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( 証拠の標目 ) 略 ( 死体遺棄罪について免訴とした理由 ) 第 1 争点本件の争点は, 死体遺棄罪の公訴時効の完成の成否であり, その前提として, 本件死体遺棄行為の性質 ( 作為犯か不作為犯か ) や, 公訴時効の起算点がいつであるのかが問題となる 検察官は, 論告において, 被告人には殺害

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全文

(1)

主 文

被告人を懲役3年に処する。 未決勾留日数のうち160日をその刑に算入する。 大阪地 方検 察庁 で保 管中 の覚 せい剤 1袋 (平成 24 年領 第5 21 1号 符 号3) 及び 注射 器入り 覚せ い剤 4本( 同 号符号 5な いし 8)を 没収 する 。 訴訟費用は被告人の負担とする。 本件公訴事実中死体遺棄の点については,被告人を免訴する。

理 由

(罪となるべき事実) 第1 被告人は,平成19年2月頃,大阪府泉南郡(以下略)にあるアパートaの A方におい て,女児 を出産し たが,出 会 い系サイト で知り合 った初対 面の男 性との意に沿わ ない性交渉 を原因と する 望まない出産で あったこと などから , その処置に 困り,女 児を殺害 しようと 考 え,その頃 ,A方の 浴室にお いて, 殺意をもっ て,女児 の身体か ら両手を 離 して女児を 浴槽の中 の湯水に 沈め, よって,間もなく女児を溺水により窒息させて殺害した。 なお,被告人は,平成24年7月16日,大阪府浪速警察署において,警察 官に対し,その犯行を申告して自首した。 第2 被告人は,法定の除外事由がないのに,平成24年7月16日頃,大阪市浪 速区(以下 略)にあ るマンシ ョンbの 当 時の被告人 方におい て,フエ ニルメ チルアミノ プロパン の塩類若 干量を含 有 する水溶液 を自己の 身体に注 射し, もって,覚せい剤を使用した。 第3 被告人は,みだりに,平成24年7月16日,第2記載の当時の被告人方に おいて,覚 せい剤で あるフエ ニルメチ ル アミノプロ パン塩酸 塩の結晶 約0. 406グラム( 平成 24 年 領第 52 11 号符 号3 及び 8 )及び覚せい剤であ るフエニルメチルアミノプロパ ンの結晶 約0.294グラム( 同 号 符 号 5な いし7)を所持した。

(2)

(証拠の標目) 略 (死体遺棄罪について免訴とした理由) 第1 争点 本件の争 点は,死 体遺棄 罪の公 訴時効の 完成の成 否であり ,その 前提と し て,本件死 体遺棄行 為の性質 (作為犯 か 不作為犯か )や,公 訴時効の 起算点 がいつであるのかが問題となる。 検察官は,論告において,被告人には殺害した女児を葬祭する義務があり, 葬祭の対象 となる死 体を平成 19年2 月 上旬頃から 平成24 年7月1 6日ま での間,自 己の支配 下に置き 続けて葬 祭 義務を果た さないま ま放置し たとい う不作為に よる遺棄 行為を起 訴したも の であり,公 訴時効の 起算点は ,警察 官が死体を 発見した 平成24 年7月1 7 日であるか ら,平成 24年8 月6日 (平成24 年9月1 9日の誤 記と認め る )に公訴提 起された 本件は, 公訴時 効が完成していない旨主張する。 他方,弁護人は,本件において成立する死体遺棄は,死体をA方の押入れに 入れ,その後, 被告人の自 宅に運ぶ など した場所的移転 を伴う作為 犯であり , 最後に死体 を移動さ せた平成 21年2 月 下旬頃が公 訴時効の 起算点で あるか ら,本件公訴提起時には,既に公訴時効が完成している旨主張する。 第2 本件の訴因について 1 本件訴因に関する検察官の主張及び釈明 本件死体 遺棄罪の 公訴事 実は, 「被告人 は,前記 のとおり ,平成 19年 2 月上旬頃, 同児が死 亡したの を認めた の であるから ,同児を 葬祭しな ければ ならない義 務があっ たのに, 前記犯行 が 発覚するの をおそれ ,その頃 から平 成24年7 月16日 までの間 ,別表( 省 略)記載の とおり前 記A方ほ か3か 所において ,同児の 死体をタ オルで包 み ,ポリ袋に 入れるな どして放 置し, もって死体を遺棄した」というものである。

(3)

この公訴 事実の記 載は, 死体遺 棄行為に ついて, 不作為犯 の前提 となる 葬 祭義務があ る旨記載 する一方 ,行為と し ては隠匿等 の作為犯 を示す記 載とが 混在したあいまいな表現となっている。 そこで,裁判所は,起訴直後に行った打ち合わせにおいて,検察官に対し, 起訴状の別 表に記載 された4 か所にお け る遺棄行為 の罪数関 係につい て明確 にするよう 求めたと ころ,検 察官は, 第 1回公判前 整理手続 期日にお いて, 各行為の罪 数関係は ,不作為 による継 続 犯であり, 一罪と考 えている 旨釈明 した。 他方で, 検察官作 成にかか る平成2 4 年10月9 日付け証 明予定事 実記載 書の第3項 には,「 死体遺棄 の犯行状 況 等」として ,大要, 次のよう な主張 が記載され ている。 すなわち ,「被告 人 は,女児の 遺体をバ スタオル に包ん だ上,自己のス ポーツバッ グ内に入 れて ,アパートaの 押し入れ内 に入れた 。 被告人は, その二, 三日後, 同児の遺 体 をバスタオ ルで包ん だ状態で ビニー ル袋に入れ た上,そ のビニー ル袋をパ ー カーで包み ,スポー ツバッグ 内に入 れ,当時の 自宅であ るアパー トcに運 ん だ。そして ,被告人 は,同日 ,同児 の遺体をスポー ツバッグか ら取り出 し, 前記パーカーに 包んだまま の状態で , 同室クロー ゼット内 に入れて 放置した 。 被告人は, マンショ ンdに, 平成1 9年6月頃 ,引っ越 した際, 前記遺体 を キャリーバ ッグ内に 入れて運 び,同 キャリーバ ッグに入 れたまま ,同室ク ロ ーゼット内 に入れ, そのまま 放置し た。被告人 は,平成 21年2 月頃,マ ン ションbに 引っ越し た際,遺 体を前 記キャリー バッグに 入れたま ま運び, そ のまま同室 クローゼ ット内に 入れ, 平成24年 7月16 日に警察 官に発見 さ れるまで, 放置して いた。」 と記載 されている。 このよう に,証明 予定事 実記載 書には, 被告人が ,女児の 死体を バスタ オ ルで包んだ 上,スポ ーツバッ グ内に入 れ て,アパー トaの押 し入れ内 に入れ たほか,バ スタオル に包まれ た死体を ビ ニール袋及 びパーカ ーで包み ,これ

(4)

をスポーツ バッグや キャリー ケースに 入 れて,当時 の被告人 方3か所 に移動 させて放置 した旨の 記載があ るものの , 被告人に葬 祭義務が あること や,そ の義務を果 たしてい ないこと について は ,明示的な 記載が一 切なされ ていな かった。 そこで,裁判所は,さらに,平成24年11月19日,検察官に対し,①本 件死体遺棄 の犯行は ,検察官 の上記主 張 によると, 遺体につ いて隠蔽 工作を 加えた上, さらに場 所的移転 を伴って い るのである から,不 作為によ る遺棄 ではなく, 作為によ る遺棄を 主張して い ると理解し てよいか ,②仮に ,本件 について, 検察官が 不作為に よる遺棄 行 為を主張す るという 立場を採 ってい る場合,上 記隠蔽工 作や場所 的移転行 為 は,どのよ うな意味 を有して いるの か,③公訴 時効との 関係で, 作為を伴 う 死体遺棄行 為のうち ,作為後 の放置 行為のみを 切り取っ て,公訴 事実を構 成 することの 有効性及 び相当性 につい て,検察官の見解を示されたいという3点につき,釈明を求めた。 検察官は ,平成2 4年1 2月2 8日,上 記求釈明 に対し, 「①本 件は, 葬 祭義務者が ,葬祭の 対象とな る死体を 自 己の支配下 に置き続 けて葬祭 義務を 果たさないまま 放置する行 為を不作 為に よる遺棄として 起訴したも のである , ②本件は, 隠匿や場 所的移転 の前後に わ たって死体 を自己の 支配下に 置き続 けて放置す るという 形態の不 作為によ る 遺棄を起訴 したもの であり, 隠匿行 為や場所的 移転は, 不作為の 遺棄によ り 生じた違法 状態を維 持するも のに過 ぎない,③ 本件は, 隠匿行為 の前後に わ たって死体 を自己の 支配下に 置き続 けて放置す るという 不作為に よる遺棄 を 起訴したも のであり ,作為後 (隠匿 後)の放置 行為のみ を切り取 ったもの で はないため ,その有 効性及び 相当性 について疑義は生じない。」と釈明した。 2 本件訴因の確定 このような起訴状の公訴事実や証明予定事実記載書の記載内容等に照らし, 訴追権者で ある検察 官の意思 を合理的 に 解釈すると ,以下の 理由から ,検察

(5)

官は,本件 死体遺棄 の訴因と して,作 為 による形態 と不作為 による形 態の複 合的な行為を設定したものと解される。 検察官は,「本件は,隠匿や場所的移転の前後にわたって死体を自己の支配 下に置き続 けて放置 するとい う形態の 不 作為による 遺棄を起 訴したも のであ る」と主張するのであるが,採用することができない。 なぜならば,(1)死体遺棄とは,社会的に認められている埋葬の方法によら ないで死体 を放棄す ることで あり,こ れ には死体の 隠匿行為 も含まれ るとこ ろ,女児の 死体をタ オルで包 み,ポリ 袋 に入れるな どして室 内に放置 した行 為は,作為 による死 体遺棄罪 の構成要 件 に該当する 行為であ ることが 明らか である。そ して,検 察官は, 起訴状の 公 訴事実に当 該作為の 形態によ る行為 を記載して いる。そ れにもか かわらず , 「不作為に よる形態 の遺棄の みを起 訴したので あり,場 所的移転 やクロー ゼ ットに入れ る等した 行為は, 法的に 重要でない か,違法 状態を維 持するの み である」と いうので ある。こ のよう な検察官の 主張は, 整合性が 保たれて お らず,到底 受け入れ ることが できな い。 (2)また,作為による形態と不作為による形態の死体遺棄行為が,いずれも 証拠上認め られる場 合には, 作為犯を 端 的に認定す ればよい のであり ,例外 的・補充的 な不作為 犯を検討 するのは , 作為による 形態の行 為により 当該事 象の違法性が評 価し尽くさ れていな い場 合に限り行うこ とになると 解される 。 検察官とし ても,通 常は,そ のことを 念 頭に置いて 訴訟活動 を遂行す るはず である。 以上,検 討したと おり, 起訴状 の公訴事 実や証明 予定事実 記載書 の記載 内 容等に加え て,検察 官の訴追 意思を合 理 的に解釈す れば,検 察官とし ては, 本件死体遺 棄行為に ついて, 不作為形 態 と作為形態 の複合形 態の訴因 を設定 したと解するのが相当である。 なお,検 察官の主 張に従 うと, 作為犯と しては公 訴時効が 完成し ている に

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もかかわら ず,同じ 死体遺棄 行為をも っ ぱら不作為 犯として 構成する ことに より,葬祭 義務を果 たすか, 葬祭義務 を 果たすこと ができな い状態に ならな い限り,半 永久的に 公訴時効 が完成し な いことにな るため, バランス を著し く欠くことになる。 第3 本件死体遺棄の形態 以上の訴因を前提として,本件において成立する死体遺棄罪の形態について 検討する。 証拠によれば,被告人が,①平成19年2月頃の女児の殺害当日に,その死 体をタオル に包み, アパート aのA方 押 し入れにあ ったスポ ーツバッ グに入 れて隠匿した,② ①より二,三日後,死体をスポーツバッグごとアパートc の自宅に移 動させて ,クロー ゼットに 隠 匿した,③ 平成19 年春頃, 死体を キャリーバ ッグに入 れてマン ションd に 移動し,室 内に放置 した,④ 平成2 1 年 2 月 頃 , 死 体 を キ ャ リ ー バ ッ グ ご と マ ン シ ョ ン b に 移 動 さ せ , ク ロ ー ゼット内に 隠匿し放 置したと いう作為 に よる形態の 死体遺棄 と,⑤葬 祭義務 があるにも かかわら ず,女児 を殺害し て から警察に 発見され るまでの 間,葬 祭義務を果 たさない まま死体 を放置し 続 けたという 不作為に よる形態 の死体 遺棄が,同時的に存在している。 両者の違法性について考えると,本件において,死体をタオルで包み,ポリ 袋に入れる 等の作為 により, 自己の支 配 下に死体を 隠匿し放 置したこ とと比 べて,葬祭 義務を果 たすこと なく自己 の 支配下に死 体を放置 し続けた という 不作為が, 死体遺棄 罪の保護 法益であ る 死者に対す る社会的 習俗とし ての宗 教感情を一 層害する ものとは いえない か ら,作為の 形態によ る死体遺 棄行為 により本件 事象の違 法性が評 価し尽く さ れていると いえる。 そうする と,本 件では,実 体法上, 作為の形 態による 死 体遺棄罪が 成立し, 不作為に よる形 態の死体遺棄罪は成立しないと認めるのが相当である。 なお,本 件では, ①の隠 匿行為 に次いで ,②の隠 匿行為で は,当 時の交 際

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相手の居室 から被告 人方での 隠匿とい う 状況の変化 があり, 完全に被 告人の 支配下に死 体が移動 して放置 されてい る ところ,こ のような 死体の保 管状況 の変化に応 じて,葬 祭されな くなる可 能 性が格段に 高まり, 新たに死 者に対 する社会習 俗として の宗教感 情を害す る に至ったと いえるた め,②の 隠匿行 為も,別途 ,死体遺 棄罪が成 立し,① 及 び②の罪は ,包括一 罪の関係 にあた る。しかし ながら, ③及び④ の隠匿行 為 は,②の隠 匿行為に より発生 した違 法状態を結 果的に維 持するも のに過ぎ な いといえる ことから ,別途, 死体遺 棄罪を構成するものではない。 第4 公訴時効の成否 そうすると,本件で成立する死体遺棄罪の公訴時効の起算点は,②の遺棄行 為が終了し た時であ る平成1 9年2月 頃 であり,平 成24年 9月19 日に公 訴提起した 時点にお いては, 既に3年 が 経過してい るから, 公訴時効 が完成 していたことが明らかである(刑事訴訟法250条2項6号)。 よって, 本件死体 遺棄の 点につ いては, 刑事訴訟 法337 条4号 により 免 訴を言い渡す。 (法令の適用) 略 (量刑の理由) 被告人は,生まれたばかりで何もできない女児を湯水に沈めて殺害したのであり, その犯行態様は残酷である。女児は,生命を受けてわずかな時間で,しかも実の母 親の手によって生きる権利を一方的に奪われたのであって,哀れである。 被告人は,出会い系サイトで知り合った初対面の男性と意に沿わない性交渉をし た結果,妊娠するに至ったところ,中学生時代に妊娠中絶した苦く辛い経験があり, 誰にも相談することもできずにいた点は,気の毒である。しかし,妊娠に気付いた 後,現実から逃避して適切な処置を講じないまま出産に至り,出産の事実を隠した い一心で,女児の泣き声が周囲の者に聞こえないようにするため身勝手にも本件殺

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人の犯行に及んでおり,後先のことをきちんと考えない場当たり的な考え方や行動 が犯行に結びついているから,その経緯については同情するにしても限度がある。 しかも,被告人は,死体を放置しているところ,死体遺棄罪については公訴時効 が完成しているため,直接その刑事責任を問うことはできないが,殺人の犯行後の 情状もよくない。 また,被告人の覚せい剤に対する依存性や常習性もかなり進んでおり,幻覚や幻 聴を生じるほど心身に悪影響が及んでいる。 このような事情を重視すると,被告人の刑事責任は重いものがある。 もっとも,被告人は,殺人,覚せい剤の使用及び所持の事実について,自首して おり,被告人の反省と更生に向けた決意の表れであると評価することができる。 そこで,自首による減軽をした刑期の範囲内で刑を決めるのが相当であるが,弁 護人のその他の主張を考慮しても,刑の執行を猶予するまでの事情があるとはいえ ない。 よって,同種事案の量刑傾向を参考にした上,被告人を懲役3年に処することと した。 (検察官の求刑-懲役6年,覚せい剤の没収。弁護人の意見-執行猶予付きの刑) 平成25年3月29日 大阪地方裁判所第7刑事部 裁判長裁判官

裁判官

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参照

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