九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
金属配位官能基を有するDNA配位子の合成と機能評価
末田, 慎二
九州大学工学応化分子分子システム工学
https://doi.org/10.11501/3135034
出版情報:Kyushu University, 1997, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
第4章 オリゴヌクレオチドとランタノイド金属イオン の複合体の発光挙動
4-1
緒言
第3章では、 イミノ二酢酸修飾オリゴヌクレオチドを利用して、 DNA二 本鎖上のC2対称配列へのオリゴヌクレオチドの結合を金属 イオンに よ って 制御することに成功した。 これは、 別の見方を すれば、 オリゴヌクレオチ ドを使ってC2対称配列を選択的に認識するシステムを構築したともいえる。
従って、 オリゴヌクレオチドがこのようなC2対称配列 に結合したと いう情 報を何らかの形で、 簡便に、 高感度に取り出すことができるなら ば、 C2対 称、配列を検出するシ ステムへと発展させることが可能で ある。
ここで、 本研究では、 オリゴヌクレオチドを二量化させるための制御因 子として利用したランタノイドイオンの発光現象に着目した。 ランタノイ ドイオンのいくつか は特異な遅延蛍光を発することが知られて おり、 近年 その性質を利用した分析試薬が活発に開発されている38). J 9)。 例え ば、 DNA プローブ法やイムノアッセイ法におけるラベル化剤としてランタノイド金 属錯体が利用され、 それらの遅延蛍光を利用した高感度 検出に成功してい
る40)-42)。
ところで、 ランタノイドイオンの発光 はその金属の禁制遷移に基づく も のであるため、 金属イオンそのものだけではほとんど発光 は観察されない。
そこで、 ランタノイドイオンを効果的に発光させるためには、 何らかの光 増感剤が必要になってくる。 通常このような光増感剤としては、 マクロサ イクル型の配位子やpジケトン型の配位子が利用されている38)0 しかしな がら、 過去の研究で、 本研 究で扱っている核酸塩基につ いても、 ランタノ
イドイオンの光増感剤として機能 することが報告されている43)-46)。 すなわ ち、 核酸塩基か らのエネルギー移動に基づいたランタノイ ドイオンの発光 が観察されている。
-108-
そこで本研究ではまず、 核酸塩基から のエネルギー移動に基づいたラン タノイドイオンの発光を利用したC2対称配列の検出システムの 構築 を検討 した。 次に、 典型的なDNAインタ ーカレータの一つであるかフェナンスロ リンを光増感剤として 利用して 、 それからのエネルギー移動に 基づいた発 光挙動を検 討し、 同じくC2対称、配列の検出シス テムの構築を検討 した。
ここ では、 イミノ二酢酸修飾オリゴヌクレオチドとしては、 6を用 いて 検討を行った。 また比較検討する上で、 未修飾のオリゴヌクレオチドT14 も用いた。 DNA二本鎖としては、 42mer、 43mer、 44mer、 及び26merを用 いた。
HOOCー" ./'....
-ん
H Nマ ーC- HOOCJ5
6
?. 5'
o-ro
--TTTTTTTTTTTTTT
。
T14
TTTTTTTTTTTTTT
42mer �'-CTGGACTTTTTTTTTTTTTTGCAAAAAAAAAAAAAACAGGTC-3' 3'-GACCTGAAAAAAAAAAAAAAGCTTTTTTTTTTTTTTGTCCAG-5 ' 43mer 5 ' -CTGGACTTTTTTTTTTTTTTGCGAAAAAAAAAAAAAACAGGTC-3 '
3'-GACCTGAAAAAAAAAAAAAACGCTTTTTTTTTTTTTTGTCCAG- 5 ' 44mer 5 ' -CTGGACTTTTTTTTTTTTTTGACGAAAAAAAAAAAAAACAGGTC-3 '
3'-GACCTGAAAAAAAAAAAAAACTGCTTTTTTTTTTTTTTGTCCAG- 5 '
26mer 5 I -CTGGACAAAAAAAAAAAAAACAGGTC-3 ' 3'-GACCTGTTTTTTTTTTTTTTGTCCAG- 5 '
-109-
4-2
核酸塩基からのエネルギー移動に基づいたランタノイド金 属イオンの発光
ランタノイドイ オンの中で、 これまでに核酸塩基からの エネルギ ー移動 に基づいた発光が報告されているものは、 Tb(III)とEu(III)である。 中で も Tb(III )については多く の研究例が報告されている44)-46)。 このような過去
における一連の研究 の過程で、 ある一つ の興味深い 現象が観察された。 そ れは、 一本鎖DNAは効果的にTb(III)を発光させるのであるが、その 一本鎖 DNAが二本鎖DNAを形成すると、 ほとんど発光させる能力が無くなるとい う ものである。 すなわち、 一本鎖 DNA-Tb(III)複合体の発光が、 一本鎖
DNAの塩基対形成に基づいて消光するという現象が 報告されている44)・-15)。
この消光 の原因は、 塩基対(水素結合)形成に基づく核酸塩基 の電子状態 の変化によるものではないかと推測されている45) 47)0
本研究では、 このような消光現象が、 同様に 一本鎖DNAと二本鎖DNAの 聞の三本鎖DN A形成において も起こり うるのではないかと考えて、図4-1 に示すような消光を利用した検出 システムを考案した。 図4-1の(a)は、 オ リゴヌク レオチド6が一本鎖の状態で、 そのイミノ二酢酸部位でランタノ イドイオンと錯形成 している状態 を表す 。 この状態では、 核酸塩基 を励起
することによ り、 錯形成部位に隣接した塩基からのエネルギー 移動に基づ きランタノイド イ オンの発光が 起こる。 しかし、 オリゴヌクレオチド6が DNA二本鎖と DNA三本鎖を形成すると、 (塩基対形成に基づき)その発光 が消光される(図4-1の(b)、(c))。 したがって、 このような DNA三本鎖形 成に伴う 消光 をシグナルと して 利用して、 DNA二本鎖上の三本鎖形成 部位 の検出 が可能であると考えられる。
こ の検出法の概念では、 当然図4-1の(c)のようなC2対称な配列だけでな く、図4-1の(b )のような通常の配列も検出されることになる。 し かしなが ら、前章で の 検討から明らかとなったように、6はC2対称、な 配列へ二量体
ー110-
26mer
6
b
C
図4-1 DN
A二
本鎖共存下 、 非共存下における6とランタノイドイオンの複合 体の発光挙動の模式図として協同的に結合するこ とにより、 より高い親和性で結合するため、 こ のような配列の選択的な検出も可能であると考えられる。
(実験操作)
・ 試料調製
蛍光測 定に使用した試料は、 すべて第3章での融解曲線の測定に使用し た試料と同様に調製した。 溶液組成について も、 融解曲線の試料と全く同
ーである。
- 蛍光測定
蛍光測定装置としては 、 150Wのキセノン ランプを備えたHitachi 650-60 蛍光光度計を使用した。 すべての測定は、 試料セルの温度を50Cに保って行 った。 この温度は、 6とそのターゲットとなるDNA二本鎖(42mer、 43mer、
44mer、 26mer)の複合体のTmよりも十分に低い温 度であるため 、 溶液中 に存在する大部分の6がDNA二本鎖と 複合体を形成している状態である。 また、 セル表面の結露を防ぐためにセルホルダー中に乾燥空気を送り込み ながら測定を行った。
-111-
4-2-1
Tb(III)系
まず、 ラ ンタノイド イオン としてTb(III)を使用して発光挙動を検討した
。
4-2-1-a
Tb(III)- 一本鎖DNA複合体の発光挙動
まず、 DNA 二本鎖を共存させない条件下で、 一本鎖DNAとTb(III)の複合 体の発光挙動を検討した。 図4-2の(a)に、 280nm の光 で励起した際のオリ
ゴヌクレ オチド6と Tb(III)の複合体 の発光スペクトルを示す。 490nm、
545nm 、 585nm及び620nmに、 Tb(III)に特徴的な発光バンドが観測された。
それぞれ5 D4→7 F 6、 5D4→7F5、 5D4→7F4及び5 D4→7 F3遷移に基づくもので ある。 また、 図4 -2の(b)には、 545nm でモニターした際の励起スペクトル を示す。 280nm付近にピークを有するスペクトルが観測された。 ただし、
この励起スペクトルは、 光源のキセノンランプの波長特 性 と励起側分光器 の特性によって影響を受けた「見かけ の励起スペクトル」である。 従って、
「真のスペクトル」を得 るためにスペクトルの補正を行った。
具体的には、 ローダミンBの励起スペクトルを測定し、 その強度で見か けの励起スペクトルの値を割ることによって、 補正スペクトルを得た。 図 4-2の(b)の点線で示した曲線がその補正スペクトルである。 補正により、
280nm付近のピークが270nm付近にシフトした。 この補正スペクトルの形 状やピークトップは、 核酸 塩基のチミンの吸収スペクトルのものとよく一 致した。 また、 イミノ二酢酸とTb(III)の錯体については、 270nm付近には まったく吸収 を有 していない こ とを確認した。 従って、 図4-2の(a) の Tb(III )の発光バンドは、 核酸塩基のチミンからのエネルギー移動に基づく
ものであると判断できる。
次に未修飾のオリゴヌクレオチド(T14)とTb(III) を共存させ 、 同様に 発光挙動を検討した。 図4-3の(a)に、 280nmの光 で励起した際の発光スペ クトルを、 図4-3 の(b)に 545nmにおけ る励起スペクトルを示す。 この場合
-112-
クトルを、 図4-3の(b)に545nmにおける励起スペクトルを示す。 この場合
出 0.3
g 斗コ'1'
.. Vll
�=r\
0.2
組 0.3
4ヨrt...-..
ふJ'r'\
叩 0.2
0.5 (a)
0.4
0 450 500 550
波長(nm)
600 650
(b)
0.4
宅'Iムnu
0
240 260 280 300 320 340 360 380 400
波長(nm)図4-2
6とT b
(III)の複合体の発光スペクトル(À ex=280nm) (a)及び励起 スペクトル(À em=545nm)* (b)6: 1μM, Tb(N03)3: 0.5μM, NaCl: 2M, HEPES (pH7.5): 1mM,測定温度: 50C
* (b)の励起スペクトルで点線は補正スペクトルを示す。
-113-
住民
0.3
斗コg 'r'\
潔 0.2
回 0.3
4ヨ 斗コ'r'\
ぷv.,】
��
0.2 0.5 (a)
0.4
0.1
。
450 500 550 600
波長(nm)
650
、ljLU 〆,, .. ‘ 、
0.5 0.4
0.1
0
240 260 280 300 320 340 360 380 400 波長(nm)
図4-3
T14とTb(III)の複合
体の発光スペクトル(À ex=280nm) (a)及び励起 スペクト/レ(À em=545nm) (b)T14: 1μM,Tも(N03)3: 0.5μM,
NaCl:
2M, HEPES(pH7.5):
1mM,測定温度: 50Cー114-
Tbの バンドはまったく 観測されなかった。 この条件下では、 Tb(III)はオリ ゴヌクレオチドにほぼ定量的に結合するものと考えられる� 5)。 それにもか かわらず、 Tb(III)の発光バンドがイミノ二酢酸修飾オリゴヌクレオチド6 の場合においてにのみ観測され、 未修飾のオリゴヌクレオチドでは観測さ
れなかった。 これについては、 オリゴヌクレオチド6の場合、 Tb(III)がイ ミノ二酢酸部位と錯形成 することによって脱水和され、 水分子との 相互作
用に基づく消光が緩和されたためであると考えられる。
先述したように、 実際に過去に一本鎖DNA共存下においてTb(III)の発光 を観測した例はあるが、 これ らの系では数十μM程度のTb(III)を使ってお り、 本実験条件 と比較して約100倍程度高濃度である� 4)・45)。 このような観 点から、 本実験は今までに例を見ない ほどの低濃度で、 Tb(III)の核酸塩基 との相互作用に基づく発光を観測した初めての研究であるといえる。
4-2-1-b Tb(III)- 三本鎖DNA複合体の発光挙動
次に、 オリゴビリミジンとTb(III)の複合体に、
DNA二本鎖を共存させた
場合の発光挙動を検討した。 図4-4の(a)に、オリゴヌクレオチド6とTb(III) の複合体に43merを共存させた場合の発光スペクトル(À ex=280nm)を示す。 これより明らかに図4-2の(a)の
6単独の場合と 比較して、 Tb(III)の発
光バンドが減少してい る ことがわかる 。 こ れ は、 6 のチミン塩 基がH 00 g s
teen型の水素結合に基づきDNA二本鎖と塩基対を形成したためであ
ると考えられる。
図4-4の(a)では、 Tb(III)の発光バンドだけ でなく 、 不純物の大きなバン ドも存在してい ることがわかる。 図4-4の(b)には、 DNA二本鎖として 43merを加えた系の 545nmにおける励起スペクトルを示すが、 360nm付近
-115-
(a)
'EEA ハU
0 450 0.4
0.2
制何日以円山町
0.3
650 550 600
波長(nm)
500
、、,,ノ
'hu
〆t・1、0.30 0.25 0.20
住民4引� 0.15
'f\
釈
0.10
- ‘ 、 、 、 • • 、 、• •
• 0.05
0 240 340 360 380 400
波長(nm)
320 300 280 260
ふ Tb(III)、 43merの複合体の発光スペクトル(Æ ex=280nm) (a)及び 励起スペクトル(À em=545nm)* (b)
図4-4
6:
1μM, 431üer: 0.5μM, Tb(N03)3: 0.5μM, NaCl: 2M, HEPES (pH7.5): 1mM,
測定温度:
50C
(b)の励起スペクトルで点線は補正スペクトルを示す。
-
116-
*
に6単独では観られなかったピークが存在している。 ただ 、 この 360nmの 光で励起しでもTb(III)の発光バンドはまったく観測できなかっ た。 した が って、 Tb(III)の発光バンドは図4-4の(b)の280nm付近のピークに基づくも
のであると考えられる。 この 励起スペクトルを補正すると(図4-4の(b)の 点線)、 280nm付近のピークは260----270nm付近にシフトする ことから、
図4-4の( a)のTb(III)のバンドは核酸塩基に由来するものであると考えられ る。
不純物が何であるかはまだわかっていない のであるが 、 恐らく DN Aを HPLCで精製した際に混入し た何らかの蛍光性物質ではないかと考えてい る。 この 不純物由来のバンドは Tb(III)のバンドと明瞭に区別ができ、 不純 物の発光強度をパックグラウンドとして差し引く ことができるため、 解析 には支障無いものと思われる。
6の代わりに未修飾のオリゴヌクレオチドT14を用いて同様の検討を行っ
た(T 14と43merの複合体系で測定)。 その結果、 この場合不純物由来の発 光が観測される のみで、 先程と同様にT1 4についてはTb(III)の発光バンド
はまったく観測できなかった。
次に、6とTb(III)の複合体にDNA二本鎖として42mer、 44merを加えて、
発光挙 動を検討した。 図4-5の( a)、(b)に、 DNA二本鎖として42merを共存 させた場合の発光スペクトル(À ex= 280n m)、 励起スペクトル (À em=545nm)をそれぞれ 示す。 また 、図4-6の( a)、(b)に、 DNA二本鎖とし て44merを共存させた場合の発光スペクトル(À ex=280nm)、 励起スペク トル(À em=545nm)をそれぞれ示す。 これより、 いずれも43merの場合と
ほぼ同様の 挙動をとることがわかった。
-11 7-
(a) 0.5 0.4
0.1 0.2
ωmgハボ釈
0.3
0
450 550 600 650
波長(nm)
500
、Efj 'D 〆'at、、
0.35 0.30
0.05 0.20 0.25
ハU'lムハU
0.15
ωmgハボ惚
0
240 340 360 380 400
波長(nm)
320 280 300
260
6、 Tb(III)、 42merの複合体の発光スペクトル(À ex=280nm) (a)及び 励起スペクトル(À em=545nm) (b)
図4- 5
6: 1μM, 42mer: 0.5μM, Tb(N03)3: 0.5μM, NaCl: 2M, HEPES (pH7.5): 1mM,
測定温度:
50C
-118-
0.5 (a)
0.4
回 0.3
g
斗コ'r'\点 0.2
噌E'A
nu
0 450 500 550
波長(nm)
600 650
\,j 〆,,.. 'hu
‘、 、
0.5 0.4
制 0.3
25
ボ 惚 0.2噌EEAハU
。
240 260 280 300 320 340 360 380 400
波長(nm)図4-6 6、 Tb(III)、 44merの複合体の発光スペクトル(À ex=280nm) (a)及び 励起スペクトル(À em=545nm) (b)
6: 1μM, 44mer: 0.5μM, Tb(N03)3: 0.5μM, NaCI: 2M, HEPES (pH7.5): 1mM,
測定温度:
50C
ー119-
次に、 6とTb(111)の複合体にDNA二本鎖として26merを加えて、 発光挙 動を検討した。 図4-7の(a)に280nmの光で励起 した際の発光スペクトルを、
図4-7の(b)に545nmでモニターした励起スペクトルを示す。 図4-7の( a)の 発光スペクトルから、 Tb(111)のバンドの強度は、 6単独の場合と比較する
と小さいものの 、 42mer、 43mer、 44merの場合と比較すると、 1 .5倍程度 大きいこ とがわかる。 これについては、 主に三本鎖複合体の安定性が関係 しているのではないかと考えられる。 測定はすべて50Cで行っており、 複合
体のTmから判断して基本的にはすべての系(42mer、 43mer、 44mer、 及び 26merの系)で、 複合体 は形成されている もの と仮定して検討を行った。
42mer 、 43mer、 44merの系ではこの仮定はほぼ成り立つと考えられるが、
26merについてはその融解曲線の 形状から判断して一部分は解離している 可能性が考えられる。 したがって、 26merの系ではよ り解離種(一本鎖状 態の6)が多く存在する ため、 発光強度が大きくなったのではないか と考 えられる。
次に、 DNA二本鎖として、 実質6の結合サイトを有していないとみなせ る calfthymus DNA (CT-DN A)を用いて同様の検討を行った。 図4-8の( a) に6 とTb(111)の複合体にCT-DN A を共存させた系の発光スペクトル(À ex=280nm)を、 図4-8の(b)に励起スペクトル(À em=545nm)を示す。 こ の場合、 6単独の場合と比較して、 Tb(I11)の発光強度は2割程度しか減少 しなか った。 これより、 Tb(111)の発光 は、 6がターゲットとなるDNA二本 鎖と三本鎖を形成してはじめて、 大きく減少する ことがわかる。 表 4-1 (の 左の欄)に、 各系におけるTb(111)の発光強 度の相対値をまとめて示す。 こ の 表では、
6単独の場合のTb(111)の発光強度を1として表した。
ここで、 DNA二本鎖共存下での発光強度と非共存下でのそれとを正確に 比較するには、 内部j慮、光効果(inner f ilter effect)について補正する必要
-120-
0.5 0.4
制 0.3
4当 ふコ
'1ヘ
保 0.2
0.1
。
0.40 0.35 0.30
j主回0.25
4r1.司土、
0.20
さ只《民0.15 0.10 0.05
。
(a)
450 500
(b)
240 260 280
550 600 650
波長(nm)
300 320 340 360 380 400
波長(nm)図4-7 6、 Tb(III)、 26 m erの複合体の発光スペクトル( À ex=280nm) (a)及び 励起スペクトル( À em=545nm) (b)
6: 1μM,26mer: 1μM, Tb(N03)3: 0.5μM, NaCl: 2M, HEPES (pH7.5): 1mM,
測定温度: 50C
-121-
(a)
0.4 0.3
0.2
-EEA nu
ω国内訳ポ釈
0
450 550 600 650
波長(nm)
500
\2ノ
hu
/'t、、0.5 0.4
噌'EムハU
0.3 0.2
ωm~日明m九日h一向m
0
240 260 280 300 320 340 360 380 400
波長(nm)6、 Tb(III)、 Cf-DNAを混合した溶液の発光スペクトル(À
ex=280nm)
(a)及び 励起スペクトル(Àem二545nm)
(b)図4-8
6: 1μM, Cf-DNA(p): 43μM, Tb(N03)3: 0.5μM, NaCl: 2M,
HEPES(pH7.5): lmM,
測定温度: 50C
-122-
表4-1 Tb(III)の発光強度の相対値
発光強度の相対値 補正値a)
6 1.00 1.09
T14
。 。6+42mer 0.22 0.28
6+43mer 0.23 0.29
6+44mer 0.22 0.28
6+26mer 0.38 0.50
6+CT-DNA 0.78 1.02
T14+43mer 0 0
a)内部液光効果に対して補正した値
がある。 DNAは2 60nm付近に最大吸収を有 するのであるが、 励起波長 であ る 2 80nm付近にも吸収を有するため、 系内にDNAを余分に含むとその分励 起エネルギーの一部がDNAに 吸収され、 励起効率が低下する。 そのため、
DNA二本鎖を含む系では見かけ上、 発光強度が減少 すること になる。 この 内部漉光効 果については、 以下の式を用いて補正することができる。
I
C orr=Io
bs/10-A/2ここで、 1C 0 r rは補正した発光強度であり、 10b s は観察される(未補 正の) 発光強度である。 Aは、 励起波長(2 80nm)における溶液の吸光度である。
表4 -1 (の右の欄)に、 各系 におけるTb(II I)の発光強 度の補正 値 を示す。
この値で比較すると、 C T-DNAを共存させた系 の発光強度は、 6単独の 系の それとほぼ等しいことがわか る。 一方で、
6のターゲットとなるDNA二本
鎖を共存さ せた 系で は、 発光強度は6単独の系と 比較して依然としてか な り低い値であることがわかる。 これより、Tb(III)の発光は、 6がターゲツ
トとなるDNA二本鎖と 三本鎖を形 成して初めて減 少する ということができ る。 したがって、 こ のような消光 をシグナルとして利用して、 DNA三 本鎖
の形成 を確認することが可能であ ると考えられ る。
-123-
4-2-2
Eu(III)系
Tb(III)と同様に核酸塩基との相互作用 に基づいた発光が確認されている Eu(III)を用いて、 同様の検討を行った。
4-2-2-a
Eu(III)- 一本鎖DNA複合体の発光挙動
まず、 DNA二本鎖を共存させな い条件下で、 一本 鎖DNAとEu(III)の複合 体の発光挙動を検討した。 図4-9の(a)に、 280nmの光で励起した際のオリ ゴヌクレオチド6とEu(III)の複合体の発光スペクトルを示す。 592nm及び 615nmに、 Eu(III)に特徴的な発光バンドが観測された。 それぞ、れ5D。→7FI
及び5D。→7F2遷移に基づくものである。 また 、 図4-9の(b)には、 615nmで モニターした際の励起 スペクトルを示す。 実線が未補正スペクトルであり、
点線が補正スペクトルである。 これより、 補正スペクトルは270nm付近に ピークを有しており、 Tb(III)の場合と同様に、 ここでのEu(III)の発光は核 酸塩基に由来す るも のである と考えられる。
発光強度に関しては、 Eu(III)はTb(III)の1/5程度であった。 これは、 配 位水による消光効果をEu(III)の方がTb(III)よりも受けやす いため であると 考えられ る。 ランタノイドイオンは配座の多い金属イオンであるため、 ィ
ミノ二酢酸が配位した のちも水分子が配 位す ることが可能である。 一般に ランタノイドイオンの励起エネルギーは、 水分子の振動エネルギーとカッ プリングして、 不活性化される。 この際、 Eu(III)の方がTb(III)よりも励起 状態と基底状態聞のエネルギーギャ ップが小さいため、 水分子による不 活 性化を受けやす いと言われている39)0
-124 -
民 0.06
� 斗J'r-'\
惚 0.04
0.08
0.06
住民怒号只
0.04
釈0.02 (a)
0.08
0.02
。
500 550 600 650
波長(nm)
、、E,,ノ'hU
〆
,,.. 、
、
0 240 260 280 300 320 340 360 380 400
波長(nm)図4-9
6とEu(III)の複合体の発光スペクトル(
À ex=280nm) (a)及び励 起 スペクトル(À em=545nm)* (b)6: 1μM, EuC13: 0.5μM, NaCl: 2M, HEPES (pH7.5): 1mM,測定温度: 50C
* (b)の励起スペクトルで点線は補正スペクトルを示す。
-125-
4-2-2-b
Eu(III)- 三本鎖、DNA複合体の発光挙動
オリゴヌクレオチド6と Eu(III)の複合体に、 DNA二本鎖を共存させた場 合の発 光挙動を検討した。 DNA二本鎖としては、 44mer、 26mer、 及びCT
DNA を使用した。 図4-1 0、 4-1 1、 4-1 2に、 それぞれDNA 二本鎖 と して
44mer 、 26mer、 CT-DNAを共存させた系のスペクトルを示す 。 また、 表4 -
2には、 各系 におけるEu( III) の発光強度の相対値をまとめて示 す。Tb(III )の場合 と同様に、 6と三本鎖形成が可能なDNA二本 鎖( 44mer、
26mer)を共 存させると、 Eu(III) の発光強 度が減少するこ とがわかった。
また、 この場合も44mer を共存させた方が26merを共存させた場合よりも 減
少の程度が大きかった。表4-2 Eu(III)の発 光強 度の 相対 値
6 6+44mer
6+26mer 6+CT-DNA
発光強度の相対値 補正値a)
1.00 0.19 0.29 0.79
1.09 0.24 0.38 1.03
a)内部漉光効果に対 して補正 した値ー126-
住民
0.06
g 斗J'r'\釈 0.04
脳出
雲 0.04
0.02 0. 10 0.08
0.02
0.08 0.06
(a)
。
500 550 600 650
波長
(nm)
、、B,j'hu 〆'tt\
0 240 260 280 300 320 340 360 380 400
波長( nm)
図4- 10
6、 Tb(III)、 44merの複合体の発光スペクトル( ). ex=280nm) (a)及び
励起スペクトル( ). em=545nm) (b)6: 1μM,44mer: 1μM, EuC13: 0.5μM, NaCl: 2M, HEPES (pH7.5): 1町出1,
測定温度:
50C
-127-
ハU噌26A
nu
0.08
出
0.06
斗コ
g
イ旬、
釈 0.04
0.02
0.08
0.06
住民斗J
_:,� 0.04
以庁、
0.02 (a)
。
500 550 600 650
波長(nm)
、、,,ノ唱hu/'E\
。
240 260 280 300 320 340 360 380 400 波長(nm)
図4-11 6、 Tb(III)、 26merの複合体の発光スペクトル(À ex=280nm) (a)及び 励起スペクトル(À em=545nm) (b)
6: 1μM, 26mer: 1μM, EuCI1: 0.5μM, NaCI: 2M, HEPES
(pH7.5):1mM,
測定温度: 50C
-128-
0.10 (a)
0.08 0.06 0.04 0.02
出川明白川沢潔
650
550 600
波長(nm)
500
。
、、,,ノ
'hU
/'aE、、0.08 0.06 0.04 0.02 Ednoh
h ロ4凡斗 '
ムダ九州、
0
240 340 360 380 400
波長(nm)
320 300 260 280
6、 Eu(田)、 CT-DNAを混合した溶液の発光スペクトル(À ex=280nm) (a) 及び励起スペクトル(À em=545nm)
(b)
図4-12
6: 1μM, CT-DNA(p): 43μM, EuC13: 0.5μM, NaCl: 2M, HEPES (pH7.5): lmM,
測定温度:
50C
-129-
4-2-3 まとめ
イミノ二酢 酸修飾オリゴ ヌクレオチド6とTb(111 )およびEu(1 11 )の複合体 は、 核酸塩基か らのエネルギー移動 に基づ い て、 Tb(111)およびEu(11 I)に特 徴的な発光挙動を示すことがわかった。 また 、 こ のような発光は未修飾 の オリゴヌクレオチドでは観察できなつか たので 、 イミノ二酢酸部位との錯 形成が 各金属イオンの効果的な発 光には必須で あることがわかった。
オリゴヌクレオチド6が そのターゲットとなるDNA二本鎖、と 結合し、 一 本鎖を形成すると、 Tb(II1)およびEu(II1)の発光強度は大きく減少すること がわかった。 従って、 発光強度をモニターすることによって、 三本鎖形成 の確認が可能である。 言い換えるならば、 ランタノイドイオンの消光をシ グナルとして利用して、 DNA二本鎖中の三本鎖形成 部位の検出 が可能で あ ると考えられる。
本検討では、 オリ ゴヌクレオチド6がC2対称、な配列有するDNA二本鎖に だけでなく、 26merにも結合し得る条件で検 討を行った。 その ため、 当然 ながら 44mer (42mer、 43mer)を含む系と 26merを含む系でそれほど明瞭 な発光強度の差はなか った。 しかしながら、 前章での検 討から明らかな よ
うに、
6はC2対称、な配列を有するDNA二本鎖に対しては二量体として結合
する ため 、 その三本鎖 の安定性は26rne rに対する よ り も大きい。 従 って、
C2対称、な 配列にのみ結合し得るような適当な条件を設定することによって、
そのような高次配列を選択的に検出することも可能であると 考えられる。
ところで、 発光強度に関しては、 Tb(I11)を使用 した場合においてもそれ
ほど 大き くなく、 実際の生体試料への適用を考え た場合 、 その検出感度に 問題が残る。 感度を向上させる1つの方 法として、 プローブと なるオリゴ ヌクレオチドにグアニン塩基を導入する方法 が考えられる。 過去に、 国相 系でRNAとTb(I11)の複合体 の 発光挙動を検討した例がある。 そこでは各核 酸塩基との 相互作用 に基づく発光 の相対強度が求められており、
G: C:
U:ー130-
A=495: 20: 11: 1という値が得られている48)0 また、 水溶液中でモノヌク レオチド共存下におけるTb(III)の発光強度を求めた例もあり、 そこでは dGMPとdTMPに対してそれぞ、れ23、 2という相対強度が得られている45)0
従って、 プローブとなるイミノ二酢酸修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基 としてグアニンを利用すれば、 大幅な感度の向上が期待できる。
-131-
4-3 0-フェナンスロリンからのエネルギー移動に基づいたラン タノイド金属イオンの発光
前節では、 核酸塩基を光増感 剤として 利用してラン タノイド イオンを発 光させた 。 そ して、 プロープオリゴヌクレオチドの三本鎖形成に 伴うラン タノイドイオンの消光を利用し た検出法について述べた 。 し か し、 この検 出法は消光を利用し たものであるため、 本質的 に高感度検出に は適してい ないと考えられる。 検出法としては、 プローブオリゴヌクレオチドが DNA 二本鎖に結合 した際に初めて発光が起 こり、 その発光を利用し て検出する シス テム が望ましい。 このよ うな才食出システムを目指して、 新たに以下に
述べるような光増感剤としてかフェナンスロリン(phe n)を利用した検出 システムを考え た。
図4-1 3にその 概念図を示す。 図4-1 3の( a)では、 三本鎖形成部位を有して いな いDN A二本鎖を共存させた場合のプロープオリゴヌクレオチド(6と ランタノイド イオンの複合体)の挙動を示している。 この系にphenを添加 すると、 phenは典型的なDNAインターカレータであるためDNA二本鎖 に選 択的に結合し、 結果的にDNA二本鎖上 に濃縮された状態と な る。 この状態 では、 ランタノイド錯体はphenと十分に相互作用するこ とができないため、
phenを励起 しでも それからのエネルギー移動 に基づいたランタノイドイオ ンの発光は期待できない。
一方で、 図4-13の(b)に 示すように、 三本鎖形成部位を 有するDNA二本 鎖を共存させた場合には、 プローブオリ ゴヌクレオチドの 三本鎖形成に基 づ き、 ランタノイド錯体はphen と十分に相互作用が できる状態におかれる。
この場合、 phenの光励 起に基づいたランタノイドイオンの効果的な 発光 が 期待できる。 したがって、 このような 三本鎖形成 に伴うランタノイドイオ ンの発 光を利用して、 DNA二本鎖上の三本鎖形成 部位の検出が可能である と考え られる。 ま た、 この検出法の概念は当然、 本研究で着目しているC2 対称、配列 の系にも適用で きると考 えられ(図4-14)、 このような配列の検
ー132-
6
物�
hv
\E1J LU 物�
hv
物物=位3
ひフェナンスロリン
図4-13 0-フェナンスロリンを光増感剤として利用した三本鎖形成部位の検出
図 4 -14 DNA二本鎖上のC2対称配列の 検出
ー133-
出も期待できる。
ここでは、 上記の検出法の可能性を検討するために、 ランタ ノイドイオ ン、 オ リゴヌクレ オチド6、 及びDNA二本鎖を含む系 にphenを添加し、 そ の発光挙動を検討した。
4-3-1
Tb(III)-フェナンスロリンー三本鎖DNA複合体の発光挙動
まず、 前節と同様にランタノイドイオンとしてTb(111)を用い て解析を行 った。 オリゴヌクレオチドふTb (111) - 43 merの複合体に、 phenを添加してい った場合 の発光スペクトル( À ex=285nm)の変化を図4 -15の( a)に示すo phen添加に伴いTb(111)の発光バンドが明らかに増大していった。 このこと から、 phenからのエネルギー移動に基 づいたTb(111)の発光が起こっている こと がわかる。 図4 - 15の(b)には、 ph en添加 に伴う 励起スペクトル( À em=545nm)の変化を示す。 280nm付近のピークがphen添加に伴い 増大し ていった。 図4 -1 6にはphenの吸収スペクトルを示すが、 励起スペクトルで 増大し たピークは、 この吸 収スペクトルで270nm付近のピークに由来する ものであると考えられる。 ただ、 phenをTb(111)に対して100当量加えた時 点での励起スペクトルは、 そのピークがかな り長波長側にシフトし ている ことがわかる。 これは、 phenに基づく内部j慮、光効果によるものであると考 えられる。
オリゴヌクレオチド6の代わりに、 未修飾のオリゴヌクレオチドT14を用 いて、 同様の検討 を行った。 図4-17 に、 phen添加に伴う発光スペクトル 変 化を示す。 この場合、 phenを添加していってもTb(III)の発光バンドはほと んど増大しな かった。 この系から も、 前節と同様に、 Tb(III)の 効果的な発 光にはイミノ二酢酸部位との錯形成が必須であることがわかる。
ー134-
1.2 (a)
1.0
0.8
生日に4ご討0.6
斗'r\コ
《県
0.4
0.2
。
450 500
1.4 (b)
1.0卜
/ "
斗
ぷ
コ0.6
. l' ー \
.1 \
0.4卜 \
, 、 .
0.2卜/つJ
/ ' ノ" , ・ ,
0
240 280
\
\
550
波長(nm)\
、、
\
‘‘、 ~ 、
一一一一
0
・ ・ ・ー
5
- 一 一 ー -
20
一一_ _ _ -
100
600
""'"
-ーー・ーーー - _ー ーーー ーー・ 'ー・ ・ー... 司・.
_ -、" ‘・
��
650
号、 ご‘F、 ・ ‘ 主、、--ーー._
320 360 400
波長(nm)
図4-15 phen添加に伴う6、 Tb(llI)、 43merの複合体の発光スペクトル(À ex=285nm)の 変化(a)、 及び励起スペクトル(À em=545nm)の変化(b)
Tb(llI)に対して0、 5、 20、 100当量のphenを添加した。
6: 1μM, 43mer: 0.5μM, Tb(N03)3: 0.5μM, NaCl: 2M, HEPES (pH7.5): 1mM,
測定温度:
50C
ー135-
ω同県民」
400 300 350
250 0.6
噌EaAnu
0 200 0.4 0.5
0.2 0.3
波長(nm)
0-フェナンスロリンの吸収スペクトル 図4-16
650 600
550
凡U、喝 、\・
\\AV 、、
、 、
\\
\
・‘‘
‘ 、
・1111 、
---aBIBE--
‘,‘、
、、人「 ハU 句EEム
500 0
450 1.2
0.6 0.4 0.8
0.2
ω問題県山町
波長(nm)
phen添加に伴うT14、 Tb(皿)、 43merの複合体の発光スペクトル(À ex=285nm) の変化(Tb(III)に対して0、 5、 20、 100当量のphenを添加)
T14: 1μM, 43mer: 0.5μM,Tも(N03)3: 0.5μM,
NaCl:2M, HEPES (pH7.5): 1mM,
測定温度:
50C
-136-
図4-17司--
次に、 オリゴヌクレオチド6と42mer及び、44merの 複合 体 に、 phenを 添加 した際のTb(III)の発光挙動を検討した。 図4-1 8、 4-1 9に、 それぞれ42mer、
44me rを使用し た場合のph en 添加に伴う発光 ス ペ ク ト ルの変化を示す。
42mer、 44merの場合もphen 添加に伴いTb(III)の発光強度 が増大していっ た。 しかしな がら、 発光強度の増加の割合は、 42mer、 43mer、 44merの系
でそれぞれ異なることがわかった。 図4-2 0 に、 それぞれ の系におけるphen 添加に伴うTb(III)の発光強度の変化を、 まとめてプロットした図を示す。
これより、 発光強度の増加の割合は、 44merの場合が最も大きく、 その次 に43merで、あり、 その次が42merであることがわかる。
この挙動 について は、 Tb(III)錯体の おか れた環境を反映した も の である と考えられる。 図4-21 にその模式図を示す。 42merの場合リンカ一部分の 長さが余っているた め、 Tb(III)錯体 はDNA二本鎖から幾分離れた場所に位
1.2 1.0
生当4rlモrヨ、
0.6
込保'rコ、0.4 0.2
。
450 500
一一一一O
..5
-- ー ー -
20 一一・・・ー50
550 600 650
波長(nm)
図4-18 phen 添加に伴う6、 Tb(llI)、 42merの複合体の発光スペクトル(À ex=285 nm) の変化(1も(III)に対して0、 5、 20、 100当量のphenを添加)
6: 1μM, 42m er: 0.5μM, Tb(N03)3: 0.5μM, NaCl: 2M, HEPES ( pH7.5): 1mM,
測定温度: 50C
-137-
phen添加に伴う6、 Tb(III)、 44merの複合体の発光スペクトル( ). ex=285nm)の 変化(Tb(凹)に対して0、 5、 20、 100当量のphen)
650
一一一一0
・ー・ ・・・・・
5 - - ー ー - 20 一一- - - - 100
60 0 550
波長(nm)
500
1.2
0.2
0 450
nv 噌EEA
0.6 0.8
0.4
制円相h-米山町
図4-19
6 : 1μM, 44mer: 0.5μM, Tb(N03)3: 0.5μM, NaCI: 2M, HEPES (pH7.5): 1mM,
測定温度: 50C
20
5
nu ハU
ハU'EE--25
15
脳内畑山県山町
100 80
40 60 20
[phen]/[Tb(III)]
phen添加に伴うTb(III)の発光強度の変化 42mer、 43mer、 44mer間での比較
ー138-
図4-20司".-
43mer
物=ひフェナンスロ1)ン
44mer
図4-21 Tb(III)-6-三本鎖DNAの複合体の模式図
置する確率が高いと考えられる。 一方、 44merの場合、
Tb(III)錯体は かな
りDNA二本鎖に近接していると考えられる。 ここでphen はDNA二本鎖にイ ンターカレーションしていると考えられるので、 よりTb(I11)錯体がDNA二 本鎖に近接 している方が発光効率 は高いと推測される。 ゆえに、 ここで観 測された発光強度の違いは、 このよう なTb(III)錯体 と DNA二本鎖との間の相対的な位置関係を反映したもので は ないかと考えている。
次に、 DNA二本鎖として26merを使用して同様の検討を行った。 Tb(II1)-
6-26me rの複合体 に、 ph
enを添加して いった場合の発光スペクトル( Àex = 285 n m)の変化を図4-22に示す。 この場合も明らかにphen添加 に伴い
Tb(III)の発光強度が増加していった。 増加の程度 は、 先の42mer、 43mer、
44mer を用いた場合よりも明らかに大き かった。 図4-23に、 phen添加に伴 うTb(lll)の発光強度の変化をプロ ットしたものを、 44merの場合 と併せて 示す。 こ れより、 phenをTb (111 ) に対して100当量加えた点で比較す る と、
26merの方が44merよりも約1.5倍強度が大きいことがわかる。
-139-
一一一一 0
・・ー・・・・ 5
- ー ー ー - 20
一一・・・ー100
‘トトal--ドJ一いハベ山川川トいいい山内
1 . 6
1.0
0.2 1.4 1.2
0 . 8
0.6 0.4
ωmgパ沢山m
650 550 600
波長(nm)
500
。
450
phen添加に伴う6、 T吹田)、 26merの複合体の発光スペクトル(À ex=285nm) の変化(Tb(III)に対して0、 5、 20、 100当量のphenを添加)
図4-22
6 : 1μM, 26mer: 1μM, Tb(N03)3: 0.5μM, NaCl: 2M, HEPES (pH7.5): 1mM,
測定温度: 50C
30 35
2 0 25
ハU噌EEA
15
5
脳出米紙
。
。
2 0 4 0 6 0 8 0 100
[phen]/[Tb(皿)]
phen添加に伴うTb(III)の発光強度の変化 44mer、 26mer、 CT-DNA間での比較 図4-23
-140-
これについては、 以下のようなことが要因として考えられる。 6が 26mer と三本鎖を形成する場合は、
Tb(III)はl分子のイミノ二酢酸によってのみ
配位されているため、 その残余配位能力は高い と 考えられる。 この場合、より効 果的にphenと錯形成が可能であり、 この ことが原 因で大きな発 光強 度 の増大 が観られた 可能性 が考えられる 。 も う一つの要因と しては 、 Tb(III)錯体が動き得る空間的な自由度が考えられる。 すなわち、 26merの 場合、 44merの場合と比較して、 Tb(III )錯体はそ れほど固定されておらず、
ある程度自由に動くことが可能であると考えられる。 そのため、 phenとの 錯形成に有利なコンフォメーシ ョンをとることも 可能で あり、 このような ことが原因 で効 果的な発光が観測された可能性も考えられる。
次に、 オリゴヌクレオチド6とTb(III)の複合体 にCT-DNAを共存させ、
phen添加に伴う発光挙動の変化を観察した。 図4-24に、 phen添加に伴う発 光スペクトルの変 化を示す。 また、 phen添加に伴う Tb(III) の発光強度の変 化をプロ ットしたものを、 先の図4-23に示した。 CT-DNAの場合、 44 mer や26merの場合と比較して、 phen添加に伴い Tb(III )の発光強度はほとんど 増大しなかった。 これより、 phenはDNA二本鎖上に濃縮されており、 6が DNA二本鎖と三本鎖を形成して初めてTb(III)の 効果的な発光が観察される ものと判断でき る。 このことは、 本実験系 がDNA 二本鎖上の三本鎖形成部 位の検出法として活用できる 可能性を有することを示すもの である。
ところで 、 CT-DNAの系では他の系と比べて、 phenを添加していない状 態で の発光強度が高い。 前節での検討で明らかになったよ うに、 本系では
6が三本鎖を形成していない状態では、
核酸塩基からのエネルギー移動 に基づくTb(III )の発光が効果的に起こる 。 ここでは、 増感剤として利用 した phen の吸収波長が、 核酸塩基の吸収波長とほぼ一致しているため、 励起波 長として 核酸塩基を励起させる 波長とほ ぼ同じ波長を利用した。 このため、
phenを 励起させると必然的に核酸塩基も同時に励起されることになり、
ー141-
.r-'
1.2
0.8
生gd
0.6
さ只
《県
0.4 0.2
。
450 500 550 600 650
波長(nm)
図4-24
phen添加に伴う6、 Tb(皿)、 CT-DNAの混合系の発光スペクトル(
À ex=285 nm) の変化(Tb(皿)に対して0、 5、 20、 100当量のphenを添加)6: 1μM, CT-DNA
(p): 43μM, Tb(N03)3: 0.5μM, NaCl: 2M, HEPES (pH7.5): 1rnM, • 測定温度: 50CC T-DN Aの系では、 核酸塩基からのエネルギー移動に基づくT b(III)の発光 が、 大きなパックグラウンドとして現れる結果となった。
4-3-2 Eu(III)ーフェナンスロリンー三本鎖DNA複合体の発光挙動
次に、 T b(III)の代わりに、 Eu(III)を用いて同様の検討を行った。 図4-2 5 に、
6と4
4merの複合体に、p he nを 添加していった場合の発光スペクトルの
変化を示す。 図4-26 に、 DN A二本鎖として26merを使用 した場合の発光ス ペクトルの変化を示す。 また、 図4-27 に、 同じくCT-DN A
を共存させた場 合の結果を示す。 図4-2 8には、 p he n添 加に 伴うEu(III)の発光強度の変化を、ー142-
司�
�
一一一一
0
・ ・ ・
5 - ー - - - 20 一一. . .ー100
\\ !ハ 1
くベぐへ:\、\、\、、 ハ !ハ 1
;ごヘ一Nト�ιU、仁\,1しU;!ハ(
、�t.�んι1.,と己μ.乙とムL三ム‘:、1
0.25 0.20 0.15
凶行日米刈Jm
0.10 0.05
。
650 600
550 500
波長(nm)
phen添加に伴う6、Eu(III)、44merの複合体の発光スペクトル(À ex=285nm)の 変化(Eu(皿)に対して0、5、20、100当量のphenを添加)
6: 1μM, 44mer: 0.5μM, EuC13: 0.5μM,l、�aCl: 2M, HEPES (pH7.5): lmM,
測定温度: 50C
図4-25
一OE 11
|一二�o I i 1
\\
\ |
一一一100I '. : '1
i - - U i
I \ I川
\J 川 �V'〆\;
0.35 0.30
0.15
ハU噌EE--
nu
0.20 0.25
ωmgパ米山町
0.05
。
600 650 550
500
波長(nm)
phen添加に伴う6、Eu(ill)、26merの複合体の発光スペクトル(À ex=285nm)の 変化(Eu(ill)に対して0、5、20、100当量のphenを添加)
6: 1μM,26mer: 1μM, EuCI3: 0.5μM, NaCI: 2M, HEPES (pH7.5): 1mM,
測定温度:
SOC図4-26
ー143-
�
0.25
住民
0.15
r根駅
0.10
・ぺ��
。
500
F
一一-・・司100
550 600
波長(nm)
650
図4-27 phen添加に伴うふ Eu(III)、 CT-DNAの混合系の発光スペクトル(À ex=285nm) の変化(Eu(III)に対して0、 エ20、 100当量のphenを添加)
6:
1μM, CT-DNA(p): 43μM, EuC13: 0. 5μM, NaCl: 2M, HEPES (pH7.5): 1ロホ1,
測定温度: 50C
7
6 H
口5
ム住民
4
4「1モ.ヶヨ、
斗官 閃ペ七ーコ
T、コ\
3 2
。
。
20 40 60 80 100
[phen]/[Eu皿)]
図4-28 phen添加に伴うEu(ill)の発光強度の変化
-144-
司�
各場合においてプロ ットしたものを示す 。 これら の結果より、 Eu(III)の場 合も、 Tb(III)の場合 とほぼ同様 の挙動をとることがわかった。 すなわち、
26merの場合 が最も発光強度の増加の割合が高く 、 その次が44merの場合 で あ り 、 その 次がCT-DNA の場 合であった 。 また、 前節での検討と同様に、
Eu(III)の発光強度はかなり小さく、 Tb( II I)の1/5程 度であった。
4-3-3 まとめ
ここでは前節 とは考 え方を変え、 光増感剤としてphenを利用して、 プロ ーブオ リゴヌクレオチドが三本鎖DNAを形成した際に積極的にランタノイ
ドイオンを発光させることを試みた。 実際にTb(III)、 Eu(II I)の発光強度は、
6のターゲットとなるDNA二本鎖を共存させた場合に は、 phen 添加に伴い 顕著に 増大していった。 一方で、 CT-DN Aを共存させた場 合に は、 phenを 添加しでも-発 光強 度はほとんど増大しな かった。 従って 、 本実験系は、
DNA二本鎖上の三本鎖形成部位を検出する手段として活用できる可 能性を 有するものであると考えられる。
C2対称、配列 を 有するDNA二本 鎖42mer、 43mer、 44mer 共存 下での発光 挙 動と、 26mer共存下での発光挙動を比較すると、 26merを共存させた 方が 発光強度 の増加の程度が大きいことがわかった 。 このことは、 C2対称配列 を特異的に検出するという観点からは、 不利な点であると考えら れる。 し かしながら、 前節で述べたように、 オリゴヌクレオチド6はC2対称、配列に 対してより 高い親和性を有している。 従って、 三本鎖形成 の反応条件を調 節することによって、 C2対称、配列のみを特異的に認識させ、 検 出すること も可能であると考えられる。
ー145-
�
本実験系は、 DNA 二本鎖上の特異な配列を検出する手法として活用 でき る可能性を有するもの の、 現時点では、 まだ多くの改善すべき 点が ある。
特に、 以下に示すように、 増感剤として使用したphenについては、 多くの 問題点がある。
まず第一に phenの励起 波長 の 問題である。 phen の吸収波長は核酸塩基 の それとほぼ同じである ため、 phenを励起させると 核酸塩基も同時に励起さ れることになる。 この場合、 前節の 検討で明らかになっ たように、 三本鎖 を形成 しない系において、 核酸塩基から のエネルギー移動に基づくTb(III) 発光が顕著になる。 従って、 この発光がすべて三本鎖、を形成しない系での 発光に上乗せ されることになり、 三本鎖を形成 する系と のコントラストが 小さくなっている 。 このような観点 から、 より長波長側に吸 収を有する DNA配位子 を増感剤として利用し、 そのような 長波 長側 の光で励起する必 要があると考え られる。
phenのDNA二本鎖に対する結合能も問題点として挙げられる。 図4-23、
4・28から明らかなように、 ランタノイドイオンを効果的に 発光させ る には かなりの高濃度のphenを必要としている。 また、 このような条件下では、
三本鎖を形成 せ ずに、 一本鎖 DNAとして存在している 系 でも、 ランタ ノイ ド イオン の発光強度の増大が観られる。 従って、 よりDNA二本鎖に対して 高い親和性を有する配位子を増感剤として 使う必要があると考え られる。
また 、 DNA二本鎖にインターカレートした状態での phen のランタノイド イオンに対する配位能も 問題点として考えられる。 す なわち、 phenはDNA 二本鎖に インタ ーカレーションすると 、 窒素原子を含むキレートサイトは、
基本的 にはDNAの溝から突き出た形では存在していないと 考えられる。 こ のような状態では、 と りわけC2対称、配列をターゲットと する 場合、 ランタ ノイド金属錯体は動 き得る空間的な自由度は制限されている ため、 容易に はphenと相互作用できないとものと考 えられる。 このような観点 から、 配 位サイトがDNAの溝から突き出せる ような構造を有する配位子を、 増感剤
-146-
唱�
として利用することが望ましいと考えられる。
以上のような問題点を解決する配位子(光増感剤)としては、 ジピリド フェナジン(D PP Z)配位子等が候補として挙げられる。
。
DPPZ
-
1 47-
司r
4由4 結言
本章では、 ランタノイドイオンと錯形成したイミノ二酢酸修飾オリゴヌ クレオチドをプローブとして用いた(DNA二本鎖上の) C2対称配列の検出 システムの開発 について述べた。
4-2節では、 まず核酸塩基を光増感剤
とし て利用してラ ンタノイドイオン を発光させ、 その (プロ ーブオリゴヌクレ オチド の三本 鎖形成 に伴う) 消光を利用した検出法について述 べた。 この 検出 法の概念は、 これまで試みられたこと の ない新しいものであ り、 今後の様々な発展が期待できる。 しかし、 この検出法は消光 を利用したもの で あるため、 本質的に高感度検出 には適していないと考えられた 。 そこで、
4-3で 述べたようなかフェナンスロリンを光増感剤として利用した検出法を 考案した。
これらの検出法ではともにDNA二本鎖 そのものをターゲットとしており、
通常のDNAハイブリダイゼーション法49)・50)のよう に一本鎖DNAをターゲツ トとしてい ないため、 より簡便で、 迅速な検出が可能であると考えられる。
また、 とりわけ4-3で述べたかフェナンスロリンを光増感剤として利用した 検出法については、 プローブ オリゴヌクレオチドがターゲットに結合して 初めて発光するとい う システムを採っていため、 (ターゲットに結合した プローブとそうで ないプローブを分離する)いわゆるBF分離 の操作を必要
とし ない 。 そのため、 通常の検出法と比較して多く の利 点を有していると 考えられる。
しかし、 これら両検出法とも先述した よう に 、 実用的な応用を考え た場 合まだいくつか の改善しなければならない点がある。 これらについては今 後の検討に 期待するところである。
-148-
司咽「
第5章 結論
天然に 存在するDNA結合性配位子の 中には、 分子内に金属錯形成部位を 有し、 金属イオンと協同的に相互作用してその活性を発現するものが存在 する。 これらのDNA配位子はDNAとの相互作用において、 DNA-金属イオ ンーDNA配位子の三元錯体を形成していると考えることができる。 しかしな がら、 三元錯体の形成は示唆されるものの、 依然として金属イオンの結合 位置や役割などが明らかにされていないDNA配位子も数多く存在する。 そ こ で、 本論文では、 天然 に観られるDNA-金属イオンーDNA配位子の三元錯 体の生成を人工のDNA配位子を用いて検証し、 このような三元錯体の本質 を明らかにすることを目的のーっとして検討を行っ た。 この一環として、
本論文では、 金属イオンによって(DNA配位子の) DNAに対する結合活性 が制御 で きるシステムを、 人工のDNA配位子を用いて構築することを検討 した。 ま た、 本論文ではDNA塩基配列の中でも、 とりわけC2対称、配列に着 目した。 そして、 このような配列へのDNA配位子の結合を金属イオンによ って制御することを積極的に試み、 さらに はこのような配列の検出システ ムの構築をネ食言すした。
以下、 本研究によって得られた成果を各章ごとにまとめて述べる。
第2章では、 金属配位官能基を有するアントラキノン誘導体1、
2を合成
し、 そのDN Aとの相互作用を検討した。 これらの DNA配位子 は、 天然の DNA配位子と比べると非常に簡略化された 構造を有しており、 DNA-金属 イオンーDNA配位子の三元錯体の形成に必要な最少限の構成要素から成って いる。 それゆえ、 三元錯体に関する最も本質的な知見を得るのに適した配 位子であると考えた。DNAとの会合に伴う吸収スペクトルの変化から、 これらのDNA配位子の アントラキノン部位 はDNAへインターカレーシ ョンしていると考えられた。
-1 49-
『岬'
まず、 これらのDNA配位子のターゲット とな る金属イオンとして、 Cu(II) を用いて解析を行 った。 Cu (11) 共存下においてScatcha rd解析を行い、 DNA に対する結合定数を求 めた ところ、 Cu(
11)非共存下の場合と比較して、
1に ついては 結合 定数が約2倍に なり、2については約7倍に な った。 これにつ
いては 、 Cu(ll)との錯形成によりこれらDNA配位子の正電荷が 増大するた めであると 考えられた。 さら に、2については モル比プロットからモル比が
0.5の条件下では2 : 1錯体を形成し、 二量体として存在すること が判明した。そ こで、 この条件下でも同様にScatchard解析を行い、 結合 定数 を求めたと ころ、 この場合 結合 定数が約6倍に なった。 これについては、 荷電状態の変 化によるものでは な く、 その構造変化によ るものであると考えられた。 す
なわち、 2 が二量化 することによ って DN Aに対する結合部位を二つ有する
に至った ことが原因で、 DNAに対する 結合定数が増大したものと考えられ た。
次に、 金属イオンとしてランタノイドイオンであるLa(lll)、 Eu(I 11) 、 Lu(11I) を用いて、 2とDNA との会合挙動について検討 を行った。 これらの 金属イオンは+3価の金属イオンであるため、 +2価のCu (11) の場合よりも DNAに対する結合定数が大きく増大 すること を期待していた のであるが、
実際にはそ れほど大きな 結合定数の増大は観測さ れ なかった。 これについ ては 、 DNA共存下において2がランタノイドイオンと安定な 錯体を形成で きないためであると考えられた。 しかし ながら 、 DNA 結合定数の値は これ ら のランタノイド金属イオン間で異なっており、 そ の序列に関してはイミ ノ二酢酸と各金属イオンの安定度定数に対応するものとなった。 このこと から判断して、 ランタノイドイオン共存下でも、 明確に 定義できるほど安 定なものでは ないのかもしれないが、
DNA-金属イオン -DNA配位子の三元
錯体が形成していると考えられた。以上のような検討から、 本研究で合成した
DNA配位子(1
、2)は、
いく つかの金属イオン存在下、 DNA-金属イオン-DN A配位子の三元錯体を形成ー150-
司咽「
することがわかった。 そして、 このような三元相互作用 にともないDNAに 対する親和性が増大する ことがわかった。 特に、 2において観察された 配位 子の二量化という現象は、 二量体とし て作用するDNA結合性タンパク等の 概念的なモデルとして捉える ことが でき 、 この点からも興味深い知見が得 られた。
第3章では、 金属 配位官能基を有するDNAオリゴヌクレオ チド を合成し、
そのDNAとの相 互作用を検討した。 第2章で合成したDNA配位子はDNAイ ンターカレ ータを基体として いる ために、 DNA への塩基配列特異的な結合 はほとんど期待できない。 そこで、 DNA三本鎖形成 に よりDNA 二本鎖に塩 基配列特異的に結合することが可能 なDNAオリゴヌクレオチドを基 体とし たDNA配 位子を合 成した。 本研究では、 DNAの塩基配列とし て、 DNA結合
性タンパ クの認識サイトとなってい るC 2対称配列に着目して検討を行った。
そして、 このC2対称、配列へのDNAオリゴヌクレオチドの結合(DNA三本鎖 形成)を金属イオン によって制御する ことを試みた。
上記のた めに末端にイミノ二 酢酸部位を導入したDNAオリゴヌク レオチ ド ( 4、 5、 6 )を合成した。 そして、 金属錯形成を通 じたオリ ゴヌクレオ チドの二量化を利用 したDNA三本鎖形成の制 御を試み た。
まず、 イミノ二酢酸修飾ピリミジン7量体4を合成し、 検討 を行った。 そ の結果、 鎖長が短すぎたためにDNA三本鎖の形成が確 認できず\金属錯形
成を通じ たオリゴヌクレオチド の二量化の効果を検討することはできなか った。
次に、 塩基数を2倍にしたイミ ノ二酢酸 修飾ピリ ミジン14量体5を合成
し 、 そのDNA 二本鎖との相互作用を検討し た。 このオリゴヌクレオチドに ついては
、
三本鎖形成を確認することができた。 オリ ゴヌクレオチド5の三 本 鎖複 合体については、 Lu(III ) を添加することによってその安定性 が増 大 することがわかった。 中でも41merと5の 複合体については、 Lu(III)添 加にー151-
よる淡色効果の程度が他 の系と比べて大き かったことから、 5 が二量体とし て協同的に41 mer に 結合している可能性 が示唆された。 しかし なが ら、 そ の協同性 は、 複合体のTmにはほとんど反 映されておらず、 満足のい くもの
ではなかった。 これ については、
5のイミノ二酢酸部位 とヌクレオチドをつ
なぐリンカ一部位の剛直性に問題があるのではない かと考え られ た。そ こ で次に、 リン カ一部位 のメチレン鎖を延ばし 、 その柔軟性 を増した オリゴヌクレオチド6を合成し、 DNA 二本鎖との相互作用を検討した。 6と DNA二本鎖( 42mer、 43mer、 44mer)の複合体 は、 Lu (III)を添加するこ とにより安定性が明らかに増 大することがわ かった。 特に、 6と44merの複
合体については、 Lu(III)の添加により Tmが100C上昇し、 大き な 安定化 が 観察された。 一方で、 6と26merの複合 体については、 Lu(III) を添加しでも ほとんど安定性に変化がみられ なかった。 このことから、 6はLu(III)共存 下、 C2対称配列に二量体として協同的に 結合 することにより 、 その配列へ の親和性を増大させていることがわかった。
また、 Lu(II I)だけでなく 他のランタノ イド 金属イオン(La(III) 、 Eu(III) 、 Tb(III) )についても、 6とDNA二本鎖(43m er、 44mer)の複合体 を安定化 することがわかった。 この際、 観察された複合体の安定性は、 各金属イオ ンとイミノ二酢酸の親和性を反映したものであ った。
以上のような検討から、 末端をイミノ二酢酸 で修飾したDNAオリゴヌク レオチド を利用 することによって、 DNA 三本鎖形成を金属イオンによって 制御できること がわかった。 ある特定の遺伝子の発現にはタンパクのDNA への結合が必要不可欠である。 一般に、 DNAオリゴヌクレオチドの三本鎖 形成に より、 このようなDNAタンパクの結合を阻害することが可能 である。
本 研究 では、 DNAオリゴヌクレオチドの三本鎖形成を金属イオンによって 制御 することに成功した。 このことは