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術前診断が困難であった膿胸合併肺癌の1例 利用統計を見る

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術前診断が困難であった膿胸合併肺癌の一例

山梨医科大学第二外科 小林正洋 橋本良一 窪田健司 吉井新平 松川哲之助 多田祐輔  肺化膿症を合併する末柑性肺癌の 確定診断に苦慮する症例を、当科で も数例経験しているが、今回我々は、 術前肺膿瘍、膿胸と診断され、術後 病理診断で、大細胞癌と診断された 一例を経験したので、診断上の問題 点を若干の文献的考察を含め報告す る。  1.症例 73歳、 男性。 主訴 既往歴 胃切除。 家族歴 現病歴 発熱、右胸部痛。  昭和60年胃潰瘍にて、 特記すべきことなし。  平成4年6月初旬より、右胸部痛、 発熱が出現。安静時の呼吸困難も出 現し、6月27日、近医を受診。胸部 単純レ線像にて、右中肺野に鏡面像 を伴う陰影を認め約一週間の抗生物 質投与にて、空洞所見となった。そ の後、7月14日胸部単純レ線像では、 再び鏡面像が出現し、胸水が出現。 その後も陰影増大を認めたため、8 月25日当科に紹介入院となった。  胸部単純レ線像の経過  本症例の、平成2年より、平成4年 6月までの胸部単純レ線像を検討す ると、平成2年3月の写真において、 右中肺野に小浸潤影と不明瞭ではあ るが小嚢胞影を認める図一1a)。平成 4年2月の写真では明かな嚢胞形成を みとめ図一lb)、同年6月のものでは 鏡面像形成にいたっている図一1c)。 一11一

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入院時検査データ WB   ペロロ ロ   ノリ  RBC 348x106/μ1 :?;’,? e°㌃|      4 ヒ   o  x   ノv  :,6:、.:Cl:

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CEA 3   ng/mI ツ反 中等度陽性 表一1 検査データ 図 1      図 2  入院時、胸部単純レ線像では、右 中肺野に8×7cm大の腫瘤影を認め、 胸水の貯留を認める図一2)。  入院時現症  身長172cm、体重50.8kg。体温37. 8℃。栄養状態、不良。眼瞼結膜、 貧血。右胸部に軽度漏斗胸。右肺野  血液検査データ上白血球増多、貧 血、CRP高値を認めた。ツ反は、中 等度陽性であった表一1)。呼吸機能 検査では、%VC 65.4%と拘束性障 害を認め、喀疾培養では、α −stre ptOCOCCUSを認めたが、好酸菌培養 陰性であった。胸水の細胞診は class1、経気管支肺生検では、 necrotic  tissue  and  fibrosis of bronchial wa11.との結果で あった。

 胸部CT像

 入院後の胸部造影CTであるが、 S6に位置する腫瘤は周囲をリング状 にエンハンスされるlow density ar eaとして描出され、胸水の貯留す

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図一3)。       図 3  入院後経過  入院後も発熱、食欲不振、倦怠感 が持続していた。CRPも持続的に高 値を示し、胸部レ線上右肺野の陰影 は明らかに増大傾向を示した。  診断と治療  嚢胞への感染による、肺膿瘍、膿 胸と診断したが、約1ケ月間にわたる、 抗生物質投与など内科的な治療に抵 抗したため手術適応と判断し、10月 2日手術を施行した。  第6肋骨切除にて開胸。肺は、全 般的に高度に癒着しており、膿瘍は、 S6を中心に存在していると思われた が、中下葉間は癒着のため判然とせ ず、また中下葉に向かう肺動脈、気 管支は一塊として癒着しており、中 下葉切除を行った。後方及び横隔膜 側の剥離は、膿胸壁と思われる部分 を剥離した。  摘出標本肉眼所見  S6に径7c皿大の腫瘤を認める。そ の割面は白色調であるが、出血、壊 死が認められる図一4)。

     図 4

 病理組織所見  病理診断は、中∼大型の異型細胞 が、髄様に増殖し、腫瘍細胞内にAl cian−blue陽性のmucinを認める、 大細胞癌であった図一5)。腫瘍は、 肉眼的にS6末梢に中心を有していた が、ミクロ的には、肺動脈(中下葉 一13一

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枝)周囲(外膜)、気管支は、下幹、 中葉枝(粘膜下)にまで腫瘍の浸潤 を認めた。残った肺の中間幹断端に は、浸潤はなかった。尚、膿胸壁と 思われた部分には腫瘍は認めなかっ た。腫瘍周囲に壊死、あるいは膿瘍 様の好中球浸潤を認めたが、術中に 提出した、膿胸壁、ならびに胸水の 細菌培養は陰性であった。尚、術後 早期に、再度縦隔、頭部CT、 Gaシン チ、骨シンチを施行し、縦隔リンパ 節あるいは遠隔転移のないことを確 認した。

     図 5

 H.考察  本例は、術前肺膿瘍と診断され、 術後、病理診断で大細胞癌と診断さ れたが、術前癌の診断が困難であっ た理由を考察する。肺大細胞癌の報 告で、荒井らは、臨床所見において プロンコファイバースコピーで半数 は異常がなく、腫瘍が可視範囲に認 められた例は、24.7%にすぎないと 報告しているが1)、本例でもTBLB で悪性の所見は得られなかった。こ のことは、末梢発生の多い大細胞癌 の診断の困難さを表していると思わ れる2)。  実際、本例においては1)臨床所 見で、発熱、白血球増多、CRP高値 を認め、胸部レ線異常陰影を含めて、 化膿性炎症様の所見が、前面にあら われていた。2)TBLBでは、悪性の 所見を得られなかった。以上の点で 術前、癌の確診が困難であったと考 えられた。  肺嚢胞に合併する肺癌の報告は比 較的多くみられるが、肺嚢胞症に合 併した肺癌も術前の確定診断が困難 である場合が多いと言われる3)・ 4)・5)。本症例の胸部単純レ線像

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を経時的に検討すると、嚢胞が経過 中に明かとなり、しかも単発で出現 したものであり、肺嚢胞に肺癌が合 併したのでなく、肺癌の発育過程に おいて嚢胞が形成されたとも考えら れた。注意深く経過を追うことに よって単に既存の肺嚢胞への感染で はないと術前に疑うことができた可 能性があったと思われる。  皿.まとめ  術前肺膿瘍、膿胸と診断され、術 後病理診断で、大細胞癌と診断され た一例を経験し、診断上の問題点を 考察した。        文献 1)荒井他嘉司、秋山三郎、安藤喜八、 ほか 肺大細胞癌切除例の臨床像と 手術成績 肺癌 26:267−277,198 6. 2)山下長司郎、坪田紀明、良河光一、 ほか 肺の大細胞癌の術後遠隔成績 に関する臨床病理学的検討 肺癌 26:  713−719,  1984● 3)Stoloff, L L Krlofsky, P. Magi lner, L The risk of lung cancer in males with bullous disease o f the lung. Arch. Environ. Healt h., 22 : 163−167, 1971. 4)山岡憲夫、木田晴海、王志明、ほ

か  Giant bulla内に

発育し嚢胞内感染を併発した肺癌の 一切除例 日臨外会誌 49 :140 9−1417,  1988. 5)Goldstein, M. J.,Snider, {}. L., L iberson, M., et al Bronchogenic Carcinoma and Giant Bul lous Dis ease. Amer. Rev. Resp.,97 : 1062 −1070, 1968_ 一15一

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