小学部第3学年 自立活動学習指導案 1 単元名 「じぶんで つたえよう」 2 指導観 ○ 対象児童は、肢体不自由、知的障害、視覚障害を併せ有する児童で、自立活動中心の教育課程 で学習を行っている。本単元における児童の実態は次のとおりである。 ○ 本単元は、特別支援学校学習指導要領自立活動編「3 人間関係の形成(1)他者とのかかわ りの基礎に関すること。」「4 環境の把握(1)保有する感覚の活用に関すること。」「5 身体 の動き(1)姿勢と運動・動作の基本的技能に関すること。」「6 コミュニケーション(1)コ ミュニケーションの基礎的能力に関すること。(2)言語の受容と表出に関すること。」の内容か ら構成されている。 本単元では、情動的交流遊びを通して、児童が発話で要求を伝えることをねらう。情動的交流 遊びは、情動の中の「楽しい」という快の気持ちを高め、その気持ちを相手と共有しながら関わ り合う遊びのことである。さらに、教師と児童が一対一で関わりの中で情動を共有し、相手への 意識を高めることができる。 このことは、情動的交流遊びを通して快の気持ちを高めながら、その遊びを共有している相手 との関わりを楽しむことにつながり、コミュニケーション意欲の高まりを期待することができる。 発話という伝わりやすいコミュニケーション手段を身に付け、能動的に人と関わろうとする力は、 今後、学校や施設等で集団生活を過ごしていく中において欠かせない力となる。現在、周りへの 興味・関心が高まっているものの、自分から能動的に周りに関わる手段を獲得できていない児童 にとって、発話で要求を周囲の人に伝える学習は、児童の意思の表出とともに自分から周囲に関 わっていくことと捉え、意義深いと考える。 ○ 本単元の指導に当たっては、単元を「気付く」「分かる」「使う」の三つの段階に分けて授業を展開 していく。まず、「気付く」段階では、遊びの開始に「せんせい して」の言葉が必要であるとい う関係性に気付かせる。その際「せんせい して」の言葉が録音されて再生することができる音 声代替スイッチ(以下、スイッチとする。)を遊びを開始する際に児童始動で用いる。次に、「分か 姿 勢 ・日常的には、仰向け位や座位保持椅子上で過ごすことが多い。 ・あぐら座位をとらせて教師が背中を支えると、頭部を持ち上げたまま一定の時間 まっすぐに保てる。 ・移動はほぼ全面介助で、座位保持椅子を使用している。寝返りや背這いで3m程 移動することができる。 ・両腕を大きく上に持ち上げる等の粗大な動きや、左手でマラカスを振ったり、お もちゃのキーボードのスイッチを押したりするなど微細な動きができる。 認 知 ・視覚的には、光を感じる程度である。 ・聴覚優位で、聞こえた音楽や言葉の一部を音声で模倣して表出することができる。 ・教師からの言葉掛けや友達の声を聞いて笑顔になったり声を出して笑ったりする。 ・楽器や音の鳴る玩具を好む。 ・言葉と意味と動作が結びついているものがある。 情 緒 ・個別の学習でも集団の中でも、気持ちが落ち着いていることが多いが、突然の大 きな音や急な身体接触には、激しく驚き泣き出すこともある。 言 語 表 出 ・模倣して言語表出できる言葉が8つ程度ある。 ・曲を聞きながら一緒に一部を歌える歌がある。 ・状況に気付いて自分から発する言葉が2つ程度ある。 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 身 体 の 状 況 運 動・ 動 作
る」段階では、遊びの開始に「せんせい して」の言葉が必要であることを理解させるために、 二試行目の遊びが終了後、教師が言葉掛けをせずに間を置き、児童が自分からスイッチに意識を 向けるまで待つようにする。さらに、「使う」段階では、スイッチの言葉を段階的に精選し発話で 遊びの開始を要求するように促していく。なお、全ての段階において始めの合図と「おしまい」 サインを取り入れる。始めの合図は、児童が活動に見通しをもち、活動への期待感を高めるため に遊びを象徴する音(遊具が動く音、遊びの歌)を聞かせるようにする。「おしまい」サインは、 一つの遊具での遊びが終了したことを明確にするために言葉掛けとともに身振りを伴うサインを 教師と一緒に行う。また、単元の全時間を通して学習の導入段階で筋緊張の弛めと姿勢づくりを 行い、遊ぶときの適切な姿勢を判断できるように児童の体調や身体の状態をきめ細かく把握する。 3 単元目標 〇 自分から、教師に要求を伝えようとすることができる。【意欲】 〇 言葉が要求を伝える手段であることが分かる。【理解】 ○ 遊びが終わった際に、自分から発話で要求を伝えることができる。 【技能】 4 指導計画(総時間数9時間) 階 気付く(第1次) 分かる (第2次) 使う (第3次) 時 数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 ね ら い 言 葉 が 遊 び を 開 始 す るた め の 手 段 で あ る こ と の気付く 言葉が遊びを開始する 手段であると分かる 遊びを開始するための手段として、言葉を使う。 学 習 活 動 ①筋緊張弛め・姿勢づくり②ふれあい歌遊び③トランポリン遊び④ラージボール遊び 障 害 特 性 に 応 じ た 工 夫 ①共感→②待つ 〇 掌 や 肘 の 支 援 で ス イ ッチを一緒に押す 〈1試行目後〉 ①共感→②誘う→③待 つ 〈2試行目後〉 ①共感→②待つ→③誘 う 〇スイッチを児童が押 す ①共感→②待つ 〇スイッチ『せんせい して』→『せんせい』→『…』→ スイッチ無し (スイッチから言葉を段階的に抜く) 身体的支援(筋緊張の弛め、姿勢づくり) 場所の固定化(遊具や起点のマットの位置の固定) 終始の明確化(音を手掛かりに遊びを開始する。「おしまい」サイン) 内容の簡素化(一つの遊びを三試行する。短時間の活動設定) 5 本時 (1) 日時、場所 平成〇年〇月〇日 〇曜日 第〇校時 小学部〇〇教室にて (2) 本時の目標 〇 遊びが一回終わると、開始を求めてスイッチを押そうとする。(意欲) 〇 スイッチの言葉「せんせい」を聞いて、続く言葉(して)を言おうとする。(理解)(技能) (3) 本時指導の考え方 前時までに、児童は3つの情動的交流遊びを通して教師と快の気持ちを共有しながら、遊びを 開始する際に教師の言葉掛けを受けて自分でスイッチを押し、「せんせいして」の言葉を再生する ことを繰り返し経験してきた。そのことで、「スイッチを押して『せんせいして』の言葉が再生さ れると遊びが開始する」ということが分かり、カチカチというスイッチの操作音をきっかけにし たり、感触の違う敷物をガイドにしたりしながらではあるが、自分からスイッチを押す姿が見ら れるようになった。 本時指導では引き続きふれあい歌遊び、トランポリン遊び、ラージボール遊びの3つの情動的 交流遊びを通して児童が快の気持ちを高めながら、遊びが1回終了した後に手元のスイッチを押 し、スイッチから再生される「せんせい」の言葉に続いてA児が「して」と発話する姿をねらう。 遊 び の 設 定 の 工 夫 教 師 の 関 わ り 方 の 工 夫
「大根漬け」のふれあい歌遊びでは、教師と直接的な身体接触を通して、様々な触刺激を楽しむ ことができるようにする。次に、トランポリン遊びでは「まつぼっくり」の歌に合わせてリズム が変わる揺れを楽しむことができるようにする。3つ目のラージボール遊びでは「バスごっこ」 の歌に合わせた上下左右の揺れを楽しむことができるようにする。 遊びが終わった際に、「楽しかったね」と言葉掛けをし、児童と教師とで楽しい気持ちを共有し た後教師はすぐに言葉掛けをせずに、児童が遊びを開始するためにスイッチに意識を向ける姿を 待つ。ただし、児童が自分からスイッチを探して押そうとする姿が見られない場合は、再度教師 が「もう一回したいときはどうするのかな。」とスイッチへの気付きを促す言葉掛けをしたり、手 元から少し離れた場所に置かれたスイッチの場所を操作音を鳴らして伝えたりして、スイッチを 押すように促す。児童が、すぐにスイッチに意識を向けて顔や身体の向きを変えたり、スイッチ に手を伸ばそうとしたりしたときは称賛する。スイッチから「せんせい」の言葉が再生された後、 その言葉に続けて児童が「して」と発話するのを待つ。しばらく待ってもA児からの発話が見ら れない場合は、「せんせいして、だよ。」と発話を促す言葉掛けを行う。ただし、児童が「せんせ いして」の言葉を覚え、遊びの開始前に「せんせい」や「して」などの発話をした際は、「そうだ ね」と共感し、すぐにスイッチを押して言葉の確認をするとともにすぐに遊びを始める。 なお、本時指導に際しては児童の障害の特性に応じて以下の点に配慮する。 ・活動の始めには、筋緊張の弛めや姿勢づくりを行い、活動しやすい身体づくりを行う。 ・安心して学習活動が続けられるように、児童の身体に触れる際には言葉掛けをする。 ・遊びを始める際には、教師の言葉掛けとともに遊具の音や振動を伝え、一つの遊びが終わ る際には、手の動きを伴った「おしまい」サインを取り入れることで活動への見通しが持て るようにする。 ・ふれあい歌遊びをするマットとラージボールを置く場所、トランポリンの場所を一定にし、 環境を把握しやすくする。 ・左手の探索行動でスイッチの場所を把握するためのガイドとなるように、スイッチ周辺は マットと感触の異なる素材の敷物を敷く。 (4) 準備 キーボード、エアレックスマット、ラージボール、ラージボール受け皿、トランポリン、 姿見鏡、ビックマックスイッチ(音声代替スイッチ) (5) 学習過程 配時 学習内容・活動 指導上の留意点 評価の観点 5 1 始めの挨拶をする。 ・始めの挨拶をする。 ・「名前呼びの歌」を歌う。 2 学習内容を知る。 「じぶんでつたえよう」 ・前時に3つの遊びをしたこ とを想起し、本時は新しい 歌があることを知る。 (□は安全面への配慮) □児童をマットの中央に座らせ、鏡やキーボードは手が届 かない位置に置くようにする。 ・挨拶は、教師と顔を合わすことができるように抱っこ姿 勢で行う。 ・名前呼びの歌は、児童の意欲を引き出すため、児童の手 元でキーボードを弾く。 ・児童が3つの遊びを想起できるよう、身体をタッピング したり、トランポリンやラージボールが弾む音を聞かせ たりして期待感が持てるようにしながら「始めは~をし ます。次は~をします。その後~をします。今日は3つ の遊びをします。」と本時の内容を順番に伝え、児童が 学習活動への見通しを持てるようにする。 □児童が、寝返り移動してマットの外に出ないように、教 師がマットから離れる際は、児童から目を離さない。 (☆が、本時目標 に対する評価) ○ 背 中 や 首 を 反 らさずに、安定 し た 姿 勢 で 挨 拶を聞く。 ☆ 歌 を 最 後 ま で 聞いて、呼名で は 笑 顔 を 見 せ たり「はい」と 答えたりする。 ☆ 期 待 す る よ う な 笑 顔 に な っ たり「はい」と 返 事 を し た り する。
10 25 3 身体づくりをする。 〇背中弛め(うつぶせ位) 教師から背中や腰、肩を揺 すられる際、ゆっくり呼吸を して、背中や腰の力を抜く。 〇上体起こし(仰向け位) 教師から片腕をゆっくり引 き上げられる際、頭部をそら さずに上体を90度起こす。 左右3回ずつ行う。 〇上体ひねり(あぐら座位) 後方から教師に支えられた あぐら座位で、片腕を教師と 一緒に前方に伸ばし、伸ばし た腕を教師の支援に合わせて ゆっくり横に動かしながら、 上体をひねる。その際、顔も 同じ方向に向ける。左右1回 ずつ行う。 〇あぐら座位 後方から背中を支えられた あぐら座位で、教師が触れた 箇 所 の 力 を ゆ っ く り 抜 い た り、腹部に力を入れて腰を伸 ばしたりする。 4 3つの遊びを行う。 (1) ふれあい歌遊び 「大根漬け」 ・仰向け姿勢をとる。 ・タッピング、全身ゴロゴロ、 ごしごし、くすぐり等の触 刺激を味わいながら、ふれ あう。 ・児童の片膝を曲げ、尻と足底を床にしっかり着けるよう にする。上体を引き上げる際、下肢が滑らないように教 師の体で固定する。 □腕を前方に伸ばす際は、腕を引っ張らずに、肘の部分を 支えるように支援する。 ・上体が前傾したり後傾したりしないように、適宜、姿見 鏡で児童の全身を確認する。 ・活動は、教師からの身体接触に安心して意識が向くよう に仰向け姿勢で行う。 ・1試行目を始める前には、スイッチの位置を確認しなが ら児童の左手を支援し、スイッチを押すように促す。 ・『せんせい』に続けて教師が「して」と言うことで、「せ んせいして」の言葉を確認する。 ・トランポリンへの移動前には、トランポリンが弾む音を ○ 肩 や 腰 が 浮 か ず に 床 面 に 着 い ている。 ○ 頭 部 を 自 分 で 持ち上げる。 ○ 反 対 側 の 手 を 床 に 着 け て バ ラ ン ス を 取 ろ うとする。 ○ 腕 を 向 け た 側 に、自分で顔を 向 け る 。 ま た は、教師に顔を 向 け る よ う に 軽 く 促 さ れ る と ゆ っ く り と 顔 の 向 き を 変 える。 ○ 腰 の 支 援 を 受 けるだけで、体 幹 と 頭 部 を 3 秒 以 上 正 中 位 に保つ。 〈 3 つ の 遊 び に 共通する評価〉 ☆教師から「楽し いね」と言葉を 掛 け ら れ る と 笑顔になる。ま たは「はい」と 返事をする。 ☆ 遊 び が 一 回 終 わった際、教師 から「もう一回 する」と言葉を 掛けられると、 ・自分からスイッ チを押す。 ・自分からスイッ チ を 探 そ う と ガ イ ド に 触 れ る。 ・教師に促されて ス イ ッ チ に 手 を伸ばす。 ☆『せんせい』に 続いて ・「して」と発話 する。 ・教師が『して』 と言うと、模倣 して「して」と 〈3つの遊びに共通する教師の関わり〉 【1試行目後及び2試行目後】 ① 共感する 児童の快の気持ちが、より高まるように遊びが 終わった後、「楽しかったね」と楽しさを共感す る。 ② 待つ ・児童がスイッチに手を伸ばすのを待つ。 ・じっとしていたら「ん?」「どうするの」等、 スイッチへの気付きを促す言葉掛けをする。 ・スイッチを自分から押すことができたら、『せ んせい』の音声に続けて児童が「して」と発 話するのを待つ。 ・「して」と発話した際は、「そうだね」と共感 し、すぐに「『せんせい して』だね」と言葉 を復唱しフィードバックする。 ・スイッチを押しても、その後の発話が見られ ない際は、「『せんせい して』だよ。」と教師 が促し、児童が言葉を意識して、言うことが できるようにする。 【3試行目後】 ① 共感する (【1 試行目後及び2試行目後】の①と同様) ② おしまいサイン 〈身体づくりの活動に共通する配慮点〉 ※力を抜いたり、入れたりする箇所に触れなが ら児童が自分で意識しやすいように、「今から ここの力を抜くよ。」等の言葉掛けをする。 ※児童の表情を見ながら、ゆっくりと関わり、 力を入れたり抜いたりできた際には、称賛す る。
5 (2) トランポリン遊び 「まつぼっくり」 ・仰向け姿勢又はあぐら姿勢 をとる。 ・「♪ころころころころあった とさ」では、小刻みなリズム の変化を味わう。 (3) ラージボール遊び 「バスごっこ」 ・直径 55 ㎝程のラージボール に、後方から教師に支えら れて腰掛ける。 ・リズミカルな上下の揺れと、 「3・2・1」のかけ声からの 左 又 は 右 へ の 傾 き を 味 わ う。 5 本時学習を振り返り終わり の挨拶をする。 ・遊びの歌を聞いて、本時の 遊びを思い出す。 ・終わりの挨拶をする。 聞かせ、次の活動への期待感が持てるようにする。 □児童をトランポリンに仰向け位にする際は、頭部が下が ってしまわないように、トランポリンの中心部に臀部が くるように配慮する。 ・緊張が強い場合は、身体が反ってしまうため、教師が後 方から肩を支援するあぐら座位の姿勢で活動を行う。姿 勢の変更については、3の身体づくりの活動で、児童の 筋緊張の状態を把握した結果から判断する。 □安全に活動ができるようにエアレックスマットを2枚 敷き、中央で活動する。 ・児童が3つ目の活動が始まる合図への付きと、遊びへの 期待感を高めるため、少し離れた場所からラージボール が弾む音を聞かせる。 ・ラージボールを弾ませながら児童の側に持ってくること で、ボールとの距離感を体感できるようにする。 ・揺らす際は、上体が前傾したり反ったりしてバランスが 崩れないように、後方から腰をしっかりと支える。 ・遊びの歌のワンフレーズを歌うことで、本時活動を想起 させ、次時も同じ遊びをすることを伝える。 ・挨拶は、教師と顔を合わせることができるように、抱っ こ姿勢で行う。 言う。 ☆ ス イ ッ チ の 操 作 音 を 聞 い て ス イ ッ チ を 探 し、押す。 ☆ 教 師 の 言 葉 か け に 応 答 し た 後、自分からス イッチを押す。 ☆『せんせい』の 音 声 に 続 け て 「して」と発話 する。 ☆ 教 師 の 言 葉 か け に 応 答 し た 後、自分からス イッチを押す。 ☆『せんせい』の 音 声 に 続 け て 「して」と発話 する。