21-W奈良法学会雑誌』第14巻1号 (2001年12月) 〈 論 説 〉
製造物の暇庇に対する不法行為責任
-i ドイツの判例・学説を手掛かりとして 1 1 序章 一問題の所在と課題 二 本 稿 の 構 成 第一章下級審の裁判例││建物建築事例を中心として 第 一 節 は じ め に 第二節下級審の裁判例(以上、二ニ巻三・四合併号) 第三節判例分析(以上、本号) 第二章学説の概観 第三章ドイツにおける最近の議論 第四章結語││課題と展望,
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第14巻l号一一22 第一章第二節(承前) ⑪F 東京地判平成三年一二月二五日判例時報一四三四号九
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頁 [ 事 案 ] 原告L
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以 下 、 X らと称する。)は、昭和五八年八月一日、被告会社巴(株式会社数造形計画研究所)お よ ぴ v u - ( 巴の代表取締役。なお、巴およぴ VH を以下Y
ら と い う 。 ) と の 間 で 、X
らが静岡県伊東市富戸字先原に 住居兼ペンションとして建築を予定した建物につき、 v り を 監 理 技 師 と し 、 L A を 請 負 人 、 工事名を﹁クルミの森 ペンション新築工事﹂とし、請負代金二九七二万円として、 設計・監理および施工の請負契約を締結した。右 建築工事については、同年九月四日に建築確認が下りて着工され、途中一部設計変更が行われたうえ、昭和六O
年三月初めころには入居可能な程度に完成した。ところで、 その後、本件工事について、 VH か ら 、 別 途 工 事 、 追加変更工事等を理由に工事代金の追加請求が次々になされ、結局工事費の総額は四一五O
万 円 に 達 し た が 、 最 終 的 に は 、 X らは、同年五月九日、 VH との間で残代金の額を四四O
万円とすることに合意し、 その支払のた めに額面金額四四O
万円の約束手形を VH に交付し、本件建物の引、渡しを受けたという経緯がある。 ところが、本件建物の引渡後、梅雨期に入り 一階の各部屋の床面にたびたび浸水するという事態が発生し 判旨において述べるような暇班が存在していた。そこで、 X らは同年七月初め以降、 Y らに修補を要求したが、 結局抜本的な補修工事には応じなかった。 そ こ で 、X
らは、補修工事費用(三六一四万円)、工事中の引越し費用(七八万円)住居家賃等(七二万円)、 さらに、﹁本件建物の建築は、従来の職を捨て、家を処分して、ペンション経営に踏み切ったもので、家族全部 の生活を賭けた退く道のない切実な選択であった﹂にもかかわらず、﹁将来にわたって建物の耐久性を危倶せざ23 製造物の暇庇に対する不法行為責任(二) [ 判 旨 ] るをえない﹂とし、慰謝料(三
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万円を下らない、として)を損害とし、 VH に は 、 ﹁ 本 件 契 約 の 請 負 者 と し て 、 工事の設計・監理・施工につき十分な注意をなすべき義務があるところ、前記工事暇庇は、 いずれも建物建築 上の初歩的部分であり、 一階床組の構造については明らかな設計ミスがあり、同仕舞・断熱・紡水工事につい ては施工・監理ミスは明白である﹂として、また、 v u u には、﹁本件建物の設計・監理も実質的に同被告が行い、 その過失により前記暇庇を生じさせた﹂として、 おのおの、請負工事の暇庇担保責任および不法行為責任にも とづき その請求を求めて訴えを提起した。認容(確定)。 ︹ 寝 疲 の 認 定 ︺ 判旨はまず以下のような暇庇現象を指摘する。﹁引渡後、梅雨期を迎えて、風雨の強い時には、 一階玄関の外壁裏床入隅部や両開きドア、 一階食堂の南側出窓及びテラスへの出入口部分の天井等から雨が吹 き込んで床が水浸しになり、更に 一階の各管理人室(居間) の外壁と床の付け根部分からたびたび雨水が進 入するという事態が発生し、このため 一階居間の和室の畳、各部屋の押入れ、洋室のカーペット等にカビが 繁殖し、畳が腐食し、異臭が鼻をつくという状況になった。そのほかにも、玄関の一扉が閉まらない、食堂や二 階客室の墜に雨水漏れのシミ、 風呂場のタイルの亀裂、二階廊下のきしみ、外回りの排水の不良等が発生し、 ペンションの営業上多大の支障が生じるに至った。﹂﹁前期のような被害はその後も解消しないばかりか、雨水 の浸入等は全然おさまらず、このため、基礎土台の木材やこれに接する外壁の合板、押入れ床下の根太等が腐 朽し、畳・ジュウタン等の腐蝕も進み、 カビが発生し、ダニや羽蟻等も発生するなど、被害が増大している。 そのため、原告らは、家具の下に木をあてがうなどして、湿気による被害を防いでいるが、同居していた原告 荻山の孫が晴息にかかり転居を余儀なくされたうえ、 ペンションの客からカビや悪臭に対する苦情が出るなど、 営業上の支障も生じている。﹂第14巻I号一一24 以上踏まえ、判旨は暇庇原因について次のように認定する。﹁前記被害のうち、 一階床及ぴ壁面への浸水は 外壁下端すなわち土間コンクリートの布基礎とその上に乗せられている木材との間に水切り処理がなされてい な い う え 、 土間コンクリートの上に直接床材(畳・ジュ
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タ ン ) が敷かれているため、雨水が右木材と土間コ ンクリl
トの問の間隙から毛細管現象によって侵入することによるもので、水分が土間コンクリートの上に直 接敷かれた床材に繰り返し吸収されるほか スタッド、壁のプラスターボl
ドも水分を吸い上げるため 土 台 天井を除く内装材が常時湿った状態となる。また、 土間コンクリートの布基礎の聞に断熱材を敷いていないた め、冬季には土間コンクリートの表面で温度差による結露が生じ、これによる水分が床材に吸収されることに な る 。 そ し て 、 土台下に防水紙を敷いていないことが更に事態を悪化させている。右のような水切り処理を施 す こ と 、 土間コンクリートと布基礎の間に断熱材を敷くこと等は、この種の建築工事の基本に属することであ り、これらを欠いていることは、重大な工事暇庇に当たる。また、 一階玄関の外壁裏床入隅部や両開きドア、 一階食堂の南側出窓及ぴテラスへの出入口部分の天井等からの雨水の吹込み、二階客室等の雨漏りは、①アル ミサッシュやその他の外部開口部枠との取り合いの不良、②屋根ケパラの納まりの不良、③出窓屋根と外壁取 り合いの谷桶の納まりの不良、④外壁の亀裂、⑤アルミサッシュの水密性・耐風圧強度が弱いことなどによる も の で あ る 。 ﹂ と 。 [ 法 律 構 成li
寝疲担保および不法行為] ﹁︿証拠略﹀によれば、本件契約の請負者である被告会社は、工事の 設計・施工につき、また、被告会社の代表取締役であり、本件契約の監理技師である被告斉藤は、本件建物の 設計・監理・施工につき、 それぞれ十分な注意をなすべき義務があるところ、前記工事暇庇はいずれも建物建 築上の初歩的部分であり、 一階床組の構造については明らかな設計ミスがあり、雨仕舞・断熱・防水工事につ25一一製造物の穣庇に対する不法行為責任(二) いては施工・監理のミスがあったというべきであるから、被告らは、暇証担保責任及び過失による不法行為責 任を免れず、右工事暇庇によって原告らの被った損害を賠償する責任がある。﹂ [ 損 害 ] 判旨はまず、補修の必要性を次のように述べる。﹁前記認定のような建物の暇抗をそのま [ 修 補 費 用 ] ま放置しておくことは、建物の耐久性を損なうばかりでなく、 ペンション経営面での損失を拡大し、家人の健 康を害するおそれもあるところから、本件建物については早急な補修工事を要する﹂と。そのうえで、補修方 法につき、以下のように述べて、躯体の取壊しと造り直しを指摘する。﹁なかんずく既に構造材の変質・腐蝕、 ダニ・虫の繁殖が進行している雨水の浸入に対する抜本的補修が不可欠である。そのためには、①雨仕舞とり わけ外壁下端の水切り処理、②一階床組仕様の変更、③土台廻りの防水・防湿・防腐対策を目的とした納まり の 変 更 が 必 要 と な る と こ ろ 、 土台及び土台廻りの壁体は既に腐朽が始まっているし、釘等の金物の発錆が進行 しているため、長期の耐用性を考慮すると、 土台・スタッド・壁のプラスターボ
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ド・金物等の部材の取替え が必要である。そして、土台廻りの部材を取り替えるためには、 一旦上部躯体を基礎から浮かせる必要がある カf 一00
ミリ角程度以上の土台の上に一00
ミリ角以上の柱を組み、梁・小屋を掛けて、火打ちゃ筋交いで 補強する木造在来工法の建物の場合は いわゆる﹃曳き家﹄﹂(建造物を解体しないで、機械又は入力によって 水平移動させ、あらかじめ造られた基礎の上に移す工事) の手法で、土台下や柱の脇に支持材を渡し上部躯体 を持ち上げることが可能であるが、断面積の小さい部材を接合した壁で支える枠組み壁工法(いわゆるツl
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工法)によっている本件建物の場合、﹁曳き家﹄の手法は建物の崩壊を招くか少なくとも著しい損傷を 生じる危険があるためにとれず、結局上部躯体を一旦取り壊して造り直すほかはない。﹂以上の認定から、﹁そ のための工事費用は、三六一四万円を下らない﹂と結論づける。第14巻 I号一一 26 本件では、これ以外に、引越費用および家賃等(補修工事期間の四ヶ月間)として一五
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万円および原 告主張のとおり慰謝料を肯定している点が注目される。 ⑫ [ コ メ ン ト ︺ 千葉地裁松戸支部判平成六年八月二五日判例時報一五四三号一四九頁 [ 事 案 ] 原告X
は、平成二年一O
月 一 四 日 、 被告も(住友不動産販売株式会社。不動産の売買・仲介を業とするもの である。)と仲介契約を締結するとともに、同契約にもとづき、じの仲介により、被告 v h (富士物産株式会社) ト 品 川 リ 、 土地および建物(以下、両者を合わせて﹁本件不動産﹂という。なお、建物は以下に述べるような経過 からわかるとおり、中古住宅である。)を買い受け、同年一一月一七日に引渡しを受けた。 ところで、本件土地を含む近隣一帯は、もと水田等の軟弱な湿地帯であったところ、訴外日本電建株式会社 (以下﹁訴外日本電建﹂という。)は、昭和五七年以前に、訴外大日本土木株式会社(以下﹁訴外大日本土木﹂ という。)をして、本件土地に盛土をする等して宅地造成をさせ、昭和五八年二一月ごろ、本件土地上に本件建 物を建築し、同年同月一四日、訴外八景俊彦に本件不動産を売り渡した。なお、訴外日本電建は、 その後、昭 和 六 一 年 一O
月一日、被告 V H ( 国際興業株式会社)に吸収合併され、 vりがその地位を包括承継していたという 事 情 が あ る 。 ところが、本件不動産には次のような曜庇が存在していた。まず、本件建物の床面は、 一、二階とも、南か ら北にかけて傾斜しており、 その程度は 一階の居間西側に沿った線において七O
分 の ( 五 メlF
ル 四 六 セ ンチの聞に、七センチ八ミリ下がる)、同居聞東側に沿った線で約八八分の一 センチ八ミリ下がる)、二階の洋室西側に沿った線において六七分の一 (約五メートル四ミリの間に、四 (三メートル六四センチの聞に、五セン チ四ミリ下がる)、同洋室東側に沿った線で七六分の一(三メートル六四センチの聞に、四センチ八ミリ下がる)27一一製造物の椴庇に対する不法行為責任(三) [ 判 旨 ] であった。この傾斜により、 たとえば、床面にゴルフボールを置くと、南から北に向け自然に転がり出し、建 物のドアや家具の扉等も、少し開けると、白然に開いたり閉じたりし、 よく見れば、視覚的にも、柱等が傾い ているように見え、歩行も、なんとなく身体が傾斜している方向に引かれるように感じられることが認められ た。かかる建物の傾斜は、 いわゆる経年変化によるものではなく河敷地たる本件土地の不等沈下等に起因する ものであることが認められた。 そ こ で 、 VH に対しては、売主の暇抗担保責任(民法第五七
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粂 ) に も と づ き 、X
は 、 v u “に対しては、仲介契 約の債務不履行(民法第四一五条)にもとづき、 v り に 対 し て は 、 不法行為責任(民法第七O
九条)にもとづき、 本件建物の傾斜の欠陥を除去し、その補修工事を施工するために要する費用(対沈下工事費(七九九万円)、建 物補修工事費(一四三万円)等)九九六万四七五O
円の賠償を求めて訴えを提起したものである。 一 部 認 容 、 一 部 棄 却 ( 控 訴 ) 。 ここでは、本稿の問題関心から、 V H ( 実体は吸収合併される以前の訴外日本電建) の不法行為責任に関 する部分を中心に紹介しておく。判旨は、訴外日本電建につき、請負人に対する注文主としての必要な指示に 過失があったか、本件建物を建築するについて過失があったか、 として二つの過失の存否を問題とする。 注文者としての必要な指示の過失について まず、訴外日本電建が、本件土地の宅地造成にあたり、訴 外大日本土木に対して注文主として必要な指示を怠ったことの過失があったか否かの点については、以下に紹 介するように、都市計画法第二九条にもとづく開発許可を得た際の許可条件を根拠に、 一般的には宅地造成業 者に対し不等沈下を生じさせないよう充分配慮するよう要請する義務を肯定したが、結局、訴外大日本土木の 専門業者性を前提とした具体的工事方法に関する裁量性を根拠として、指示の必要性を否定し、もって、以下第14巻1号一一28 のような次第により、過失を否定する。 ① 本件土地を含む近隣一帯は、もと水田等の軟弱な湿地帯であったところ、訴外日本電建は、昭和五二 年七月五日、千葉県知事より、右一帯の土地六五万一一三八平方メートルの地域について、都市計画法二九条 に基づく開発許可を得、右許可に基づき、訴外大日本土木に対し、右土地の宅地造成工事を、請負代金六八億 円で請負わせた。そして、右許可には、原告主張のとおり、﹃軟弱な土地の造成及び盛り土の造成については、 あらかじめ地質調査、地耐力試験等を十分に行い、地盤沈下等が起きないように措置﹄するほか、﹃造成後、建 造物等に不等沈下が生じないよう、軟弱地盤対策について十分な配慮をすること﹄との条件が付されたことが 認 め ら れ る 。 し た が っ て 、 一般的にいえば、訴外日本電建が、宅地造成を請負う業者に対し、右土地の状況を知らしめ、 宅地造成に当たり、建築物等に不等沈下が生じないよう、軟弱地盤対策について十分な配慮をするように要請 する義務があったといえる。 ② そこで、訴外日本電建が右義務を怠ったといえるか否かについて按ずるに、訴外日本電建が、宅地造成 工事を、請負代金六八億円で講負わせた訴外大日本土木は、東証一部上場の大企業であり、 かっ、その分野の 専門業者である。通常、太子の専門業者が、当該土地を宅地造成するという工事を請負う場合には、右土地が どのような土地であるのか、 その目的のために、どのような工事方法を採用すればよいのか等については、自 己の専門知識と経験を駆使して、当然調査しているはずであり、本件においては、前記の開発許可証自体に、 ﹃工事施行前の住所氏名﹄として訴外大日本土木のそれが記載されているが、訴外大日本土木としては、訴外 日本電建から宅地造成工事を請け負うに当たり、当然右許可証の写しの交付を受けているか、少なくともその
29一一製造物の椴庇に対する不法行為責任(二) 説明は受けているものと推認される。そして、具体的な工事方法の選択等については、当該専門業者たる訴外 大日本土木の判断に委ねられたものと考、えるのが相当である。 したがって、訴外日本電建が、訴外大日本土木に宅地造成工事を依頼するに際し、 工事内容等について具体 的な指示をする等の実際上の必要性は考、ぇ難く、考えられるとすれば、訴外大白本土木が知り得ず、訴外日本 電建が知っていた特別の事実があったような場合であろうが、本件において、右のような事実があったことを 認 め る べ き 証 拠 は な い 。 ﹂ 本件建物を建築するについての過失 つぎに、訴外日本電建が、本件建物を建築するについての過失の 存否についてであるが、ここでは、造成工事完了後の県知事の検査が終了していること、 および、造成の請負 業者である訴外大日本土木の大手の専門業者性に対する信頼(とりわけ後者に関する信頼)を根拠に過失を否定 する。具体的詳細は以下のようである。 ﹁ ( 一 ) 前認定の事実、︿証拠略﹀によれば、次の事実が認められる。 ① 訴外日本電建は、前一不のとおり、大手の専門業者である訴外大日本土木に対し、本件土地を含む一帯の 土地の宅地造成工事を、請負代金六八億円で請負わせ、同工事完了後の県知事の検査も終了している。したが って、訴外日本電建としては 一応、﹃軟弱な土地の造成及ぴ盛り土の造成について、あらかじめ地質調査、地 耐力試験等を十分に行ない、地盤沈下等が起きないように措置﹄され、﹃造成後、建造物等に不等沈下が生じな いよう軟弱地盤対策について十分な配慮﹄がなされたものと、信頼したものと推認される。 ② その上で、訴外日本電建は、本件建物を建築するに際し ベタ基礎工法を採用した。 ベタ基礎工法とは 要するに、建物の敷地全体にコンクリートの基礎を打つ工法であり、柱の部分だけに基礎をおく独立基礎や建
第14巻 1号一一 30 物の外周のみに基礎をおく布基礎とは異なり、応力が広く分散するため、局部的に少し位地盤に不均一があっ て も 、 不等沈下を防止する機能を持つものである。 ③ し か し な が ら 、 全体として大きく不等沈下した場合には、も ベ タ 基 礎 工 法 も 、 地盤が、本件のように、 とより、対応し切れず、建物の傾斜を免れることはできない。したがって、これを防ぐためには、建物建築に 当たり、予め建物敷地になるべき地盤をボーリング調査し、 必要に応じ、支持地盤に達する杭打ちをして、こ れに対処する必要がある。 ④ そして、訴外日本電建が、本件建物の建築に当たり、右のような地盤のボーリング調査及びそれに基づ き必要とされる支持杭の打設等の措置をしていれば、本件現庇の発生は、防げたものと考、えられる。 ( ー ) しかしながら、訴外日本電建に対し、本件建物の建築に当たり、そこまでの注意義務を課すべきか否 かについては、微妙な価値判断を要求される。 すなわち、本件土地一帯の開発許可を得、これを事業主体として施行したのは訴外日本電建であるという点 を強調すれば、建物の建築に当たり、今一度、不等沈下の心配がないか否かを調査すべきであったということ になるかもしれないが、大手の専門業者に、 その上に建物を建築することを予定した宅地造成工事を請負わせ、 これを実施させた以上、特段の事情がない限り、これを信頼して建物の建築に着手しても、当然に過失がある と は い え な い 、 と考えることもできる。難しい判断であるが、当裁判所は、後者の見解を採用することとする。 そうすると、訴外日本電建について、本件建物建築についての過失を問うこともできないものといわざるを え な い 。 ﹂ [ コ メ ン ト ] むしろ﹁売主の暇庇担保責任に 本件は、判例集(判例時報)においては のちに簡単に触れるように、
基づく損害賠償として建物の価格を最高限度とする璃証修補費用相当額が認められた事例﹂として、現在においても 依然として争いのある、売主の暇庇担保責任における損害賠償の範囲に注目して紹介されているものである。しかし、 本稿の問題関心からいえば、責任が否定されてはいるものの、施工業者に対する不法行為責任の存否という観点から しでも、きわめて興味深い判例であり、この点においても意義のある判例である。この後者の点では、とりわけ、修 補費用の賠償についても不法行為責任が肯定され得ることを前提に、報庇ある建物を建築した点の過失の認定に際し、 造成工事を別の大手専門業者に行わせたことにより、これ(別に県知事の検査終了の点も加え) への信頼から、過失 を否定する構成をとっている点が興味深い。 仲介者である被告 VH については、調査に対する注意義務(付随的注意義務といえる)も、暇庇に気づかなかったこ とに対する善管注意義務も否定し、債務不履行責任を否定する。 31一一製造物の破庇に対する不法行為責任(三) そして、本件では、結局、売主 vh の寝疲担保責任により、請求額の一部を認容した(九九六万四七五
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円十遅延損 ( 4 } 室口金のうち建物購入価格である六五O
万円の限度で)ものである。 @ 大阪地判平成一二年九月二七日判例タイムズ一O
五三号一三八頁 [ 事 実 ] 本件は、被告巴(アイワエステム。不動産の売買、賃貸、管理およびその仲介等を主たる目的とする株式会 社。)から土地および建物(以下、本件不動産という。)を購入した原告X
が、本件建物には相当な構造耐力や 耐火・防火性能につき欠陥が存在するなどと主張して、主位的には、 VH に対して暇庇担保責任(民法第五七O
条)にもとづき本件不動産の売買契約を解除し、原状回復として売買代金相当額の返還および損害賠償を請求 するとともに、被告 v リ ( V H の代表取締役であるとともに、本件建物の建築主)、 VH( 本 件 建 物 の 施 工 者 ) 、 VH( 二 級建築士の資格を有し、建物の設計等を営んでいる者)に対し、共同不法行為にもとづき、損害賠償を請求し、第14巻 1号一一 32 [ 判 旨 ] 予 備 的 に は 、
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に対して暇庇担保責任(民法第五七O
条)にもとづき損害賠償を請求し、 v u f v H に対し、共同 不法行為にもとづき損害賠償を請求した事案である。X
は 、 VH との閣で、平成九年六月一六日、本件不動産をコ二六O
万円で購入する売買契約を締結した。契約 当時、本件建物は未着工であったが、平成九年九月二三日に完成し、同年一O
月二日に引き渡され、同日X
へ
の所有権移転登記手続が行われた。他方、 X は、追加費用の三三万五000
円 を 含 め 、 二二九三万五000
円 を支払った。ところが、 X は、平成一一年二月上旬、堺市開発調整部から、本件建物は建築基準法の定める構 造基準を満たしていないように見受けられるので、一度調査するように勧める旨記載された、﹁木造三階建て住 宅の調査結果について﹂と題する書面を郵送で受け取った。そこで、 X は 、 一 級 建 築 士H
に、本件建物の構造 および防火性能に関する建築基準法令違反の有無、違反の程度、補修方法、補修費用等につき、調査鑑定を依 頼した。その結果、本件建物には、構造性能の欠陥(①構造耐力上必要な軸組長さの不足、②軸組配置の釣り A 口い不良、③筋交いおよぴ火打ち梁の緊結不良、④布基礎のはつり)、 およぴ、防火・耐火性能の欠陥が存在す ることが判明した。そこで、L
に対し、暇抗担保責任を追及するとともに、 L i v H に 対 し て は 、 不法行 X は 、 為(共同不法行為)責任を追及したものである。 一 部 認 容 。 控 訴 。 v h ( 売主 vh の代表取締役) の不法行為の成否 ﹁ 被 告 内 本 ( 以 下 、L
という 1 l 引用者、以下同じ。)は、本 件不動産の売主である被告アイワヱステム(以下、巴という。)の代表者であるとともに、本件建物の建築主と して設計段階から本件建物の建築に関与し、建築確認申請をした上、﹂﹁建築確認を受けた内容と全く異なる本 件間取図を作成して被告南口(以下、もという。)に右間取図に従った本件建物の建築を指示したものであるか ら、同被告は、本件売買契約締結当時、本件現庇の存在を十分知悉していたものと認められる。しかるに、﹂﹁同33 製造物の暇庇に対する不法行為責任(二) 被告は、取引主任者として原告に本件不動産の説明をした際、原告に対し、建築確認を受けた内容と本件関取 図が異なること及ぴ本件現庇の存在を何ら説明することなく、ことさらこれを秘匿して、原告に本件建物が建 築確認を受けた暇庇のない完全な建物である旨誤信させて、 VH との間で本件売買契約を締結させ、本件売買代 金等を支出させたものであるから、欺同行為により本件売買契約を締結させ、 その結果、原告に後記七の損害 を被らせたものであって、
L
は原告に対して不法行為責任を負う。﹂ V H ( 施工者) の不法行為の成否 ﹁ 原 告 は 、 もが法令等に違反して、故意又は過失により本件暇庇を有する 本件建物を建築したことをもって、 v u u が原告に対して不法行為責任を負う旨主張する。 そこで検討するに、不法行為が成立するというためには、当該行為により生命・身体・健康、所有権及ぴそ れに準ずる法律上保護に値する利益(いわゆる完全性利益) が侵害されたとい、えることが必要であり、単に、 契約に従った目的物の給付を受ける利益(債務者の行為を通して債権者が獲得しようとしている利益) の よ う な契約法上の利益が侵害されたというだけでは、詐欺行為等があった等特段の事情がない限り、不法行為が成 立する余地はなく、右契約法上の利益侵害による損害賠償は、契約法上の責任として処理すべきである。 したがって、建物の施工者が建築した建物に暇庇が存在する場合でも、右暇証により、注文者やその後建物 を取得した第三者の生命・身体・健康、所有権及ぴそれに準ずる権利等(完全性利益) が侵害されたという場 人口であればともかく、単に、暇庇の存在により当該建物自体の価値が低いというのみでは、原則として、施工 者の行為によって建物取得者の権利が侵害されたということはできない。もっとも、施工者が単に報庇ある建 物を建築したというにとどまらず、積極的に、あたかも当該建物が建築確認のとおりに建築された破庇のない 建物であるかのような説明をして当該建物の購入を勧誘するなど、不当に誘導して当該建物を購入させたとい第14巻1号一一 34 うような特段の事由が存在する場合には不法行為が成立しうるというべきであるが、本件全証拠によっても、 vりが他の被告と共謀してであっても、ことさらに原告を勧誘して本件売買契約(を?)締結させたというよう な特段の事由は認められない。したがって、もが原告に対して不法行為責任を負う旨の原告の主張は採用でき な い 。 ﹂ v h ( 建築士) の不法行為の成否 ﹁ 原 告 は 被 告 矢 野 ( 以 下 、 V H という。)が本件建物の建築につき、工事監理 者となった又はその旨届け出たにもかかわらず、 工事監理を怠った結果、本件暇庇を発生させたなどと主張し て、建築士法などを根拠に V H が原告に対して不法行為責任を負う旨主張する。 し か し 、 4 守 、 、 v i , 刀 工事監理者となる契約を締結したことを認めるに足りる証拠はないし、建築士法は行政法上 の取締法規に過ぎない上、 VH が VH を工事監理者として届け出ること即ち名義を貸すことに同意したことによっ て、直ちに建築確認申請の際の設計とは全く異なる建物が建築されることになるとは限らないと考えられるの で、この場合ににわかに工事監理者となった場合と同等の不法行為法上の責任を負うことになるとする確たる 根拠はないと考えられる。また、前項五判示のとおり、単に契約目的物に暇杭・欠陥があるため目的物自体の 価値が低いというのみでは、原則として不法行為は成立しないと解されるところ、本件全証拠によっても、 V H が本件売買契約締結の際、原告に対し、他の被告と共謀の上でことさらに本件不動産の購入を勧誘したという ような特段の事由は認められないから、
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は原告に対して不法行為責任を負わない。﹂ 損害として、本件売買代金相当さ一一九三万五000
円)、登記手続代行費用・住宅ロl
ン保証金・住宅ロ│ ン金利等の諸費用(二九五万七六四九円)、建築士の調査鑑定費用(八四万九七五O
円 ) 、 慰 謝 料 ( 五O
万 円 ) 、 弁 護 士 費 用 ( 一 二 五O
万 円 ) を 、 v u お よ び VH に 対 し て 肯 定 し た 。[ コ メ ン ト ] 売主 VH に対しては、民法第五七
O
条の暇庇担保責任を肯定し、本件暇抗の修補方法として、﹁本件建物を 解体し、新たな建物を再築するより方法がない﹂とし、﹁本件建物にかかる補修方法によらざるを得ない暇庇が存する 以 上 、 本 件 報 抗 の 存 在 に よ り 、 本 件 不 動 産 を 住 居 と し て 使 用 す る と い う 本 件 売 買 契 約 の 目 的 を 達 成 す る こ と が 不 可 能 であるといわざるを得﹂ないとして、解除を認めている。 35一一製造物の報庇に対する不法行為責任(二) ( 1 ) 本判例および次の二判例は、すでに前稿(二脱稿以前に存在したものを前稿脱稿後に発見したものである。体裁が悪いこと は承知しているが、内容的な重要性からして、本稿で省略するわけにはいかず、判例紹介の方針が年代順であること(本稿(一) 奈良法学会雑誌二二巻三・四合併号八九頁(二 OO 一年)からして、⑪判例、⑫判例の次であることを一不す意味で、おのおの⑪ および⑫とした。別にまとめる機会があれば、改めて整理したいと考えている。ご海容を願う次第である。 ( 2 ) 判旨の詳細は以下のようである。﹁︿証拠略﹀によれば、原告らは、従来の仕事を辞め、横浜市内にあったそれぞれの自宅を 処分して、家族共々環境の良い伊豆高原に移り住み、ペンションを共同経営しつつ生活することを計画し、本件建物の建築に 踏み切ったこと、しかるに、さきにみたように、本件建物は家族の生活という最低限の要求にも答えられないものであり、原 告らは、常時浸水、カビ・ダニの発生、畳の腐敗等、およそ快適な生活と程遠い劣悪な環境下に居住することを余儀なくされ、 実際に原告荻山の孫が健康を害するに至ったほか、ペンション営業上もかなりの損失を被ったこと、しかも、その原因が基礎 土台部分への雨水の侵入という建物の構造材に直接影響を及ぼす欠陥によるものであるだけに、建物の耐久性を危倶しつつ生 活することを余儀なくされたこと、このため原告らはかなり深刻な精神的苦痛を被ったことが認められ、右被害の実態等に照 らすと、原告らの被った精神的損害に対する慰蒋料の額は、三 OO 万円を下るものではないというべきである。﹂ ( 3 ) す な わ ち 、 VH は﹁その業務の性質に照らし、取引当事者の同一性や代理権の有無、目的物件の権利関係、殊に法律上の規制 や制限の有無等の調査については、高度の注意義務を要求されるが、目的物件の物的状況に隠れた破庇があるか否かの調査に ついてまでは、高度な注意義務を負うものではない。﹂と。また、 v H は﹁民法六四四条に基づく善管注意義務を負うが、前記認 定の事実によれば、被告住友販売の社員は、前居住者の訴外八景から、本件建物の傾斜の事実を何ら聞かされておらず、また、 原告はもとより、被告富士物産の代表取締役及ぴ訴外柏住宅の従業員も合めて、本件建物内に立ち入った誰もが、右破庇に気第14巻 1号一一 36 付いていないのであるから、仲介入として、本件不動産を原告に紹介した被告住友販売の担当者が、右破庇に気付かなかった ことについて、差問管注意義務を怠った過失があるとはいえない。﹂と。なお、松本克美﹁欠陥住宅と建築者・不動産業者の責任﹂ 内田勝一・浦川道太郎・鎌田薫編﹃現代の都市と土地私法﹄所収三 O 二頁全一一八頁)(有斐閣、二 O O 一 年 ) 。 ( 4 ) なお、ここでは、﹁信頼利益﹂に関して、興味深い論理を展開している。すなわち、まず、信頼利益賠償を前提としつつも、 売買契約を解除しないまま、修補に代わる損害賠償を求めるような場合に、﹁修補費用担(相?)当の損害が、信頼利益又は履 行利益の、どちらに該当するかを判断することは、﹂﹁著しく困難になり、果たして、その区別の意味があるのか否かさえ疑問 になる程である。けだし、暇庇修補費用相当額は、﹃当該取庇がなかったとしたら得られたであろう利益﹄に該当するだけでな く、まさに、﹃当該暇庇を知ったならば被ることがなかった損害﹄も該当すると思われるからである。﹂と問題提起がなされる。 その上で、﹁もし、修補費用相当額は、信頼利益に該当しないというのであれば、右のような場合における信頼利益とは、一体、 どのようなものをいうのであろうか?想定することが困難である。そうだとすれば、結局、報庇担保責任の賠償の範囲は、 信頼利益に限られるといっても、それは、転売利益等の得べかりし利益を排除すれば足りるのであって、破庇修補費用相当額 の賠償責任まで、これを履行利益だとして全面的に否定する必要はないというべきである。﹂として、信頼利益概念に修補費用 が包摂されることを結論づける。もっとも、修補費用相当額の﹁最高限度額﹂は、﹁公平の見地から﹂﹁売買代金の価格﹂であ るとする。この概念のもつ不明確性の一端を示すもので興味深い。 判例表 ⑦ ⑦ ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① 大 大 判 東 高 京、 横 千 十申 東 判 尽 高 東京 判阪高 阪 浜 葉 戸 地 地 地 地 地 やl 事j判 fiJ 事l 平 日召 日召 H召 昭 H召ag昭 ノ、 ノ、
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八 七37 製造物の椴庇に対する不法行為責任(二) @ ⑫ @ ⑫ ⑬ ⑬ ⑫ ⑬ ⑬ ⑬ ⑬ ⑫' ⑫ ⑪F ⑪ ⑮ ⑨ ⑧ 大
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︹ 略 号 ︺ 金商 H 金融・商事判例 判夕日判例タイムズ 東高時報日東京高等裁判所判決時報(民事)判時川判例時報 欠陥判日消費者のための欠陥住宅裁判例︹第 1 集 ︺ ︹ 付 記 ︺ 脱稿後、本稿に関連する最新の裁判例として、京都地判平成一二年一 O 月一六日判例時報一七五五号一一八頁に接した。第14巻1号 38 判例分析表 ⑫' ⑫ ⑪' ⑪ ⑬ ⑨ ⑧ ⑦ ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① 判例番 τロ音 ヲ=ーE 売 請 負 売買 売買 請負 売 請負 売 売買 売買 売買 ① 判 決 売 事類案 買 翼 買 買 買 転 売 転売 転売 転売 型 対す る 土 擁壁 建 古 住中 . マ 建 物 擁壁 建物 土 土 土 造成 建築業者 土 契約 t也 物 ン 地 地 地 地 f寸 ( ν 付 宅 の 建 土 ~ 宅 ヨ 土 建物 建物 地 建物 的目 物 地 ン ン 地 の 古中 ン'
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審 決 物 建 物 ヨ ン ) 足 修 建物擁壁 再 再築費 借地権 建 修補費 補修 不 建物 土 追加 修 補費 主 補 費 築費 替 明 地 価 格の工事費 取壊し工事費 え 費 の な 用 等 用 用等 疋費設会~
用 相語
費 用 等 用等 等用 損 費 用 下落 用 用 用 害 分 建宅 売主 売主 請負 建築警
第 7主E 建築 売主 負請 宅 監 請工事 負 第 施 売主 売主 売主 建 築 業 者 売 主 責任 追 地 工 仲 介 人 売主 業者 人 造成者 人 売 主 販 売 業者 理 及 者 業 者 四五 七、
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疋ι 品耳{同三 否疋 断 断 せ せ ず ず第14巻1号一-40 売主 売主の代表者 施工者 建 築 士 ( 名 義 貸 ) 五七 O 条 七 O 九条 七 O 九条 七 O 九条 建 物 売買代金相当額 売買 第 三 節 判例分析 判例の整理 本節では、まず、前節において紹介した二五の諸判例を、本稿の問題関心から、主に、事案の裁判類型、 損害賠償 の内容、責任追及の相手方およぴその場合の法律構成等に着目しつつ、 若干の整理を行うことから出発することとす る (︻判例分析表︼も参照されたいてなお、項目によっては、後の論点整理、 分析のために︹コメント︺を付した部 分もあることをあらかじめお断りしておく。 売買型と請負型まず、二五の裁判例の事案を、売買型と講負型に大別すると、売買型に属するのは一七例(① ②③④⑤⑥⑧⑬
O
⑫⑫⑪⑮⑫⑬@@)であり、請負型に属するのは八例(⑦⑨⑪⑬⑬⑬@@)である。 のみが売買の対象となった三例(③⑥⑧)を除き、二二例は建物が契約の目的物に合 まれている。そのうち、土地付の場合が一O
例(①②④⑤⑫⑫⑬⑮⑫@)存在する(すべて売買型)。それゆえ、建物 のみの場合は一二例ということになる。これらのうち、売買型と請負型はそれぞれ四例(⑮⑪⑬@)と七例(⑦⑨⑪ こ れ ら の う ち 、 土地(宅地) ⑬⑮⑬@、@) で あ る 。 売買型一七例のうち二例(⑪⑫)は中古住宅が目的物となっているが、あとはすべて新築の建物が目的物となっている。以上から、売買型一七例のうち、売買の目的物に従い、宅地事例がコ一例、 土地・建物事例が一
O
例(うち一例 が中古住宅)、建物事例が五例(うち一例が中古住宅)ということになる。 2 次に、損害賠償の内容としては、主として、修補費用が問題となった事例は一九例(①②③⑤ 損害賠償の範囲 ⑦⑧⑨O
⑪⑫⑫⑬⑮⑬⑫⑬@@@)であり、あとは、土地価格の下落分が問題となった事例は一例(③)、借地権設定 費用が問題となった事例が一例(⑬)、建物代金相当額が問題となった事例が三例(⑭⑬@)、既払金およぴ棟上費用 が問題となった事例が一例(⑬) で あ る 。 修補費用が問題となった一九例のうち、建替え費用相当額(再築費用)について争われた事例は一O
例(⑨⑪⑪ その内訳は、売買型が五例(⑪⑫⑪⑬@)、請負型が五例(⑨⑪⑬⑬⑫)である。 ⑫⑬⑮⑪⑬@@)存在し、 3 土地(の地盤沈下等) との関係 と建物の環疲(損害) 41一一製造物の破庇に対する不法行為責任(二) すでに整理したように、本稿で挙げた諸判例においては、 土地・建物が契約の目的となっている場合が一O
例存在 した。これらすべては売買型に属するものである。このような事例群が本稿との関係で興味を引くのは、 土地の報庇 (地盤沈下、不同ないし不等沈下)が建物の暇庇を惹起している場合がある点である。このような場合として三例(⑤ ⑫⑫)を挙げることができる。⑤判例では、﹁地盤沈下と建物の傾斜﹂につき﹁宅地造成、基礎工事の暇庇﹂が問題と その再構築のために建物も再築されており、⑫判例においては、建物の傾斜 され、⑫判例では、擁壁の崩壊により、 につき、﹁敷地たる本件土地の不等沈下等に起因する﹂ことが指摘されているのである。 な お 、 かかる観点からすれば、建物の建築請負の事例である@判例と、造成された宅地の売買の事例である③判例 も興味を引く。前者は、建物の沈下(不具合) の原因が﹁地盤の不同沈下﹂に起因するものであるとし、請負人の地 盤調査義務およびその地盤対策義務を怠ったとして責任追及をした事例である。これに対し、後者では、造成された第14巻1号一一 42 土地を購入し、その四年数ヵ月後に当該土地上に建物を建築した者が、地盤沈下(約二
01
コ 一0
セ ン チ メ ー ト ル ) ( 地 盤の暇庇)が原因で建物に暇庇が生じたとして、土地の売主に対し、建物の建替え等に要した費用(﹁追加工事費用﹂) および土地価格下落分の損害賠償請求をしたものである。 [ コ メ ン ト ] ここで、まず、指摘し得るのは、 土地と建物とは別個独立の不動産であると考えられている現行民法の 立場(民法第三七O
条本文、不動産登記法第一四条参照)からすれば、 土地の暇庇は独立の暇抗損害の対象と考えら れるとしても、この暇抗が別個独立の財産である建物の暇庇(損害)に及んだと考えれば、これは、 いわゆる﹁暇庇 結果損害﹂ないしは拡大損害ではないのか、 ということである。しかし、これまでこのような指摘はなされていない ように思われる。このような場合の問題性は、 土地(宅地) の造成と建物の建築が別個の業者においてなされたとき に先鋭化する。すなわち、建物自体は暇庇なく建築されていたにもかかわらずに、宅地に暇疫がありこれが原因で地 盤 沈 下 が 生 じ 、 その結果、建物の不同(不等)沈下が生じたとしよう。そもそも、この場合、 ( i ) もともと前々から の更地の所有者がそこに建物を建築した場合、 ( h H ) 先述のように、造成が行われそれに続いて建物の建築が行われた 場合に大別され得る。(
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の場合においては、建築物自体に現庇原因がないとすれば、 土地の不同沈下が専らの原因 で建物に報庇現象(傾斜、雨漏り、 クラック等) が生じた場合、建物建築の請負人に果たして責任を問い得るのか、 という問題が生じよう。この場合に、もし責任を問うとすれば、建物建築の請負人の﹁地盤調査義務﹂とでもいうべ ( 2 ) き義務を、契約法上の義務から、あるいは、不法行為上の過失の前提としての行為義務として設定する(@判例はこ の場合。もっとも、ここでは、造成の時期は不明。)という方向性が考えられ得る。これに対して、守口)の場合は、宅 地造成者の拡大損害ないし暇庇結果損害に対する責任が問題となり得るとともに、仮に、建物建築の請負人に﹁地盤 ( 3 ) F 調査義務﹂を措定したとした場合、ここでは、造成者の行為に対する﹁信頼原則﹂による行為義務の不存在(⑫判例)の問題が生じよう(なお、これについては、後述)。 4 売買型における責任追及の相手とその法律構成 [売主︺売買型一七例につき、まず、控訴審で製造業者の ( ー ) 責任のみが問題とされた②判例(もっとも、後述のように、原審において売主の責任が肯定されている。)を除く一六 一四例において売主に対する責任追及がなされており、そのうち、売主の環疲担保構成にもとづく場合が 八例(①⑤
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⑫⑪⑬⑬@)、不法行為構成にもとづく場合が五例(③④⑮⑫)存在する。また、売主の暇庇担保構成と 例 の う ち 、 不法行為構成の両者が問題とされたが不法行為構成のみ肯定された場合が一例(@)存在する。さらに、売主(株式 会社)自身に対しては、暇庇担保構成によりつつも、売主の代表取締役に対しては、不法行為構成で肯定した場合と して@判例が存在する。 これらのうち、暇痕担保構成の場合も不法行為構成の場合もおのおの一例において (⑪と⑪)責任が否定されてい 43 製造物の破庇に対する不法行為責任(二) る。前者では、民法第五七O
条の損害賠償は信頼利益を対象とするものであるのに対し、原告の主張する損害はいず ( 4 ) れも履行利益賠償を求めるものであることが挙げられ、後者では、売買契約の付随義務として存在する、安全性に対 する売主の調査義務を問題としつつも、これが尽くされているとして、過失が否定されている。なお、@は、除斥期 聞が経過していることを挙げる。 残りの一例(⑧) は、一克の製造業者に対して不法行為責任のみが追及されており、擁壁損壊の修復費用の賠償が肯 定 さ れ て い る 。 次に、売主型で売主に対する責任追及のなされた上記一四例のうち、元の建築業 者(施工業者)に対しても責任追及がなされた事例が一一例(①②⑤⑮O
⑫⑪⑮⑪⑬@)存在し、これらのうち、さ ( ー ) [売主+建設業者その他] らに、第一の売主に対しても責任追及がなされた場合が一例(⑪)、工事監理を行った建築士に対しても責任追及がな第14巻 1号一一 44 された場合が三例(⑪⑬@)存在する。 建築業者に対する責任追及はすべて不法行為構成(うち、⑪は民法第七一五条)であり、否定された場合が三例 (②⑫⑮@)存在する。第一の売主に対する責任追及をした⑪判例は、債権者代住権構成(民法第四二三条)によっ たが、無資力要件を充足していないとして、責任が否定されている。 建築士に対する責任については、⑫判例は肯定し、⑬判例、@判例は否定している。両者はいずれも名義貸しの事 ( 5 ) { 6 ) 例であるが、全く対照的な判断をしている。
5
請負型における責任追及の法律構成 請負型八例では、債務不履行(民法第四一五条)構成、暇庇担保構成(民 法第六三四条)、不法行為構成(民法第七O
九条)が問題とされている。 まず、これらすべての構成が判断の対象とされ、結局、不法行為構成のみ肯定された場合として⑬判例が存在する。 つぎに、暇庇担保構成と不法行為構成とが主張されたが、前者については判断せず不法行為構成のみで処理された ものとして二例(⑬判例と@判例)が存在する。 さらに、暇抗担保構成と不法行為構成の両者により責任が認められた場合として、三例(⑨σ@)が存在する。 最後に、暇庇担保構成のみの場合が⑦判例である。もっぱら不法行為構成のみの場合として、⑬判例がある。なお、 ⑦判例は、請負人に対しては、暇庇担保構成により、 工事監理者に対しては、不法行為構成(民法第四四条、民法第 七一五条)により責任を肯定している。 6 損害の範囲と法律構成との関係 ( 一 ) ⑫⑬⑮⑬@と@)のうち、この構成により責任が肯定されたのは、 売買型の場合 ( イ ) ま ず 、 売 主 に 対 す る 責 任 追 及 に お い て 、 碩疲担保構成が問題となった上記九例(①⑤⑪ 七例(①⑤⑫⑪⑮⑬@)であり、否定されたのは、二例(O@)である。前者において問題となった主な損害は、修補費用(①⑤⑫⑬)、建物代金相当額(⑪⑬@)であ ' h v
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これに対し、不法行為構成が問題となった六例(③④⑬⑫⑪と@)のうち、五例(③④⑮⑫@)は肯定、一例(⑫) は否定されている。ここでは、損害の範囲として、追加工事費用および土地価格の下落分(③)、借地権設定費用(⑮)、 再築費用(⑫⑪⑬)が問題となり、再築費用については、肯定(⑫⑬)、否定(⑪)と判断が分かれている。なお、④ 判例においては、相当因果関係にある損害の賠償を認めているが、 その具体的内容は明らかではない。 次に、売主に対する責任追及と同時に元の建築業者(施工業者)に対しても責任追及がなされた一一例(① ②⑤⑮⑪⑫⑪⑮⑪⑬@)は、すべて不法行為構成により責任追及がなされ、このうち、四例(②⑫⑬@)において責 八例(①②⑤⑪⑫⑮⑪⑬)存在し、そのうち、 ( ロ ) 任が否定されている。これらのうち、修補費用が問題となった場合は、 45一一製造物の暇庇に対する不法行為責任(二) 再築費用(建替え費用相当額)が問題となった場合は、二例(⑪⑬)存在する。また、⑪判例は、損害賠償として建 物代金相当額が肯定された場合である。 (一
一
) 請負型の場合 請負型八例のうち、⑬判例を除き、再築費用を合め、すべて修補費用が問題となっている。 すでに述べたように、そのうち、通常の修補費用については、請負人の暇庇担保責任(民法第六三四条)により肯定 されている場合(⑦}と、暇疲担保責任については判断せず、不法行為(民法第七O
九条)により肯定されている場 A 日(@)が存在する。あとの五例は、すべて再築費用(建替え費用相当額) が問題となっているが、不法行為責任に よってのみで肯定している場合(⑬⑬)と、請負人の暇庇担保責任と不法行為責任との両方で肯定している場合(⑨ ⑪ @ ) が 存 在 す る 。 7 修補費用請求と法律構成第14巻 1号一一 46 以上のうち、修補費用賠償に絞って整理すると、まず、通常の修補費用が問題 となったのは八例であり、このうち、売買型は七例(①②③⑤⑧⑫⑬)、請負型では二例(⑦⑪)である。 (
一
、、~ 通常の修補費用請求の場合 ( イ ) 売買型においては、まず、②(製造者のみ控訴)③⑧を除きすべて売主に対して責任追及がなされ、しかも その場合、破庇担保構成によりなされている。⑧判例は、造成された宅地の売買に関するものであるが、宅地の転得 者(自身も土地をさらに転売し、 その買主から損害賠償を請求されている) が元の売主には責任追及をしないで、一冗 の売主から宅地造成工事を請け負った造成業者に対してのみ責任追及をしたものである(なお、直接の売主に対して 責任追及をしなかった理由に関しては明らかではない)。 売主に対する暇庇担保責任により修補費用賠償を肯定したのは四例(①⑤⑫⑮。もっとも、⑬判例は、暇庇担保解 除を肯定している事例である) いわゆる信頼利益、履行利益に言及することなく、単に である。肯定した四例には、 ﹁売買目的物に存する隠れた暇庇によって蒙った損害﹂として (①⑤)、﹁建物も土地もこのままでは転売が困難ない ( ⑬ ) 、 信 し期待できない﹂ことから、﹁売買契約の目的を達成することができなくなった﹂として解除を認めるもの 頼利益賠償に修補費用を含めるとして(⑫)、肯定するものがある。これに対し、売主の担保責任を否定したO
判例に おいては、暇玩担保責任における損害賠償の内実を﹁信頼利益﹂とし、それには修補費用は入らないとするものであ る 土地・建物の造成・施工業者に対する責任追及については、すべて不法行為構成によりなされており、 そのうち、二例(①⑤)において肯定され、三例(②⑫⑮)において否定されている。論拠は後述。 こ れ に 対 し 、 [ コ メ ン ト ] 以上から、売主に対しても(民法第五七O
条)、造成・施工業者に対しても(民法第七O
九条)修補費 用等が肯定されているいるものとして二例(①⑤)を指摘し得る。ここでは、信頼利益賠償と暇庇修補費用との関係、売買における暇庇修補と本来の給付利益との関係が問題となる。 ( イ ) 請負型の二例は、債務不履行(不完全履行)責任を排斥し、請負人の暇庇担保責任により肯定した⑦判例と、 不法行為構成で肯定した(主位的請求。予備的請求として六三四条を挙げたが、判断せず)@判例に分かれる。 [ コ メ ン ト ] ここでは、請負人の暇庇担保責任の追及により修補費用の賠償が可能であるにもかかわらず、主位的(民 法第七
O
九条)、予備的(民法第六三四条)請求の問題があるにせよ、裁判所が何故に暇庇担保構成ではなく不法行為 構成による必要があったのか が 問 題 と な る 。 (一
一
) 再築費用請求の場合 続いてさらに、買主/注文者にとって最も深刻な状況にあると 売買型の場合 ( ア ) 47一一製造物の暇戒に対する不法行為責任(二) いう意味において、修補費用のうちでも再築費用の請求に関する事例を再整理しておくと、前述のように、再築費用 が問題となった九例(⑨⑪⑫⑬⑬⑫⑬@@)(うち、売買型( O
⑫⑫⑬@)、請負型(⑨⑬⑬@このうち、まず、売買 型では、専ら売主に対して責任追及がなされている場合(⑫@)と、売主とともに建築業者(さらに建築士)に対し ても責任追及がなされている場合(⑪⑪⑬)とに分けられる。 前者に関しては、いずれも不法行為構成により売主の責任を肯定し再築費用賠償等を肯定している。このうち、⑫判 例は、もっぱら不法行為構成により責任追及がなされているが、@判例は、暇庇担保解除、 および、不法行為もしく は債務不履行による損害賠償請求がなされ、このうち、暇庇担保解除は除斥期間が経過していることを根拠に否定し、 債務不履行構成については触れず、結局、不法行為構成により責任を肯定している。 後者に関しては、三例すべてにおいて建築業者に対する不法行為責任が肯定されている。売主に対しては、不法行 為責任を問題とするが、不法行為上の過失の前提としての行為義務として、売買契約に付随する義務として﹁安全性 調査義務﹂を設定しつつも、これが尽くされているとして過失を否定した場合(⑪)と、暇庇担保責任を追及し、信第14巻 1号一一 48 頼利益の賠償としては再築費用賠償は認められない
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⑬ ) が、建物代金と建物解体除去費用は肯定した場合(⑬) と が あ る 。 [ コ メ ン ト ] 前者に関しては、本稿との関連で、契約当事者である売主に対して不法行為構成によっていることの意 昧が最も端的に現れている場合であるといえる。すなわち、この背景には信頼利益賠償には再築費用は入らないとい う前提があると推測され得るのである。 後者に関しては、ここでも、信頼利益と再築費用賠償との関係という問題が背景にあり、 それゆえに、施工業者へ の不法行為責任の追及という問題が浮上する、 と 考 え ら れ 得 る 。 そ し て 、 以上両者の場合に共通しているのは、暇抗担保の法的性質論という重要な理論的問題が存するにせよ、通 常、再築(費用) は給付利益ではないとの実態が存在するといい得るのか。そうであれば、この費用を不法行為構成 により追及することの理論的可能性が浮上する。その場合、この損害は、報庇結果損害といえるのか?再築というこ とは暇班無価値と評価できるのか、 が問題となる。なお、最後の場合は、両者(再築費用と建物代金プラス解体除去 の聞の価値的(価格的)差異の実態が検討されねばならない。 (イ)請負型の場合これに対し、請負型の五例(⑨⑪⑬⑬⑫)では、すべて再築費用の賠償を肯定しており、暇 庇担保構成と不法行為構成の両方で肯定している三例(⑨⑪⑫)と、不法行為構成のみで肯定している二例(⑬⑬) 費 用 ) と に 分 け ら れ る 。 [ コ メ ン ト ] これらに関しては、注文者の側は、債務不(不完全)履行、暇庇担保、 不法行為のすべての構成を援用 するが、⑬判例に象徴されているように、暇庇担保による不完全履行排除理論、これを前提として、 さらに暇庇担保 の除斥期間経過を理由として、結局不法行為構成により責任追及が認められていると推測され得る。もっとも、 そ 、 7すると、除斥期間内であれば、暇庇担保のみで可能ではないのか、 という問題が浮上するのが、暇庇担保構成と不法 行為構成の両方で責任を肯定している二判例の存在である。 請 負 契 約 に お い て は 、 明文上修補請求(賠償) が肯定されていることから、売買とは異なって、この﹁修補﹂に再 築(建替え)まで含み得るのか、 ということが契約責任の範囲として問題となる。この点に関しては、周知の知く、 むしろ従来までは、再築せねばならない程度の暇庇は、修補不能として、価値の差額賠償を肯定するとする見解が有 ( 7 ) 力に主張されていた等の経緯があった。それゆえに、不法行為と抱き合わせるか、専ら不法行為によるか、という形 で責任追及がなされたものと推測される。 8 売買代金相当額の請求と法律構成 売買代金相当額の賠償を肯定した三例(⑪⑬@) では、売主に対してはすべて暇庇担保責任による。また、建築業 49一一製造物の報庇に対する不法行為責任(二) 者に対しても不法行為構成により責任追及がなされており、肯定(⑪⑬)と否定(@)に分かれている。 理組担保責任により売買代金相当額を肯定する論拠としては、建物代金と建物解体除去費用が﹁信頼利益﹂に入る として肯定した場合(⑬)と、暇庇の修補方法として再築方法しかないことを指摘することにより、⑮判例と同じく、 売買契約の目的不達成を理由とした解除を肯定することにより肯定した場合(@)とに分けられる。 [ コ メ ン ト ] ここでは、建物代金を﹁信頼利益﹂に入るとして肯定した点、 および、再築方法の認定から、 目的不達 成を導くことにより契約解除を肯定した点が、検討されるべき点である。 9 諸論拠 以上の整理においても、部分的に論拠を示した箇所もあるが、ここで改めて、 し か も 、 おのおのの構成にお さ て 、 ける独自の論拠のうち、本稿において重要と考えられる諸場合について、整理しておくこととしよう。
第14巻 1号一一 50 ( ー ) 売主に対する責任追及について 暇庇担保責任(民法第五七
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条)構成により、修補費用ないし代金相当額を肯定した論拠として、( a
)
以下のも のが挙げられる。﹁売買の目的物に存する隠れた暇庇によって蒙った損害﹂(①てあるいは、﹁かかる暇庇ある本件建 物をX
に売り渡したのであるから﹂として(⑪)。暇庇担保における売主に対する瑞庇担保解除については、﹁本件建 物を第三者に転売することは困難であ﹂ること、﹁本件土地もこれのみを転売することは期待できない﹂ことから、﹁売 買契約の目的を達成することはできなくなった﹂として (⑬)。本件暇庇の修補方法として、﹁本件建物を解体し、新 たな建物を再築するより方法がない﹂とし、﹁本件建物にかかる補修方法によらざるを得ない暇庇が存する以上、本件 暇庇の存在により、本件不動産を住居として使用するという本件売買契約の目的を達成することが不可能であるとい わざるを得﹂ないとして ⑫判例と⑬判例は、ともに、信頼利益賠償を前提とするものである。前者は、これに修補費用が入るとし、後者は ( 8 ) これに建物代金と解体除去費用が入るとしたものである。しかし、前者においては、その修補費用の﹁最高限度額﹂ ( @ ) 。 を﹁公平の見地から﹂﹁売買代金の価格﹂とするものであることからすれば、これらの裁判例には一定の共通性がある と い 、 え る 。 ( b ) これに対し、売主の報疲担保責任構成で責任を否定した論拠 ⑪判例は、﹁同条の損害賠償は信頼利益を対象 とするものであるのに対し、原告の主張する損害(注 修補費用等)はいずれも履行利益賠償を求めるものであるこ とを理由﹂とし、@判例は、﹁除斥期間が経過している﹂として、売主の暇庇担保責任を否定している。 ( C ) 売主に対する責任追及が不法行為構成でなされた場合の論拠 不法行為構成が問題となった六例(③④⑮⑫ ⑫と⑫)すべてにつき、 不法行為構成をとることの正当性について論じたものは存在しない。この構成において、責任が否定された一例(⑫) は、不動産業者の、売買契約に付随する義務としての安全性調査義務を一般論として肯定 しつつも、公的機関が検査すべきものとされている場合には、﹁特段の事情がない限り、公的機関による検査の実施の 有無について調査すれば足り﹂独自に安全性を調査することまでは必要ない、 とするものであった。 ( ) 転売事例において、第一の売主に対して不法行為を理由に責任追及がなされたが、責任が否定された⑥判例 の 論 拠 。 判旨は、土地が接道要件に適合するようにして売買すべき売主の義務は、﹁専ら買主に対する契約上の義務にすぎ﹂ ないこと、この義務発生の前提となる、 土地が接道要件に適合していないという暇抗は、直接契約関係に立たない消 費者に対して負う高度の注意義務を導く、﹁商品に生命、身体等に重大な危険を及ぽすような暇庇﹂ではないから、売 主は﹁不特定かつ潜在的な転得者に対﹂して、﹁不測の損害を被ることがないようにすべき高度の注意義務を負うもの 51一一製造物の椴庇に対する不法行為責任(二) でない﹂とし、﹁このような場合にあっては、土地又は建物の売主が買主と共謀したうえ転得者を欺同し転得者に損害 を加える意思をもって当該土地を売買したとか、売買契約当時において既に転得者が特定していて、売主としても、 当該特定の転得者が損害を被ることを容易に知りうべき事情があったなど、特段の事情がない限り、売主が当該土地 の転得者に対して不法行為責任を負うことはないものと解するのが相当である﹂とする。 ( ) 売主と同時に元の建築業者(施工業者)に対しても責任追及した場合 否定の論拠 ②判例について。まず、製造物責任に関しては、問責任が保護する損害は積極的債権侵害でな