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小学校における「シンクロナイズドスケーティング」の授業の試み

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(1)Title. 小学校における「シンクロナイズドスケーティング」の授業の試み. Author(s). 三守, 絢子; 國井, 彩子; 越川, 茂樹. Citation. 釧路論集 : 北海道教育大学釧路校研究紀要, 第49号: 79-86. Issue Date. 2017-12. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/9864. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 釧路論集 -北海道教育大学釧路校研究紀要-第49号(平成29年度) Kushiro Ronshu, - Journal of Hokkaido University of Education at Kushiro - No.49(2017):79-86. 小学校における「シンクロナイズドスケーティング」の授業の試み 三 守 絢 子1・國 井 彩 子2・越 川 茂 樹3. 3. 1. 釧路市立城山小学校. 2. 釧路町立遠矢小学校. 北海道教育大学釧路校保健体育研究室. An Attempt of “Synchronized Skating” Class in Elementary School MIMORI Ayako1,KUNII Saiko2,KOSHIKAWA Shigeki3 1. Kushiro-City Shiroyama Elementary School 2. 3. Kushiro-Town Tooya Elementary School. Department of Health and Physical Education, Kushiro Campus, Hokkaido University of Education 要旨. 東北海道地区の小学校における冬季の新たな内容による体育授業モデルの一つとして,シンクロナイズドスケーティン グの実践を試みた.本稿では,その単元学習の試みについて報告することとした.本単元を実施した結果,皆でシンクロ ナイズドスケーティングのおもしろさを追求していく学習の中で,スケーティング技能の個人差が吸収できること,滑り を同調させる意識の中で自ずとスケーティング技能の向上が図られること,ならびに仲間と集団滑走の流れを創造的に構 成する過程において協働的な学びが可能となることが,授業の様子や学習カードにおけるふりかえりの記述,さらには本 単元が継続している際の子どもたちの授業以外の様子から認められた.本単元を通して,シンクロナイズドスケーティ ングといった新しいスポーツ文化との出合いを実感しつつ,グループで動きを工夫し,練習して,各自が自分の今もって いる力を存分に発揮する,あるいは今もっている力で新しい集団滑走に挑戦するという活動を通して,自分の可能性を切 り拓いていく子どもの姿がみられた.こうした点から,一人ひとりの内発的なエネルギーに支えられた自発性に基づくス ポーツの学びが具現化されたことが認められた.そして,本単元の学びは,今日の体育学習に求められている,スポーツ を生活内容とするライフスタイルの形成の基盤づくりになる可能性が示唆された.. 1.はじめに. 仲間と競争したりして,より速く滑ることをめざす活動が. 東北海道に位置する釧路管内のほとんどの小学校では,. 一般的に行われている.. 冬季に運動場にスケートリンク(以下,リンクと記す)を. しかしながら,こうしたスケートの学習を6年間行う子. つくり,スケートの学習を行う.釧路市内について述べる. どもは,毎年代わり映えのしない活動を繰り返しているだ. と,例年11月の中旬頃(初霜の降りる前)にリンクの枠組. けで,ただ無邪気に滑走していたり, 「やらされている」. を完了させ,その後教職員等により水まきを毎日行う.そ. 感を強くもってしまったりといった状況にあり,彼らに. うした尽力のもとでリンクを完成させ,新学期が始まる1. とって主体的な学びや学びの深まりとは距離があるように. 月中・下旬にスケートの学習に入ることができる.しか. 思われる.教師にとっても,スケートの学習の単調さや学. しながら,授業でリンクを使用する期間は3週間程度であ. 習の広がりや深まりへのつながりが期待できない実践に. る.リンクの管理は,スケートの学習が終了するまで続け. なってしまうことが,スケートの授業をめぐる悩みとなっ. なければならないので,リンクの造成と維持・管理におよ. ている.. そ3 ヶ月を費やし,実際にリンクを使用する期間は,3週. 一方,ゆとりと豊かさを生活に求める現代の社会的状況. 間程度ということになる.. において,文化を享受する生活を求めることに関心が寄せ. 通常1月中・下旬から行われるスケートの学習は,スピー. られ,いかに生活を創造的にデザインすることができるか. ドスケートを念頭においたものがほとんどである.例え. が人生の課題の一つとされている中で, 「生涯にわたる豊. ば,速く滑るためのスケーティングの仕方を身につけるべ. かなスポーツライフの実現」が学校体育の基調となってい. く練習をし,設定されたトラックコース1周をどれだけ速. る.こうした動勢の中で,体育では,「スポーツを文化的. く滑ることができるようになったかタイムを計測したり,. に享受する力」(佐伯,2006,pp.279-287)を培うことが. - 79 -.

(3) 三 守 絢 子・國 井 彩 子・越 川 茂 樹 めざされ,一人ひとりの内発的なエネルギーに支えられた. 調させる意識の中で自ずとスケーティング技能の向上が期. 自発性に基づくスポーツの学びが求められている(越川,. 待できると考えられる.その際,集団滑走の流れを仲間と. 2017,p.192) .. 創造的に構成する過程において協働的な学びが可能となる. この点を踏まえるならば,スケートの学習においても子. であろう.. どもたちにとってのスケートの意味を考え,彼らが文化的. そこで,東北海道地区における冬季の小学校の体育授業. な営みのモデルとして何をどのように学習するのかについ. における新たな内容の授業モデルの一つとして,6年生に. て工夫することは大切な取り組みであるといえよう.ス. 対してシンクロ・スケートの実践を試みた.本稿ではその. ケートをめぐる内容には,スピードスケート,ショートト. 単元学習の試みについて報告する.. ラック(スピードスケート) ,フィギュアスケート,そし てアイスホッケー等のゲームがある.こうした中で,表現. 2.シンクロ・スケートの単元計画. 運動としての特徴を持つフィギュアスケートの領域に着目. 2.1.子どもの実態. した. フィギュアスケートに属する種目には, 個人のスケー. クラスには,運動への意欲が高く,「毎日,毎時間体育. ティング,ペアによるスケーティングやアイスダンス,そ. でも良い」というくらい体育の時間を楽しみにしている子. して 集団で行うシンクロナイズドスケーティング(以下. どもが半分いる.特に男子は,時間割を配布すると,すぐ. シンクロ・スケートを記す)がある.なかでも,シンクロ・. に体育の回数をチェックしたり, 「ハードル走の次の体育. スケートには,その固有のおもしろさを追求すべく仲間を. は何ですか?」 「バスケットボールはいつですか?」等,. 尊重し互いに協力して取り組む中に豊潤なスケート学習の. 今後の予定も事前に知りたがったりするといった状況であ. 可能性があると考え,今回取り上げることとした.. る.. シンクロ・スケートは,氷上におけるシンクロ競技であ. また,体育の時間になったら,すぐに始められるよう,. る.カテゴリーにより構成人数は異なるが,グループで円. 体育委員を中心に休み時間のうちから準備を積極的に進め. や隊列をつくる等,グループならではのフォーメーション. るクラスである.初めは「準備しておくものありますか?」. の美しさで競われる(梅田・今川, 2004, p.214)競技である.. と聞きに来て,2回目からは前に行ったように自分たちで. 2000年3月に第1回世界選手権がアメリカ(ミネアポリス). 準備を進めるという具合である.体育委員以外の子どもも. で行われている.シンクロ・スケートの始まりは,1950年. 積極的に準備の手伝いをする.体育の授業については, 「内. 代アメリカにおいてアイスホッケーの試合の合間に行われ. 容によって,体育は嫌だ」と思う子どもはいる.比較的身. ていたマーチング・バンドのような団体演技だったと言わ. 体の大きな子どもの中には,器械運動が苦手であると感じ. れている.その後,1984年に38チームが参加し第1回全米. ている子もいるが,自分で補助具をつけて回ろうとした. 選手権が行われ,1990年に国際スケート連盟に正式種目と. り, できるわざを繰り返し行ったりする積極性もみられる.. して認められた(梅田・今川,2004,p.214) .日本におい. スケートについては,数名ほど苦手意識がある子どもが. ては東京女子体育大学に1985年シンクロ・スケートチーム. いるが,その他の子どもは,学校にリンクができる前は,. が結成され,現在いくつかのシンクロ・スケートチームの. 近隣のスケート場に行ったり,学校のリンクが使えるよう. 団体が活動している.今日では以前禁じられていたノーハ. になると毎日滑ったりという姿が見られる.これまでのス. ンド(手をつながない状態)で踊りながら滑ることやリフ. ケートの学習は, 「タイム」への意識が強く,練習を積み. トも取り入れられるようになり,より華やかで見栄えのす. 重ねることにより,いかにタイムを縮めるかという点に目. る競技へと変わりつつある(梅田・今川,2004,p.214).. 標が集中していた.授業の中では「クロススケーティン. こうしたスポーツであるシンクロ・スケートには,団体. グ」や「バックスケーティング」等の滑走技術にも触れ,. で滑りを同調させたり,円や隊列等によるフォーメーショ. それを身につけることに課題を見出す子どももいた。しか. ンの美しさを競い合ったりすることにおもしろさがあると. し,授業ではタイム計測を何度か行うため,また,リンク. 考えられる.このようなシンクロ・スケート特有の魅力を. 使用の最後に行う氷上運動会においてもスケート学習の成. 手がかりに,子どもにとってのシンクロ・スケートの多様. 果としてタイム計測を行うため,子どもたちにはスピード. な意味が芽吹くことを想定した学習には,いくつかの可能. スケートを意識した学習が定常化されていた.. 性があると考えられる.例えば,シンクロ・スケートは, これまでタイム計測を中心とするスケートの授業によるス. 2.2.指導方針. ケート運動との出会いやかかわりを超えて,スケートとい. 本単元では,単元としての可能性や期待される学習成果. うスポーツ文化の一領域に関して体験を通して実感し理解. として,皆でシンクロ・スケートのおもしろさを追求して. を深めていくことにつながるであろう.また,各自が現時. いく学習の中で,スケーティング技能の個人差が吸収でき. 点における滑走能力を手がかりにできることを活かして学. ること,滑りを同調させる意識の中で自ずとスケーティン. 習するように配慮することにより,スケーティング技能の. グ技能の向上が期待できること,ならびに仲間と集団滑走. 個人差が吸収できるように思われる.さらには,滑りを同. の流れを創造的に構成する過程において協働的な学びが期. - 80 -.

(4) 小学校における「シンクロナイズドスケーティング」の授業の試み 表1 単元の時間配分. 待できること,をあげた. こうした点を踏まえて,グループ編成について,1グルー プの人数は男女関係なく7 ~ 8人とした.クラスの中では, 異性に対し意識する子どもも少なくないが,手袋を着用し ているため,その点は緩和されるだろうという認識から異 性による区別をしなかった.また,滑りを得意とする子ど もと苦手と感じている子どもが混ざったグループ編成にす るように心がけた.理由としては,滑ることに苦手意識の ある子どもを得意と感じている子どもがフォローしたり, 教えたりすることを,単元を通して行って欲しいと思った からである.このようなグループ編成の意図を子どもたち に伝え,グループについては,基本的に教師が決めること を子どもに同意してもらうこととした.. 表2 毎時間の課題. 尚,子どもたちには,毎時間記入する学習カードを用意 した.その際,学習の道筋に沿って,前時の子どもたちの 学習状況を鑑みながら,毎時の学習カードには課題と学習 の流れやポイントを提示するとともに,子どもたちが授業 をふりかえり,次時への課題をあげられるように記述ス. 時 間. 課 題. 2 時間目 お互いを知り,友達と動きやスピードを合わ せたり,連結したりしてすべってみよう!. ペースを設けることとした.. 3 時間目 友達と動きやスピードを合わせたり,音楽に 合わせたりしてすべってみよう!. 2.3. 単元計画. 4 時間目 音楽に合わせて,動きを工夫してすべってみ よう!(足を動かさず,腕や体だけで表現する部分を. 単元は,当初氷上運動会を含む9時間扱いで計画してい たが,天候不順等によりリンクの使用が困難な日もあり, 結局氷上運動会における発表を含めて7時間の学習となっ た.シンクロ・スケートには,団体で滑りを同調させたり, 円や隊列等によるフォーメーションの美しさを競い合った. 取り入れてみよう!). 5 時間目 音楽に合わせて,1 番までの演技を完成させよ う!(失敗してもいい!まずは振り付けをしっかり決 めよう!). 6 時間目 音楽に合わせて,1 番を通して演技しよう!(失 敗してもいい!最後まで演じ切ろう!). りすることにおもしろさがあると考え, 単元のねらいを「仲 間の特徴を活かしグループで隊形や滑り方を工夫して滑っ. 7 時間目 一生懸命やった 達成感を味わおう!. てみよう!」とした. 第1時~第3時までは,ねらい1として, 「仲間の特徴を知 り動きやスピードを合わせたり,連結したりして滑ってみ. 3.授業の様子. よう!」という方向目標によって学習を進めていくことを. 3.1. ねらい1の段階. 目論んだ.この過程では,子どもたちそれぞれの今もって. 1時間目では,事前にホームルームで,シンクロ・スケー. いる力(技能,意欲,仲間意識等のまとまり)を互いに認. トとその学習について,子どもたちに伝えた.そして,氷. め合い,集団の力を利用して皆がそれぞれ自らの力を存分. 上でねらいを確認し,はじめに2,3人で動き方やスピード. に発揮し,いろいろなことを試してみることを中心に学習. を合わせて滑ることの例を示した.その際,教師が滑り出. を進めていくことを大切にしようと考えた.. しの足,足の運び等について意識することを子どもたちに. また,第4時以降は, 「仲間の特徴を活かしグループで隊. 伝えた.その後,子どもたちは,四つのグループに分かれ. 形や滑り方を工夫して滑ってみよう!」をねらい2として. てグループの中で,2,3人で動き方を工夫し,動き方やス. 設定し,学習活動をさらに深めることを意図した.この過. ピードを合わせて滑ることを行った.. 程では,グループの肯定的な雰囲気の中で子どもたちが互. 活動の初めは,右左と掛け声をかけながら横に並んで直. いに今もっている力を認め合い,滑り方を工夫したり,. 進することを試していたが,仲間と滑るリズムやスピード. さらにそれを高めるべく挑戦したりする学習の活性化をめ. を合わせることに苦労していた.手をつないだり,互いに. ざした.学習の流れは,表1に示す通りである.また,ク. 肩に手をかけたりといった連結をしたら横に並ぶことが意. ラスの学習状況を踏まえ,毎時間「今日の課題」を示し,. 識しやすいのではないかと考え,子どもたちに教師が直接. 何を特に意識して学習するのかをより明確にすることによ. アドバイスをした.すると,手をつながずに滑るよりそ. り,子どもたちの学習を活性化されることにつなげようと. ろった滑りがみられるようになった.ほどなくすると,各. 考えた(表2) .この部分については,先述したように学習. グループでいろいろな滑り方の工夫がみられるようになっ. カードの中に明記した.. た.4人で手をつなぎ円になって滑る(サークル),2人で. - 81 -.

(5) 三 守 絢 子・國 井 彩 子・越 川 茂 樹 手をつないで回る,4人程の1列になり前の人の肩につかま り滑る,あるいはグループ全員で1列になり等間隔で滑る 等である.その一方で,個人のわざを順番に行うことで動 きの整序にこだわる姿も見られた.例えば,一人ずつ滑走 して1回転スピンをする,あるいは片方の足で滑り,もう 片方の足を後ろに上げるスパイラル等がみられた. 子どもたちの中では,仲間とリズムやスピードを合わせ て滑ることへの意識の芽生えが少しずつ生じているようで あるが,グループによって温度差があるようにも見受けら れた.授業の後半では,仲間とリズムやスピードを合わせ て滑ることへの意識づけを意図して,グループ全員で円に なり回転することや1列になって滑ることを教師から提案 し,滑りを試すよう促した.しかしながら,はじめての経 写真2 ホイール. 験でもあり,活動に戸惑っていたり,興味が向かなかった りといった子どもたちも少なかった.今後意欲的に試した り,挑戦できるようにしたりする提示や場の工夫が必要で. Cグループでは,1人ずつスパイラルをしてから180度転. あると感じた.次回は連結した状態の滑りによりリズムや. 回して一列のラインになり,前の人の肩を持って滑走する. スピードを意識し,滑り方を工夫することに指導の重点を. 動きを練習していた.Dグループでは,ならんでいる人の. 置くことが必要であると考えた.また,音があると,滑り. 間をくぐるインターセクションを試していた.Bグループ. 方の工夫が促されるのではないかと思った.. は,1列の滑走からサークルになる練習をしていた.. 2時間目では,教師からグループで隊形や滑り方を工夫. しかし中には,椅子の補助を借りて滑る子をどのように. し,独自のシンクロ・スケートを考えることを促した後,. グループの滑走に活かしていくのか,課題のあるグループ. 子どもたちは,四つのグループに分かれて隊形や滑り方を. があった.また,まとまってシンクロ・スケートの学びに. 考え,実際に試し,グループ独自のシンクロ・スケートを. 向かうことがまだ弱いグループも見受けられた.それゆ. 創作する活動を始めた.仲間とリズムやスピードを合わせ. え,滑走のアイディアやヒントを示すといった教師のサ. て滑ることへの意識が前時に比べてかなり高まってきた.. ポートが必要であると思われた.. Aグループでは,1列のラインからサークルになるスケー. 3時間目からシンクロ・スケートの曲として選んだ『あ. ティング(写真1)や4人の横隊が向き合い滑ってきて8人. りのままで』を流して,グループで隊形や滑り方を工夫. の横隊になってホイール滑走する(写真2)といった滑り. し,独自のシンクロ・スケートを考える活動を行った.こ. 方を考え,練習を繰り返していた.. の曲を選定した理由は,子どもたちになじみやすいこと, 冬のイメージ,スケーティングの感覚に近いサビのメロ ディー,そして,1番がおよそ1分半でありシンクロ・スケー トを創作する時間として子どもたちには妥当であると判断 したためである. はじめに,フィギュアスケートの競技経験のある支援員 にスケーティング,バックスケーティングやスパイラル, スピン等を紹介してもらい,その後各グループに分かれて 活動を始めた.Aグループでは,はじめにリンク場で熱の こもったミーティングが始まり,動きを確認して活動に 入っていた.Cグループでは,前時に練習していた動きを 確認することから始めていた.Bグループでは,新しい集 団滑走(例えば,静止している仲間の間をスラロームで抜. 写真1 1列のラインからサークルへ. けて1列になる等)を支援員のアドバイスを受けながら始 めた.グループの中には,練習の工夫として椅子を置いて その間を滑走するといった工夫もみられた(写真3) .. - 82 -.

(6) 小学校における「シンクロナイズドスケーティング」の授業の試み 全体として,かなりグループの結束力が増し,集団滑走 に対して意識が高まってきた.子どもたちなりに動きを同 調させることを意識的に行う傾向が強くなってきた(写真 5).前時までの学習に向かう意欲がさらに高まり,子ども たちの学習の熱気や勢いが増幅されている様子が認められ た.こうした様子は,前時のグループ紹介において,各グ ループは自信のある滑り方だけしか紹介していなかったに もかかわらず,互いにどんなことをしているのかがわかっ たことにより,互いに刺激を受けてグループ学習に対する 集中力が増す方向にグループの活動の紹介が作用したこと によるものであると推察された.. 写真3 椅子を利用した学習環境の工夫 また,Dグループでは,手をつないで横並びで滑走し, 途中でしゃがんで滑走し,再び立ち上がるといった滑りを 考え練習していた.滑走し,それをグループでふりかえ り,気づいたことを確認した後にまた滑走するといった学 習が,どのグループにも随所に見られた.グループごとに メンバー全員で滑りをシンクロさせたり,組み合わせたり といった滑走の工夫とその試行がかなり濃密な形で出てき ていた. 3.2. ねらい2の段階. 写真4 部分練習の繰り返し. 4時間目は,四つのグループに分かれて隊形や滑り方を 考え,実際に試し,グループ独自のシンクロ・スケートを 創作する活動をした.授業中盤では,他のグループの滑走 を参考に,今後に活かす,互いの良さを発見する,あるい は自分たちの工夫や成果をみてもらうために,今練習して いるグループ滑走をグループ別に紹介する時間を設けた. しかしながら,各グループはいろいろな滑走を考え,試 し,挑戦しているにもかかわらず,自信のある滑り方だけ を紹介するにとどまっていた. 5時間目には,四つのグループに分かれて隊形や滑り方 を考え,実際に試し,グループ独自のシンクロ・スケート を創作する活動をした.各グループが集団滑走の隊形や滑 写真5 動きの同調への挑戦. り方の組み合わせや順番を考えたり,確認したりして,主 体的・意欲的に取り組んでいた.Bグループは,打ち合わ せる時間を取りすぎている感があったため,教師がスケー. 6時間目には,四つのグループに分かれて集団滑走の隊. ティングに入るようアドバイスをした.Dグループは,グ. 形や滑り方の練習をした.本時の中盤で1グループずつ通. ループのまとまりが少し弱いために教師がサポートに入っ. して滑走することになっていたので,どのグループも熱心. た.Cグループは,隊形や滑り方の組み合わせを確認し,. に動きを確認し,練習を繰り返していた.BグループのA. 曲に合わせて通して滑走することができた.その後,子ど. さんは,教師からのアドバスを受けつつ,徐々に一人で動. もたちの間で細かなところを詰めていくことを互いに確認. く時間を増やしていった.Cグループでは,カウントを取. し,細部の動きや滑り方を何度も練習していた.Aグルー. りながら動きを合わせる活動が顕著になった.Dグループ. プは,隊形や滑り方等は大まかに決まり,部分練習を繰り. では,子どもたちの中から「もっと美しさにこだわってみ. 返していた.B, Cグループも部分練習を繰り返していた(写. よう!」といったたぐいの仲間への言葉かけが聞こえた (写. 真4) .. 真6).. - 83 -.

(7) 三 守 絢 子・國 井 彩 子・越 川 茂 樹 一緒に演技を考えることがめんどくさかったが,それが楽 しかった」といった感想や,成果として「根気と集中力が アップした」等,7時間目のまとめとして学習カードに, その時々に思ったことや感じたことを素直に表現している 子どももいた.はじめの段階において,子どもたちの中に は「できるだろうか」や「できるわけない」といった不安 やあきらめの思いを抱いていた子もいて,グループの中で もめたり,練習してもなかなかうまくいかなかったりと いった状態にストレスを感じる子もいた.しかし,グルー プで協力したり,試行錯誤したり,挑戦したりする中で, やり切った,力を出し切ったという達成感を感じられたこ とがふりかえりの記述が多くみられるようになった.つま り,子どもたちの中で「達成感」とは,「できたという結 写真6 細かな動きへのこだわり. 果の表層的な感じ」ではなく, 「自分を出せたという深層 の実感」 であるということが今回の実践からうかがわれた.. Bグループは,入念に滑り方の確認をしていた.通しの. 学習のふりかえりカード(表3)は,45分の授業の中で. 練習では,どのグループもおよそ1分30秒の時間のシンク. はなく,授業後の休み時間等を使って記述させていた.中. ロ・スケートの構成をまとめ,滑ることができていた.後. には,自主的に家に持ち帰り,その日のことをじっくり思. 半では,教師の指示によりグループの一人がコーチ役とな. い出して,図を加えながら詳細に記述してくる子もいた.. り,グループの動きを客観的に外側から見てアドバイスを. 子どもたちの中には,各自の学習カードにおいて,自分の. する活動を行っていた.しかしながら,コーチ役の子ども. 出来栄えだけではなく,グループとしての活動のふりかえ. がアドバイスをしてグループの演技の向上に活かすまでに. りをしている子もいた.例えば,スケートの苦手な仲間を. は至っていないグループもあった.とはいえ,どのグルー. どうしたらフォローできるかといったことや,仲間の成長. プも滑りの細かな点に配慮するようになってきた。例え. を喜ぶ様子を記述している子どももいた.. ば,よりダイナミックに美しく滑るようにする工夫を,教 師の助言から見いだしたり,自分たちで動きに修正を加え. 4.まとめ. たりといった活動がみられた.加えて,さらに新しい滑り. 本単元では,単元としての可能性や期待される学習成果. 方に挑戦する様子もみられた(写真7) .. として,皆でシンクロ・スケートのおもしろさを追求して いく学習の中で,スケーティング技能の個人差が吸収でき ること,滑りを同調させる意識の中で自ずとスケーティン グ技能の向上が期待できること,仲間と集団滑走の流れを 創造的に構成する過程において協働的な学びが期待できる こと,をあげた. スケーティング技能の個人差が吸収できることについて は,例えば, 「Bさんはスケートが苦手なので,Cさんと手 をつないで滑り,スムーズにできた」というAさんの記述 にみられるように,各グループの中で,滑走の仕方を工 夫する際に,各自の滑走の仕方や動きの同調の仕方におい て,互いの力量を踏まえて工夫していたことからその可能 性が認められた.また,滑りを同調させる意識の中で自ず. 写真7 グループの特徴を活かした滑走. とスケーティング技能の向上が期待できることについて. 7時間目は,単元のまとめとして氷上運動会においてグ. は,複数の子どもの学習カードから「スケートがうまくなっ. ループごとに発表した.運動に対して苦手意識のある子. た」や「今までより上手になりました」といったふりかえ. どもの一人は,これまでの学習のふりかえりとして,最初. りがみられたことや実際の滑走の様子から,本単元の学習. は, 「そんなことできるか!」と記述していたが,「チーム. を通じて,結果としてスケーティング技能の向上が図られ. の団結力があればできる!」や, 「スケートをする時間が. たのではないかと推察される.そして,協働的な学びにつ. 楽しみになった」と学習カードの記述の内容に変化がみら. いては, 「協力することができた」 , 「Dさんが不安と言う. れた.また,他には,「仲間がいればいるほど,演技の良. から次の時間何とか自信を持たせるようにがんばる」 , 「苦. さがアップすることがわかった」という一方で,「仲間と. 手な人に合わせながら声を出してやることができた」,さ. - 84 -.

(8) 小学校における「シンクロナイズドスケーティング」の授業の試み らには「転んでしまって途中で止まっても周りがフォロー し合ってできるように何回も練習した」といった学習カー ドにみられるふりかえりの記述から,本単元において充分 に実践されていたと考えられる. 今回の単元学習において,シンクロ・スケートといった 新しいスポーツ文化との出合いを実感しつつ,グループで 動きを工夫し,練習して,各自が自分の今もっている力を 存分に発揮する,あるいは今もっている力で新しい集団滑 走に挑戦するという活動を通して,自分の可能性を切り拓 いていく子どもの姿がみられた.また,学習カードを自主 的に家に持ち帰り,図等も挿入し詳細に記述するといった 子どもの姿もあった. まさに, 子どもたちが自分たちにとっ てのスケートの意味を体験的に学び,彼らの文化的な営み のモデルとして経験されたと考えられる.すなわち,シン クロ・スケートというスケート文化と出会い,そのおもし ろさを追求する営みをする中で,魅力にはまり自発的に活 動する経験自体が,貴重な文化的実践となって子どもたち の記憶に刻まれたと推察される.ここに,一人ひとりの内 発的なエネルギーに支えられた自発性に基づくスポーツの 学びが具現化されたことがうかがわれた.そして,本単元 の学びは,今日の体育学習に求められている,スポーツを 生活の内容とするライフスタイルの形成の基盤づくりにな る可能性が示唆された. 以上より,今回のシンクロ・スケートの実践には,東北 海道地域における小学校体育の冬季の新たな授業モデルと して可能性が認められた.今後さらに実践を重ね,シンク ロ・スケートの授業の質を高めていきたい. 付記 本研究は,平成27年度北海道教育委員会「子どもの体力 向上パワーアップ事業(体育授業改善テクニカルサポート 事業) 」の一環として行われた. 文献 越川茂樹(2017)体育・保健体育科に求められる「能力」 を考える.玉井康之・北海道教育大学釧路校教師教育 研究会編:子どもの“総合的な能力”の育成と生きる力, 北樹出版:東京,pp.188-193. 佐伯年詩雄(2006)これからの体育を学ぶ人のために.世 界思想社:京都,pp.279-287. 梅田香子・今川知子(2004)フィギュアスケートの魔力. 文藝春秋:東京.. - 85 -.

(9) 三 守 絢 子・國 井 彩 子・越 川 茂 樹 表3 記述された「学習カード」. - 86 -.

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