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四国における一級河川の流況変動特性について

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Academic year: 2022

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四国における一級河川の流況変動特性について

東京都立大学 工学部土木工学科 学生員 落合 健太 首都大学東京 都市基盤環境工学専攻 学生員 ○梶井 剛 首都大学東京 都市基盤環境工学専攻 正会員 河村 明 首都大学東京 都市基盤環境工学専攻 正会員 天口 英雄 1.はじめに

近年,全国的に洪水や渇水による被害が増加傾向にある.

四国においては,南四国は熱帯地域並に雨が多く,北四国は 人口1人当たりの降水量が砂漠地域並という宿命的な厳しい 気象条件を持ち1),さらに河川周辺への人口,財産の集中が 進んでおり,治水・利水の観点から河川流況の長期的変動特 性を把握することが重要となっている.本研究では,四国に おける一級河川の流量年表2)による日流量データを対象に,

欠測値の状況把握及び補間を行ったのち,長期的流況変動特 性について検討した.次いで,各一級河川の確率流況を昇降 順対数流況曲線3)を用いて視覚的に表し,各河川の確率流況 を比較検討した.さらに吉野川第十堰による旧吉野川への分 流実態について考察を加えている.

2.四国一級河川の全般的な流量変動特性

本研究では,四国における一級河川8河川の基準点(図-1 の赤丸印)のうち,データ不足のため比較しづらい肱川(大 洲)を除いた7基準地点の日流量データを流量年表より抽出 した.それぞれの抽出期間は各観測点の観測開始より 2002 年12月31日までとした.表-1に各基準地点における観測 開始年および流域面積を示している.次に,流量データには いくつかの欠測値が含まれていたため,これらの欠測値のう ち連続欠測期間 4 日間以下のものに関しては線形補間を行 った.補間後に欠測値を含む年は欠測年として取り扱った.

図-2に, 7河川の年間総流出量時系列を示している.この 図より,北四国の土器川,重信川は明らかに年間総流出量が 少ないことが分かる.他の南四国5河川は年間総流出量に差 があるものの,同じような流況変動特性を示している.7河 川の年間総流出量の相関については,南四国の5河川間は相 関係数が比較的高く(最大は吉野川,仁淀川の0.89),北四 国の 2 河川の相関は0.33と低いものとなっていた.また北 四国と南四国の河川間には有為な相関は認められなかった.

キーワード:四国一級河川 長期的流況変動特性 昇降順対数流況曲線 確率流況 吉野川第十堰 連絡先:〒192-0397 東京都八王子市南大沢1-1 首都大学東京 都市環境科学研究科 Tel 042-677-1111 E-mail:kajii-go@ed.tmu.ac.jp

図-2 四国河川7河川の年間総流出量時系列

1960 1970 1980 1990 2000

10 20 30 40 50 60 70 80 90

[年]

流量[億m3/年]

吉野川 仁淀川 四万十川 物部川 重信川 那賀川土器川

四国河川(基準点)観測開始年 全流域面積(km2 流域面積(km基準点 2

吉野川(岩津) 1961年 3,750 2,811 仁淀川(伊野) 1968年 1,560 1,462.70 物部川(深渕) 1968年 508 468.3 四万十川(具同) 1955年 2,270 1,807.60

重信川(出合) 1956年 445 445 那賀川(古庄) 1955年 874 765 土器川(祓川橋) 1975年 140 103.8

肱川(大洲) 1996年 1,210 984

表-1 各河川の観測開始年と流域面積 図-1 四国一級河川の基準点

Ⅱ-075 第35回土木学会関東支部技術研究発表会

(2)

3.昇降順対数流況曲線による流況変動特性

本研究では,流況曲線として「昇降順対数流況曲線」3)を適用して以後の検討を行うこととする.昇降順対数流 況曲線とは通常の流況曲線を改良したもので,降順位日数および昇順位日数がそれぞれ183日目までの日流量を同 時に同じ対数軸上にプロットするものである.昇降順対数流況曲線は,これまでの流況曲線に比べて同時に何本描 いても容易にその差異が認識でき,また低水および高水の極値部分を共に強調できる特徴を有する.ここでは,流 量を基準地点流域面積で除した比流量を用いて,四国一級7河川の平年(ここでは50%超過確率値とする)の昇降順 対数流況曲線を図-3に図示した.図-3より仁淀川,四万十川,那賀川の3河川の流況曲線はほとんど重なっており,

これらの 3 河川の平年流況はほとんど同等と判断される.また,

北四国の土器川,重信川の平年流況は他の5河川に比べ,全体的 にかなり低いものとなっていることが分かる.次に,南四国5河 川のうち吉野川については低水量以下の流況は他の河川とほと んど同じであるものの,特に平水量以上の流況がかなり小さいと いう流況特性が見られる.逆に物部川については最大流量から平 水量までは他の河川とほとんど同じであるが,平水量以下,特に 渇水量の流量がかなり低くなっており,低水時の流況が小さい特 性を保持している.なお,ここで豊水・平水・低水・渇水流量と は年間の日流量を降順に並べた場合のそれぞれ95日,185日,275 日,355日の日流量のことである.

4.吉野川第十堰による分流実態

吉野川の第十堰を挟んだ上流側の中央橋観測所と下流側の旧吉野川観測所の1963年1月1日から2002年12月 31日の流量データを流量年表より抽出し,吉野川第十堰による分流実態について検討する。

第十堰は旧吉野川と放水路である新吉野川の分派点の新吉野川側にあり,河道を横切って建設された固定式の分 流堰である4).この放水路は主流型であり低水を超えた流量を受

け持つ機能を有する.図-4に中央橋観測点および旧吉野川観測点 における年間平均日流量変動(欠測年を除いた1963年~2002年 の平均日流量)を示している.ここで視覚的に分かることは、冬 季に中央橋流量のほぼ 100%が旧吉野川に流れ込むことである.

夏季には中央橋流量は大きくかつ変動も大きくなり,流量の多く は放水路へ流れ込むが,旧吉野川流量は若干大きくなるもののほ とんど一定で変動は小さく,このことより旧吉野川への安定供給 がなされていると考えられる.

5.むすび

本研究では,流量年表の日流量データをもとに四国一級7河川の流況変動特性について検討を行った.その結果,

北四国の2河川の流況に関しては平年の比流況曲線が小さく,南四国5河川に関してはほぼ同じ流況変動特性を示 すものの,吉野川については,平水量以上の流況が小さく,また物部川については低水量以下の流況はかなり小さ くなることが分かった.さらに,吉野川第十堰による分流実態としてより上流側の流量に関らず,下流側旧吉野川 の流量はほとんど一定であることが分かった.

参考文献

1)国土交通省四国地方整備局:http://www.skr.mlit.go.jp/ ,2008.

2)国土交通省(建設省)河川局編:昭和30年度~平成14年度流量年表,日本河川協会,1955-2002. 3)河村明,久野祐輔,神野健二:昇降順対数流況曲線の提案,土木学会論文集No761,pp.91-94,2004. 4)岩屋隆夫:日本の放水路,東京大学出版会,2004.

1/1 2/1 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1 8/1 9/1 10/1 11/1 12/1

0 100 200 300 400 500 600

年平均日流量(m3/s)

中央橋年平均日流量 旧吉野川年平均日流量

図-4 中央橋観測所および旧吉野川観 測所における年平均日流量

1 5 10 50 100 183

0.001 0.01 0.1 1 3

昇降順位日数[日]

比流量[m3/s/km2]

吉野川平年 仁淀川平年 土器川平年 物部川平年 重信川平年 那賀川平年 四万十川平年

図-3 昇降順対数確率比流量流況曲線

Ⅱ-075 第35回土木学会関東支部技術研究発表会

参照

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