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固体表面における水分子の特異な水素結合構造と物性・機能に迫る非線形レーザー分光

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1. はじめに

 物質の表面は空間反転対称性が本質的に破れており,物 質の内部とは異なる構造を有する。そのため,物質の表面 と内部では,物理学的・化学的な性質や機能を支配する電 子状態も全く異なるものになり得る1,2。また,固体物質の 表面は気相や液相の原子や分子が物質と出会う場としても 機能している。この原子や分子が物質の表面に吸着・凝集 する際には,吸着種間の相互作用や表面と吸着種の間の相 互作用が複雑に競合することにより,気相や液相の状態で は発現しない新奇な物性や化学機能が創発されることがし ばしばある。  特に,我々にとって最も身近な分子の一つである水分子 は,地球上において実に様々な物質の表面や界面に吸着・ 凝集しており,電気・熱伝導特性などの物性や腐食性・触 媒活性などの化学的特性,摩擦などの機械的特性,さらに は生命機能等に重大な影響を及ぼしている。こうした表面 界面水分子凝集系の性質や機能は,水素結合ネットワーク 中の水分子の並進構造(酸素の配置)のみならず,その異 方的な up/down 配向構造(水素配置)に大きく支配される3 特に,水分子は極性分子であるため,その配向構造は表面 界面における電位分布を左右する4,5。また,水素結合形成 時には水分子の水素は他の水分子へ供与され,水分子の酸 素は他の水分子から水素を受容する性質を有する。そのた め,水分子の配向構造は表面界面における酸塩基特性やプ ロトン移動の流れの向きなども決定づけていると考えられ る6–8。このように,水分子の配向は,表面界面における水 素結合ネットワークの性質や機能に関わる本質的に重要な 構造情報である。  これまでに,電子線や X 線,走査型プローブ顕微鏡等の 様々な表面科学的実験手法によって,固体表面における水 分子の研究が盛んに行われてきた9–14。これらの研究によ り,金属や酸化物などの表面における水分子は,結晶氷の バルクにおける 6 員環構造の水素結合ネットワークとは異 なり,4・5・7・8 分子等から成る環構造や複雑な長周期構 造を有する特異な水素結合を形成する場合があること等が 明らかになってきた10,11,13,14。しかし,水素原子は最も軽 く電子数が少ない元素であるため,これらの実験手法で水 分子の配向構造(水素の配置)を検知することは極めて困 難であった9–14。一方,中性子線回折法は水素の位置を検 知することが原理的に可能な実験手法であるが,固体表面

固体表面における水分子の特異な水素結合構造と

物性・機能に迫る非線形レーザー分光

Peculiar Hydrogen-Bond Structure, Physical Properties and Function

of Interfacial Water Molecules Elucidated

by Nonlinear Laser Spectroscopy

杉本 敏樹

Toshiki Sugimoto

Interfacial phenomena, in which water molecules are deeply involved, are critical subjects in basic and applied research in a wide range of fields, including physics, chemistry, and biology. In the symmetry-breaking interfacial sys-tems, molecular orientation is key structural parameter that determines the functional properties of water molecules. However, orientation of water molecules, i.e. configuration of hydrogens, in the interfacial hydrogen-bond network has been extremely difficult to be investigated by traditional structure-analysis techniques such as electron diffraction, graz-ing X-ray scattergraz-ing and even scanngraz-ing probe microscopy, because hydrogen has only a sgraz-ingle electron and responds extremely weakly to the probes of these techniques; thus, the determination of molecular orientation of interfacial water systems has been an experimental challenge. We have recently tackled the challenges of elucidating the orientational structures of water molecules on metal surfaces by using cutting-edge nonlinear optical spectroscopy, i.e. heterodyne-detected sum-frequency generation (HD-SFG) spectroscopy. In this review article, brief descriptions of the basic concept of SFG spectroscopy as a hydrogen-configuration sensitive probe are followed by overviews of our current understand-ing of the adsorption geometry and rotational orderunderstand-ing of water molecules on representative metal surfaces and ice-film surfaces.

(2)

に一分子層吸着する分子の数は 1015 cm−2程度と微少であ るため,現時点では検出感度が足りていない。したがって, 固体表面における水分子の配向構造を解明することは,物 理・化学的には極めて重要な研究課題であるにもかかわら ず,世界的にほとんど手つかずの状態であった。  一方,筆者らは,二次の非線形感受率 χ(2)が水分子の H-up/H-down配向情報を本質的に反映する物理量である15,16 事に着目し,二次の非線形光学効果に基づく和周波発生 (SFG)振動分光法を用いた固体表面水分子系の研究を展開 してきた(Figure 1)。特に,「χ(2)の虚部(Imχ(2))スペク トルの正/負の符号が水分子の H-up/H-down の向きと直接 的な相関を持つ」というユニークな特徴を有するヘテロダ イン検出 SFG 分光17–19を,構造を規定した固体表面上の 吸着水や氷表面の研究に応用し,それらの系の水分子の H-up/H-down配向構造を物性・機能と関連づけて解明する ことに成功してきた20–25。本稿では,まず 2 章で和周波発 生(SFG)過程とそれを支配する二次非線形感受率 χ(2) 概要を説明する。3 章では実験装置や方法について説明し, 4章と 5 章では Pt(111) と Rh(111) のモデル金属表面に吸着 した水分子やその積層氷における特異な水素結合構造物性 と表面構造緩和現象について紹介する。6 章にまとめと今 後の展望を記す。

2. 和周波発生(SFG)振動分光法の概要

 本章では,まず最初に,等方的な媒質では χ(2)= 0 とな り SFG 過程不活性となることを対称性の観点から解説し, 次にχ(2)の微視的理解に立脚してχ(2)≠ 0 となる条件を考察 する。その過程で,χ(2)が分子の up/down 配向方向に関す る情報を本質的に含んでいる事を説明する。なお,「異方的 な媒質で SFG 活性となること」,及び「Imχ(2)スペクトル の正/負の符号が水分子の異方的な H-up/H-down 配向に対応 すること」を天下り的に認めてもらえれば,本章の説明を 読み飛ばして頂いても本稿の主題の 4,5 章の研究内容の理 解には差し支えない。 2.1 物質の微視的・巨視的な異方性と二次非線形光学効果  赤外光と可視光のパルスレーザー照射によって誘起され る SFG 過程は,二次の非線形光学現象である。Figure 1 の エネルギーダイアグラムに示されているように,赤外光に よる分子振動の励起過程と可視光によるアンチストークス ラマン過程から成る。そのため,SFG 活性となる分子の振 動モードは赤外活性かつラマン活性でなければならず,空 間反転対称性(対称中心)を持つ分子の振動モードは,赤 外活性とラマン活性を両立できない相互禁制則により SFG 不活性となる。これが SFG 活性に関する微視的な制約とな る。さらに,より巨視的な観点においても SFG 活性となる ための制約が存在する。すなわち,以下に示すように,赤 外活性かつラマン活性な分子の凝集系においては,より巨 視的な観点において空間反転対称性を有さない非等方的な 媒質・領域においてのみ SFG 活性となり得る。  大きな光電場振幅をもつレーザー光を物質に照射すると, 物質の巨視的な分極 P は入射光電場に対して非線形な応答 を示すようになる26。SFG 過程は,角周波数 ω IRと ωVISを もつ赤外パルス光と可視パルス光が空間的時間的に重なっ て入射させた際に生じる次式の二次非線形分極によって誘 起される27 P2 E E 0 2 ( )

( )

ωSF =ε χ( )

(

ωVIS

) ( )

ωIR , (1) ここで,E ω

( )

IR 及び E ω

(

VIS

)

はそれぞれ入射赤外光と可視光

の電場であり,ωSF≡ωIR+ωVISである。E ω

( )

IR と E ω

(

VIS

)

の時間発展をそれぞれ exp

(

iωVISt

)

と exp

(

iωIRt

)

で表す

と,(1)式により P(2)の時間発展は exp exp

IR VIS SF

(

+

)

(

iω ω t

)

=

(

iω t

)

exp

(

i

(

ωIR+ωVIS

)

t

)

=exp

(

iωSFt

)

で表され,P(2)が ωIRと ωVISの和の角周波数

ωSFで時間的に振動することが確かめられる。光の輻射理 論で説明されるように,電気双極子が時間的に変動する (電荷が加速度運動する)ことによって電気双極子輻射過程 により光が放射される。すなわち,ωSFで振動する分極 P

( )

ωSF によって,同じ振動数で振動する電場 E ω

( )

SF を持 つ光,すなわち和周波光が発生する。したがって,物質が SFG活性を示すためには,P(2)の起源となる χ(2)がゼロで ない値を有する必要がある((1)式)。  ここで,物質の対称性が χ(2)に与える制約について考え る。まず,巨視的に空間反転対称性を有する等方的な物質 Figure 1. Schematic illustration of in-situ infrared-visible

sum-fre-quency generation (SFG) spectroscopy of interfacial water molecules. Due to the second-order nonlinear optical effects, incident visible (VIS) and infrared (IR) light generate sum-frequency (SF) light in the domain with net anisotropic orientational preference. SFG is significantly enhanced when the incident IR light resonantly excites a subset of water molecules from the ground vibrational state (v = 0) to the first excited vibrational state (v = 1).

(3)

を想定し,対称中心に対して反転操作を行う場合を考える。 ここで,空間反転対称性を有する物質とは,例えば Ge 結 晶や NaCl 結晶のように反転操作によって原子の位置が変 化しない物質を指す。また,空気や水のような乱雑な物質 も光学特性は一様で等方的な物質である。このような等方 的な媒質においては,χ(2)は空間反転操作に対して不変で ある(χ(2)→ χ(2))。ところが,分極と電場はベクトルであ るため空間反転操作によって向きが逆転する( P→ − ,P E→ − )。したがって,(1)式は反転操作に対して次のよE うに変換される28 P( )2

( )

ω = −χ( )2E

(

ω

) ( )

E ω SF VIS IR , (2) したがって,(1)式と(2)式を同時に満たすのは χ(2)= 0 のみであり,等方的な媒質ではP( )2

( )

ω SF が誘起されず和 周波光は発生しない29。一方,たとえ等方的な物質であっ ても,その表面や界面は空間反転対称性が必然的に破れて いるため,χ(2)= 0 となる制約が課されない。したがって, 等方的な物質においては,表面界面のみ SFG 活性となり得 る。それに対して,強誘電体のように空間反転対称性のな い異方的な物質においては,表面界面のみならずバルクに おいても SFG 活性となる。 2.2 χχ(2)の性質と和周波光電場の位相  前節の議論から,SFG 過程においては対象とする分子系 の χ(2)が本質的に重要な物理量であることが分かる。本節 では,より具体的に χ(2)について考えてみる。χ(2)は 3 階 のテンソル量であり,和周波光の電場E

( )

ωSF の I 方向成 分 は,可 視 光 電 場E

(

ωVIS

)

の J 方 向 成 分 と 赤 外 光 電 場E

( )

ωIR の K 方向成分を用いて次式で表される30。 EI

( )

ωSF ∝PI( )2

(

ωSFG

)

=ε χ0 IJK J( )2 E

(

ωVIS

) ( )

EK ωIR (3) ここで,I, J, K は実験室系で定義された X,Y,Z 直交座標系 のいずれかの成分を指す(Figure 2)。χIJK( ) は対象とする物2 質を構成する個々の分子の超分極率 βijk( ) の和で与えられ2 31, 次式で表される32,33 χIJK β l N i j k x y z l l l i j k i I j J k K 2 1 ( ) = =

∑ ∑

 ⋅ ⋅ ⋅  , , , , (ˆ ˆ) (ˆ ˆ) (ˆ ˆ)

( )

( ), ,22 l (4)  ここで,対象となる系の分子振動子の総数を N とし,i,j,k は個々の分子系で定義された x,y,z 直交座標系のいずれかの 成分を指し(Figure 2),(i Iˆ ˆ⋅ , ()l ˆ ˆj J⋅ )l, (k Kˆ ˆ⋅ )lは実験室座標 系の単位ベクトルと l 番目の振動子の分子座標系の単位ベ クトルの内積,すなわち方向余弦を指す。等方的な媒質で はこれらの射影成分の総和がゼロとなり χIJK( ) = のため2 0 SFG過程は起こらない。したがって,異方的な媒質のみで SFG活性となり,その振動応答は超分極率で決まる。赤外 光と共に入射させる可視光が分子系に対して非共鳴な場 合,βijk( ) の振動応答は次式で表される2 16,34,35。 β ω ω i j k q i j kq q q A i , ,2 , , ( ) = − −

IR Γ (5) A m Q Q i j kq q q i j q k q , , = ∂ ,     ∂ ∂     1 2 ω α µ (6) ωq, Γq, mqは,それぞれ q 番目の振動モードの振動数,寿命 の逆数に相当する減衰率,及び有効質量である。Qqは q 番 目のモードの基準座標であり,αi j, は分極率の i,j 成分,µk は双極子能率の k 成分である。βi j k( ) すなわち A, ,2 i j kq, , がゼロ でない値を持つのは,∆v = ±1 の振動遷移がラマン活性かつ 赤外活性な振動モードに限られることが分かる。  水分子凝集系の個々の O-H 振動子が近似的に z 軸まわり の局所対称性を有している場合,ゼロでない値をとる遷移 分極率と遷移双極子能率はそれぞれ ∂αxx/∂Q, ∂αyy/∂Q , ∂αzz/∂Q,及び ∂µz/∂Qであり,超分極率βx x z( ) ,β2, , y y z( ) 及2, , び βz z z( ) の 3 成分がゼロでない値をとる。特に ∂2, , αxx/∂ = ∂Q αyy/∂Q ∂αxx/∂ = ∂Q αyy/∂Q,及 び ∂

(

αxx/∂Q

)

/

(

∂αzz/∂Q

)

~0.32の 関 係 か ら, βx x z( )2, , =βy y z( )2, , ~ .0 32βz z z( )2, , である36。したがって,例えば,OH 伸縮振動に関する χ(2)の ZZZ 成分は,(x Zˆ ˆ) sin cos l l l ⋅ = − θ ψ (x Zˆ ˆ⋅ )l= −sin cosθl ψ , l

(y Zˆ ˆ⋅ )l=sin sinθl ψ , (l c Zˆ ˆ⋅ )l m, =cosθ の関係から次式で与えらl

れる20–22 χ ω ω θ θ ZZZ q z z zq q q l N l l A i q 2 1 3 0 32 0 68 ( ) = = − − ⋅

(

+

)

 

, ,

. . IR cos cos Γ     (7) ここで,θ は z 軸と Z 軸の成す角,ψ は z 軸周りの回転角 である。また, ∂

(

αzz/Qq

)

(

∂µz/Qq

)

>0であるため Az z zq, , > 0 である36  l 番目の OH 振動子が H-up(0≦θl<π/2)配向であれば

cosθlや cos3θlは正の値をとり,H-down(π/2<θl≦π)配向

であれば cosθlや cos3θlは負の値をとる。ある振動数を持つ

OH振動子が総じて H-up 配向をとる場合と H-down 配向を

とる場合では,χ(2)の符号が反対となるため((7)式),χ(2)

は up/down 配向の情報を本質的に含んでいることが分かる。 ここで,例えば,EZ

( )

ωSF ∝χZZZ Z( )2 E

(

ωVIS

) ( )

EZ ωIR である

Figure 2. Schematic illustration of relation between the laboratory-fixed {X, Y, Z} and the molecule-laboratory-fixed {x, y, z} coordinate systems for an O-H oscillator of water adsorbed on substrate surface. θ and ψ rep-resent the angle between the z and Z axes, and the rotation angle around the z axis, respectively.

(4)

ため,χZZZ( ) の符号が反対となることは,個々の OH 振動子2

から発せられる SF 光の電場の Z 成分の位相が up/down 配 向に応じて π だけ異なることを意味する(Figure 3)。した がって,H-up 配向を持つ OH 振動子同士の SF 光(Figure 3 (a))や H-down 配向を持つ OH 振動子同士の SF 光(Figure

3(b))は互いに強めあい,H-up 配向を持つ OH 振動子と 向きだけ真逆で H-down 配向を持つ等価な OH 振動子が等 量存在する場合は互いの SF 光は打ち消し合って巨視的に は SFG 発生が誘起されない(Figure 3(c))。当然ながら, 個々の水分子から発せられた SF 光同士の干渉の結果とし て残った正味の SF 光の電場の位相は,系全体の水分子の 正味の up/down 配向の情報を含んでいる(Figure 3(a) (b))。  また,(7)式の分母より,入射赤外光が分子振動と共鳴 する(ωIR≈ωq)際に χ(2)の絶対値は大きくなり SF 光電場 の振幅も大きくなる。したがって,SF 光電場の振幅が大き くなる ωIRの波数情報から振動分光が可能となる。 2.3 SFG 分光における|χχ(2)|2・Imχχ(2)スペクトル  多くの光学分光法では,光の強度を計測する。SFG 分光 法においても,通常は SF 光の強度を測定する。SF 光の電 場E

( )

ωSF は(3)式で与えられ,SF 光の強度は χ2 2 ( ) に比 例する。 ISF∝E

( )

ωSF ∝ ( )χ I IIR VIS 2 2 2 (8) ここで,IIR∝E

( )

ωIR 2

,IVIS∝E

(

ωVIS

)

2 の関係を用い,議 論の簡素化のために X,Y,Z 成分の表記は省略している。既 知の強度 IIRと IVISの赤外光と可視光を同時に入射させた際 に生じる SF 光の強度 ISFを検出し,それを IIRと IVISで規格 化することにより χ( ) が得られる( I I I2 2 SF/ IR VIS

(

)

∝ ( )χ2 2)。 この χ( ) をω2 2 IRの関数としてプロットしたものが所謂SFG スペクトルとして広く採用されてきた(Figure 4(a))。と ころが,この χ( ) スペクトルは,OH 振動子が全体とし2 2 て H-up 配向をとろうが H-down 配向をとろうが正の値をと るため,水分子の up/down 配向に関する情報が消失してし まっている。これは,ISF∝E

( )

ωSF 2 の光強度測定におい てE

( )

ωSF の位相情報が消失してしまっている事に由来す る。  このように SF 光の強度をそのまま検出する従来の簡便 な方法をホモダイン検出法という。それに対し,光電場の 干渉を利用するヘテロダイン検出法では,SF 光の電場の位 相情報も得ることができ,分子の up/down 配向の情報を得 ることが可能となる。以下で,その概要を簡潔に紹介する。  ヘテロダイン検出 SFG 分光法では,試料とは別の物質 (これを局部発振器と呼ぶ)から発生させた参照用の SF 光 (ER)と試料由来の SF 光(ES)を共に検出する37–39。この 場合,和周波光の全電場はEtot=ES+ERと表され,その強 度は ISF∝Etot = ES+ER = ES + ER + Re E E

(

 SR

)

2 2 2 2 2 (9) である。右辺の第 1 項と第 2 項は試料と局部発振器からの Figure 3. Interference of sum-frequency light emitted from water

mol-ecules aligned in the same direction [(a) H-up, and (b) H-down] and (c) those aligned in the opposite direction.

Figure 4. Examples of (a) χ( ) , and (b,c) Reχ2 2 ( ) and Imχ2 ( ) spectra 2

of O-H stretching band of water molecules with (b) H-up and (c) H-down configuration simulated with single Lorentzian function with parameters of ωq = 3,280 cm−1 and Γq = 80 cm−1.

(5)

SF光の強度であるためそれぞれの SF 光電場の位相情報を 失っているが,第 3 項の干渉項はそれぞれの SF 光電場そ のものに比例しているという点が重要である。すなわち, 第 3 項の干渉項は試料の SF 光電場の位相情報を含んでい る。したがって,試料からの SF 光を振幅と位相が既知の局 部発振器からの参照用 SF 光とを干渉させ,SF 光強度にお ける干渉項の寄与を適切に抽出することで,試料由来の SF 光の位相と振幅を測定することができる40。この干渉項か ら試料由来の SF 光の位相と振幅を得る方法は,入射赤外 光と可視光を同軸上に入射させる光学配置の場合17,19,20,38,41 と,非同軸で入射させる光学配置18,42–45とで若干異なる。 それぞれの光学配置や測定法での位相抽出の技術的な詳細 は,それぞれの原著論文やその supporting information 等を 参照されたい。非同軸配置に関しては,Mol. Sci. 誌にて日 本語での解説が与えられている46  このようにヘテロダイン検出法を用いて得られた試料の 複素 χ(2)の虚部(Imχ(2))と実部(Reχ(2))を ω IRの関数と してプロットした場合,Imχ(2)は所謂『吸収型』のスペク トル形状を示し,Reχ(2)は『分散型』のスペクトル形状を 示す(Figure 4)。Imχ(2)スペクトルは振動共鳴を直接反映 したものであり, χ( ) スペクトルに比べて物質の振動応2 2 答を直接的に反映し,より適切な分光学的解釈が可能とな る( χ( ) スペクトルを一意的に成分分解することが極め2 2 て困難となる場合がしばしばある)17,18,46。また,Imχ(2) ペクトルは, χ( ) スペクトルと異なり,OH 振動子の up/2 2 down配向情報を本質的に含んでいるという優れた特徴を有 する。すなわち,OH 振動子の集まりが全体として H-down 配向をとる場合は Imχ(2) スペクトルは負の符号を示す(Fig-ure 4(b))のに対し,全体として H-up 配向をとる場合は Imχ(2)スペクトルは正の符号を示す(Figure 4(c))。この ような特筆すべき特徴から,固体表面上に吸着した水分子 凝集系に対してヘテロダイン検出 SFG 分光法を行うことで, その水素結合ネットワーク中の水分子の異方的な H-up/ H-down配向を Imχ(2)スペクトルの符号を通じて解明するこ とが可能になる20–24

3. 実験方法・実験装置の概要

3.1 実験装置  SFG 分光をその場観測手法として用いる場合,エネル ギー幅の狭い(狭帯域)赤外光を波長スキャンさせる必要 があるピコ秒パルスレーザーシステムに対して,エネル ギー幅の広い(広帯域)赤外光により振動バンドを一度に 広くカバーできるフェムト秒パルスレーザーシステムに基 づく方が利便性が高い。その際に,SFG スペクトルの波数 分解能を向上させるために,可視光についてはエネルギー 幅の狭いピコ秒領域までパルスの時間幅を広げる必要があ る。このような広帯域赤外光と狭帯域可視光を準備するた

め,我々はチタンサファイアレーザーの再生増幅器(Spec-tra Physics, Spitfire-pro)から光パルス(時間幅 130 fs,中心 波長 800 nm,半値全幅 10 nm,強度 1.6 mJ/pulse,繰り返 し 1 kHz)を発振させ,この光をビームスプリッターで 7 対 3 に分けて使用した。7 割の光を光パラメトリック発生・ 増幅過程・差周波過程を通じて広帯域の赤外光(中心波数 3,300 cm−1,半値全幅 150 cm−1,強度 7 μJ/pulse)に変換し, 残る 3 割の光を狭帯域の可視光(時間幅 2 ps,中心波長 800 nm,半値全幅 0.5 nm,強度 1 μJ/pulse)に変換した。  これらの赤外光と可視光をダイクロイックミラーによっ て同軸に重ね合わせた後に,CaF2窓を通して超高真空チャ ンバー内に導いた。Figure 5 に実験装置の概要を示すよう に,チャンバー内に設置されている軸外し放物面鏡(焦点 距離 95 mm,12 度軸外し)を用いて,これらの光を入射角 61.5度の p 偏光配置で試料に入射・集光させた。p 偏光の 赤外光・可視光を用いた今回の測定条件では SF 光も p 偏 光となる。金属表面上の吸着分子系及びナノ薄膜について は,純粋に光学的な効果により,ppp-SFG 測定からは χ(2) の ZZZ 成分のみの情報が抽出される20–22  試料からの SF 光は,入射光の正反射方向に発生する。 チャンバーの外に設置した凹面鏡でこれらの光を受け,780 nm以上の長波長をカットするフィルターを通して SF 光の みを分光器に導入し CCD 検出器によって検出した。検出 した SF 光の強度を入射赤外光の強度分布で割ることで,ホ モダイン検出 SFG スペクトル(|χ(2)|2スペクトル,Figure 4 (a))を得ている。ここでは,GaAsやPt(111) 基板,Rh(111) 基板の非共鳴項(一定の χ(2))に由来する SF 光の強度分布 を入射赤外光の強度分布とみなした。  SF 光をヘテロダイン検出する際には,同軸の赤外光と可 視光を超高真空チャンバー内に導入する直前に局部発振器 (ここでは厚さ 0.1 mm の Z カット水晶)と位相変調板(楔 板上の BaF2)を透過させ,赤外光と可視光,局部発振器か らの SF 光を全て同軸に p 偏光で試料表面に入射させた Figure 5. Experimental setup for SFG spectroscopy of water adsorbed on substrate surface. Visible and Infrared laser pulses are coaxially aligned and irradiate the sample surface in the ultra-high vacuum cham-ber. Generated sum-frequency light is detected with the CCD detector attached to the polychromator. In the case of heterodyne detection, a local oscillator and a phase modulator are inserted in the optical line in front of the inlet window of the vacuum chamber. The SFG signals from the local oscillator and those from the sample are detected.

(6)

(Figure 5)。この場合,検出した SF 光は局部発振器で発生 した SF 光と試料で発生した SF 光が干渉したものになって いる。詳細はここでは省略するが,局部発振器と試料の間 の光路に設置した楔型の位相変調板でこれら 2 つの SF 光 の相対位相を変調させた際に,複雑に変化する SF 光の干 渉パターンを解析することで試料の χ(2)の位相と絶対値を 求めることができ,Imχ(2)スペクトル(Figure 4(b)(c)) を得ることができる。この干渉パターンの解析と χ(2)の位 相の決定に関する詳細は文献 19, 20 の Supplementary Mate-rialsを参照されたい。 3.2 実験方法  実験は,ベース圧力 5 × 10−8 Pa以下の超高真空チャン バー内で行った。構造を制御したモデル基板表面として Pt(111)及び Rh(111) 表面を用いた。これらの基板表面の清 浄化は,アルゴンスパッタリング及び 1 × 10−6 Pa程度の圧 力の酸素雰囲気下での 800 K アニール,超高真空雰囲気下 での 1,100 K アニールのサイクルを複数回繰り返すことに よって行った。表面の構造と化学的な清浄さは低速電子線 回折(LEED),及びオージェ電子分光法(AES)を用いて 評価した。  水試料としては純軽水 H2O (milli-Q)および D 体の純度が 99.96%の重水 D2O (ISOTEC)を用い,これらの H2Oと D2O を 1 対 4 の比で混合することで [H2O] : [HDO] : [D2O] = 1 :

8 : 16 ([H2O] << [HDO] < [D2O])の同位体希釈 HDO 試料を

調製した。これらの水試料を超高真空ガスラインに設置し, 凍結脱気法を繰り返すことで水試料中に溶け込んだ酸素や 二酸化炭素等の不純物気体を取り除き水試料の高純度化を 行った。その後,流量を微調節可能なバルブを通して超高 真空チャンバー内に水蒸気を導入し(Figure 5),雰囲気曝 露法にて水分子の入射フラックスを制御しながら 140 K に 冷却した Pt(111)・Rh(111) 基板に水分子を吸着させた。以 下では,水分子の吸着量を BL 単位(氷 Ih における 1 分子 層(バイレイヤー)の数密度∼1.1 × 1015分子/cm2を 1 BL と定義する)で示す。 3.3 同位体希釈による氷の OH 振動スペクトルの単純化  H2O氷 や D2O氷 の 場 合 に は 分 子 間 お よ び 分 子 内 の OH(OD)振動子間のカップリングによって振動波動関数が 複数の H2O(D2O)分子の OH(OD) 振動子に非局在化し振動 励起子が形成される47–49。そのため振動スペクトルの形状 と帰属が複雑になり,IR スペクトルとラマンスペクトルは 全く異なった複雑な形状を示す(Figure 6(a))。その結果 として,SFG スペクトルの形状も複雑なものになる22,50 それに対し,D2O(H2O)氷中に同位体希釈された HDO 分子 の OH(OD) 振動の場合は振動カップリングの影響をほとん ど無視でき,そのスペクトル形状が単純化され帰属も容 易51になる(Figure 6(b))。この単純化された振動スペク トルは同位体希釈濃度に応じて線幅は多少変化するが, ピーク波数は濃度にほとんど依存しない52。そのピーク波 数は隣接する水分子同士の平均酸素−酸素間距離 Ro-oと対 応することも報告されている(Figure 6(c))53。そこで 4・ 5章では,スペクトルの解釈が比較的容易で,かつピーク 波数から水素結合構造についての情報も引き出すことが可 能な同位体希釈 HDO 分子の OH 伸縮振動バンドに対する SFG分光測定結果20,21,24を中心に紹介する。

4. Pt(111) 表面における水分子の配向秩序

 1 章で述べたように,固体表面における水分子吸着系の 配向(水素の配置)は本質的に重要な構造情報であるが, これまでの実験手法では直接的に水分子の配向を議論する ことは困難であった9–14。筆者らは,電極表面等で応用的 にも重要で代表的な金属表面である Pt(111)9–11をモデル 基板として用い,その表面に単層吸着・多層吸着させた水 分子の配向構造を SFG 分光で解明することに挑戦してき た20,22 4.1 配向秩序を有する結晶氷の成長過程のその場観測  140 K の Pt(111) 基板上に同位体希釈 HDO 分子を蒸着さ せ,結晶氷の薄膜が多層成長している時の | χ(2)|2- SFGスペ クトルを Figure 7(a)に示す20。各吸着量において | χ(2)|2

Figure 6. (a) Typical polarized Raman spectrum54 of H

2O bulk ice Ih measured at 128 K (green) and IRAS spectrum22 of H2O

crys-talline ice film grown on Pt(111) at 140 K (red). (b) Polarized Raman spectrum (green) and IR transmission spectrum (red) of isotope diluted HDO bulk ice Ih20,54. (c)The correlation between the frequency of OH stretching mode and the average intermolecular O-O

(7)

振動スペクトルは 3,275 cm−1にピークを持ち,その強度は 吸着量 Φ と共に単調に増加することが分かった。  同位体希釈氷について知られている OH 伸縮振動スペク トルのピーク波数と Ro-oとの対応関係(Figure 6(c))に基 づくと,Pt(111) 上の多層 HDO 氷薄膜のピーク波数 3,275 cm−1から,Ro-oは 2.76 Å と見積もられる。これは,バルク の結晶氷 Ih やその強誘電相である氷 XI の Ro-oと等しく, Pt(111)基板上の多層吸着氷の格子構造はバルク氷の Ih や XI相とほぼ同様の格子構造6を持つことを示唆している。 実際に,原子間力顕微鏡を用いた過去の研究では Pt(111) 基 板上に多層成長する結晶氷の酸素位置が六方晶系を成して いる事が報告されており55,その結果とも良く整合する。  Figure 7(b)に,| χ(2)|2スペクトルの面積の Φ 依存性を 示す。| χ(2)|2は Φ に比例(| χ(2)| はΦ1/2に比例)して増加し 続けていることが分かる。これは,水分子の配向が揃って 秩序化した氷薄膜が Pt(111) 上に成長し続けていることを示 唆する。なお,本稿では実験結果を示さないが,H2O氷や D2O氷の場合においても同様の Φ 依存性で Pt(111) 基板上 に配向秩序化氷が成長する事を確かめている22。それに対 して,5 章で議論するように,Pt と同様の面心立方構造を 持つ Rh の (111) 表面上では正味の配向秩序を有さない常誘 電結晶氷が多層成長することを確かめている21,24 4.2 第一層吸着水と多層吸着水の配向秩序  前節で紹介したように,Pt(111) 表面上は配向秩序化氷が 成長し続けることが明らかになった。では,この氷薄膜に おいて水分子は基板側(H-down 配向)と真空側(H-up 配 向)のどちらの向きを好んで配向しているのであろうか?  Figure 8 に,Pt(111) 上の同位体希釈HDO 氷薄膜のImχ(2)

-SFGスペクトルを示す。表面第一層吸着水が完成する直前 の 0.8 BL においては 3,370 cm−1付近に負のピークが現れ, 1 BL以上の多層吸着の領域では新たに 3,275 cm−1に負の ピークが出現し成長を続ける。ピークの符号が負であるこ とから,Pt(111) 表面第一層,及び多層氷中の水分子が全体 として水素原子を Pt 基板側に向けた H-down 配向で吸着し ていることが本実験ではじめて明らかになった20  過去の理論計算研究では,Pt(111) 表面に吸着して 39 × 39 超構造をとる第一層の水分子は H-up 配向よりも H-down 配向を好む56ことが予測されている。さらに,「第二層の水 分子が吸着する際に第一層の水分子の配向が H-down から

H-upに反転する56」ことや,「この H-down から H-up への

反転により H-down 配向秩序が維持されず,Pt(111) 上の氷 薄膜は強誘電的に成長することができない56,57」こと等も理 論計算で予測されている。前者の予測は実験結果(Figure 8)と良く整合する。しかし,表面第一層の H-down 吸着水 に由来する 3,370 cm−1の負のピークの強度は多層吸着に よって変化しないため(Figure 8),実際には,第一層吸着 水の H-down 配向は多層吸着が起こっても H-up 配向に反転 しておらず,さらにその H-down 配向秩序が上層の水分子 吸着層にも伝播していく(Figures 7, 8)ことが分かる。こ れらの実験結果から,過去の理論計算56,57においては H-down状態の安定化(ピン止め)に寄与する Pt 基板と水 分子の間の相互作用が過小評価されていることが推測され る。実際に,これらの計算では金属-水分子間において重要 なファンデルワールス相互作用58の寄与を考慮できていな い。したがって,本実験結果は,ファンデルワールス相互 作用を適切に取り込んで表面水分子系の吸着構造を正しく Figure 7. (a) In-situ measurement of homodyne SFG (| χ(2)|2) spectra

of the hydrogen-bonded OH stretch band of isotope diluted HDO crys-talline ice film grown on Pt(111) at ~140 K20. (b) Adsorbed amount Φ

dependence of | χ(2)|2 (circle). (Inset) Φ dependence of the | χ(2)|

inten-sity20.

Figure 8. Im χ(2) spectra of HDO crystalline ice films grown on

Pt(111) obtained with heterodyne-detection of SFG20. Small

(8)

再現可能な高精度計算法を確立する際のモデル系としても 今後重要な役割を果たしていくと考えられる。 4.3 配向秩序の熱的無秩序化過程のその場観測  前節までに,140 K の Pt(111) 表面上に H-down 状態のプ ロトン秩序を持つ強誘電氷が成長することを議論してきた。 強誘電氷の成長という観点で驚くべきことは,バルク氷に おいては強誘電氷 XI 相が 72 K 近傍で氷 Ih 相に転移59 てしまうのに対し,Pt(111) 上では 140K の蒸着温度におい ても強誘電氷が成長しているという点である。この結果は, Pt(111)上の強誘電氷とバルクの強誘電氷 XI は全く異なる 熱力学的安定性を有しているということを示唆している。 本節では,この特異な Pt(111) 上の強誘電氷の熱力学的性質 について紹介する。  SFG スペクトルの温度依存性を観測する際に,140 K 以 上の温度領域では昇温に伴って氷が昇華60して膜厚が減少 する点に注意する必要がある。Figure 7, 8 に示すように, SF光強度は氷の膜厚に依存する。したがって,強誘電−常 誘電転移(水分子の配向秩序の無秩序化)とは無関係に氷 の昇華に伴う膜厚の減少による SF 光強度の減少を考慮し なければならない。そこで,昇華する水分子のフラックス を四重極質量分析計(QMS)で観測し(Figure 5),各温度 における結晶氷膜の厚さをモニターできるようにした。ま た,氷の ∂μ/∂Q や ∂α/∂Q も温度に依存して変化する61,62 すなわち,昇温に伴って ∂μ/∂Q と ∂α/∂Q の値が小さくなる ため,強誘電−常誘電転移とは無関係に SF 光強度は温度 に依存して変化する。そこで,バルク氷の IR スペクトルの 強度とラマンスペクトルの強度から ∂μ/∂Q 及び ∂α/∂Q の温 度依存性もあらかじめ求めた上で,これらの情報を元に, 各温度における SF 光強度(Figure 9(a))から強誘電−常 誘電転移の秩序パラメータ η を抽出した20,22。その温度依 存性を Figure 9(b)に示す。η は 150 K 以下では一定値を とり,150 K 以上から徐々に減少を開始して臨界温度 Tc∼ 173 Kで完全に 0 になり常誘電化するという 2 次相転移型 の強誘電−常誘電転移挙動を示すことが明らかになった。 また Figure 9(b)の挿入図に示すように,η は試料の加 熱・冷却に対して可逆に変化している。このことは,強誘 電−常誘電転移が各温度における熱力学的安定状態として 進行していることを示唆している。バルクの強誘電氷 XI の 場合は,昇温とともに Tc∼72 K で不可逆に 1 次の常誘電 転移を起こすことが知られており59,それとは対照的な結 果である。  このように,Pt(111) 基板上の結晶氷薄膜においては,Pt と直接相互作用する第一層の水分子が H-down 配向で強く ピン留めされているために,水分子集合体として全体的に バルク氷 XI よりも倍以上も高い Tcの H-down 強誘電状態 が熱力学的に安定な状態として発現することが明らかに なった。また,H2O氷と D2O氷を用いて Pt(111) 上の特異 な高 Tc強誘電性の同位体効果を検証したところ,水素結合 における核の量子効果の影響で,H2O氷膜の場合に比べて D2O氷膜の方が Tcが約 4 K 高温にシフトすること等も明ら かになってきている22

5. Rh(111) 表面における水分子の配向と氷薄膜表

面・ナノ氷表面の構造緩和

5.1 常誘電結晶氷 Ih の成長過程のその場観測  Pt と同様の面心立方構造を持つ Rh 金属の (111) 表面上で は,吸着水の第一層には H-up 配向をとる水分子と H-down 配向をとる水分子がほぼ等量に存在することが示唆されて いる63,64。そこで,同位体希釈 HDO 分子を蒸着させ,こ の表面上に結晶氷が多層成長している様子を SFG 分光でそ の場観測した。水素結合 OH 伸縮振動領域における Imχ(2)- SFGスペクトルを Figure 10(a)に示す21,24。Pt(111) 表 面上の場合の負のピークしか持たない Imχ(2)スペクトル (Figure 8)とは異なり,Rh(111) 表面上の結晶氷の Imχ(2) ペクトルは正のピークと負のピークから成る。さらに, Rh(111)表面上の結晶氷の | χ(2)| は 100 BL 以上で強度が飽

Figure 9. (a) Temperature programmed SFG spectroscopy for the 330-ML HDO crystalline-ice film on Pt(111) prepared at ~140 K. The sample was pre-cooled to 110 K for measurement after the film growth. (b) Order parameter η normalised at ∼110 K (red circle). The red solid line is the thermal randomisation curve calculated by a statistical theory taking account of the ice rules and their partial violation20. (Inset)

Reversible feature of the thermal disorder-order transition demonstrated at higher temperature. Filled triangles and open circles are temperature dependence of η for cooling and reheating processes at 0.1 K/s, respec-tively20.

(9)

和し(Figure 10(b)),| χ(2)| が増加し続ける Pt(111) 表面上 の結晶氷(Figure 7(b))とは対照的な結果が得られた。 100 BLの吸着量における Rh(111) 表面での | χ(2)| の強度は, 同程度の氷吸着量の Pt(111) 表面に比べて 2 桁程度小さかっ た。この結果は,Rh(111) 表面上には H-up 配向をとる水分 子と H-down 配向をとる水分子から成る配向無秩序な常誘 電結晶氷(結晶氷 Ih)が成長することを示唆している65  では,100 BL 以下の吸着量の範囲でなぜ SF 光強度が増 加するのか?その答えを,Rh(111) 表面における結晶氷の 薄膜成長様式に見出だすことができる。Rh(111) 表面上の 結晶氷は,所謂 Stranski–Krastanov(S-K) モード(Figure 10 (c))で成長することが知られている64。すなわち,第一層 吸着水は Rh(111) 表面と強く相互作用するため,その第一 層に被覆された最表面は濡れ性が悪くなる66。水分子はそ の第一層表面の上に層状に結晶氷薄膜を形成するのではな く,氷の結晶子を形成する64,66,67。この結晶子は c 軸方向 (Figure 11)を Rh(111) 表面垂直方向に向けながら成長し68 水分子の吸着量の増加に伴って高さと面幅を増大させ る55,67。面幅が増大する結晶子同士は 100 BL 程度の吸着量 において互いに衝突・合体し,その後は膜全体として層状 に結晶成長するようになる(Figure 10(c))55,64,66。このよ うに形成された結晶子,及び結晶氷膜の表面には,氷 Ih(0001)のテラス面(Figure 11)が露出していることが He 原子散乱実験において確認されている69 。したがって,Fig-ure 10(a)に 示 さ れ る SFG ス ペ ク ト ル は 主 に 結 晶 氷 Ih(0001)の表面に由来し,水分子吸着量の増加と共に増大 する結晶子の面積に相関してその強度が増加していると結 論付けることができる(Figure 10(b)(c))。 5.2 結晶氷表面の厚さと特異な水素結合  前節において,Rh(111) 基板表面上には配向が無秩序な 常誘電の結晶氷 Ih(0001) が成長し,その表面の面積に応じ た強度の SFG スペクトルが観測されることが分かった (Figure 10)。したがって,Rh(111) 表面上の水の吸着量を制 御することで,様々なサイズの氷結晶子を作り分け,その 表面を調べることができる。そこで,100 BL 以上の吸着量 で成長させた厚い結晶氷膜21,23とそれ以下の吸着量におい て形成されるナノ氷結晶子24に対して,表面水素結合の観 測を行った。以下では,厚い結晶氷膜の表面における SFG 分光研究に焦点を当てて紹介する。  まず,最初に素朴な疑問がある。これまで上記のように 「氷の表面」という表現を用いてきたが,いったいどの程度 の厚さの層が『氷の表面』と定義されるのであろうか?バ ルク層とは異なる構造を持つ表面層の厚さは,まさに SFG スペクトルに寄与する水分子層の厚さに対応すると考えら れる。そこで,まず 140 BL の同位体希釈 HDO 結晶氷膜の 表面に OH 伸縮振動を有さない D2O氷を蒸着し,Figure 10 (a)に示される水素結合 OH 伸縮振動バンドの強度が D2O 分子の吸着と共にどのように変化するのかを調べた(Figure 12)。その結果,僅か数分子層の D2O氷の蒸着によって水 素結合 OH 伸縮振動領域の SFG スペクトルの強度が著しく 減少することが分かった。これは,まさに元々の 140 BL の Figure 10. (a) Imχ(2)-SFG spectra in the hydrogen-bonded OH stretch

region of HOD crystalline ice films on Rh(111) measured at 95 K24. The

spectra measured at higher coverage are multiplied by factors indicated in the figure and each spectrum is arbitrarily shifted vertically. (b) Cov-erage dependence of the peak area of χ( ) (red squares), and the surface 2

area of crystalline-ice films on Rh(111)64 (blue triangles). (c) The

sche-matic images of the S – K growth of crystalline ice films on Rh(111) where red lines indicate the topmost surface layer of the ice crystallites.

Figure 11. Schematic illustration of an ideal full-bilayer termination structure of crystalline ice-Ih (0001) with one of the many possible random orientational alignments of water molecules under the ice rules6,7. Oxygen of four-coordinated water molecules is colored by red

while that of three-coordinated water molecules at the topmost surface layer is colored by blue.

(10)

結晶氷の表面で SFG 過程に関与していた『表面層』の HDO 分子が,その上に D2O分子が積層されることにより,徐々 に『バルク層』とみなされるべきものに変化していく様子 を捉えた実験結果である。スペクトル強度の減少挙動は減 衰定数 1.6±0.2 BL の指数関数でよくフィットすることが できる(Figure 12(c))。この結果から,結晶氷の最表面 から 2 層程度の水分子が表面層に寄与していることを突き 止めることができた21  D2O分子を積層することで消失するこの SFG スペクトル は,バルクとは異なる表面 2 層(B1 層・B2 層)の特異な 水素結合構造を反映していると考えられる。まず,観測さ れた Imχ(2)スペクトルに寄与している水分子の OH 振動に ついて考察する。3.1 節で言及しているように,筆者らの実 験のセットアップでは χ(2)の ZZZ 成分のみの情報が抽出さ れている20–22。結晶氷の c 軸と基板垂直方向の実験室座標 系の Z 軸が一致しているので,結晶氷 Ih の c 軸に対する OHの配向角 θ(Figure 2)に対して,その cosθ 及び cos3θ

がスペクトル強度に寄与する((7)式)。結晶氷の水素結合 は,Figure 11 に示すように,各層内の水分子を繋ぐ水素結 合と各層間を繋ぐ水素結合に分類される。層内の水素結合 を形成する OH は氷の c 軸に対して概ね垂直方向に向いて おり(|cosθ|~1/3),層間を繋ぐ水素結合を形成する OH は c 軸に対して平行方向に向いている(|cosθ| ~ 1)。したがって, Imχ(2) ZZZスぺクトルにおける高波数側の負のピークと低波 数側の正のピークは,それぞれ B1-B2 層間において c 軸平 行方向に下向き(H-down)と上向き(H-up)に水素結合を 繋いでいる OH の振動に由来すると考えられる(Figure 13 (a))。これらは同じ B1-B2 層間を繋いでいる OH であるの に,up/down の向きに応じて振動数がシフトするのはなぜ だろうか?この波数シフトのメカニズムは,以下のように B1層内と B2 層内で形成される水分子の水素結合環境の違 いに着目することで理解できる。  氷 Ih のバルクや B2 層内に存在する水分子は,周囲の 4 つの分子と水素結合を形成することができるが,最表面の B1層には,周囲の 3 つの分子としか水素結合を形成できな い低配位水分子が存在する(Figure 11)。したがって,低配 位の水分子を含む B1 層内の水素結合ネットワークは,4 配 位の水分子から成る B2 層の水素結合ネットワークよりも 構造的に弱いものになりえる。実際に,B1 層の水分子の秤 動運動は B2 層の水分子の秤動運動よりも激しい事に起因 して,B1-down の OH の秤動運動の振幅(δφ~9.3°)は B2-up の OH(δφ~8.9°)よりも大きくなることが氷 Ih(0001) 表面 の MD 計算から示唆される(Figure 13(a))21。そのため, B1層の水分子が H-down 配向で B2 層の分子に水素を供与

する OB1-H・・・OB2結合(Figure 13(a)左側)は,B2 層の

水 分 子 が H-up 配 向 で B1 層 の 分 子 に 水 素 を 供 与 す る OB1・・・H-OB2結合(Figure 13(a)右側)よりも直線性が悪

くなり,水素結合が弱くなる。そのため,OB1-H・・・OB2結

合はOB1・・・H-OB2結合よりも長くなる(Figure 13(b))。水

素結合が弱いほど OH 振動数が高波数シフトするという性 質(Figure 6(c))から,水素結合が弱い OB1-H・・・OB2結

合における下向き OB1-Hは,OB1・・・H-OB2結合における上

向き H-OB2よりも振動波数が高くなる。実際に,正と負の

ピーク波数が 30 cm−1程度異なるという実験結果(Figure

10(a), Figure 12(b))は,OB1-H・・・OB2水素結合(Figure

6(c))の方が OB1・・・H-OB2水素結合よりも平均的に 0.5%

Figure 12. (a) Schematic illustration of increase of film thickness and the resultant conversion of surface region into bulk region during the layer-by-layer growth of D2O ice on thick HDO ice film

(140 BL). (b) The effect of D2O ice deposition on the Imχ(2)-SFG spectra of isotope diluted HDO

(11)

程度距離が長いことを示唆しており,MD シミュレーショ ンで得られた値(Figure 13)と実験値は良く一致してい る21  このように,氷という我々にもっとも身近な固体物質の SFG分光から,水分子の up/down の向きが水素結合の強弱 (動的揺らぎと平均的な構造)に本質的な影響を及ぼすとい う,バルク氷の水素結合では発現しない表面特有の新しい 構造緩和現象を見出すことができた。また,本稿において 詳細を述べることができなかったが,この表面構造緩和現 象に対する結晶氷のナノサイズ効果24,70や,氷最表面(B1 層)においては結晶状態とも液体状態とも異なる構造とダ イナミクスで特徴づけられる中間的な状態が発現すること 等も明らかになってきている23

6. まとめと展望

 本稿では,Pt(111) 及び Rh(111) 表面上の吸着水分子に関 する筆者らの SFG 分光研究について解説してきた20–24。ヘ テロダイン検出法を併用することで,SFG 分光は固体表面 吸着水や氷表面といった対称性が低下した環境下の水分子 の H-up, H-down 配向を探る非常に強力なツールとなる。こ の手法により,終端(表面・界面)が存在する不均一な水 分子凝集系では,均一なバルク環境とは異なり,たった一 分子層レベルの水分子の配向(水素の配置)が周辺の水素 結合の構造や誘電物性等に大きな影響を及ぼすことが明ら かになってきた。  特に,Pt(111) 基板上での実験結果から,第一層の水分子 の向きが H-down に配列することによって多層膜全体に H-down配向秩序が伝播すること,この配向秩序はバルク氷 の強誘電状態に比して著しく高温の臨界温度を有し熱力学 的に大きく安定化されている事が明らかになった。この結 果は,「ヘテロ界面系における異方的な相互作用を活用する ことにより,バルクとは異なる構造と物性(誘電性や熱的 安定性)を有する水素結合ネットワークを創発・制御する ことが可能である」ということを示唆している。  また,Rh(111) 表面上での SFG 分光からは,H-up/H-down 配向をとる水分子が等量存在する等方的な結晶氷が成長す ることが明らかとなった。水素結合環境がほぼ均一なバル クにおいては,同一波数の位置に存在する H-up と H-down の水分子の正と負のピークは相殺するため SFG 不活性とな る。しかし,氷表面近傍では「動的な効果に起因して OH の up/down の向きに応じて水素結合の強度が変化する」と いうバルクにはない特殊な構造緩和が誘起されること,そ の結果として H-up と H-down の配置では OH 振動波数がシ フトし,それらの正と負のピークが完全には相殺されずに SFGスペクトルとして観測されることが明らかになってき た。こうした氷表面特有の水素結合のダイナミクスに起因 して,氷表面では「水分子の自己イオン化効率がバルクに 比して飛躍的に増大する」という特異な化学的特性が発現 することも近年の筆者らの別の研究で明らかになってき た25。したがって,氷表面の水素結合に関する知見は,氷 を舞台とした様々な表面過程25,60,71–74を微視的に解明する ための重要な物理化学的基礎となるものである。今後は, 動的な氷表面のユニークな化学的特性や触媒機能,機械的 特性等の微視的な起源により本質的に迫る研究にも挑戦し ていきたい。  最後に,固体表面上の水分子吸着系の配向構造に関して は,より根源的なレベルでの問題点「そもそも固体表面の どのようなファクターによって第一層水分子吸着系に配向 秩序が創発されるのか?その際に,全体として H-up 状態 が優勢になるのか H-down 状態が優勢になるのかを決める 要因は何なのか?」などに関しては,現時点ではほとんど 何も分かっていない。例えば,Pt(111) と Rh(111) では格子 定数が異なり,その結果として結晶氷 Ih(0001) との格子不 整合の度合いが両表面で異なる(Pt(111) は 6.3%, Rh(111) は 3.1%)。しかし,並進構造に起因する格子定数の違いが 水分子の配向自由度に影響を与えるものなのか否かは現時 点では全くの謎である。配向決定に関する根本的なメカニ ズムを解明するためには,原子レベルで構造を規定・制御 した種々の固体表面上の水分子凝集系9–11,75に対する系統 的な SFG 分光を展開していく必要があると考えている。そ Figure 13. (a) Schematic illustration of the inter-bilayer H-bond

net-work connected with B1-down OH bond and B2-up OH bond. The values of ∆RO O− and δφ for inter- and intra-bilayer H-bonds calculated

from the MD simulations of ice-Ih(0001) surface21 are also shown.

Hydrogen atoms in the intra-bilayer hydrogen-bond network are not shown and the number attached to the oxygen atom (red sphere) is the coordination number of H-bond for each molecule. (b) Structural param-eters ∆RO O− (filled square) and δφ (open circle) for inter-bilayer

hydro-gen bond calculated from the MD simulations21. The black dashed line

(12)

れと同時に,最新鋭の研究資源・設備に立脚した革新的な 研究アプローチを新たに開拓し,従来とは異なるレベルで より本質的な知見に迫る発展的な分光研究を追求していく 必要があると強く感じている。今後は,そうした新しい挑 戦により,水分子凝集系の構造や物性,機能を自在にデザ イン・制御するための“表面界面エンジニアリング”の指 針を提示・実証し,水分子の表面界面現象が深く関わる諸 分野のブレイクスルーに貢献していきたい。  本稿で主に取り上げた SFG 分光研究は,京都大学の相賀則宏氏 (現 兵庫県立大学助教), 大槻友志氏,渡邊一也准教授(現 京都大 学教授),松本吉泰教授(現 豊田理化学研究所フェロー),富山大 学の石山達也准教授,東北大学の森田明弘教授との共同研究で得 られた成果です。共同研究者の皆様に感謝申し上げます。特に,京 都大学での助教時代において,自由に研究テーマを設定できる環 境を与えて下さった松本先生には最大限の謝意を表したいと思い ます。また,研究成果に至るまでに,加藤史明氏,原田国明氏,北 海道大学の羽馬哲也助教(現 東京大学准教授),渡部直樹教授, 香内晃教授,木村勇気准教授,佐崎元教授,大阪大学の加藤浩之 准教授,埼玉大学の山口祥一教授,野嶋優妃助教(現 筑波大学 助教),東北大学の井上賢一助教,Max Planck 研究所の永田勇樹博 士をはじめ多くの研究者から有益な議論を頂きました。ここに感 謝申し上げます。  なお,研究の推進にあたり,日本学術振興会,及び JST からの 各種研究助成に対して厚く御礼申し上げます。

引用文献

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11, 2524 – 2529. (26) 単一の入射光電場 E に対して誘起される物質の分極は P=χ( )1E+χ( )2E2+χ( )3E3 と表される。 (27) 可視光電場と赤外光電場のそれぞれの 1 次の積で全体とし て電場の 2 次で表される。 (28) −P( )2

( )

ω =χ( )2

(

E

(

ω

)

)

(

E

( )

ω

)

=χ( )2E

(

ω

) ( )

E ω SF VIS IR VIS IR (29) 等方的な媒質の奇数次の分極,すなわち 1 次の線形分極 P( )1 =χ( )1Eや 3 次の非線形分極 P( )3 =χ( )3EEEは反転操作 (P→ − ,EP → − )に対して不変であり, χE ( ) = , χ1 0 ( ) =3 0 を課す対称性の制約はない。 (30) 本稿では,議論の単純化のために局所場の効果を無視して いる。局所場の取り扱いは,文献 16 や文献 36 などを参照 されたい。 (31) 物質の巨視的な分極 P は,物質を構成する個々の分子の分 極 p の総和として表現される(P p i i = ∑ )。個々の分子の線 形分極 p(1)は,個々の分子の分極率 α を用いて p(1)= αE と 表される。そのため物質の線形感受率 χ(1)は α の和で表さ れる。一方,個々の分子の非線形分極 p(n)は,個々の分子 の超分極率 β(n)を用いて p(n)= β(n)Enと表される。そのため 物質の非線形感受率 χ(n)は β(n)の和で表される。

(32) Du, Q.; Freysz, E.; Shen, Y. R. Phys. Rev. Lett. 1993, 70, 2313– 2316.

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(13)

定することができれば,実部と虚部を求めることができる。 Reχ( )2 =χ( )2 cos arg

(

χ( )2

)

, Imχ( )2 =χ( )2 sin arg

(

χ( )2

)

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(65) Rh(111) 基板上に多層吸着させた同位体希釈 HDO 氷膜の IRASスペクトルは,結晶氷 Ih の IR 吸収スペクトル(Figure 6(b))と同様に∼3,275 cm−1にピーク位置を持つ。

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(受理日 2020 年 8 月 3 日) 杉本 敏樹(すぎもと としき) 所属:分子科学研究所 物質分子科学研究領域 専門分野:物理化学,表面界面科学,分子分光学 連絡先:〒 444-8585 愛知県岡崎市明大寺町字西郷中 38 電子メール:[email protected] URL:https://sugimoto.ims.ac.jp/

Figure 2. Schematic illustration of relation between the laboratory- laboratory-fixed {X, Y, Z} and the molecule-laboratory-fixed {x, y, z} coordinate systems for  an O-H oscillator of water adsorbed on substrate surface
Figure 4. Examples of (a)  χ ( ) 2 2 , and (b,c) Reχ ( ) 2  and Imχ ( ) 2  spectra  of O-H stretching band of water molecules with (b) H-up and (c)  H-down configuration simulated with single Lorentzian function with  parameters of  ω q  = 3,280 cm −1  and
Figure 6. (a) Typical polarized Raman spectrum 54  of H 2 O bulk ice Ih measured at 128 K (green) and IRAS spectrum 22  of H 2 O crys- crys-talline ice film grown on Pt(111) at 140 K (red)
Figure 8. Im χ (2)  spectra of HDO crystalline ice films grown on  Pt(111) obtained with heterodyne-detection of SFG 20
+3

参照

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