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結論

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 43-52)

天然に 存在するDNA結合性配位子の 中には、 分子内に金属錯形成部位を 有し、 金属イオンと協同的に相互作用してその活性を発現するものが存在 する。 これらのDNA配位子はDNAとの相互作用において、 DNA-金属イオ ンーDNA配位子の三元錯体を形成していると考えることができる。 しかしな がら、 三元錯体の形成は示唆されるものの、 依然として金属イオンの結合 位置や役割などが明らかにされていないDNA配位子も数多く存在する。 そ こ で、 本論文では、 天然 に観られるDNA-金属イオンーDNA配位子の三元錯 体の生成を人工のDNA配位子を用いて検証し、 このような三元錯体の本質 を明らかにすることを目的のーっとして検討を行っ た。 この一環として、

本論文では、 金属イオンによって(DNA配位子の) DNAに対する結合活性 が制御 で きるシステムを、 人工のDNA配位子を用いて構築することを検討 した。 ま た、 本論文ではDNA塩基配列の中でも、 とりわけC2対称、配列に着 目した。 そして、 このような配列へのDNA配位子の結合を金属イオンによ って制御することを積極的に試み、 さらに はこのような配列の検出システ ムの構築をネ食言すした。

以下、 本研究によって得られた成果を各章ごとにまとめて述べる。

第2章では、 金属配位官能基を有するアントラキノン誘導体1、

2を合成

し、 そのDN Aとの相互作用を検討した。 これらの DNA配位子 は、 天然の DNA配位子と比べると非常に簡略化された 構造を有しており、 DNA-金属 イオンーDNA配位子の三元錯体の形成に必要な最少限の構成要素から成って いる。 それゆえ、 三元錯体に関する最も本質的な知見を得るのに適した配 位子であると考えた。

DNAとの会合に伴う吸収スペクトルの変化から、 これらのDNA配位子の アントラキノン部位 はDNAへインターカレーシ ョンしていると考えられた。

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-『岬'

まず、 これらのDNA配位子のターゲット とな る金属イオンとして、 Cu(II) を用いて解析を行 った。 Cu (11) 共存下においてScatcha rd解析を行い、 DNA に対する結合定数を求 めた ところ、 Cu(

11)非共存下の場合と比較して、

1に ついては 結合 定数が約2倍に なり、

2については約7倍に な った。 これにつ

いては 、 Cu(ll)との錯形成によりこれらDNA配位子の正電荷が 増大するた めであると 考えられた。 さら に、

2については モル比プロットからモル比が

0.5の条件下では2 : 1錯体を形成し、 二量体として存在すること が判明した。

そ こで、 この条件下でも同様にScatchard解析を行い、 結合 定数 を求めたと ころ、 この場合 結合 定数が約6倍に なった。 これについては、 荷電状態の変 化によるものでは な く、 その構造変化によ るものであると考えられた。 す

なわち、 2 が二量化 することによ って DN Aに対する結合部位を二つ有する

に至った ことが原因で、 DNAに対する 結合定数が増大したものと考えられ た。

次に、 金属イオンとしてランタノイドイオンであるLa(lll)、 Eu(I 11) 、 Lu(11I) を用いて、 2とDNA との会合挙動について検討 を行った。 これらの 金属イオンは+3価の金属イオンであるため、 +2価のCu (11) の場合よりも DNAに対する結合定数が大きく増大 すること を期待していた のであるが、

実際にはそ れほど大きな 結合定数の増大は観測さ れ なかった。 これについ ては 、 DNA共存下において2がランタノイドイオンと安定な 錯体を形成で きないためであると考えられた。 しかし ながら 、 DNA 結合定数の値は これ ら のランタノイド金属イオン間で異なっており、 そ の序列に関してはイミ ノ二酢酸と各金属イオンの安定度定数に対応するものとなった。 このこと から判断して、 ランタノイドイオン共存下でも、 明確に 定義できるほど安 定なものでは ないのかもしれないが、

DNA-金属イオン -DNA配位子の三元

錯体が形成していると考えられた。

以上のような検討から、 本研究で合成した

DNA配位子(1

2)は、

いく つかの金属イオン存在下、 DNA-金属イオン-DN A配位子の三元錯体を形成

ー150-司咽「

することがわかった。 そして、 このような三元相互作用 にともないDNAに 対する親和性が増大する ことがわかった。 特に、 2において観察された 配位 子の二量化という現象は、 二量体とし て作用するDNA結合性タンパク等の 概念的なモデルとして捉える ことが でき 、 この点からも興味深い知見が得 られた。

第3章では、 金属 配位官能基を有するDNAオリゴヌクレオ チド を合成し、

そのDNAとの相 互作用を検討した。 第2章で合成したDNA配位子はDNAイ ンターカレ ータを基体として いる ために、 DNA への塩基配列特異的な結合 はほとんど期待できない。 そこで、 DNA三本鎖形成 に よりDNA 二本鎖に塩 基配列特異的に結合することが可能 なDNAオリゴヌクレオチドを基 体とし たDNA配 位子を合 成した。 本研究では、 DNAの塩基配列とし て、 DNA結合

性タンパ クの認識サイトとなってい るC 2対称配列に着目して検討を行った。

そして、 このC2対称、配列へのDNAオリゴヌクレオチドの結合(DNA三本鎖 形成)を金属イオン によって制御する ことを試みた。

上記のた めに末端にイミノ二 酢酸部位を導入したDNAオリゴヌク レオチ ド ( 4、 5、 6 )を合成した。 そして、 金属錯形成を通 じたオリ ゴヌクレオ チドの二量化を利用 したDNA三本鎖形成の制 御を試み た。

まず、 イミノ二酢酸修飾ピリミジン7量体4を合成し、 検討 を行った。 そ の結果、 鎖長が短すぎたためにDNA三本鎖の形成が確 認できず\金属錯形

成を通じ たオリゴヌクレオチド の二量化の効果を検討することはできなか った。

次に、 塩基数を2倍にしたイミ ノ二酢酸 修飾ピリ ミジン14量体5を合成

し 、 そのDNA 二本鎖との相互作用を検討し た。 このオリゴヌクレオチドに ついては

三本鎖形成を確認することができた。 オリ ゴヌクレオチド5の三 本 鎖複 合体については、 Lu(III ) を添加することによってその安定性 が増 大 することがわかった。 中でも41merと5の 複合体については、 Lu(III)添 加に

ー151-よる淡色効果の程度が他 の系と比べて大き かったことから、 5 が二量体とし て協同的に41 mer に 結合している可能性 が示唆された。 しかし なが ら、 そ の協同性 は、 複合体のTmにはほとんど反 映されておらず、 満足のい くもの

ではなかった。 これ については、

5のイミノ二酢酸部位 とヌクレオチドをつ

なぐリンカ一部位の剛直性に問題があるのではない かと考え られ た。

そ こ で次に、 リン カ一部位 のメチレン鎖を延ばし 、 その柔軟性 を増した オリゴヌクレオチド6を合成し、 DNA 二本鎖との相互作用を検討した。 6と DNA二本鎖( 42mer、 43mer、 44mer)の複合体 は、 Lu (III)を添加するこ とにより安定性が明らかに増 大することがわ かった。 特に、 6と44merの複

合体については、 Lu(III)の添加により Tmが100C上昇し、 大き な 安定化 が 観察された。 一方で、 6と26merの複合 体については、 Lu(III) を添加しでも ほとんど安定性に変化がみられ なかった。 このことから、 6はLu(III)共存 下、 C2対称配列に二量体として協同的に 結合 することにより 、 その配列へ の親和性を増大させていることがわかった。

また、 Lu(II I)だけでなく 他のランタノ イド 金属イオン(La(III) 、 Eu(III) 、 Tb(III) )についても、 6とDNA二本鎖(43m er、 44mer)の複合体 を安定化 することがわかった。 この際、 観察された複合体の安定性は、 各金属イオ ンとイミノ二酢酸の親和性を反映したものであ った。

以上のような検討から、 末端をイミノ二酢酸 で修飾したDNAオリゴヌク レオチド を利用 することによって、 DNA 三本鎖形成を金属イオンによって 制御できること がわかった。 ある特定の遺伝子の発現にはタンパクのDNA への結合が必要不可欠である。 一般に、 DNAオリゴヌクレオチドの三本鎖 形成に より、 このようなDNAタンパクの結合を阻害することが可能 である。

本 研究 では、 DNAオリゴヌクレオチドの三本鎖形成を金属イオンによって 制御 することに成功した。 このことは

遺伝子発現を 金属イオンによって 制御できるシステムの構築の可能性 を意味するものである。 このような観 点から本研 究で得られた成果 は非常に重要な知見であるといえる。

-152-第4章では、 イミノ二酢酸修飾オリゴヌクレオチドを利用したDNA二本 鎖上の C2対称、配列の検出システムの開発について述べた。 第3章における

C2対称、配列へのオリゴヌクレオチドの結合を金属イオンによって制御する という システムは、 別の見方をすれば、

C2対称、配列を選択的に認識するシ

ステムとしても捉えることができる。 従って、 オリゴヌクレオチドがこの ようなC2対称配列に結合したという情報を何らかの形で、 簡便に、 高感度 に取り出すことができるならば、

C2対称、配列を検出するシステムを構築す

ることが可能であると考えた。

そこで、 本研究では、 オリゴヌクレオチドを二量化させるための制御因 子として利用したランタノイドイオンの発光現象に着目した。 ランタノイ ドイオンのい くつかは光増感剤との相互作用に基づき各金属イオンに特徴 的 な遅延蛍光を発することが知られてい る。 本研究では光増感剤として核 酸塩基、 及び0-フェナンスロリンを利用して、 検出システムの構築を検討 した。

核酸塩基を光増感剤として利用した検出系では、 プローブオリゴヌクレ

オチド

(ランタノイドイオンと錯形成した6)の三本鎖形成に基づくランタ

ノイドイオンの消光を利用した。 この検出法 は、 過去における一本鎖DNA­

Tb(III)複合体の発光 が二本鎖DNAの形成に基づき消光したという実験事実 から(同様の現象が三本鎖DNA形成においても観察できるのではないかと) 推論して、 考案した。 検討の結果、 実際にオリゴヌクレオチド6がそのター ゲットとなるDNA二本鎖と結合し、 三本鎖を形成すると、 Tb(III)および Eu(III)の発光強度は大きく減少すること がわかった。 したがって、 ランタ ノイドイオンの消光をシグナルとして利用して、 DNA二本鎖上の 特定の塩

基配列の検出が 可能であると考えられた。

この検出法の概念は、 これまで試みられたことのない新しいものであり、

今後の様々な発展が期待できるが、 この検出法は消光を利用したものであ るため、 本質的に高感度検出には適して いないと考えられた。 そこで、 次

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