大型鋼 I 断面桁の接合方法に関する一考察
著者 一宮 充
著者別名 ICHIMIYA Mitsuru
ページ 1‑98
発行年 2015‑03‑24
学位授与番号 32675乙第217号 学位授与年月日 2015‑03‑24
学位名 博士(工学)
学位授与機関 法政大学 (Hosei University)
URL http://doi.org/10.15002/00011751
学位論文
大型鋼I断面桁の接合方法に関する一考察
2014 年度
法政大学大学院デザイン工学研究科 都市環境デザイン工学専攻
一宮 充
大型鋼I断面桁の接合方法に関する一考察
目 次 頁
第1章 序論
1.1 鋼橋の現場接合方法の現状 1
1.2 既往の研究 3
1.2.1 軟質溶接継手 3
1.2.2 併用継手の施工方法 4
1.3 研究の目的 5
1.4 本論文の構成と内容 6
第2章 大断面I桁接合部の設計法と施工過程の比較
2.1 設計法の比較 8
2.1.1 設計条件 8
2.1.2 高力ボルト継手 8
2.1.3 溶接継手 12
2.1.4 併用継手 12
2.2 施工過程の比較 13
2.2.1 対象橋梁 13
2.2.2 工期 13
2.2.3 工事費用 14
2.3 提案工法 14
2.3.1 工期 15
2.3.1 工事費用 15
2.4 提案工法の課題 15
2.4.1 軟質溶接継手の降伏応力と引張強度 15 2.4.2 いったんすべった高力ボルト継手のすべり係数 16
2.5 まとめ 16
第3章 軟質突合せ溶接継手の降伏応力と引張耐力
3.1 はじめに 22
3.2 試験体 23
3.2.1 供試鋼材と継手の製作 23
3.2.2 試験体の製作方法 23
3.2.3 ビッカース硬さ 24
3.3 引張試験 25
3.3.1 引張試験方法 25
3.3.2 画像計測によるひずみ測定の方法 25
3.3.3 引張試験結果 26
3.4 試験を対象とした応力解析 28
3.4.1 解析方法 28
3.4.2 解析結果 29
3.5 軟質横突合せ溶接継手の耐力評価法の検討 30
3.5.1 解析モデルと解析方法 31
3.5.2 解析結果と評価式の提案 31
3.6 まとめ 34
第4章 いったんすべった高力ボルト継手のすべり係数
4.1 はじめに 51
4.2 試験体 52
4.2.1 設計 52
4.2.2 製作 52
4.3 試験方法 53
4.3.1 試験ケース 53
4.3.2 予すべり試験 53
4.3.3 本すべり試験 54
4.4 試験結果 54
4.4.1 荷重−開口変位関係 54
4.4.2 すべり係数 54
4.4.3 すべり面 57
4.5 まとめ 57
第5章 設計への応用
5.1 はじめに 78
5.2 上下フランジ(横突合せ溶接継手)の設計 78
5.2.1 設計条件 78
5.2.2 軟質溶接継手 78
5.2.3 上下フランジの設計 80
5.3 併用継手の設計 80
5.3.1 設計条件 80
5.3.2 曲げモーメントの照査 81
5.3.3 設計計算結果の比較 83
5.4 工事費用の低減効果 84
5.5 今後の課題 84
5.5.1 内部応力が導入された状態の高力ボルト継手を有する
大型I断面桁の挙動 85 5.5.2 高力ボルトのトルク係数の変動 85
5.5.3 ウェブの座屈 85
5.5.4 溶接継手部の熱影響部の軟化 85
5.6 まとめ 86
第6章 結論 90
参考文献 94
謝辞 98
第1章 序論
1.1 鋼橋の現場接合方法の現状
鋼橋の継手形式は,溶接継手と高力ボルト継手に大別でき,主に工場継手では溶接継 手が,現場継手では高力ボルト継手が採用されている.鋼橋に溶接が採用されたのは,
1931 年の奥羽線檜山川橋梁での補強溶接が最初とされている1,2).また,同時期に西鹿 児島駅跨線橋と横浜市水道鉄管橋が溶接を採用した新設橋梁として建設されている 3). 当時は工場継手,現場継手ともに溶接継手とする全溶接橋梁が一般的であり,溶接継手 は従来のリベット継手の連結板をすみ肉溶接で接合するものであった.1949 年の広島 県の恵川橋では突合せ溶接継手が工場継手に採用され,1952 年の誉鳩橋では現場継手 にも突合せ溶接継手が採用された.当時は,溶接継手を採用した場合は工場接合も現場 接合も溶接とすべきとの考え方があったが,現場溶接で生じる溶接変形や溶接欠陥の発 生の対策に苦慮し,リベット接合と比べてコストが高くなることから,現場接合はリ ベット継手とするのが一般的となった 4).高力ボルト継手は,1956 年に大井町跨線橋
(東京都の道路橋)で初めて使用された1)後,1964年のJIS規格,1966年の鋼道路橋 高力ボルト摩擦接合設計施工指針が制定されるなど,高力ボルト継手に関する基準類が 比較的速やかに整備された.高力ボルト継手はリベット継手と比べて工期の短縮と省力 化に有効であったため,現場継手の形式は高力ボルト継手が主流となっていった.1960 年代に登場した円形断面の鋼製橋脚柱や鋼床版デッキプレートなどの形式では,現場継 手を溶接とした方が施工上容易であり,現場溶接とされることが多い形式として現在に 至っている.しかし,その他の構造形式では現場溶接は普及せず,工費,工期,品質に 関するリスクが問題であると指摘5,6)されてから30年以上経った現在でも状況はほとん ど変わっていない.
1990年代初めころから鋼橋の合理化に関する検討が進められ,ホロナイ川橋7)を始め とする少数主桁橋が登場した.少数主桁橋は,PC 床版を採用することによる広い床版 支間と,桁高3mもの大断面I桁を採用することにより主桁本数を2〜3本とする,と いった構造を基本とし,横構の省略など様々な合理化を図った形式で,旧日本道路公団 の第2東名神高速道路を始めとした橋梁で採用された.この形式の橋梁ではフランジの 厚板化に伴い,ボルトの多列化やボルトの首下長さが標準の製造寸法を超えるなど,図 -1(a)に示すような全断面高力ボルト継手が構成できなくなる問題が生じた.そこで,現 場継手を溶接継手とした図-1(b)に示す全断面溶接継手が採用された.そこでは,厚板部 材に対する予熱規定を緩和できるとした予熱低減対策鋼や,ウェブの立向溶接にエレク
トロスラグ溶接を採用してもじん性の低下が小さいとされる大入熱溶接対策鋼などの 高機能鋼材と呼ばれる鋼材を使用し,省力化が目指された8).
ジャッキアップ回転工法という特殊な架設方法を採用した宿茂高架橋 9,10)の現場継手 では,施工速度を重視して高力ボルト継手を基本とする設計がなされたが,中間支点付 近で厚板化(64mm以上)したフランジには溶接継手が採用され,図-1(c)に示すような フランジの溶接継手とウェブの高力ボルト継手が同一断面で構成される併用継手と なった.宿茂高架橋は大断面I桁に併用継手を採用した最初の橋梁であり,フランジの 溶接収縮に伴うウェブの高力ボルト継手のすべりをモデル化した FEM 解析を実施する など丁寧な検討が行われた.その検討報告では「併用継手は高力ボルト継手と溶接継手 の両者の長所を取り入れた構造」といった説明がされている.しかし,併用継手を採用 したのは全 24 箇所中 4 箇所のみで,必要性のある限られた継手のみに採用したという 結果であった.その後も併用継手を採用した工事11,12)は数例あるが,併用継手を採用し た経緯の説明は十分とは言えない.フランジの高力ボルト継手を溶接継手とした場合,
美観,防食対策,床版との取合構造の簡素化,などの点で優位であることは確かである が,高力ボルト継手の経済性や工期の面での優位性は大きく,高力ボルト継手が可能な 場合は高力ボルト継手を採用するのが通常となっている.しかし,宿茂高架橋で採用さ れた併用継手のように高力ボルト継手が構成できない事情を有する場合は,全断面溶接 継手と比べて併用継手が経済性や工期の面で優位となる.
鋼橋の合理化については,少数主桁形式の採用のみならず,鋼材の高強度化に関する
検討13,14)も進んでいる.高強度鋼を使用した場合,鋼重や桁高の低減が可能となり,こ
の効果は支間が長くなるほど顕著となる15).高強度鋼で構成された少数主桁橋の現場継 手を併用継手とした場合,厚板のフランジを溶接することとなるが,一般に板厚が大き くなるほど,鋼材強度が高くなるほど,低温割れの発生が懸念される.低温割れを防ぐ 対策には,PCM値の低い鋼材を使用する,拡散性水素量の少ない溶接材料を使用する,
といった対策もあるが,予熱を実施することにより拡散性水素量の放出を促進する方法 がよく用いられる.道路橋示方書では25mmを超えるSM520材とSM570材には予熱 が必要と規定されているが,設備の整った工場とは異なり現場で予熱管理を行うのは手 間と費用を要するため,材料費が上がっても予熱などの現場作業は減らす方が合理的と 考えられる.ところで,低温割れを防ぐ対策には溶接部を母材よりも強度の低い溶接材 料を用いた軟質溶接継手とするのも効果的と言われている16).軟質溶接には継手の拘束 を低くする効果があるものと考えられるが,継手の強度が確保できなければ採用できな いため,道路橋示方書などの技術基準類では認められていない.しかし,軟質継手には 継手の板厚,溶接ビード幅,開先断面積などによっては母材の塑性拘束効果によって母 材と同等の強度が得られる場合があり,検討の余地があるものと考えられる.
1.2 既往の研究
1.2.1 軟質溶接継手
鋼橋の溶接材料は,鋼材強度に応じた材料が選定されるため,通常は等質(イーブン マッチ)溶接継手となる.しかし,アルミニウム合金では溶接接合による熱履歴で熱影 響部の機械的性質が変化し,著しく軟質化する.そのため,アルミニウム合金の溶接部 の設計では部材をすべて軟化したものとみなし,母材よりも強度の低い熱影響部の強度 で設計される 17).1.1 節で述べたように,高強度鋼の低温割れ対策の一つとして軟質溶 接継手を採用する場合,継手の強度に及ぼす影響を確認しておく必要がある.
佐藤らは,母材と溶接金属の強度が異なる材料を不均質材と呼び,引張強度について 1970 年代に研究している 18,19).これらの研究では,横突合せ溶接継手の引張強度が軟 質溶接部の幅と板厚の比によって変化することを明らかとし,これが 1.0以下の場合,
継手の板幅が板厚の 5〜7倍以上であれば溶接金属の軟質化によって引張強度が低下し ない,としている.また,母材の引張強度と一様伸びを保証するためには,母材の強度 の0.9倍の溶接金属とすればよいとしている.
溶接材料の強度に関する技術基準類の規定は,例えば道路橋示方書20)では「母材の規 格値と同等又はそれ以上の機械的性質を有する溶接材料」を使用するようにと規定され ており,軟質溶接継手は認められていない.海外の基準では,例えばEUROCODE21)で は「The specified yield strength, ultimate tensile strength, elongation at failure and minimum Charpy V -notch energy value of the filler metal, should be equivalent to, or better than that specified for the parent material.」と記載されており,同様に母材 と同等以上とするように規定されている.AASHTO22)では「Use of undermatched weld metal is highly encouraged for fillet welds connecting steels with specified minimum yield strength greater than 50 ksi. Research has shown that undermatched welds are much less sensitive to delayed hydrogen cracking and are more likely to produce sound welds on a consistent basis.」との記載が解説文にあり,軟質溶接を認めている が,すみ肉溶接を対象とするなどの条件がある.
したがって,母材の強度を確保するための設計,施工条件を明らかとすることは,現 行の設計法を満足するための施工をする上では使いやすいとも言えるが,これらの適用 範囲を超える軟質溶接を設計するためには,具体的な強度を示す評価式が必要と考えら れる.
第3章では軟質突合せ継手の降伏耐力と引張耐力を明らかにする目的で,溶接部が母
材(SM490YA,SM570,SHY685)よりも低い強度をもつ軟質の突合せ継手試験体(縦
継手と横継手),母材試験体,溶接金属試験体を対象として,変位制御で高精度な引張試 験を行う.さらに,軟質継手の降伏応力と引張強度の評価式を提示することを目的とし て,パラメトリックな弾塑性有限要素応力解析を行う.
1.2.2 併用継手の施工方法
I断面の桁や梁部材の継手形式に,フランジを溶接継手,ウェブを高力ボルト継手と する併用継手は,各種の鋼構造物で事例がある.その際,高力ボルト継手と溶接継手の 施工順序が問題となる.高力ボルトの締付けを溶接施工の前に実施する事例としては,
鉄道橋23)と建築鉄骨24)がある.両者とも出来形精度を重視するために,溶接変形が少な くなる方法として規定している.鉄道橋では溶接前に使用した高力ボルトを溶接後に取 替えることが規定されているが,取替時にすべりが生じること,いったんすべったボル ト継手のすべり係数,などについて研究が進められている25).建築鉄骨では,溶接施工 により溶接部に近いボルトが加熱され,ボルト軸力が低下することが懸念されているが,
このような継手の曲げ繰返し載荷試験結果では,変形能力に大きな影響は及ぼさないと している26).
道路橋では,溶接の完了後に高力ボルトの締付けを行うこと原則としている27)が,従 来から併用継手が採用されている鋼床版橋の現場溶接28)では,デッキプレートの溶接前 に主桁下フランジ近傍の腹板と下フランジのボルトを締付ける施工方法が認められて いる.しかし,曲げモーメントを受ける主桁のような部材で上下フランジを溶接として 腹板を高力ボルト摩擦接合とする併用継手については,検討が必要とされている.これ に対し,1.1節で述べたように少数主桁橋では,施工上の必要性から併用継手の検討 がされた事例がある.宿茂高架橋29)では,上下フランジの溶接収縮でウェブの高力ボル トがすべることを解析的に確認し,全 29 行のうち,上下5行を溶接後に締付ける工法 を提案している.在家塚第3高架橋30)では,ウェブの高力ボルト継手を形状保持部材と して利用し,仮ボルトを部分的に締付けた状態で溶接し,溶接後に仮ボルトを高力ボル トに取り替える工法を採用し,高力ボルト継手部にすべりが生じないことを確認してい る.現行のネクスコの基準31)では併用継手を使用してもよいとしているが,その施工手 順は検討が必要,と注意を促す文言があり,近年は採用事例がない.2012年には道路橋 示方書の改定がされた27)が,併用継手の施工方法に関する記述は変更されていない.
海外の基準類では,例えばEUTOCODE32)では,「As an exception to 2.4(3) , preloaded class 8.8 and 10.9 bolts in connections designed as slip-resistant at the ultimate limit state (Category C in 3.4) may be assumed to share load with welds, provided that the final tightening of the bolts is carried out after the welding is complete.」との記載が あり,摩擦接合とするためには溶接後に本締めする必要があると読み取れる.AASHTO
には該当する記述が見あたらない.
ネクスコの併用継手の施工手順は,ウェブの上下20%ずつを溶接完了後に締付けるこ とにしている33)が,具体的な本数が桁高によって異なるため,作業者にはわかりにくく,
間違える原因にもなりかねない.溶接前に締付けるボルト位置は区分せず,締付け本数 を全数とし,締付け軸力を設計軸力の60%とする方法も考えられる.本研究では,①フ ランジの溶接前にウェブの高力ボルトを設計ボルト軸力の60%で1次締め,②フランジ の溶接施工,③ウェブの高力ボルトを本締め,とする施工手順について着目する.この 手順で施工された場合の課題のうち,1次締め状態の高力ボルト継手が溶接収縮により いったんすべった場合のすべり係数についてはいくつかの研究が進められている.いっ たんすべった状態は予すべりが生じた状態と表記される場合があるが,溶接施工の完了 に先立って生じたすべりと解釈し,本研究でも予すべりという言葉を使用することとす る.文献 34)では締付け軸力に着目した実験を行っており,締付けボルト軸力を設計ボ ルト軸力の60%として予すべりを与えた結果,すべり係数は約2/3に低下している.ま た,予すべりの方向は一般的には溶接収縮により圧縮となる場合が多いと考えられるが,
文献 35)では,予すべりの方向を圧縮側と引張側に変化させたすべり試験を実施してい る.その結果,予すべりの方向によらず,すべり係数の大きな低下はないとしている.
文献 36)では,予すべり量を変化させたすべり試験によりすべり係数を比較した結果,
すべり係数はわずかに低下するものの,総じて予すべりのない場合と同等であると結論 付けている.しかし,これらの研究はそれぞれ別のパラメータにも着目しており,試験 体形状やすべり面の条件も異なるため,これらを比較するためには,系統的に試験条件 を整理し,統一された試験条件のもとでの検討が改めて必要である.
第4章では,予すべりが生じた高力ボルト継手部のすべり耐力について,予すべりの 方向,予すべり量,本締め作業における応力作用下の影響について着目し,統一した試 験条件のもとですべり試験を実施することにより,併用継手を用いる場合の一つの課題 である,予すべりが生じた高力ボルト摩擦接合継手のすべり耐力に関する基礎的なデー タを示す.
1.3 研究の目的
本研究では,少数主桁橋に用いられる大型鋼I断面桁の現場継手の施工の省力化,施 工期間短縮のための方法の一つとして,併用継手と軟質溶接を採用する方法について検 討する.併用継手の施工方法には1.2.2項で述べたように様々な手順が考えられる が,本研究ではウェブの高力ボルト継手をフランジの溶接継手のエレクションピースと して利用することとし,以下の手順を考えた.
①ウェブの高力ボルト継手を1次締め(設計ボルト軸力の60%) ②フランジの溶接施工
③ウェブの高力ボルトを本締め
この施工手順での課題はいくつか考えられるが,本研究ではフランジの溶接収縮に よってウェブの高力ボルト継手にすべりが生じた後の継手のすべり係数に着目する.1 次締めでの軸力は予すべり後のすべり係数に影響を及ぼすとも考えられるが,本研究で は道路橋示方書に示されている軸力37)とする.軟質継手については,フランジ継手への 適用を考え,軟質突合せ溶接継手の降伏耐力と引張強度について検討する.具体的には 以下の検討を行った.
(1) 少数主桁橋のフランジ継手に採用した軟質横突合せ溶接継手などを対象とし,母材 の強度を3種類に変化させたV型開先の横突合せ溶接継手の引張試験と,パラメトリッ クな弾塑性有限要素応力解析を実施し,軟質溶接継手の降伏応力,引張強度と変形性状 を明らかにする.
(2) 併用継手のウェブの高力ボルトを対象とし,予すべりを与えた高力ボルト継手のす べり係数について,予すべりの方向,予すべりの量,本締め作業時の応力作用の影響を パラメータとしたすべり試験を実施し,予すべりがすべり係数に及ぼす影響について検 討する.
(3) 併用継手の設計法について,フランジに軟質溶接継手を採用した場合の影響を考慮 した場合と,総すべりモーメント法を適用した場合の試設計結果から,その合理性につ いて考察する.
1.4 本論文の構成と内容
本論文は1章から6章で構成され,各章の概要は以下のとおりである.
第1章「序論」では,鋼橋の現場継手の現状について,溶接接合と高力ボルト接合の 歴史的経緯を整理し,従来形式の継手形式を少数主桁橋の現場継手に適用した場合の課 題を述べ,解決策として併用継手の採用と,軟質溶接継手の採用が有効であることを述 べた.併用継手については施工方法として考えられる手順について各種基準類や既往の 研究事例を整理し,軟質溶接継手の引張耐力に関する既往の研究事例を取りまとめた.
最後に,本論文の構成を示した.
第2章「大断面I桁の設計法と施工過程の比較」では,少数主桁橋の現場継手を対象 とし,高力ボルト継手,溶接継手,併用継手の3種類について,設計法と施工過程を比 較した.設計方法は,道路橋示方書に基づく従来の設計法を用いて試算した.施工過程 の比較では,高力ボルト継手と溶接継手は従来の施工手順とし,併用継手では,①ウェ ブの高力ボルト継手を1次締め,②フランジの溶接施工,③ウェブの高力ボルトを本締 め,といった手順で工程を試算し,併用継手の合理性を明らかにした.
第3章「軟質突合せ溶接継手の降伏応力と引張耐力」では,少数主桁橋のフランジ継 手などに採用される軟質横突合せ溶接継手を対象とし,母材の強度を3種類に変化させ たV型開先の横突合せ溶接継手の引張試験と,パラメトリックな弾塑性有限要素応力解 析を実施し,軟質溶接継手の降伏応力,引張強度と変形性状を明らかにした.さらに軟 質縦突合せ溶接継手についても同様の検討を行った.
第4章「いったんすべった高力ボルト継手のすべり係数」では,併用継手を構成する ウェブの高力ボルト継手を対象とし,予すべりを与えた後の高力ボルト継手のすべり係 数について,予すべりの方向,予すべりの量,本締め作業時の応力作用の影響をパラメー タとしたすべり試験を実施し,予すべりがすべり係数に及ぼす影響について検討した.
第5章「設計への応用」では,3章と4章で得られた結果を踏まえ,本研究で提案す る手順で施工した軟質溶接継手を用いた併用継手の試設計を実施し,合理性を確認する とともに大断面I形桁の接合方法に関する今後の課題を示した.
第6章「結論」では,本研究で得られた成果をまとめて示している.
(a) 全断面高力ボルト継手 (b) 全断面溶接継手 (c) 併用継手 図-1 大型I断面桁の現場継手形式
第2章 大断面I桁接合部の設計法と施工過程の比較
2.1 設計法の比較
鋼橋の現場継手の形式として用いられる高力ボルト継手,溶接継手,併用継手につい て,道路橋示方書に従った設計例38)を以下に示す.
2.1.1 設計条件
設計条件は以下のとおりとする.
・設計断面力 曲げモーメントM = 6,424 kN・m せん断力Q = 404 kN
設計断面は図-2.1に示す水平補剛材1本を有するプレートガーダーであり,主な断面 諸元は以下のとおりとする.
上フランジ :1-flg PL 530×33 mm (SM490Y)
ウェブ :1-web PL 1,700×10 mm (SM490Y)
下フランジ :1-flg PL 530×37 mm (SM490Y) 断面2次モーメント :I= 3.20×1010 mm4
中立軸からの距離 :上フランジ yu = 918 mm,下フランジ yL = 852 mm 2.1.2 高力ボルト継手
(a)高力ボルトの許容力
・接合面の表面処理:母板,連結板ともに,無機ジンクリッチペイント75μm以上を 塗布
・接合面のすべり係数:μ= 0.45 ・高力ボルトは,M22(Sl0T)を使用
・高力ボルトの1本1摩擦面あたりの許容力
ρa = 1/ν0×μ×N = 1/1.7×0.45×205 = 54 kN
(b) 上フランジの連結
上フランジの寸法 1-fig PL 530×33 mm (SM490Y) 総断面積Ag = 17,490 mm2
①上フランジの曲げ応力度の照査
σc = M/I×yu = 6,424×106/(3.20×1010)×918 = 184 < 210 N/mm2 OK
②全強の75%確保
σc = 184 > 157.5 = 0.75 sa = 0.75×210 N/mm2 OK
③上フランジの連結は,2面摩擦接合継手とし,高力ボルトM22(S10T)を用いて連結 を行うと,高力ボルトの本数nは,
n =σc×Ag/(2×ρa) = 184×17,490/108,000 = 29.8 → 30 (本)とする. したがって,上フランジの高カボルト本数は30本とする(図-2.2参照).
④連結板の設計
連結板は,次のものを使用する.
(上面)1-flg PL 530×17 mm (SM490Y) A u = 9,010 mm2 (下面)2-flg PL 235×19 mm (SM490Y) A l = 8,930 mm2
連結板の総断面積 A = 17,940 mm2 連結板の応力度の照査
σ = σc × Ag/A = 184 × 17,490/17,940 = 179 < 210 N/mm2 OK
(c) 下フランジの連結
下フランジの寸法 1-flg PL 530×37 mm (SM490Y) 総断面積Ag = 19,610 mm2
①曲げにより下フランジに発生する引張力の合計Pは,
σt = M/I×yL = 6,424×106/(3.20×1010)×852 = 171より,
P = σt × Ag = 171 × 19,610 = 3,353 kN
②全強の75%確保
σt = 171 > 157.5 = 0.75σa = 0.75×210 N/mm2 OK
③下フランジの連結
下フランジの連結は2面摩擦接合継手とし,高力ボルトM22(Sl0T)を用いて連結を 行うと,高力ボルトの本数nは,
N = P/(2×ρa) = 3,353×103/108,000 = 31.0 → 34 本とする.
④下フランジの応力度の照査
下フランジは引張断面であるから,ボルト孔の欠損を考慮した純断面積を1.1倍割 り増しして照査する.割り増しした断面積が総断面積を超える場合,総断面積で照査 する.また,外縁のボルト列は,ボルト孔の欠損の影響を少なくするために,最端列 のボルト本数を漸減させる配置とする(図-2.3 参照).ボルトの孔引きによる応力度の 照査を以下に示す①〜⑤の断面についてそれぞれ行う.
(断面①)
純断面:An1 = (530−4×25)×37×1.1 = 17,501 mm2
作用応力度:σ1 = P/An2 = 3,353×103/17,501 = 192 < 210 N/mm2 OK (断面②)
純断面:ω = d−p2/4g=25−752/(4×80) = 7.42 mm
An2 = {530−(25×4+7.42×2)}×37×1.1 = 16,897 mm2
作用応力度:σ2 = P/An4×(36-4)/36 = 3,353×103/16,897×32/36
= 176 < 210 N/mm2 OK (断面③)
純断面:An3 = (530−6×25)×37×1.1 = 15,466 mm2
作用応力度:σ3 = P/An5×(36−6)/36 = 3,353×103/15,466×30/36
= 181 < 210 N/mm2 OK
次に,連結板の設計を行う.連結板は,次のものを使用する.
(上面) 2-flg PL 240×21 mm (SM490Y) Au = 10,080 mm2 (下面) 1-flg PL 530×21 mm (SM490Y) Al = 11,130 mm2
連結板の総断面積 A = 21,210 mm2 連結板の純断面積 An = 14,910 mm2 連結板の応力度の照査
σ = σt×Ag/A = 171×19,610/(14,910×1.1) = 204 < 210 N/mm2 OK
(d) ウェブの連結
(1) 曲げモーメントによりボルトに作用するカ
ウェブの高力ボルトの配置は図-2.4に示すように上下対称とし,ボルト本数は作用力 の大きい上フランジ側の最上段のボルトを対象に照査することで算出する.
①最上段ボルト
最上段ボルトの分担幅b1の計算 b1 = 130+90/2 = 175 mm 最上段ボルトが分担する力Plの計算
Pl = 175×10×(177+142)/(2×103) = 279 kN 所要ボルト本数の計算
ウェブの連結は2面摩擦接合継手とし,高力ボルトM22(S10T)を用いて連結 を行うと,高力ボルトの本数nは,
n = P1/ρa = 279×103/108,000 = 2.58 (本)となる.
したがって,主桁ウェブの最上段ボルトの本数は3本とする.
このとき,最上段のボルト1本あたりの分担力ρMは,
ρM = P1/3=279/3 = 93 kN
②2段目のボルト
2段目のボルトの分担幅b3の計算 b3 = 90/2+90/2 = 90 mm 2段目のボルトが分担する力P3の計算
P3 = 90×10×(142+124)/(2×103) = 120 kN 所要ボルト本数の計算
n = P3 /ρa = 120×103/108,000 = 1.11 (本)となる.
したがって,主桁ウェブのボルト本数は全て最上段と同様に3本とする.
このとき,ボルト1本あたりの分担力ρMは,
ρM = P3/3=120/3 = 40 kN (2) せん断力によりボルトに作用する力の照査
せん断力は,主桁のウェブのボルト全体で分担するものとして設計する.
作用するせん断力Q = 404 kN
連結部片側のボルト本数n = 3×17 = 51 本 ボルト1本あたりの分担力の照査
ρg = Q/n = 404/51 = 8 kN < ρa = 108 kN OK
(3) ボルトに作用する合成力の照査
ボルトが分担する曲げモーメントによる水平方向のカとせん断力による鉛直方向の 力との合成力に関する照査を,主桁ウェブのボルト最上段(作用力最大)のボルトについ て行う.
2 2 2
2 S 93 8
M ρ
ρ
ρ = 93.3 kN < ρa = 108 kN OK
(4)連結板の応力度の照査 連結板の断面
連結板の寸法 2-PL 1,530×9 mm (SM490Y) 断面積 A = 2×1,530×9 = 27,540 mm2
断面2次モーメント Iw = 2×1,5303×9/12+27,540×352 = 5.41×109 mm4 主桁ウェブの断面性能
断面積 Aw = 1,700×10 = 17,000 mm2
断面2次モーメント Iw = 1,7003×10/12十17,000×352 = 4.11×109 mm4 ウェブが受け持つモーメントMwは,図-2.4より,
Mw = 177×Iw/885×10-6 = 177×4.11×109/885×10-6 = 822 kN・m 連結板に作用する曲げ応力度の照査
σ = Mw/I ×800 = (822×106)/(5.41×109) × 800 = 122 < 210 N/mm2 OK
2.1.3 溶接継手
継手の接合は完全溶込み開先溶接を採用するものとし,理論のど厚は板厚とする.
(a)上フランジの連結
上フランジの寸法 1-fig PL 530×33 mm (SM490Y) 総断面積Ag = 17,490 mm2 よって,曲げ応力度を照査すると,
σc = M/I×yu = 6,424×106/(3.20×1010)×918 = 184 < 210 N/mm2 OK
(b) 下フランジの連結
下フランジの寸法 1-flg PL 530×37 mm (SM490Y) 総断面積Ag = 19,610 mm2 よって,曲げ応力度を照査すると,
σt = M/I×yL = 6,424×106/(3.20×1010)×852 = 171 < 210 N/mm2 OK
(c) ウェブの連結 せん断力は,
作用するせん断力Q = 404 kN
ウェブの寸法 1-web PL 1700×10 mm (SM490Y) 総断面積Ag = 17,000 mm2 τ = Q/Ag = 404×103/17,000 = 23.7 kN < ρa = 120 kN OK (d) 合成応力度の照査
ボルトが分担する曲げモーメントによる水平方向のカとせん断力による鉛直方向の 力との合成力に関する照査を,主桁ウェブのボルト最上段(作用力最大)のボルトについ て行う.
2 2
a s
a τ
τ σ
ρ σ = (184/210)2+(12.7/120)2 = 0.78 ≦ 1.2 OK
2.1.4 併用継手
現場継手の形式を併用継手とした場合でも,設計上は上フランジ継手,下フランジ継 手,ウェブ継手に分割して行う.したがって,上フランジ継手は2.1.3節(a),下フラン ジ継手は2.1.3節(b),ウェブ継手は2.1.2節(d)と同様になる.
2.2 施工過程の比較
少数主桁橋の架設工事費と工事に要する期間(以下,工期と記す)について,現場継 手の施工に関する部分について,文献39)を参考に考察した.
2.2.1 対象橋梁
対象とする橋梁は図-2.5に示す橋長121mの3径間連続鋼2主鈑桁橋である.現場継 手の構造を図-2.6に示す全断面高力ボルト継手,全断面溶接継手,併用継手(道路橋示 方書準拠)として比較した.なお.文献39)は旧日本道路公団での検討結果であり,併用 継手の施工手順は
①ウェブの高力ボルト継手の中央側60%を本締め ②フランジの溶接施工
③ウェブの高力ボルト継手の上下20%ずつを本締め で試算されている.
2.2.2 工期
文献 39)に示される各継手形式の架設工程表を表-2.1〜2.3に転記する.工程は,全断 面ボルト継手,併用継手,全断面溶接継手の順に長くなっている.全断面溶接継手の工 期(4.17 ヶ月)は,全断面高力ボルト継手(3.33 ヶ月)と比べて約 25%長く,可能で あるなら全断面高力ボルト継手とするのが望ましい.しかし,フランジの継手を高力ボ ルト継手で構成できない場合は,溶接継手を採用せざるを得ないが,これを併用継手
(3.73ヶ月)とすることにより,全断面溶接継手よりも約11%の工期短縮となる.全断 面溶接継手での工程では,上フランジの溶接施工,下フランジの溶接施工,ウェブの溶 接施工,と区分されているが,実際には主桁の継手を1箇所ごとに施工し,その順序が 上フランジ,下フランジ,ウェブの順となる.部位別の工程と解釈すれば,フランジ継 手の溶接線長が短い厚板継手と,ウェブ継手の溶接線長が長い薄板継手が,本条件での 工期はいずれも1週間程度で同程度になるものと言える.全断面溶接継手ではさらに検 査で1週間見込まれるが,全断面ボルト継手では全体の高力ボルト締付け作業が約1週 間程度で済むと見込まれることより,溶接施工が工期に及ぼす影響が大きいことがわか る.併用継手では,全断面溶接継手の工程にウェブの高力ボルト締付け工が加わるもの の,ウェブの溶接がなくなることが工期短縮に寄与している.
なお,全断面溶接継手ではエレクションピースと呼ばれる拘束部材が必要になる.拘
束部材はボルト継手で構成されるが,表-2.2にはこの締付け作業と溶接完了後の撤去作 業が区分されていない.エレクションピースのボルト本数は少ないとはいえ,表-2.3に 示される併用継手のウェブの高力ボルト締付け工で3日程度見込まれていることより,
全断面溶接継手のエレクションピースの施工期間は,締付け1日と撤去1日の計2日程 度を見込むのが適切と考えられる.併用継手の工期にはこれらの全断面溶接継手でのエ レクションピースに関する施工が不要となることも,工期を短縮する一因となっている ものと考えられる.
2.2.3 工事費用
文献 39)では,鋼橋上部工の工場製作費と現場架設費を合わせた総工事費のうち,現 場継手に関する項目についても試算している.試算結果は図-2.7に示すとおりであり,
以下のことがわかる.
・ 現場継手に関する工事費は,鋼橋上部工の工場製作費と現場架設費を含めた全体の 工事費用の約5%程度である.
・ 全断面ボルト継手の全体の工事費用は全断面溶接継手と比べて約1.3%安くなる.併 用継手とした場合は全断面ボルト継手には及ばないものの,約 0.6%安くなる.全 体の工事費用に対する比率(パーセント)で比較するとわかりにくいが,図-2.5 に 示すような全断面高力ボルト継手を有する橋梁の,工場製作費と現場架設費の総工 事費が13億円だった場合,全断面溶接継手では1700万円増,併用継手では840万 円の増となり,その額は小さくない.
2.3 提案工法
本研究では,1.3 節で述べたように従来高力ボルト継手とされてきた大型鋼I断面桁 現場継手部に併用継手と軟質溶接継手を採用することを提案する.併用継手の施工手順 は,下記の手順で施工する.
①ウェブの高力ボルト継手を1次締め ②フランジの溶接施工
③ウェブの高力ボルトを本締め
これにより期待できる効果について,文献39)の結果を参考に考察した.
2.3.1 工期
表-2.3に示される併用継手はウェブの高力ボルトの締付け範囲を溶接前後で2つに分 けていたが,本研究での提案工法はウェブの締付け軸力を溶接前後で2つに分けている.
よって,施工手順の変更に伴う工期への影響はほとんどないと考えられる.しかし,フ ランジの溶接では軟質溶接継手を採用するため,従来の溶接施工で施工されていた予熱 作業の省略が可能となる.よって,工程は表-2.4に示すようになるものと考えられる.
表-2.3 に示す従来工法では,上フランジと下フランジの溶接作業に 14 日かかっていた が,1日当たり30分の予熱作業が省略できると考えると,1日(=7時間=0.5時間×
14 日)の工期短縮につながると考えられる.よって,全体的な工期 4.70ヶ月となり,
従来工法で全断面高力ボルト継手の12%増しだった併用継手の工程は,提案工法により 11%増しとなる.
2.3.2 工事費用
本研究で提案する併用継手は,従来の併用継手と異なる点として,①施工手順,②フ ランジの溶接材料,に変更がある.このうち,①は構造や部材数は同じであるため,図 -2.7 に示す概算工事費のうち,「継手部以外の工事費」と「連結板/ボルト」に関する変 更はない.②についても,溶接材料は強度が低い材料であっても単価はほとんど同じで あり,費用は変わらないと考えられる.しかし,2.3.1項で示したように溶接作業では予 熱作業が省略できるため,施工期間の短縮はそのまま施工費用の削減となる.2.2.3項で 述べたように鋼橋上部工の全体の工事費用のうち,現場継手に関する工事費は 5%程度 であり,2.3.1項より提案工法の工期短縮効果が1%とすると,工費削減効果は全体工事
費の0.5%となる.これは工場製作費と現場架設費の総工事費が13億円だった場合,650
万円の削減となる.
2.4 提案工法の課題
2.4.1 軟質溶接継手の降伏応力と引張強度
1.2 節で述べたように,軟質溶接継手では塑性拘束効果により横突合せ溶接継手では 引張強度が低下しない場合がある一方で,部材がすべて軟化したものとしてみなして設 計する方法もある.本研究で軟質溶接継手を提案するためには,軟質溶接継手の降伏応 力と引張強度を明らかにし,溶接継手の設計に反映できるようにする必要がある.
また,従来の軟質溶接継手の研究は,横突合せ溶接継手に対して実施されてきたが,
溶接継手に作用する応力状態には縦突合せ溶接継手もある.軟質溶接継手に関する基本 的な挙動を明らかにするためには,縦突合せ溶接継手についても確認しておく必要があ る.
2.4.2 いったんすべった高力ボルト継手のすべり係数
本研究で提案している併用継手の施工方法では,フランジの溶接時のウェブの高力ボ ルト継手は1次締めの状態であり,高力ボルト継手にすべりが生じる可能性がある.こ のボルト継手はそのまま本締めする施工手順であるため,いったんすべりが生じた高力 ボルト継手のすべり係数が問題となる.
このような予すべりが生じたボルト継手では,予すべりの量,予すべりの方向,予す べり後の本締め作業を応力作用下で実施するか,といったことがすべり係数に及ぼす影 響が問題になる.
2.5 まとめ
併用継手を採用することによる現場継手の工期の短縮効果と工事費用の削減効果に ついて確認した.得られた結果を以下に示す.
1) 併用継手の設計は,フランジ継手は溶接継手とし,ウェブ継手は高力ボルト継手と して設計することにより,現行の設計法を踏襲することができる.
2) 併用継手の施工過程について,工期と工事費用を試算した結果,いずれも高力ボル ト継手には劣るものの,全断面溶接継手と比べると架設工期が11%短縮でき,工事 費用は全体で約0.6%の削減が見込まれる.
3) 本研究で提案する併用継手の施工手順では,旧日本道路公団の施工手順と比べて工 期は1%の短縮,工事費用は0.5%の削減効果が見込まれる.
図-2.1 対象とするプレートガーダーの継手断面図(単位:mm)
図-2.2 フランジのボルト配置(単位:mm)
図−2.3 下フランジのボルト配置と孔引きの照査断面(単位:mm)
図-2.4 主桁ウェブのボルト配置(単位:mm)
図-2.5 試算対象橋梁39) (単位:mm)
(a) 全断面高力ボルト継手
(b) 全断面高力ボルト継手
(c) 併用継手
図-2.6 試算した現場継手39) (単位:mm)
表-2.1 全断面ボルト継手の架設工程の一例39)
表-2.2 全断面溶接継手の架設工程の一例39)
表-2.3 併用継手の架設工程の一例39)
図-2.7 概算工事費試算結果39)
1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月
準備工
ベント工 解体
桁架設工
足場工 解体
沓据付工
高力ボルト締付工 継手塗装工 跡片付け
1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月
準備工
ベント工 解体
桁架設工
足場工 解体
沓据付工 下フランジ溶接 上フランジ溶接 ウェブ溶接 検査 継手塗装工 跡片付け
1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月
準備工
ベント工 解体
桁架設工
足場工 解体
沓据付工 下フランジ溶接 上フランジ溶接 検査
ウェブ高力ボルト 継手塗装工 跡片付け
表-2.4 提案工法により予想される併用継手の架設工程
1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月
準備工
ベント工 解体
桁架設工
足場工 解体
沓据付工 下フランジ溶接 上フランジ溶接 検査
ウェブ高力ボルト 継手塗装工 跡片付け
第3章 軟質突合せ溶接継手の降伏耐力と引張強度
3.1 はじめに
近年,鋼橋の設計の合理化手法の一つとして,高強度鋼の使用が注目されている
13),14),15).鋼材強度が高くなると,低温割れが発生しやすくなるとされており,板厚が厚
くなると顕著となる.従来,溶接割れ防止対策としては,①PCM値の低い鋼材を使用す ること,②拡散性水素量の低い溶接材料を使用すること,といった方法があり,中でも 拡散性水素量の放出に効果のある予熱を実施する方法が良く用いられる.しかし,設備 の整った工場内とは異なる現場での予熱作業は手間がかかり,更に鋼材強度によって管 理値が変化することになると,現場溶接の工期と工費を増やす一因になる.
低温割れ対策の一つに,溶接材料の強度が母材よりも低い軟質溶接継手とすることも 有効である16).軟質溶接継手の降伏応力および引張強度については,溶接部単体の強度 は母材よりも低いため,溶接部で塑性変形が先行するものの,その変形は周りの強度の 高い母材で拘束されることになる.この変形拘束(塑性拘束)18)により,継手の強度が 溶接部そのものよりも高くなること 19)が知られている.この軟質継手を設計する場合,
溶接部の降伏応力や引張強度をそのまま用いれば安全側となることは言うまでもない.
しかし,上述のように塑性拘束により溶接部そのものの強度よりも高くなるため,溶接 部の強度をそのままではなく,ある程度の割増しが可能であり,それにより合理的な設 計が行えると考えられる.1.1 節で述べたように,軟質継手の強度が溶接部そのものよ りも上昇することに関する研究は既に行われているが,この増分は実務で使用できるほ ど明らかとはなっていない.
以上の検討はいずれも横突合せ溶接継手を対象としている.横突合せ溶接継手は最も 基本的な継手形式であるが,もう一つの代表的な継手形式に縦突合せ溶接継手がある.
縦突合せ溶接継手が採用される事例としては,大断面の箱桁や橋脚の縦シーム継手があ る.軟質縦突合せ溶接継手は,断面に占める溶接部の割合が小さいために,その強度は これまで問題とされなかった.しかし,このような継手の引張耐力を明らかとすること も軟質継手の特徴を明らかとする上で有用と考えられる.
本研究では,軟質溶接継手の横突合せ溶接継手と縦突合せ溶接継手の降伏耐力と引張 耐力を明らかにする目的で,溶接部が母材(SM490YA,SM570,SHY685)よりも低い 強度をもつ軟質の突合せ継手試験体,母材試験体,溶接金属試験体を対象として,変位 制御で高精度な引張試験を行う.また,画像計測によるひずみ計測システムを市販のデ ジタルカメラを使用して構築し,軟質横突合せ溶接継手の変形性状を明らかにすること
を試みる.さらに,軟質継手の降伏応力と引張強度の評価式を提示することを目的とし て,パラメトリックな弾塑性有限要素応力解析を行う.
3.2 試験体
3.2.1 供試鋼材と継手の製作
供試鋼材は JIS G3106(溶接構造用圧延鋼材)の SM490YA とSM570,そしてJIS G3128(溶接構造用高降伏点鋼板)のSHY685の3種類である.SHY685の規格値は,
降伏点または耐力が 685N/mm2 以上,引張強さが 780〜930N/mm2,−20℃における シャルピー吸収エネルギーが 47J(3個の平均)以上である.鋼材のミルシートに記載 された化学成分と機械的性質を表-3.1に示す.板厚はいずれも12mmである.これらの 鋼板に図-3.1に示すようにV型の開先を施し,セラミックス製の裏当て材を用いて片面 溶接で横突合せ溶接継手を製作した.溶接はガスシールドアーク溶接法とし,溶接材料 には比較的強度の低いYM-25(JIS Z3312 YGW16)を使用した.この溶接材料は,短 絡移行域でのアークの安定性が良いソリッドワイヤであり,シールドガスにCO2を使用 した場合,降伏点が400N/mm2,引張強さが500N/mm2程度の低い強度となる性質を有 するとされている.ワイヤ径は1.2mm,シールドガスは100%CO2,シールドガス流量 は毎分30リットルとした.積層は表-3.2に示すようにSM490YA,SM570は4層4パ スであり,SHY685では3層3パスである.
3.2.2 試験体の製作方法
突合せ溶接継手を製作した後,SM490YA継手・SM570継手・SHY685継手から横突 合せ溶接継手引張試験体,縦突合せ溶接継手引張試験体を各3体ずつ採取した.比較の ために母材の引張試験体と溶接金属の引張試験体もそれぞれ3体採取した.継手試験体 と母材試験体の形状・寸法は,JIS Z2241(金属材料引張試験方法)の1A号引張試験片 とした.なお,継手試験体は溶接ビードを平滑に仕上げるために,試験体の表裏0.5mm をフライス盤で研削し,板厚を11mmとした.母材試験体も同様に加工している.継手 試験体と母材試験体の形状と寸法を図-3.2に示す.
溶接部の断面マクロ写真を写真-3.1に示す.溶接の幅はSM490YA継手試験体の表面 で20mm,裏面で12mm程度であり,SM570,SHY685試験体についても同程度であっ た.
溶接金属試験体はJIS Z3111(溶着金属の引張及び衝撃試験方法)にしたがい,丸棒
型の14A号試験片とし,直径を8mm,平行部の長さを52mmとし,溶接部中央から溶 接線方向に切り出した.溶接金属試験体はSM490YA,SM570,SHY685鋼材を母材と した継手の溶接金属からそれぞれ3体採取している.
3.2.3 ビッカース硬さ
引張試験体とは別に溶接部を 120mm×25mm(長さ×幅)で切り出したマクロ試験 体を採取し,各溶接継手部のビッカース硬さ試験を実施した.試験は,JIS G0553(鋼 のマクロ組織試験方法)にしたがって検査面の溶接組織を観察できる状態にした後,JIS Z3101(溶接熱影響部の最高硬さ試験方法)にしたがって行った.その際の荷重は98N とした.測定箇所は試験体の両断面で図-3.3 に示すように表面(終層側)から2mm 位 置と中心の2ライン,すなわち1つの試験体あたり合計4ラインとした.測定間隔はボ ンド部近傍で 0.5mm とし,それ以外の部位では 1〜2mm の間隔で約 50mm の範囲を 60点程度測定した.ビッカース硬さ測定結果の例を図-3.4(a)〜(c)に示す.図中の波線で 結ぶプロットが表面から 2mm 位置での測定結果,点線で結ぶプロットが板厚中央の測 定結果であり,太実線は後述する有限要素応力解析で使用する硬さ分布をモデル化した ものである.また,図中の溶接金属,HAZ,母材の区別はマクロ写真から判断した板厚 中央位置のものである.
SM490YA 継手では,溶接金属部の硬さ(158Hv)が母材(165Hv)に比べ多少低く なっている.ボンド部では急熱急冷による硬化が見られるが,最高硬さは 220Hv 程度 であり,母材(165Hv)と比べてさほど高くない.SM570継手では溶接金属部の硬さは SM490YA 継手とほぼ同じであるが,母材の強度が高いため溶接金属部と母材の硬さの 差が大きくなっている.熱影響部(以降 HAZ と記す)ではボンド部近傍の硬化域の外 側で軟化している.溶接部の入熱量は表-3.2に示したように高くないが,調質鋼である SM570材が溶接による熱履歴により材質が多少変化したものと考えられる.SHY685継 手の溶接金属部の硬さは,SM490YA 継手,SM570 継手とほぼ同じであるが,HAZ の 硬さは溶接金属と同程度まで低下している部分がある.この HAZ の外側では,母材硬 さの 290Hvよりも小さい領域が 10mm 程度存在する.すなわち,実際のHAZ はマク ロ写真から判断した領域よりも広くなっている.
3.3 引張試験
3.3.1 引張試験方法
引張試験は,荷重・変位制御高ひずみ試験装置(810型材料試験機,MTS社製)を用 いてストローク制御で行った.母材試験体と継手試験体は,載荷速度を 40mm/hr とし ている.その際,試験体長手方向のひずみを塑性域ゲージ(ゲージ長 2mm)で測定し た.塑性域ゲージの貼付位置は図-3.5に示すように試験体裏面の中心である.もう一方 の面ではデジタルカメラによる画像計測を行った.溶接金属部の丸棒試験体は 8mm/hr の変位が生じる速度で試験を行っている.塑性域ゲージは長手方向中心の対称面に1枚 ずつ,計2枚を貼付した.
3.3.2 画像計測によるひずみ測定の方法
近年のデジタルカメラやコンピュータなどの電子機器類の技術的な進化は著しく,こ れらを応用した画像計測システムは様々なものが市販されている.これらのシステムの 中には,本研究で用いるシステムと比べて同程度以上の精度を有するものもあるが,従 来のひずみゲージで計測する方法と較べると高価である.本研究での計測対象は,変化 が緩やかであり,面外変形が小さい2次元平面内での変形挙動が支配的と考えられるた め,自作のシステムを構築した.画像計測の手順は,以下のとおりである.
(a)引張試験片への罫書き
試験体表面中央に青ニスを塗布し,30mm×40mm の範囲を5mm間隔で格子状に罫 書いた.そして格子の交点を標点とした.罫書いた試験体表面の状況を写真-3.2に示す.
(b)画像の記録
本研究で用いる画像計測用のカメラは市販のデジタルカメラ(Nikon D5100)で,有 効画素数は16.2メガピクセル(4,928×3,264)である.撮影範囲の大きさを考慮すると 測定精度は 17μm 程度となる.撮影はインターバルタイマー機能を用いて9秒間隔で 試験体が破断するまでの変形挙動を確認できるように行った.カメラは,試験中に動か ないように,試験体から20〜30mmの場所に固定し,試験体が破断するまでの伸びを考 慮し,その時に標点が撮影範囲に収まるようにカメラの固定場所を決定した.撮影は,
引張試験開始と同時に始めた.
(c)ひずみの算出方法
画像計測の標点は,上述のように30mm×40mmの範囲を5mm間隔で罫書いた交点 の 64 点であり,まず 64 点の標点を手動でターゲットとなるピクセルをマーキングす る.その後,画像処理により,各ターゲットの座標を読みとる.そして,これらをひず み一定の三角形要素の節点とみなした.引張試験中に撮影した画像についても,同様の 作業によりターゲットの変位を求め,各要素のひずみを算出した.
3.3.3 引張試験結果
(a)横突合せ溶接継手の引張試験結果
横突合せ溶接継手の引張試験より得られた応力−ひずみの関係の例を,母材試験体と 溶接金属試験体の結果と併せて図-3.6に示す.応力は荷重を原断面積で除したものであ り,ひずみは試験体に貼付したひずみゲージの値である.SM490YA 継手と SM570 継 手の挙動は母材とは異なり,降伏点が明瞭でないため,降伏応力を0.2%耐力として求め た.SHY685母材,継手についても同様である.
各試験体の引張試験結果を表-3.3に示す.ここで示す平均値は3体の平均であるが,
溶接金属部では鋼材が変わっても強度や伸びはほぼ同じであったため,9体の試験結果 の平均を示している.降伏応力と引張強度は,母材では当然のことながら,いずれも呼 び強度が大きい鋼材で高い.溶接金属部の降伏応力と引張強度はSM490YAの母材より も低い.
継手試験体の破断位置は,すべて溶接金属部であった.継手の強度はいずれの鋼材を 用いた場合も,母材よりも低く,溶接金属部よりも高くなっている.また,SM570継手 の強度はSM490YA継手よりも高くなっている.すなわち,軟質継手の強度は母材より も低いものの,溶接金属部よりも高い,また母材の強度が高いほど軟質継手の強度が高 くなると言える.しかし,SHY685 継手は SM570 継手の強度よりも低い.これは,
SHY685 継手では図-3.5(c)で示したように HAZ に著しい軟化域が存在しており,これ が強度に影響を及ぼしたものと考えられる.
したがって,軟質継手の強度については母材と溶接金属だけではなく,軟化したHAZ の影響も考慮する必要がある.このことは,軟質継手のみではなく,イーブンマッチン グ継手についても考えなければならない課題である.
表-3.3には各試験体の絞りも示している.軟質継手の絞りは母材よりも小さい.これ は,溶接金属部の変形を強度の高い母材が拘束していたためと考えられる.しかし,母 材強度による違いは認められない.なお,溶接金属の絞りは母材と同程度に大きいが,
試験片形状が異なるために一概に比較することはできない.一般に丸棒試験片では 1A 号試験片と比べて絞りが大きくなるとされている40).
(b)縦突合せ溶接継手の引張試験結果
横突合せ溶接継手の引張試験より得られた応力−ひずみの関係の例を,母材試験体と 溶接金属試験試験体の結果と併せて図-3.7に示す.縦軸と横軸は図-3.6と同様に整理し たものである.SM490YA 継手とSM570継手の応力-ひずみ関係は母材とは異なり,降 伏点が明瞭でないため,降伏応力を0.2%耐力として求めた.
各試験体の引張試験より得られた降伏応力,引張強度,伸びと絞りを表-3.3に示す.
いずれの鋼材を用いた場合にも,軟質継手の降伏応力と引張強度は母材よりも低く,溶 接金属よりも高くなっている.また,母材の強度が高いほど軟質継手の強度も高くなっ ている.試験終了後の試験体の破断状況の一例を写真-3.3に示す.
(c)画像計測結果
横突合せ溶接継手の引張試験片中央の溶接金属部に貼付したひずみゲージ(図-3.5参 照)の計測結果と,画像計測で得られたひずみを比較した結果を図-3.8に示す.両者の ひずみは約0.16程度の大ひずみ領域まで概ね一致している.なお,ひずみゲージのゲー ジ長は 2mm であるが,画像計測では中央部に位置する4つの格子(格子寸法:5mm) の平均値を使用した.ひずみが0.10を超えると,画像計測によるひずみがひずみゲージ で計測したひずみよりもやや小さくなる傾向が見受けられる.これは上記の評点間距離 の違いによる影響と考えられるが,その差は小さく,画像計測で得られたひずみは実用 的な精度を有するものと判断される.
画像計測によって得られた前述の 30mm×40mm の範囲の試験体長手方向のひずみ コンター図の例を図-3.9に示す.ここでは(1)降伏時,(2)最大荷重時,(3)破断直前の3つ の状態のコンター図を示している.図中の①〜⑱の記号は,試験体および(1)〜(3)の変形 状態を区別するために設けたものである.
母材のひずみは,①,⑦,⑬の降伏時,②,⑧,⑭の最大荷重時では測定範囲内での ひずみ変化は小さくほぼ一様となっている.軟質継手でも④,⑩,⑯の降伏時のひずみ 分布はほぼ一様であるが,⑤,⑪,⑰の最大荷重時では溶接金属の位置する継手中央部 にひずみの大きい領域が認められる.ひずみ測定面の溶接金属の幅は20mm程度である が,ひずみが集中している領域はこの幅とほぼ一致している.破断直前の⑥,⑫,⑱で は,さらにひずみが中央部に集中しているが,そこから 5mm 程度以上離れた位置の母 材部のひずみはさほど大きくなく,溶接金属部の変形が母材の存在により拘束されてい ることがわかる.③の母材ではくびれに相当する部分に 0.5を超える大きなひずみが発 生しているが,母材⑨,⑮では,ひずみがほぼ一様となっている.これは,くびれが計 測位置から離れたところで生じたためである.