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ドキュメント内 研究業績・活動報告2004 (ページ 30-40)

磁性相互作用により,磁場配向することはすでに明らかである。しかし材料化するためには、ナノ結晶 分散系を固定化することは重要な課題であった。今回,硬化性重合剤であるラウリルアクリレートモノ マーを分散溶媒として,再沈法によりDASTナノ結晶分散液の作製を試みた結果,DASTナノ結晶を同モノ マーに分散させることができ、磁場下におけるDASTナノ結晶の配向挙動を分光学的に観測できた。さら に、架橋剤としてtricyclo[5.2.1.02,6]decane‑4,8‑dimethanoldiacrylateおよび光開始剤としてbenzo in isopropyl etherを添加し,窒素置換後、15 Tまで印加可能な超伝導磁石を用いて,磁場下DAST微結 晶の異方的配向を維持した状態で紫外光照射によりDASTナノ結晶分散系を光固定化させることに成功 した。得られたDASTナノ結晶分散体バルクロッドは紅色透明であり,ゴム状であるにもかかわらず,そ の配向状態は熱的に(少なくとも100℃,24時間)安定で,自由な形状の固体を作製できることがわか った。偏光子を通して直視で光の透過度の違いが明瞭にわかる特徴をもつため,例えば偏光カラーフィ ルター等への応用が期待される。 

 

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【研究活動報告】  

分子機能制御研究分野  

(2004.1〜2004.12) 

教    授 :原田宣之  助  教  授 :渡辺政隆 

助    手 :松本高利, 桑原俊介 

大 学 院 生:葛西祐介, 小坂  仁, 田地宏美, 藤田拓麻, 内藤順平  赤木  愛, 小幡和弘, 関口  聡, 野呂一世 

 

 本研究分野では、「分子キラリティーの化学」をキーワードとし、生物活性化合物の生体内反応機 構の分子レベルでの解明、制御および応用を目的に生理活性化合物の構造、絶対立体化学、合成につ いて研究活動を行っている。また、キラル分割と CD による絶対配置決定の新規方法の開発に関する 研究も行っている。2004 年の研究活動としては、以下のように概括される。  

 

1. 新規五員環型キラル分子モーターの開発と回転の高速化 

 物質の扱える最小単位である原子、分子をナノレベルで 制御する、すなわちナノテクノロジーの究極の目的の一つ は「分子機械」の製作である。機械装置をナノレベルで構 築できれば、これまでにないサイズ効率の優れた機能性材 料の創製など多くの発展が期待できる。本研究室ではこれ までに、分子機械「光動力キラル分子モーター」の開発に 世界で初めて成功した。キラル分子モーターは、光エネル ギーによる二重結合のシス‑トランス異性化を回転の動力

源とし、分子のキラリティーによって回転方向の制御に成功している。しかし、熱異性化における反 応速度が遅いことに改良の余地が残されていた。 

 本研究では、熱異性化における反応速度を向上させる目的で、キラル分子モーターの新規五員環型

(R,R,fC)-[CD(+)281]-1 O

O O Me Me

O O EtO OEt

O

Absolute Stereostructure of (R,R,fC)-[CD(+)281]-1 by X-ray

モデル (2S,2'S)‑(M,M)‑trans‑2a を開発した。(2S,2'S)‑(M,M)‑trans‑2a は、従来の六員環型モデル  (3R,3'R)‑(P,P)‑trans‑1a と比べて、問題であった熱異性化反応の活性化エネルギーが大きく低下し、

反応速度が大きく向上した。さらに、(2S,2'S)‑(M,M)‑trans‑2a を 10 連続回転させてもキラリティ ーを失わないことから、耐久性にも優れていることがわかった。以上、新規五員環型キラル分子モー ターの開発と回転の高速化を達成することに成功した。 

               

2. キラル C60 フラーレン二付加体の X 線結晶構造解析による明確な絶対立体化学の決定 

 フラーレン C60 は対称でアキラルな分子であるが、二付加体では二つの置換基の位置関係により C60  骨格がキラルになり得る。我々は既に、キラルな側鎖部分を導入したキラル C60 フラーレン cis‑3 二 付加体の絶対立体化学を、CD スペクトルの理論計算と、NMR を用いた配座解析により決定した。しか し、キラル C60 フラーレン cis‑3 二付加体の、X 線結晶構造解析による明確な絶対立体化学の決定は、

これまで報告されていなかった。 

 今回我々は、X 線結晶構造解析を目的として、種々の側鎖を持つキラル C60 フラーレン cis‑3 二付 加体を合成し、その単結晶化を試みた。その中で (R,R,fC)‑[CD(+)281]‑1 について単結晶化に成功し た。しかしながら、厚さ 1‐ 2 ・m の薄片状単結晶であり、通常の X 線装置は使えなかった。そこで、

SPring‑8 でのシンクロトロン放射光を用いて (R,R,fC)‑[CD(+)281]‑1 の X 線結晶構造解析を行い、

その立体構造を明確に決定できた。X 線では相対配置しか決定できなかったが、側鎖部分に絶対配置 の内部標準を含んでおり、それより分子全体の絶対配置を明確に決定できた。得られた結果は、先の 我々の絶対立体化学の決定を支持するものであった。 

           

3. 2-メトキシ-2-(1-ナフチル)プロピオン酸を用いた長鎖アセチレンアルコールの光学分割と絶対配置決定 

我々はこれまで、2‑メトキシ‑2‑(1‑ナフチル)プロピオン酸 (1: 

MαNP acid) がアセチレンアルコール (±)‑2 に対し優れた光学分割

能を有し、その磁気異方性効果から 1H NMR によりアセチレンアルコールの絶対立体化学を決定できる ことを報告している。今回、我々は種々の長鎖のアセチレンアルコールに対し、MαNP acid 法を適用 した。MαNP acid 法により、両側鎖の炭素数が非常に近い、あるいは炭素数が等しい長鎖アセチレン アルコール類までも容易に分割することができ、その絶対配置を決定することに成功した。さらに加 溶媒分解により、光学的に純粋な長鎖アセチレンアルコール (S)‑(‐ )‑3 の合成に成功した。一方、

(S,S)‑(‐ )‑4A のアセチレン部分を還元した後に加溶媒分解することで、光学的に純粋な長鎖飽和ア ルコール (S)‑6 を合成することに成功した。

【研究活動報告】

物理プロセス制御研究分野

2004. 1

2004. 12

) 教 授:八木順一郎

助 手:埜上 洋,孟繁明 研 究 員:薛  娟琴

研 究 留 学 生:S. Pintowantoro, M. A. Ribas

大 学 院 生:儲 満生,土岡和彦,行方新一郎,佐藤省吾,宋 京錫,辻 智也,

宮下重人,国友和也,山本高郁

本研究分野のグループ員の主な異動は以下のとおりである.3月末に土岡および行方の2名が博士 課程前期2年の課程を,また国友および山本の2名が博士課程後期3年の課程を修了した.またPinto

wantoroが研究期間を終了し帰国した.1月には薛研究員が来日し,半年間の滞在の後7月に帰国した.

10月には儲が博士課程後期3年の課程を修了し,帰国した.

本研究分野では移動現象論に基づき,各種素材製造業における単位プロセスの流動,伝熱,反応の 諸現象を数値シミュレーションとその実験的検証により明らかにする.さらに,エクセルギーの概念 を導入してシステム全体の最適化を検討し,新プロセスを開発する.また,放出すると地球温暖化を 促進させる炭酸ガスからの有用物質の製造や燃焼合成法による新素材の製造に関する研究も行う.そ れらの研究内容は次のようなキーワードで表せる:移動現象,反応速度,プロセス解析,生産効率,

エネルギー効率,最適化,環境保全.

2004

年の研究活動としては以下のように総括される.

1.

化学反応を利用した溶融スラグからのエネルギー回収プロセスの開発

 鉄鋼製錬プロセスで大量に排出される溶融スラグは,その一部がセメント材料や建設資材などとし て利用されているが,プロセスから排出された時点でプロセスが対象とする金属素材の融点と同等の 高温を有しているにもかかわらず,その顕熱の回収は行われていない.高温の溶融スラグからの熱・

物質同時回収を達成するためには,高温熱回収法および回収物質の有価性向上が必要である.そこで 本研究においては,メタン−水蒸気あるいはメタン−二酸化炭素間の改質反応に伴う反応吸熱を用い て高温の熱エネルギーを化学エネルギーに変換して効率的に回収する方法の開発を進めている.また 物質回収の面ではスラグの急冷が不可欠である.このような条件下において熱と物質の同時回収を達 成するために,回転カップ式微粒化装置によって溶融スラグを微粒化し,その過程で上記の反応ガス をスラグに吹き付けることで,スラグ−反応ガス間の界面積を増大させて反応効率を向上させ,スラ グ冷却速度の向上を図る方法を提案している.このプロセスを実現するための基礎的検討として,ス ラグ表面における上記の改質反応速度の測定を行うと共に,スラグ模擬融液を使用して回転カップ式 微粒化装置による高粘性融液の微粒化特性およびガス吹き付けの影響を実験的に検討した.さらに当 プロセスの実機化を視野に入れた検討を行うため,微粒化されたスラグ滴・粒子の飛行・伝熱に加え て,吹き付けガスの流動,飛散粒子の運動による装置内雰囲気ガスの流動誘起現象を考慮したシミュ レーションモデルの開発とこれを用いた熱流動解析を行った.

2.

多流体製錬プロセスにおける流動,伝熱,反応の移動現象論的研究

 各種金属素材製錬プロセスの多くはエネルギー多消費型プロセスであり,エネルギー使用量および 炭酸ガス排出量の削減は急務の課題である.本研究では移動層プロセスを対象に数値実験を通じたプ ロセス・操業設計を行うことを目的として,多流体理論に基づく数値シミュレーション技法の開発を 行っており,これまでに三次元非定常解析技術を確立した.この手法を製鉄用高炉に応用し,将来の 原燃料需給動向を踏まえた炭材内装原料の装入,炉頂ガス再循環操業,還元・溶融特性の異なる原料 装入など種々の操業条件に適用し,エネルギー消費量,炭酸ガス排出量,副産物排出量など環境負荷 の極小化に向けた検討を実施した.また,移動層型反応器内における多孔質充填粒子の反応脆化挙動 および炉内充填物の更新挙動に及ぼす炉芯領域の上下運動の影響について実験的検討を行い,その発 現機構を明らかにした.

3.

燃焼合成(SHS)による機能性材料の創出

ドキュメント内 研究業績・活動報告2004 (ページ 30-40)

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