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おける至上約款の至上性

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(1)

合衆国法およぴ日本法における至上約款の至上性

序 序

第一章

第 章 結 語 ー統一私法における至上約款の役割について

1

合衆国の判例

日本の学説・判例

海商法の領域は︑条約による各国法の統一が最も早く︑また広範に行なわれた点で︑先駆者的地位を占める︒とりわ

け︑﹁一九二四年八月二五日にプラッセルで署名された船荷証券に関する若干の規則の統一のための国際条約﹂は︑締約

国の数からいっても︑内容の重要性からいっても︑他に類例を見ない程である︒この船荷証券条約は︑万国海法会の手

おける至上約款の至上性 合衆国法および日本法に

奥 田

(2)

第一章 いて︑あるいは特別法を制定し︑あるいは商法典を改正することにより︑

l)

 

を作り出した︒これに対して︑条約の締結に至らなくても︑実質上︑法統一に成功した例もある︒

(2

) 

であ

る︒

共同海損に関するヨーク・アントワープ規則

(Y or

k, A

nt we rp u   R l e s )   ところで︑後者は︑条約の形を採っておらず︑ましてや国内法化もされていないのであるから︑海上物品運送契約に

適用されるためには︑何らかの形で︑

はとんど例外なく︑﹁共同海損は︑西暦一九五

0

年のヨーク・アントワープ規則に従ってこれを処理す (3 ) 

る﹂というような条項か人っている︒しかしながら

﹁本船荷証券は︑一九三六年四月一六日に可決された合衆国の海上物品運送︹訳注

(4 )  力を有する⁝⁝︒﹂しかも︑

争点になっているのを見ると︑そこには自ずから疑問か生じてこざるをえないのである︒

(5 ) 

﹃六甲台論集﹄において︑イギリス法およびドイツ法における至上約款の研究の成果を発表した︒本

ここでも︑︵一︶至上約款の機能範囲︑︵二︶至上約款の至上性︑︵三︶

合衆国の判例

大︑という問題が中心となる︒ 稿は︑その続編であり︑ヘーグ規則の適用範囲の拡

筆者はすでに

これか﹁至上約款﹂

(P ar am ou nt C l a u s e )   などと呼ばれ︑英米を中心として古くから訴訟の

ヘーグ規則立法︺に従って効 傭船契約書には になるヘーグ規則

(H ag ue R u l e s )  

が︑外交会議における審議を経て︑条約となったものであり︑各国は

ヘー

︐グ

規則

立法

( H a g u e R u l e s   L e g i s l a t i o n )  

そのうちの一っか︑

その旨の当事者の意思か明らかにされていなければならない︒事実︑船荷証券や

ヘーグ規則に関しても︑同種の条項か見られるのである︒例えば︑

これに基づ

(3)

合衆国法および日本法における至上約款の至上性 が︑多数見受けられた︒

(9 ) 

︵一︶全期間適用型 以

上の

よう

に︑

であるとされている︒なぜならば︑

たと

え︑

他国の法または裁判所を指定する約款は︑ 断

して

の一九三六年海上物品運送法

( C a r r i a g e o f   G oo ds   by e   S a  Ac t , P   u b l i c  

|—ーNo.521 74 

t h   C o n g r e s s ) の適用

範囲を調べてみる︒

このように潜在 一九三六年法は︑合衆国の往航・復航どちらの船荷 ヘーグ規則立法の適用範囲が限定されているからである︒そこで︑まず合衆国

一九三六年法の第一三条によると︑同法は︑﹁外国貿易における合衆国の港への︑又は合衆国の港からの海上物品運送

に関する一切の契約に適用﹂される

(4 6U

. S

.  

C .

  1

31 2)

︒す

なわ

ち︑

証券にも︑適用されるのである︒しかも︑このような船荷証券に関する限り︑合衆国以外の国の法を契約の準拠法と判

(6 ) 

一九三六年法の適用を拒否した判決は︑全く見当たらなかった︒それどころか︑このような船荷証券において︑ そもそも至上約款が機能しうるのは

一九三六年法の第三条八項︵ヘーグ規則の第三条八項︶に反するので︑無効

第 一 節 至 上 約 款 の 機 能 範 囲

これらの約款によって︑他国のヘーグ規則立法が適用される結果になって

も︑その内容が合衆国の一九三六年法と全く同じであるわけではなく︑一九三六年法の第三条八項は

(7 ) 

的な

( p o t e n t i a l )

責任減少をも︑禁止していると考えられるからである︒

一九三六年法は︑契約の準拠法にかかわりなく︑強行的に適用されるので︑通常の至上約款は︑国内

(8 ) 

または他国間の運送に関してのみ︑機能しうる︒ところか︑合衆国の判例においては︑更に次のように特殊な至上約款

"本船荷証券は⁝⁝合衆国・海上物品運送法の規定に従って︑効力を有するものとする︒⁝⁝上記法の規定は︑

(4)

第 二 節 船 荷 証 券 に お け る 至 上 約 款

全期間適用型の至上約款は︑

⁝⁝船積み前︑陸揚げ後︑

甲板積みで運送され︑

危険のすべてを︑荷送人および荷受人が負担するものとする︒但し︑その他のすべての点に関しては︑本船荷証券の

文言および合衆国の一九三六年海上物品運送法に定められた規定か、同法•第一条(C)項にかかわらず、適用され

るも

のと

する

用さ

れる

( 1 0 )  

︵二︶甲板積み適用型

および運送人による物品保管の全期間を通じて︑⁝⁝本船荷証券における相互関係に適

その旨が本船荷証券に記載された物品に関してはかかる運送に固有の滅失または損傷の

一九三六年法の第一条

( e )

項︵ヘーグ規則の第一条

( e )

項︶に︑甲板積み適用型の

至上約款は︑同法の第一条

(C)

項︵同規則の第一条

(C)

項︶に︑それぞれ対応している︒すなわち︑船積み前およ

あるが︑それにもかかわらず び陸揚げ後の運送人による物品保管期間︑ならびに甲板積み運送貨物は︑本来なら一九三六年法の適用を受けないので

これらの特殊な至上約款か機能して︑同法が適用されるのである︒

一九三六年法の諸規定は︑契約の文言

( t e r m s o f   t h e   c o n t r a c t )

になると言われている︒

と考えられるので 至上約款が機能する場合︑すなわち︑当事者は︑同法の諸規定を逐語的に書き移したのと同じ効果を︑至上約款に求めている︑

ある︒従って裁判所は︑可能な限り︑すべての文言に首尾一貫した効果

( c o n s i s t e n t e f f e c t )

を与えるように︑契約を

解釈する義務を負っている︒そのため︑契約の文言は︑すべて突き合わせて読まれ

( r e a d t o g e t h e r )

︑合理的に可能な

(5)

合衆国法および日本法における至上約款の至上性

件は

そのヨットは︑船舶のテークルが運送人の過失

( f a u l t )

により破損していたために︑陸揚げに際して︑船

従っ

て︑

も不利に︑解釈されるであろう﹂

最後

に︑

この

ため

一九三六年法に反する免責約款も︑上記規則により有効となるのである︵至上

第二に︑﹁契約の一部が印刷され︑一部が筆記されている場合には︑筆記の方が優先する﹂

(w he n

c o n t r a c t i s     p a r t l y  

であ

る︒

p r i n t e d   an d  p a r

t l y   w r i t t e n ,   t h e   w r i t i n g c   o n t r o l s )

︒ 竿

手 芋

叫 の

2わりに︑ゴム・スタンプが使用されている場合も︑同様

と判決さスタンプされていた至上約款が︑

( 1 5 )  

れた事件を挙げることができる︵至上性・有︶︒ この規則の適用例としては印刷された責任加重約款に優先する︑

これらの解釈規則が適用された後もなお︑契約があいまいな場合︑﹁抵触している文言は︑起草者にとって最

( c o n f l i c t i n g   l a n g u a g e s w i   l l   be   i n t e r p r e t e d   mo st   s t r o n g l y   a g a i n s t t   h e   d r a f t s m a n )

一般に運送人によって作成される船荷証券は︑荷主に有利なように解釈され︑その限りで︑一九三六年法が優

( 1 6 )  

先する︵至上性・有︶︒但し︑この規則は︑先の二つの規則が適用された後でなければ︑適用されない︒

ところで︑実際には︑以上のような規則によっても︑至上約款の至上性が釈然としない場合は︑出てくるのである︒

( 1 8 )  

その最も顕著な例として︑次に

P a n n e l l v•

U n i t e d   S t a t e s   L i n e s

事件を紹介する︒

ロンドンからニューヨークに向けて︑汽船

Am er ic an F l y e

r 号により甲板積みで運送されたヨットに関する

もの

であ

る︒

と書かれていることが多い︒

( 1 4 )  

性・

無︶

この型の至上約款においては︑当該船荷証券に﹁特に別段の定めがない場合に限り﹂一九三六年法が適用される︑ 具体的には︑次のような解釈規則が確立していると思われる︒第一に︑﹁特別条項は

s p e c i f i c c   o n t r o l s   t h e   g e n e r a l )

︒こ

の規

則は

時はいつでも︑

( 1 3 )  

調和させられねばならない︒

とりわけ全期間適用型の至上約款に関連して︑述べられている︒詳言する

一般条項を支配する﹂

( t h e  

(6)

0

ドルの損害賠償を命じたのである︒

ォて

t

上に屹落・破損したのであった︒これに関して︑運送人は︑自己の責任

(r es po ns ib il it y)

を認めつつも︑

由に

より

︑責

任額

( l i a b i l i t y )

は︑五

0

0

ドルに制限されると主張した︒すなわち︑船荷証券の第二三条は︑

の第四条五項︵ヘーグ規則の第四条五項︶と同じ内容の責任制限を定めた後に︑﹁パッケージ﹂

(p ac ka ge )

につ

いて

﹁撒荷で運送される物品以外の箇品は

ところか︑本件の船荷証券には

ージ

それかいかなる種類のものであれ︑

合衆国至上約款︵第二条︶および甲板積み適用型の至上約款︵第一三条︶も記載さ

ニューヨーク南部地区連邦裁判所は

一九三六年法は︑本来の効力に甚づい

一九

三六

年法

︵および利子・費用︶

に制限さ に違反する場合には︑その違

一 切

次のような理

パッケージである︑と定義している︒

次のような理由により︑船荷証券の第二三条による﹁パッケ の定義を無効として︑慣習的運送単位

(c us to ma ry sh ip pi ng u   ni t)

につき五

0

ドル︑すなわち総額ニ︱五

0

0

反の限度において︑ ︵一︶本件の至上約款は﹁本船荷証券のいかなる文言も︑同法︹訳注

( 2 0 )  

無効とする﹂と規定している︒

︵二︶船荷証券の第二三条は︑運送人か自己の利益のために記載したのであるから︑運送人にとって最も不利なよう

に解釈されるべぎである︒

︵三︶至上約款の効果は︑その記載が一九三六年法によって認められている場合と判例法上認められている場合とで︑

異な

らな

い︒

これに対して︑第二巡回控訴裁判所は︑原判決を変更して︑損害賠償額は五

0 0

ド ル

れると判決した︒その判決理由を要約すると︑次のようになる︒本件において︑

て適用されるわけではないので︑契約の文言にすぎない︒従って︑裁判所は可能な限り︑すべての文言に首尾一貫し

そこ

で︑

従って︑本件のヨットはパッケージであると︒

香川法学

一九三六年法

(7)

合衆国法および日本法における至上約款の至上性

あるから︑公共の政策

( p u b l i c p o l i c y )  

車の運送に関連して︑このような至上約款は た効果を与えるように︑契約を解釈しなければならない︒ところで︑本件の当事者は︑船荷証券において︑﹁パッケージ﹂

一九三六年法における一般的な﹁パッケージ﹂

以上のように︑契約の解釈の問題は︑時として非常に微妙なものになるのであるか︑

いかなる範囲の運送において許されるのであろうか︒すなわち︑至上約款に

よるヘーグ規則の適用範囲の拡大に限界かあるのか否か︑

一九三六年に海上物品運送法が制定された後も︑その適用かない部分については

ター法

( H a r t e r A c t !

︑す

なわ

ち Ac t 10

£C on gr es s 

18 93 , 

P u b l i c   N o . 5 7 )

か効力を維持している︒詳言すると︑︵一︶合衆

国の沿岸航海︑︵二︶国際運送においてもい船積み前および陸揚げ後に︑運送人か物品を保管している期間︑以上につい

ハーター法か適用されるのである︒

そこ

で︑

すな

わち

このように本来ハーター法が適用される船荷証券に︑一九三六年法を適用する旨の至上約款が記載されてい

る場合には︑至上約款の効力か問題となるであろう︒しかし︑︵一︶については︑

6 (2

13 12 )

が明文でもってその効力を認めているし︑また︑

︵二

︶に

つい

ても

( 2 7 )  

旨の至上約款︵全期間適用型︶は︑判例により有効とされている︒

これに対して︑合衆国は以外﹂ の定義に優先す

の港間の運送に一九三六年法を適用する旨の至上約款は︑危うく無効とされかけた︒

8)   (2   Th e  E dm un d  F a n n i n g 事件において︑

ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所は︑ドイツから朝鮮への機関

に反して無効である

一九三六年法の適用範囲外の運送に︑運送人の責任制限を認めるもので

9)   (2  

と判決したのである︒

ては

︑ 例えば︑合衆国においては 文言として解釈されるにしても︑それは︑ を特別に定義した︒

( 2 4 )  

るの

であ

る︒

従っ

て︑

このような特別の定義は︑

このような期間に一九三六年法を適用する

一九三六年法の第一三条(46

U .   s .   C .  

という問題が次に出てくる︒

このようにヘーグ規則が契約の

(8)

第二章

らの

場合

第 一 節 国 際 海 上 物 品 運 送 法 の 制 定 前

しかし︑第二巡回控訴裁判所は︑原判決を覆して︑次のように判決した︒すなわち︑

契約については︑至上約款の記載か明文の規定によって許されているし︑また︑荷主は︑運送人に積荷の価額を通告す ることにより︵従って︑高い運賃を支払うことにより︶︑その価額を最高責任額とすることかできるからである︒

第 一

︳ 一

節 傭船契約における至上約款については︑合衆国の判例は︑イギリスの指導的判例

A n g l

o   , S

ax on  P e t r o l e u m   C o .

  事件の貴族院判決と同じ結論に達している︒すなわち︑﹁本船荷証券は⁝⁝﹂という文言

で始まる合衆国至上約款か︑傭船契約書に記載されている場合︑﹁船荷証券﹂と書かれている部分は︑すべて﹁傭船契約﹂

というふうに読み替えられる︒また︑合衆国の往航・復航以外の航海における損害および船積み前の段階における損害

︵物品損害以外のものを含む︶にも︑傭船契約書に記載された至上約款により︑ヘーグ規則か適用される︒但し︑

ヘーグ規則が契約の文言にしかならないのは︑船荷証券における至上約款と同様である︒

日本の学説・判例

傭船契約における至上約款

るような政策は︑認定できない︒なぜならば︑

香川法学

S h i p p i n g o   C .   v 

一九三六年法か本来の効力により

( e x p r o p r i o   v i g o r e

) 適用される運送

Ad am as to s 

このような至上約款を無効にす

(9)

合衆国法および日本法における至上約款の至上性 する規定を設けるべきか否かを検討しているのである︒ の主眼は︑前者にあり︑大橋博士は来るべき統一船荷証券条約の批准に備えて︑英米諸国のように︑至上約款を要求 い立法の下において﹁何法に従うかを明示する約款﹂をも︑﹁至上約款﹂に含めてい和°]しかるに︑この昭和一五年論文 は至上約款を要求している立法の下において記載するものを︑狭義の﹁至上約款﹂とした上で︑至上約款を要求しな わか国の学界で最初に至上約款に注目したのは︑大橋光雄博士であろう︒その昭和一五年の論文において︑大橋博士

( 3 9 )  

という標題の下に︑集約されているように思われる︒ その大橋博十の見解は︑﹁国際的に見たるr

上約

款﹄

の効

力﹂

第一に︑条約批准国において発行された船荷証券に関する訴訟か︑発行地の法廷で裁判される場合には

行地の法廷は︑自国法を強行的に適用するであろうから︑至上約款の有無は問題にならない︒第二に︑条約批准国で発

行された船荷証券に関する訴訟か︑発行地外の外国の法廷で裁判される場合にはまず国際私法上の解決が必要である︒

その

結果

( a

)

発行地法または他の条約批准国の法律か準拠法とされるのであれば︑至上約款の有無は問題にならない︒

これ

に対

して

( b

)

未批准国の法律が準拠法とされる場合には︑まさに至上約款か必要である︒

るならば︑法廷地の国際私法は︑至上約款によって指定されている所の法律を準拠法とし︑それに従って裁判するであ

以上のように︑大橋博士は︑最後の場合を想定して︑至上約款の必要性を認めている︒

に忠実に従い︑批准国で発行された船荷証券には︑本条約を確実に適用する︑

必ずしも発行地の法律に固執しているわけではなく

(4  

され

る︒

その後︑大橋博士は昭和一九年にも︑その著﹃海上物品運送法論﹄

ろ う

おそらく発

としている点か注目 その目的は条約の第一

0

( 4 0 )  

ということにある︒但し︑大橋博士は

ともかくも条約の規定が遵守されればよい︑

( 4 2 )  

の中で︑至上約款の必要性を訴えているか︑そこ この時に至上約款があ

(10)

ではともかくも条約の規定か遵守されればよい

る︒大橋博士によると︑

こオー

わか国の実際界は

日本法か英米法に譲歩していることを表わし︑ ひとた

び英米諸国との取引になると︑﹁英米法に従って日本法を適用し難き時はこの限りにあらず﹂という文言を加えていた︒

明らかに不平等である︒しかも︑統一条約に従って改正される 将来の運送法は︑国家権力によって契約内容に千渉するものであるから︑当事者の採否を自由とするような任意法であ ってはならない︒従って︑至上約款を要求する規定を設けて︑日本法に従うことを強制しなければならない︑というの

昭和

三二

年六

月一

^︱

‑日

谷操三博士の というのではなく

日本法か適用されるべきことを特に強調してい

日本法によるべき旨の準拠法約款を船荷証券に挿入していなから︑

わが国においても︑統一船荷証券条約を国内法化した﹁国際海上物品運送法﹂が公布され︑

翌年一月一日から施行されている︒本法には︑至上約款を要求する規定こそ設けられなかったものの︑その第一条は

﹁船舶による物品運送で︑船積港又は陸揚港か本邦外にあるもの﹂に本法を適用すると定めており︑

適用範囲は︑諸国のヘーグ規則立法と比較しても︑相当広いと言える︒

﹃統一船荷証券法論﹄か出ており︑本法の適用範囲と至上約款との関係を︑かなり詳しく述べているので︑

( 4 6 )  

これから見ていくことにする︒

まず本法の適用範囲は︑上述のように第一条によって規定されているが︑小町谷博士によると︑

港または陸揚港のどちらか一方だけが本邦外にある場合を規定しているのであって︑両方とも本邦外にある場合につい

第 二 節 国 際 海 上 物 品 運 送 法 の 制 定 後

か大橋博士の結論である︒

この第一条は︑船積

この国際海上物品運送法の施行後すぐに︑小町

このような空間的

(11)

合衆国法およぴ日本法における至上約款の至上性

ては︑規定が欠けている︒従って︑この後者の物品運送について日本法が準拠法となったときは︑商法が適用されるの

か︑それとも国際海上物品運送法が適用されるのか︑

うに立法されたものであって︑

はるかに合理的に出来ているのみならず︑渉 外的法律関係には︑出来るだけ統一法を適用することか望ましいから︑上述の場合には︑本法を適用すべきである︒

に︑本法の適用かある︑

︒カ

旧時代の立法に属する商法の規定よりも︑

ところで︑船積港または陸揚港のどちらか一方だけか本邦外にある場合︑すなわち第一条に該当する場合には︑当然

8

9

) 

と小町谷博士は述べている︒これはどうやら︑準拠法の決定を要しない︑という意味らしい︒

従って︑小町谷博士にとって︑至上約款を要求する規定か本法に設けられなかったのは︑一応は首肯できることであっ

わか国から輸出する物について︑非締約国が陸揚地である場合に︑その国で訴訟か起こる場合のことを考 えると︑その非締約国の裁判所か︑果して船積地の法律︑すなわち本法を適用するか否か疑わしい︒従って︑立法論と

しては︑至上約款の記載を命じる規定を設けた方か妥当である︑と小町谷博士は考えている︒

さて︑以上のような小町谷博士の見解に対して︑他の学説は︑どのように述べているのであろうか︒残念なことに︑

今日に至るまで︑以上のような問題を取り上げた者は少なく︑ここでは︑山戸嘉一博士および吉田昂氏の見解を紹介で

きるにすぎない︒まず第一条の解釈については︑どちらも小町谷博士の見解と異なり︑﹁船積港又は陸揚港が本邦外にあ

るもの﹂の中に︑外国間の運送︑さらには外国内の運送をも含める︒しかし︑第一条の性質について︑両者とも︑これ を抵触法規定とは見ておらず︑国際私法により︑わか国の法律が準拠法となる場合に限り︑第一条の適用かある︑とい う見解である︒従って︑少なくとも外国間の運送については︑小町谷博士の見解と同じ結果になる︒最後に︑至上約款

の必要性については︑吉田氏は何も述べておらず

という問題か生じる︒しかし本法は︑現代海運の実状に適するよ

山戸博卜も︑以上のような第一条の解釈から︑

日本法による旨の準 拠法約款を船荷証券中に設ける限り︑ことさらに︑国際海上物品運送法による旨の文言︑すなわち至上約款を必要とし

(12)

条までの条項に従って効力を有するものとし︑ ぞれ諸般の事情を検討したのであるが︑

ところで判例の方も︑以上のような問題を取り扱ったものは少なく︑外国間の運送について日本法による旨の準拠法 約款の効力を認め︑国際海上物品運送法を適用したものが二件︑外国から日本への物品運送について外国の裁判所を専

属管轄とする約款の効力を認めたものか一件︑見つかったにすぎない︒

ます準拠法約款に関する二件は

な事実の下で︑ から損害賠償請求権を譲り受けたスイスの保険会社か︑日本の海運会社に対し︑訴えを提起したのであった︒このよう

一方の事件では東京高裁が︑他方の事件では東京地裁が︑それぞれ日本法による旨の準拠法約款の効力

を認めた上で︑国際海上物品運送法の適用を明言した︒

言え

る︒

への

海上

運送

が︑

ンダ船によって行なわれたが︑同じく積荷の一部か破損したために︑船荷証券所持人から損害賠償請求権を譲り受けた 日本の保険会社が︑オランダの海運会社に対し︑訴えを提起したのであった︒ところが︑本件船荷証券には︑アムステ

そこで、神戸地裁・大阪高裁•最高裁が、それルダム︵オランダ︶の裁判所を専属管轄とする約款か記載されていた︒

るものではないとして︑その効力を認めたのである︒その中でとりわけ︑神戸地裁が次のように述べているのは︑注目

に値する︒﹁前記甲第一号証の二によると被告の普通契約条款中には﹃本件船荷証券は船荷証券統一条約第一条から第八 次は︑裁判管轄約款に関する事件である︒ ンロビア

︵リ

ベリ

ア︶

.ヽtょし 5)   (5  

とだけ述べている︒

いずれも︑本件の裁判管轄約款は︑国際海上物品運送法その他の公序法に反す

これらの条項は本証券に合体されたものとみなす︒﹄旨の条項が存在する

` 

ここてーサントス

︵ブ

ラジ

ル︶

どちらも同じような状況の下で起こった︒

から大阪︵日本︶ そこて

への

海上

運送

が︑

日本船によって行なわれたが︑積荷の一部が破損したために船荷証券所持人

その点で︑先の山戸博士および吉田氏の見解を承認した判例と

ジェノア︵イタリー︶

オラ

からモ

(13)

合衆国法およぴ日本法における至上約款の至上性 ことか認められるから︑本件管轄約款が︑本来適用されるべぎ公序法たる船荷証券統一条約またはその国内法化された法律の適用を免れることを目的としたものであるということはできない︒﹂すなわち︑裁判管轄約款が国際海上物品運送法の適用回避になるか否かを判断するにあたり︑至上約款の存在か考慮されたのである︒これはわが国の裁判所が何らかの意味で至上約款の効果を述べた唯一の例ではなかろうか︒

ともあれ︑以上のように︑

わが国における至上約款への関心は︑もっぱら国際海上物品運送法の適用回避を防ぐ効果

に向けられていた︒事実︑もともと本法の適用かない運送に本法を適用する旨の至上約款については︑佐藤幸夫教授が

昭和四

0

年に発表した論文以外に見あたらない︒佐藤教授は︑その論文において︑英米の判例を紹介した後に︑主とし

(6  

て内国航路による運送および港湾荷役業者への本法の適用を中心に考察している︒

まず内国航路による運送であるか︑これに国際海上物品運送法を適用する旨の至上約款が記載されたとしても︑この

ような約款は︑無効とならざるをえない︒というのは︑内国沿岸貿易には商法の規定︑とりわけ強行法である第七三九

条が適用され︑国際海上物品運送法による旨の約款は︑結局︑商法の限度以下に運送人の責任を軽減することを︑意味

するからである

次に港湾荷役であるか︑これに関しては︑佐藤教授は︑独自の契約解釈を展開している︒すわなち︑

上物品運送法に従い有効﹂なる旨の至上約款か記載され︑他方︑本法に反する別の約款も同じ船荷証券中に記載されて

いて︑しかも︑後者の約款の利益を受ける者の中に︑港湾荷役業者も含まれているとする︒佐藤教授は︑この場合に︑ 一方で﹁国際海

至上約款も含めて船荷証券上の利益全体を︑港湾荷役業者に及ぼす旨の特約か存在する︑と考えているようである︒そ

( 6 4 )  

して︑それを前提として︑港湾荷役業者への本法適用の可能性が検討されている︒

まず特約自体は港湾荷役業者が本体は本来の適用を受けない者であるから︑契約自由の原則により有効であろう︒

(14)

次に︑運送契約の当事者でない港湾荷役業者が︑直接に船荷証券上の利益を援用できるかどうかは︑別に考えられなく てはならない︒最後に︑港湾荷役業者は︑独立の契約者といっても︑船荷証券の証明する運送契約においては︑運送人 に従属した履行補助者と考えられるから︑匝接商法第七三九条の適用はないであろう︒以上により︑国際海上物品運送

法は︑港湾荷役業者にも適用しうる︑というのが佐藤教授の結論と思われる︒

佐藤教授は︑更に︑至上約款により船荷証券にとり入れられた国際海上物品運送法の規定と︑この法に反する他の約

款とのどちらが︑優先するかを問題にする︒

そし

て︑

この場合の国際海上物品運送法の規定は︑特約により︑本来の適 用範囲を越えて適用されるので︑もはや強行法としての性格を持たず︑単に契約の一条項としての性格を有するにすぎ

いずれを優先させるかは︑全く契約解釈の一般原則によない︒従って︑同じ船荷証券中の相違する二つの規定のうち︑

( 6 5 )  

って決することになる︑というのである︒

積み運送について︑第一五条一項の免責禁止規定の適用だけを排除した︒

なお︑本法の第一五条三項および第一八条は︑それぞれ運送品の船積み前および陸揚げ後︑並びに生動物および甲板

これに関して︑佐藤教授は︑たとえこの部分

に本法を適用する旨の至上約款を記載しても︑それは単に注意的な記載にすぎず︑もともと本法の適用のない部分に︑

と述べている︒

これを適用すべく約定した場合とは事情が異なる︑

第三節 国際海上物品運送法の第一六条は︑傭船契約について︑第一五条一項の免責禁止規定の適用だけを排除している︒従

って︑傭船契約に対しては︑本法は強行法としてでなく︑任意法として適用される︒このような状況において︑傭船契

香川法学

傭船契約における至上約款

(15)

合衆国法および

H本法における至上約款の至止性

以上見てぎたところによると︑わが国際海上物品運送法の適用範囲に関する規定は︑他国のヘーグ規則立法のそれと 大きく異なっており︑その事か至上約款の効果にも影響を及ぱしているように思われる︒

品運送法の空間的適用範囲に関する規定︵第一条︶︑および事項的適用範囲に関する諸規定︵第一五条三項︑第一六条お よび第一八条一項︶を振り返って︑それぞれの規定と至上約款との関係を調べてみたい︒

第 四 節 補 説

れに関する判例・学説は︑見あたらない︒そこで本節では︑

の第︱二条は

( 7 1 )   る ︒

N a

n y

o z

a i

 

日本海運集会所の

の第

一条もこれに倣ったのであ

約に本法を適用する旨の至上約款か記載されたとしたら︑その効果が問題になると思うのであるが︑現在のところ︑

( 6 7 )  

r英文傭船契約制定議事録﹄を取り上げ

この意見は立ち消えとなった︒そして︑結局のところ︑

一九

0

年の

Na

ny

oz

ai

︑一

几六

三年

のN

ip

po

nv

oy

九六

四年

のB

ei

za

i︑

以上

三書

式が

選ば

れた

ます

Na

ny

oz

ai

の第

0

条︑﹁船主責仔﹂に関する規定は︑事務届原案の説明によると︑国際海上物品運送法か傭船契約 にも適用されることに顧みて︑同法の第五条一項︑第三条二項︑第四条一項・ニ項︵条約の第三条一項・ニ項︑第四条

一項・ニ項︶を採用したものである︒ところか︑次のNipponvoy

専門委員会において︑これを至上約款に替える意見か出た︒

るので︑必ずしも適当ではない︑と答えただけで︑

の第

0

と実

質的

に全

く同

じ規

定と

なり

︑続

..

..

.,

,B

e i

z a

i  

この議事録では︑ て︑傭船契約における至上約款の現状を知る縁としたい︒

の船主責任規定も同じ方法を採ろうとしたところ︑

これに対して︑事務局は︑不要な規定を合体することにな

N i

p p

o n

v o

y  

そこで本節では︑国際海上物

(16)

ても︑承服できるであろう︒しかし︑外国内の運送に関しては︑疑問か残る︒というのは︑

この法律は︑船舶による物品運送で︑船積港又は陸揚港か本邦外にあるものに適用する︒

まず山戸•吉田説によると、「船積港又は陸揚港か本邦外にある」運送には、外国間の運送、さらには外国内の運送も

含まれる︒確かに外国間の運送に関しては︑小町谷博士および判例も︑これを認めているし︑本法制定の趣旨からいっ

日本国内の運送については︑

日本商法を適用することとしておぎなから︑外国内の運送については︑当地の法律のいかんに関わらず︑

上物品運送法を適用するのであれば︑公平を欠くからである︒

になるとは︑考えにくい︒従って︑本法の空間的適用範囲は

これに反して︑小町谷博士は︑

これに反する国際海上物品

日本の国際海

また実際上も︑外国内の運送について本法の適用か問題 そこで︑至上約款の機能範囲は︑本法の本来の適用かない運送︑すなわち日本国内の運送および外国内の運送︑

うことになる︒しかし︑外国内の運送に本法を適用する旨の至上約款が記載されるケースは︑現実には皆無であろう︒

他方

︑ 日本国内の運送に本法を適用する旨の至上約款は︑商法第七三九条との関係か問題になる︒佐藤教授によると 内国沿岸貿易には︑商法第七三九条が適用されるので︑それに国際海上物品運送法を適用する旨の至上約款は︑この商

法の強行規定に反して無効である︑

くは重過失︑または船舶の不堪航による損害の免責を禁止しているにすぎない︒すると︑

運送法の規定は︑ごく一部に限られ︑その他の部分に関しては至上約款か効力を有すると思われる︒

次に︑二国間の運送であっても︑第一条が抵触法規定ではないとすると︑国際私法により︑準拠法か日本法でない場

合には、第一条による本法の適用はない。従って、至上約款か機能しうる。事実、山戸•吉田説は、第一条を抵触法規

定ではないとしており︑判例も︑外国間の運送について︑

第一条

とのことである︒しかし︑商法第七三九条は︑船主の過失︑船長・船貝の悪意もし

日本法による旨の準拠法約款の存在を強調した上で︑国際海

上物品運送法を適用しているところから、山戸•吉田説を承認しているように思える。 一応︑二国間の運送に限られるとする︒

(17)

合衆国法および日本法における至上約款の至上性

事項的適用範囲に関する第一五条三項︑第一六条および第一八条一項は 適用だけを排除している︒従って︑これらによって規定された事項には︑本法か強行法としてではなく︑任意法として 適用されることになる︒そこで佐藤教授は︑第一五条三項および第一八条一項に関してだけではあるか︑これらの事項

第一八条 約その他これに類似する契約も︑また同様とする︒

第一五条 か︑と思われる︒ もとづいて適用される場合と異なり︑ で︑別の機会に譲ることにしたい︒ 明言こそしていないが︑第一条を抵触法規定と考えているようである︒しかし︑

いずれも免責特約禁止に関する第一五条の

ヘーグ規則立法かその本来の効力に さて︑それとは別に︑外国の裁判所を専属管轄とする旨の約款か︑本法の適用回避となるか否かを判断するにあたり︑

至上約款の存在を考慮した判例かあった︒しかし︑至上約款か機能する場合には

ヘーグ規則は︑強行法規定としての性格を失っている︒

そのためヘーグ規則に反 する免責約款か有効となる場合もあることは︑英米の判例に見られる通りである︒従って︑本件のような裁判管轄約款 を有効とする理由として︑至上約款の存在を挙げるのであれば︑もう少し契約の内容を調べる必要があったのではない

第三条から第五条まで︑第八条︑第九条または第︱二条から前条までの規定に反する特約で︑荷送人︑荷 受人又は船荷証券所持人に不利益なものは︑無効とする︒運送品の保険契約によって生ずる権利を運送人に譲渡する契 第一項の規定は︑運送品の船積前又は荷揚後の事実により生じた損害には適用しない︒

第一六条前条第一項の規定は船舶の全部又は一部を運送契約の目的とする場合には︑適用しない︒

人と船荷証券所持人との関係についてはこの限りでない︒

第一五条第一項の規定は︑生動物の運送及び甲板積の運送には適用しない︒

ただし︑運送

この問題は統一私法の根本に関わるの

(18)

至上約款に特有のものでない︒ に本法を適用する旨の至上約款を記載しても︑それは単に注意的な記載にすぎないとする︒しかし逆に︑

を特に指定して︑本法を適用する旨が特約されたのであれば︑当事者の意図は︑むしろ第一五条一項の適用を排除しな

しかし更に困難な問題は︑傭船契約に本法を適用する旨の至上約款について生じる︒

ともと傭船契約に適用されることを予想していなかったからである︒もっとも︑

上約款か記載されていなくても︑任意法として傭船契約にも適用されるのであるから︑本法においては︑

まず日本海運集会所は︑傭船契約書式の作成にあたり︑本法か傭船契約にも適用されることに顧みて︑本法の第三条

二項︑第四条一項・ニ項および第五条一項を採用したとある︒

を置く代わりに︑本法全体を適用する旨の至上約款を記載するのは︑不都合と考えられた︒なぜならば︑傭船契約に不

要な規定を合体することになるから︑

というのである︒しかし︑海運集会所が採用した本法の規定は︑比較的船主に有

利なものばかりであり︑その他の規定か傭船契約の本質に反するとは考えられない︒

人に責任を負わせる旨の第三条一項か除かれているのは︑運送人に有利な責任条項を作ろうとした意図を裏づけるもの

であ

ろう

︒ それよりもむしろ︑傭船契約に特有の損害に本法が適用されるか否か︑これの方か重要である︒例えば︑航海傭船に

おける予備航海

( p r e l i m i n a r y vo ya ge )

の遅延︑定期傭船における休航期間の発生などか問題になるであろう︒しかし︑

これらの損害は︑運送品について生じたのではない︒

とも考えられる︒いことにあったのではないか︑

香川法学

いずれにしても︑後者のように解釈する余地は︑残されるべきであろ

ところカ というのは これらの事実

わか国際海上物品運送法はたとえ至

とりわけ︑商事過失について運送 これに対して︑本法の損害賠償責任に関する規定は︑すべて運送

このように本法の一部と同じ内容の責任規定

この

問題

ヘーグ規則は︑も

(19)

ヘーグ規則が本来の効力にもとづいて適用さ

品に生じた損害を対象としている︒従って︑至上約款が記載されていない場合には︑明らかに本法の適用はないとぃぇ よう︒また︑たとえ至上約款が記載されていたとしても︑上記のような損害に本法を適用する旨の当事者の特約が︑契

約の文言から確認されない限り︑それは否定されるであろう︒

海上物品運送法の国際的統一は︑最初に述べたように︑まず万国海法会がヘーグ規則を作成し︑次にプラッセルにお ける外交会議がこれを船荷証券条約とし︑最後に各国がこれを独自の形態で国内法化していくことにより︑達成されて いった︒しかし︑この統一手続の最後の段階は︑各国のヘーグ規則立法の間に微妙な差異を生み出し︑とりわけヘーグ 規則の適用範囲を不統一ならしめた︒しかも︑このヘーグ規則の適用範囲は︑近年の海運技術ならびに世界経済の発展 にともない︑一段と狭く感じられるようになった︒そこで︑取引界は︑至上約款を記載することにより︑このように狭

い適用範囲を拡大しようと試みたのである︒

これに対して︑裁判所は︑どのように答えたか︒さすがに︑このような至上約款を無効とはしなかったけれども︑し かし︑至上約款によって適用されたヘーグ規則を契約の文言として解釈することにより︑当事者の意図を探ろうとした

のである︒すなわち︑ 結語——統一私法における至上約款の役割について1

この

場合

ヘーグ規則は︑第三条八項において︑荷主側に不利な免責約款を禁止することにより︑片面的強 行規定となっている︒しかしながら︑ヘーグ規則制定後も︑運送契約には︑取引の形態に応じた特約が多数記載されて

おり︑これらは︑ヘーグ規則と抵触する可能性が十分にある︒

合衆国法およぴ日本法における至上約款の至上性

(20)

も含まれているので︑あるいは この適用範囲自体か拡大されるのであれば︑至上約款の必要性は︑はとんど失くなる︒現に制定されたウィスビィー規則

( V i s b y R u l e s ) およびハンブルク規則

(H am bu rg R u l e s ) は︑その適用範囲を格段に広げ

た︒しかしながら︑

れる︒但し︑

その規定の文言を見ただけでも︑至上約款が機能する余地はまだ十分に残されているように思わ その適用範囲の中には︑契約か両規則に従う旨を明言した場合︑すなわち至上約款か記載されている場合

これによって︑先に述べた至上性の問題か片づくかもしれない︒もちろん︑それは

今後のこの規定の運用にかかっているのであるか︒他方︑傭船契約書に関しては︑最近︑国連貿易開発会議

(U

NC

TA

D)

もっとも︑先に述べたように︑至上約款は︑

るか

ら︒

れるのであれば︑当然のことながら︑

力にもとづいて適用されたヘーグ規則は︑契約の文言にすぎないので︑

.この場合には︑契約の文言の統一的解釈か必要となる︑というのである︒

これが﹁至上約款の至上性﹂の問題であった︒英米の判例によると

ヘーグ規則に代わるべく

な意味を持たない︒従って︑至上約款の至上性は︑契約解釈の一般原則にしたがって︑決めるしかないのである︒しか

し︑合衆国の

P a n n e l l v•

U n i t e d   S t a t e s   L i n e

s 事件を見てわかるように︑この一般原則は︑その適用の結果を容易に予

測し難い一面を持っている︒そ

︶で︑至上約款の効果を統一私法の中で明確に定めることが︑必要となってくる︒もっl .

とが無駄であるかに見える︒ とも︑西ドイツや日本では︑至上性の問題自体かそもそも意識されていないので︑あたかも至上約款の効果を定めるこ

しかし︑統一私法においては︑ある国にとって無意味ではあっても︑他の国にとって軍要

な問題であれば

それを解決しておく必要があろう︒統一私法は︑国際的な私法関係の安定を目指して作られるのであ

ヘーグ規則の狭すぎる適用範囲を補うために記載されるのであるから︑ この場合︑﹁至上﹂約款という名称は︑何ら特別 これに反する特約も︑当然には無効とならない︒ ヘーグ規則に反する特約は無効となるのであるが︑

これに反して︑至上約款の効

(21)

合衆国法およぴ日本法における至上約款の至上性 ( 5)  

(4 ) 

(3 ) 

(2 ) 

(l

) 

﹁至上約款の至上性︵一︶︵二︶﹂六甲台論集二五巻三号︵昭五三︶

pp .  60

9こ一五巻四号︵昭五四︶

pp .  13

3  │ 

43

; 

至上約款の至王性﹂六甲台論集二六巻一号︵昭五四︶

pp . 

1 1 ‑

19 57

Q. B. 23 3  (D ev li n 

J. 

an d  C .A .)  

において問題となった至上約款︒

この経緯については︑大橋光雄

r海上物品運送法論﹄昭一九︑有斐閣︑

pp .7

16

;S cr ut to n  o n  C ha rt er pa rt ie s  40 2

4

(1 8  t h   e d .   19 74 ) 

; 5 3   Pa rl ia me nt ar y  De ba te s  (H ou se f  o   Lo rd s)  7 56

7 (1 92 3)  

0

年・一九二四年・一九五

0年・一九七四年と数次の改正を経ている︒詳しくは︑窪田宏r

説海商法﹄︵新訂︶昭五二︑晃洋書房︑

pp .  1 62

日本海運集会所制定の書式︑船荷証券︵昭和二五年︶第二八条︑航海傭船契約書︵昭和四六年︶第二六条︑定期傭船契約

Ad am as to s  Sh ip pi ng o  C .  v A.   ng lo

  , S

ax on   Pe tr ol eu m  C o.  

1

95 9

A. C. 13 3  ( H. L. ) 

﹁ドイツにおける イギリスのリーディング・ケース 書︵昭和四六年︶第二五条参照︒

ヨーク・アントワープ規則は︑

︵昭和五六年五月五日脱稿︶

って

いる

の役割を強調する理由がある︒

但し︑本稿は︑

いまだ問題提起にすぎないので︑

今後さらに研究を進めてゆきたいと思

送法だけでなく他の取引法の統一においても︑利用されるべきではなかろうか︒

. ︱  

, 1  

ここ

統一私法における至上約款

いかなる分野において法統一が必要であるかを示している︒ しかしこのような至上約款の効用は︑ひとり海上物品運 以上見てきたように︑至上約款は︑ で

ある

の事務局が報告書を出して︑

その

中で

ヘーグ規則の適用範囲が取引界のニーズを満たしていないことを警告し︑同時に︑ ︑

( 7 8 )  

法統一の可能性を検討している︒これもまた︑

将来の動向が注目される出来事

(22)

恨m三出牲綜!~~!

I~<

(c.o) G. Gilmore & C. Black, Jr., The Law of Admiralty 130 (2 d ed. 1975) ti' 1~ltH(-l:.I: 団荘混ぼ区s回禦&涵悔岩~G

姻ヒ妾旦全令~=-~-v-咽庄約~i-0'心倒(や_:;.i‑0J.Gerber & Co. v. S. S. Sabine Howaldt, 310 F. Supp. 343 (S. D. N. 

Y. 1969), at 350 (;:_,._~?--苺旦→心<~~一全奴墳回(G圏栄)≪碩臣゜呪+..!'KurtOrban Co. v. S. S. Clymenia, 318 F. Supp. 

1387 (S. D. N. Y. 1970) ti'~t<..L. if'-=--~ 会只澤回(釘或釦翌ヤ心溢悔岩批旦,~t<..L.I=--~GI~11回叶速斗母n;

圏湘坦如習庄ヤ⑲ぢ割~~裾ふ淫溢約ごヤ.:;.+..!Gやぐ心~,i-\-1~ 旦→令全合

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祗早志ti'4n$EG1~ltH環速彗n;翌栄

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(t‑) Indussa Corp. v. S. S. Ranborg, 377 F. 2 d 200 (2 d̲ Cir. 1967), at 203-4~If£ ゜怜弄彩ti'Wm. H. Muller & Co. v. 

Swedish American Line, Ltd., 224 F. 2 d 806 (2 d Cir. 1955), cert. denied, 350 U. S. 903~!Bi<i-0,,i) G~i-0(at202)0

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i-0祗写且皿諏品極S巨圏頌I~11Hく記恥吟心翌恥年かヤ哀゜

The Monrosa v. Carbon Black Export Co., 359 U.S. 180 (1959), at 183~~

心,t:: 回匹ご廷望亨ぷ心釦,~姦豆J約ごャ̲:;.i‑0°Lowry & Co. v. S. S. Le Moyne D'Iberville, 253 F. Supp. 

396 (S. D. N. Y. 1966) ;Indussa Corp. v. S. S. Ranborg, 377 F. 2 d 200 (2 d Cir. 1967), at 204 ;Kurt Orban Co. v. 

S. S. Oymenia, 318 F. Supp.1387 (S. D. N. Y. 1970)~

(oo) Kurt Orban Co. v. S. S. Clymenia, 318 F. Supp. 1387 (S. D. N. Y. 1970) ;Peter Paul et al. v. The Christer Salen, 

. 19 57 A. M. C. 2141 (SD. N. Y. 1957), aff'd, 1958 A. M. C. 2377 ;The Steel Inventor, 1941 A. M. C. 169 (D. Md. 1940)釦匡

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(m) B. F. Mckernin & Co., Inc. v. U. S. Lines, Inc., 1976 A. M. C. 1527 (S. D. N. Y. 1976), at 1529 ;Wirth Ltd. v. S. S. 

Acadia Forest, 1974 A. M. C. 1448(E. D. La. 1974), at 1452 n.(13) Fireman's Ins. Co. of Newark, New Jersey v. Gulf 

Puerto Rico Lines, Inc., 1973 A. M. C. 995 (D. Puerto Rico 1972), at 997~ 如心滋

(S;) General Motors Corp. v. S. S. Mormacoak, 1971 A. M. C. 1647 (S. D. N. Y. 1971), at 1649 ;Pannell v. United States 

Lines, 1958 A. M. C. 1428 (S. D. N. Y. 1957), at 1430 ;Albert v. Isbradtsen, 1957 A. M. C. 1569 (N. Y. S. C. 1957), at 

1570 ;The West Kyska, 1946 A. M. C. 997 (5th Cir. 1946), at 1000‑1. 

(;:::::) Wirth皿.v. S. S. Acadia Forest, 1974 A. M. C. 1448 (E. D. La. 1974), at 1452, rev'd on other grounds, 1976 A. M. C. 

2178 (5th Cir. 1976); Empacadora Puertorriquena De Carnes v. Alterman Transport Line, lnc.,303 F. Supp. 474 (D. 

Puerto Rico 1969), at 478 ;Mamiye Bros. v. BarberS. S. Lines, lnc.,1966 A. M.C. 1175(S. D. N. Y. 1965), at 1183‑4; 

Pannell v. United States Lines, 1959 A. M. C. 935 (2 d Cir. 1959), at 936, cert. denied, 1959 A. M. C. 1604 ;The 

Examiner, 1955 A. M. C. 1789(S. D. N. Y. 1955), at 1800 ;United States v. Wessel, Duval & Co., 1953 A. M. C. 2056 

(S. D. N. Y. 1953), at 2058 ;Federal Ins. Co. v. American Export Lines, 1953 A. M. C. 1330 (S. D. N. Y. 1953), at 1332 

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