乳 幼 児 の し つ け に お け る 母 親 の 感 情 体 験
一母子の事例記録と母親の面接調査を通して一
学 校 教 育 専 攻 教育臨床コース 有 井 順 子
1 問題と目的
母親が育児不安を訴える中にしつけに関する ことが多くある。母親がしつけにおける子ども との関わりの中で,自身の思いを振り返り,受け 止め,子どもの心の中を探ろうとすることでよ
りよい母子の関係性が再編される。
本祈究では,しつけにおける母親の感情体験 を考察するとともに,母親自身がどのように子
どもの思いや発達を捉えていけばよいのか,実 際的な知見を呈示することを目的とする。
2
方法 (1)事例ま縁筆者自らの,我が子とのやり取りを言識し 考察を行う。生後すぐからま録をとってし、たが,
本論文では,しつけにおける母親の悩みが顕著 になった下記の期間を主として取り上げる。
言
E
録期間:X
年1 1
月‑ ‑ ‑ X + l
年1 0
月の1 2
ヶ 月間。子どもの月齢は16ヶ月‑‑‑27ヶ月。(2)面接調査
乳離れとトイレットトレーニングに関して,
X+l
年9
月に母親1 4
名に面接調査を実施 3 事例言己録(1)食事:よい母親になろうと努め,子ども が食べない時に母親への否定と受け止め,感情 をコントロールで、きなくなった。しかし,子ど もの反発や悲しみなどの反応から反省し改めた。
また,子どもが母親の思いを察していると感じ るようになり,母親が妥協できるようになる。
指導教員 山下一夫
(2)衣服の着脱:子どもは衣服の着脱に興味が あり,母親が遊びとして捉えることで自立を促せ た。また,子どもが助けを求める姿に,母親は安 心基地になれていると喜びを感じ,二人一緒にい て安心して一人でいられる能力を身に付けてい った。子どもを見守り,認めることができるよう になり,上手くいくパターンがで、きてくる。
(3)歯磨き:虫歯ができないようにと母親の思 いが強くなると子どもの反発が強まった。悩み苦 しみながら前珍撤する中で,子どもの思し、をま ず優先させることで楽しくなり,その後母親の思 いも受け入れられる体験をする。子どもの発達に 伴い,子ども自身がすべきことと認識し,楽しん でできることが増えてくる。
(4)乳高針L:母親が断乳か再考しかで、揺れ動いた。
子どもの思いを大切にしようとするが,母性と女 性性との間で葛藤があったo様々な支えによって,
母親のいまのあり様を受け入れてもらい,現状を 肯定的に捉えられるようになる。母親の願いも伝 えながら,子どもの思いを安定して受け入れ,子
どもの嬉しそうに主張する姿に喜びを感じる。
(5) トイレットトレーニング:焦りをもって 関わり,子どものおまるで#同世することへの恐 怖心に共感できずにいた。なぜできないのかと 否定的感情をもち,ずっと続くのではないかと 焦り,一層励まして頑張らせようとした。環境 の変化もあり,母親が現状の子どもの姿を認め,
よく褒めるようになり,子どももおまるででき
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ることが増えてくる。気候が寒くなると後戻り するが,自分達のベースでやればいし¥と焦る
ことなく待てるようになる。
(6)遊び:子どもが興味をもち,楽しむこと は必ずしも母親にとって望ましいことではなし、
しかし,遊びとして共に楽しむことが,結果と して母親も望む生活習慣の獲得や社会性の発達 等, しつけにもつながっていた。
4 面接調査
(1)乳離れ:母手し栄養の人に,手指針凶寺にお いて戸惑いが大きく,適切な情報提供やー相談等 による個別的な支援が必要と思われる。母親に は多くの選択肢があり,母親自身が子どもとの 折り合いの中で決められるのがよいと思われる。
(2) トイレットトレーニング:トレーニング 開安部寺期について,半数以上が 25ヶ月以降であ
り
, これまで、の調査結果よりも遅し呼項向にあっ た。遅く始めた方が数日で完了し,楽であると いう情報,実感をもっ母親が多い。これは, 1 歳頃から排便行動の意識化を促し,
2
歳頃までにおまる等への排便誘導を徐々に行うのが適当 という,子どもの立場の考え方と随分濯う。今 後このズレに何らかの手立てが必要である。
5 全体の考察
(1)しつけにおける母親の感情体験:①よい 母親を目指し,上手くいかずに自信を失う。② 子どもの反抗や自己主張を母親への非難として 受け取る。子どもに対する見通しがもてずに,
今の状態がずっと続くように感じ,不安になる。
③よい母親になろうとして,自身の思いを抑え た結果,復主動的な感情が生じる。そして,子ど もの思いを汲めなくなり,母親の自己の視点に 焦点化した対応をとる。④子どもの即芯を受け て,母親は反省し,考え祈
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動を改める。⑤子 どもが母親の思いも察していると感じられるようになり,子どもに母親の思いも伝え,母子が 共に歩み寄れるようになる。このような過程を 行きつ戻りつしながら徐々に,その母子の関係 性が再編されていくことが示唆された。
(2)母親にとって重要なこと:①子どもの両 価性,自分自身の両価性を受け入れ,ほどよい 母親になること。②母親としての大切さと一個 人としての自分を感じること。@避けられる子 どもの欲求不満は避け,子どもが求める時には 応えていいと考えること。子どもの興味を他の ものに移したり,子どもの要求に応えたりして 母子の対立を避けることで,母子が楽しい時間 を過ごす機会が増える。④子どもの視点に立っ て考えること。しかし,母親自身の思いを抑え 込むのではなく,様々な支えを利用しながら,
子どもと母親の思いのバランスをとることが大
切である。~遊びでの子どもとの楽しし、体験。
⑥子どもが母親を愛し,喜んで、いると問主観的 に感じられること。⑦母親が安心基地になれて いるという自覚と,互いに自分の時間をもち,
二人一緒にいて一人でいられるようになること。
(3)子どもの姿をどう捉えたらよいのか:し つけにおいて,母親はできないことが目につき,
焦引こつながりやすい。時がたてば必ず変化す ると捉えることで,母親の心にゆとりがうまれ る。また,子ども自身が喜びを感じている,母 親が安全基地になっている, と捉えることが重 要である。それは母親にとっても喜び、で、あり,
自己効力感を高める。
(4)必要な支援について:母子の関係性が大 きく揺らいでいるこの時期に母親を支援するこ とが非常に有効であると思われる。また,必要 な情報を提供し,母親の葛藤に寄り添い,子ど もの成長や子育ての喜びを感じられるような,
専門員による絹続的な支援が必要である。
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