• 検索結果がありません。

電気磁気学授業における一つの試み

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "電気磁気学授業における一つの試み"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

電気磁気学授業における一つの試み

三 澤 一 傲*

An Attempt in the Lecture of the Electromagnetics

Kazutaka Misawa*

 Electromagnetics is one of the most basic and important subjects in the electrical engineerings together with the theory of e!ectric circuits, 1 have been lectured the later half of the electromagnetics, the magnetic theory, for about three years to the fourth grade students. During the lectures of this field of theory which have not been thought to be of easy understanding, 1 have made several devices to help the students  leaning and obtained some good results, This paper summarizes the devices and the results obtained.

1.まえがき

 電気磁気学は、電気工学科において電気回路と並んで最 も重要な基礎科目であるが、その後半部である、主として 磁気現象に関する理論を4年生に講義するようになって3 年あまりが経過した。その間、一見わかりにくいとされるト この分野の理論について、いくらかでも学生たちの理解を 助けるために自分なりの工夫をし、ある程度の効果を上げ てきたと考えるので、以下にその概要を述べる。

2.授業を担当するにあたって

 電磁気学は微分積分学と並んで、大正時代にはすでにそ のほとんどの理論が完成しているいわば古典的な学問であ り、現在では、コンピュータを使った数値解析に興味の中 心が移っている。その理論体系は、他の工学や物理学には 見られない美しい整合性を持っていて学ぶ人の心を捉える ためか、現在でも数多くの教科書が出版されている。一方、

現象的には目に見えないものを扱うため初めて学ぶ人には とっつきにくい面があるようで、高専の学生達にその本質 をいかに理解させるかにいろいろ苦心されている事を、長 年本校で電磁気学を講義されてきた西山教授から伺ってい

た。

 初めて4年の学生を対象に電磁気学の授業を担当するよう

に言われたとき、私は大学3年で受けた故宇田川錠久教授の 迫力あふれる授業を昨日の事のように思い出した、.

当時宇田川先生は電気試験所から名古屋大学に赴任された ばかりの気鋭の教授で、数学にも造けいが深く、その著書 は現在でもすぐれたな教科書として広く活用されている。

先生が業半ばにして亡くなられたことはまことに残念で、

大学ばかりでなく我が国にとっても多くの損失であったと 考えている。顔を真っ赤に紅潮され、吠えるような大声で 講義される先生の授業は凄まじいばかりで、当時けして出 来のよい学生ではなかった私は、いまにも脳出血でお倒れ になるのではないかとハラハラしながらも、それでも電界 のガウスの定理や楕円積分による磁界の計算など、基本的 な事柄は頭に叩き込まれたものである。学問の深さからも 性格的にも、宇田川先生のような授業ができるはずもない 事は分かっていたが、それでも私なりに、少しでも学生の 理解を助ける工夫をしてみようと思い立ったのであった。

 高専の目的は大学とは異なり、いわゆる学問を教えるの ではなく、工業技術に必要な基本的知識を充分な程度に深 く教授し、身につけさせる事にあると考えている。この点 で、電磁気学の授業を始めるにあたっても、学問的知識に はあまり自信がないが、長年企業で培ってきた現場での経 験が生かせるのではないかと思ったことであった。

3.ノート講義による授業

*電気工学科

平成11年8月30日受理

   3.1 授業への心構え

   私が人にものを教えるという事を実際に始めたのは、大   学生の頃、数人の中学生を相手に家庭教師をしたのが最初

_5評ある・その後蝶に入ってから1ま・群の韻を対象に

(2)

OJTの形で仕事の内容や考え方を説明したり、短期間ではあ るが、社:外講師として招かれ電気絶縁等の講義をした経験 がある。また本校では、それまで2年間にわたり電気計 測、電気機器設計などの講義を行って学生の雰囲気や授業 への取組み態度なども大体分かってきた頃であった。そう した経験から授業のあり方についても、自分なりに以下の ような考えを持つようになっていた。

 まず学問にせよ何にせよ、自分がよく分かっていない事 は結局他人(学生)にも分からせる:事はできないというこ とだ。教えるべき内容については、少なくともかなり本質 的なところまで理解していなければならないし、場合によ っては自分なりの解釈を付け加える必要もある。もしそう でなければ、授業でどこが重要なポイントかも分かりにく いし、学生のレベルに応じて的確な解説をしたり、適切な 問題を自作するといった事もおぼつかなくなるであろう。

 教科書は、3学年からの引き続きで、高鯨生向けに電気 学会が編集した「基礎電磁気学」を使用する事になっていた。

ただし、私自身としては、主として高専生にどの程度の電 磁気学を講義すべきか知る参考書と考え、幾分無謀である とは思ったが、故宇田川先生の例に倣って、とにかく自分 自身の電磁気学を教えるつもりで授業に取り掛かる事にし

た。

3。2 教科書からのノート作り

 まず、授業をはじめるには、全体の方針を立てながら自 分自身の知識を整理しておく必要がある。このため、これ まで担当してきたほかの科目に倣って、教科書の要点を抜 き出してノート作りを始めることとした。ノート作りは、

直:接授業に用いる事を目的として、次の方針で行った。

(1) 新しい:事項の説明に入るときは、まず用語や単位    などの定義をできるだけ明確にする。

(2) ベクトルの計算法など、教科書では直接触れてい    ないような事も必要に応じて補う。

(3) 説明はできるだけ簡潔に箇条書きとし、全体とし    て、整合性の取れたものにする。

(4) わかりやすい図をできるだけ多く用いる。

(5) 各節の終わりには、例題かわかりやすい練習問題   をで之るだけ入れる。

   また、やや特殊な内容の項目は、本文に入れず練   習問題としてその解答例で説明する。

 4学年で担当する範囲は、磁界や電磁波などが主体とな る教科書の後半部分であったが、この際、電磁気学全体の 概要を頭に入れておこうと、ノートは最初の電荷と電界の・

部分から作りはじめる事にした。その結果、4年生の授業 はノート作りと並行して行わざるを得なかったため、電界 の部分から復習するような内容になってしまい、当初はそ れも理解を確実にする上に有効ではないかと考えていたが、

実際にはあまり効果がなく、かえって肝心の磁気理論に関 する講義の内容が薄くなり、学生には余計な負担となるだ けではなかったかと反省している。ところで実際にノート 作りを始めてみると、高専生向けに編修された教科書の内

容にあるような事柄ですら、自分の知識がいかにあやふや なであるかを思い知らされる羽目になった,,一方、教科書 側にも、大学生向けのものと比べると説明がやや不十分で

あったり、一貫性を欠いているように思われる点も目に付 いた。そうした際には他の教科書などを参考にして補った が、そのなかでも、既に古典の部類に入るが、企業入社後 間もなくから長らく活用している竹山説三著「電磁気学現 象理論」が、いまもってもっとも詳しく、信頼できる教科 書であると考えている。

 例1は、電気磁気学の導入部分に近い電束と電束密度 の部分を示す。電束と電束密度の考えは、すぐ後に出てく る電界に関するガウスの定理や、磁界や磁束密度を理解す る上に重要な基礎項目であり、教科書ではほぼ1ベージ 半にわたって解説しているが、文章が長くややわかりにく い。そこで、ここでは次の方針でまとめた。

①まず電束のイメージをはっきりさせ、電束密度との関   係を明らかにする。

②次に、電荷と電界との関係から電束密度と電荷の関係   を示す。

③ ②から電界と電束密度の関係を導き、共にベクトルで   あることを示す。

④上の関係の理解に役立つような練習問題をつける。

 上記に必要な補足説明を追加しながら板書して行けば、

学生達が比較的容易に学習上のポイントをつかむことがで きるのではないかと期待した。

例1 電束と電束密度 2.3 電束

(1) 電束=電気力線の束

     =電気力線密度×電気力線が通り抜ける面積

電束 面積S

 1[C]の電荷からは1本の電束が出ている。

      → 電束の単位: [C]

(2) 電束密度 D        電束[C]

   D=一一一一一一一一一一一一 [C/m2] (2.1)

     電束の通る断面積[m2]

(3) 電界の強さと電束密度の関係  点電荷Qによる単位球面上の電界の強さ       Q

   E==一一一一 [NIC]

     4x Eo

Qから出て.いる電束の本数 NQ Q 戦球面状の電束搬D=

キ一

[c]

[C/m2]

(3)

  ・: D一一EeE [C/m2]

       D

    E=一一一 [NIC]

       Eo

   (真空中の電界と電束密度の関係)

(4) 電界と電束密度はベクトルである。

       D     D=εoE または E=・一一        Eo

問題 εoのディメンジョンは何か        [D] [C/m2]

解   [εo];一一一・=・一一一一=・[C21m2N]

       [N/C]

       [E]

(2,2)

(2.3)

  例2は、4年前期の終わり頃に出てくる自己インダク タンスの解説の部分を示す。ここは電気工学において実用 上重要なところで、どの教科書もかなりのページを割いて いるが、面倒な計算も多く、最初につまずいてしまうと後々 まで分からなくなるところである。教科書でもほぼ1ペ ージ半を使って説明しているが、磁束と絶交磁束量の関係 が十分に説明されておらず、インダクタンスの単位の考え 方なども必ずしも明確になっていない。そこで、ここでは 次のような考えで整理してみた。

①まずコイルに流れる電流による磁束と、これとコイル   との鎖交磁束との関係を示す。

②これより、軍事磁束量と電流との比例定数として自己   インダクタンスなる量を導く。

③ 鎖交磁束量の時問的変化がコイルの誘起電圧であるこ   とを示し、インダクタンスの単位の意味を明らかにす

  る。

④ ③の関係の理解を助けるため、適当な問題をつける。

 このように整理することによって、インダクタンスと誘 起電圧の関係も理解できるように工夫した。なお、一つ一 つの項目が更に分かりやすくなるように、見出しも丸数字 をつけるようにした。

④Φによるコイルの全鎖交磁束

  ilr=NO==Li [Wb]

  gr N¢

L =一一==一一一   1     1

(9.1)

(9.2)

L:コイルの巻数と形によってきまる定数   ==自己インダクタンス

  =自分自身の電流による鎖交磁束を生ずるイン    ダクタンス

・の勒・[・](一ン・…)一1[判

⑤Ψの変化による誘起電圧

(9.3)

     dW di

  e=一一一一=一L一一一 [v] (9・4)

     dt dt

   しの単位: [H](ヘンリー一一一一)

   1H=電流が1[Als]の割合で変化するとき、1[V]

      の電圧が誘起するインダクタンス

   1 mH =10T3H, 1 pa H== 10−6H

例 インダクタンスが1Hのコイルに60Hzの交流電流を  1A流したときの誘起電圧はいくらか。

・イE×・×・i・2・f・一戸・i・(2・×60t),

L=1[H]より

・一一・Wt一一・蓋厚畝・・

 == 一2 1一{in f Lcos2z ft

  ==  2Ez ×60×cos(2 z ×60×t)

  =一533cos377t   [V]

誘起電圧の実効値:

   2 tE} z  f L

 E.= 一m; :一m一 =2n f L=: to L= 377 [v]

例2インダクタンス 第9章 インダクタンス

9.1 自己インダクタンス(Self Inductance)

① コイルを流れる電流による磁束:コイルと鎖交してい   る

②Nターンのコイルに流れる電流:i[A]

③ iにより生じたコイルの鎖交磁束:Φ  [Wb]

巻数N

や賢

で\、,

 tp

 賜Jvx li ::: /;Z

●−

N

到・

N

3.3 ノート講義の実際

 「基礎電磁気学」は、大学生向けに編集された本格的な 教科書と比べると260ページあまりとやや薄くなってい るが、これをノートにまとめ直してみると、点電荷の説明 から電磁波に至るまで、全体として2冊、130ページほど になった。もしこれを2年間で講義すると、全体で4単 位、100分x60コマとなるから、1日に2ページ強の進 度となる。始めの1年間は、ノート作りに合わせ静電荷の

ところがら授業を始めたため時間が足りなくなり、電磁波 のところは大部分補講にまわしてしまったが、それでも板 書の量としては、1日3〜4ページとなった。他の科目の 授業では、1日4ページ程度板書させる=事も多かったため 多いとは思わなかったが、それでも、学生からは早すぎる との苦情が出た。これは、後になって気のついた事である 一53一

(4)

が、記述的な内容の多いほかの科目に比べ、電磁気学は計 算式や抽象的説明が多いためであろう。

4.授業の効果と反省 4.1 初年度の授業

 電気磁気学は、他の学科に比べ理論的、体系的にまとま っており、また高専生を対象とする範囲と程度の内容にお いてll 今まで職場などで身につけてきた知識でもあまり 不足1余いように思え、当初どちらかといえば、授業とし てはxりやすい印象であった。さらに先のような方針でソ ート1・整理しておいたので、講義すべき内容は、すでに十 分にliに入っており、これに必要な解説を加えながら板書 して乎けば学生も十分理解してくれるものと期待していた。

実際ll始めてみると、これまでの他の学科の授業と比べ学 生のfi度もよく、私語や居眠りも少なくうまく行っている 印象vあった。

 表  は,平成6年度以降の各年度における電磁気学の 試切績の推移を示したものである。私が最初に授業を行 った・♪は平成7年度からであるが、最初に行った前期中 間試liの結果は期待外れであったといえる。彼らは、静か に講,Eを聴き、熱心にノートを取るように見えながら実際 には)まり理解していなかったのだ。静かにしていたのは、

赴任2年目の担任に対する遠慮もあったのであろう。成 績不琵の原因を考えてみると、一つは授業の不慣れもあっ たでめろうが、もうひとつは先にも述べたように内容が前 学年の復習に近くなり、学生の興味が湧かなかったせいで はないかと思う。そこで、前期の終わりに学生たちの感想 を聞いてみると、つきのような意見が出てきた。

(1) ノートの内容が多く板書が早すぎる。

(2) そのため授業中に考えて理解する暇がない。

(3) 時々字が読みにくい。

(4) できるだけ例題をやってほしい。

(1)については、他の科目でもそのような意見が出てい た。学生時代、非常に口述の早い先生がいて、そのため特 別な略字まで工夫してノートを取った記憶がいまだに残っ ているが、それに比べはるかにゆっくりと書いているつも りであったのが、やはり自分のペースになるのであろうゐ㍉

また、学生の字を書く速さにもかなり個人差があり、この あたりに板書授業の難しさと限界が感じられた。

表1 電気磁気学平均成績の推移

前期中間 前期末 後期中間 学年末

平成6年度 52.2 64.1

平成7年度 50.1 51.4 64.6 60.6

平成8年度 58.8 57.9

平成9年度 46.6 43.5 48.4 57.0

平成10年度 41.7 54.5 53.4 64.8 平成11年度 41.2

(2)は、かな・り成績のよい学生からの意見であったが、

いまの学生の大半がほとんど予習、復習をやってこない事 にも問題があるように思われる、、とはいえ、自分自身の学 生時代も似たようなものであったことを思い出し、結局授 業のしかたに何らかの工夫が必要との結論になった。

(3)は、終業近くなって時間に追われたり、疲れて来る と、どうしても乱暴な字になったり我流の略字や癖字が出 てくるためである。文章を書くにも、最近はワープロを使

う事がほとんどとなり、自分自身筆記能力の低下を感じる ようになっている。

(4)は数人の学生から要望があったが、よい提案である と思いk次の授業のノートからは時間の許す限り例題を入 れるようにしたが、これはかなり好評であった。

 こうした提案を取り入れ、授業のやり方を少し変えてみ たところ、新しい事を学び始めて興味が出てきたためか学 生たちの反応もよくなり、授業自体に活気が出てきたよう に思われた。その結果は、後期の試験の成績に如実に表れ ている。こうして成績が向上してくると、自分なりの授業 のやり方にもいくらか自信が湧いてきた。

4.2 2年目以降の授業

 2年目に入ると、電気磁気学のノートは昨年度中に完成 していたため本来の部分だけを講義すればよくなり、ある 程度ゆとりのある授業ができる見通しが立った。そのため、

黒板の字も少しはゆっくり書くようにし、説明もややてい ねいにしてみることにした。また、例題も前期からできる だけ取り入れるようにしたため、1年を通じて授業態度も 比較的よく、各試験とも安定した成績をおさめることがで

きた。

 平成9年度に入り、電気磁気学のノーu一 ト講義も3年目 となった。授業にはなれてきたが、最初の緊張感がやや薄 れ、それを学生が敏感に察知したのであろうか、しばらく すると、教室に少しだれてきたような傾向が見られた。ノ ートが早いという声がまた聞かれるようになり、後ろや端 の方では居眠りや私語が増え、こっそりマンガなど読んで いるものなども出てきて、そのつど注意はしてみるものの 次の週には元の木阿弥で、一向に改まる様子がない。予想 通り、テストの成績は、後期にはいくらか持ち直したもの の、表1に示すように1年を通じて惨澹たるものとなっ た。いくらかマンネリ気味になってきた感じもあり、ノー

トも3年目を過ぎると古びて訂正や書き込み個所が増え 使いづらくなってきた。いろいろ手直しをしたいところも 出てきたため、気分を新たに、そろそろ書き直したほうが よいのではないかと思うようになっていた。

 平成10年度の4年生は、2グラ『ズ目の担任となった。

このクラスは2年生のとき電気基礎IIを担当したため、

その後接触する機会がなかったが顔見知りの学生も多く、

当時はよく授業に乗ってきた印象を持っていた。そのため かなり期待していたのであるが、クラスを離れていた1 年の間に学生たちは急に大人びた感じになって以前の純真 さが薄れ、どこかしらけたような雰囲気があって意外にや

(5)

りづらい授業となった。電磁気の授業も4年目に入り、

自分自身、ややマンネリ化してきた事は自覚していたが、

最初のテストの結果も表1に見るように予想以上にひど いもので、新しくノートを作り直すくらいなら、いっその こと根本的に授業の仕方を変えてみた方が良いのではない かと思うようになった。

5.プリントによる授業

5,1 ノートなし授業のアイデア

 いったいに人の話を長く聞くということは、よほど関心 のある内容か、話術が巧みでもない限り、眠気を催してく るものなのだ。これは授業でも同じことで、ノーートを取る という手先からの刺激はあるものの、2時間近く机にじっ と座っているだけでも、若い学生にとってはかなりの苦痛 であるに違いない。講義の中に適当なギャグを入れたり、

脱線したりして学生の興味を持続させる事が巧みな先生方 も居られるようであるが、私自身、性格的にそうしたこと があまり得意ではない。そこで、何とか自分なりの方法で、

学生に参画意識を持たせ、授業に乗ってこさせる方法はな いものであろうかと考えた。

 学生の間からは相変わらず、ノートが多くて早すぎ、授 業中に考える暇がないという意見が出ている。一方ノート の内容は、これ以上簡略にすることも早く進めることもで きない。授業の大半を占めているノート取りの時間を、何 とかできぬものか。そろそろ、今のノートを作り直したい と思っていた頃だし、この機会に、授業のやり方も変えて みる事ができないものであろうか。ちょうど、長らく愛用 してきたワーープロ「松」が、収納していたハードディスクが 破損して使えなくなり、インターネットが使えるパソコン を導入して間もなかったころで、WINDOWS用ワープ

ロに乗り換える必要性に迫られていた。そこで、新しいワ ープロの習熟を兼ねて、ノートの内容を手入れしてプリン トし、コピーを学生たちに配ってはどうかと考えた。そう すれば不評なノート取りの時間が節約でき、そのぶんを考

えたり、理解する方に振り向ける:事ができるであろう。一 週間に講義する量として1日にノート2〜3ページ程度の 内容なら、新しいワープロを覚えながらでも、それほど負 担にはならないであろう。

 学年の中間から、授業のやり方を大幅に変えることには 抵抗もあったが、思いついたことは早く始める方がよい、

それに後期の成績でノート講義との差が出れば、新しいや り方の効果もはっきりするであろうと考え、夏休みに入り、

フリントの準備に取り掛かった。

5.2 プリントテキストの作成

・例3は、磁界のはじめの部分に相当するビオ・サバール の法則と、それにより無限長直線電流の磁界を求めるとこ ろを示す。これは、磁気学では最も重要な基礎関係式なの であるが、式の形は覚えても、応用の仕方が分からず、そ

こから先へ進めない学生が結構いるものなのだ。

 7・1(1)の単元の間1は、重要な基本式である(7,5)

式の意味を理解させるためにとくに作ったが、こうした例 題は、他の教科書にはあまり見当たらぬものである。また、

直線電流による磁界を求める部分(7,1(2))では、

微小長さdlによる式を、微小角dθに関する積分に変換 して計算する必要があるが、教科書ではこのあたりの記述 が親切とは言えず、数学ではすでに習得しているはずの内 容であるが多くの学生がつまずく部分でもあるので、③か ら⑤にかけて、とくに詳しく説明した。また練習問題は、

数式に数値を当てはめればよいだけのもの(悶1)から、

やや応用力を要するもの(問2澗3)をつけた。その中 で問2と闇3の③は、解答時のボーナス点を2点とした,

 この例のように数式と図の多い文章は、手書きするのは 比較的簡単であるが、ワープロを用いて作成するとひじょ

うに時間がかかる。WINDOWS用のワープロ「WOR

D」は「松」に比べ、こうした編集機能、描画機能が整備さ ており、テキストの体裁も格段によくなったが、なれぬ上 に操作上気になるソフトの癖のようなものもあって、最初 のうちは非常に能率が悪かった。その後、数式にはテキス トボックスを使用したり、いったん作った図は専用のファ イルに集めておいて、必要なときにそこから複写して使え るようにするなどの工夫により、現在では、比較的スムー一一一 スに原稿が作成できるようになっている。

例3 ビオ・サバー一一一ルの法則

7.1 ビオ■tサバール(Biot−Savart)の法則

(1) 微少長さの電流による磁界

①直線電流1が流れており、その微少長さをd1とす

 る。

②d1を流れる電流による磁界のの大きさは次式で与え  られる(ビオ・サバールが実験的に確かめた)。

      Idノ

      (7. 5)dH==一一一一sine [A/m]

   4zr2

  ………  ビオ・サバールの法則 r:dHとd1の距離   [m]

θ:rとd1のなす角          1

d7

e /r

dH P

図7.4 ビオ・サバ・一一一・ルの法則

問1 長さ1cmの導体に電流100Aが流れているとするu

①この電流から導体と垂直方向に15cm離れた点の磁   界の大きさはいくらか。

一55一

(6)

②この電流から導体と30.をなす方向に15cm移動

  した移動した点の磁界の大きさと磁束密度はいくらか。

③①の点から導体の長さ方向に10cm移動した点の磁界   の大きさと磁束密度はいくらか。

(2) 無限長直線状電流による磁界

①電流1からa離れた点をP,Pから1に下した垂線  の足をC,Cから下方に距離一1にある微少長さをdl,

 d1とPとの距離をr, rと1のなす角をθとする。

②点Pにおける磁界の大きさはビオ・サバールの法  則から次式で表される。

③ 図から

   Idl

dH= 一一一一 sine

   4zr2

十 oo

1

c

一ノ

dl

H dH

(7.5)

a e /r

一 co

図7,5 無限長直線電流による磁界

一 1tan e = a

      a cos e

∴  ノ= 一・一一一一一一一・==一一一一a

     tan e sin O

dノ   一8i】〔】」2θ 一co82θ       a

 へ  へへ  へ  @            sin2θ

       sin2θ

1

      2za

⑦ 磁束密度は

[A/m]

     4zXIOm7 I

B 一一 u oH==一一rm一一一一  rv

       a      2n        I

==2x×lom 7 一ww

       a

(7.6)

[T] or [Wb/m2] (7.7)

de

  の角θ1,θ2を求めよ。

②電線aの電流によるO点の磁

  界の大きさを求めよ。

③正方形電流による中心0点の   磁界の大きさと磁束密度を求

  めよ。

問1 500Aの電流が流れる無限長導線から10cm離れ

 た点の磁界の強さと磁束密度はいくらか、、

問2 電流値200A,電流間の距離10cmの無限長往復  電流A、Bがある,,

①A,Bのちょうど中間の位置の磁界の強さはいくら

 か。

②A,Bの延長上Bより10cmにおける位置の磁界の

 強さはいくらか。

③A,Bと垂直な平面上で、 ABを底辺とする正三角形  の頂点における磁界の強さと磁束密度はいくらか。

問3 一辺aの正方形の電線に電流1が流れている。

①正方形の中心0に対して右図 {K。、

a el

o

       a

 .●. dノ=:一一一一一一一一dθ

      sin2 e

r8inθ=aより  r==a/8inθ

   Idノ

.1 一一一一sin e

  4zr2

  I    a

=一一一 一一一d e  4n sin2 e

  I

==一一一 sin e d e

 4z a

④ 一辺30c血の正方形の電線に電流100Aが流れてい  るとき,正方形の中心のおける磁界の強さと磁束密度  を求めよ。

 sin2 e

・ 一一一一 sin e

  a2

⑥1=一。。でθ=0,1=+。。でθ=πとなるから無  限長電流による磁界は

H一 轣譚h血・一∫∵評・d・

  1=一co e==O

一τ÷託司1

5.3 プリントによる授業の実際

 ノートをやめて、授業中に考える余裕が出て きたとした ら、次にそれをどうやって有効に活用したらよいであろう か。まず、プリントの内容はどうやって理解させるか。も しこれを私自身で読んでしまったのでは、確かに時間は節 約できるが内容は学生の頭を素通りするばかりで、むしろ 文章としてまとまっている教科書を読んだ方がましであろ う。そこでプリントをなるべく多くの学生一人一人に読ま せてみることとした。さいわいノートは、項目毎に箇条書 きくD.形で整理されている。これをそのままプリントにして、

一人一項目ずつ読ませて行けば、かなりの数の学生が指名 されることになり、ぼんやり内職などしている暇はなくな

るであろう。

 次に、プリントを読ませるにしても、座席の順に読ます とか、こちらから適当な学生を指名して行くとか色々な方 法があろう。そこで、もう一工夫し、最初の一人はこちら で指名するが、その次からは読んだものが順に次を指名す るリレー方式で読ませるようにしてみた。

 さらに、例3の説明でも触れたが、1単元毎にやさしく

(7)

てもよいから、できるだけ多くの練習問題をのせ、一人一 人前に出てその場で解かせることにした。これも最初はリ

レー方式としたが、動機づけの一方法として、正しく回答 したものには問題の難易度に応じて、1〜3点のボーナス 点をテストの得点に加算することとした。

5.4 プリント授業の効果と改善点

 実際にプリント授業を始めたのは夏休みが終わり9月 に入ってからで、前期の残る1ケ月ほどをまず試行し、学 生の反応を見てみることとした。最初簡単な説明をして1 回目の授業を始めたが、当初戸惑いの色があった学生らも 協力的になり、なんとなくぎごちなかった授業もだんだん と軌道に乗ってきた。前期の終わりまでに4〜5回プリン

ト授業を行い、そこで学生たちに挙手をさせて感想を求め たところ圧倒的に好評だったため、後期からもこの方式で 続けることに決めたのであった。

 プリント授業の効果は、その直後に行った前期末試験の 結果に早くも表れ、前期中間および前年度の前期末試験の 結果と比べ平均点が10点以上も向上している。さらに、

後期中間試験ではやや低下が見られたものの、学年末の成 績は今までの最高となり、新しい授業のやり方に意を強く

した。

 一方、授業を続けているうち、いろいろと改善したい点 も出てきた。一つは練習問題の解かせ方であったが、当初 のリレー式にすると、特定の学生らの間で当てまわしをす る傾向が出て解答者が偏ってしまうことだ。このため、後 期の中頃からは挙手をさせ、その中から指名して回答させ るようにした。これにより、成績の思わしくないものもボ ーナス点欲しさに進んで手を挙げて解答するようになり、

彼らの参画意識を高めると共に、無理なく及第点を取らす ことができたのであった。

 次に、各単元について一通りプリントを読ませたら、そ の後さらに要点を解説し、また練習問題についても、正答 を示すと共にできるだけ講評をして、理解を確実にするよ うにした。さらに、新しい章に入ったときは、これから学 ぶ内容の概要を把握させるため、教科書の導入の部分も読 ませるようにした。

 こうした工夫の効果は、表1に見るように、学年末の成 績に如実に表れている。また、4学年からはホームルーム がないが、授業中のやり取りを通じ学生たちとの交流を深 めることが出来、秋の弥生祭の展示や、5年になりてから の就職の指導も比較的スムースに行うことができたという 思いがけない効果も得られた。

5.5 プリント授業における問題点

 このようにほぼ予想通りの効果を上げたプリント授業で あるが、問題点がないわけではない。ひとつはせっかく作 ったプリントに間違いがけっこうあり、学生に指摘されて 間の悪い思いをすることもあることである。これはテキス トに複雑な数式や図が多く、ワープロで原稿を作るのに非 常に手問がかかり、次の授業の分が仕上がると疲れてしま

い、ろくに見直しをしないためのことが多い。この点につ いては、プリントが完成した今年度の授業から点検する余 裕が出てきたが、市販の教科書でも見られるような細かい ミスはなかなか発見できないため、今後の授業で見つけて 直して行くしかないとも考えている。

 つぎに、少しでも多くの学生らにやる気を起こさせるた め、テストの問題はなるべく前で解かせた練習問題をもと に出すこととしたが、これは、彼らに学習の目標をはっき りさせる効果があった反面、授業中に解ける程度のやさし い問題がほとんどであるため、教科書や参考書にあるやや 手応えのある問題をやってみようとしない傾向が出てきた ことだ。就職や、大学の編入試験では、あるていどこれが 不利に作用したかもしれない。また、授業自体がやさしく なった印象があり、力のある学生には少し物足りない印象 を与えたようである。

6.あとがき

 平成11年度からは、プリントも一通りそろったため、

最初からノートは廃止することとした。ただ昨年と違う点 は、プリントは名簿の順に全員に読ませるようにしたこと と、練習問題も、ボーナス点は前の通りとしたが、名簿順 になるべく全員に解かせるようにしたことだ。ただし挙手 をさせて当てる方式も、とくに成績の思わしくない学生に はそれなりの効果があったので、随時行ってみる考えであ

る。

 今までのところ学生の反応はよく、少々疲れるがかなり 活気のある授業になっていると考えている。昨年と違い、

今年の4年生は今まで全く接触の機会がなかったが、授業 でのやり取りを通じて少しずつ学生の名も覚え、互いに親 近感もわいてきて、向こうから声をかけてきたり、別の日 の実験でも、すすんで質問してくるようになるなど予想外 の効果もでている。ただし成績の方は、表1に示すよう に前期中間試験に関する限り改善点が見られない。今後の テストの結果にもよるが、なかなか成績が向上しないと、

苦労してコピーを取り、製本して教材を用意するのも何か むなしいような気がするものだ。昨年度と同じように、学 年の途中から授業の方式を変えた方が、プリント方式の利 点が学生にもよく分かってよかったかもしれない。クラス 自体の雰囲気が影響しているのかもしれないが、この方式 の授業も2年目になり、早くも初めの緊張感が薄れてき たこともあるのではないか、まだまだ改善の余地もあるの ではないかと反省している。教師の授業への取組みに対す る学生たちの反応は実に敏感なものがあり、仕二障の成果の 採算性が常に問われる企業とは別の意味で、教えるという 事の難しさを実感している。

 終わりに、電気磁気学の授業の仕方についていろいろヒ ントをいただいた当学科西山宗弘教授と、学生時代に電磁 気学の奥深さを教えていただいた故名古屋大学教授宇多川 錐久博士に厚く謝意を表したい。

一57一

参照

関連したドキュメント

き垂直偏波、平行なときには水平偏波と言う。我が国の中波ラジオ放送は

き垂直偏波、平行なときには水平偏波と言う。我が国の中波ラジオ放送は

き垂直偏波、平行なときには水平偏波と言う。我が国の中波ラジオ放送は

き垂直偏波、平行なときには水平偏波と言う。我が国の中波ラジオ放送は

き垂直偏波、平行なときには水平偏波と言う。我が国の中波ラジオ放送は

き垂直偏波、平行なときには水平偏波と言う。我が国の中波ラジオ放送は

き垂直偏波、平行なときには水平偏波と言う。我が国の中波ラジオ放送は

き垂直偏波、平行なときには水平偏波と言う。我が国の中波ラジオ放送は