G.F.ヘンデルのオペラ,カンタータにおける
レチタティーヴォ技法
相 原 京 子(本姓 田中)
(1995年10月16日 受理)Die Technik der `Recitativo'in der Opern und Kantaten Georg Fnednch Handels
Kyoko Tanaka-Murahara 筆者はこれ迄, `歌唱が歌唱で完結する'ヘンデルのアリアに魅せられ,研究を続けてきた。彪 大な数にのぼるカンタータ,オペラ,オラトリオ(証1)のアリアの1曲1曲を技法, 18世紀のアフェ クテンレ-レとの関連等から探究する作業は今後も果てしなく続けねばならないが, `歌われる' 部分の研究に一呼吸置き, `語られる'部分に焦点をあて,レチタティーヴオの作曲技法を求める のが本論の目的である。 18世紀のカンタータやオペラの最も重要な構成要素は,セッコ・レチタティーヴオとアリアだっ た。合唱が中心になるオラトリオに於いても,レチタティーヴオとアリアは常に一対となって合唱 の間に散りばめられている。物語の筋はレチタティーヴオにおいて語られ,その筋の進行の中で高 められた感情は,′アリアの中で初めて表現のはけ口を与えられる。劇の進行に必要な戦い,殺害, 死等は全てレチタティーヴオにおいて起こったのであった。従ってレチタティーヴオの機能は,物 語の筋を語る事,対話を進めること,劇のアクションを展開することであった。元来,レチタティー ヴオは`語ること'に発したものであり,言葉の音節,強弱(アクセント)が土台となり,その上 に作曲奉自身の技法的抑揚,語りを支えるコンテイヌオのハーモニー(通奏低音)が加えられるの である。従って言葉の持つ細かいニュアンスが非常に重要な問題となってくる。 本論では,イタリア語によるレチタティーヴオを中心にオペラとカンタータによって論を進めて ゆきたい。 作曲年代順にレチタティーヴオ技法の変遷を見ようと楽譜を繰って,先ず気ずかされるのは,ヘ ンデルのオペラ第一作≪アルミ-ラ≫ (1704,初演1705)と5年後の≪アグリッピーナ≫ (初演
1707)の間(註2)に,非常に大きな違いがあるということである。むしろ≪アグリッピーナ≫以後, 後期の作品迄,それ程違っていないと言える。 大変興味深い事に, ≪アルミ-ラ≫では,レチタティーヴオはドイツ語で,アリアは時にドイツ 請,時にイタリア語と両者が入り混じっている。ここぞという主要なアリアはイタリア語で歌われ るが,物語の筋を語るレチタティーヴオはドイツ語でなくてはならなかった。従って,タイトル・ ロールのアルミ-ラはじめ,登場人物達がイタリア語とドイツ語を区別なく語り,歌いまくるとい う面白い現象が見てとれる。これは,ハンブルグ・オペラ劇場で,ドイツ人を聴衆に上演されたも のであったからと言えよう。オペラというジャンルは,当時イタリアに生まれ,発展しつつあった もので,作曲家達は各地でイタリア手法のオペラを上演し,聴衆はそれを享受したのだった。しか し,イタリア語の解らない多くのドイツ.人に向かって, "大半をドイツ語で,しかしイタリア・オ ペラの雰囲気も出すべく,イタリア語も入れて"というのがハンブルグ・オペラへのサーヴィスだっ たのであろう。 (語例1) 《アルミ-ラ≫ Chr.50s.54,55
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≪アルミ-ラ≫のレチタティーヴオは,概して非常にスペースが広く,荒っぽいという感が否め ない。更に語例2.に示すように, 6度, 7度といった歌いにくい(語りにくい)音程の使用が目 立っている。
(語例2) 《アルミ-ラ≫Chr.55s.8 丸山ガidiiivjse fc>-ナ
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ノ■ t 〔 一 一 一 一 l t t ●■ ▼ l ▲ ` 3 j. i r i ^ / / I V C:ど I W ▼ ■ 一■ -, ) ≪アグリッピーナ≫に於いて,彼の注意力は極めて繊細になる。処女作≪アルミ-ラ≫は,レチ タティーヴオ,アリア共に,当時ハンブルグ・オペラの代表者ガイザ-(註3)の影響強Lというとこ ろが多々見られる。 アリアに於いても同じ事が言えたのだが,この5年間に何がヘンデルを変えたか-イタリアへ の修行旅行である。イタリア・オペラの手法・語法を求めてイタリア-到着したヘンデルであった が,ローマで彼を待ち受けていたのは, `オペラ禁止令'だった。当時バチカンの膝元ローマでは, 吹き荒れるオペラ熱に, `オペラは不謹慎'として突如禁止令が出された矢先だった。これ迄,オ ペラ三昧だった貴族,文化人達は,オペラに代わるものとしてカンタータ(世俗カンタータ)を求 めた。作曲家達は,カンタータをオペラのミニアチュア版に仕立て,およそ2対のレチタティーヴオ とアリアによって物語りの起承転結を図ったのである。本来,衣装,演技,舞台装置, etc.無しの カンタータというジャンルであるから,それだけ一層歌唱力が求められた。それらは貴族の館でメ ンバー達が集まって演奏されたが,時にこっそり衣装,演技がつけられて上演されたという。この 代表的サークルがアルカディア・サークルで,ヘンデルもこのサークルにメンバーとして快く迎え られた。 4年間のイタリア滞在中,およそ100曲のカンタータ作曲の中でヘンデルのイタリア語手 法は大きく変化したと言える。バー一一によると, "イタリアでは聴衆はセッコ・レチタティーヴオ を非常に重要なものだと考えていた(註4)。"という。 ヘンデルが語学に堪能で独,英,伊の3ケ国語を同時に混ぜてしゃべったので聴く人は理解する のが大変だ.ったとはいえ,当時彼にとって, `外国語'であったイタリア語をイタリアの聴衆に向 かって語ることは,並々ならぬ注意力と努力とを要したことであろう。ヘンデルは,当時イタリア の習慣に忠実に,大部分をセッコ・レチタティーヴオで作曲している。また,器楽伴奏付カンター タのうち7曲は,劇的な力を表現する手段として伴奏付レチタティーヴオによっている。カンター夕のレチタティーヴオに於ける,彼の語法の工夫,創意の豊かさが,後のオペラ,オラトリオを大 きく支配していると言えよう。 第1節 セッコ・レチタティーヴオ 最も語りに近く,僅か通奏低音のみによって支えられるセッコ・レチタティーヴオは,ライヒテ ントリットの言を借りれば, "現代のオーケストラ・レチタティ⊥ヴオより,ずっと早くアクショ ンを進めることが出来た"のである(註5)。溢れるばかりに浮かんでくる旋律にペンを走らせたアリ アとは逆に,レチタティーヴオにおいては,並々ならぬ苦心の跡を見る思いがする。 失意の恋人の限りなき泣き言を語っているルクレツイア・カンタータの冒頭のレチタティーヴオ を例に,いくつかの点について考察してみよう。 (語例3)ソロ・カンタータ Nr.46Chr.51s.32
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降で終止する例もしばしば見られる。調性的に見ると,このレチタティーヴオは, f-mollに始ま り mollをほのめかし c-mollに移行し,第1段階を閉じる。 A-durに転調した第2段階は, b-mollを感じさせながら主調(f-moll)に戻り, 4度下降終止の後,コンテイヌオがⅤ-Ⅰのカデ ンツを作り,次のf-mollの第1アリア-と導く。 次に,ソロ・カンタータNr.29≪Lungin'andoFilenoフィレ-ノは去ってしまった≫の第2 レチタティーヴオを見てみよう。 (語例5)ソロ・カンタータ Nr.29Chr.50s.137 L - I ;, .? -′ .仙 、ム サ 叫 tA - 一■- ■- ■■- .踊一■■■一■■- 一m m m 貞 声; 耳 ./ 抑 0 ( ● . A a *4 . し ん ォ * * - * * ノ I I サ ォ t M J - 、 … ■ r i I f ∼ - ▼ m if ^ m m m m m m m m m m m m m ] LJ I
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この曲の第1アリアも大胆な転調が見られるが,この第2レチタティーヴオにおいて,注目すべ きことは,コンテイヌオ声部のクロマティツクな進行(半音階進行)である。常に第7音(76) を要求しているが,声のパートがそれに応えて,コンテイヌオと7度関係で進む。また"Pieta哀 れみ給え"の力の抜けたような下降も面白い。 7度の跳躍というヘンデルのレチタティーヴオの特 徴は,或る時は緊張を,また或る時は弛緩をもたらすと言えよう。そしてmartire (信仰)の語の 所では,祈りをこめた全くの旋律型が当てられている。このようなヘンデルのレチタティーヴオの 作り方は,言葉の音節的な問題もさることながら, `語意'によって強く左右されているというこ とが明白である。 絶えず生ずる方向転換,転調は,ヘンデルのレチタティーヴオの特徴の一つに挙げられるが,こ こに表情豊かなデクラメーションの例を見ることが出来る。(語例6)ソロ・カンタータ Nr.18Chr.50s.81 ▲ L 一 ゝ 1 12 ∼ ● \ 闇 H ^ - p -fe g iz a E 壇 I 【二男! ユh 」■ ● r ▼■r r ▼一 . . I iw m 'jm 一 " ¥s ■【■ー■■ ■ A rf/v′& 仏 J ′ 桝 ふ 仏工 ム -v c 主 局 k ん 仙 ム t A 一 一 I B t l ■■ ■ -▲1 m ■■一■. I L ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^= J-J
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f-mollで始まり, 3小節目でA-durに転調, 4小節目ではd-moll終止。第5小節でE-dur, 第6小節のtormento (苦悩)でd,fis,hisの3和音を要求し,次の小節でhisをCに読み替え, エンハ-モニック転調して突然C-mollへ。さらに第8小節で, F-dur, b-moll,そしてg音の属
7和音(ghde)を鳴らし完全終止のC-dur。なおその上,最後の13小節で1柏の和音だけでD-dur。最後の1柏に疑問詞(?)が託されていると言える。目まぐるしく転調し,悲しい出来事を 語るレチタティーヴォである。この曲の第2レチタティーヴォもEs-durに始まり中間で突如D-dur.H-dur'に転調 E-durで閉じるという甚だしい変化を見せている(参照:同曲第2レチChr50 s.84)。 以上,大胆な転調例として述べた, Nr.18維partirai,miavita私の命よ,逝ってしまうのか≫ は,全く同じテキストによるNr.17の改作である。原曲と改作の第2レチタティーヴオを比較する
ことによって,先に述べたレチタティーヴオにおけるヘンデルの苦心の跡が理解出来よう。 (譜例7) a.ソロ・カンタータ Nr.17Chr.50s.79 b. Nr.18 Chr.50 s.84 0 ^ L ■ ■一 一一 ■一一 ■▲ TT m 十r + -■■-■-■■■■■■■■- 一■▼ l j i n ′■ 一 ■-■¶▼■′■「 l⊥■一■ 「 v m b m i v h q ; ; ; i ; ¶▼■■▼【 ■■ 【■「 Ⅰ - ■■ * * -. * " -. I . 〟 ルi P 仙 ー∼ I P ふ ん ->*+4 * *<, ー . ー■ - ぺ J L ■ l r W i I -T 一M l *J 'I 1 I I l l ′ l t l ▼ 1 I l t I I I 1 I 蝣 - I サ . ' け L ▲ l ●- L L ▲ ▲ M ka ii r ■一■■■t r¥ n m L T - J- i- -l I '二】■t ■1 - I L .L ー I一 ⊥」一▲【 il5 サl r* 一■ ド / I ト 二一-■二▲一サ ^i ^ ^ r ^ 1 ¥ i I- t■ ■- ■r T - r-m m mtm m^ ^m ^ t l ーl mmm - m ■′ ■ ′ ■′■■- 一一 ▼■「 - - ■ -」 人仰 。 心 ふ レ { A ▲ w ¥ JM ソ 山 桝 れ ふ l ▼ ■● ● ル 小 ` ん 叫 ^ r /U '* -*- . 、 l■ ′ ■ ■■1一】 蝣.Vr B B B H H H a B H H B B B B B M H M 」 一- g* r * j ●一 P ^fl M B l ′ l ■一 I 」 7 W l
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上記譜例a. b.に見るように,声部進行,コンテイヌオの進行,ハーモニーの複雑さ等,改作 曲は,はるかに洗練されている事が明らかである。 ヘンデルのレチタティーヴオ作曲の苦心を,更なる一例によって推論したい。 (語例8 a.ソロ・カンタータ Nr.56Chr.51s.93 b. ク Nr.57 Chr.51 s.99 ナ ナ fc jfisJ te 一 ≠ ′一、 *f」^=M^^^^^^^9 ■●一一 - I r % i i ● 一■■ vm ¥^J I mmmu m ^M I -■■■▼■▼■ .I r ■ ● 一七 く♪-TtVl*L^ '/^ O卑一ォ*/ ullJU -柑 句 r t1.ム)れ- .J* -「■ * * ‥ LO . ト′ I k. 一●一 nLUZQ l:ss 蝣M 'jy mw m m IJil1- immIi 1 ォtv-y
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この2曲は,やはり同じテキストによる≪Sentolacheristretto私は感じる≫の第2レチタティー ヴオである。上記のa.b.を比べると,レチタティーヴオとして,デクラメーションという点であ きらかにb.の方が迫力があり,言葉の音節,強弱がより考慮されている。しかLa.における表情 豊かなカデンツ,これも捨て難いものがある。この辺りにレチタティーヴオの難しさを見る思いが する。 先に≪ルクレチア・カンタータ≫において,第1レチタティーヴオの入りが旋律的で,それがヘ ンデルの特徴になっていることを,例証した。更にその音型が次のアリアのモティーフとなり,全 体を支配している例が,ソロ・カンタータNr.27 ≪Lungideme, pensiertiranno私から離れて, 暴虐の思いよ≫に見られる。 (語例9)ソロ・カンタータ Nr.27Chr.5Os.122
・澗壷
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これは明らかに同一モティーフによって,レチタティーヴオとアリアの統一をねらったものであ l る。 カンタータにおいて,育まれたレチタティーヴオの技法は《アグリッピーナ≫以後のオペラにお いて,花開く。第4作≪ロドリーゴ≫ (C.1707 初演 フィレンツェ)と第5作《アグリッ ピーナ≫ (初演 ヴェネチア)の2曲がイタリアで上演された他,その後のオペラは全て,ロンド ンでの彼自身のオペラ劇場経営と関わる作品であるが,イギリス人を聴衆に,全てがイタリア語で 演じられた。時に,オペラの不評の折にオラトリオを上演(演奏)して喝乗を浴び,晩年オラトリ オに転じていったヘンデル。音楽的にはオペラ的とさえ思える彼のオラトリオが何故,かくも絶賛 されたか。その背後には,オラトリオが英語で作られた,イギリス人にとって母国語の英語で語ら れるレチタティーヴオ,歌われるアリア,そして壮大な英語のコーラスが人々の深い理解と共感に 繋がったと解釈出来よう。 さて,オペラにおけるヘンデルのセッコ・レチタティーヴオは,増々変化に富み,フレーズは簡 潔で,しばしば休符があり,絶えず方向転換が起こる。感情的興奮,闘争の場等では,激しさを増 し,対話の交換が急速になり,感情的乱れ,劇的アクションを一層強く伝える。(語例10) 《ラダミスト≫ Chr.63s.22 ′ ■ O 一 d ∫ L ft ■■ r i
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-- - l∼ ∼ 一■ 二 三三 弐 ≡ L D l ∧し ●′ 1 ■一一■ (九 亮 .叫 h i- A . ∫ ■ 弓 ∫ / w L ′/a 払止
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● r* 蝣E │= ^ ^= a ォ ▼ r l ● ■■ このカンタータ≪Lookdown,harmoniousSaintハーモニーの聖人を見よ≫は,チェテリア・ カンタータの名で親しまれ,唯一英語によるものである。ここでは,声のパートの`歌い'を柔ら かくアルページオで支え,テキストの`harmonious'を表現するために楽器が使われたのである。 伴奏付レチタティーヴオにおける声の線は,セッコ・レチタティーヴオに似ているけれども,幾分 メロディックだと言えよう。そして弦楽器の中に感情が浸透していると言える。このような和音を 持続させる伴奏付レチタティーヴオは,ヘンデルの作品の中でもむしろ数が少ない。カンタータに おいては, Nr.2, Nr.8の2曲,及びNr.llの前半だけがこの形に依っている。多くの場合,弦 楽器によって様々な性格が与えられ,標題的な意味合いを持ったり,背景描写をしたりすることが 多い。従って弦楽器の動きはスケール(音階)を使った激しいものとなる。逆に言えば,劇的な力 を表現する手段として,伴奏付テチタティーヴオが用いられたと言えよう。(語例14)器楽伴奏付カンタータ Nr.1 Chr.52as.10 己 -w- 4 ti ^ r v ^ * ーL、 一 一 ,- L 一′ 聖 重 要 喜 童 ■▼ ● 地 主 去1 m ∫l` L ■ 「 l J , - ^ "" W M t l 一、i L i * <m * ォM E - ii iiiiiiiiiii i J - - . -J ▼ ▼ ■■■ ▼ M -+ + W ー ▼ ∫ 一一 一一 B J S J P 一一 r r ■ ▼ I ¥J V ▼ ■ r 卜 ¥ * 鼎 卜 ■■■▼ & .- JL - 柚 W ふ ●A ノ V t J ▲ ■▲■ 蝣蝣蝣蝣蝣K 1 - -¥4r w w m * 1 I f I l i wm m m m 電 rE 重 き 童 引 i lf<'^ w w m m m w w m m i 一一 ノ■ 一 ′ ■ ∫ ▲ w ^ i 、 ′ ■ ′ w i^ ^ ^ ^ ^ ^ ^ ^ ^ H ^ S ■! 巴! 『 二 ■■二二二■■■二 ■」 ● J ′ - - . ^ (蝣 M iM i a a s s ii 一l 一一 l i v i - ■ r + T j m m x w w < ■十 m ±≡三 ■■.敬 二 ■■■▼卜 ,■■ ■- 「 ′ 二〔二 ■■■▼■▼■■■ W H H R H M H N R H H H +++ド ∼ ■■■■■ 左 叫 ー 」 *' - 7 t* ⊂」 * , h j u A a * ● LL ■■■「 」-* r 」-* M 貞轡 i r^ i I - ■▼ ., ∫ I 、 ■ ■■■■■■■■ ■-"空に閃光が走り,旋風が通り過ぎる"という語り, 16分音符の疾走によって,まさにテキスト の背景描写をしているのである。 2小節目に見られる同音連打は,荒々しい憤激,緊張等を表す伴 奏付レチタティーヴオにおいてヘンデルがしばしば用いた手段である。 Nr.13 ≪Armida abandonata棄てられたアルミ-ダ≫の第2レチタティーヴオもこれと非常に似た手法で書かれて いる。 更に一層注目すべき作品は《棄てられたアルミ-ダ≫の第1レチタティーヴオである。
(語例15)器楽伴奏付カンタータ Nr.13Chr.52as.153 / L R 守 一 & t s E J M PI^ - - - II 「 ▼1 ■▼■▼▼ 「 ▼【【▼「 ■ ) 1 ▼
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(語例16) ≪ジュリオ・チェ-ザレ≫ Chr.68s.102
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▼▼ ▼ 1■■【 「 ■■■▼ ■■一一■ ▼■ 、 、 ○ 最もこれが目立つ《ジュリオ・チェ-ザレ≫ (1724)においては,単に和音やトレモロを持続す る事を止め,表情豊かなモティーフ,また模倣のパターンなども使っている。 ロマン・ロランは, 「≪ジュリオ・チェ-ザレ≫のレチタティーヴオ"Dallondosoperiglio慈 悲深い我が運命が波打つ"は特に効果的である(註lo)。」と述べているが,初演の時から,これと, "AlmadelgranPompeo偉大なボンベオの霊が" (語例17)をはじめとする豊かな伴奏付レチタ ティーヴオによって名声を博したとまで言われている。これらの伴奏部は,チェ-ザレの"悲しみの独白"の背景描写をしていると言えるであろう。更に伴奏付レチタティーヴオの中には,セッコ・ レチタティーヴオが入り混じっている例( ≪アルミ-ラ≫ Chr.55s.106)もある事を付しておこう。 (語例17) ≪ジュリオ・チェ-ザレ≫ Chr.68s.26
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この曲は悲哀,愛の思い,哀愁,当惑,確固たる決意,激しい怒り,荒々しい憤激の変化を措い ている。全体をh-mollが支配L a, Es,d,cis, F,を経てFis-dur,そしてh-mollに戻る。第3節 レチタティーヴオにおける書画技法
レチタティーヴオにおいて音画書法を用いる-当時の習慣からしても,また歴代の作曲家の作 品においても稀な現象と言えよう。絵を措くが如くに音で表現する音画の殆どは動きを伴ったもの である。従って, `歌詞のシラブルに基づいた同音の連続反復と僅かばかりの抑揚'というレチタ ティーヴオ概念と音画は,結びつき難いものとされてきた。しかし,ヘンデルのカンタータにおい てレチタティーヴオ音画の占める位置は,その数こそ少ないが,非常に重要な,特異なものと考え られる。 それぞれの音画書法から, a)視覚的な現象を音に置き換えたもの b)聴覚的な現象を音に再現したもの C)テキストの言葉を音に直訳したもの の3種に分類出来ると考える。 a)視覚的な現象を書に置き換えたもの 自然界の現象を音によって巧みに表現した音画として,器楽伴奏付カンタータNr.ll ≪Coorpe talvoltailcieloこんなに曇った空≫の第1レチタティーヴオにその例を見ることが出来る。 (譜例19)器楽伴奏付カンタータ Nr.ll Chr.52a.s.122 / 一 十 " I 一 ■一一■■ I ss <: 、 ; IM M M M M M M M M M - - ^'Jl p a r JW 1 - 1 弓▼m r M w m13 &
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`agitato'という激しい言葉を直訳するコロラトウ-ラによって海の大波のカーブを描かせ (語例A), `corre (correre)走る'の語に16分音符の下降音型を与えることによって,激しく吹く 風を表し(語例B),譜例Cで泡を立てて駆け降りる急な谷川を, 2本のヴァイオリンとコンテイヌ オに措かせている。そして語例最後の24小節目以後にみられる同音連打は,このレチタティーヴオ の終わり迄続けられ,そのまま次のアリア-緊張感を受け渡している。 以上の例において,別な観点から注目すべき事実は,レチタティーヴオ音画の殆どが,バス・カ ンタータに見られるということである。これを`偶然'と片付けることが出来るだろうか。当時の イタリア・オペラにおいてバスはあまり重要な役を演じていなかった。ところが楽器のように良く 鳴る喉を持った歌手(ボスキ)の出現によってヘンデルはレチタティーヴオにおいて,奇怪とも思 える音画を措いてみようという新しい挑戟を試みた,と解釈出来ないだろうか。そしてその試みは 見事に成功し,どの曲においても作品全体を引き締めていると言える。音画については,今回カン タータをみることで精一杯で,オペラにまで行きつくことが出来なかった。今後の課題として残し たいと思う。 通常,言葉の韻律に忠実に,限りなく語りに近く作られるレチタティーヴオであるが,本研究に よって,ヘンデルが,いかにレチタティーヴオに`語り'以上のものを求めたかが明らかになった。 ある時は,それが作品全体を支配する事さえあった。又,クロノロジイ- (作曲年代)不明のカン タータにおいて,時期決定の基準となり得る要素を兄い出す事が出来たことは,大きな収穫であっ た。今後,レチタティーヴオとアリアの両面からカンタータのクロノロジイ一研究,オペラの技法 研究に臨みたいと考える。 (註1)カンタータ100,オペラ40,オラトリオ20余曲 (註2)この間, ≪ネロ≫ (初演1705), 《フロリンドとダフネ≫ (初演1708)の2曲の楽譜は消失。 1707 年に初演されたと思われる《ロドリーゴ≫のレチタティーヴオは第1作と大きな違いは無い。 (註3) ReinhardKeiser (1674-1739)ハンブルグ時代,ヘンデルはカイザーのオペラから多大な影響を 受けた。
(註4 ) Charles Burney: A General History of Music p.62 (註5 ) Hugo Leichtentritt: Handel s.599
(註6) MarcAntonioCesti (1623-1669)イタリアの初期オペラに貢献。 (註7) Alessandro Scarlatti (1660-1725)イタリア滞在中,ヘンデルは多大な影響を受けた。 (註8) JacopoPeri (1561-1633), GiulioCaccini (c.1545-1618)イタリアの初期オペラに貢献。 (註9)器楽伴奏付カンタータ Nr.1 Chr.52a. s.10 Nr.2 s. 17 Nr. 8 s.101 Nr.1 1 s.121 Nr.13 s.153 s.156 Nr.20 52b. s. 62
(註11) Karl Friedlich Chrysander: Handel s.238
(註12) Giuseppe Boschi 生死年不明) 18世紀イタリアで最も人気の高かった広い音域を持ったバス歌手。
参 考 文 献
Abraham, Gerald: Handel. A Symposium edited Geraldo Abraham London 1963 この書のなかで特にAnthony Lewis: The Songs and Chamber Cantatas
Edward, J.Dend: The Operas
Burney, Charles: A General History of Music 4vols. London 1776-89 (Reprinted 1935) Dent, Edward J: Itarian Chamber Cantatas (Musical Antiquary 1911)
Deutsch, Otto Erich: Handel A Dokumentary-Biography Edinburgh 1955 Lang Paul Henry: George Frideric Handel New York 1966
Leichtentritt, Hugo: Handel Stuttgart und Berlin 1924
Mattheson, Johann: Der Vollkommene Kapelmeister Hamburg 1739 Rolland, Romain: Handel (英語版by Eagle field Hull) London 1916
Sadie, Stanley: Handel London 1968 (日本語版 相原京子訳 全音楽譜出版社)
Sasse, Konrad: Handel-Bibliographie Leipzug 1963
Schmitz, Eugen: Geschichte der weltlichen Solokantate 1954 Serauky, Walter: G.F. H畠.ndels italienische Kantatenwelt
Siegmund-Schultze Walther: Georg Friedrich Handel Leipzig 1980 Smith, William C: A Handelians Notebook London 1965
Strietfeild, R.A.: Handel London 1909 (New York 1964)
・事典: M. G. G (Musik der Geschichte und Gegenwart)
: New Grove Dictionary
・楽譜:ヘンデル全集Chrysander編Leipzig