水酸化鉄を主成分とするバイオマットの初期形成に ついて
著者 田代 陽子, 田崎 和江
著者別表示 Tashiro Yoko, Tazaki Kazue
雑誌名 地球科学
巻 53
号 1
ページ 29‑37
発行年 1999‑01‑25
URL http://doi.org/10.24517/00061681
doi: 10.15080/agcjchikyukagaku.53.1_29
地 球 韋卜学
53
巻,
29 〜 37
(1999
年 )Earth
Science
(ChikS −
ul
(ngaku }vol. 53 , 29 − 37 .
1999
水酸 化鉄 を主成分 と す る バ イオ
マ ット の 初期 形成
に つ いて
田 代陽子
田 崎和 江
*’
* *The
primitive
stage of microbial matscomprizing
iron
hydroxides
Yoko
Tashiro
*and
Kazue
Tazaki
*・
* *Abstract Brownish
yellow
microbial
mats
growing
abng
the
Kakurna
River
and
at
thecontrolling
pond
in
theKakuma
Campus
of
Kanazawa
University
are
ofpredominantly
iron
oxidiz
五ng
bacteria ,
such
as
LePtothrix
sp .
,Gallione
〃αsp .
and
Toxo
th
re ’ x
sp .
Those
microbial
matsuse
ferrous
ions
as
their
energy
source
through
the
oxidation
into
ferric
ions ・
Transmission
electron
microscopy
of theprimitive
microbial
mat
,have
revealed
mucoid
substancesof
乃κo’ぬ万κsp ,
like
polysaccharides
areeffective
for
adhesion
ofiron
hydroxides
produced
throughbiomjneralization
of
7b
κo
魏アsp .
Iron
hydroxides
coated
with
mucoid
substances
are
coagulatedinto
coUoidal
particles
200
nm
in
size .
Such
condensed
colloidal
iroll
hydroxides
grow
intQ
the
aggregates
and
subsequently
may
be
expeHed
outward
from
the thinmembrane
of
polysaccharides . It
is suggested
thatpolysaccharides of 7
わκo’ん万κsp .
prevent
dispersion of
iron hydroxides and
promote
coagulation
ofiron
materials .
Such
a
condensation
process
ofiron
hydroxides
isconsidered
to
be
a
factor
for
increasing
the
thicknessof
m {crobialmats , Key
w ’ ords
mlc
「oscopy ・
microbial
mats
,Toxothrix
sp .
,polysaccharides ,
iron
hydroxides
, transmissionelectron
は じめ
に西オ
ー
ス トラ リ アに約35
億 年前とい う世界最古の生命化石 が 全 地 球 史 解 読研 究 グルー
プ に よって発 見さ れ,
初 期の地球 生命の生 息 環 境に関 心 が もた れてい る
.
地 球一
ヒに微 生 物があ らわ れてか ら地 球の大 気 組 成 も変化し, その環境の変化に適応し な が
ら微生物は生存し続け た (川 上
・
熊 澤1995
;Jr1
上 ほ か1995
).
微生物は, 地球環境の中で, 有機物の分解や 窒索の固 定, 微量 元 素の濃集な どを通 じて,
生 態 系の物 質 循 環の中で重 要 な 役 割 を 果 たし て い る (例えばBeveridge
and
Fyfe
l985;Beveridge
and
l
)oyle
1989
;田崎1995a
;田崎1997
).
微生物は しばしば集合体を作っ て生息し, バイオマ ッ ト (微生 物被膜)と呼 ばれる構造 物 をな す.
バ イ オマ ッ トは間 欠 泉 や,
熱水 噴 出孔
,
鉱 山 廃水,
河 川な どの水辺の さ まざま な環境下に 存在す る (田崎1995a
;若尾1996
;Tazaki
and
Ishida
1996
a
;田崎ほ か1996b
).
田崎 (1997
)は, 日本の29ヶ所で確 認さ れ たバ イ オマ ッ トにつ いて
,
その生息環境とバ イオマ ッ ト中に みられ る微生物と生 体 鉱 物に ついて報告し てい る
.
バイ オマッ トの生 存お よ び繁栄は その水質 (化学成分, pH , 酸 化 還 元 竃位な ど)に大きくゆだね られ, フ ィ ルム状
,
被膜状,
マ ッ ト 状,
テラス状な どの様々な構造物を形 成し,
その内部に金属の 沈積と生体鉱 物の生 成 〔バ イオミネラ リゼー
ショ ン)が認めら れている (田崎1995
;田崎ほ か1995
;Ferris
1989
;Fortin
et
al .
1997).
バ イ オマ ッ トは, 多種 多様の細菌 (バ ク テ リ ア)の集合体であ り, 生息環 境と の相互作 用によ る 周 辺 環境へ の影 響を評 価で きる (例 えば
Tazaki
and
Ishida
1996
). Schrenketal,
(1998)に よ れば, 酸性鉱 山 廃 水 域に おいて pH が異 なるのは,
そこに生 息す るTJtiobaci
!gtts
ferrooxidans
と
LePtosPirillum
ferrooxidans
の存 在率が異な る た め にpHが変り, そ の pH は代 謝速度を反映し てい るという
.
また,
先カ ンブ リア時代の地球に おいて, 微生物が行 う代 謝 作 用に よっ
て縞状鉄鉱床やス トロ マ トラ イ トなど が形成さ れ
,
地球表 層の1998年4月6H 受付
.
1998年10月27
日受 理.
’
金 沢 大学理 学部地 球 学 科 〒9201192 金沢市角間町
Departmenしef Earth Sciences
,
Kanazawa
University ,
Kakuma,
Kanazawa
9201192,
Japan* ’
北 陸支 部30
田代 陽 子・
田崎 和 江環境に大規模な変動をもた ら した といわれて い る
.
縞 状 鉄 鉱 床 やス トロ マ トラ イ ト は,
始生代, 原 生代のバ イ オマ ッ トの化 石 と考 え られ (川上・
熊澤1995
), これ ら の形成メ カニ ズムを明 ら かにす るた めにも,
現 生バ イオマ ッ トの研 究 が必 要と され てい る (例えば田崎ほか 1996)
.
と くに,
高温,
強 酸性 環 境の バ イオマ ッ ト は, 生 息で き る微生物の種類が限定さ れ ることか ら,
原 始 地球の生 態 系モデル として重 要で, 温泉バ イ オマ ッ トの研 究が 注 目されてい る (川 上
・
熊 澤 1995;川 上 ほ か1995
).
バ イオマ ッ ト は岩石の表面や側溝な どの固体の表面に付着し て生 長 す る
.
付 着のメ カニ ズムは微 生物の分 泌物がそ の役割を 果た し てい る と考え ら れ て お り,
若 尾 (1996
> は, 酸 性 鉱 山 廃 水 中に生 息す る粘性糸状バ イ オマ ッ トの実体は,
好 酸 性化 学 独 立栄養の鉄 酸化細菌が自ら粘性多糖 (一
種のグリコカ リックス)を生産し
,
連 鎖状に増殖した, 細胞集塊 鉄 酸化バ イ オマ ットである と報告して い る
.
ま た,
微 生 物の分 泌 物は代 謝活 動に よ り形成さ れ た鉱物を付着さ せ る働き が あ る と考え ら れて い る(
Gh1orse
l984).
しかし, そ の分泌物とバイ オ ミネラ リゼー
ショ ン との相 亙 関 係につい ては不 明 な点 が多い
,
そこで, 本研究で は
,
金沢大学調整池および角間 川にみ ら れ るバ イオマ ッ トを用いて, 主に電子顕微鏡により微 生物 とその 分 泌物,
さらに, 生体鉱物の形成過程に おける分泌物の役割に 注 目し, 観察を行っ た.
微生物の放出 す る粘着物 質 が, 水 酸 化 鉄 を取り込みバイ オマ ッ トが形成される, 初 期 段階につ いて検 討し たの で報告する.
試料
および 実験方 法
翻金 沢 市 角間町にある金沢大学角間キャンパス内調整池およ び 角間川の本 流 お よび その側 溝の水 抜 き穴の湧水に おいてバ イ オマ ッ トの み と め られ る地点で野外実験を行い
,
付 着 したバ イ オマ ッ トを研究試料と し て用い た (第1
図).
金 沢 市一
帯には 第四紀更新世 浅海性の砂岩層である大桑層が広く分布してい る が, 土地開発に より大 桑 層 が切 り崩 され,
そこか ら流出す る湧 水の周 辺に は おびた だ しい 量の赤 褐 色のバ イオマ ッ トが生成して お り, 金沢 大 学 建 設 地 周 辺 もその
一
例である.
大桑層からの 湧 水 が 流れ ている金沢大学調整池の側 溝 は,
黄 褐 色のバ イ オマッ トが
一
面に覆ってい る
.
試料の採取に当たっ ては,
それぞれの調査地 点に カバ
ー
ガ ラ ス お よびマイ クロ グリッド を両 面テー
プで接着さ せた
OHP
シー
トをス ラ イドの枠 (カ ラ ム)に挟んだ ものを設置し, 黄褐色のバ イオマ ッ トを沈 着 させ て研 究 試料
と した (第
2
図 ).
その際, カバー
ガ ラス は葉な どの浮遊物の 付着を避け る た めに流 れに対して平行に置き, バイ オマ ッ トの みが付着する ように設 置 した.
それらを定期的に調整池で は1
時間,
3
時間,6
時間,12
時間,1
日〜 7
日毎に,
角 間 川で は1日
〜
7日毎に採 取し た.
この野外実験 は,1997
年 4月〜
12月の間 行なっ た
.
第1図
.
金 沢 大 学角問 キャ ン パ ス の調整池に向かっ て流 入 す る 側 溝に 形成し た黄褐色のバイ オマ ッ ト.
矢印は サンプル採 集地 点 を示 してい る.
0
5
一
第2図
.
第1図 に 示 し た側 溝に お け るバイ オマ ッ トの付着実 験の模 式 図.
数 日 間で, カ ラム全体が 黄褐色のバイオマ ッ トで覆わ れ る
.
実験方法付 着 実 験 を行った現 地で は定 期 的に水質調 査を行い,
pH
,Eh
(酸化還 元 電位),EC
(電 気伝 導度), DO (溶 存酸素 量)を そ れ ぞれ 各 電 極メ
ー
ター
(堀 場,D −
12,D −13
,ES −12
,OM −14
)で測定し た.
バ イ オマ ッ トは,
落射蛍光・
微分 干渉顕微 鏡 (ニ コン製
, OPTIPHOT −2
/LABOPHOT−2
;落 射蛍 光 装 置EFD − 3
およ び 透 過 型微分 干 渉装 置NTF ・ 2A
>により
,
付着物の観察を行っ た.
落 射 蛍 光 顕微 鏡で観 察の際には,DAPI
(4,6−
diarnidino −2−
phenylindole)染 色を行い,
フ ィ ルター
(UV −
1A) を通し て観 察した.
DAPI−
DNA 錯体は蛍 光顕微鏡下で365nln
の波 長の光 (紫 外 線 )で観 察 す ると青 色 を呈し, 生 物の存 在が確 認できる.
また,
付 着 物のっいた カバ水酸 化 鉄を 主成分 とするバイ オマ ッ トの初期 形成につ い て 13
一
ガ ラスをその ま ま試 料 台に岡定 した もの と,
超音 波 洗 浄 を3
分 間行い
,
風 乾し た試料と を カー
ボン の両 而テー
プで固 定し,
炭 素蒸着 あるい は金蒸着し た後, 走 査型電子顕微 鏡 (日本 電 子,
JSM
52eeLV
)を 用い, 加速電圧15kV
の条件で観察を 行っ た.
その際 化 学組成は, 炭 素 蒸着し た も の につ いて, 走 査 型電 子 顕 微 鏡 に取 り付 け られたエ ネル ギー
分 散 分 析(
Philips ,
PV −9755−88
)を用いて, 加速電 圧15kv
, 傾 斜角 度30
度で分析した.
さらに, 透 過 型電子顕微 鏡 (日本 電子,
JSM −
2000EX ) を用いて, 付 着 物のつ い たマイ クログリッ ド を,
加 速 電圧20DkV
で観 察 し,
電 子線 回折で付 着 物の同 定 を 行っ た.
無反射板 (Si
単結晶)に塗布し て風乾し たバ イ オマッ ト は,
X
線粉末回折 分析 (理学電機,
RINTI200
, 電圧 40 kV, 電 流30mA
,CrK
αの管球)を行い, 鉱 物組成を同定した
.
結 果
水質
実験地である金沢大 学調 整 池および 角間川の水 質 は,
1997
年
4
月〜12
月の間, 定 期 的に測 定 をお こなっ た結果,
pH, Eh
,EC ,
DO
の どの測 定 値も非常に安定し ていた (第3
図A
,B ,C
,D
).
調整 池の pH は6. 4〜7. 0
, 角 間川は6. 0〜6 , 5
と年間を通し て
一
定してい る.
また,Eh
は 両 地 点ともOmV
で ほ ぼ同 じ値を示し,
EC
は調整池では 0.
26〜O. 40mS
/cm ,
角 間
lr1
で はD. 40mS
/cm
で, わずか に前者が低い.一
方, 角 間 川と調整 池のDO
は大きく異な る.
また角間川に流れ 込 む 水抜き穴か らの湧水のDO
は,0
から1mg /e
で貧溶 存 酸 素 状 態を示し, 調整 池で は 6〜
8mgfe と い う酸 素 状 態を示し た.
水 温は調 整 池では 11
〜14
℃,
角 問 川本流で は14〜20
℃を示 し,
後者のほうが高い傾 向が ある.
エ ユ
9
.
O 8.
O 7.
O 6,
05 .
04 , 0
A
[
pH ]
: i 評
、
e_一 一 t −. − i −
}’ A LL − i
’ 二
∵ 寸 1 「
一
.
I
t、 . 一_
_」
1997年
4
月500B
5
月 6月 7月 8月 9月10
月12
月時 間
1
1
.
0 0.
8 宕 o.
6 ミ窟 ご
o.
4国
0
. 2
o. o
C
1997年
4
月lEhI
っ 調整 池世
角 間川
15
. 0
ECI ・
調 ]
‡ ぐ 4 劉
250
0
(
>
E
)
‘ 国
一
250一
5001997年
4
月乱
宀
=珪
∵
_
■
5月 6月 7月 8月
9
月 10月 12月 時 間D
. 凡
一
L−−
i5月 6月
7
月8
月 9月 10月 12月 時 閥12
.
5
10 .
0;
翫
・8
5. O
2
,
50
.
01997年 4月
IDO
」一
. _ . 一 _ . 一 一
σ
躙
整
池]
畳
角
闘
川一
一
一 一
s 〆 渉 ト 毒一一 _
_ γ !<
」
\ 豊 二 士 二 〜 −r − 一 綿
5
月 6月 7月 8月 9月 10月 12月 時閥第3図
.
調整 池および角間川の水質 調査の結果.
測 定期間は1997年4月〜
12月である.
(A
)pH
, (B)Eh
酸 化 還 元 電位,
(C)EC 電気 伝 導度,
(D)DO 溶存酸素.
調整池と角 閭川を 比較する と,
DO の値が大き く違い, 角間川に流 れ込 む湧 水は,
酸素が非 常に少ないこ とを示し ている
.
32
田代 陽子・
田崎 和 江訟
の
冖
g 褊
≦
q
:quartz
20 . O 40 . 0
60 . O
Cr
κa2
θ [’
ユ 第4
図.
バ イ オマ ッ トのX
線粉末 回折分析.
バ イ オマ ットは 2
. 5A
付 近に弱い ピー
ク が みられるこ と か ら,
非 晶質の水 酸化 鉄が,
ま た 3,
0蓋付 近をピー 一
クにした プロ
ー
ドな反射を示すこと か ら,
有機物で構 成されているこ とを示 唆 してい る
.Q
:石 英,
F :長石類.
付 着 実験結果
実験 開始
3
日後,
肉 眼で も認 識できるほ どに黄褐 色のバ イ オマ ッ トがガ ラス面に付着し始め
, 一
週間後に は全 面 を覆い
,
バイオマ ッ トの付 着 状 況は, 厚さ
35mm
ほ どになっ た.
最 表 面に付 着 して いるバイオマ ッ トは, コ ロイ ド状の塊が凝集し,触れ る と容易に分散する
.
調整 池に
7
日間設置して付着したバ イ オマ ッ ト と,
角間 川に 流れ込む水抜き穴の下に付着したバ イ オマ ッ ト をX
線粉末回 折分析し た結果, どち ら も2,
5A 付 近にバ ッ クグラン ド の高 ま りが 見 られ, 非晶質物質の存在を示 し た.
ま た,
少量の石 英 や長 石 類 も調 整 池の試料に は含ま れ てい ることが認め ら れ た(第
4
図〉.
付着物の光学顕微鏡観察結果
実験 開 始3時 間後の カバ
ー
ガ ラ ス の表 面を静か に蒸留水 で洗い, 落射蛍光
・
微分干渉光学顕微鏡で観察 したところ,
黄 褐 色 の微粒子 と微生物のコ ロニー
が観察さ れ た.
その コ ロニー
は不定 形で
,50.
100μm の大 き さである (第5
図A
:微分 干渉顕 微 鏡写真,B
:蛍 光 顕 微 鏡 写 真 ).
バイオマ ッ ト中の微 生 物は,主に球状, 桿状, 糸状お よびらせ ん状のバ ク テ リ ァ が主で あ り
,
ら ん藻類 や ゾ ウ リム シなどの原 生 動物も認め られ た.
調整 池, 角間川と も ほ ぼ同様の結 果を得 た.
第5図
.
実験 開 始か ら6時問後の (A)微分干渉顕 微 鐔 写 真, (B
)DAPI
染色による蛍 光 顕 微 鏡 写 真.
萬褐 色のバ イ オマ ット中には
,
糸 状 菌 や 桿 菌が微 粒 子と混在して い る.
B
Si
PSCa
Mn Fe
Fe
付着 物の電 子顕微鏡観 察結果
実験開始
24
時 間以 内に側 溝か ら採 取 した 試 料 を走 査 型電 了顕 微 鏡によ り観 察 した.
その結果, 糸状菌が網目構造をな して分 布して いる状態 が観察さ れ た (第6
図A
矢 印).
この糸状菌はHolt
et al.
(1994
>によるBergey
,sManual
〔エfDetermina−
tive
Bacteriology
に基づ けば, 束に なり扇の ように広が る形1
2. O
4. 6, 0
.
energy [keV
1
第
6
図.
実 験 開 始から1凵後の走 査 型 電 子 顕 微 鏡 写 真 (A
) とエ ネル ギ
ー
分 散 分 析 結 果 (B).
Toxothidr sp 之 みら れ る糸 状 体 (矢印)が網 目状に広がり,
他の微 生物や 粒 子と絡み合っ ている
.
エ ネルギー
分散分 析 結 果はFe に富み, Si, Ca と少量
の P
,
S,
Mn を含有するこ とを 示 して いる.
水 酸 化 鉄を主成分とす るバ イ オマ ットの初期形 成につ い て
33
態的特徴から,
’ lbxothrix
sp ,
と考え られ る.
これ らの表面に 付着して いる微粒子 をエネルギー
分散分析で点分析し た結果,
多 量の
Fe,
Si
の濃 集 と少 量のP
,S
,Ca ,
Mn
が 認められた(第
6
図B
).
この微粒子は微生物の表面以 外にも独 立 して,
その周辺に集合し てい る
.
透 過型 電 子 顕微鏡を用い て, 実験開始か ら
1
時間後,3
時間 後,6
時 間後,
24時 間 後のマイクロ グ リッ ドを観 察 した.
形 態 的特徴か ら,Holt
et
al ,
(1994
)のマ ニ ュ ア ル によっ て,
鞘 状の
LePtothrix
sp . ,
排 泄物を螺旋 状に生成す るGallionella
sp.
,乃κ
o
漉ガκsp .
な ど が同定さ れ, そ れ ら はコ ロ ニー
を作っ ていること が明 らかになっ た (第
7
図).
この 三者はい ずれ も桿菌や球菌の鉄酸化細菌で ある
.
付着実験開始か ら,
3 時間後,
24 時間後のマイ クログリッ ド上 で観 察さ れ たLePtothrZx
sp . ,
C
.allioneUa
sp ,
, 乃κo
疏激sp ,
の個体数を測定し た結果を第1
表に示 す
.
その結 果,
同 じ面 積 内にToxothrix
sp .
が最も早 く,
かつ非 常に多 量に付 着 するこ とが認められた.
また,Le一
μ
o
漉癩sp .
や桿菌の細胞壁に は, 微粒子が多量に付着して い た (第8
図, 第9
図 ).
微 粒 子はこれ らの微 生物の細 胞表面以 外にも独 立 して集 合 体で観 察さ れ た.
その付 着し ている微粒子の電 子 線 回折 分 析で は
,2. 04A
付近に スポッ ト と, 2.
54A
,1. 47A
付近に拡散し た リ ング状の弱い 回折が認め ら れ た こ と か ら,
低結 晶 性の水 酸 化鉄 鉱 物 と同 定 され た (第10
図 ).
また,厚さ
20nm
程の膜がTo
耀 々7齋 sp.
の細 胞 壁 を覆い,
細 胞に付 着し てい る粒子も そ の膜の中に取 り込まれていた (第11
図).
その膜の厚 さは均
一
で はな く, 細胞から外に向かっ て拡散し て
いる様 子 も認 め られ (第
12
図 矢 印), 細 胞か ら2eOnm
程離れて独立 している微 粒 子も膜で覆わ れて い ることが観察さ れた
.
第 7図
.
実 験 開始か ら1日後のバ イ オマ ッ トの透 過 型 電 子 顕 微 鏡 写真.
GaUioneilαsp, ,
Lゆ’o 漉 癬 sp, ,
お よび Toκo’々癬 sp.
など の鉄細菌と微粒子 が混在する (矢印;a :C;allionella sp
. ,
b :ToxothitSP ・ ・ c
:LePtothn’
x SP
’
)’
第 1表
.
実 験 開 始か ら3時間後,
24時聞後のLePtothnt
sp
. ,
Gattionetta sp,
, 7褫 08 励 κ sp.
の個 体 数。
3時 間 後に っ いて は,
サイズによる個 体 数 をともに記し た.
Time (hour) Leρ
m
ε舟厂’xsp.
6a〃’oρe 〃θsp.
τO
κo
εわ〃κsp .
1μ
m
< 十 十 十 十 十 十3h1
μm > 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十24h 十 十 十 十 十 十 十 十 十
++十+:many
,
++ +:COmmOn,
+ +:SOme,
+;traCe第
8
図.
実験開始か ら6時 間後のバ イ オマ ッ トの透過 型電子顕 微鏡 写真.
LePtothrix sp.
の細 胞 壁に は,
微 粒 子が密に付 着 してい る (矢 印 )
.
第9図
.
実験開始から1時間後のバ イ オマ ッ トの透 過型電 子顕微鏡 写真.
桿 菌の細胞壁に付着し た鉱 物が固定さ れ ている (矢 印 )