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III -3.高性能非鉛圧電酸化物単結晶の開発

ドキュメント内 研究業績・活動報告2004 (ページ 119-125)

圧電単結晶材料には水晶(SiO2

),ニオブ酸リチウム(LiNbO

3

),タンタル酸リチウム(LiTaO

3

)等があり、

温度安定性が良いこと、均質であること、機械的品質係数Qmが高いこと、などの理由から、フィルタ ー,発振子等で実用化されている。一方、高い圧電応答性が要求される圧電トランス、アクチュエー ター等のデバイスでは、圧電セラミクス材料(PbZrO3

- PbTiO

3

(PZT)を含む多成分系、いわゆる、PZT

系)が用いられている。このPZT系材料は主成分として鉛を多量に含んでいるが、近年、欧米を中心に 環境に害を及ぼす鉛の使用が規制されつつある。現在、

PZTに匹敵する圧電材料は見つかっていないが、

この非鉛の世界的動向は圧電材料にも波及し、圧電材料の無鉛化が望まれている。大学、企業らの研 究機関で非鉛圧電材料の開発が行われているが、圧電トランス、アクチュエーター等のデバイスでは 実用化に至ってはいない。

本研究ではフィルター、発振子らの周波数制御デバイス以外のパワー、動的デバイスにも適用でき る圧電応答性の大きな非鉛圧電単結晶材料の創生を目的としている。結晶育成法にはマイクロ引き下 げ(µ-PD)法を用い、既存材料の構成元素置換体、新規固溶体の探索を行っている。

 

III-2a

.マイクロ引下法により作製した

板状サファイアとチューブ状サファイア単結晶

【研究活動報告】 

ベースメタル研究ステーション

(2004.1〜2004.12) 

 基幹研究員  教 授(兼):溝口庄三(化学プロセス設計研究分野) 

   講 師(兼):柴田浩幸(化学プロセス設計研究分野) 

   助 手(兼):山本研一(化学プロセス設計研究分野) 

 所内協力研究員  教 授(兼):八木順一郎(物理プロセス制御研究分野) 

   教 授(兼):水渡英昭(化学プロセス解析研究分野) 

   教 授(兼):板垣乙未生(物理機能制御研究分野) 

   教 授(兼):早稲田嘉夫(研究所フェロー) 

    教  授(兼):葛西栄輝(化学機能制御研究分野) 

 学内協力研究員  教 授(兼):谷口尚司(金属工学科) 

   教 授(兼):日野光兀(金属工学科) 

   教 授(兼):山村 力(金属工学科) 

     

本研究ステーションでは,鉄,銅などの基礎金属(ベースメタル)の精錬・凝固に関する重要課題 を対象とし,新しい製造プロセスと材料特性開発のための基盤的な研究を行っている.また国内外の 大学および研究機関との密接な交流・共同研究を推進し,我国のみならず,世界の拠点としてその機 能を果たすことを目指している.2004年の研究活動としては,以下のように概括される. 

 

1. 高温下における固体鉄中のCu析出挙動 

鉄スクラップリサイクルを推進するに当たっての今後の課題として,鉄スクラップ中トランプエレ メントであるCu, Snによる高温脆化の問題がある.一方で,微細に析出したCuは鋼材の強度を高める ことに有効であり, Interstitial Free Steel(IF鋼)をベースとした高r値をもつ高強度鋼板の製造が 可能であることも知られている.また、Snは引っ張り特性や冷間鍛造には害を与えないということも 分っている。従って,Fe‑Cu合金,Fe‑Sn合金,Fe‑Cu‑Sn合金におけるCuの析出挙動を制御することは重 要であるが,その挙動自体も不明な点が多い.そこで,Cuの析出挙動を把握し,制御することを目的 として,高温下における固体鉄中のCu析出の in‑situ 観察を行っている.まず,Cu濃度が高いFe‑1 0%Cu合金を用い,冷却条件を連続的に冷却する方法と、1423Kで等温保持する方法とでCuの析出挙動を 調べた.その結果,連続冷却では観察されないL‑(Cu, Fe)が、等温保持ではγ粒界に観察されること 等が明らかになった.次にMnS等の析出物がCu析出におよぼす影響を調べるため,MnSを含むFe‑Cu合金 についても検討を行った.この場合,連続冷却、等温保持共に,MnSとCuが複合析出することがわかっ た.析出物をさらに詳細に調べた結果,粒内には超微細な20〜50nm程度のfcc構造を持ったCuが多数析 出していることが判明した.これは,MnSが超微細Cuの析出に影響を及ぼしていることを示唆している と考えられ,鋼中介在物を利用した超微細Cuの析出制御の可能性が示唆された.また,Fe‑Sn鋼につい ては,超微細な20〜40nm程度のCu1.6S,Cu1.8Sが多数析出していることを見出した.最後にFe‑Cu‑Sn合金 において,Snを添加することでL‑(Cu, Sn, Fe)相が存在する領域が低温側にも拡大されるが,MnSによ る不均質核生成効果を確認し,20nm程度のCuや50nm程度のCu7.4S2の微細析出物が析出することを見出し た.  

 

2.流体理論に基づく高炉の超高生産性・超低環境負荷操業に関するシミュレーション 

 化石エネルギーを多量に消費する製鉄プロセスからのCO放出削減は、緊急性を有する重要な課題で ある。本研究では、これまでに多流体理論に基づき開発してきた高炉の三次元非定常モデルおよび数 値シミュレーション法を使用して、将来の原燃料需給動向を踏まえた炭材内装原料の装入および水素 系の補助燃料である天然ガスや廃プラスチックなどの羽口からの吹き込み,炉頂ガス再循環,還元・

溶融特性の異なる原料装入など、現行操業を大幅に改善可能と考えられる操業について、生産性、エ ネルギー消費 および、CO2 放出削減について、定量的に検討した。その結果、CO2放出削減には水素 系補助エネルギーの使用が、また、生産性改善には炭材内装原料の挿入が、効果的であることがわか った。 また、後者はシャフト部を低温化するので、今後、溶融温度の低下を可能にする操業法を開 発し、併用することにより現行の2倍近い生産性を挙げることが可能であることを示している. 

 

3.酸化物粒子の微細分散化における脱酸剤添加方法の検討 

 脱酸剤添加後の微細酸化物粒子(MgO, ZrO2, Al2O3, CaO/ Al2O3, MnO/SiO2)の成長挙動について調 べた.粒子径がおよそ 0.05〜5 μm 程度の微細酸化物粒子の粒径分布を測定し,微細粒子の生成に有

効な脱酸剤組成,溶鉄での保持時間の影響について検討を行った. 

 さらに微細酸化物粒子の成長挙動についてオストワルド成長理論を用いて解析を行った.粒子の成 長速度に及ぼす溶解酸素濃度および粒径分布の広がりの影響について明らかにした.また、粒径分布 の広がりは脱酸力よりも酸化物粒子と溶鉄間の界面エネルギーに依存していた。これを酸化物の核生 成頻度と結び付けて検討し、初期に添加する脱酸剤組成が粒径分布の広がりに与える影響について検 討した. 

 

4.オーステナイト結晶粒の微細化に及ぼす溶質元素および析出物粒子の影響 

 鋼の凝固プロセスにおいて、オーステナト結晶粒微細化の技術開発は連続鋳造時の表面割れ感受性 低下、および溶接鋼材の靭性向上に大きく寄与するものである.低中炭素鋼板の溶製プロセスにおい て凝固時においてはまず初晶としてδ相が現れ次にオーステナト相が現れる.このδ相とオーステナ イト相の相関関係については未知な点が多い.本研究では、微細酸化物、窒化物および硫化物を溶鋼 中に均一分散させδ相の微細化方法を調べた。さらに、δ相から生成するオーステナイト相の生成起 点に及ぼす溶質元素の影響および析出物組成を調べることによりオーステナト結晶粒の微細化技術に ついて検討した. 

 

5.炭素飽和のPb‑Fe‑As系およびPb‑Fe‑Sb系の高温相関係 

 酸化鉱、硫化鉱、二次原料などの還元溶錬で副生する高濃度の砒素ないしはアンチモンを含有する 鉄基合金の処理法開発の基礎的研究として、炭素を飽和した鉛―鉄―砒素系および鉛―鉄―アンチモ ン系の1473Kにおける相関係を急冷法により決定した.その結果、これらの系は、鉛濃縮相と鉄濃縮相 とからなる不混和2液相を広い組成域で形成すること、炭素は殆どが鉄濃縮相に分配するが、鉄は鉛 濃縮相に殆ど含まれないこと、一方、アンチモンは鉛濃縮相に多く分配することなどが分った。これ らの相平衡データと鉛―砒素および鉛―アンチモン2元系合金の既存の熱力学データに基づき、炭素 飽和の鉄―砒素系および鉄―アンチモン系の1473Kにおけるラウール基準の活量係数を導出し、

これらを成分元素のモル分率の関数として表した。また、不混和2液相間における貴金属元素の分配 係数を測定した結果、白金は鉄濃縮相へ、銀は鉛濃縮相に、それぞれ、多く分配することが分った. 

 

6.スラグの熱物性 

スラグ融体の熱物性値は精製錬反応プロセスを制御する上で重要である.しかし、その測定の困難 さから特に熱伝導率については測定者の間で大きなばらつきがある.そこで、本年度はCaO−Al 2O3−Si O2系の基本的な組成のスラグの熱伝導率測定を実施するとともに、典型的な高炉スラグについても、そ の熱伝導率の測定を実施した。測定は当研究所で開発したレーザフラッシュ型熱定数測定装置を用い た. 

 

7.基幹金属素材製造プロセスを利用する廃棄物の資源化および減容化 

 最近の最終処分場の残容量予測や素材リサイクルに対する強い社会的要請を考慮すると,廃棄物の 更なる減容化および高効率資源化技術の開発が不可欠である.鉄鋼,非鉄などの基幹金属素材製造プ ロセスは,多量の物質とエネルギーを高温で取り扱うという共通点を持ち,廃棄物の持つ化学エネル ギーおよび物質の回収・有効利用,減容化,無害化を同時に達成する可能性を持つ.本研究では,比 較的大量に発生する産業廃棄物の処理について,種々の素材製造プロセスへの摘要を広く検討してい る.本年度は,廃自動車シュレッダーダストの資源化処理プロセス開発に関連し,燃焼残渣を溶融し た際に発生する高温スラグからの金属および金属塩素化合物の揮発挙動把握のために必要な重金属と ハロゲンの挙動を物理化学的に検討した.具体的には、多元系塩化物の蒸気圧の測定と熱力学データ ベースによる理論計算ならびに反応の平衡論的解析を行った. 

     

多 元 物 質 科 学 研 究 所 研 究 会 報 告   

第 4 回表面力セミナー 

平成

16

3

1

日(月), 於 東北大学多元物質科学研究所反応化学研究棟, 参加者数

41

名 共催: 科学技術振興事業団 CREST プロジェクト 

         「固‑液界面の液体のナノ構造形成評価と制御」 

表面力測定の最近の研究を展望し、さらに関連する分野として分子集合系、バイオ、ソフ トマテリアルに関する幅広い御講演をいただき、活発な討論を行った。

Organizer:

栗原和枝(東北大・多元研)

(1) ソフトコロイドと磁場 

信州大学理学部  尾関寿美男  

 磁場による様々な分子集合系の構造と機能の制御を目指した研究を行った。具体 的には、磁場によるリポソームの融合・分裂制御、脂質膜の分子透過性制御、温度 応答性ゲルとして知られるポリ‑N‑イソプロピルアクリルアミドを磁場中で調製す ることでサイズ制御や異方性の付与、有機‑無機ハイブリッドの磁場による配列や構 造変化、メソポーラスシリカの構造および細孔系制御などの研究を行った。 

 

(2) ナノコピー法による 3 次元構造を持つ超薄膜の作成 

理化学研究所フロンティア研究システム  藤川茂紀  

 ナノメートルサイズの 3 次元構造体の作製技術は、ナノテクノロジーにおいて重 要であるが、いまだその手法は開拓されていない。ここでは、鋳型となる分子、超 分子、ナノ粒子、表面形状などの形状をゾル‑ゲル法により調製したナノ薄膜でコー ティングし、鋳型を除くことでその構造を正確にコピーする方法を提案した。構造 を正確にコピーすることで、分子認識能をもつ材料を調製できる可能性がある。 

 

(3) 結晶表面に挟まれた水分子の挙動― 分子シミュレーションとずり共振測定  東北大学理学研究科  佐久間 博  

 ナノ共振ずり測定法と分子シミュレーションにより固体表面(粘土鉱物)の間に 挟まれた水分子の物性を評価した。分子シミュレーションから固体表面近傍の水分 子の流動性はバルク水と大きく異なるものではなく、またナノ共振ずり測定からは、

雲母表面間の水は厚さ 1.8 nm 以上ではバルク水と同じ粘性を示すことが分かった。 

 

(4) 転写因子タンパク質と DNA 間の相互作用直接測定 

東北大学多元物質科学研究所  清水裕一郎  

 コロイドプローブ原子間力顕微鏡法により表面に配向固定化した転写因子制御タ ンパク質と DNA の相互作用を測定し、タンパク質による特異的な塩基配列の認識に よる相互作用の違いを評価した。 

ドキュメント内 研究業績・活動報告2004 (ページ 119-125)

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