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O 2錯体ゲル法

ドキュメント内 研究業績・活動報告2004 (ページ 40-63)

従来法

〜4倍

図2.水に溶ける乳酸チタンの構造 

【研究活動報告】   

量子プロセス制御研究分野

(2004.1〜2004.12) 

教 授 : 垣花 眞人  助 教 授  :  塚田  隆夫 

助 手 : Petrykin Varely  研 究 支 援 者 :  鈴木  義仁 

特 別 大 学 院 生 :  冨田  恒之 

学 部 学 生 : 小林 亮、渡邊 幸太郎 

       

本研究分野では,環境に同和した無機材料の化学プロセスおよび非平衡環境下での構造形成につい て研究活動を行っている.2004年の研究活動としては,以下のように概括される. 

 

1. 錯体ゲル法による光触媒の高機能化に関する研究  本研究は,温和な条件でしかし選択性、加速性を有する溶液 反応系に基礎をおく新規錯体ゲル法による光触媒の合成と高 機能化に関する研究を展開している。一例として、紫外光照 射下で水を水素と酸素とに分解できる光触媒NiO/Sr2Ta2O7の 活性テストの結果を図1に示す。「錯体ゲル法」により得た 試料の活性は、従来法のそれと比べて実に4倍近い高い活性  を示した。 

 

2. 新規水溶性金属化合物の開発に関する研究 

光触媒や電子材料の溶液からの合成には、腐食性の高い強酸性 溶液や有害な有機溶媒が使われるケースがほとんどである。これ ら強酸性溶液や有機溶媒を無害な 中性の 「水」に置換可能な 金属錯体の開発を行っている。人体や環境に悪影響を与える強酸 性溶液や有機溶媒を全く使用しない、環境対応型水溶性チタン化 合物を世界に先駆けて開発した。図2に当研究室で発見した水溶 性乳酸チタン化合物の構造を示す。乳酸は体内にも天然にも存在 する安全な酸であり、これにより、無毒で安全な水を初めて導入 することが可能になり、環境調和および安全性を兼ね備えた新製 品として市販もされた。この他、当研究室で開発した水溶性チタ

ン化合物の例として、チタンペルオキソクエン酸アンモニウム、チタンペルオキソグリコール酸アン モニウムなどがある。同様に、ニオブ・タンタル・ビスマスなど水溶性化合物の開発と設計を進めてい る。 

 

3. 水溶性チタン化合物を用いた水溶液からのチタン含有酸化物の合成に関する研究 

新規水溶性チタン化合物を利用して、種々のチタンを含む酸化物を水溶液から合成した。TiO2、BaT iO3とSrTiO3およびその固溶体、そしてBi4Ti3O12を、種々の水溶性チタン錯体を使い分けて合成し、溶媒 に水を用いることで環境負荷を低減しつつ、合成温度の低温化や高機能化、及び薄膜の形成に成功し た。水溶性チタン化合物を利用した安全で低環境負荷の新しいセラミックス合成の確立を目指してい る。 

図1. NiO/Sr2Ta2O7水分解光触媒の活性テスト 

 

4. 高輝度微小粒径蛍光体の開発に関する研究 

マルチメディアに応えるディスプレイや照明あるいは医療用X線増感紙などに使われている蛍光体 の高純度化学合成を実施している。蛍光体の高機能化と多様化に伴い、微小粒径でかつ高輝度の蛍光 体のニーズが高まっているが、蛍光体の粒径は5−10ミクロンが一般的であり、従来の技術ではこ のニーズに応えられない。そこで当研究室では、特殊な錯体化学技術を導入した錯体均一沈殿法を用 いることにより、粒径1ミクロン以下で実用レベルの高輝度を持つY2O2S:Eu型蛍光体製造方法の開発に 成功した。 

 

5. 酸化物及び半導体単結晶成長時の輸送現象に関する研究 

本研究では,Czochralski(CZ)法による酸化物単結晶成長に関する基礎研究として,数値シミュレー ションによる炉内輸送現象の解明を行っている.本年度は,融液内の3次元非定常対流現象を考慮し た炉内総合熱解析コードの構築を目指し,これまでに開発した1)軸対称総合熱解析コードと2)3次元 非定常融液対流解析コードを統合すべく,そのインターフェースの開発を行った. 

半導体単結晶成長プロセスに関しては,シリコン融液及び結晶の熱物性値測定に資することを目的 とし,昨年度に引き続き,CZ法によるシリコン単結晶成長に関する総合熱解析による各熱物性値の感 度解析を行った.すなわち,各熱物性値の変化が結晶の品質に関わる固液界面形状と生産性に関わる 結晶引上げ速度のシミュレーション結果に対してどの程度影響を与えるかを明らかにした. 

 

6. 不均一場での相分離現象に関する研究 

本研究では,系内に温度分布や濃度分布が存在するいわゆる不均一場での相分離現象について検討 している.本年度は,温度分布に加えて,相分離現象に及ぼす濃度分布の影響を明らかにするために,

イソ酪酸‑水混合液を対象とし,液膜層の垂直方向の温度勾配及び初期濃度勾配を変えることにより,

相分離構造及び層内対流パターンの詳細な観察を行った.結果として,1)ある温度勾配の範囲におい て相分離液滴を一つ含む規則的なセル構造が発現し,2)初期濃度勾配は1)のセル構造内の液滴径サイ ズに影響を与える,ことがわかった.さらに,以上の現象の理論的考察を目的とした数値シミュレー ションコードの開発を行うとともに,相分離構造に及ぼす温度分布,濃度分布の影響について理論的 検討を行った. 

 

7. 液相中の微粒子凝集体の力学的特性の測定に関する研究 

本研究では,微粒子製造プロセスや研磨プロセスの最適化に当たっての基礎研究として,せん断流 中において形成された微粒子凝集体の力学的特性の測定を試みている.本年度は,昨年度に引き続き,

マイクロマニピュレータを利用した微粒子凝集体の圧縮試験装置の開発を行った.特に,凝集体を圧 縮するためのガラスプローブの作製法として,フッ化水素酸水溶液によるケミカルエッチングと機械 研磨工程からなる手法を確立するとともに,これを利用したポリスチレン微粒子凝集体の圧縮試験を 試みた. 

【研究活動報告】

  物理機能解析研究分野

(2004.1〜2004.12) 

教   授:河村純一  助  教  授:柴田行男  助   手:神嶋 修 

大 学 院 生:浅山亮、鳥喰恵祐、鈴木達朗、鈴木貴也、高柳良浩  学 部 生 :岩井良樹

 

 

本年度,当研究分野では,3月末で服部武志教授が定年退官し、東京理科大学教授となられた。4月 から河村純一助教授が教授として本研究分野を担当することになった.また、小山弘君が3月で博士(理 学)の学位を取得した。4月には、新たに3名の修士課程学生と1名の学部生が研究に加わった。 

本研究分野における2004年の活動を総括すると以下の通りである. 

 

 1. イオン伝導性ガラスを用いた薄膜リチウムイオン二次電池の開発 

現在、電子機器の超小型化を目指した超小型電源として、全固体リチウム電池の研究が注目されて いる。本分野では、これまでにパルス・レーザー蒸着(PLD)法により、全固体薄膜リチウムイオン二次 電池を試作し、昨年度に新聞発表した。本年度は、更なる性能向上を目指して種々の条件改善を行な うと共に、PLD法の利点を活かして、正極・負極材料の種類を変えた新たな薄膜電池の構成を探索した。 

その結果、(1)リチウムコバルト酸化物正極については、600℃でのポストアニールにより、層状岩 塩型構造が優先的に成長し、電池の充放電特性が大きく改善される事が分かった。(2)正極として、Li Mn2O4を薄膜化したものは、熱処理無しでも比較的良好な充放電特性を示す事が分かった。(3)過電圧 充電時の分解や柔放電に伴う体積変化により、多層膜界面での剥離や破壊の問題が明確になった。(4) スズ系酸化物を負極に用いると、初期にSEI(Solid Electrolyte Interface)を形成するのに必要な不 可逆容量が20 30%存在することが分かった。(4)PLDで作成したアモルファスおよび結晶性のLiCoO2薄 膜につて、電子物性、光学特性、結晶配向性を詳しく検討した。 

これらの結果は、固体イオニクス学会、日本物理学会、および第8回アジア固体イオニクス国際会議 (ACSSI9)で発表された。ACSSI9では、本発表のポスターが、最優秀ポスター賞を受賞した。また、第 4回日仏リチウム電池国際セミナーで招待講演された。また、その一部はElectrochem.Communn.およ びSolid State Ionicsに掲載された。 

 

2. 燃料電池用電解質膜のNMRによる研究 

  昨年に引き続き、低温型燃料電池の電解質膜として用いられる、ナフィオン膜中での水とメタノ ール分子およびプロトンの存在状態とダイナミクスを明らかにするために、プロトンNMRの測定を行な っている。装置は、ハイナムセンターのMSL200およびAvance400を用いた。 

 本年度は、新たに水蒸気圧を制御しながらin situでNMRスペクトルを測定するために、蒸気圧制御 用NMRプローブシステムの開発を行なった。それを用いて、NMR信号強度の精密測定から、ナフィオン 膜中の水分量を定量し、化学シフトと緩和時間を温度および水分量依存性として決定した。その結果、

スルフォン基に対する水分子量の比Nが5 6付近を境に、化学シフト、線幅、緩和時間が変化し、スル フォン基に束縛された水から比較的自由な水分子へと変化する事が分かった。 

 一方、パルス磁場勾配装置を用いて、ナフィオンと外部との水およびメタノールの交換反応をin si tuで可視化する事を試みた。実験は、直径4mmのナフィオン微小球を、純水、重水、メタノール溶媒に 交互に浸漬し、プロトン密度画像を時間分解で測定した。画僧解析からプロトン濃度を拡散方程式に より解析し、マクロな拡散係数を求めた。その結果、通常の磁場勾配法による自己拡散係数の測定値 よりも小さな値を示した。この結果は、ナフィオンのナノ細孔中での自己拡散係数がマクロな拡散係 数より大きい事を示唆する。 

 これらの結果の一部は、6月に韓国・済州島で開催された第8回アジア固体イオニクス国際会議をは じめ、第30回固体イオニクス討論会、物理学会年会などで発表し、一部は現在投稿中である。なお、

ドキュメント内 研究業績・活動報告2004 (ページ 40-63)

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