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「数学教育学Ⅰ」の授業におけるアクティブ・ラーニングの試み

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(1)Title. 「数学教育学Ⅰ」の授業におけるアクティブ・ラーニングの試み. Author(s). 早勢, 裕明. Citation. 釧路論集 : 北海道教育大学釧路校研究紀要, 第47号: 107-117. Issue Date. 2015-12. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/7924. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 釧路論集 -北海道教育大学釧路校研究紀要-第47号(平成27年度) Kushiro Ronshu, - Journal of Hokkaido University of Education at Kushiro - No.47(2015):107-118. 「数学教育学Ⅰ」の授業におけるアクティブ・ラーニングの試み 早 勢 裕 明 北海道教育大学釧路校 学校カリキュラム開発専攻 数学分野. A Trial of Active Learning at "Mathematics Education I" Class HAYASE Hiroaki Hokkaido University of Education Kushiro Campus. 「数学教育学Ⅰ」の半期15回の授業で,科目の到達目標を達成することを第一に,学生が実感的な理解を図ることが できるようなアクティブ・ラーニングの試みを行った。1~8回目までを「問題解決の授業づくりの基礎・基本」シーズ ンとして,毎回1つのテーマについて学生相互の議論とテキストによる確認,演習による確かな理解,宿題による定着と 深化をねらった。9~15回目では「問題解決の授業の実際」シーズンとして授業DVD視聴や模擬授業と研究協議を通 して,理論と実践の往還を図ろうと努めた。. 1.はじめに. 3.「数学教育学Ⅰ」のねらい. 近年,大学における授業改善に向けて,アクティブ・ラー. まず,数学教育学Ⅰのねらいについて,シラバスの記述. ニングの積極的な導入が求められている。. から確認する。. 筆者も,数学教育学や算数・数学科教育法に関する授業. (1) 授業内容. については,もとより教員が90分間話し続ける講義型の. 数学教育の理論と実際について,小学校算数科教育法や. 授業では,学生に実感的な理解を図ることは難しいと考え. 中学校数学科教育法Ⅰの内容をより深く掘り下げ,教材研. ている。. 究と授業実践の基礎・基本を学ぶ。. しかし,授業科目には到達目標が明確に存在することか. (2) 授業の目標. ら,延々とグループディスカッションやフィールドワーク. 問題解決的な学習による算数の授業の在り方を理解し,. を継続することも効果的とは捉えていない。科目のねらい. 1単位時間の授業を具体的に構想できる素地を養うととも. に応じて,取り入れることが大切と捉えている。. に,数学教育学の研究対象について把握し,各自の課題意. そこで,自分が担当する科目では,問題解決的に毎回の. 識を明確にする。. 授業を行い,その中で適宜,演習を含めながら展開してい. (3) 到達目標. る。. ① 算数科における問題解決的な学習による本時の学習. 本稿では,3年前期に開設する教科又は教職に関する科. 指導案を作成できる。. 目である「数学教育学Ⅰ」を取り上げ,比較的継続が可能. ② 算数科における問題提示や発問,板書,ノート指導,. なアクティブ・ラーニングの在り方について考察していく。. 話合いの進め方等のポイントを理解し,模擬授業が できる。. 2.研究の目的と方法. ③ 数学教育学の研究対象について具体的に把握し,自. 本研究の目的と方法については,次の通りである。. 身の課題意識を明確にする。. (1) 目的. ④ 教育実習Ⅰ(小学校)における授業実践の目標を明確. 平成25年度から取り組んできた「数学教育学Ⅰ」の授. にする。. 業について,成果と課題を振り返り, 「授業の目標」をよ. 「数学教育学Ⅰ」では,「教育実習Ⅰ」をも見据え,算数. り達成するためのアクティブ・ラーニングの在り方を探る。. 科の授業を分析的に捉え,指導目標の設定や具体的な評価. (2) 方法. 方法,1単位時間の授業の各段階の構築,子どもの反応. 授業への学生の参加の様子,発言や授業感想,レポート. の予想,教師の発問や板書,机間指導等について,具体例. の記述から,継続点や改善点を考察する。. を通した演習と模擬授業を含めた授業に努めている。1単 位時間の授業についてじっくり考えることで,卒業研究の. - 107 -.

(3) 早 勢 裕 明. - 108 -.

(4) 「数学教育学Ⅰ」の授業におけるアクティブ・ラーニングの試み テーマを具体的に探ってほしいという願いである。また, 目前に控えた「教育実習Ⅰ」での授業実践の素地を育むこ とにも繋がると考えている。 なお,評価については,毎回の宿題と小レポート,最終 レポートに授業への参加状況を加味して行っている。. Q算数の「よい授業」とは,どのような授業か? ア 教師主導ではなく子ども主体の授業 イ 子ども相互の意見交流がある授業 ウ 本時の目標が達成された授業 エ 学級全員が参加している授業 オ 黒板とチョークだけでなくICTを活用した授業. 4.「数学教育学Ⅰ」の授業計画 〔図1〕は,第1回目の授業でのオリエンテーション資 料である。 テキストについては, 「算数科 『問題解決の授業』 に生きる『問題』集」(明治図書)と「算数科はじめての問 題解決の授業ハンドブック」(附属図書館リポジトリ)を使 用し,毎回の授業で確認している。 1回目では, 「よい授業とは」と題し,学生から「自分 が考えるよい授業」をブレインストーミング的に出し合わ せ,学習指導要領や数学教育の目的から,今日求められる. カ 一斉指導だけでなく,グループやペアの活動がある授業 キ 一問一答ではなく,子どもが考えている授業 ク 子ども達が考えることを楽しんでいる授業 ケ 自分たちで見つけたり解決できたと思える授業 コ 子どもがもっとやりたい,まだ考えたいと言う授業 サ 子どもが分かった,できたと実感できる授業 シ 多様な考えが出る授業 ス 指導案通り展開する授業. 授業像を明確にする。. 第1回目であるので,レベルも異なり,様々な意見が飛. 2~8回目では,学習指導案を作成するイメージで, 「本. び交うが,私の方で「~さえできればよい授業なの?」と. 時の目標」の設定の仕方, 教師が提示する「問題」の工夫,. 意図的に問い返して揺さぶり,全15回の授業が終わった. 机間指導で教師が行うこと,集団解決での板書構成とノー. 後,どのように考えるかレポートしてほしいとして,排除. ト指導,終末でのまとめと確認問題等について,各回ごと. する考えを示していない。. に焦点を絞って,学生と議論しながらポイントを確認し,. ただ,学習指導要領の「算数的活動を通して」の意味す. 演習を通して確かな理解を図るようにしていく。. る「児童が目的意識をもって主体的に取り組む様々な活. 9~14回目では,8回目までの授業づくりの基礎・基. 動」を通した授業でなければ,今日的な要求には応えられ. 本を踏まえ, 4~5名でグループを編成して, 毎回1グルー. ないこと,本時レベルでは「本時の目標」が達成された授. プずつ模擬授業と研究協議を行っていく。 なお, 9回目は,. 業は最低限の条件であることを確認している。. 「よい授業に学ぶ①」として授業DVDを視聴して研究協. ②「問題解決の授業」とは(2回目). 議を行い,次週から行う模擬授業のイメージをもてるよう. 「児童が目的意識をもって主体的に取り組む授業」が「問. にする。さらに,14回目を終え,附属釧路小学校の教育. 題解決の授業」であると気付かせることがねらいである。. 研究発表会に参加し「よい授業に学ぶ②」として,自分た ちの5回の模擬授業と比較,各自の課題をより明確にでき るようにしていく。 15回目は,すべての授業を振り返り,教員実習Ⅰの各 自の課題や数学教育学研究の関心事について,KJ法的な ディスカッションを通して総括とまとめを行い,最終レ ポートに繋げる。 5.「数学教育学Ⅰ」の授業の実際 次に,全15回の授業について,具体的に述べる。 (1) 問題解決の授業づくりの基礎・基本(1~8回目) はじめに, 1~8回目の「問題解決の授業づくりの基礎・ 基本」シーズンについて概要を示していく。 ①「よい授業」とは(1回目) 算数の授業を構想したり,実践したりする上で,どうし ても確かなものとしたいのが「教師の授業観」である。そ こがズレていると,後の議論はかみ合わず,徒労となりか ねない。そこで, 「よい授業とは,どのような授業か?」 を問い,学生とブレインストーミング的に議論していく。 今年度,学生からは,次のような意見が出された。 〔図2〕わくわく算数6(啓林館)から抜粋. - 109 -.

(5) 早 勢 裕 明 教科書会社の編集者は,決して,教科書を開いて,一字. ③「目標」-「課題」-「まとめ」の一体化(3回目). 一句その通りに子ども達に問いかける授業を想定してはい. テキスト(ハンドブックの Point2・3・4)で,次のことを確. ないことを確認しつつ, 〔図2〕の教科書を提示して次の. 認し,演習に移る展開とした。. ような問題を学生に投げかけた。. 1) 本時の目標は,子どもの具体的な姿(行動)で表し,. Q もし,この教科書を開き,この通りに授業を展開 する教師がいたとしたら,子どもは目的意識をもっ て主体的に取り組めるだろうか?. 達成できたかどうかが判断できるようにする。 2) 本時の課題は,子どもの思いや声を生かして明確 化するが,指導案では「本時の目標」を子どもの 言葉に翻訳して表す。. 学生の反応は,全員ノーであった。 そこで,では「この教科書の指導内容を子どもが目的意. 3) 本時のまとめは集団解決で出された子どもの考え. 識をもって主体的に取り組めるように工夫しよう」と課題. のキーワードに繋げて行うが,指導案段階では「本. を板書し, 「個人での検討」 → 「グループで協議」 → 「各グルー プの考えた流れを板書」→「全体で協議」という授業を展 開した。. 時の目標」と正対させて子どもの言葉で表す。 4) 教師が提示する「問題」は,子どもに「課題」を もたせる(引き出す)きっかけとなるように工夫す. 学生からは,まとめにある「対応する2つの点を結ぶ直. る。〔→次回〕. 線は対称の軸と垂直に交わる」と「その交わる点から対応 する2つの点までの長さは等しくなっている」ことを子ど. 演習では,次の指導内容〔図4〕について,教師用指導. もに気付かせたい,という思いは共通していたが,具体的. 書も提示して,「本時の目標」,「課題」,「まとめ」を考え. な方策に苦しんでいた。それでも, 「左半分を示し,右半. ることに取り組ませた。. 分をかこう」としてはどうか。 「右半分が正しくない図形. 前時に「通分」を学習し,異分母分数のたし算の仕方を. を示して正しく直そう」としてはどうか。などの,考えが. 考える時間である。教育出版の教科書では,課題を「?」 ,. 出された。. まとめを「!」で記載しているので,参考とさせた。. 最後に,私の方で,授業の一つの例としてテキストの事. 「個人で検討」→「周囲の学生と交流」→「数名に板書」. 例〔図3〕を確認した。. →「全体で検討」の展開で複数の考えを比較して理解を図. 〔図3〕算数科「問題解決の授業」に生きる「問題」集(抜粋). - 110 -.

(6) 「数学教育学Ⅰ」の授業におけるアクティブ・ラーニングの試み 1年 ■集合数との比較から,順序数の意味に気付く。 (知識・理解) 2年 ■九九表を調べ,乗法に関して成り立つ簡単な性 質に気付く。(数学的な考え方) 3年 ■数直線の一目盛りの大きさに着目して,数を読 み取ることができる。(知識・理解) 4年 ■角を回転の大きさとしてとらえ,説明できる。 (知識・理解) ■長方形を組み合わせた図形の求積方法を説明で きる。(数学的な考え方) ■( 2桁)÷( 1桁)の計算の仕方を考え筆算の仕方 を説明できる。(知識・理解) 5年 ■整数は観点を決めると偶数,奇数に類別される ことに気付く。(知識・理解) ■整数の除法の結果は分数を用いると常に一つの 数として表せることに気付く。(知識・理解) 6年 ■起こり得る場合を,順序よく整理して調べる と,落ちや重なりがなく考えられることに気付. 〔図4〕小学算数5(教育出版)から抜粋. く。(知識・理解). るようにした。 なお,定着のため,テキスト(ハンドブック p.8)を活用. 時間内に検討と作成が完了しないことが想定されるた. し,次のような「課題」と「問題」の授業について,「本. め,残った問題は宿題としている。. 時の目標」と「まとめ」を考える宿題を課した。. ⑤「問題」づくりの実際(5回目) 前回取り組み,宿題で考え続けた「問題」を学生に板書 してもらい,比較検討しながら「問題」づくりの具体を考 察していく。 「この問題では,子どもが何をやればいいか分からない のでは?」とか,「どちらが正しいかといっても,すぐ分 かるのでは?」,「問題を理解するのに時間がかかりすぎな いか?」など,率直な意見を出し合い検討していく。自分 とは違う問題を積極的にメモしたり,板書を写真に撮る学. ④よい「問題」とは (4回目). 生の様子が印象的な時間である。. この授業はコンピュータ室て行っている。6社の教科書. 問題の例として,テキスト(「問題」集)で,類似した. のPDFデータをパソコンで調べながら, 「問題」の工夫. 問題を参照し,問題づくりの工夫について具体的に確認し. に取り組ませたいからである。. て,9回目からはじまる模擬授業シーズンへのモチベー. 授 業 の 初 め に, 1 5 分 程 度, テ キ ス ト( 「 問 題 」 集. ションを高めるようにしている。. pp.17-28 /ハンドブック Point5)で,決定問題による問題. ⑥「自力解決」から「個人思考」へ(6回目). づくりのポイントを確認したのち,周囲と相談しながら個. この授業では,まず,次のような問いを提示している。. 人で「問題」をつくっていく。 次回に,複数の考えを比較検討するため,作成する問題. Q「自力解決」の時間に,教師は「机間指導」で何を するのか?. の指導内容は共通にしている。今年度は,次の「本時の目 標」に対応する9題とし,1社の教科書のページとともに. 学生からは,フィールド研究などで観察した授業を想起. 提示した。. し,次のような意見が出された。. - 111 -.

(7) 早 勢 裕 明 教科書の活用として,私から「教科書のけんじさんの考. ア つまずいている子どもに個別指導をする。. えがわかる?」と子ども達に問うことを補足した。. イ 悩んでいる子どもにヒントを出す。 ウ 手が止まっている子どもに具体物やヒントカードを わたす。 エ 早くできた子どもに,悩んでる子どもに教えてあげ るよう促す。. 宿題として,台形の求積公式を考える時間について,想 定される子どもの考え,取り上げる考えとその順序,どの ように公式に繋げるかの3点を課し,次回の集団解決と板 書の内容に生かすこととした。. オ ペアや近くの子どもと相談するように促す。 カ 子ども達がどのような考え方をしているか把握す る。 カのような意見は少なく,多くの意見は,つまずいてい る子どもへの個別指導である。確かにこのことも大切であ るが,10人の子どもに1分ずつ個別指導しても10分が 費やされる。教師が提示した問題はあくまで考えるきっか けを与え,みんなで考え合う集団解決こそが重要なはずで ある。 「たくさんの子どもに個別指導していたら時間が足りな くならない?」 「個別指導で全員が解決できたら,みんな で話し合う必要はあるの?」と揺さぶり,テキスト(ハ ンドブック Point6)で,問題解決の授業がうまくいかな い原因の1つに「長すぎる自力解決」があることを知ら せ,途中まででもよい短い時間という「個人思考」(相馬, 2013)としての捉え方を確認している。 特に,個人思考の時間に教師は,集団解決でどの考えを どの順番に,どのタイミングで取り上げるかを決める「指 名計画」を立てることが,集団解決の成否を左右すること を強調している。 平成27年度北海道・札幌市公立学校教員採用候補者選 考検査(第2次検査)の教科等指導法検査の中学校数学の問 題にも「本時の目標の実現に向かう話合いになるように, Aさん,Bさん,Cさんの考えを,どのような順番で取り 上げるか。また,その理由も書きなさい。 」(協同教育研究 会,2015)というものが出されている。 〔図5〕小学算数4上(教育出版)から抜粋. 授業後半の演習では, 〔図5〕のL字形の面積を取り上. ⑦「集団解決」での教師の役割(7回目). げ,次のように投げかけた。. 前回の宿題で課した「台形の求積公式を考える」授業を. 1) 想定される子どもの考えをすべて挙げよう。 2) 集団解決でどの考えをどの順序に取り上げるかを決 めよう。. 例に,どのような変形をどのような順序で取り上げるかを 議論しながら,実際に板書をつくりながら進めていった。 あえて,すべてを白チョークのみで板書し,完成した板. 3) 本時のまとめをどうするか具体的に考えよう。. 書のどこを「黄色」や「赤」でかくかも検討することとした。. 流れは, 「個人で検討」→「周囲の学生と相談」→「数. 公式に繋げるために,台形の上底と下底を色分けすると. 名の学生に板書」→「全体で検討」とした。. 共通点が見えやすいこと,面積を求める式も書かせると共. 学生のすべてが,分割の考えを最初に取り上げ,数値の. 通する数値が見えることなどを確認し,考え方のキーワー. 特殊性からこの場合だけ考えられる等積変形を第二とし,. ドを黄色のチョークで明記したり,赤のチョークで囲みや. 「4×6-2×3」 を最後に取り上げるとしていた。なお,. アンダーライン,矢印をかくと考え方のつながりや強調点. 「もし,4×6-2×3の考えが子どもから出なかったら. が明確になることを実感的に理解させたいと考えたからで. どうするか」という問いかけについては, 「教師が紹介す. ある。. る」「提示する図形の欠け具合を小さくする」 「凹形を練習. 集団解決において,「教師は学級で一番最後に納得する. 問題とする」などのアイディアが出された。. 人になってほしい」 (笠井,2015)という願いを実現すべく,. - 112 -.

(8) 「数学教育学Ⅰ」の授業におけるアクティブ・ラーニングの試み 子どもの考えを全体に問い返し,子ども達で不完全な説明 を徐々に確かなものにするプロセスや教師の意図する大切 なことは子どもに言わせるように仕向け,強調や確認をす ることとしての教師の役割をまとめていった。 最後に,テキスト(ハンドブック Point7・10・11)で集 団解決での教師の働きかけと,板書,ノート指導について 確認し, 宿題として, 第3回目に「目標」 「課題」 「まとめ」 の一体化で取り上げた「異分母分数のたし算」の授業につ いての板書をかくことを課した。 ⑧望ましい「終末」とは+評価問題(8回目) 1単位時間の終末段階について,まとめや確認問題,そ して練習問題もしっかり行うことが,本時の目標の達成に とって不可欠であることを確認し,テキスト(ハンドブッ ク Point8)で,特に「確認問題」の位置付けについて強 調している。 「確認問題」には,大きく次の2つのタイプがある。 1) まとめ → 確認問題 → 練習問題 ・子ども達の理解の程度をより確かなものにする。 ・考え方を説明し合う機会をつくる。 2) 確認問題 → まとめ → 練習問題 ・多様な考えを本時でねらう考えに収束させる。 ・1つの図形で考えたことを一般的なものにする。. 〔図6〕「確認問題→まとめ」の授業例. 1)については,集団解決で出された考えをまとめた後, 確かめてみようという流れで扱う問題で練習に近い。. 〔図7〕新編新しい算数4上(東京書籍)から抜粋. - 113 -.

(9) 早 勢 裕 明 しかし, 〔図6〕の授業例のように,子どもから出され. 数数学教育研究大会の授業のDVD映像を視聴し,付箋紙. た多様な考えを,教師の意図する考えに収束させる1題と. を活用したワークショップ型の研究協議を行っている。. しての「確認問題」もある。小数に直して計算した後に分. 授業DVDを視聴しながら,よさを「黄色の付箋」に,. 数に直すという考えを, 「1/2+1/3」という確認問. 疑問点や改善点を「赤色の付箋」に,1枚1事項でメモし,. 題を通して, 「小数にできない時も,通分して計算すれば. 模擬授業グループで模造紙に付箋を貼りながら,KJ法的. 計算できる」というまとめに自然に繋げることができるの. に研究協議を進め,各グループの協議内容を全体で交流,. である。. 私が助言するという流れである。. 本時の目標の達成には,2つのタイプの「確認問題」を. ②模擬授業と研究協議(10~14回目). 位置付けることが,子どもの確かな理解につながると考え. 10 ~ 14回目は,概ね〔表1〕のような流れで行っている。. ている。. 全体の進行は私が行っている。また,模擬授業と研究協議,. 8回目の授業では,テキストでこれらのことを確認した. 指導助言はすべて録画して授業グループに提供している。. 後,演習として〔図7〕の授業における「確認問題」の作. 〔表1〕模擬授業と研究協議の大まかな流れ. 成を扱った。この場面では,1)の「まとめ→確認問題」 のタイプとして,本時の指導内容が,より確かに理解でき るような「確認問題」をすることとしている。 「個人での検討」→「周囲の学生との相談」→「数名の 学生に板書」→「全体で検討」という流れで行った。. 時間. 40分. 2 研究協議 ① グループごとのワークショップ ② 全体での協議. 15分. ③ 指導助言〔早勢〕 3 次回の連絡等. 箱に6個ずつ入れていきます。ボールを全部箱に入れるに は,何箱いるでしょうか」 の授業における確認問題の作成 を課した。. 備考. 1 模擬授業 ・本時の目標等の説明,資料配付 ※付箋紙配付 35分 ・模擬授業 →授業者以外は児童役+付箋にメモ. 検討後, 〔図8〕と〔図9〕の2つの確認問題の例を紹 介し,宿題として,3年の「ボールが27個あります。1. 授業の流れ ※ビデオ録画. 〔図8〕算数科 「問題解決の授業」 に生きる 「問題」 集から 《問題》 体育館にこんなポスターをはる と効果はあるだろうか? また,体育館よりもよい貼り場 所があるだろうか。 〔図9〕羅臼町立春松小学校・渡邊博胤先生の実践から (2) 問題解決の授業の実際(9~15回目) 次に, 「問題解決の授業の実際-模擬授業と研究協議」 シーズンの概要について示していく。 ①よい授業に学ぶ(1)(9回目) 模擬授業グループの編成と役割分担,授業箇所の選定に ついては,8回目に時間をとって計画している〔図10〕 が,指導案検討の時間を確保しつつ,8回目までの各論を 総合して「45分のよい授業」のイメージをもたせるため に,附属釧路小学校教育研究発表会や試行授業,北海道算. - 114 -. 〔図10〕模擬授業シーズンの計画. ※模造紙配付. ※次回の班.

(10) 「数学教育学Ⅰ」の授業におけるアクティブ・ラーニングの試み 1)指導案作成と授業準備. 〔図12〕各グループが作成する「問題の検討過程」 〔図11〕各自が作成する「授業の構想メモ」. 「本時の目標」の達成について,次のような観点のメモ. 指導案は,各自が作成した「授業の構想メモ」 〔図11〕 をグループで比較検討して作成することとし,グループの 責任を重視している。. がふえ,厳しさを増していくことに心強く感じている。 ◎「本時の目標」は達成されたと言ってよいか。 →そして,目標達成のために,・・・. その際,問題解決の授業において「問題」の工夫が,授. ・教師が提示した「問題」は適切だったか。. 業の成否を大きく左右することから, 「問題の検討過程」 〔図 12〕をまとめるとともに「板書計画」も指導案とセットで. ・「問題」の提示の仕方は適切だったか。. 提出することにしている。これらは,研究協議の際に貴重. ・本時の目標と「課題」は正対していたか。. な資料となり,教材研究や指名計画などの検討の深さを計. ・子どもの考えを取り上げる順番は適切だったか。. り知れるばかりか,本時の目標の達成の可否を決定づける. ・取り上げた考えの比較,関連付けは適切だったか。. 要因も分析できるからである。. ・「まとめ」は本時の目標と正対していたのか。. なお,オフィスアワー等で私への相談には対応している. ・既習事項や指導内容の系統を踏まえているのか。. が,指導案の加除修正は行っていない。. ・算数として教材解釈や指導系統は正しいのか。. 2)模擬授業 模擬授業は, 「本時の目標」の達成を最も重要視して行. 3)研究協議. う。いわゆる教育技術としての表情や声量,姿勢や立ち位. 研究協議は,教育実習Ⅰの前であることから,グループ. 置も一定程度は取り扱うが,算数の授業としての成否を問. 協議を経てからの全体協議としている。. 題とし,枝葉末節のごときには重きを置いていない。. その際,付箋紙を活用したワークショップ型で行い,全. 毎年,学生も、初めのうちは「板書の文字」や「子ども. 員が意見を出しやすい雰囲気をつくり研究協議に慣れるこ. への声掛け」 , 「語り口調」などを付箋にメモしているが,. ともねらっている。. 次第に授業の根幹にかかわる「考えの取り上げ順序」や. ワークショップ型の研究協議のよさについては,次のよ. 「キーワードの確認や強調」 , 「課題やまとめの引き出し. うなとらえがある。(網走教育局,2009). 方」などへの指摘がふえていく傾向が見られている。. - 115 -.

(11) 早 勢 裕 明 B 付箋メモを活用する 「ワークショップ型」 の研究協議 → 各学校でも増えている形態で,参加意識を高める とともに, ポイントを明確にしながら協議できる。. もった事柄を全体でのディスカッションを通して,各自が 明確にしていくのである。 6.「数学教育学Ⅰ」の3年間の成果と課題. ワークショップ後の全体協議では,各グループで話題と. 最後に,平成25年度から平成27年度(中間)までの「数. なった点を交流し,今回の模擬授業のよさと改善点を明確. 学教育学Ⅰ」の取組について,学生の最終レポート等から. にしていく。そして,それらを次回の模擬授業に反映させ. 成果と課題を考察する。. るよう意識化を図っていく。. (1) 取組の成果. 4)指導助言. 各年度の数学研究室に所属する3年生の数と「数学教育. 全体協議が一段落し,残り15分くらいになった時点. 学Ⅰ」の受講者数は〔表2〕の通りである。本授業科目が. で,私の方から指導助言を行う。その際,次の授業研究会. 教科又は教職に関する科目であり選択科目の性質にもかか. 等における「よい助言者の要件」(高橋,2013)を意識して. わらず,数学研究室以外の学生の受講が見られている。な. いる。. お,数学研究室で受講していない学生は教員志望ではない 〔表2〕各年度の学生数と受講者数. 1) 実際に研究授業の中で観察された事実を参照しなが ら,学習指導要領の望ましい具現化の例を示すこと。 2) 実際に研究授業の中で観察された事実を参照しなが ら,校内研究のテーマを推進する具体的なアイディ. 平成25年度 平成26年度 平成27年度. 受講者数 28名 23名 21名. 受講率 100% 90% 95%. ※ H26は数研18名,H27は数研20名受講. アを示すこと。 3) 校内の教師が協力して校内研究のテーマに向かって 研究を進めることの喜びを実感できるようにするこ と。. 所属3年生 9名 20名 21名. (高橋,2013). 学生であった。 以下,学生のレポートから,特徴的なものを示して考察 する。 ①授業計画にかかわって. 指導内容や教材,指導法,子どもの反応例について,学. ・前半の授業については,毎回1つのテーマについて,. 生の理解を深めるよう,基本的な用語やフレーズの確認を. 具体的に考えることができ,指導案の作成の仕方が詳 しく分かった。. 含めて指摘とアドバイスをすること,今回の模擬授業をよ りよくするため「例えば」と具体例や代案を提示すること. ・前半の内容を生かして模擬授業シーズンに入る組立が よい。. が大切と考えて指導助言をするように努めている。 5)模擬授業後の考察. ・できれば各グループ2回授業ができるとよい。 (リベ ンジができるので。). 毎回の授業後,模擬授業グループの学生は,各自が改善 指導案を作成し提出する。また,模擬授業グループ以外の. ・多くの模擬授業を体験することが勉強になるので, もっと回数が多くてもよい。. 学生は研究協議と助言を踏まえて, 「よさと改善点」をレ ポートにして提出する。. 模擬授業の経験をできるだけ多くすることの要望がある. 毎回のレポートについては,増刷して全員の分を全員に. が,授業計画については全員が現行のものでよいと考えて. 配付している。わずか5回の模擬授業と研究協議ではある. いるようである。. が,今年度であれば,毎回16・17名からの「よさと改. ②授業内容にかかわって. 善点」に学べるのである。学校に勤務してからの数年分に. ・算数科はじめての問題解決の授業ハンドブックに沿っ て授業が進みポイントと具体例が分かりやすかった。. 相当するかもしれない。 ③よい授業に学ぶ(2)と総括(附属小研究会と15回目). ・算数科「問題解決の授業」に生きる「問題」集は教育 実習でも活用できそうで参考にしたい。. 5回の模擬授業が終了した時期に開催される「附属釧路 小学校教育研究発表会」に参加し,自分たちの模擬授業と. ・模擬授業はとても緊張したが,自分で気づきもしな かったいろいろな意見が聞けてとても勉強になった。. 比較しながら「よい授業」のポイントを振り返り,痛感す. ・教育実習の事前指導よりも算数の授業づくりや授業の. る機会を位置付けている。. 仕方を深く学べ,実践的な内容だった。. 毎年, 「どうして,あんな授業ができるんですか」,「分 科会の発言も,どうしてあんなに鋭いのですか」など,学. ・研究協議や助言を通して,授業づくりで大切なことを 考えることができた。. 生の声から強烈な刺激を得ていることがうかがえる。 そして,15回目の最後の授業で,これまでの14回の. ・付箋を使った協議はこれからも使っていきたい。. 授業と附属小学校の教育研究発表会を総括し,教育実習に. ・算数の内容や指導の系統が分かっていないことを思い. 向けての各自の目標と数学教育学の研究対象のうち関心を. 知らされた。解説書を熟読する大切さを痛感した。. - 116 -.

(12) 「数学教育学Ⅰ」の授業におけるアクティブ・ラーニングの試み ・授業後の話合いが,だんだんと, 「本時の目標の達成」 にこだわるようになり,授業を観るポイントが少し分. 法Ⅳ」の試み,北海道教育大学釧路校研究紀要釧路論集 第46号,pp.89-98.. かったように思える。 ・よい授業はできないが, ダメな授業は分かる気がする。 教育実習に直結する授業内容であると捉えられているこ とが窺える。各グループ2回授業すること,カンファレン スやマイクロティーチングを取り入れることへの示唆も得 られた。 (2) 今後の課題 今後,次の点について,改善充実を検討する必要がある と捉えている。 ・新カリキュラムに対応するため,小・中学校の両方を 視野にいれた授業構成にする必要がある。 ・教育実習Ⅰの終了後,各自の課題について文献研究を 行う数学教育学Ⅱと授業の実際について深く取り扱う 中学校数学科教育法Ⅳとの関連を再考し,より効果的 な授業内容とする必要がある。 ・数学教育学Ⅰでワークショップ型の研究協議を行い, 中学校数学科教育法Ⅳでは,カンファレンスやストッ プモーションを行うなど,授業研究の仕方についても 学べるよう改善する必要がある。 引用・参考文献 網走教育局, 2009, オホーツク学力向上サポートプラン「授 業研究の栞」 ,オホーツク教育局HP,p.28. 笠井健一,2015,算数科における自分や集団の考えを発展 させる学び合いの授業,初等教育資料№926,東洋館出 版社,pp.14-17. 協同教育研究会,2015,北海道・札幌市の論作文・面接過 去問2016年度版,協同出版,p.44. 相馬一彦,2013, 「考えることが楽しい」算数・数学の授 業づくり,大日本図書,pp.20-21. 相馬一彦・早勢裕明,2011,算数科「問題解決の授業」に 生きる「問題」集,明治図書. 高橋昭彦,2013,算数科授業研究における講師講評に関す る考察-その役割と講師に求められる資質-,日本数学 教育学会誌数学教育学論究臨時増刊,pp.209-216. 坪 田 耕 三・ 金 本 良 通・ 他, 小 学 算 数 4 上, 教 育 出 版, pp.112-113. 坪田耕三・金本良通・他,小学算数5,教育出版,pp.9394. 清水静海・他,わくわく算数6,啓林館,p.14. 藤井斉亮・他,新編新しい算数4上,東京書籍,pp.14-15. 早勢裕明,2014,算数科はじめての問題解決の授業ハンド ブック,北海道教育大学機関リポジトリ. 早勢裕明,2012, 「小学校算数科教育法」の授業における ティーム・ティーチングの試み,北海道教育大学釧路校 研究紀要釧路論集第44号,pp.59-68. 早勢裕明,2014,実践的指導力を育む「中学校数学科教育. - 117 -.

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参照

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