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不動産の欠陥と製造物責任法 (一)

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不動産の欠陥と製造物責任法 (一)

蔡   顓 謙

序 章

 第一節 本稿の内容   第一項 本稿の課題   第二項 本稿の構成

第一章 不動産の欠陥における問題現状  第一節 民法としての在り方   第一項 台湾法

    1  瑕疵担保と債務不履行     ( 1 )売 買

    ( 2 )請 負     2  不法行為

    ( 1 )特殊不法行為としての商品責任     ( 2 )特殊不法行為としての工作物責任   第二項 日本法

    1  物の瑕疵担保     ( 1 )売 買     ( 2 )請 負

    2  住宅の品質確保の促進等に関する法律     ( 1 )瑕疵担保責任存続期間の延長     ( 2 )瑕疵担保責任の期間の伸長等の特例     3  不法行為

    ( 1 )一般不法行為

(2)

    ( 2 )特殊不法行為としての工作物責任  第二節 小 括

第二章 製造物責任法を適用する前提と効果  第一節 製造者と製造物

  第一項 台湾法     1  立法沿革

    ( 1 )個別立法の時期

    ( 2 )行政による消費者保護の時期     ( 3 )消費者保護法の時期     2  製造者

    ( 1 )商品の設計、生産、製造に従事する企業経営者     ( 2 )輸入業者

    ( 3 )代理販売業者     ( 4 )その他の製造者     3  商 品

    ( 1 )動 産     ( 2 )不動産   第二項 日本法     1  立法沿革     2  製造者     ( 1 )製造業者     ( 2 )表示製造業者     ( 3 )実質的製造業者     ( 4 )その他の製造者     3  製造物

    ( 1 )動 産     ( 2 )不動産  第二節 欠 陥

(以上、69巻 1 号)

(3)

序 章

 第一節 本稿の内容

 大量に生産される製造物は、国家にとっては富国強兵の力であり、国民に とっては日常生活を便利にさせるものであり、様々な意味を持っているが、

その両者にとって有意義なものであった。製造者と国民のどちらを優先させ るかといえば、経済力を重視している資本主義社会にとっては、やはり富国 強兵の一翼を担う製造者であっただろう。

 しかし、産業革命から現代に至る中で、工業製品による消費者としての国 民に対する深刻な被害が頻発し、終に消費者意識が台頭した。1893年のイギ リスの動産売買法を皮切りに、世界中の各先進国は、消費者を保護し、製造 者を規制する法律を立法し続けた。にもかかわらず、今日、先端的建築工 法、材料工学、土木工学、構造力学、電子工学などのハイテクノロジーを用 いて製造される製品であり、半製品、部品などを用いて建てられ、工業技術 の集大成と言っても過言ではない不動産が製造物の範囲に入るかどうかは国 によって違っている。

 第一項 本稿の課題

 製造物に関する特別法を適用しない場合に、契約法における債務不履行責 任や瑕疵担保責任では、消費者と製造者との間に契約関係がなければ、被害 者は直ちに製造業者に対して損害賠償を請求することができない。不法行為 法では、契約関係の存在が要件ではないが、被害者が製造物に関する専門知 識を持たない状況では、加害者である製造者に過失があることを立証し難 い。故に、民法を用いて製造者の責任を追及することが困難となる。

 そこで、民法上の難点を克服して消費者をより効果的に救済するために、

製造物責任分野において、無過失責任主義を採用し、欠陥という新たな要件 を用いる責任ルールが導入された。すなわち、製造物責任は、従来の過失責 任の枠組を越え、無過失責任に移行する。

(4)

 台湾消費者保護法第 7 条は、「商品の設計、生産、製造もしくは役務の提 供に従事する企業経営者は、提供する商品が流通により市場へ進入する場合 または役務を提供する場合、当該商品または役務が当時の科学技術または専 門水準に沿う合理的に期待できる安全性を確保しなければならない。」と規 定する。同法の施行細則第 4 条によると、「商品」というのは、「完成品、半 製品、原料または部品を含む取引客体の不動産または動産」を指す。故に、

台湾では、不動産が製造物の範囲に入っている。

 また、興味深いのは、台湾が消費者保護法における製造物に関する規定を 立法した当時に、不動産が製造物の範囲に入っている日本の製造物責任法要 綱試案を参考にしたことがある。しかし、台湾と日本とにおいてそれぞれ製 造物責任法が発展した過程は、歩幅が近いものもあるし、乖離するものもあ る。特に不動産の部分において、これほどまで差異が存在している背景と原 因を探ることが、製造物責任法を見直す際に、参考となるではないかと考え ている。

 日本では、日本製造物責任法第 2 条 1 項において、「製造物」とは、「製造 または加工された動産をいう」と規定されている。不動産は日本法では製造 物の範囲から除外されているが、実務においては、若干不動産を製造物とし て認める判決もある。

 以上を踏まえ、本稿が探究したいことは、まずは、同様に消費者の保護を 狙う製造物責任法でありながら、如何なる原因で不動産に対する製造物の範 囲が異なっているのか。次に、不動産の欠陥については、一見すると消費者 にとって製造物責任法を根拠に請求することが容易であると思われるが、本 当にそうであるか。最後に、ほぼ同じ時に立法された台湾(1994年 1 月11日 公布)と日本(1994年 7 月 1 日公布)との製造物責任法が20年以上を経過し た現在、それぞれの社会や学界には製造物責任法を見直して改正すべきとい う意見が少なくない。このような流れの中で、通常に容易く購入できない不 動産については如何にして製造物責任法で規定するか。そこで、不動産を製

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造物の範囲に入れるかどうかの利害得失を見極める必要があると考えられ る。

 第二項 本稿の構成

 本稿は、上述のような問題を意識した上で、具体的には次の問題を考察す る。

 第一に、台湾と日本とにおける不動産の欠陥の問題を取り扱う法律を考察 し、学説と実務とを参照し、問題点を突き止め、現状を分析する。問題点と 現状を理解した上で、製造物責任法に適用する前提と効果を検討する。具体 的には、各国における製造者と製造物との定義、欠陥の定義と判断基準、製 造物責任による損害賠償責任を考察する。

 次に、製造物責任法による損害賠償請求の難易度を分析し、製造物責任法 に関する立証責任を考察し、不動産を製造物責任法に適用するメリットとデ メリットを析出する。また、台湾とイギリスでは、製造物責任法に適用する 際に生ずる不法行為との不都合という純粋経済損失を鑑み、より深く製造物 責任法に適用する損得を考える。

 最後に、以上の各考察や分析を踏まえ、各国が不動産の欠陥に対する対処 の共通点と相違点とを導き出し、それぞれの現行法における利点と欠点を絞 る。さらに、台湾でも日本でも消費者法や製造物責任を改正する意見が少な くないため、不動産を製造物の範囲から除外するのが良いのか、または不動 産を製造物の範囲に入れるほうが良いのかという問題意識をもって終章に至 る。今後の立法に対して、少しでも貢献ができるとすれば幸いである。

 なお、本稿においては現行民法を前提に論じ、民法(債権関係)改正の内 容については、若干の記述を加えるにとどめる。改正民法に基づく考察につ いては今後の課題としたい。

第一章 不動産の欠陥における問題現状

 不動産を製造物の範囲に入れるべきかを検討するために、現行法と現在の

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実務とはどうやって不動産の瑕疵による問題を取り扱うかを考察しなければ ならない。一般的には、買主あるいは消費者にとって製造物責任法で不動産 の瑕疵の問題を処理するのが請求しやすいと思われているが、実際には、そ うとは限らない。以下の各節においては、本稿が観察して比較したい各国の 現行法の状況を考察する。

 また、用語について、台湾では、消費者保護法と台湾民法191条の 1 との 条文を読んでも商品責任や製造物責任という言葉が現れていない。歴史上の 発展から見ると、最初は製造者を責任主体としてその責任理論を作り上げ、

このような責任を商品製造者責任と呼んでいた。時が経ち今日に至り、責任 主体の範囲は製造者以外に広がっており、設計者、部品製造者、半製品製造 者、卸売業者、小売業者なども含んでいる( 1 )。故に、製造物責任は、産品責 任、商品責任、製造品責任などと呼ばれている。製造者を責任主体として注 目する場合には、商品製造者責任と呼び、商品自体に注目する場合には、

商品責任、産品責任あるいは瑕疵商品責任、瑕疵産品責任と呼んでいる( 2 )。 日本では製造物責任と呼んでおり、英米法では Product Liability あるいは Manufacturer’s Liability と称している。用語が異なっているが、検討され ている内容を見れば、その実質は基本的には相違がない( 3 )。以上の状況を踏ま え、責任主体の範囲の広さと比較法上のわかりやすさを考え、本稿は台湾法 の部分において商品責任を用い、日本法とその他の法律の部分において製造 物責任の語を採用する。

 以下においては、台湾と日本における契約当事者のみならず、第三者の立 場も考慮し、不動産の欠陥もしくは瑕疵によるあらゆる損害を受けた者にと って、現行法として主な損害賠償の請求手段を考察したい。

 原則的には、担保責任の損害賠償の範囲が履行利益もしくは信頼利益に限 られている。ただ、台湾では、状況によって、拡大損害に及ぶ場合でもあ る。また、日本では、製造物責任法の損害賠償の範囲は拡大損害に限られて おり、製造物自体の損害に及んでいないと明文で規定されている。一方、台

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湾では、こういう規定は定められておらず、定着していないが、製造物自体 の損害を製造物責任法の損害賠償の範囲を入れる事案はかなりある。

 不動産の製造者と契約している場合には、瑕疵担保と製造物責任法とは相 補的関係と見える。しかし、不動産の製造者と契約していない者または第三 者にとっては、不法行為という打つ手があるが、債務者の無資力のリスクを 負い、厳しい状態と考えられる。また、日本の製造物責任法が不動産を製造 物の範囲から除外した理由の一つは、契約責任もしくは土地工作物責任で対 応できるとしている(後述)。果たして不動産と製造物自体の損害とを製造 物責任法から排除し、契約責任もしくは土地工作物責任に委ねるのが妥当か どうかは、製造物責任法の改正にとって参考になると考えられる。

 第一節 民法としての在り方  第一項 台湾法

 台湾では、不動産の瑕疵による問題を取り扱うのは、台湾民法における売 買または請負契約による債務不履行と瑕疵担保とに関する規定、台湾民法に おける製造物に関する不法行為の規定、消費者保護法における商品責任であ る。1993年に消費者保護法が立法されるまでに、欠陥のある不動産あるいは 商品を購入した消費者は、台湾民法の契約に関する規定や不法行為でしか請 求することができない。にも関わらず、裁判所は、商品責任に関わる事例に おいて、消費者の立証の困難に対して、手を出さず、立証転換のやり方も採 用していない。契約責任も不法行為も限界があるため、消費者の権益を十分 に保障することができない。そこで、こういう商品責任の状況を打開して、

消費者と企業経営者とのバランスを取るために、立法を選択した( 4 )。一方、立 法の手続が少し遅いため、消費者保護法が立法された後、2000年に、商品製 造者に関する台湾民法191条の 1 が定められた。故に、この立法の必要性に ついては、かなり注目されていた。第一項においては、台湾における不動産 の欠陥に関する現行法の対応を考察する。

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  1  瑕疵担保と債務不履行

 商品としての不動産に瑕疵あるいは欠陥があった場合に、買主もしくは注 文者または他の契約に基づいてその商品を手に入れた者は、商品の瑕疵ある いは欠陥による損害を受けたときに、売主または請負人もしくは他の契約に おける債務者に対し、債務不履行または瑕疵担保に関する規定によって損害 賠償を請求できる。以下において、売買と請負との瑕疵担保と債務不履行と を説明する。特に商品責任と比較するため、物の瑕疵担保に注目する。

 ( 1 )売 買  A 瑕疵担保

 台湾民法354条は、「目的物の売主は、買主に対し、その目的物には第357 条によって危険を買主に移転する時に、価値の滅失もしくは減少の瑕疵がな いこと、及び通常または契約が予想する機能の滅失もしくは減少の瑕疵がな いことを担保しなければならない。ただし、減少の程度が重要ではない場 合には、瑕疵と見做してはならない( 1 項)。売主は、危険の移転の時に目 的物は売主が保証する品質を有していることを担保しなければならない( 2 項)」と規定している。

 また、瑕疵担保責任の成立要件としては、先に述べた瑕疵があることと引 渡す前に瑕疵があったこととの二つの要件以外にも、二つの要件がある。第 一に、買主が善意で重大な過失がないことである。台湾民法355条は、「契約 が成立した時に、買主が目的物に前条 1 項による瑕疵があるのを知っていた 場合において、売主は担保責任を負わない( 1 項)。買主が重大な過失によ って前条 1 項による瑕疵があるのを知らなかった場合において、売主は瑕疵 がないことを保証しない限り、担保責任を負わない。ただし、故意に買主に その瑕疵を告げなかったときは、この限りでない( 2 項)。」としている。第 二に、買主は受領した目的物を検査し、瑕疵があれば売主に知らせることで ある。台湾民法356条によると、買主は目的物の性質によって通常の手順に 従って早めに受領した物を検査すべきであり、売主が担保責任を負うべき瑕

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疵を発見した時に、直ちに売主に通知しなければならない。通知を怠る場合 においては、通常の手順による検査で発見できない瑕疵を除き、受領した物 を認めると見做す。すぐに発見できない瑕疵が後日に見つかった場合には、

同じく直ちに売主に通知しなければならない。通知を怠る場合においては、

受領した物を認めると見做す。但し、売主が故意に買主にその瑕疵を告げな かった場合は、台湾民法356条を適用しない。

 a 瑕疵担保の効果

 特定物の瑕疵担保の性質に関する学説としては、担保説と履行説がある。

瑕疵担保の効果を検討する前に、担保説と履行説とを説明しておく。

 まず、特定物の売買において、担保説について、売主は契約を締結する時 の状態の目的物とその所有権を買主に引渡せば済み、瑕疵のない目的物の引 渡義務がない。故に、原始的瑕疵の場合には、瑕疵のある目的物を買主に引 渡しても債務不履行が成立せず、売主は台湾民法354条による瑕疵担保責任 を負うだけである。次に。履行説について、売主は目的物とその所有権を買 主に引渡す義務を課されるほか、瑕疵のない目的物の引渡義務もある。それ 故、瑕疵のある目的物を買主に引渡す場合は、売主は債務不履行と瑕疵担保 との責任を負うとなる。

 また、種類物の売買について、通説は履行説を採用している。台湾民法 364条によると、売買の目的物の種類のみを指定する場合において、買主は 他の瑕疵のない物の引渡しを請求できる。売主は他の瑕疵のない物を買主に 引渡す責任を負う以上、売主には瑕疵のない物を引渡す責任があるという前 提が存在する( 5 )

 (a)契約の解除と代金の減額

 台湾民法359条によると、目的物に瑕疵がある売買において、売主が担保 責任を負うべき場合に、買主は契約の解除または代金の減額を請求すること ができる。但し、状況によって、契約を解除するのが明らかに公平を失う場 合において、買主は代金の減額のみを請求できる。ここでの解除権は法律が

(10)

定める特別な権利であり、瑕疵担保責任の要件を満たせば、売主に修繕の催 告をしなくても解除できる( 6 )。また、明らかに公平を失うというのは、買主の 瑕疵による損害と売主の契約解除による損害の均衡が失われることを指す

(最高法院88年台上字711号民事判決)。

 (b)瑕疵のない目的物の引渡し

 前述の通り、種類物の売買において、売買の目的物の種類のみを指定する 場合において、買主は他の瑕疵のない物の引渡しを請求できる。さらに、台 湾民法364条 2 項によって、売主は別途引渡す目的物に対し、瑕疵担保責任 を負う。買主の利益を保護するため、本項の適用には次数の制限がないとす べきである( 7 )。なお、売主が他の瑕疵のない物を買主に引渡したいと考える場 合においては、買主は信義則により拒絶できないとすべきである( 8 )

 (c)瑕疵修補請求

 担保説( 9 )によれば、危険の移転の前には、売主は目的物を修繕する権利を有

するが、買主には修繕を請求する権利がない。危険の移転の後には、別途合 意がない限り、売主には瑕疵を修補する義務がない。

 履行説によれば、買主には、瑕疵修補義務がある。その理由(10)によって、台 湾民法359条は旧ドイツ民法462条から継受した法律であり、このように規定 するのは、通常に売主は瑕疵を修補する能力を持っておらず、故に損害賠償 責任を負うからである。しかし、現代の取引の状況から見れば、売主には目 的物に対し、修補する能力がある場合が少なくない。特に大量生産の工業製 品を目的物とするときには、売主には瑕疵修補の能力があり、買主も売主が 責任をもって瑕疵を修補することを期待する。

 実務においては、最高法院77年度第 7 次民事庭会議決議(一(11))によって、

目的物に瑕疵があり不完全履行に該当する場合に、買主は履行遅滞の規定を 類推適用し、売主に補正を請求できるとされている。

 (d)損害賠償請求

 瑕疵担保の損害賠償責任について、台湾民法360条は、「売買の目的物に売

(11)

主が保証する品質が欠ける場合において、買主は契約の解除もしくは代金の 減額を請求せずに不履行の損害賠償を請求できる。売主は故意に目的物の瑕 疵を告げなかったときも、同様とする」としている。売主が保証する品質と しては、売主は明示的に保証の意思を示すべきであるが、保証の言葉が載っ ている場合に限らず、契約の内容もしくは契約する際の事実や資料に基づい て判断し、売主に保証の意思があれば本条に該当する(12)。また、売買の目的物 に売主が保証する品質が欠けるもしくは売主が故意に目的物の瑕疵を告げな いという状況がなければ、たとえ目的物に瑕疵があったとしても、買主は契 約の解除もしくは代金の減額のみを請求でき、損害賠償を請求することがで きない。

 賠償の範囲について、通説(13)は、場合により異なる判断をする。売主が保証 する品質が欠ける場合においては、その保証の範囲を解釈すべきである。瑕 疵の結果的損害が売主の保証の範囲にあれば、賠償の範囲は瑕疵の結果的損 害に及ぶ。売主が故意に目的物の瑕疵を告げなかった場合には、瑕疵損害と 瑕疵の結果的損害の両者が含まれる。

 B 債務不履行

 台湾民法は、債権について、総則に債務不履行に関する規定を設けてお り、債権細則に特定の類型の契約において、瑕疵担保責任を定めている。特 別法が一般法に優先する原則に基づき、瑕疵担保は債務不履行に優先して適 用されるべきである。しかし、債務不履行を適用する余地が全くないかとい う疑問について、学説と実務とには、若干の相違がある。以下においては、

売買に関する瑕疵担保と債務不履行との競合を説明する。

 a 買主の瑕疵の検査と通知との義務

 台湾民法356条によると、買主には、目的物の検査と売主への瑕疵の通知 との義務がある。この義務に違反した場合において、買主は、瑕疵担保の権 利を行使できなくなる。債務不履行においても356条が適用されるかについ て、実務上は、「物の瑕疵担保責任と不完全履行の債務不履行の責任とは、

(12)

法律の性質、構成の要件及び規範の機能がそれぞれに異なっている。故に、

買主が、売主は不完全履行の債務不履行の責任を負うべきと主張し、損害賠 償を請求する時、台湾民法356条の適用がない(最高法院87年台上字2668号 民事判決)」とされている。

 b 瑕疵修補

 最高法院77年度第 7 次民事庭会議決議(一)は、「売主が引渡す目的物に は瑕疵担保責任を負うべき瑕疵があり、その瑕疵が契約後に売主の責めに帰 すことができるによって発生した場合において、売主は瑕疵担保責任を負う ほか、同時に不完全履行の債務不履行責任も構成される(14)」とする。同決議に よって、種類物について、特定された時に既に瑕疵があった場合に、売主 は瑕疵担保責任のほか、債務不履行責任を負うべきである。特定物につい ては、本決議に載っていないが、その後に最高法院が販売予定マンション

(Pre-Construction Real Estate)の売買に関わる問題を取扱う際に、本決 議を引用した。最高法院は、特定物の売買において、契約後に売主の責めに 帰すことができる事由によって目的物に瑕疵が生じた場合に、買主は不完全 履行に従い、売主に補正を請求できるとしている(15)

 c 契約の解除

 契約の解除について、物の瑕疵担保においては、売主の責めに帰すことが できる事由と売主への催告は必要がない。実務上に定着している見解によっ ても、買主がこの解除権を行使する際に、一定の期間を定めて売主に瑕疵の 修補を催告する必要がない(16)

 不完全履行について、売主の責めに帰すことができる事由は必須である が、売主への催告の必要性は状況によって異なっている。実務の見解によれ ば、売主に瑕疵修補を催告しておくべきかについては、瑕疵が補正できるか どうか次第である。瑕疵が補正できる場合に、履行遅滞に関わる規定を類推 適用し、売主に瑕疵修補を催告しておくべきであり、その期間内に修補がな いときは、買主は契約の解除をすることができる。瑕疵が補正できない場合

(13)

に、履行不能に関わる規定を類推適用し、売主に催告せずに契約の解除をす ることができる。

 d 損害賠償の請求

 実務上、前述の通りに、最高法院77年度第 7 次民事庭会議決議によって、

後発的瑕疵の場合において、売主の責めに帰すことができる事由によって瑕 疵が発生したときは、買主は不完全履行の規定に従って損害賠償を請求でき る。最高法院民事判決台上字第575号は、「売主が引渡す目的物に瑕疵担保責 任を負うべき瑕疵があり、その瑕疵が契約後に売主の責めに帰すことができ るによって発生した場合において、売主は瑕疵担保責任を負うほか、同時に 不完全履行の債務不履行責任も構成される。故に、買主は物の瑕疵担保もし くは不完全履行に従って売主に損害賠償を請求すると主張するのが、両方と も法律に許されないわけでもない」と示す。それゆれ、買主は自己の状況に 即し、利害得失を考え、瑕疵担保と不完全履行との中で、最も有利な請求の 方法を選べることができる。

 損害賠償の範囲については、前に言及した瑕疵損害と瑕疵の結果的損害と に分けられている。実務はこれを区別せず、不完全履行による損害賠償の請 求を許すとしている(17)。瑕疵損害については、台湾民法227条 1 項(18)に従い、履 行不能あるいは履行遅滞を類推適用して請求する。瑕疵の結果的損害につい ては、直ちに台湾民法227条 2 項(19)に基づいて請求する(20)

 C 消滅時効と除斥期間  a 物の瑕疵担保

 (a)契約の解除と代金の減額

 台湾民法365条は、「買主が瑕疵のある目的物によって、契約の解除もしく は代金の減額を請求することができるときは、その解除権もしくは請求権 は、買主が第356条に従って目的物に瑕疵があることを売主に通知したから 6 ヶ月間行使しないまたは目的物の引渡しの時から 5 年を経過した後、消滅 する( 1 項)。前項に関する 6 ヶ月間の規定は、売主が故意に買主にその瑕

(14)

疵を告げなかった場合において、適用しない( 2 項)」としている。実務に よると、契約の解除権は形成権(21)であり、故に本条が規定する期間は除斥期間 である。代金の減額の請求権について、請求権と書いてあるが、実質的に は、買主は代金の減額の請求権を行使するという意思を売主に表示するだけ で代金の減額の効果が生じ、売主の承諾の必要がない。

 (b)損害賠償と代物弁済

 台湾民法365条に規定する期間は、契約の解除もしくは代金の減額の場合 のみに適用できる。故に、瑕疵担保による損害賠償は台湾民法365条を適用 できない(22)。故に台湾民法125条(23)に規定する15年の消滅時効を適用すべきであ る。実務上も同じ見解である。

 種類物の売買において、台湾民法364条 1 項による代物弁済の請求権の時 効について、最高法院の判決はないが、台湾民法365条に対する最高法院の 解釈から見ると、台湾民法364条 1 項によって、売主に別途瑕疵のない目的 物の引渡しを請求するという権利は請求権であり形成権ではないと推測しう

(24)る

。故に、台湾民法364条 1 項による請求権も同じく台湾民法365条を適用で きず、台湾民法125条に規定する15年の消滅時効を適用すべきである(25)。  b 債務不履行

 (a)契約の解除

 前述のように、瑕疵担保による契約の解除には、台湾民法365条が定める 除斥期間の適用がある。実務上、物の瑕疵に対する債務不履行による契約の 解除については、台湾民法365条を適用しない。最高法院93年台上字1507号 民事判決(26)は、「物の瑕疵担保責任と不完全履行の債務不履行責任とは、法律 の性質、構成要件及び規定の機能がそれぞれに異なっている。目的物の瑕疵 による契約の解除と不完全履行による契約の解除とには、区別がある。例え ば、前者の場合においては、売主の責めに帰すことができる事由が必要でな く、買主は民法359条に従って契約を解除することができる。後者の場合で は、売主の責めに帰すことができる事由があったから初めて契約を解除する

(15)

ことができる。さらに、買主が売主は不完全履行の責任を負うべきと主張す る時に、不完全履行が補正できれば、買主は一定の期間を定めて売主を催告 し、期間内に売主が補正しない時から、初めて民法254条(27)に従って契約を解 除することができる。補正ができなければ、催告せずに契約の解除をするこ とができる(民法255条、256条)。前者の場合は、民法365条の除斥期間に制 限されるべきであり、後者の場合には、民法365条の適用がない」と示して いる。

 (b)損害賠償の請求

 判例の見解によると、物の瑕疵に対する債務不履行による損害賠償の請求 には、台湾民法365条の適用がない。最高法院87年台上字1707号は、「不完全 履行、履行不能、履行遅滞などの債務不履行の責任は、物の瑕疵担保責任と の法律関係が異なり、それぞれの請求権が存在している。また、民法365条 の規定によって、買主が目的物に瑕疵があるによって、引渡したから 6 ヶ月 間行使しなければ消滅する請求権は、契約の解除と代金の減額との請求権の みに限られている(28)。契約の不履行から生じた債務不履行の損害賠償責任は、

適用の範囲に入っていない」と示している。

 (c)瑕疵修補

 ここまで言及した最高法院の見解から見ると、買主が目的物の瑕疵に対し て不完全履行と主張する際に、買主は履行遅滞の規定を適用し、売主に瑕疵 の修補を請求することができる。そして、この請求権には台湾民法365条の 除斥期間の適用がない。

 ( 2 )請 負  A 瑕疵担保

 台湾民法492条は、「請負人は、仕事を完成させ、約束通りの品質を備えさ せるべき、及び価値の減少もしくは滅失または通常もしくは約束の使用に相 応しくない瑕疵がないようにすべきである」と規定している。本条が規定す る瑕疵担保責任の内容は、目的物における品質、価値、機能の担保責任に分

(16)

けられる(29)。責任については、法定的無過失責任であり、請負人に過失がある 必要がない、注文者が別途監督する人に依頼することによって、その責任の 軽減もしくは免除されることもない。請負人の責めに帰すことができる事由 によって、瑕疵を生じさせれば、不完全履行の問題も発生する。このとき は、注文者は修補もしくは契約の解除または代金の減額を請求することがで きるほか、台湾民法459条に従って併せて損害賠償も請求できる(最高法院 89年台上字2097号民事判決)。

 a 瑕疵修補

 台湾民法493条は、「仕事に瑕疵があるときは、注文者は相当の期限を定め て請負人に修補を請求することができる( 1 項)。請負人が前項に規定する 期限内に修補をしないときは、注文者は自ら修補をすることができ、請負人 に修補による必要の費用を請求することができる( 2 項)。修補による必要 の費用が過大なときは、請負人は修補を拒絶することができ、前項の規定を 適用しない( 3 項)」としている。自ら修補をすることができるのは、「請負 人が注文者に定められる期間内に修補しないまたは修補を拒絶するという前 提がある。注文者は請負契約を締結し、仕事を請負人に依頼した以上、明ら かに、仕事の瑕疵の修補に対し、請負人の方がより高い修補の能力を持って おり、より安いコストで修補を完成できる。注文者が予め一定の期間を定め て請負人に修補するかを催告しない場合、注文者が自ら人を雇用して瑕疵を 修補することは当然に許さない(最高法院86年台上字2298号民事判決)」。

 b 契約の解除と報酬の減額

 台湾民法494条は、「請負人が前条 1 項に規定する期限内に瑕疵を修補しな いもしくは前条 3 項に従って瑕疵の修補を拒絶するまたは瑕疵が修補できな いときは、注文者は契約の解除もしくは報酬の減額を請求することができ る。ただし、瑕疵が重要でないもしくは仕事の目的物が建物その他の土地の 工作物であるときは、 注文者は契約を解除してはならない」 と規定している。

 不動産の場合においては、仕事の目的物が建物その他の土地の工作物であ

(17)

るときは、注文者は契約を解除してはならないという規定があるので、原則 的には、契約を解除することができない。しかし、使用できないまたは人に 対する危険な不動産を購入した注文者を保護するために、最高法院は、この 条文を目的論的に限定解釈することをした。最高法院83年台上字3265号民事 判例(30)によっては、「民法494条ただし書は、仕事の目的物が建物その他の土地 の工作物であるときは、注文者は契約を解除してはならないと規定してい る。かかる規定は、請負人が完成する建築物における瑕疵の程度は建築の構 造あるいは安全に影響せず、再建する必要がないと指す。建築が倒れる危険 を惹起する瑕疵の程度に達するときに、注文者はまだこの危険を負うべき、

契約を解除してはならないといのは、立法の本意ではない」と示している。

さらに、建築が倒れる危険がなくても、仕事の目的物の瑕疵が、報酬の減額 の請求をもって注文者の利益を保障し、併せて当該目的物の経済的価値を維 持することができないほどに達するときに、注文者は契約を解除することが できる(31)

 c 損害賠償の請求

 請負人の瑕疵担保責任は無過失責任であり、請負人に過失がなくても、注 文者は瑕疵の修補、契約の解除、代金の減額を請求することができる。請負 人の責めに帰すことができる事由があれば、不完全履行と同様に、瑕疵の修 補、契約の解除もしくは代金の減額と併せて損害賠償を請求することができ る。台湾民法条495条は、「請負人の責めに帰すことができる事由によって仕 事に瑕疵があるときは、注文者は前二条の規定を従って瑕疵の修補あるいは 契約の解除もしくは代金の減額を請求することができるほか、併せて損害賠 償を請求することができる( 1 項)。前項において、仕事が建物その他の土 地の工作物で瑕疵が重大であり、そのために使用の目的を達することができ ないときは、注文者は契約を解除することができる( 2 項)」と規定してい る。なお、請負人の責めに帰すことができる事由がある限り、瑕疵の修補あ るいは契約の解除もしくは代金の減額を請求せずに、直ちに損害賠償を請求

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することができる(最高法院76年台上字1954号民事判決)。

 報酬の減額と損害賠償について、要件としては、請負人の責めに帰すこと ができる事由が必要である。注文者が受けた損害の原因は、請負人が完成す る仕事にある瑕疵でなく、他の原因であるときは、注文者は本条に従って損 害賠償を請求してはならない(最高法院77年台上字1991号民事判決)。注文 者がこの損害賠償の請求権を請求する際に、仕事の瑕疵と損害の発生とを立 証するべきであり、請負人が免責を主張したいなら、自己の責めに帰すこと ができる事由がないと証明すべきである(32)

 B 瑕疵担保の存続期間

 請負に関する瑕疵担保の存続期間は、瑕疵発見の期間と権利行使の期間と に分けられる。瑕疵発見の期間とは、注文者は期間内に瑕疵を見つけなけれ ば、権利を行使することができない。権利行使の期間というのは、その期間 の中に、 権利を行使しなければ、 もはや権利が行使できなくなるものである。

 瑕疵発見の期間について、台湾民法498条は、「第493条から第495条までに 規定する注文者の権利は、仕事の目的物を引渡した時から 1 年間経ってから その瑕疵を発見する時は、主張してはならない( 1 項)。性質によって仕事 の目的物の引渡しを要しない場合には、前項の期間は、仕事が終了した時か ら起算する( 2 項)」と規定している。

 不動産の場合において、台湾民法499条は、「仕事の目的物が建物その他の 土地の工作物もしくは建物その他の土地の工作物の重大な修繕であるとき は、前条に規定する期限について、 5 年とする」と規定している。不動産の 瑕疵は発見し難いので、期間は同じく仕事が終了した時から起算するが、 5 年まで伸長される。さらに、請負人が故意に仕事の目的物の瑕疵を告げない ときは、本条に規定する場合において、期間は10年間延長される(33)

 次に、権利行使の期間について、台湾民法514条 1 項は、「注文者の瑕疵修 補請求権、修補費用の請求権、報酬の減額の請求権、損害賠償の請求権もし くは契約の解除権について、いずれも瑕疵の発見後 1 年間行使しないとき

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は、消滅する」と規定している。請負の瑕疵担保と併せて請求する債務不履 行による損害賠償の請求権は、原則的には台湾民法125条が規定する15年の 期間を適用すべきである。しかし、請負の性質と法律の安定性とを考慮した 上で、最高法院96年第 8 回民事庭会議(34)によっては、「請負人の責めに帰すこ とができる事由によって仕事の目的物に瑕疵が発生する場合における損害賠 償請求権の期間について、民法514条 1 項は既に短期消滅時効を規定してい る。故に、民法514条 1 項は注文者の債務不履行による損害賠償請求権の特 別法と解され、優先に適用されるべき。従って、注文者は民法514条 1 規定 の 1 年間が経過した後に、注文者は普通の債務不履行に基づいて民法125条 が規定する15年間の長期消滅時効を主張し、損害賠償を請求してはならな い」と示している。

  2  不法行為

 ( 1 )特殊不法行為としての商品責任

 台湾民法191条の 1 は消費者保護法が立法された後に定められたので、そ の存在に争いがある。本条が必要と主張している多数意見によると(35)、消費者 保護法の立法趣旨に即し、この法律は終の商品あるいはサービスの消費と規 定しており、生産を目的とする商品の消費は本法の範囲から外れている。故 に、たとえ本条が存在しても、この法条にしか規制できない領域はある。そ もそも、消費者保護法という法律の目的は、消費者と企業経営者との経済力 や知識の格差を補填することにあるので、民法が重視している当事者間の平 等と私的自治とは明らかに異なっている。故に、民法の特別法としての消費 者保護法に対して、一般法としての台湾民法191条の 1 には存在意義がある。

 台湾民法191条の 1 第 1 項は、「商品製造者は、その商品の通常の使用ある いは消費による他人の損害に対し、損害賠償責任を負う。ただし、その商品 の生産、製造あるいは加工、設計に欠陥がない場合、または損害は当該欠陥 によるものではない場合、または、その損害を防止するために相当に注意を 払った場合については、この限りでない」と規定している。

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 A 責任の性質

 立法以前には、商品責任は契約責任に属するか、それとも不法行為責任に 帰属するかが検討されていた。本条は不法行為の款に規定されている以上、

明らかに不法行為責任に位置づけようとする姿勢が見える。立法理由から見 ても、商品製造者の責任については、不法行為説を採用することが相応しい ことが示されている。

 B 責任主体  a 商品製造者

 台湾民法191条の 1 第 1 項によると、損害賠償責任を負うのは商品製造者 である。同条第 2 項によれば、前項に規定する商品製造者とは、商品の生 産、製造、加工の業者をいう。その商品に標章あるいは他の文字、符号を加 え、自らがその生産、製造、加工をした者であるかのようにした場合、その 者は商品製造者と見做される。

 b 商品輸入業者

 同条第 4 項によると、商品輸入業者は商品製造者と同じ責任を負うべきで ある。法律の文言より見ると、商品輸入業者については特に規定していない が、立法理由によって、本項に規定する商品輸入業者とは、商品を台湾に輸 出する外国にある輸出業者及び台湾にある輸入業者をいう。

 C 適用範囲

 本条の立法経緯によると、立法目的は商品製造者に商品の通常の使用ある いは消費による損害の賠償責任を負わせ、消費者の利益を守ることにある。

しかし、本条より早く施行された消費者保護法は、無過失責任と連帯賠償責 任とを採用し、懲罰的損害賠償も規定しているので、消費者に対する保護の 程度は、消費者保護法のほうがより強いと思われる。

 法律の適用について、消費者保護法は民法の特別法であり、特別法は一般 法に優先するという原則に基づき、商品責任に関わることには、優先的に消 費者保護法を適用する。但し、消費関係による商品事故でなければ、民法の

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み適用される。

 D 責任の成立

 a 商品の欠陥によって他人に損害を与える

 本条に規定する商品について、その範囲は明確ではない。立法経緯によれ ば、商品とは「自然産物と工業製品とを含む」と示しているが、詳しく説明 されていない。法律の解釈からすると、消費者法施行細則第 4 条の規定に従 うべきものと思われる(36)

 欠陥について、取引上に期待される成分、形、品質、効果あるいは価値に 相応しくないものは、欠陥のある商品に属しており、その欠陥は生産、製造 あるいは加工のいずれの過程から発生したかを問わない。なお、欠陥の有無 を認定する時は商品が市場に流通する時点であり、商品の使用による損害が あった場合、欠陥が存在していると推定され、被害者は欠陥の存在を証明す る必要がない(37)

 損害について、原則的には一般不法行為の意義と同じであり、ただ、損害 の発生と商品の欠陥との間には、因果関係が存在するべきである(38)。本条が、

損害は当該欠陥によるものではないと規定する実質的な意義は、因果関係の 推定であるが、商品製造者は立証すれば免責される。なお、この推定は、責 任成立と責任範囲との二重推定である(39)

 b 商品の通常の使用によって損害をもたらす

 通常の使用というのは、社会通念に基づき、商品の一般的用途あるいは普 通の機能で使用することと指す(40)。例えば、ガスコンロを用いて料理を作るこ とは通常の使用であるが、ガスコンロをヒーター・ストーブとして使うのは 通常の使用ではない。通常でない使用による損害に対しては、商品製造者は 商品責任に基づく賠償責任を負わない。また、責任の推定と同じ、商品製造 者は、被害者が通常に商品を使用していないと立証できれば免責される。

 E 損害賠償

 前述の通り、消費者保護法 7 条が規定する商品責任の保護の権益の範囲は

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消費者の生命、 身体、 健康、 財産である。通説(41)によると、この範囲について の規定は限定列挙の規定であり、消費者のこの 4 つの権益のみ保護してい る。不法行為と比べれば、不法行為が保護する権利あるいは権益の範囲はよ り広いであるが、商品自体の損害(product injures itself)である純粋経済 損失は含まれない(後述)。

 時効について、台湾民法197条 1 項は、「不法行為により生じる損害賠償請 求権は、請求権者が損害及び賠償義務者を知った時から 2 年間行使しないと きは、消滅する。不法行為の時から10年を経過した時も、同様とする」と規 定している。消費者保護法における商品責任の損害賠償については、前述の ように、不法行為の規定を適用すべきである。実務では、台湾高等法院102 年重上更(一)字第36号民事判決(42)は、「消費者保護法が規定する損害賠償請 求権の消滅時効は、民法の不法行為における損害賠償請求権の消滅時効の規 定を適用すべき」と示している。

 ( 2 )特殊不法行為としての工作物責任

 不動産の欠陥に関し、よく製造物責任法と比較されるのは工作物責任であ ろう。不動産の欠陥による損害を受けた人の損失を補填するためのものであ るが、若干の相違がある。台湾民法191条は、「土地上の建築物あるいは他の 工作物によって他人の権利に与えた損害は、その工作物の所有者は、その損 害を賠償する責任を負う。ただし、その設置または保存に欠落はない、ある いはその損害はその設置または保存によるものではない、あるいは損害の発 生を防止するのに必要な注意をしたときは、この限りでない( 1 項)。前項 の損害の発生に対し、他の者が責任を負うべきときは、所有者は、その責任 を負うべき者に求償する権利を有する( 2 項)」と規定している。以下にお いては、本条にいう工作物責任を説明する。

 A 責任性質

 現代において、ハイテクノロジーを用いる先端的建築工法で建てられた建 築物や工作物などは、巨大化されたり、高層化されたり、地下化されたりし

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ただけではなく、社会と民衆とに便利を与えたとともに、危険の源となっ

(43)た

。こういう建築物や工作物の保存あるいは設置に欠陥があるときは、他人 の財産や権利を侵害するリスクがある。そのリスクを避けるため、建築物や 工作物の所有者は侵害の発生を防止する義務を負っている。この義務は社会 安全の一環に属する(44)。立法理由から見ると、もともとは交通安全のため、必 要な範囲に工作物の保存あるいは設置の仕方に欠落があるときに、すぐ修繕 すべきという公法上の義務を負わせている(45)

 B 規範の内容  a 責任主体

 工作物責任が規定する責任を負うべき者は工作物の占有者ではなく、所有 者である。所有者は工作物を占有していなくても、工作物の欠落による損害 に対し、責任を負う。不動産の売買の場合においては、所有権の移転に基づ いて認定する。売主は不動産を売ったとしても、不動産の所有権を移転しな い限り、その不動産の所有者である。

 b 工作物の範囲

 工作物責任に規定する工作物とは、土地にある建築物や施設である。例え ば、ビル、ブリッジ、レールウエー、トンネルなどは、機能しているかどう かにも関わらず、工作物に属する。また、工作物に付属しており、取り除く 予定がない動産や部品なども工作物に属する(46)。ただ、危険性が薄く、一般不 法行為の規定を適用できるため、竹木は工作物の範囲に含まれない(47)。  c 免責事由

 工作物の保存あるいは設置の欠落による他人の損害が発生したとき、工作 物の保存あるいは設置に欠落があり、損害が工作物の保存あるいは設置の欠 落によるものであれば、工作物の所有者に過失があると推定される。欠落と は、工作物の目的あるいは機能や保護措置などから客観的に見れば、通常に あるべき安全性を有しないことである(48)。被害者は、工作物による損害を証明 さえできれば済む。工作物の所有者は、前述の三つの推定を立証して反論で

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きなければ、損害賠償責任を負うこととなる。ここでの注意義務は、善良な 管理者の注意義務である。工作物の所有者は、善良な管理者として工作物に 関する法律に従い、工作物の材質や工法に注意したり、工作物のメンテナン スや防災措置を行ったりしなければならない。

 第二項 日本法   1  物の瑕疵担保  ( 1 )売 買

 日本民法においては、売買の物の瑕疵担保の規定は、日本民法570条しか ない。日本民法570条は、「売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第 566条の規定を準用する」と規定している。準用することによって、売買に おける物の瑕疵担保は、売買の目的物に隠れた瑕疵がある場合において、買 主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができ ないときは、買主は、契約の解除をすることができる(566条 1 項前半の準 用)となり、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみ をすることができる(566条 1 項後半の準用)となる。

 瑕疵概念には、目的物が通常に有すべき品質、性能を基準に判断される瑕 疵である客観的瑕疵と契約当事者がその契約において予定ないし意図してい た品質、機能を基準に判断される主観的瑕疵とがある(49)。隠れた瑕疵とは、フ ランス民法における不表見の瑕疵を継受する日本の旧民法に由来するもので あり、今日に至って通説によれば善意無過失という意味を指す(50)。進んで言う と、善意無過失の人であれば通常に発見しうる瑕疵であり、文言通りの隠れ ている状況とは限らない。

 改正民法では、瑕疵という言葉が削除された。目的物が契約に適合しない ときは、買主には、562条の追完請求権及び563条の代金減額請求権がある。

損害賠償の請求と契約解除とについては、債務不履行に関する規定に従い、

権利を行使することができる(改正民法564条)。

 A 瑕疵担保の効果

(25)

 瑕疵担保の性質に関して、若干の学説に分けられており、それぞれの説に よって瑕疵担保の効果にも影響を与えている。故に、瑕疵担保の効果を検討 する前に、主に法定責任説と契約責任説をめぐって概説しておく。

 法定責任説について、特定物の場合、売主には瑕疵のない目的物を買主に 引渡す義務がない(特定物ドグマ)。売主はその目的物を引渡せば済み、特 に瑕疵のない目的物の引渡しの約束がなければ、債務の完全履行となる。瑕 疵についての売主の責任を定めている日本民法570条は、法律は特別に当事 者間の契約から発生するはずがない責任の発生を規定した、という考え方が 法定責任説と言われている(51)

 法定責任説に対し、契約責任説は、物の瑕疵担保責任を債務不履行の特別 規定として位置づけ、瑕疵のない目的物の引渡しは売主にとっての義務であ り、当事者間の約束と関係なしに、瑕疵のある目的物を引渡すれば、債務不 履行となる。

 a 契約解除と代金減額

 契約解除について、日本民法570条が566条を準用することの効果として、

善意無過失の買主が目的物の瑕疵を知らないことを前提として、その瑕疵に よって売買の目的が成就できないときは、買主は売買契約を解除することが できる。

 代金減額について、法定責任説(52)は、損害賠償の範囲を信頼利益に限り、そ の代金減額はこの賠償に含まれる(53)。契約責任説によると、瑕疵担保責任は履 行利益の賠償を目的とし、特的物あるいは種類物を問わない(54)。特に代金減額 という賠償を強調していないが、賠償範囲に含まれると見られる(55)。危険負担 的代金減額請求権説(56)によって、売買契約の対価的均衡を維持するために、瑕 疵に減少された目的物の価値に応じ、代金を減額する必要はある。従って、

日本民法570条が準用する566条の損害賠償請求権は、実質的には代金減額の 性質を持っている。なお、損害賠償請求権との相殺と実質は変わらないこと を理由として代金減額請求権を認める見解もある(57)

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 b 瑕疵修補請求

 法定責任説によると、瑕疵のない目的物の引渡しの要求がないので、目的 物を引渡すれば完全履行となる。従って、売主は瑕疵修補の義務を課されて いないだけに、買主は瑕疵修補を請求することができない。

 契約責任説によると、目的物の属性や機能は契約の一部に含まれるので、

目的物が十分に通常の使用を満たさない場合において、買主は瑕疵修補請求 権を、契約履行の請求権の一部として行使することができる(58)

 判例において、新築住宅に関し、建売住宅に欠陥があるとして、宅建業者 に対し建替費用などの支払義務を認めた判決がある。業者が一般消費者に対 し、新築住宅として建物を売却する場合、明示の特約がなくとも、瑕疵のな い建物を給付すべき義務がある。従って、給付された建物に瑕疵がある場合 には、目的物を修補すべき債務を負うと解するのが相当である(神戸地判昭 和61年 9 月 3 日)。

 c 損害賠償の範囲

 法定責任説によれば、瑕疵担保責任が補填するのは買主が瑕疵を知ったら 受けなかった損害という信頼利益である。しかも、この責任は無過失責任で あり、売主の責めに帰す事由(故意・過失)があるかどうかにもかかわら ず、特約がなければ、買主の信頼利益を保護するが、債務不履行による損害 賠償請求権は発生しない(59)。ただ、売主の責めに帰す事由がある場合において は、契約締結上の過失を通じて、売主に履行利益の賠償責任を負わせるとい うより柔軟な姿勢を構える法定責任説もある(60)

 契約責任説は、瑕疵担保責任を債務不履行の特別法として、通常の履行利 益を賠償すべきとする。ただ、同じ履行利益の賠償であっても、債務不履行 が過失責任であり、瑕疵担保責任のみが無過失責任となることの合理的根拠 を説明するのが困難である(61)

 実務的には、日本民法416条を相当因果関係の規定と理解し、広く損害賠 償の決定に用いるという立場が多くみられる(62)。大阪高判昭和35年 8 月 9 日判

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決は、「売主の瑕疵担保責任という原因から発生する損害の範囲を限定する については民法416を類推し、相当因果関係によるべきものであって、通常 は、契約解除に基いて売買代金と目的物とを相互的に返還することによる原 状回復を以て足るもので、従って、その効果は契約解除をしないで代金の減 額を請求するのと実質的には同一である。併しその外に、例えば、買主が自 己の債務の履行の準備のために費用を支出したとか、或は、瑕疵の無い物の 引渡しを受けることを予期してその受入れ態勢を準備したことにより費用を 支出したというごとき、信頼利益の部類に入るものも、売主においてかよう な損害の発生を予見することができたような場合は、之を特別の事情に因っ て生じた損害として、その賠償を請求できるものと解するのが相当である…

特別の事情に因る損害の範囲を信義則に従って如何に拡張しても、履行利益 をこの損害の範囲に包含することは許されないと解すべきである」と判示し ている。特別の事情によって生じた損害について、日本民法416条 2 項を類 推適用し、売主が事情を予見しまたは予見することができたときは、買主は その賠償を請求することができると思われる。

 d 期間制限

 日本民法570条が566条 3 項を準用する効果によって、契約の解除または損 害賠償の請求は、買主が隠れた瑕疵を知った時から 1 年以内にしなければな らないとなる。そこで、日本民法566条 3 項に規定する 1 年間という期間に ついて、消滅時効と見る見解と除斥期間と見る見解に分けられているが、判 例は、除斥期間と解して定着している(63)。民法167条 1 項の10年消滅時効規定 の適用もある(最判平成13年11月27日)。

 ( 2 )請 負

 不動産の入手の態様の一つとして、請負も少なくない。日本民法632条 は、「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がそ の仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効 力を生ずる」と規定している。仕事の目的物は有形的と無形的仕事に分けら

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れており、それぞれについての取扱いが若干異なっているが、本稿は有形的 仕事の目的物である不動産に関する請負の瑕疵担保責任のみを考察する。

 改正民法では、請負に関する瑕疵担保の規定を大幅に削除した。故に、仕 事の目的物が契約の内容に適合しないときは、注文者は債権総則、契約総 則、売買契約などの一般的なルールに従い、履行の追完の請求、報酬の減額 の請求、損害賠償の請求及び契約の解除を行使することができる。

 A 瑕疵担保の効果

 請負の瑕疵担保については、売買と同じ、法定責任説と契約責任説とに分 けられているが、両者の立場は異なっていない。故に、以下において、本稿 の主題には必要なところで瑕疵担保の効果を説明しながら、学説間の相違を 概説する。学説の論争には深入りしないこととする。

 a 瑕疵修補請求

 請負契約の内容は、当事者間の合意による仕事の完成であり、一方の都合 で仕事の内容を変更してはならない。請負人は約束通りの仕事の内容を完成 させなければ、債務不履行となる。さらに言うと、請負における瑕疵とは、

約束通りでないことも含まれ、請負人は瑕疵のない仕事の目的物を引渡す義 務を課される。日本民法634条 1 項は、「仕事の目的物に瑕疵があるときは、

注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求する ことができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の 費用を要するときは、この限りでない」と規定している。これについて、法 定責任説も契約責任説も無過失責任と捉えている。ただ、瑕疵の修補とは、

約束通りまでに直すことではなく、契約に定められた内容に適合するように することである(64)

 しかし、ただし書によって、瑕疵が重要でない場合において、その修補に 過分の費用を要するときは、注文者は瑕疵修補を請求することができない。

この瑕疵の重要の程度と過分の費用とについての判断基準について、契約の 目的や仕事の目的物の性質などで瑕疵の重要の程度を判断し、修補には必要

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な費用と修補によって生じる利益と比べて過分の費用かどうかを判断する(65)。  b 損害賠償

 日本民法634条 2 項によって、注文者は、瑕疵の修補に代えて、またはそ の修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この損害賠償請求権 を行使するために、同条 1 項に規定する相当の期間を定めて、請負人に対し て瑕疵の修補を請求しておく必要がある。請負人が修補を為さないときは、

注文者は初めて損害賠償を請求することができる。

 法定責任説によると、請負人の責めに帰すことができる事由がある場合に は、注文者は債務不履行に基づいて請負人に履行利益の損害賠償を請求する ことができる。請負人の責めに帰すことができる事由がない場合において も、注文者は瑕疵担保責任に基づいて請負人に信頼利益の損害賠償を請求す ることができる。

 契約責任説によると、請負の瑕疵担保責任を債務不履行の特別法と捉え、

無過失の損害賠償責任とする。注文者は履行利益の損害賠償を請求すること ができる。

 不動産の場合について、日本民法635条は、「仕事の目的物に瑕疵があり、

そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約 の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作物について は、この限りでない」と規定しているので、不動産の請負契約は解除するこ とができない。目的物の瑕疵によって契約の目的を達成することができない ことを理由として、不動産の請負契約の解除を認めてしまうと、利用価値が あっても土地からその工作物を除去しなければならず、請負人にとって過酷 で、社会経済的損失も大きいことを理由として、日本民法635条は、そのた だし書において、建物その他土地の工作物を目的とする請負契約については 目的物の瑕疵によって契約を解除することができないとした。故に、請負の 場合において、不動産に重大な瑕疵があり、特に建替える必要があるときに は、例外的に契約解除を認めるべきか、あるいは建替えに必要な費用の損害

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賠償を認めるべきかどうかは問題となる。判例(最判平成14年 9 月24日)

は、「建物に重大な瑕疵があって建て替えるほかはない場合に、当該建物を 収去することは社会経済的に大きな損失をもたらすものではなく、また、そ のような建物を建て替えてこれに要する費用を請負人に負担させることは、

契約の履行責任に応じた損害賠償責任を負担させるものであって、請負人に とって過酷であるともいえないのであるから、建て替えに要する費用相当額 の損害賠償請求をすることを認めても、同条ただし書の規定の趣旨に反する ものとはいえない。したがって、建築請負の仕事の目的物である建物に重大 な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない場合には、注文者は、請負 人に対し、建物の建て替えに要する費用相当額を損害としてその賠償を請求 することができるというべきである」と判示している。民法の文言から乖離 せずに、建物の建替えに必要な費用相当額を損害としての賠償を認容した。

ただ、日本民法635条の解除は瑕疵担保責任に基づくものなので、無過失責 任である。従って、請負人の責めに帰すことができる事由があれば、不動産 における請負契約であっても、債務不履行に関する規定によって契約を解除 することは可能である(66)

 c 契約解除

 日本民法635条によると、仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約を した目的を達することができないときに、注文者は初めて契約を解除するこ とができる。ただ、建物その他の土地の工作物においては、瑕疵があって も、原則的には契約を解除することができない。しかし、瑕疵が重大で建替 えざるを得ない建物については、注文者だけではなく、その建物の利用者や その周囲を通行または利用する不特定多数の人の生命や財産に損害をもたら す恐れがある。従って、こういう建物を収去することは社会経済的に大きな 損失をもたらすものではなく、日本民法635条ただし書の趣旨に反する訳で はない(67)。改正民法では、建物その他の土地の工作物に関する特別規定が削除 された。

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 d 担保責任の存続期間

 存続期間について、日本民法637条は、「前三条の規定による瑕疵の修補ま たは損害賠償の請求及び契約の解除は、仕事の目的物を引き渡した時から一 年以内にしなければならない( 1 項)。仕事の目的物の引渡しを要しない場 合には、前項の期間は、仕事が終了した時から起算する( 2 項)。」と規定し ている。不動産の場合において、普通の目的物より、瑕疵を発見するのに時 間がかかるため、より長期の期間が規定されている。そこで、日本民法638 条は、「建物その他の土地の工作物の請負人は、その工作物または地盤の瑕 疵について、引渡しの後 5 年間その担保の責任を負う。ただし、この期間 は、石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これらに類する 構造の工作物については、10年とする( 1 項)。」と規定する。また、前述 の日本634条が規定する損害賠償と瑕疵修補との権利の行使について、日本 民法638条 2 項によって、注文者は、その滅失または損傷の時から 1 年以内 に、634条の規定による権利を行使しなければならないとしている。上記の 期間は、638条 2 項を除き、日本民法167条が規定する10年間の限度内、契約 で延長または短縮することができる(日本民法639条)。

  2  住宅の品質確保の促進等に関する法律

 住宅に関するトラブルが急増する中で、欠陥住宅問題への対処とともに、

住宅市場の条件整備、良質な住宅の提供という政策的要請も相俟って、1999 年 6 月に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が成立し、翌年の 4 月 1 日より施行された(68)。この法律は、住宅性能表示制度部分と瑕疵担保特例部分 とを大別することができる。住宅性能表示制度部分については、住宅性能表 示のための基準や評価機関と紛争処理制度とが規定されており、瑕疵担保特 例部分には、欠陥住宅に対する瑕疵担保責任の強化に関わる規定が定められ ている(69)

 そして、本稿の主題をめぐり、以下においては、住宅の品質確保の促進等 に関する法律(以下では住宅品質確保促進法と略する)における欠陥住宅に

参照

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