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修士論文・博士論文一覧|九州大学 大学院人間環境学府

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(1)

27-1

古代ローマ都市住宅における採光計画についての一考察

ローマ・オスティア遺跡にみる中庭式住宅の室内昼光照度

北村 晃一

1. はじめに

1.1. 研究の背景と目的

 人工照明に乏しい古代ローマでは様々な工夫を凝ら

し採光を得る必要があった。多様な建築類型が発達し

た古代ローマ都市の遺構からはその規模、平面形式、

敷地環境に合わせて様々な手法を用いて採光を確保し

て い た 様 子 が う か が え る 。 本 研 究 で 対 象 と す る オ ス

ティアでは、紀元1世紀頃の様子を伝えるポンペイと

共通する中庭を中心とした採光形式をとる建物が散見

できる。ポンペイでは,建物の街路側には明かり取り

の小さな窓が開くものの,基本的には居室は中庭に向

かって開くことが多く,街路側からの採光は一般的で

はない。その一方,オスティアでは、街路や天窓から

採光を図る建物も多く存在し、多様な形式を見せる。

その背景には建設技術の発展と人口増加による建物の

狭小化、高層化が進んだことが挙げられる。しかし、

多くの上部構造が崩壊しているオスティア遺跡におい

て、各種採光法による室内環境を視認することは難し

い。本研究では採光シミュレーションにより定量的に

各建物居室の室内照度を評価し比較分析することで古

代ローマ都市の光環境の実態をより明確にすることを

目的とする。

1.2. 中庭式住宅

 古代ローマの中庭式住宅は図1に示すように、住宅

外壁の同心方形状を示す中庭の周りに、列柱廊を挟ん

で周囲に各居室を設ける平面計画を基本としており、

ポンペイ遺跡ではヴィトルヴィウスによればギリシャ

由来とされる中庭である、ペリスタイルを持つ住宅に

上部構造が確認できる。一方、オスティア遺跡におい

ても,上部構造の残存例は数少なくCasa di Dianaと

Domus delle Muse(以下建物名略称)にて、当時の中

庭採光による室内照度を実体験することができるが、

中庭に隣接する居室のほとんどが街路採光を図る他の

住宅と比較し、とても薄暗い印象を受ける。本研究は

この印象を受けて、連続開口窓といった街路側の開口

が 発 展 し 、 主 要 な 採 光 法 の 一 つ と な っ た 当 時 の オ ス

ティアにて依然として中庭採光を採用した住宅計画の

意図についても言及する。

1.3. 研究の方法

 居室に設けられた開口部及び中庭上部の開口から立

体 角 投 射 率 を 用 い て 室 内 照 度 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行

う。本研究では野外昼光照度に各開口部で求めた立体

角 投 射 率 を 乗 算 し た 値 を 室 内 照 度 の 近 似 値 と し て 採

光 評 価 に 用 い る 。 中 庭 式 住 宅 に お い て 野 外 昼 光 は 中

庭 上 部 の 開 口 を 通 過 し 居 室 開 口 へ と 入 射 す る た め 、

シミュレーションでは中庭による昼光率Ccと開口によ

る 昼 光 率 Cw を 乗 算 し 、 居 室 の 昼 光 率 C と 定 め る 。 野 外

昼光照度については当時の不明瞭な天空条件を避け、

現在のヨーロッパ全天空照度基準として定められてい

る 1 9 , 2 0 0 l x

※ 1

を 全 天 空 照 度 の 予 測 値 と し て 用 い る 。

昼 光 率 の 計 算 点 を 図 2 に 示 す よ う に 室 内 に 想 定 し た

500mm 間 隔 の グ リ ッ ト 線 の 各 交 点 と し 、 室 全 体 の 値 を

求 め る こ と で 室 内 の 最 大 照 度 及 び 平 均 照 度 を 算 出 す

る。また、昼光率は直接昼光率と間接昼光率の和であ

るが、後者は壁面反射により拡散する昼光であるため

比較的に微小な値となる。従って本研究では開口部か

ら直に入射する直接昼光率のみを対象とする。

図1 Domus del Protiro

図2 立体角投射率とその計算点

500 1000 1500 2000 2500 3000

0 500 1000

500 1000

1500 500

1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500 5000 5500 側窓開口

Cw

Cc

天窓開口

b a b

a

x

y

z C1

C1

C2 C2

C4 C4

C3 C3

Cc 天窓開口

側窓開口

Cc H X

Y

(2)

27-2 2. 研究の対象

2.1. 対象物件

 オスティア遺跡内に残る、住宅を主な用途とする建

物(倉庫や店舗として用いられた部屋を一部含む)を

研究の対象とする。その中でも中庭式住宅10軒と、比

較 と し て 街 路 か ら の 採 光 を 図 る 住 宅 5 軒 を 対 象 と す

る。表1には本研究対象の名称と遺跡内における地区

及び建設年代を示している。

2.2. 建築要素による昼光減衰

 野外昼光は室内に到達するまでに様々な建築要素を

通して減衰していく。以下に示す要素は建築内部の照

度に影響を与えるため、採光計画において重要な役割

を 担 う 。 本 研 究 で は 、 ま ず 実 際 の 中 庭 式 住 宅 の 平 面

計画を元に想定した仮想空間(中庭…面積Sc=25m

2

/幅

X=5m/奥行Y=5m/建物高さH=5m/開口…面積Sw=0.25m

2 /

幅 x = 0 . 5 m / 高 さ y = 0 . 5 m / 計 測 点 か ら 開 口 ま で の 距 離

z=0.5m)を基準として、各要素による室内照度の変化

を検証する。

2.2.1. 中庭

 中庭の規模は室内照度に大きく関係すると考えられ

る 。 本 研 究 で は 中 庭 を 通 る 昼 光 は 天 窓 か ら の 立 体 角

投射率Ccにより減衰を受けることとする。シミュレー

ションから、Ccは中庭面積と中庭寸法の縦横比に依存

し、中庭面積が最も室内照度に対し影響が大きく、か

つ中庭の長辺方向に配置された居室において室内照度

が高くなる。

2.2.2. 建物高さ

 建物が高層化することにより、中庭に届く光は減衰

することが考えられる。しかし、室内照度の建物高さ

による変化にはある一定の頂点が存在し、その極値は

中庭形状をはじめその他の建築要素により変化する。

つまり、中庭採光には平面計画によって室内照度の最

大効率を出す建物高さが存在する。

2.2.3. 開口

 開口も中庭と同様に、その規模や開口の縦横比に応

じて室内照度に変化を与える。シミュレーションによ

ると、中庭と比較し開口面積による影響が非常に大き

く、開口の縦横比による影響は少ない。開口の壁面に

対する配置によっても室内照度は変化するが、開口面

積による影響と比較すると僅かな差である。その他の

建築要素と比較しても、開口面積は室内照度において

支配的な影響を及ぼす。

2.2.4. 列柱廊

 ペリスタイルの形式をとる中庭は多くの場合、列柱

廊により周囲を囲まれている。中庭から入射した光は

この列柱廊の幅だけ減衰を受けるが、中庭に直接面し

て い る 居 室 は こ の 列 柱 廊 に よ る 距 離 の 減 衰 が な い た

め、室内照度は高くなる。しかし、列柱廊による昼光

減衰は中庭や開口といったその他の要素と比較し、室

内照度への影響は小さい。

2.2.5. 室寸法

 本研究では、居室内の平均照度を室内照度として評

価し、室全体が明るい場合、評価の高い光環境と言え

る。しかし、側窓開口による昼光採光では室手前では

大きく照度を確保できるが、奥行方向では照度は急激

に減少し、側窓開口は室内奥まで昼光を取り込む能力

が低い。そのため、居室の間口が広く、奥行が浅けれ

ば、室内平均照度は高い値を示す。

2.2.6. 前室

 居室が街路面及び中庭方向に開口を有しない場合、

前室を通った昼光のみが採光源となる。その場合の昼

光は、一定の減衰を受けた昼光が前室に加えて距離及

び開口による減衰をさらに受けるため、他と比較し著

しく室内照度が低下する。よって、前室をもつ居室は

ほとんどの場合ごくわずかな照度しか確保できない。

地域 建設年代

1. Casa di Diana I 117-128

2. Domus del Tempio Rotondo I 222-35

3. Domus delle Gorgoni I 2c

4. Domus delle Muse III 128

5. Domus Fluminata III 70-75

6. Domus delle Colonne IV 230-40

7. Domus dei Peshi IV 3c

8. Domus del Protiro V 3c

9. Domus della Annonaria V 138-61

10. Edificio Abetazione V 200-35

11. Casa di Dipinti I 117-38

12. Caseggiato delle Trifore III 110-40

13. Casa delle Volto Dipinte III 125-28

14. Casa delle Ierodule III 253-268

対象物件

中庭式住宅

街路採光式

住宅

表1 対象物件

図3 各建築要素の影響による室内照度 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1011121314 15

5 10 15 20 25 30 35

室内平均照度 [

lx]

中庭一辺の長さ [m]

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1011121314 15 5

10 15 20 25 30 35

室内平均照度 [

lx]

建物高さ [m] 面積のみ変化

幅のみ変化 奥行のみ変化

中庭面積=Sc 中庭面積=2Sc 中庭面積=4Sc

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1011 12131415 5

10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60

室内平均照度 [

lx]

居室の開口一辺の長さ [m]

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1011121314 15 5

10 15 20 25

室内平均照度 [

lx]

列柱廊の幅 [m]

面積のみ変化 幅のみ変化 高さのみ変化

建物高さ=5m 建物高さ=10m 建物高さ=15m

140

0 [lx]10

50 100

0m 1m 1m

2m 3m

4m 2m

(3)

27-3 3. 分析-平面計画と室内照度の関係性

3.1. 中庭式住宅の室内照度

  図 4 に 中 庭 式 住 宅 で あ る Protiro の 室 内 照 度 分 布 を

示す。建物高さは階高を4mとし、既往研究に則り二

階 層 を 想 定 し て い る 。

※ 2

中 庭 の 奥 に 配 置 さ れ た 二 対

の 柱 が 残 る 居 室 ( 主 室 と 呼 ぶ ) は 最 も 明 る く 、 居 室

手 前 で は 700lx を 超 え る 照 度 が 確 保 さ れ て い る 。 一 方

で、平均照度を見ると主室をはじめ中庭周囲に並ぶ居

室 ( 側 室 と 呼 ぶ ) は お お よ そ 100lx 程 度 の 照 度 値 を 示

し、住宅全体で照度が安定している。同様に、対象と

した10軒の中庭式住宅の室内平均照度を比較する。図

5 に 、 住 宅 高 さ を 8 m と 一 定 で 仮 定 し た 場 合 の 、 主 室

及び側室の室内平均照度を示す。中庭式住宅のほとん

ど の 居 室 は 平 均 照 度 が お お よ そ 100lx の 範 囲 で 納 ま っ

て い る 。 一 方 で 傾 向 に 反 す る 住 宅 も 存 在 し 、 Peshi の

主室照度では350lxと比較的大きな値を、反対にDiana

やMuseでは50lxを下回る値を示している。

3.2. 平面計画

 PeshiやFluminataのように中庭を広くとる住宅は中

庭 に 高 い 採 光 機 能 が 期 待 さ れ て い た こ と が 推 測 さ れ

る 。 し か し 、 図 8 に 示 す よ う に Gorgoni の よ う な 比 較

的中庭の小さい住宅でも同程度の照度が確認され、中

庭の規模と室内照度には建築要素別に見たシミュレー

シ ョ ン の よ う な 相 関 関 係 が み ら れ な い 。 ま た 、 唯 一

300lxと大きな室内照度を確保しているPeshiの主室は

中庭の長辺方向に面し、居室の奥行が比較的浅い。こ

の居室は、シミュレーションからも昼光を取り入れる

ことに限って言えば理想の平面形式であるが、他住宅

の 主 室 の ほ と ん ど が 中 庭 短 辺 方 向 に 主 室 を 構 え て お

り、奥行きが他居室と比べて深い平面計画であり採光

に関しては不利である。

4. 小結

 採光シミュレーションの結果から、中庭式住宅の平

面計画は採光によって一定の照度を室内に確保するこ

とができ、ある一定の室内照度が確保されるように中

庭の規模が決定されていた、あるいは中庭の規模に応

じ て 室 の 奥 行 き が 決 定 さ れ て い た と 言 え る 。 ま た 、

Peshi の よ う な 効 率 の 良 い 昼 光 採 光 を 行 う 住 宅 は 例 外

で、多くの住宅が採光の効率性を追求していない。こ

のことから、中庭式住宅はその平面的特性から周囲の

居 室 へ 100lx 程 度 の 平 均 照 度 を 一 定 で 確 保 で き れ ば よ

く 、 そ れ 以 上 の 採 光 は 不 要 で あ っ た こ と と 判 断 で き

る。なお、JIS照度基準では100lxが住居全般での維持

照度と定められており、中庭採光で得られる室内照度

は居住環境としての値を満たしていたといえる。

※3

5. 分析-立面計画と室内照度の関係性 5.1. 高層化による室内照度への影響

  図 6 に 示 す Diana は 壁 厚 を 厚 く す る よ う に 改 築 さ れ

ていることから、高層化された中庭式住宅の例と考え

ら れ る 。

※ 4

図 7 はDianaが 高 層 化 す る こ と に よ る 各 居

室の室内照度の変化を表している。室内照度はおおよ

そ3m~6mの間で極値をとり、それ以上の高さになる

と急激に減少する。Dianaの二階以上の階高を4mと仮

定し、それぞれの階高での照度を見ると低層期(1、

2 階 ) で は あ る 程 度 の 効 率 的 な 採 光 を 見 込 め て い た

が 、 高 層 化 が 進 ん だ 時 期 で は 初 期 の お よ そ 50% 程 に ま

で室内照度が減少している。低いところでは10lxまで

照度は下がっており、この頃はほとんど昼光が室内ま

で差し込まない状況であったことが数値として読み取

れる。このように、他の中庭式住宅でも2、3階層に

あたる建物高さの時点で急激に室内照度が減少する傾

向 が 採 光 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン か ら 判 明 し た 。 し か し 、

Diana は 低 層 期 で も 低 い 照 度 値 を 示 し て お り 、 他 の 住

宅と比較し減少傾向は比較的緩やかである。 0 50 100 150 200 250

300-中庭

照度 [

lx

]

9 10 11 12

15 14

16

13

9 10 11 13 12 14 15 16 平均照度Eave [lx]

Room Num.

102.2 108.4 60.0 134.2 0.3 1.3 70.1 104.7 最大照度Emax [lx] 547.5 558.7 500.3 745.0 1.5 6.2 500.8 546.9 均斉度Esym [-] 0.187 0.194 0.120 0.180 0.211 0.204 0.140 0.191

図4 Domus del Protiroの室内照度分布

図5 中庭式住宅の中庭面積と室内照度

  図6 Casa di Diana(復元図)     図7 Casa di Dianaの高層化による室内照度変化

20 40 60 80 100 120 140

0 50 100 150 200 250 300 350 400

中庭面積 [m2]

室内平均照度

[lx

]

………主室 ………側室

全住宅平均…140lx

Edificio Gorgoni

Rotondo

Diana Muse Protiro

Peshi

AnnonariaFluminata

Colonne

0 10 20 30 40 50 60 70 80

4

(1階) (2階)8 (3階)12 (4階)16 (5階)20

建物高さ H[m]

各居室の室内平均照度

[lx

]

(4)

27-4 5.2. 中庭の機能

 Annonariaの中庭には図7に示すよ

うな像が複数体置かれている。他の

住宅の中庭にも水盤や噴水といった

装飾物が配置されており、当時の中

庭 に は 採 光 機 能 と は 他 に 接 客 空 間 と

しての機能があったことは言うまでもない。また、こ

の住宅は二階層であったと考えられており、中庭を接

客空間としての機能させるためには低層であった可能

性 が 考 え ら れ る 。

※ 5

一 方 でDianaの よ う に 中 庭 規 模 が

小さい住宅は、低層であった時期から採光の機能は弱

く,中庭に対して、もともと採光機能が期待されてい

なかったため、照度環境を考慮せずに高層化が進んだ

と考えられる。

6. 分析-街路採光を図る住宅の室内照度 6.1. 側窓による室内照度

 中庭式住宅との比較として、図8に街路採光を図る

住宅の一例としてCasa di Dipintiの照度分布図を示

す。街路に面する居室は中庭採光を図る居室と比較し

400 ~ 1200lx と 顕 著 に 高 い 照 度 を 示 し て い る こ と が 分

かる。一方で、街路に対する開口部を持たない居室は

中庭型住宅の一室と同程度の室内照度を示している。

6.2. 連続開口窓

 この住宅で最も明るい居室は上下に3つの開口部を

有しており、それぞれに開閉窓が設置されていたと考

え ら れ る 。 図 9 に 連 続 窓 の 開 閉 に よ る 室 内 照 度 の 変

化 を 示 す 。 窓 の 開 閉 に よ り 、 100lx の 照 度 か ら 1200lx

までの幅広い照度範囲を調整できることが分かる。ま

た、下段窓を一つ開けた場合と上段窓を全て開けた場

合 で は 室 内 平 均 照 度 は 300lx 程 度 と 同 じ 値 を 示 し て い

るが、後者は室全体を均一に照らしており均斉度の高

い照度環境である。このように、窓の開閉により室内

を様々な照度環境に調整できることが分かる。

7. 結論

 古代ローマ都市であるオスティアでは建設技術の発

展や人口増加といった様々な要因から建物の高層化が

進んだと考えられている。しかし、オスティアの建設

以前から存在する中庭式住宅は今回のその採光シミュ

レーションの結果から、室内に十分な照度を提供する

という点では建物の高層化にうまく適合できない住宅

計画であったと考えられる。特に、中庭に接客機能を

持つ住宅では、中庭の照度を保つために高層化を避け

低層が維持されたとも考えられる。また、ローマの風

土は非常に日差しの強い照度環境である。この土地で

発達した連続開口部による街路採光は、窓の開閉によ

り室内照度の調整が可能であり、天候状況や室内の用

途に合わせて室内照度環境を調整していたと考えられ

る。このように、古代ローマ都市における採光計画の

考え方は、室内に昼光を取り入れるというよりも、野

外 の 厳 し い 照 度 を 抑 制 す る こ と で あ っ た と 考 え ら れ

る。中庭式住宅もその考えの一端であり、街路採光が

普及する以前の時代では、中庭が野外昼光を抑制する

装置としての機能を担っていたと推察できる。

図7 中庭の像

図8 Casa di Dipintiの室内照度分布図

図9 Casa di Dipintin(Room10)の連続開口窓の開閉による室内照度の変化

図10 中庭式住宅の低層維持及び高層化

0 250 500 750 1000 1250

1500-照度 [

lx

]

2 3 5 6 9 10

平均照度Eave [lx] Room Num.

22.2 143.9 1719.5 786.6 2166.1 最大照度Emax [lx] 5.8 31.2 888.2 455.9 1207.1

均斉度Esym [-] 0.261 1517.5

822.7

0.542 0.217 0.517 0.580 0.557 2

3

5 6

10 9

0 200 400 600 800 1000 1200 1400

0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8

…1 …2 …3

…4 …5 …6

上段窓を全て開放 下段窓を一つ開放

均斉度 [-]

室内平均照度

[lx

]

1000lx

500lx

400lx

300lx 200lx 400lx 600lx

800lx

0 100

50 180

Annonaria Protiro Edificio Muse Gorgoni Diana

………中庭面積 [ ㎡ ] … 平面で予測される照度上限 [ lx ] ……… 実際の平均照度 [ lx ]

2階 2階

中庭規模 平面計画 採光の考え

結果

階層 2階 4階 4階 5階

〇 △ × △ × △

× × 〇 △ △ ×

生活のため一定の

採光が必要 採光に対する意識が低い 接客空間として

採光が必要

低層を維持 高層化

[ 注釈 ]

※ 1 Europe Standard Diffuse Illuminance  ※2 (6) の復元図より

※3 JIS 照度基準―住宅の照明(但し、これはあくまで現代の日本人の視覚を基準と しており、参考としてのみ扱う。) ※4 (5) より ※5 (6) より

[ 図版 ]

図1:(6)ig.111 より、写真は筆者撮影 図2:(2)71- 図 3.14 を基に筆者作成 図7左:(3)ig.96 より 図9:(5)ig.6 より 図 11:筆者撮影

図 12:(5)ig.6 より 図3,4,5,6,7右,10,13:筆者作成 [ 参考文献 ]

(1) 古代ローマにおける採光計画についての一考察 重石真緒 (2) 建築環境工学 浦野良美・中村洋編著

(3)A Proposal for a Dating System of Late-Antique Masonry Structures in Rome  and Ostia Heres Th. L

(4) The Insula of the Paintings at Ostia 1.4.2-4. Paradigm for a city in lux  DeLaine J

(5)Le origine latine dell'abitazione moderna (I)", Architettura e Arti      Decorative  Carza G

参照

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主任審査委員 早稲田大学文学学術院 教授 博士(文学)早稲田大学  中島 国彦 審査委員   早稲田大学文学学術院 教授