. その他 当分野では,国内外問わず数多くの共同研究を行い,本年度も多数の成果を上げることが出来た.. また,上記の他にも,フラーレンを用いた光起電デバイスの達成に向けたフラーレン誘導体の合成, オリゴチオフェン− C60多元系の超高速電荷分離過程の解明に向けた蛍光アップコンバージョン法に よる蛍光寿命測定装置の構築等,フラーレンの関与する電子移動反応の研究を進展させた.. −8−.

(11) 研. 【研究活動報告】. 究. 活. 動. 報. 告. 電子機能設計研究分野(2004.1∼2004.12) 教 助 大 学 院 学 部 学. 授 手 生 生. :梅津 良昭 :西村 忠久、亀田 知人 :秦 良介、石川 純,小穴 :永嶋 英明、松浦 利英. 敦司、米澤. 一平、安川. 由佳. 本研究分野では、素材製造プロセスからの排水あるいは坑廃水や天然の発生源に由来する環境水の 汚染および工業製品である素材の不純物による汚染に対する防御技術の開発・改善について研究活動 を行っている.水溶液系に対しては、排水中の無機及び有機の微量有害物の除去、水溶液中の酸化・ 還元-沈殿生成反応の制御による複合酸化物の生成、層状構造を有する複合水酸化物(ハイドロタルサ イト型結晶)の化学修飾による機能化とその水浄化技術への応用、廃棄物からの有価金属の回収など について対象とする化学種間の電子の授受反応の設計、制御に注目して研究を進めている。2004年の 研究活動としては,以下のように概括される. 1. 水溶液からのセレンイオン種の沈殿除去に関する研究 本研究は,排水中のセレン、アンチモンイオン種を沈殿除去するためのプロセスの開発に必要な基礎 的なデータを系統的に測定、集積することを目的としている.両元素ともに水溶液中では複数の酸化 状態をとり、Se(Ⅳ)、Se(Ⅵ)およびSb(Ⅲ)、Sb(Ⅴ)の金属酸イオン種が安定に存在する.これらアニオン と水酸化第二鉄との共沈に関与する難溶性化合物を決定し、生成反応を制御する因子を明らかにした. また、各アニオンを含む難溶性塩(BaあるいはCaとの塩)を含む系の相平衡関係を明らかにして、安 定に存在する固相を決定した。この固相の生成反応を採用することによってSeイオン種を沈殿させ, Se含有率の高い少量のスラッジの生成を以ってSeを除去するプロセスの可能性を示した.Sbイオン種 は水酸化第二鉄との共沈の挙動がその酸化状態によって異なり、水溶液からのSb(Ⅴ)の共沈除去の進行 は中性域の水溶液中では非常に遅く、水相に残留するSb(Ⅴ)イオン濃度が保持時間とともに24時間以上 にわたって低下を続けることを明らかにした. 2. MgOを主体とする土壌固化材の開発に関する研究 汚染土壌の無害化処理技術の開発は、環境浄化に必要な技術の側面とともに土地の経済的価値を左右す る最重要因子に関わる面から取り組みが急がれている.汚染源の完全除去とともに、土地の利用形態によって は有害物の固定、難溶化による無害化・固化法の適用が合理的であると考えられる.広く実施されているコン クリート固化法では、固化物が接触する水のpH を高くして生物系の生息を妨げるという難点を有する.低pH 固化剤として注目され始めた酸化マグネシウムを主体とする固化剤の成分が凝結・固化中に示す反応を追跡 した.空気中の炭酸ガスが混練水を反応場として HCO3-を供給して MgO の浸出、MgCO3・3H2O としての晶析 が進むことを明らかにした.また、水相中のフッ化物イオン、ホウ酸イオン等のアニオンは MgO 表面への吸着 によって短時間で除去されることを見出した.MgO が炭酸塩化するにしたがって、いったん MgO 粒子表面に 吸着されたホウ酸イオンが溶液中に放出されることを示した.また、鉛イオンはたとえば溶リン(リン鉱石とカル シウム酸化物の溶融凝固物)と反応して充分に低い濃度まで除去可能である。この研究は、地元企業2社およ びみやぎ産業振興機構産学連携推進課との協力の下に遂行しているものである. 3. 有機酸イオンの層間へのインターカレートによって機能化したハイドロタルサイト型結晶の合成と水環境浄 化への利用 ハイドロタルサイト型結晶構造を有するMg-Al複水酸化物はその層間にアニオンを吸収してホスト. −9−.

(12) 研. 究. 活. 動. 報. 告. 層の過剰電荷を中和するという特徴がある。この特性を利用して水溶液中に溶解させた有機酸イオン 等を層間に含む複水酸化物を合成し、その有機酸の構造に含まれる機能性原子集団の作用を環境水浄 化、特に重金属イオンや有機有害物質の吸収に利用する事を志向して研究を進めている。これによっ て、EDTAや界面活性剤のような水溶性有機物あるいは粘度の高い有機物を層間に格納する微粒結晶を えて、固体としての扱いやすさと有機物の機能を備えた材料が得られる.有機酸の構造を適宜選択し て、特定の有機物、例えば内分泌撹乱化学物質と共通の構造を有するビスフェノールAを選択的に識別 してこれを層間に取り込む機能を有する複水酸化物を合成し、その特性を調べ、対象物の抽出、逆抽 出のサイクル使用が可能であることを示した。 4. 常温の硫酸塩溶液からのマンガン-鉄スピネルの晶析と粒子の特性 マンガンを含む鉄スピネルの微粒結晶を常温の第一鉄およびマンガン硫酸塩混合水溶液から空気吹き込 みと沈殿の熟成によって生成させ、その反応経過および粒子の特性に及ぼす反応条件の影響を調べた。空 気の吹き込み量を適度におさえることで反応が進行する酸化ポテンシャルを制御して、常温で MnーFe スピネ ル結晶を生成させた.組成、酸化の速さ、沈殿熟成などによって粒子の磁気特性が変わることを示した。また、 低い温度で吸着、酸化、結晶生成反応が遅いことを利用して、反応サイトを固体表面に制限して金属粒子表 面をスピネル薄膜によって被覆する可能性について検討している。 5.重油脱硫廃触媒からのアンモニア水溶液を用いたバナジウムおよびモリブデンの回収に関する研究 重油の脱硫工程から排出される廃触媒からバナジウムおよびモリブデンを回収するためのアンモニ ア水およびアンモニウム塩を用いた湿式プロセスを開発する基礎的なデータを得た。両元素ともに、 それぞれの金属酸イオンとしてアンモニア水溶液に溶け、アンモニウム塩を塩析剤として使用できる という特性を有している。この特性を利用したプロセスが実用規模で構成できることを検証した。概 略は以下のとおりである。 低温における酸化焙焼によって触媒粒子を覆っている重油およびいおうを除去、触媒表面のバナジ ウム、モリブデンおよび触媒活性点に吸着している重油由来の金属成分を酸化する。これを希薄アン モニア水で浸出して、バナジウム、モリブデンおよびアンミン錯体が安定なニッケル、コバルト等を 水相に抽出する。pH調整後、硫酸アンモニウムあるいはモリブデン酸アンモニウム塩によってはじめ にバナジウムを、次いでモリブデンをいずれもアンモニウム塩の形で分離回収する。目的金属を放出 したアンモニア水は最初の浸出工程に送り、繰り返し使用する。. −10−.

(13) 研. 【研究活動報告】. 究. 活. 動. 報. 告. 生体機能設計研究分野(2004.. 1∼2004. 12). 教 授:袖岡幹子 助 手:濱島義隆, 平井剛(∼9月) 機関研究員:清水忠 技術補佐員:田中禮子 博士研究員:染井秀徳 (∼10月), どど孝介 (4月∼10月) 大 学 院 生:川崎秀和, 住吉紘一, 笹本直樹, 鈴木俊明, 大塚慎也, 志村雄太, 渡辺亨, 飯塚雅人, 大窪恵, 田村俊裕 学 部 学 生:梅林夏子, 高橋昌弘 本研究分野では,有機合成化学を基盤として,新しい生物活性物質の創製とその効率的合成法の開 発を目指した研究活動を行っている.2004年の研究活動としては,以下のように概括される. 1.. 蛋白質のリン酸化レベルを制御する分子の開発研究. 癌や糖尿病など現代の難治疾患の多くは,生体内の恒常性を制御する細胞内情報伝達の "乱れ" が 関与している.細胞内情報伝達の基本的なしくみに蛋白質のリン酸化-脱リン酸化による情報伝達のス イッチのon-offがあげられる.本研究分野ではこの蛋白質のリン酸化を制御する分子の創製を目指し た研究を行っている. プロテインキナーゼ阻害剤の開発研究 プロテインキナーゼC (PKC) は細胞の増殖、分化に関与するタンパク質リン酸化酵素であり,アイ ソザイム選択的阻害剤は新規抗がん剤として期待されている.我々はPKCの活性調節部位(C1Bドメイ ン)とPKC活性化剤であるホルボールエステルとの複合体のX線結晶構造をもとに,新規PKCリガンドと してイソベンゾフラノン (IB) 誘導体を開発した.IB誘導体とPKCδ C1Bドメインとの複合体分子モデ ルを構築しその相互作用の詳細を明らかにすることに成功し,徹底的な構造活性相関からPKCの活性化 機構に関するいくつかの知見を得ることができた.また,PKCがリガンド結合サイトを二カ所もつこと に着目し,IB誘導体の二量体を新しく合成してその結合能を調べたところ,より強力なリガンドであ ることが分かった. プロテインホスファターゼ阻害剤の開発研究 プロテインホスファターゼ(蛋白質脱リン酸化酵素)の選択的阻害剤の開発研究も行っている.具 体的ターゲットとして,セリン/スレオニンについたリン酸をはずすタイプのホスファターゼの一種で, 臓器移植の際の拒絶反応に重要な役割をはたしている細胞性免疫活性化の鍵酵素であるカルシニュー リン(PP2B)の高選択的阻害剤の設計と合成研究を行った.現在までに類縁酵素であるPP1, PP2Aを全 く阻害することなくカルシニューリンを選択的に阻害する化合物の創製に成功し,本年度はさらにそ の大量合成法の確立を行いより阻害活性の強い誘導体の開発を目指し検討を行った. さらにチロシンについたリン酸をはずすタイプのホスファターゼ (PTP) の阻害剤の研究に関しては, 糖尿病におけるインスリンシグナルの抑制に関わっているとされるPTP-1Bの阻害剤開発を志向した化 合物ライブラリーを更に充実させ新規阻害剤を見出した.また,細胞増殖や癌化に関係していると考 えられているVHRやCdc25などの酵素に対する阻害剤研究では,RK-682をリード化合物とする構造活性 相関研究の結果,より優れた性質の誘導体を見出すことに成功した. 2. 細胞死抑制剤に関する研究 アルツハイマー病やパーキンソン病といった様々な神経変性疾患や,脳梗塞や心筋梗塞といった虚 血性障害において,“必要な細胞の死”が症状の発生や悪化に深く関わっている.従ってこの細胞の. −11−.

(14) 研. 究. 活. 動. 報. 告. 死を抑制する化合物はこれらの疾患に対する医薬として期待される.しかし一方で不要になった細胞 の死は生体にとって必要なものであり,この機能に異常がおきると癌や自己免疫疾患などの疾病を引 き起こす.従って,これらの病的な傷害性の細胞死と生理的細胞死を区別して傷害性の細胞死だけを 選択的に抑制するような化合物を開発することができれば,画期的医薬となるとともに,細胞の死と いう生物学における基本的問題の詳細な分子機構の解明にもつながる.本研究分野では,既に生理的 な細胞死に特徴的なアポトーシスを抑制することなく,傷害性の細胞死(ネクローシス)を選択的に 抑制する化合物の開発に成功している.本年度はこれまでの化合物が不安定であった点を克服し,さ らに強力な阻害剤を創製することができた.また,本化合物をプローブとして用いた作用機序の解明 研究を行った. 3. 遷移金属を用いた新規触媒的不斉反応の開発と医薬品合成への応用に関する研究 光学異性体の片方を効率良く合成する不斉合成法の開発は,医薬や農薬,液晶材料などの生産にお いて非常に重要である.本研究分野では遷移金属の特性に注目して新しい反応機構を提案し,それに 基づいて新反応を開発する研究にも取り組んでいる.昨年度までにカチオン性パラジウム錯体とカル ボニル化合物から直接キラルPdエノラートが生成することを見出し,それを用いてこれまでにない適 用性をもつ触媒的不斉マイケル反応ならびに不斉フッ素化反応の開発を行った.本年度はこのエノラ ートが酸性条件において生成することに着目し,プロトン酸で効率的に活性化されるイミンを用いた マンニッヒ型反応を検討したところ,高選択的に反応が進行することを見出した.さらにフッ素化反 応ではケトホスフォン酸エステルやオキシインドールに対するフッ素化も高選択的に進行することを 見出し,我々の触媒系の基質一般性を拡大することにも成功した.また,塩基性を示すPd錯体とアミ ン塩を組み合わせて用いることで,高選択的なアミンの不斉共役付加反応も開発した.これらは,生 物活性化合物の合成素子として頻繁に見られるβ-アミノ酸を合成する効率的な方法である.現在,我々 の開発した反応を新しい生物活性物質の設計と合成に応用する研究を行っている.. −12−.

(15) 研. 【研究活動報告】. 究. 活. 動. 報. 告. 物理プロセス設計研究分野. (2004.1∼2004.12). 教 授:齋藤文良 助 手:加納純也,張 其武,Turczyn Roman リサーチフェロー:塩川貴洋 大 学 院 生:清野恵一(D3),盧 金鳳(D3),Gudin Dariusz(D2),東条孝俊,王 軍(以 上D1),西村健太郎,山下 透、Solihin(以上M1) 学 部 学 生:恩田 準,鈴田裕一朗 (以上B4)、川本 哲(B3) 研 究 生:William Tongamp(パプアニューギニア) 技術補佐員:西村文緒 H16年2月、Prof. M. Lapkowski(Silesian Univ. Technology, Poland)を迎え、研究討論などを行っ た。また、3月末には加納君が米国より帰国,代わって、同年4月より張其武君が米国留学(Ames Lab., Iowa State University)。窪田俊一、高橋純一両氏(旧島田昌彦研究室助手)を当研究グループに迎 えた。また、田中泰光,伊藤貴裕両氏は博士コース修了し、それぞれもとの会社へ戻る。森君は修士 修了、就職.また,三尾君(学振特別研究員)は、けいはんな(博士研究員)へ移動。国際会議関係 では、ABC-2004(9月、公州(韓国))、REWASとEC-CANMET Workshop(9-10月、Madrid(スペイン)),N EPTIS-13(11月,淡路),K-J国際シンポジウム(12月、丹陽 (韓国))に参加,招待・一般講演を行う. また,11月に多元研国際ミニシンポ並びにProf.A.W.Nienow氏(英国)を迎えての国際シンポをそれぞ れ実施(仙台)した. 以下はこの1年間での研究活動の概要である. 1. メカノケミカル(MC)法を利用した材料開発と人工資源処理 (1) 複合フッ化物合成ならびに次世代照明GaN単結晶育成の原料粉末調製に関する研究 アルカリフッ化物(AF,A=Li, Na, NH4等)とレアメタルフッ化物(REF3,RE=レアメタル)をMC処理し, 複合フッ化物A3REF6やAREF4を直接合成するプロセスを見出し,その合成反応の達成度・難易度が出発 フッ化物の水への溶解度と密接に関連していることを明らかにした. (2)上記の研究に関連し、MC合成した(NH4)GaF6を焼成してGaN粉末を調整するプロセスを開発し、その 粉末を転動造粒法などによって粒度調製し、アモノサーマル法による単結晶育成のための原料粉末調 整法について研究を行っている.(マッチングファンド振興調整プロジェクト研究) (3)廃棄物・人工資源からの有価物を回収に関する研究(科研費研究(基盤(A),萌芽)) 各種廃触媒をMC処理し、その後、酸による溶媒抽出(湿式処理)して含まれる貴金属(Co, Hf, Pdな ど)を低温で効率良く回収するためのプロセス開発を行っている (4)乾式での複合酸化物ナノ粒子粉末の合成 複数の塩化物とアルカリとのMC処理により塩を分散した水酸化物をMC合成し,それを低温焼成(水酸 化物は酸化物となる)後,水洗し塩を除去し,酸化物超微粒子を合成する新しい機能性ナノサイズ酸 化物粉末合成法を提案し,合成粉末の特性評価を行っている(一部,日鉄鉱業(株)との共同研究). (5)窒素あるいはイオウの金属酸化物粉末粒子表面へのドーピングによる触媒の合成と特性評価 TiO2、ZnOなどの金属酸化物微粒子に,NあるいはSをMCドーピングし,可視光応答型光触媒を合成する 研究を行っている.合成物は,紫外から可視光域(緑色光(波長530nm程度))まで応答し,屋外はもとよ り室内でも使用可能な高効率光触媒となることを確認しているし,性能についてはNO分解特性、抗菌 性能などが対象であり、また、試料表面でのラジカルの特性などに関する評価研究も行っている(一部, 佐藤(次)研究室,手老研究室,シナネンゼオミック(株),(株)神戸製鋼所との共同研究). (6)セルロースの分子構造制御 天然に大量に存在する再生可能な高分子,セルロースの高度利用を目指し,種々の添加剤を選択してM C処理し,セルロースの分子構造の変化とそれに伴う物性変化を検討している.添加剤には無機低分子 化合物、有機化合物などを選択,MC処理によるセルロース分子官能基との反応・相互作用を材料科学 的手法によって検討している.その結果,構造の不規則性や複雑な相互作用が発現していることを確. −13−.

(16) 研. 究. 活. 動. 報. 告. 認し,その詳細な機構解明を進めている. (7)新しい天然資源処理法の開発 希少有価金属含有天然鉱石をMC処理し,その後化学的あるいは物理的処理を併用することによって含 有金属を容易に,低コストで回収する新しいプロセス開発を推進中である(JFEミネラル(株)との共 同研究). 2.離散要素法によるボールミルシミュレーション (1)媒体型粉砕機の最適設計・スケールアップ法開発 離散要素法(DEM)を基本としたモデルを用いて,媒体(ボール群)型粉砕機内におけるボール群運動の 3次元運動の解明を行っている.既に乾式では粉体共存下で良好にボール群運動のシミュレーションが できることを明らかにしているが,ミル種やその大きさの違いあるいは操作条件の異なる乾式処理条 件でのボール群運動のシミュレーション結果について、企業からの要望が多くなっており,それに対応 する共同プログラムが進行中である.また,湿式粉砕におけるボール群運動のシミュレーション法開 発研究を推進中であり,モデル中のパラメータとして流体抵抗,粘性,浮力を考慮した結果,実験結 果(粉砕速度)との良好な相関性が示せるととともに,乾式粉砕との相違も明確になった(一部は(株) 神戸製鋼所,(株)栗本鉄工所,太平洋セメント(株)などとの共同研究). (2)ミル内媒体(ボール群)運動のシミュレーションとMC効果など実験との融合研究 各種ミル内のボール群運動のDEMシミュレーションによる情報と、粉砕あるいはMC反応との相関性から、 所望する粒度達成までの粉砕処理時間、あるいは目標とするMC反応収率を得るまでの処理時間を正確 に予測する新しいミル運転最適化条件の探索法、スケールアップ法などに関する研究を実施している。 (リーズ大学および屋久島電工(株)他との共同研究). 3.新規高輝度発光材料の研究開発 本研究では発光材料の結晶構造と発光特性の関連性に着目し、結晶構造解析の知見から発光材料の 特性向上を図ることを目標としている。今回、PDP(Plasma Display Panel)への応用を視野に入れ、Sr -Al-Si-O系化合物にEu2+を付活した青色発光材料を合成し、粉末X線回折法により得られた強度データ から、リートベルト法により結晶構造パラメータ(原子位置、温度因子、サイト占有率など)の精密 化を行い、発光特性と結晶構造との関連性を詳細に検討した。この結果、付活剤濃度あるいは共付活 剤濃度の変化に伴う発光特性の変化が、付活剤周辺の構造変化に起因することを明確にした。(窪田 俊一) 4.擬一次元結晶構造Ca3Co2O6の熱電変換特性 擬一次元結晶構造を有するCa3Co2O6をベースとしたドープ系・置換系酸化物を対象とし,それらの単 結晶/多結晶体を合成し、その結晶構造解析,熱電変換特性の評価を行った.例えば、Ca3Co2O6につい ては、その一次元結晶構造はCoO6八面体とCoO6プリズムがc軸方向に面共有で交互積層した[CoO3]∞鎖と それと平行なCa列とで構成されていることを明確にした.これによって,これら合成物の電気的性質 や伝熱特性などは著しい異方性を示すことを明らかにした.(一部,本学学際科学国際高等研究セン ター,トヨタ自動車(株)との共同研究)(高橋純一) 5.その他 その他,本年度よりスタートした本学研究所連携プロジェクト研究や、従来より継続の海外学術交 流協定研究機関を含めた学内外研究機関・企業との共同研究が幾つか進行中であり,成果を挙げてい る.. −14−.

(17) 研. 【研究活動報告】. 究. 活. 動. 報. 告. 化学プロセス設計研究分野(2004.1∼2004.12) 教. 授:溝口庄三. 講. 師:柴田浩幸. 助. 手:山本研一. 本研究分野では,鉄鋼の精錬・凝固に関する重要課題を対象とし,新しい製造プロセスと材料特性 開発のための基盤的な研究を行っている.またベースメタル研究ステーションの所管分野としても活 動しており、2004年の研究活動としては,以下のように概括される.スウェーデン王立工科大学との 共同研究を実施し、二人の研究員Jenny Strande , Jesper Applebergを受け入れて共同研究を実施し た。. 1. 高温下における固体鉄中のCu析出挙動 鉄スクラップリサイクルを推進するに当たっての今後の課題として,鉄スクラップ中トランプエレ メントであるCu, Snによる高温脆化の問題がある.一方で,微細に析出したCuは鋼材の強度を高める ことに有効であり, Interstitial Free Steel(IF鋼)をベースとした高r値をもつ高強度鋼板の製造が 可能であることも知られている.また、Snは引っ張り特性や冷間鍛造には害を与えないということも 分っている。従って,Fe-Cu合金,Fe-Sn合金,Fe-Cu-Sn合金におけるCuの析出挙動を制御することは重 要であるが,その挙動自体も不明な点が多い.そこで,Cuの析出挙動を把握し,制御することを目的 として,高温下における固体鉄中のCu析出の“in-situ”観察を行っている.まず,Cu濃度が高いFe-1 0%Cu合金を用い,冷却条件を連続的に冷却する方法と、1423Kで等温保持する方法とでCuの析出挙動を 調べた.その結果,連続冷却では観察されないL-(Cu, Fe)が、等温保持ではγ粒界に観察されること 等が明らかになった.次にMnS等の析出物がCu析出におよぼす影響を調べるため,MnSを含むFe-Cu合金 についても検討を行った.この場合,連続冷却、等温保持共に,MnSとCuが複合析出することがわかっ た.析出物をさらに詳細に調べた結果,粒内には超微細な20∼50nm程度のfcc構造を持ったCuが多数析 出していることが判明した.これは,MnSが超微細Cuの析出に影響を及ぼしていることを示唆している と考えられ,鋼中介在物を利用した超微細Cuの析出制御の可能性が示唆された.また,Fe-Sn鋼につい ては,超微細な20∼40nm程度のCu1.6S,Cu1.8Sが多数析出していることを見出した.最後にFe-Cu-Sn合金 において,Snを添加することでL-(Cu, Sn, Fe)相が存在する領域が低温側にも拡大されるが,MnSによ る不均質核生成効果を確認し,20nm程度のCuや50nm程度のCu7.4S2うの微細析出物が析出することを見出 した. 2.MnSと銅の間の接触角 鉄鋼中での高温析出現象や各種介在物を核とした不均質核生成の議論を深め、かつ定量的に行うた めには、それぞれの介在物と溶鋼あるいは高温析出物質との間の界面エネルギーを評価する必要があ る。しかしながら各種介在物と溶鋼間界面エネルギーを定量的に求めることは容易ではない.これま での研究からMnSが銅の優先析出サイトになることが見出されている.しかしながら、MnSと銅の間の 接触角が不明であるため、核生成理論による議論が不十分な現状であった。このような研究上の隘路 を打破するために、MnSと銅融体間の接触角の測定を実施した。接触角の測定を行うために新たに急速 加熱が可能で、液滴法が実施できるイメージ炉を導入した.MnSと銅間の接触角は銅の溶融直後は90度 近いが直ちに反応が起こり60度程度まで減少することがわかった.この結果は、鋼中においてMnSが銅 の優先析出サイトになり得ることを古典的核生成理論により説明可能であることを指示している. 3.スラグ/メタル界面での介在物挙動の観察 鉄鋼中の介在物は、溶鋼内で凝集後浮上しスラグ/メタル界面においてスラグに吸収され除去される. このような鉄鋼の清浄化をよりいっそう進めるためにはスラグ/メタル界面における介在物の挙動を. −15−.

(18) 研. 究. 活. 動. 報. 告. 解明することが急務である.そこでレーザ顕微鏡を用いて、スラグ/メタル界面での介在物吸収現象の 観察を試みた.アルミナ坩堝に鉄鋼の試料を入れ、その上に両面を研磨したスラグディスク置き、昇 温した.スラグが溶解した後、スラグ層を介してスラグ/メタル界面を観察した.このような手法を用 いるため、スラグはレーザ光に対して透明である必要があり、鉄分を含まないCaO-Al2O3-SiO2の3元 系をスラグ試料の成分として選択した.観察結果として、スラグ/メタル界面における種々の介在物の 挙動を観察することに成功した.詳細について研究を継続中である. 4.ステンレス鋼中のCe系介在物挙動の観察 ステンレス鋼では脱酸素剤としてMischメタルが使用されている.このためCe酸化物が介在物として 溶鋼中に生成し存在してる.このようなステンレス鋼を連続鋳造法で鋳込む場合に、溶鋼中の介在物 が原因で、連続鋳造ノズルが閉塞してしまい操業が阻害されるという問題がある.そこで本研究プロ ジェクトではステンレス鋼中のCe系介在物の凝集・合体の挙動をレーザ顕微鏡により観察し、Ce系介 在物の溶鋼表面での挙動の解明を試みた.Ce系の介在物はAl酸化物と複合的に生成しているので、複 合酸化物の違いを見出せるように数種類の試料をアーク溶解炉にて作製した.作製した試料からレー ザ顕微鏡用の試料を切り出し、アルミナあるいはマグネシア坩堝中で高純度Ar気流下で溶解し、溶鋼 表面での介在物挙動を観察した.その結果、Ce系複合酸化物は溶鋼表面で容易に凝集することがわか ったが、その凝集力の組成依存性や介在物の形態に対する依存性は現在継続して研究中である. 5.鉄基合金の包晶反応・変態の観察 鉄系の状態図でしばしば包晶型状態図が見られる.鉄−炭素系の包晶反応・変態は連続鋳造で作製 されるスラブの表面品質に大きな影響があることが知られている.また、包晶反応・変態に関わる研 究はこれまでも多数報告されている.しかしながら未だに未解明の点が多い.このような背景から、 鉄系合金の包晶反応・変態について、レーザ顕微鏡を用いた直接観察による解明を実施している. 6.銅合金の熱物性測定 銅合金は鋼の連続鋳造の鋳型材料や電線材料などとして非常に広範囲で使用されている.この合金 の具備すべき用件は使用目的によって異なるが、ほとんどの場合に高強度かつ高い電気伝導特性の両 方を同時に満たすような材料設計が指向されている.これらの材料特性の制御には合金元素の析出が 深く関わっている.そこで本研究ではレーザフラッシュ法を用いて、銅合金の析出に伴う熱拡散率の 変化のその場測定を実施した.その結果、温度の上昇に伴い、析出が起こり熱拡散率の値が高くなる ことがわかった.. −16−.

(19) 研. 【研究活動報告】. 究. 活. 動. 報. 告. 量子プロセス設計研究分野(2004.1∼2004.12) 教. 授:佐藤俊一. 助. 手:伊藤勝雄,米山俊夫. 大 学 院 生 :小澤祐市,佐々木幸太,清水翼 本研究分野は,2003年4月にスタートした新しい分野で、レーザーを中心とした高輝度光源を利用し た新しい素材・材料プロセスおよび新しい分析・評価方法の開発を目指している.具体的なテーマと して現在は、レーザー光を用いた素材精製プロセスの基礎研究や新素材創製プロセス、微細構造作製 プロセス、原子ビーム表面分析・評価法などの開発を進めている. 本年度,本研究分野に関する人事異動として、伊藤勝雄助手が3月31日付けで退職した.4月からは、 新たに3名の大学院生が研究活動に加わり、研究室としての体制が整いつつある。 本年度の主な研究成果は以下の通りである. 1. 単色高強度原子線の発生と応用に関する研究 本研究分野では単色高強度原子線が将来的に新しいナノ構造作製法や表面分析法として有望である ことに注目し,まず原子線の単色高強度化の実現を目指して研究を行っている. レーザー冷却の技術を用いた原子線制御技術は、単色高強度原子線発生法を実現するための強力な 手段となることが期待される.本年度は原子冷却の実験を進めた.まず,スペクトル特性の異なる2種 類の高出力広帯域レーザー光源を用い、原子冷却実験を行った.2種類のレーザーを用いることで、従 来の1種類のレーザーでの冷却より速度幅の狭い原子線を得ることが出来た.本方法は、簡便に連続的 単色原子線を得ることのできる方法として、有望であると考えられる.現在は、加速用のレーザーを 用いて、さらなる高密度単色化を目指し、真空チャンバーの改造や使用するレーザー光源の準備を進 めている. 高密度単色化を行った原子線に対し、Laguerre Gaussian (LG) 型のビーム形状を持つレーザー光を集 光用として使用すると、理論上数オングストロームのスポットに原子ビームを集光できることが予想 されている.本方法はサブナノメートルの領域を対象とした新しい技術分野の開拓への先導的な役割 を果たすものと考えられるだけでなく、エネルギーのそろった高輝度・高エネルギー中性原子線源と しても利用可能であると期待されており、本研究分野では将来的にその実現に向けて研究を進める予 定である. 2.光誘導ドリフト効果を用いたルビジウムの同位体分離 光誘導ドリフト効果によって特定の同位体を空間的に分離できることが知られており,本研究分野 ではこの効果を同位体分離に応用する試みを進めている.これまでに、ルビジウム原子、リチウム原 子を用いて、光誘導ドリフトによる同位体分離の確認を行ってきた.本年度より光誘導ドリフトを効 率的に行い、長時間動作によるグラムオーダーの分離を試みている. 光誘導ドリフトの効率は、ルビジウム原子の基底準位の微細構造に起因するポンピング効果を補償 できるようなサイドバンドを持ち、かつ、スペクトル幅がブロードでより多くの原子をドリフト対象 に出来るレーザー光を使用することで、向上させることができる.具体的には、VCSEL レーザーの FM 変調(超微細構造を補償するサイドバンドの発生と 100MHz 程度のブロード化の同時実現)とインジ ェクションによる増幅により行う. 本年度は、VCSEL レーザーへの印加電流を 3GHz と 100MHz で高速に変調し、サイドバンドの発生 とスペクトル幅のブロード化を同時に実現した.今後は、得られたレーザー光で高出力半導体レーザ ーをインジェクションロックし、高出力でブロードなレーザー光を得て、高効率な同位体分離の実験 に着手する予定である. 3.フェムト秒レーザーアブレーションによるBN薄膜作製 フェムト秒レーザーはパルス持続時間が極めて短いため、高いピーク強度のレーザー光を容易に得 ることができる.パルスレーザー堆積法への応用研究も盛んに行われており、従来のナノ秒レーザー. −17−.

(20) 研. 究. 活. 動. 報. 告. では実現できないような高エネルギー原子およびイオンの発生が確認されている.本研究ではフェム ト秒レーザーの特性を生かして、ワイドギャップ半導体のひとつである窒化ボロン(BN)薄膜作製を試 みている. これまでに、h-BN をターゲットとしてアブレーションの分光学的研究と、薄膜作製、さらにそれら の分析を行ってきた.特にフェムト秒とナノ秒レーザーによるアブレーションの違いを分光学的に明 らかにし、さらに薄膜作成への効果を検討してきた.一部の薄膜では、目標とする c-BN の生成が観察 されたものの、高品質で信頼性の高い薄膜作製技術を確立するには至っていなかった.その大きな原 因として、アブレーション時に大量に発生するフラグメントやドロプレットの存在を挙げることがで きる. そこで、本年度はターゲットを c-BN として、レーザープルームからの発光分光分析を行い、h-BN ターゲットの場合との比較を行った.また、実際に薄膜作製を行い、SEM、TEM、FT-IR、XPS などで 薄膜の特性を調べた.その結果、h-BN ターゲットでは得られなかった sp3 結合の存在が FT-IR によっ て確認された.さらに TEM によって結晶性のよい薄膜が作製されていることも見出された.この結晶 の大きさは、多くの c-BN 薄膜で報告されている数 10nm 程度の微結晶に比べると一桁以上大きなグレ インサイズを有していることも明らかとなった.現在、この sp3 結合が c-BN あるいは w-BN のどちらに 起因するものであるかの確認を行っている.今後はレーザー照射条件や基板温度などの実験パラメー タの最適化を行い、高品質 BN 薄膜の作製を目指す予定である. 4.新しい偏光制御レーザーの開発 光トラッピング法はマイクロからナノメートル領域の透明物体の精密操作方法として、細胞生物学 やマイクロマシーニングの領域で活発に利用されている.ところが、光の吸収が強い金属などの不透 明物体や、半導体などの高屈折率物質に対しては、反射や吸収による放射圧が支配的となるため、微 粒子を3次元的に捕捉できるような強いトラッピング力を発生させることが困難であり、その適用範囲 は透明微粒子に限られていた. 最近、偏光方向が放射状のレーザー光の集光特性に関して理論的な研究が盛んになり、極めてユニ ークな特性が明らかにされつつある.これらの特性は光トラッピングにとって、従来のレーザービー ムでは実現できないような数々の有用性を示しており、その応用研究の推進が強く期待されている. しかしながら、現状では適当な波長で十分な強度のレーザー光を発生する技術が未開発であるため、 光トラッピングへの応用研究はほとんど進展が見られていない. 本研究分野では、本年度よりこの新しい偏光レーザーを用いた光トラッピングの研究に着手した. まず新しい偏光素子を考案し、これを用いた直接径偏光レーザービームの発生方法の開発を開始した. これまでに報告例のある偏光素子は直交偏光成分とその位相の空間分離および空間合成を行う、非常 に複雑な構成となっており、特に位相の合成は振動に極めて敏感であるといった問題点があった.こ れに対して、本研究者らが設計した偏光素子は、極めて簡単な構成ながらも高い偏光方向選択性を有 した従来にない全く新しいタイプの素子である。試作過程においては様々な問題が生じたものの、こ れまでにほぼ使用可能な性能を有する素子の試作を終えた.現在は、この偏光素子を自作した半導体 レーザー励起固体レーザー内に挿入してレーザー発振を試みている.予備的ながら、予想される偏光 のレーザー光の発生を示す結果が得られつつあり、今後はその詳細を明らかにするとともに、光トラ ッピングへの応用を進めていく予定である.. −18−.

(21) 研. 【研究活動報告】. 究. 活. 動. 報. 告. 複雑系プロセス設計研究分野(2004.1∼2004.12) 教 授:中西八郎(兼) 助 教 授:篠原嘉一, 笠井均, 岡田修司 博士研究員:小谷徹, Zornitza Ivanova Glavcheve-Laleva 大 学 院 生:小原一樹、後藤芳幸、峯野禎大, 平石謙太郎, 松川健. 本研究分野では,高性能二次非線形光学材料の合成,固相重合によるπ共役高分子の合成,高分子系熱 電材料の開拓等について研究活動を行っている.2004年の研究活動は,以下のように概括される. 1. 高性能二次非線形光学材料の合成に関する研究 p-トルエンスルホン酸1-メチル-4-(2-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)ビニル)ピリジニウム(DAST)は、近赤外光2 波長の励起による差周波発生によって、広帯域のテラヘルツ波を発生することが可能であり、テラヘルツ波発 生材料としての応用が期待されている。しかしながら、再現性よく光学的に高品質な単結晶を得るまでには至 っていない。そこで、高品質DAST単結晶を作製すべく、原料粉末結晶の高純度化や結晶成長条件の検討を 行った。原料合成法としては、従来は4-メチルピリジニウム塩と4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンズアルデヒドを塩基 触媒存在下縮合させる反応経路がとられていたが、塩基や縮合後に生成する水の混入の可能性があった。そ こで、DAST合成の最終段階で原料となる2成分と溶媒以外が混入しない反応経路についても検討を行った。 両者ともトータルの収率はほぼ同様であった。原料精製のための再結晶条件を種々検討を行った結果、より簡 便な従来法による合成経路で得られたDASTにおいても、充分な精製が可能であることが明らかになった。単 結晶作製では、これまで主に溶媒として用いられてきたメタノールの他、エタノール、アセトニトリルおよびそれ らの混合溶媒などを用い、結晶成長過程や得られた結晶のサイズ・形態についての検討を行った。DASTは、 汎用の溶媒の中ではメタノールに対する溶解度が最も高いとされてきたが、メタノール−アセトニトリル(1:1)混合 溶媒では、メタノールの約2倍の溶解度があることを見出した。また、この溶媒系では板状結晶の厚さ方向成長 が著しく促進されることが明らかとなった。 DAST単結晶からの発生されるテラヘルツ波はその周波数によって強度に大きな変化が見られることから、 その起源を明らかにするためのモデル化合物として、結晶構造は同じでかつ分子構造が異なる誘導体の合成 が望まれていた。そこで、DASTの水素を全て重水素化した誘導体を合成した。また、DASTの p-トルエンスル ホン酸アニオンをp-クロロベンゼンスルホン酸アニオンに置き換えたDASCがDASTと同形結晶を与えることを 見出した。これらの結晶についてのテラヘルツ波発生についての検討を開始した。 2. 固相重合によるπ共役高分子の合成に関する研究 ブタジイン誘導体モノマーを単結晶中で固相重合させることで、大きな三次非線形光学特性を示すことで知 られる単結晶状π共役高分子ポリジアセチレンを得ることができる。一方、ブタジエン誘導体モノマーも同様な 固相重合反応によって、単結晶状ポリマーを与えることが報告されている。両者において、固相重合可能な分 子配列は、結晶中での分子の並進周期が5Åであるという共通点があることから、2種のポリマーが生成するよう な新規単結晶状高分子の合成を試みている。4,4'-ブタジインジベンジルアミンとソルビン酸の塩については、 既にジエン部分はほぼ定量的に重合するものの,ジイン部分の重合はあまり進行しないことを明らかにしてい るが、ポリマーの結晶構造解析によってその結果が裏付けられ、また、この固相重合は単結晶−単結晶転移で あることが確認された。さらに、ブタジイン誘導体モノマーとして1,6-ジアミノ-2,4-ヘキサジインなど合成し、ブタ ジエン誘導体モノマーとしてソルビン酸の他、ムコン酸などを用いて塩を形成させ、それらの固相重合挙動の 検討を行っている。. −19−.

(22) 研. 究. 活. 動. 報. 告. –4. 25. –3. Carrierキャリア濃度 concentration x10 (m ). 2 –1 –1. Hall mobility x10 (m V S ) ホール移動度. Log (ゼーベック係数). [μV・K-1]. 3. 電解重合法によるポリチオフェン膜の合成と熱電特性評価 地球環境問題への対応は「待ったなし」である。 原料採取から廃棄に到るまで、ライフサイクル全 (+)(+) (−)(-) 体を通して地球環境負荷を低減できる材料やデ ITO NiNi ITO バイスが求められる。現状の熱電材料は、1)重金 ニトロベンゼン溶液 モノマー:チオフェン 電解質:テトラブチルアンモニウム 属系主体の無機材料、2)高い製造エネルギー、3) 分離回収が困難などの問題点を有している。豊富 な資源、軽元素系、低製造エネルギー、分離回収 性などの要件を兼ね備えた材料として導電性高 分子が注目される。現在、体温発電や超LSI組付 温調バス けのヒートポンプに熱電素子を応用することが 図1 電解重合装置の概略図 具体的に検討されており、集積化が容易で柔軟性 に富んだ高分子系熱電材料開発への期待は大き 3 い。これに反して、導電性高分子の熱電特性発現 本研究の成果 に関する研究は数例程度と希少である。熱電キャ ポリチオフェン 2 リア輸送特性に関連した基礎的検討は皆無に等 しい。 そこで本研究では、大気中で安定的に使用可能 ポリアセチレン *3 1 な導電性高分子を対象とし、新規分野である高分 *2 ポリアニリン *1 子系熱電材料に関する基礎的検討を実施した。具 体的にはポリチオフェン系膜を電解重合によっ 0 -2 -1 0 1 2 3 て合成し、膜の熱電特性・キャリア輸送特性の検 Log (導電率) [S・cm-1] 討を行った。合成は図1に示す重合装置を用いて *1 Y. W. Park et al., Solid State Commun., 63, 1063 (1987). *2 N. Toshima et al., ICT2000 proceeding, p214-217 (2000). *3 D. Moses et al., Physical review B, 25, 7652 (1982). 行った。電解質濃度、重合温度を変化させること により、導電率が10-2∼102S/cmの電解重合膜を合 成し、ゼーベック係数、ホール移動度、キャリア 図2 電解重合したポリチオフェンの 導電率とゼーベック係数の関係 濃度の評価を行った。 電解重合により合成したポリチオフェン膜のゼ ーベック係数は、図2に示すように、導電率の上昇 16 と共に減少する傾向を示したが、他のポリマーと 比較しても大きい。ポリチオフェンは熱電ポリマ 12 ーとして高い性能を有することが示された。とい える。図3に示すように、ポリチオフェン膜内のキ ャリア濃度は導電率に依存せずに一定で、導電率 8 の増加は移動度の向上によるものであることを明 3 らかにした。ポリチオフェン膜の熱電特性開発と しては、導電率の向上、そのための組織・構造制 4 2 御が重要であると言える。 1 0 0. 20. 40 –1. 導電率 (Scm ) Electrical conductivity. 図3. −20−. 電解重合したポリチオフェンの 導電率とホール移動度の関係.

図  (a)エタノール中の放電プラズマ、(b)炭化鉄内包カーボンナノカプセルTEM像(径~250nm)、  (c) 炭化鉄内包カーボンナノカプセル TEM 像(径 ~5nm ) 5.ダイオキシン類の水環境中への溶解挙動の測定および計算予測(中村 教授、柴田 助手) 環境動態予測のみならず排水処理の際の重要な 基礎データとなるダイオキシン類の水溶液中溶解 度の報告は、社会的要求度の割には非常に少ない。 特に温度依存性および塩類を含んだ系の実測値は 国内外ともにほとんど見当たらず、早急に測定値が 求められている

参照

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