捕
球
に
関
す
る 一
考
察
体
育
教
室
山
根
成
之
(昭和49年10月 31日受理)I.は
じめ
に ボールゲームの中で投・ 捕球 の技術 は大 きな位置 を占めてい る。その中で投球 に関す る研究 は, 数多 くみ られ るが
,捕
球 に関す るものは数少 い。 それ とい うの も,投
球 の場合 は主体が意のま ゝにプログラムを組 み,そ
れによ り行動す ることで 成立す るが,捕
球 の場合,ボ
ールの落下点 は試行のたびに絶 えず異 り,前
もって プログラムを組 み 行動す ることは許 されないか らに他 な らない。 捕球 に際 してはボールを認知 し,落
下点 を予測 し,落
下点 に身体 を移働 させ るとい う過程 がある。 知覚・運動 スキル・ ダイヤグラムで示す と,ボ
ール (刺激)→
感覚器官→ 中枢機構→筋系→ 運動 と とな り,こ
の過程 の内,感
覚器宮・……筋系 は暗箱 であ り,ボ
ールの落下点が どのよ うなプロセスで 予測 され るのかは不明である。 野球 で,打
者が打 ったボールを捕球す る際,熟
練者 は,打
者が打 った瞬間に飛球 の コース をよみ とり落下地点 を予測 し,行
動す るのに対 し,初
心者 は しば らくの後 に行動 を開始 しているよ うにみ える。 このよ うに捕球 の巧拙 には時間的要因が関係 しているのではないか とい う仮説の もとに,捕
疎 動 作 を刺激 ―反応 として捉 え,ボ
ールが被験者の前方 に落下す る時 と後方 に落下す る場合 とでは,時
間的に,あ
るいは行動様相 にどのよ うな差異がみ られ るか,ま
た小学生 における発達様相 は どうで あるか を検討 した ものである。 I。 実 験 の 概 要 期 日 昭和49年6月 場 所 本学体育館及 び実験室 被験者 鳥取市立湖 山小学校生徒2年
4年 6年
合計 男 子16 14 12 42
女 子15 17 17 49
合 言+ 31 31 29
山 (実験
1)全
身反応時間測定 台の上 にの り,合
図が あると台の上か ら後 に とびお りる。合図があってか ら,台
よ り足が離 れ る までに要 した時間 を1/1,000秒
で測定す る。1人 5回
試行 し,そ
の平均値 を個人の得点 とす る。 (実験2)捕
球反応時間測定 図1に示す よ うにボールを筒 の中に落 し,バ
ウン ドさせ,数
物線 を描 いて落下す るよ うにす る。 ボールが筒の出口に至 ると,ビ
ームを送 り時計が動 きは じめる。そのボール を捕球するために被験 者がマ ッ トか ら離れ ると時計が止 り,ボ
ールが見 えてか ら,捕
球 のために行動 を起すまでの時間 を1/1,000秒
で測定す る。B点
か らボールを落す と,ボ
ールは被験者の前方(F)に
,A点
よ り落 す とボールは被験者の前方(B)に
落 ちる。被験 者 はマ ッ トか ら離 れない と捕球 し得ない。ボール がは じめて現 われ るのは床上3.6mで
あ り,ボ
ー ″力iビームを遮 ってか ら床 に触れるまでの時間は,Fの
場合ほ ゞ1,213秒であ り,Bの
場合ほゞ1,294 秒 である。F― B間
は2.5mで
あ り1/3の
とこ ろ (Fよ り83cm)に
被験者が位置す る。試行 回数 は1人
F3回
,B3回
をランダムに行わせ,そ
れ ぞれの平均値 を個人の得点 とす る。使用 ボールは 直経4.2 cmのマジ ックボールであ り,実
験 に際 し て16mm撮映を行い動作分析 の参考 とした。Ш。結
果
考(1)捕
球成否 について 捕球 の際,ボ
ールが手 に当たれば例 え受け損 じて も捕球 した もの として取扱い,ど
の程度捕球 が 成功 しているか学年別 に平均値 を示 した表
1痛
腕 回!挿不力()Iホ
s.D 8 大 ヽ・ザ 察 ものが表1で
ある。F,Bと
もに当然な が ら高学年 になるに従 って捕球 回数 は多 くな り発達の程 を示 している。学年間の tテ ス トの結果,男
子F2年 -4年
,女
子B4年 -6年
でP<5%,他
はすべてP<1%で
有意 な差 をみることが出来た。 子午 NF
B
汚 5 216
α188(0526)
0375(0.650〕
4
15
0866で
1087〕
I.933(0.988)
6
122.417 (o640〕
2.833 (0372)
女 3 215
0 ( 0
0 ( 0 )
4
15
0.294 (0570)
α弱2
でI.022〕捕球 に関す る一考察 Fと Bと を比べてみ ると各学年 について男女 ともFよ りも
Bの
捕球 の場合の方が成功 が高 い。即 ち,前
進 して捕球す るよ りも後退 して捕球す る方が容易であることを物語 っている。 しか レ t検 定 の結果 いづれ も有意差 を認 めることは出来 ない。Fの
場合, 4年 , 6年
生 で も捕球失敗のケースはあるけれ ども,ボ
ールが床 に落 ちるまでにマッ トか ら離れ捕球動作 をとり得 るのに対 し, 2年
では男女 ともボールが床 に達す るまでの間にマット か ら離れて捕球動作 をとることが出来 ない。つま り総試行回数 の うち男子75%,女
子98%は
ボール に合 わせて 自己 の身体 を移動 させ捕球動作 に移 ることが不可能である。Bの
場合になると, 2年
生です ら上記の傾 向は少 くな り,捕
球動作が とれないのは男子10%,女
子25%と
な り後方に動 き易 い ことを示 している。 この傾向はFの
方 がボールを認知 してか ら床上 に落下す るまでの時間がBの
場合 に比べ短 いとい うことに帰因す るとも考 え られ るが,そ
の時間的差 はわずか0.081秒余 りであることを考 えると, 捕球動作が この時間で左右 され るとい うことは認 めがたいb では,鷹
野氏(注1)が
ぃってぃ るよ うに,身
体の構造上,前
方 よ りも後方 に移動 し易 いためなの であろ うか。 この ことについては各学年 ともFよ りもBの
場合捕球成功 が高かった (表1参
照)こ
とをみると納得 し得 る。 しか し今回の実験条件 がたまたまこのよ うな結果 を もた らした ことも予想 し得 る。2年
生の場合,Fに
対す る動作が とり得なか った とい うことは,方
向が絶 えず変化す る飛球(F)
に対 しては自己の身体 を適応 させてゆ くことの困難 さを示 し,Fに
対 してはボールが描 く倣物線の 前半,即
ち方向のあま り変化のない時点 を知覚す ることによ り,大
まかな動作で適応 し得 るとい う 末発達 な状態 を示 しているとみ るのが妥 当ではなかろ うか。(2)捕
球反応時間 と全身反応時間 捕球成功 と失敗 に分 け,ボ
ール を認知 してか ら捕球のために行動 を起すまでの時間を表2,図
2 に示す。家
2
痛荊
時血
妬
oo4nc.F
B
成 功 失 敗 灰 功 失 敗 男 子2
761.5 (205.5)
77L08 (259.6)
625,9(3105)
6397 (236.1)
4
5727 (158。
3)
7871 (2972)
4469 (20a'
4843 (22α
9)
6
619,9 (211.9)
729,6(1462'
461.2 (105動
446.5(I035)
す 子2
0 (0 '
756.4 (265.6)
0(0'
568.7 (1791)
4
782.I(4102)
8360 (2606)
6359 (243.5D
5872 (23α
9'
6
5720(24a7'
685る
(166.3)
632S (266る
)593.8 (226.1)
(注1)体
育学研究,茅15巻5号之 全体的にみると捕球失敗の場合
,成
功 時に比べ時間が長 くか ゝっているよ うに みえるが有意差 はみ られない。こゝで成功の場合が失敗の場合に比べ
時間的に短いと仮定すると
,①
成功時の
方が失敗時に比べ全身反応時間が短い
,②全身反応は遅 くともボールを認知 し
,落下コースの予測がはやい
,①
l,2と
も早 い,と
い う三 つのケースが考 え られ るが今回触0の
場合 を検討す る。 全身反応時間 を表3に示す。全身反応 時間 と捕球反応時間 との相関をみ ると表 4の とお りで,2年
女子のF―
全身反応 間にP<5%で
有意であった他 は全 く相 関は認 め られない。 この ことか ら捕球 に際 して,全
身反応 時間は さほ ど重要な要因 とはい ゝ得ない のではなかろ うか。 では捕球 の巧拙 は どのよ うな要因が関 与 しているであろ うか。考 え得 ることは, ① ボールの落下予測能力,②
ス ター トは 遅 くとも,そ
の後 の動作の速 さ,正
確 さ, ③前2者
の相乗関係である。 16mmフ ィルムによ り捕球のため マットか ら離れる瞬間の様子をみ ると,Fで
当然前方に踏み込んで 捕球すべ きであるところ,一
旦後 方に さがる,Bで
後方 に移動 して捕球 しなければな らないの に,そ
の場で とび上 る,あ
るいは一歩前進す るといった動作, つま り捕球のために直接関係 しない不用な動作が入 っている。 この ことよ リマッ トを離れ る時間はまちまちにな り,上
述 の よ うに全身反応時間―捕球反応時間に相関がみ られないのは 当然 と思われ る。 4504 6
学年2
図
2
病球反庖寿向
療
5
珈
時向
‰ れ
.()はS.D 表4
全務菰片向も痛球反戚埼向弗 向 一 。 X I I 一 ︱ 55 S 0 65 7 。 7 5 8。 9, 央 ぷ ワg・ 玄 事 ス カ 失 敗 うL
昨
学年 N 男子 N 空 子 2 15
504.4( 78.9〕
15703.3 (142.8)
4 14509.3(I18.4)
!7733.5 (126,9)
6342.5 ( 24.5'
'7518.9 (694)
ま各 N F―全な れ B―領 藤 あ 子 2 16 0198 0.335 4 14 0.466 0,I02 6 0.359 O.412 女 子 2 0.50e 0.550 4 17 0.038 O.192 6 17 0.261 0.191捕球に関する一考察
267
Ⅳ。 まと
め 前方 あるいは後方に落 ちるボールを捕球する時
,動
作にどのような差がみられるか。巧者拙者が,
ボールを認知 し動作を起すまでの時間的特徴はどうかといった観点で実験を行った。まとめてみる と以下のようになる。 ① 前方に落 ちるボールよ りも後方に落 ちて くるボールの方が捕球成功数が高い。つま り前方 よ り も後方に動 き易い。 これは鷹野氏がいっている「身体の構造上後方に動 き易い」 ということによる ものか,今
回の実験条件がたまたまこのような結果 を生 じさせたのか判断 し得ない。 ②2年
生ではボールが前方に落 ちて くる時には,ボ
ールが床に落 ちるまでの間にマットを離れ捕 球のための動作 をとることが出来ない。 これはボールが床に落 ちるまでの時間が短いというよりは,絶
えず方向が変化するボールに対 し て身体を対応 させてゆくことの困難 さを示 していると思われる。 後方に落 ちる場合は個人により動作の様相は異 るが,即
ち一歩前進する者,そ
の場で とび上 る者 といった差はあるが,前
方の場合に比べ捕球動作が多 くとられている。│
このことはボールが描 く放物線の中,前
半で,ボ
ールの方向が比較的変化 しない部分の知覚 によ│
り大 まかな動作 をひき起 こしていると思われる。`
③
全身反応時間の短いということが捕球動作の重要な要因として考えられるのではないかという
仮説 で全身反応時間 と捕球反応時間 との相関を求 めた ところ,相
関はみ られなかった。 これは捕球 の際の動作 に個人差がみ られ,と
び上 る者,前
進すべ き時 に後退す るといった,い
わ ゆる不用 な動作 を伴 っているか らである。<課
題>
ホ ワイテ ィング(注2)は
実験の結果 か ら,ボ
ール捕球 の際「ボールか ら目を離すな」 とい うのは 迷信 に近 く,あ
る一瞬ボール をみて落下点 を予測 し,後
は確認のためにボール をみているにす ぎな い とい って い る。 この こ とか らボール をは じめて認知 した後,い
つ いか な る時点 で予測 が可能 とな るのか。即 ちボ ール のス ピー ド,飛
均 コース によ って予測 がな され る と思 われ るが,両
者 の関係 で予測 を追 求 す る こ とが課題 と思 われ る。 (注2)「
ボールスキル」力口藤・鷹野・石井訳” ′ ‘ 1 1 点 と d
一 1 ュ ー ⋮ I 鳥取大学教養部紀要 第 八 巻