<研究ノート>
プログラミング学習における反転授業の試み
―アンケート調査から見えてきたもの―
工 藤 喜美枝
1.はじめに
昨今,教育効果を高めるために,広く「反転授業」が取り入れられるようになってきた。反転 授業は,学生が事前に動画を視聴したり資料を熟読したりしてくることで授業時の説明を省き,
ディスカッションやグループ学習などに多くの時間を割り当てて教育効果を高めようとするもの である。特に,オンライン学習と対面学習を併用している方式は,ブレンド型学習と呼ばれるこ ともある。
本学経済学部の情報教育としてインテンシブプログラム(情報)があり,現在,筆者はその中 のコンピュータ演習Ⅰとコンピュータ演習Ⅱを担当している。コンピュータ演習は2005年より 担当しているが,2008年まではJavaScript(Webページ作成の中での取り扱い,4コマ程度)
か,Excel VBA(8コマ程度)を指導してきた。2009年度より,コンピュータ演習Ⅱで全コマ
Excel VBAを指導するようになった。Excel VBAは,ビジネスや大学で使われているExcelを さらに高度に使いこなすための機能である。VBAは,Visual Basic for Applicationsというプログ ラミング言語で,面倒な環境設定など必要とせず,Excelさえあれば誰でもすぐに使えるのが大 きな特徴である。したがって,授業以外でもExcelが使える状態であれば,簡単に取り組める。
コンピュータ演習Ⅱの授業方法としては,その時間の前半を解説に充て,後半を演習問題に取 り組む形式をとってきた。その演習問題は,
(A)全員が解答すべきもの(授業時間内に作成できる)
(B)できれば全員が解答すべきもの(学生の理解・作業速度によって時間がかかるもの)
(C)授業やテキストの内容は逸脱していないが,やや複雑なためよく考えなければできない もの(希望者のみ挑戦する)
の3つに分けている。演習問題の解答例については,(A)は授業後当日中にサポートページ1
1 履修者のみがアクセスできる。授業予定やお知らせ,参考となるサイトなどのリンクなどを掲示し,授業 で使用する教材や解答例もダウンロードできるようにしてある。
に掲載し,(B)は提出期限後にサポートページに掲載している。(C)は,メール添付により提 出した学生に対して,返信メールでアドバイスをしながら解答を導き出せるよう指導している。
メールのやり取りは,数回にわたることも多い。
このような授業方法を長年続けてきたが,(A)の問題を授業時間内に終えることが年度によ りばらつきが感じられ,近年終えられないことの方が多くなってきた。また,(C)の問題を提 出する学生が少なくなってきた。そのため,学生の学習意欲を喚起し授業方法を改善する必要性 があると考え,その方策を検討することにした。
学習に対する積極性や効果を引き出すアプローチにも様々なものがあるが,プログラミング教 育にも反転授業を行って効果を上げている例が多くなってきた。そこで,筆者の授業でも反転授 業を取り入れることを検討した。次年度から本格実施することとし,2017年度は反転授業を一 部試みることにした。
コンピュータ演習Ⅱは,後期配当の科目であるので,開講時に反転授業を実施することを学生 に周知できた。ただし,シラバスには記載していない内容であり,授業方法を変更することに対 して学生がどのように受け入れるのか不明であった。そのため,学生に負担のかからないように 留意して実施した。
授業最終日にアンケートを行って集計したところ,意外にもシラバスに記載のない事前学習に 対する否定的な意見はなかった。
2.反転授業の導入
2.1.実施した授業の概要
インテンシブプログラム(情報)の授業は,前期にはコンピュータ演習Ⅰ・Ⅲ,後期にはコン ピュータ演習Ⅱ・Ⅳが開講されている。筆者が担当しているコンピュータ演習Ⅰ・Ⅱは,いずれ も水曜1限・2限の2クラスである。コンピュータ演習Ⅰの前半はAccessを使用したデータ ベースを学び,後半にExcel VBAを利用したプログラミングを学ぶ。ここでは,順次実行・変 数・分岐・繰り返しのプログラミングにおける基本的な内容のみを扱っている。
後期のコンピュータ演習Ⅱでは,Excelのワークシートを活用したExcel VBA本来のプログラ ミングとなるが,プログラミングコードを記述するためのエディター(Visual Basic Editor)の 使い方やプログラムの実行方法などは前期のコンピュータ演習Ⅰで身についている。これまで も,授業に臨むにあたっては事前にテキストを読んでくるように指導していたが,実際に読んで きたかどうかの確認は行っていなかった。コンピュータ演習Ⅱの第1回目は,ガイダンス,コン ピュータ演習Ⅰの復習で,第2回目から本格的なExcel VBAの授業に入る。そこで,第2回目 から10回目までの授業(途中第5回目は除く)で,事前確認動画を利用することにした(表1 の※印)。
2.2.反転授業の準備
反転授業では,あらかじめ動画などを視聴することが前提であることが多い。今回の反転学習 においても動画視聴を導入することにした。ただ,その動画を作成するには手間と時間が必要で ある。きちんとした準備ができなければ,反転学習を実施するのは難しい。
動画作成は,8月から開始した。動画を作成するにあたり,まず,作成方法と視聴方法をどの ようにするか検討した。動画を作成するにはソフトウェアが必要であるが,予算がないのでフ リーで使える「AG-デスクトップレコーダーVer1.3.1(フリー版)」を利用することにした。作 成にあたっては,音声は集録しなかった。これは,登校時に交通機関の中で視聴する可能性も考 慮したからである(以後,音声はないので視聴を閲覧と表記する)。収録時間は,学生に負担が かからないよう数分程度にした。
動画の保存と閲覧は,学生になじみのあるYouTubeを利用することにした。動画はファイル サイズが大変大きく,筆者が運営しているサイトにはとても保存することはできない。YouTube ではそういった保存の心配が不要である。また,不特定多数ではなく,URLを知らされた人の みが視聴できる限定公開にすることができる。さらに,視聴が終わった後ほかの動画を自動で開 始する機能も停止できるので,授業で扱うには大変都合が良い。
サポートページに掲載できるよう,YouTubeにおけるURLのリンクを張ったWebページを 新たに作成した。
表 1 授業内容
回 数 内 容
第1回目 ガイダンス、コンピュータ演習Ⅰの復習(分岐処理と繰り返し処理)
第2回目※ VBAの基本文法
第3回目※ セルの操作(1)セルに対する処理の基本 第4回目※ セルの操作(2)セルに対する応用的な処理 第5回目 問題練習
第6回目※ 関数の利用
第7回目※ セルの操作(3)セルに対する発展的な処理 第8回目※ シート・ブックの操作
第9回目※ デバッグとエラー処理、変数と定数 第10回目※ マクロ記録の利用
第11回目 ユーザーフォームの利用(1)
第12回目 ユーザーフォームの利用(2)
第13回目 問題練習 第14回目 試験 第15回目 総まとめ
2.3.反転授業の実際
後期「コンピュータ演習Ⅱ」の第2回から第10回までのうち8回の授業で実施した。
事前確認動画は,前回授業日の翌日から閲覧できるようにサポートページにセッティングし た。学生には,従来どおりのテキストを読んでくることと,動画を見てその内容を理解してくる よう指導した。また,プログラムコードが表示されたら,実際に自分で書いて実行してみること も理解につながることを併せて指導した。
授業当日は,授業内容の説明を簡単に行い,残りの時間を演習問題に当てた。動画を見てきた かどうかは口頭による確認だけで,テストなどによるチェックは行わなかった。
図1は,第7回の事前確認動画である。音声はなく,文字上をマウスポインタでなぞり,説明 を読んでいくような感じで作成している。図2は,閲覧開始してから約1分後の画面である。画 面右側のVisual Basic Editorが1行ずつ実行しているところを表している。右向きの矢印が表示 された網掛け部分(実際は黄色)がこれから実行するコードである。また,このとおりにプログ ラムコードを入力・実行してみるとより一層理解が深まる。
図 1 第 7 回の事前確認動画
このような事前確認動画を閲覧することによって,授業でどんな内容を行うのか知ることがで きる。また,どんなプログラムコードを書くのかがわかり,どのように実行されるのか理解でき る。これらが,数分の動画の中に凝縮されている。動画時間が短いのであまり負担にならず,何 回も繰り返し見ることができるはずである。
3.アンケ―トの概要
3.1.アンケートの目的
シラバスに未記載の事前学習(動画閲覧)を実施したことについて,学生はどのように思って いるのか,学生の負担はどの程度のものかを知るのが目的であった。また,実施したことの効果 を確認して次年度への足掛かりとするために学生にアンケートを実施した。
3.2.アンケートの実施方法
アンケートは,授業最終日に実施した。形式は紙ベースではなく,Excelファイルを配布し記 述してもらった。記述完了後は,PC教室にあるWingnetというシステムのレポート提出ボック スに提出してもらった。アンケート集計にはVBAの機能を使用した。
対象者は,コンピュータ演習Ⅱを受講している,水曜1限・2限の学生全員である。無記名で はあるが,Wingnetのシステム上,自動的に学生の学籍番号と氏名が提出ファイルに付加され る。もちろん,氏名などは集計には利用しない。水曜1限は,在籍数10名全員提出。水曜2限 は,在籍数4名のうち1名欠席,出席した3名全員の回答が得られた。合計13名にアンケート を実施して,13名の回答を得られた。回収率は100%である。
図 2 閲覧開始 1 分後の画面
4.アンケートの内容と集計結果
4.1.アンケートの内容
Excelファイルのワークシートに,質問を18問用意した。シートの上部にはシラバスには記
述のない事前学習を指示したことの理由を書き,アンケートを依頼する文章を載せた。回答は,
択一式とし,▼をクリックすることで回答できるようにした。そのほかに自由記述の欄を設けた
(図3)。
具体的なアンケート内容は次のとおりである。
表 2 アンケートの設問と選択肢
設 問 選択肢
1 これまで(中高・大学の他の授業で)反転授業を受けたこ とがありますか?
1 ある 2 ない
2
確認用動画を閲覧しましたか? 1 まったく閲覧しなかった 2 あまり閲覧しなかった 3 半分くらい閲覧した 4 ほとんど閲覧した 5 すべて 閲覧した
3
設問2で,「まったく閲覧しなかった」「ほとんど閲覧しな かった」を選択した人に聞きます。その理由は何ですか?
この後,まったく閲覧しなかった人は,16番へ飛んでく ださい。
1 面倒だった 2 なんとなく 3 閲覧した人に内容を聞 いたから 4 知っている内容なので 5 時間がなかった
4 閲覧に用いた端末は主に何ですか? 1 大学のPC 2 家のPC 3 スマホ 4 タブレッ ト 5 その他
5
閲覧に対する負担はありましたか? 1 とても大変だった 2 少し大変だった 3 どちらとも いえない 4 あまり負担ではなかった 5 負担は感じな かった
6
音声はついていませんでしたが,どう思いましたか? 1 全くわからなかった 2 かなりわかりにくい 3 どち らともいえない 4 かなりわかりやすい 5 とてもわか りやすかった
7
コンテンツのわかりやすさはどうでしょうか? 1 全くわからなかった 2 かなりわかりにくい 3 どち らともいえない 4 かなりわかりやすい 5 とてもわか りやすかった
8 コンテンツの内容はどうでしたか? 1 つまらなかった 2 あまり面白くなかった 3 どちら ともいえない 4 まあまあだった 5 とても良かった 図 3 アンケート画面
反転授業の経験あるか
ある 46%
ない 54%
どのくらい閲覧したか
ほとんど 閲覧した あまり閲覧 54%
しなかった 23%
半分くらい 閲覧した 15%
すべて 閲覧した 8%
9 コンテンツの長さはどうでしたか? 1 長すぎる 2 やや長い 3 ちょうど良い 4 やや短い 5 短すぎる
10 授業開始時に説明をしましたが,その長さはどうでした か?
1 説明が長い 2 少し長い 3 どちらともいえない 4 もう少し説明が必要 5 説明が足りない
11
閲覧したときの授業の理解度はどうでしたか? 1 ちっともわからなかった 2 あまりわからなかった 3 どちらともいえない 4 少しは理解できた 5 よく理 解できた
12
閲覧しなかったときの授業の理解度はどうでしたか? 1 ちっともわからなかった 2 あまりわからなかった 3 どちらともいえない 4 少しは理解できた 5 よく理 解できた
13 閲覧したことによってこの科目についての学修意欲が高ま りましたか?
1 意欲はわかなかった 2 あまり意欲はわかなかった 3 どちらでもない 4 少し高まった 5 高まった 14 閲覧したことによってこの授業に参加するのが楽しくなり
ましたか?
1 楽しくなかった 2 あまり楽しくならなかった 3 ど ちらでもない 4 少し楽しくなった 5 楽しくなった
15
確認用動画は授業を受ける際に役に立ちましたか? 1 全く役に立たなかった 2 あまり役に立たなかった 3 どちらともいえない 4 少しは役に立った 5 とても 役に立った
16 事前確認動画はあったほうが良いと思いますか? 1 不要である 2 ないほうが良い 3 どちらともいえな い 4 あったほうが良い 5 必要である
17
シラバスには書いてなかったことを実施しましたが,その ことについてどう思いますか?
1 やらないほうが良い 2 ちょっと嫌だった 3 どちら ともいえない 4 別に気にならなかった 5 必要であれ ばやるべきだ
18 感想・意見・その他,あったらぜひ書いてください。
4.2.集計結果
集計結果は,次のようになった。
図 4 図 5
閲覧しなかった理由
なんとなく 33%
時間が なかった
67%
端末は?
大学のPC 84%
家のPC 8%
スマホ 8%
閲覧に対する負担
少し大変 だった 31%
あまり負担 ではなかった 31%
どちらとも いえない 23%
負担は感じ なかった 15%
音声について
どちらとも いえない 54%
かなりわかり やすい 31%
とてもわかり やすかった 15%
コンテンツのわかりやすさ
かなりわか りやすい 54%
どちらとも いえない 31%
とてもわかり やすかった 7%
かなりわかり にくい
8%
コンテンツの内容
まあまあ だった 61%
あまり面白 くなかった 23%
どちらとも いえない 8%
とても良かった 8%
図 6 図 7
図 10 図 11
図 8 図 9
コンテンツの長さ
ちょうど良い 69%
やや長い 23%
やや短い 8%
授業開始時の説明の長さ
どちらとも いえない 少し長い 46%
39%
もう少し 説明が必要 15%
学習意欲が高まったか
どちら でもない
77%
あまり意欲は わかなかった 15%
少し高まった 8%
楽しくなかったか
どちら でもない
77%
少し楽しく なった 15%
あまり楽しく ならなかった
8%
閲覧したときの理解度
少しは理解 できた
69%
どちらとも いえない 23%
よく理解 できた 8%
閲覧しなかったときの理解度
どちらとも いえない
62%
あまりわか らなかった 23%
少しは理解 できた 15%
図 12 図 13
図 14 図 15
図 16 図 17
役に立ちましたか?
少しは役に 立った
92%
とても役に 立った
8%
動画はあったほうが良いか
あったほう が良い
54%
どちらとも いえない
46%
シラバスにはなかったことの 実施については?
別に気に ならなかった
62%
必要であれば やるべきだ
38%
4.3.アンケートから見えてきたもの
【図4】「これまでに反転授業の経験があるかどうか」は,ほぼ半々であり,予想より経験者が多 かった。
【図5】「どのくらい閲覧したか」では,まったく閲覧しなかったのは0で,すべての学生が閲覧 したことになる。62% の学生がほぼきちんと閲覧していたことがわかる。
【図6】あまり閲覧しなかった学生は3名であったが,その理由では,時間がなかったのが2名 で,忙しい様子がうかがえる。
【図7】閲覧した端末は,ほとんどが大学のPCであった。もっとスマホが多いことを予想して いたので,意外であった。
【図8】閲覧に対する負担は,回答が分散している。これは,学生それぞれの事情によるもので あろう。ただ,予想より負担を感じていた学生は少なかった。
図 18 図 19
図 20
【図9】音声については,どちらともいえない,とわかりやすいが半々であった。登校時の車内 においてスマホで閲覧することを考慮して音声を付けなかったのだが,特に問題なかったよう である。
【図10】コンテンツのわかりやすさは,わかりにくいと答えたのは8%(1人)だけであった。
音声があればわかりやすかったのかもしれない。
【図11】コンテンツの内容は,面白くなかったのが23% であった。もう少し興味を引くような 内容にする必要がありそうだ。
【図12】コンテンツの長さは,ちょうどよいようであった。実際には,1分弱から6分弱程度ま での短時間であった。
【図13】授業開始時の説明の長さは,もう少し説明を必要としていたのが15% であったが,逆 に少し長い,と回答していたものがあり,学生によって異なっている。動画を閲覧してきてい れば長いと感じ,閲覧してこなければもう少し説明を必要とするのだろうと推測する。
【図14】【図15】閲覧したときの理解度は,理解できた,と答えたのが77% であった。それに対 して,閲覧しなかったときの理解度はその逆で,理解できたのが15% しかいなかった。これ らのことから,事前確認動画を閲覧することは授業の理解度を助けるものであるといえるだろ う。
【図16】【図17】学習意欲が高まったか,については,高まったのが8% しかおらず,楽しく なったか,については,楽しくなったのは15% であった。これらについては事前確認動画作 成について改善の余地が大いにある。
【図18】役に立ちましたか,については,全員役に立ったと回答しているので,事前確認動画の 閲覧を指示したことは間違っていなかった。
【図19】動画はあったほうが良いか,については,あったほうが良いが半分で,残りがどちらと もいえないと回答している。ない方が良いとは誰も回答しておらず,前述の役に立ったかの回 答と合わせて,動画はあったほうが良いのであろう。
【図20】最後に,一番危惧していたことだが,シラバスに記述がなかったことの実施について は,否定的な回答はなかった。むしろ,必要であればやるべきだ,の回答が4割近くもあっ た。授業開講後時間が経ってからシラバスに記載のないことを実施したならば否定的な意見も 出たかもしれないが,授業開講時に宣言して指示を出したので受け入れられたのかもしれな い。または,シラバスをきちんと読んでいないことも考えられる。中村(2017)によれば,シ ラバスを読んでいるかというアンケートに対して,1年生では,
3分の2以上の学生が「半分程度読んでいる」から「ほとんど読んでいない」をマークし ている。
また,3年生においても,
80% 前後の学生が「あまり読んでいない」と「ほとんど読んでいない」をマークしている。
という。これは他大学のアンケート結果ではあるが,大いに参考になるのではないだろうか。本 授業の履修者もあまりシラバスを読んでいないから,シラバスに記載のないことを指示されても 気にならない,という可能性がある。また,本科目は前年度中に履修希望を提出して新学年にな る前に履修が決定するので,あらためてシラバスは読んでいない,ということも考えられる。
4.4.自由記述から見えてきたもの
各問に対する学生の自由記述は次のとおりであった。以下,原文どおりである。
【音声】部分的に音声が欲しい箇所もあったように思う。
【端末】授業前に早めにきて見ることがほとんどでした。
【端末】家の PC だとパスワード入力があり面倒だったので大学の PC で閲覧。
【わかりやすさ】操作のスピードはもう少し早くても良いと思いました。
【負担】家で確認できなかったので。動画に関しては別サイトがあると負担が減るかもし れないです
【負担】コンピュータ演習のサイトのログインが学校でしか出来なかったので,家でもア クセスできるようにメモしておけばよかったなと思いました。
【閲覧しての理解度】その日にやる授業内容のイメージができるので,その点は授業に取 り組みやすかったです。
音声に関しては,公共の交通機関の車内などで見ることがなければ,音声を付けることを検討 したい。
サポートページにはパスワード入力があり,家で確認するのが面倒だったという記述があっ た。しかし,URLとユーザー名およびパスワードを確認できるQRコードを掲載しており,そ れをスマホで撮れるようにしてあった。次年度以降は,この点も重ねてアナウンスする必要を感 じた。
次に,設問18に記述されていたもので,事前学習に関するものを取り上げる。
大学のPCではなく自宅で動画を見たり,ファイルをダウンロードしたくてもパスワー ドが分からず困ったことがしばしばありました。ページ内のQRコードの案内をする か,別でQRコード印刷などしてを(原文ママ)配布したほうが良いと思います。
→前述したが,QRコードについては印刷配布も有効だと思われる。
演習に早く取り掛かりたいのでできれば授業内の説明をもう少し短く切り上げてほし い。中途半端な状態で演習が終わってしまうと,後で再度取り組む際に混乱が生じるた めである。
→確かに,事前学習を行ってきているので,授業内の説明をもっと簡略化してもよいと思われ る。
動画を事前に見ても授業内の説明をしっかりしていただいていたので,見るのを忘れて いても,あまり苦になりませんでした。なので,事前動画を見なくてもいいと思ってし まうこともありました。動画は何をやるのかをなんとなく理解するうえでは助かります が,今の授業の感じだとあってもなくても変わらないかなとも思います。
→これも耳の痛い意見である。確かに当時の現状では事前確認動画を見なくても何とかなって しまう状況であった。これについては,次年度のシラバスには事前確認動画を閲覧するよう 明記しておいたので,授業内の説明は大幅に省くつもりである。
5.今後に向けて
事前確認動画を閲覧してから授業を受ける,という反転授業を2017年後期に開講されたコン ピュータ演習Ⅱで試みた。シラバスに記載のない内容ではあったが,学生は好意的に受け止めて いるようであった。実際,(A)全員が解答すべき演習問題(授業時間内に作成できるもの)は,
ほぼ確実に提出されるようになった。すなわち,授業方法の改善が学びに対して良い影響を与え たのだろうと考えている。
本稿を執筆している2018年の現時点(2018.11)では,上記2017年のアンケート結果を基に,
事前確認動画閲覧だけでなく,動画を閲覧したかどうかを確認するためのテストを新たに追加し て反転授業を行っている。2018年度も授業最終日にアンケートを行い,事前確認動画閲覧によ る反転授業がプログラミング学習にどれくらい効果があるのかを検証する予定である。
参考文献
河村一樹「講義レスによるプログラミング実習教育の試み」情報処理学会研究報告Vol.2015―CE―128No.21 ジョナサン・バーグマン,アーロン・サムズ『反転授業』 オデッセイコミュニケーションズ 2014年
高井久美子,水谷晃三「プログラミング教育における反転授業の試み」 情報処理 Vol.57No.9Sep.2016 pp.916―919
高野則之「YouTubeを利用した反転授業の試み」金沢工業大学 工学教育研究;KIT progress(22) 2015― 03―31 pp.195―200
中谷勇介「少人数の情報処理教育における意識調査から」神奈川大学 商経論叢 16(4) 2011―03―31 pp.33―45
中村泰治「本学学生の学修状況の分析」浦和大学・浦和大学短期大学部 浦和論叢 第56号 2017―2 pp.141―149
林康弘,深町賢一,小松川浩「eラーニング利用による反転授業を取り入れたプログラミング教育の実践」
ICT活用教育方法研究 16(1) 2013―11 pp.19―23,
水谷晃三,高井久美子「プログラミング初学者を対象にした動画教材による反転授業の実践と評価」研究報 告教育学習支援情報システム(CLE),2015―CLE―17(34)
森朋子,溝上慎一『アクティブラーニング型授業としての反転授業(理論編)』 ナカニシヤ出版 2017年 森朋子,溝上慎一『アクティブラーニング型授業としての反転授業(実践編)』 ナカニシヤ出版 2017年