中華民国の新会社法
志 津 田 氏 治
一 アジア法の位置づけ
法の系統のことを、法系というが、世界の法系は大別すると西洋法国とアジア父系とが ある。法学研究の上では、今日までのところ西洋嬉野にのみ重点がおかれており、アジア 壁隣に対しては、殆ど無関心に近い実情であったといえよう。しかしアジアの植民地諸国 家の独立とともに、次第にアジア法の研究が脚光を浴びるようになったことは、実に注目 すべき現象である。殊に、アジア諸国における国民化法運動つまり、i華僑の経済力を抑圧
し、自国の民族経済を確立するための運動は、みのがすことのできないものがある。とこ ろが、このような事情のもとでも、今なお先進諸国の法系が、アジア法に浸透し影響をあ たえていることは否定することができない。インド・ビルマ・オーストラリアの諸国は、
イギリス法の支配下にあり、フィリピンはスペイン・アメリカ法の影響をうけ、中華民国 はわが国と同じく大陸法系の流れの汲んでいる。本稿は紙数の関係上、わが国会社法と極 めて酷似する中華民国新会社法における株式会社の機関構造を、紹介してみよう。蓋し東 南アジア諸国に散在する華僑の多くは、中華民国会社法にもとつく企業形態を、採用して いるところがらも、この方面の研究は非常な実益があると思われるからである。
二 中華民国会社法の内容
中華民国会社法における株式会社の機関構造を考察する前に、会社法一般にみられる特 色なり内容に関して素描してみよう。およそ今日、資本主義国家でありながら、実質的な 意味の商法を有しない国はない。この商法のなかでも会社法は、その花形であるから、如 何なる国でも会社法を有するのである。たゴその持ち方が多少異るものといえよう。たと えば大陸法系のように、商法典の一部として持つこともあり、あるいはイギリス・アメリ カ法系のごとく、単行法の形式で有する国もある。では中華民国会社法は、いずれの態度 をとるものであろうか。わが国のように、商法典第二編会社として、法典中に収めない で、それ自身独立の単行法として規定している点に特色をみい出すことができる。またそ れに関連して、中華民国会社法は、他の法規を準用する態度を、できるだけ避け、それ自 身に自足性をもたせた非常に適切な立法であるといえよう。
中華民国会社法は九章四四九条という彪大な条文をもつ。いまこれを紹介してみると、
第一章総則、第二章無限公司(第一節設立・第二節公司之内部関係・第三節公司之対外関
係・第四節懸命・第五節解散、合併及変更組織・第六節清算)第三章有限公司、第四面前 合公司、第五章股厨有限公司(第一節設立・第二節股扮・第三節股東砂・第四節董事尊慮 事会・第五節監察人・第六節会計・第七節公司債・第八節発行新股・第九節変更章程・第 十節公司重訂・第十一節解散、合併及変更組織第十二節清算、第一目普通清算第二目特別 清算)、第六章股扮両合公司、第七章外国公司、第八章公司之登記及認許(第一節申請、
第二節規費)、第九章附則となっている。わが国の会社法では既に剥除されている株式合 資会社を、依然として認めていること、および有限会社を、他の会社と同じく法系列のな かで明示していること等は注目に値いしよう。
三 株式会社の機関構造
(1)監査役 わが国の商法でいう監査役とは会社の会計監査を任務とする必要的かつ常設 の機関である。これに対して、中華民国会社法でいう監査役(監察入)は、会社の業務お よび財産状況を監察する権限を有している点で、わが国と著しく異なる。すなわち、その 204条による「監査役ハ何時ニチモ会社ノ財産状況ヲ調査シ、帳簿其ノ他ノ書類ヲ審査 シ、且取締役二対シテ会社ノ業務状況二関スル報告ヲ求ムルコトヲ得」 (監察人心随時調 査公司業務状況査核簿冊文面並請求八事報告公司業務情話)と定め、監査役の検査行為を 妨害したる者には、一定の制裁をかしている。その面この204条の規定は、民国五五年の 総統令修正で、若干の変更をみているが、その基本的な態度には、何等変わるものがない。
尤もわが国の会社法でも、昭和25年の商法改正前には、中華民国会社法の場合と同じく、
監査役には業務監査を主たる任務としていたことがある。すなわち改正前の商法によれ ば、(1濫査役は何時にても取締役に対して、営業報告を求めることができる(日商274 条)。(2)監査役は何時にても取締役に対して、会社の業務および会社財産の状況を調査す
ることができる(日商274条)。かくして監査役は、本来取締役とは全く独立し、むしろ そρ上に立って、取締役の業務執行を監督し、かつその会計処理を監査すべきであった が、現実的には取締役の風下に立ち、取締役の意思によって、その地位は容易に変更せら れるとともに、その人選自体が、取締役が適当とする人物が選任せられたのであって、当 初から取締役の息のかかった人物が就任し、当然に取締役の指揮を受けていて、到底取締 役の業務執行を督督するというようなことは不可能であり、業務執行の監査はもとより、
会計督査についても、その実効性をあげることは殆どみられない実情であっπ。このよう
に従来の監査役度が有名無実であるために、昭和25年前改正が試みられるに至ったのであ
る。すなわち、今までにない取締役会制度の採用と、株主の地位の強化にともなって、監
査役の権限を会計監査にのみ縮小したのである(日商274条・275条)。このように監査役
を、現行商法のもとでは、会計監査機関としたものの、その資格なり職務権限に慎重な配
慮が欠けており、監査役の監督機能は依然として期待できない実情にある。そこで近時現
行商法を改正しようとする機運がでてきていることは注目すべきであろう。
わが国の商法では監査役は株主総会の決議によって選任され(日商280条・254条)その 資格については格別の制限もなく、定款をもってしても監査役を、株主に限定するととは できないものどされている(日商280条・254条)。この点中華民国の会社法では、監査役 はやはり株主総会で選任されるものとしているが、わが国と大いに異なるところは、監査役 を株主中より選任すべきことを、216条で明示していることであろう(公司監察人三股二 会就股東中選任之)。しかも監査役中すくなくとも一名は、国内に住所を有するものであ
ることを要求している(監察人中至少須一人国内有住所)。いずれの立法例が適切である かといえば、わが国の会社法のように人材を広く求めるためにも、また監査事務の厳正と いうことからしても、日本法の方が一層優るものといえよう。1なお監査役め一名が、国内 に住所を嘗ていることは、恐ちく外国人監査役の登場を少しでも防衛しようとすること を、意図しているのではなかろうか(妹尾晃「中国新会社法」153頁)。
つぎに監査役の任期は、わが国の商法では一年となっているが(日商273条)、中華民国 会社法では、再選がある場合は別として、三年をこえることができないもみとされてい る(中断217条・監察人任期不得票但得降車連任)。尤も中華民国でも旧会社法は任期を一 年としたことはめを惑くものがある(胴中商204条)。しかして、つぎのよう諸点では、中 華民国会社法の監査役も大いにわが国の場合と共通性を有していることを看過萱べきでは なかろう。先ず第一に監査機関の性質上、監査役は業務執行機関である取締役または、そ の執行補助者ともいうべき支配人を兼ねることができないものとされている(日商276条
・222条・「監察人不得兼任公司董事及経理人」)ここで若干疑義が生ずるのは監査役が、
相談役・顯問などの地位を兼ねうるかということであるが、監査役業務の性質上否定的に 解釈されるべきであろう。第二は監査役は、各自会社の機関を構成し、監査役が数名ある 場合でも、各自単独で監査役の職権を行使することができる(中商221条「監察人各得単 独行使監察権」)。このことは、わが国会社法の場合も同様であり、監査役は取締役と異なっ て、一人一人が会計監査を行う機関であって、各自の単独執行を原則とする。勿論数人の 監査役を置く場合には、全く独立して監査権iを行使することもあるが、通常はその中の一 名または数名を、常任監査役として、常時会計監査の任に当らしめ、残余の監査役は計算 書類の監査報告だけを行うのが一般的であるといわれてい筍。それはさておき、中華民国 会社法が監査役の単独執行を明文化している点は、日本法よりも、より適切であるといえ よう。第三は、1監査役と会社との関係が民法の委任に関する規定に従うものと明示して いるところに、わが国会社法との共通点がみいだされる(日商280条・250条・中商216条
「公司与監察人聞之関係従民法関係於委任之規定」)。その結果、監査役は善良な管理者の
注意をもって、その職務を遂行しなければならない。もしも監査役が監査義務を怠り、会
社に損害を及ぼしたるときは、会社に対して賠償の責任を負うものである (日商277条・
年商211条「監察人楽想忽監察職務致公司受有損害者対公司負賠責任」)。ただこの点で、
わが国の会社法では、会社に対する監査役の連帯責任を明示しているのに対して中華国民 会社法では監査役の単独責任と.しているところが著しく異なる。また、わが国の会社法で は、第三者に対して加えた損害について、監査役と取締役との連帯責任を明らかにしている 輝(日商餌8条)、中華民国会社法では、これに関する明文を置いていないζとを指摘しな ければならない。第四に監査役の報酬の決定の問題がある。中華民国の旧会社法では、
監査役の節中に明文を設けていたが、現行会社法では第五節監査役の227条の個所で、196 条の規定を準用する態度をとっている。196条、取締役の報酬に関するもので、定款に定 なきζきは株主総会でこれを決定する旨を明示する(董当鉦報酬未婚章程訂明者応由智東 会議定)。これは、まさにわが国の商法280条が、260の規牢を準用しいてるのと全く同じ である。一このように監査役の報酬は、定款か株主総会で決められることになるが、その決 定は個々の監査役について決定する必要はなく、総額だけを定め、その配分を他の機関に 一i任してもよいし、取締役および監査役の全員の総額を定め、その配分を取締役会に一・任
しても差支えないと解されるδ第五に取締役と会社との取引における監査役の役割を規定 する。すなわち中華民国会社法の223条によると 「取締役が自己又ハ他人ノ為会社ト取引
ヲ為ストキハ、監査役二於テ会社ヲ代表ス」(董事為自己或他人与公司有交渉時由監察人 為公司之代表)と定めている。本条の狙いは、恐らく、取締役が自ら当事者として、また は他人の代理人もしくは代表者として、会社と取引をするときは、その取締役が同時に会 社を代表する場合は勿論、他の取締役が会社を代表する場合でも、相互に結託して会社に 不利益な取引を招来する危険があるので、これを予防しようとするものに外ならない。こ の点で、わが国の旧会社法では、このような場合に、監査役の承認を要求すると同時に、
その承認を得れば民法108条の適用を排斥して、その取締役は同時に会社を代表すること もできることとしていたく旧日商265条)。しかし現行会社法においては、監査役の機能が 縮減されたのにともない、これに代り取締役会の承認を要求されるようになり (日商265 条)、中華民国会社法と異る態度をとるに至った。尤も中華民国会社では「交渉」という 語を用い、取引の語を使用しているも、それはいずれも会社との間の法律行為を意味する ものと解釈されている(田中耕太郎・鈴木竹雄「中華民国会社法」324頁)。しかして本条 で称ザる交渉とは、会社の利益を害する虞ある行為に限定するのが通説である。ゆえに会 社が取締役から、何等負担のない贈与をうける場合などを含むものではない。第六に問題
となるのは、監査役がその職務を他人に代行させうるかの点であろう。わが国の通説で
は、監査役は自己の責任をもって補助者(たとえぽ会計士を)使用することができる旨を明
らかにしている。ただこの場合には、監査役が補助者の選任および監督について、充分注
意を尽したると否とを問わず、補助者の故意・過失により、会社に加えた損害について
は、監査役は全責任を負わなければならないことは当然である。これに対して中華民国会
社法219条では、明文をもってこれを解決している。すなわち監査役は会社を代表して、
その事務処理を会計士に委託できる旨を明示している(監察人弁理前項事務得委託会計士 核之)。旧会社と異り弁護士(律師)が削除されていることを注意すべきであろう。最後 に監査役に対する訴訟のことがあるが、中華民国会社法225条は、株主総会が監査役に対
して訴提起の決議ができる旨を定め、しかもこの場合には、決議の日より1ケ月内に会社 は訴を提起しなければならない。しかもこの訴には、株主総会は取締役以外の者を選任し て、代表させることができることを規定している(股白会沫心墨監察人智起訴訟時公司応 身決議之日起一個月内提起之○前項起訴之代表河東会得於董事外心行選任)。この条項は、
株主総会が監査役に対する解任訴訟をなしうることを明らかにしたものであろう。さらに 特筆すべきことは、中i華民国会社法の躍7条で、200条の規定を準用していることであろ
う。これは少数株主による監査役の解任の訴を認めたものに外ならない。まさにそれは聞 0条で257条を準用するわが国会社法と類似のものといえよう。なお監急心は業務執行者 ではないから、取締役のように競業避止義務がなく、また会社との取引について何等の制 約もないことも附記しなければならない。
以上は中華民国会社法における監査役制度であるが・つぎにインドにおける駐査役の機 構を素描してみよう。先ず1956年のインド会社法のもとで、auditorつまり監査役の設置 が要求されている。その員数は一人でも数人でもよい。しかし監査役は会計士(chartered accountant)の資格が要求されている(インド会社法226条)。監奪役はその職務の独立性 の必要から、当該会社の役員、役員と同じ組合の使用人、法人等監査役となることをえない。
ところで監査役の選任手続は略イギリス会社法の場合と同じである。会社が設立されたと きの最初の監査役は、取締役会で選出される。しかし取締役会が選出しないときは、年次 株主総会で一人または数人の者を監査役に澤任できる・もしも年次総会で監査徐の選任が ないときには、中央政府(Central Govenment)が耳哉権iで運任することもありうる。イン ド会社法における監査役は、(1)何時でも会計帳簿等を閲覧する権利がある(227条1項)。
(2)監査役として自己の義務を遂行するに必要な説明を会社役員に要求できる(227条1項)。
(3)監査役は一切の年次総会に出席する通知をうける権利がある(231条)。(4)監査役は会計 監査のための報酬をうけととる権利がある。(5)監査役は会計帳簿が会社によって適当に維 持されているか否かを調査する権限を有している。インド会社法では監査役二つの職務を 負わせている。一つは会社の会計の監査であり、他は株主に対する報告である。ここでい う報告とは、監査役が監査した会計と、株主総会に提出される書類つまりすべての貸借鮒 照表・損益計算書・連結勘定に関する報告などを称するのである(227条)。監査役の報酬
(reτnuneration)は、監査役が選任された年次総会あるいは中央政府によって決定され なければならない。尤も最:初の取締役の報酬は取締役会によって決定されるものである。
(2)検査役 会社の設立手続および財産の状況を調査する株式会社の臨時機関として棟査
役がある。中華民国会社法146条では、調査報告の公平と正確とを期するために、創立総
会は別に検査役を選任して調査報告をなさしめることができる旨を定める(前項調査創立
会得一群検査人為)。わが国会社法の181条は、これに相当するものといえよう。なお中華 民国会社法では、検査役が不実の報告をなしたるときは、4千元以下の罰金に処せられる
ものである(中子146条3項)。他方インド会社法においても、会社の状況を調査するため に、監査役のほかに検査役(inspector)をおくことができるものとしている。すなわち 検査役は、一定の資格を有する者の申請によって中央政府が任命することとしている。こ
こで先ず一定の資格者とは、会社において議決権を有する、すべての中、10分の1以上に ある者、それとも200名以上の株主(株式資本を有しない会社にあっては、社員の5分1 以上の者)である(235条(a)(b)参照)。検査役の権限としては、当該会社の業務を調 査する権限がある。勿論検査役は、会社業務を調査する目的のために、子会社・特株会社 などの法人の業務をも調査することができるのであり、検査の範囲が拡大されていること を注意すべきであろう。また中央政府は、会社の役員または代理人に対して、その保管す る一切の帳簿および書類を、検査役に提供すべきこと、ならびに検査役に積極的に開陳し て、その調査を援助する協力義務も命じている。従っ て会社の役員は検査役の質問に答え る義務もあるのである。以上の諸点からも窺われるように、検査役の性質はどちらかとい えば監査役的な性質を有するものであるが、しかし恒常的な機関ではなく、臨時的な機関 である点で、大いに異なるものである。検査役の資格については別段の制限がない。しか しその会社の取締役なり監査役を検査役として選任することは、その本質に反するばかり か、その会社の使用人、支配人を検査役に選ぶことも、できないと解釈すべきであろう。
検査役の員数も制限がなく、一人もしくは数人でも差支えない。検査の目的に照らして適 宜決定される問趨である。ここで問題となるのは検査役の地位であるが、総会で選任され る検査役の場合には、準委任契約で結ばれており、それ以外の機関で選任されてていると き(裁判所・政府の場合)は、会社との間に準委任の関係に立たない。
(3)取締役・取締役会 会社の運営は、専門的知識をもつ取締役に一任し、株主総会は専 ら会社の組織の大綱とか、経営方針というような、会社の組織運営に関する根本的事項の みを決定し、その範囲内における事業の運営は、一切取締役に委ねようとするのが、近時 の株式会社に共通な考え方である。では以下中華民国会社法およびインド会社法における 取締役および取締役会の動を捉えてみよう。
先ず第一に中華民国会社法において取締役の選任を考察する。すなわち中華民国会社法
によれば「会社は取締役を設置する。取締役はずくなくとも三人を下りえない。株主総会
によって行為能力の株主中よりこれを選任する」)「中野192条」公司董事会設置董事不得少
於三人由股東会理外行為能力之股東中遠之」)と定めている。およそ取締役とは、取締役
会を構成する一員であって、会社の業務執行の意思決定を権限とする会社の必要的常設の
機関である。上述のように、中華民国の会社法でも、わが国の場合と同じく、取締役の選
任を、株主総会の専属事項となしている(日商254条)。ところで、ここと注意を要するの
は、わが国の会社法とちがって、株主中より、とりわけ行為能力のある株主中より選任さ
れることを要求している点である。尤も旧中華民国会社法によると、取締役の被選資格と して、定款をもって一定数の株式を保有するものであることを定め、就任後当該株式を監 査役に供託し、監査役はこれを会社において保管すべきものであることを明示したことが ある(血中商139条「董事就任後、応将章程所定当選資格自盛股傍目股票、交由監察人於 公司中保存之」)。本条でいわゆる定款に定めた被選資格として所有すべき員数の株券とし ては、旧施行法の21条で「取締役の被選資格として其の有すべき株式の数の最少限を定め んとするときは、株式の金額は資本総額の千分の三を超ゆることを得ず」(監査役の場合 には、千分の一を超ゆることをえない)と定めたが、この条項は大株主のみが被選資格を 独占することを禁圧しようとするものに外ならない。しかし現行会社法では、単に株主中 より選任すべきこと改めた点は、大きな進歩といえるであろう。このことは、わが国の会 社法でも、実に興味ある変遷をみることができよう。先ず立法の第一段階では、取締役は 株主中より選任することを要求している (旧日商164条1項)。しかしかかる要件をか することは、取締役が株主としての利益を顧慮し自己の職責を誤る捻れがあるばかりか、
広く人材登用の途を妨げることとなるために、第二の立法の段階で、この要件を撤廃し、
株主以外の者もまた取締役となりうる主義を採用したのである。この段階では、企業経営 は一応企業所有より分離することとなるが、尤も会社は必要に応じ定款をもって、取締役 たるためには、一定の数の株式を保有すること、日本の国籍を有するとこのような定めを なすこともできる。もしも定款で取締役の有すべき株式の数を定めたる場合に、別段の定 めなきときは取締役は、その員数の株券を監査役に供託することを要する旨を規定できる
(旧日商259条)。勿論この場合の株式の供託は、取締役であることの条件ではない。ここ に中華民国旧会社法と同様の態度を発見しうるのである。しかし第三の立法段階で、「会 社ハ定款ヲ以テスルモ取締役が株主タルコトヲ要スベキ旨ヲ定ムルコトヲ得ズ」(日商254 条2項)と定め、企業の所有と経営の分離の方向に一新紀元を画する立法化をみたことは 大いに特筆に値いしよう。この立法は、取締役としての適材を求めるためと、取締役の資 格を大株主だけに限定する弊害を憧れたためである。ここに現行会社法は、取締役の資格 に株主たる資格を付着させようとする一切の絆を切断したのである。中華民国会社昧が今 日でも依然として、取締役は株主中より選任するものとしているのとは、まさに隔世の観 がある。今日のように会社企業が、高度に技術化・専門化した段階においては、取締役の 資格を株主に限定することは適切ではない。従って中華民国会社法の192条でいう「株主 中選任」と明示してあっても、最近の有力説は「株主となることを条件として、株主に非 ざる者を選任するも、有効と解して差支ないであろう」 (妹尾晃「中国新会社法」152 頁、田中耕太郎「改正会社法概論」564頁)とし、条文の意味を解釈的に広げて、時代の 勢に即応しようとしていることはめを惑く。この条項を削除することは今後の中華民国会 社法の新しい課題であるともいえよう。
つぎに、わが国の通説によると、取締役の資格として行為能力を有しない未成年者でも
なりうると解釈されているが、中華民国会社法によると、この点について、明文をもって 行為能力を有しない未成年者でもなりうると解釈されているが、中華民国会社法による
と、こめ点について、明文をもって行為能力があることを要求している。またわが国で は、男女の如何にかかわらず自然人でなければならないとしているが、中華民国会社法の 場合には「取締役は自然人たるを要しない。唯法人が重め法人の取締役たる任務を具体的 に執行するためには自然人をして、これを代理せしめることを要するのみである」(妹尾 晃「中国新会社法」152頁)とする。しかし取締役の個人的性質を着目する限り、法人取 締役を肯定することは果して適当といえるだろうか(田中耕太郎「改正会社法概論」564 頁)。また株主総会において、取締役選任の決議をなしたるときは、その旨を選任された 株主に通知をし、通知をうけた者がこれを承諾することを要し、ここに会社との間に委任 ないし準委任契約が成立することになり、就任した取締役は、委任者である会社のため に、その業務執行機関の衝にあたる者として、委任の本旨に従い忠実に受任義務を遂行し なければならない。中華民国旧会社法では、これに関する明文をおくことがなかったが、
現行会社法192条では、わが国の商法254条3項に倣って、これを明文化するに至ったこと は注目に値いする (中商192条「公司与董事間之関係除本法号有規定外依民法関於委任之 規定」)。しかしわが現行会社法では、委任に関する規定め外に、積極的に忠実義務を明示 するζ日商254/2)。これは取締役の受任者としての義務を、とくに強調したものであろ うが、今後の中華民国会社法の上で、如何に取り上げていくか看過することのできない問 題であるといえよう。
では取締役の員数と任期のことについて多少触れてみたい。先ず中華民国会社法の192 条で三人以上セあることを要求する)日商555条)。このことは旧会社法で5名以上こして いたのと異る点である(居中商)138条)。また取締役の任;期は三年を超ることを得ない。
再選任は差支えないとされている (中商195条「細事任期不得三年、但得連選連任」)。こ れに対してわが国の場合には、取締役の任期は、最長限二年であり、たゴ定款の定があれ ば任期中の最終の決算期に関する定時株主総会の終結まで任期が伸長される(日商256条
1項、2項)。尤も最初の取締役の任期は一年を超ゆることを得ない。このようにわが国 の会社法では、取締役の任期に、設立中の取締役の場合と設立後の取締役の場合とを区別 しているも、中i華民国会社ではかかることを認めていないことを注意すべきである。なお 取締役め終任は、任期め満了、・辞任、死亡等の場合などであるが、中華民国会社法では、
とくに終任事由を規定する。第一に取締役が任期中にその有する株式の二分の一以上を譲 渡することほできない。二分の一を超えたときは取締役は当然解任せられる (中商197条
「董事選任後応仁主管機関華甲其選任当時所持有之公司股華華額在任期中不得転譲其二分
県一以上超過二分之一時其無事当然解任」)。第二に株主総会の解任の決議がありたるとき
は、これによりて解任される。解任の決議は、何時でもこれをなしうるが、任期の定があ
る取締役を任期中に解任したるときは、取締役は会社に対して損害賠償の請求をなすこと
ができるときは、取締役は会社に対して損害賠償の請求をなすことができる(中商199条
「董事由股東会之決議随時解任但定期者如無正当理由而於任満前将其解任時董事得向公司 請求賠償因此所受之損害」)。また取締役の職務遂行に関し、会社に重大な損害があり、法 令もしくは定款に違反する重大な事実があるのに、株主総会でその取締役を解任する決議 がないときには、継続して一年縁上発行済株式総数の100分の5以上の株主は、株主総会 後30日以内に取締役の解任を請求できる(中子200条)。第一の場合は、中華民国会社法独 特の条文であるが、第二の場合はわが国会社法の257条に相当するものである。なお取締 役の員数および任期は定款の必要的記載事項となっており(中商129条6号)、まだ取締役 の報酬も定款に、これを定めないときは株主総会の決議をもって、定あることを要する
(中商196条)。ところで中華民国会社法でことに特筆に値いするのはくわが国の昭和25年 め改正会社法の影響を、多分にうけていることであろう。その主要な諸点を素描してみよ
う。
第一に累積投票(cumulative voting)を制度化していることであろう。すなわち中華 民国会社法によると「股東翼翼任董撃壌毎一股扮有与盲虻出董事人数相同之選挙権得集中 選挙一人皇民配選挙数人由得選票代表選挙権較多者当選為椿事」(198条)と明示してい る。この制度は元来アメリカ法に由来するもので、複数の取締役の選出め場合に採用きれ る。その狙いは、取締役会に少数株主の意見の代表者をも可及的に参加させ、多数派を代 表とする取締役の行動を監視させようとするもので、旧会社社法にはみられないものであ る。我が国の現行会社法は256条の3でこれを明文化している。いま両国の制度を比較考 察してみるに、わが国の場合には、累積役票の制度を無条件で認めるめではなく、総会の 会日より五日前(会日よりなお五日をおいて、その前日に会社に到することである)に書 面をもって累積投票によるべきことを請求すると、いうように手続的に一定の制約がかさ れている。この点に関して中華民国会社法は手続的に何等の考慮も示していない。従って 会日において突如として累積没票によるべき旨の請求もできるのできるめであろうか。も しもこれを認めるとすれば、反対派の株主の・利益は著しく害されることになろう。またと の制度によるときは、取締役会の内部に異分子を入れ、会社経営上対立あるいは摩擦を生 ずる虞れもあるので、わ渉国の場合にほ定款で、この制度を排除することを認めている
(日商256条の4)dしかしこのときにも発行済株式総数の四分の一以上にある株式を有す る株主は累積投票の請求をすることができる(日商256条の4)。現実的にも大会社の場合 には、四分の一の多数の株主の結集は困難であるととうからも丸この制度の利用価値は乏 しいのではなかろうか。もとより中華民国会社法では、この点についての明文がないたあ に、果して定款でこめ制度を排除することができるか否か疑義を残しているものといえよ
う。
第二に取締役会の行為に対して差止請求が認められていることであろう。つまり取締役
会の決議が、会社の登記した業務の範囲外の行為をなし、あるいはその他法令定款に違反
年忌の行為があるときは、継続して一年以上の株式を有する株主は、取締役会に対して、
その行為の停止を請求できる (中商194条「善事会決議公司登記業務範囲以外之行為或為 其他違反法令或章程之迄為時継続一年以上持有股扮之股東得請求董事会停止藤蔓為」)。こ れは個々の株主に、取締役会の違法な行為に対して差止請求権を賦与したものに外ならな いのであって、わが国会社法の272条に相当するものといえよう (但し新株発行のさいに は280条の10で認められている)。まさにイギリス・アメリカ法のinjactionの制度を採 用したものであり、株主の地位の強化の具体的な一表現として捉えることができる。いま 両国会社法の規定を若干検討してみよう。わが国の場合には、差止請求権の相手方が、会 社の目的外の行為、その他法令定款に違反する・取締役の行為となっているが、中華民国会 社法では、会社の登記業務範囲外の行為、その他法令定款に違反する:取締役会の行為とな っている点が異る。差止請求の対象としての会社の登記業務の範囲であるが、中華民国会 社法の129条には、その二号で定款に「営む事業」(所営事業)を明記することになってお
り、τこれが差止請求権行使の有力な判断基準となるであろう。つぎに差止請求をなしうる 者は、わが国会社法のもとでは、六月前から引続き株式を有する個々の株主であるが、中 華民国会社法では、それよりもやや厳格で、継続して一年以上株式を有する株主となって いる。以上の点が異なるのみで、この差止請求が訴によるものでないことは両国会社法と
も同様である。
第三に代表訴訟制度を認めていることである。すなわち、継続して一年以上発行済株式 総数の100分の10以上の株主は、書面をもって会社のために、取締役に対して訴訟を提起 することを、監査役に請求することができる。監査役が前項の請求があってから、30日内 に訴訟を提起しないときは、前項の株主は会社のために訴訟を提起できる。株主が訴訟を 提起したとき、裁判所は被告の申請により、訴を提起したる株主に相当なる担保の請求を 命ずることができる。会社が敗訴により損害を受けたるときは、訴を提起した株主は会社 に対して賠償の責を負う旨を明示している(楽寝214条「継続一年以上専有己発行股扮総 数百分之十以上之股東得以書面請求監察人為公司対董直叙起訴訟、監察人自書前項之請求
日葡三十日内遺習起訴訟時前項之股東得為公司提起訴訟股東宝起訴走時法院因被告之密書 得命起訴之股東提供相当担保如因敗訴致公司受国損害早起訴之墨東塁塞公司負賠償之責」)。
中華民国旧会社法の198条でも、株式総数の10分の1以上にあたる株式を有する株主は、
会社のため取締役に対して、訴を提起することができることを定めていたが、本条はこれ をより具体化したものといえよう。わが国の現行会社でも、アメリカ法に倣い代表訴訟
(represehtative suit)の制度を採用し、個々の株主が会社に代って取締役の責任を追 及する制度を認めたのである(日商267条以下)。この規定は、さらに愚人・監査役言たは 清算人の責任を追及する訴(日商196条・280条・430条)、および新株引受人の責任を追及 する訴(日商290条の11)にも準用されていることを注意すべきである。
いまこの制度に関する諸点について、両国の会社法を比較検討してみよう。この訴訟に
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おける原告は、わが国の会社法では、6ケ月前から引続き会社の株式を有する株主であ る。しかも所有株数を問わないから、一株しか有しない株主でもこの訴を提起できる。こ れに対して中華民国会社では、継続して1年以上株式を有しており、かつ発行済株式総:数 の10分の1以上の株主であることを要し、一株主はこの訴を提起することができない点で 異なるものである。つぎにわが国の会社法によると、会社に対して書面をもって取締役の責 任を追及しうるものとしているが、中華民国会社では、会社ではなしに監査役に書面で請 求できる旨を明らかにしている。この点に相違をみることができる。さらにわが国の会社 法では、会社がその請求をうけた日から、30日以内に訴を提起しないときは、その株主は 会社のために訴を提起することができる点では、中華民国会社法と同様であるも、たゴわ が国め会社法の場合には、この期間の経過によって、会社に回復不能の損害を生ずる至れ がある場合には、直ちに会社のたあに訴を提起できる(日商267条3項)条項が挿入され ているが、中華民国会社法には、このような特例が挿入されていないことに、著しい差異 を発見することができる。この訴の被告は責任のある取締役であり、その他の訴訟手続の 面では両国会社法ともに略同じであるといえよう。
第四に取締役の競業避止義務の問題があげられる。すなわち中華民国会社は、明文でこ のことを規定するに至った。その209条によると、取締役が自己あるいは他人のために会 社の営業に属する範囲内の行為をなすには、株主総会に対して、その行為の重要な内容を 説明し、ならびにその許可を取得することになっている(董事為自己或他人軍属於公司営 業範囲内之行為応対股直会説明其行為之重要内容並取得其許可)。わが国会社法の264条1 項でも、これと同様の条文をおいている。取締役に、かかる義務が認められた根拠は、第 1に取締役には受任者としての忠実義務があること(日商254条3項、254条の2)、およ び会社の業務執行に関して、その営業上の秘密を知悉している点にある。ところで中華民 国会社法のもとで、前項の取締役の行為に対して、株主総会が許可の決議をなす場合に は、発行済株式総数の三分の二以上の株主が出席をし、出席した株主の議決権の過半数の 同意が必要とされている(亡命会直前項許可之決議応有畑表向発行股扮総数三分二以上血 書之出席算出席股東表決権過半数之同意行之)。わが国の会社・法でも、その承認決議は、
発行済株式総数の3分の2以上の多数を要求している(日商264条2項)。ところで、わが 国の場合には、総会の認許は必ず競業取引をする以前にあたえられなければないのであっ て、事後認許は絶対に許されないものと解されているが中華民国会社法の場合も同様にな るであろうか。
以上のほかに、中華民国会社法で最も注目すべき現象として、指摘されなければならな
いことは、取締役会の制度が創設されたことであろう。取締役会は、会社の取締役の全員
をもって構成せられ、会社の業務執行の意思を決定する、会社の必要的常設の機関であ
る。わが国でも、従来から会社は定款をもって、取締役全員からなる取締役会の制度をお
いてきたが、昭和25年の改正法ではこれを法定の機関として明定するに至ったのである
(日商259条以下)。そこで簡単ながら中華民国会社法における取締役会制度について素描 してみよう。先ず会社の業務は取締役会が決定する(中尾202条)。取締役会の招集は定款 の規定による(中葉2Q3条)。取締役会の召集は、一週間前に取締役に通知をするζとにな っているが、緊急のときは随時ζれを召集できる(中豊204条)。この点はわが国の場合と 異なるところがない)日商259条一2・259条一3)。なお中華民国会社法の場合には、取締役 会には取締役自身が出席することを原則とし(中商205条)しかも取締役会の決議は、本 法に規定がある場合のほか、過半数の取締役が出席し、かつ出席した取締役の過半数の同 意でこれを定めることにしている(中商206条・日商260条ノ2)。また議案について、特別 利害関係のある取締役は、議決権を行使することができない(中商206条・178条)。さら に取締役の議i事については議事録を作成することになっている(中商207条・日商260条一 3)。』また会社の取締役会は、3分の2以上の取締役の出席および出席取締役の過半数の同 意で一人の取締役長ならびに常務取締役を耳位することになっている(中歯208条)。取締 役長は、株主総会、取締役会、常務取締会の主席としての地位を対内的には有している が、対外的には会社を代表する(中商208条)。もしも取締役長が事故のために職種を行使 することができないときには、取締役長は常務取締役の1人を指定して、これを代理させ るζとができる。この点でめをひくのは、中華民国会社法では取締役長(董事長)を制度 化し、これに会社を代表する法定の権限を賦与しているが、これに対してわが国の会社法 では、取締役会長は法律上の制度ではなく、単に取締役会の議長になるのに過ぎないので あり、もとより会社の対外的な代表権を有するものでもないところに著しい相違点がある ことを着守することができる。ゆえにわが国の場合には、取締役会の決議で、会社を代表 すべき取締役を選出するのであり、この代表取締役が、会社の対外的業務執行機関かつ代 表機関というζとになる(日商261条)。
さらにここで指摘しなければならないことは、常務取締役の手数以上が国内に住所を有 し、かっ取締役長が中国の国籍を有していなければならないことを、中華民国会社法で要 求していることであろう。このようなことは、わが国商法の場合にはみあたらない。蓋し 中華民国会社法の立法理は、国家的な監督および取締役の便宜と、会社債権者その他の者 の保護の実効を、より確実にするためと同時に、かかる障壁を設けたのは、間接的にでは あるが、外国人および外国人資本による内国会社の支配を予防しようとするものではなか ろうか(妹尾晃「中国新会社法」153頁)。
最後に公示主義の面より取締役会制度を考察してみよう。その210条によると取締役会
は、定款、各株主総会の決議録、貸借対照表および損益計算書を本社および支社に備置
き、かつ株主名簿および社債原簿を本社に備置くことを要する旨を明示している(事事会
応将章程及歴届真東会議事録資産負債表損益喜喜豊実本店司及分公司線路股東名簿及公司
実存根簿誤読監本公司)。しかも株主および会社の債権者は、何時にても前項の定款、帳
簿書類の査閲を請求することができる(前項章程及簿冊股東及公司之債権人得随時請求査
閲或抄録)。この条項は、わが国商法の263条に相当するものである。
以上は中華民国会社法における取締役および取締役会の制度を考察してきたが、いまこ こで多少インドにおける取締役および取締役会の会社法上の地位を捉えてみよう。先ず第 一にインド会社法における取締役は、イギリス法の影響をうけていることを指摘しなけれ ばならない。つまり機関の観念が認められないで、取締役を会社の代理人として理解して いることである。また取締役の地位は、受託者的地位(fiduciary position)にあるか ら、公正かつ相当な注意をもって誠実に会社の利益を図るべき義務を負っている。取締役 は原則として株主総会で選任され、その員数は2人以上であることを要する(インド会社 法252条)。取締役となりうる資格として、外国人・法人でも差支えない。たぐし免責を得 ない破産者・受刑者・心神耗弱者・老令者は取締役となる資格がない(インド会社法274 条乃至280条)。取締役の選任にさいしましては、必ずしも株主である必要はなく、1たゴ付 属定款に規定があるときは、所定の資格株(qualification shares)を所有しなければ ならないことになっている。インド会社法のもとでも、会社の業務執行にあたるものは 取締役会(board of di鉛ctors)である、この取締役会は、各取締役によって構成されて いるが、この法的な地位については、インド会社法では別に規定をおいていない。ゆえに 各会社の付属定款で、取締役会が如何なる権限を有するかを定めればよいことになってい る。現実には各会社の定款で、取締役会に広い権限があたえられているから、取締役会の 権限は、会社の能力の範囲と同一であるといえよう。ところで取締役会は業務執行取締 役(managing director)を選任することがある。この取締役は、取締役会よりあたえ られた、それぞれの権限の範囲内で、会社の業務執行にあたえるものである。かかる役
(office)をもたない取締役は平取締役(ordinary directors)であって、取締役会が開 催せられるときに、それに出席して決定にあずかるのみである。この取締役会は、定時に また臨時に開催されるのが、それを開催するためには、相当の;期間を定めて、取締役全員 に対して招集通知を発送しなければならない。この取締役会では議長(chairman)が任 命される。議長は単に会議を主宰するばかりではなく、ある範囲内で業務の執行にもあず かること注目すべきであろう。
(4)株主総会 株主総会とは、株主が会社の業務について各自その意思を表示して決議を
なし、もって会社の内部において会社の意思を決定する株式会社の最高の必要的機関であ
る。取締役および監査役といえども、株式総会において選任解任されるのである。しかし
今日の株主総会は、株主の出席が殆どなく、いわゆる観客なき喜劇すら呈しているのであ
り、会社経営の実権は、株主総会の手から、取締役会へ、取締役会の手から、代表取締役
社長の手へと移りつつあることは、今後の経営法学でも、みのがすことのできない現象で
ある。では中華民国会社法における株主総会より考察してみよう。先ず中華民国会社法で
は、株主総会のことを「股東境」と称する。株主総会には、通常総会と臨時総会の二種類
がおかれる。前者は毎年すくなくとも1回、後者は必要に応じ臨時招集されるものである
(中商170条)。現行会社法は旧会社法と異なり、通常総会は毎営業年度の結了後6ケ月内に 招集されることになっている(中i華民国会社法では、通常総会のことを「股東常会」、臨 時総会のことを三股東臨時会」という)。わが国ではこれに相当するものとして定時総会 と臨時総会とがある(日商234条235条)。しかし問題となるのは総会招集の場所であろう。
わが国では、定款に別段の定がある場合を除いて、原則として本店の所在地または、これ に隣i接する地にて開催すべきことを要求している。勿論こごでいう所在地とは、最小独立 の行政区画であると解されている。ところがこれに対して、中華民国会社法ではかかる招 集の場所について、何等明文をおいていない。しかし近時の有力説では、「多く本社所在 地その他株主多数に最も便利なる地網場所を選ぶべきである」(妹尾晃「中国新会社法」
143頁引用)としている。立法論としては、わが国のように明文化することを適当としよ
う。