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児童生徒における社会的スキルとストレスの程度が学校適応感に及ぼす影響

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-78 274

-児童生徒における社会的スキルとストレスの程度が学校適応感に及ぼす影響

○堀川 柚1)、吉田 遥菜1)、小宮山 尚1)、門倉 愛1)、齋藤 彩乃2)、野中 俊介3)、嶋田 洋徳4) 1 )早稲田大学大学院人間科学研究科、 2 )所沢市立教育センター、 3 )東京未来大学、 4 )早稲田大学人間科学学術院 【問題と目的】 児童生徒のいじめや不登校,暴力行為といった学校 不適応状態の予防や低減という観点から,児童生徒の 社会的スキル獲得に関するさまざまな心理学的研究が 行われている(小関ら,2009)。なかでも社会的スキ ル訓練(以下,Social Skills Training;SST)は広 く行われており,SSTを行うことによって,児童生徒 の「向社会的スキル」,「引っ込み思案行動」,「攻撃行 動」の 3 つに分類される社会的スキルが増加し,スト レス反応の低減や学校適応感の向上が示されている (嶋田,1998)。その一方で,小学生を対象とした場合 と中学生を対象とした場合ではSSTの効果に差異が見 られることが指摘されている(高橋・小関,2011)。 たとえば,集団SSTを実施した渡辺ら(2015)の報告 においては,小学生のスキル獲得およびストレス反応 低減が認められたものの,中学生においては特定のス キル獲得のみの効果にとどまったことが報告されてい る。このことから,中学生のストレスに影響を及ぼす 要因は,必ずしも学校への不適応感やスキル不足とは 限らない可能性が考えられる。しかしながら,ストレ ス反応と社会的スキルが学校適応感に及ぼす影響性に おける発達段階による差異は必ずしも体系的に明らか にされているとは言いがたい。そこで本研究において は,小中学生を対象にして社会的スキルの獲得がスト レス反応の程度および学校的適応感に及ぼす影響に関 して包括的に検討することを目的とした。 【方法】 調査対象者 公立小中学校に在籍する小学生125名 および中学生200名に質問紙を配布し,回答ミスや回 答漏れを除外した小学生119名(男子66名,女子53名, 平均年齢10.2±0.7歳)および中学生194名(男子108 名,女子86名,平均年齢12.2±0.4歳)を分析対象と した(有効回答率96.3%)。測度 ( a )ストレス反応: 小学生用ストレス反応尺度(嶋田ら,1994),中学生 用ストレス反応尺度(三浦,2002),( b )社会的スキ ル:小学生用社会的スキル尺度(嶋田ら,1996),中 学生用社会的スキル尺度(嶋田,1998),( c )学校適 応 感: 日 本 版 学 校 肯 定 感・ 回 避 感 尺 度( 大 対 ら, 2006)を用いた。倫理的配慮 本研究は,早稲田大学 「人を対象とする研究に関する倫理審査委員会」の承 認を得て実施された(承認番号2018-005)。 【結果】 社会的スキルがストレス反応軽減の重要な要因であ ること(嶋田,1998)や,ストレス反応軽減によって 学校適応感が高まる(森他,2012)ということを踏ま えて理論モデルを仮定し(Figure),共分散構造分析 による検討を行った(GFI = .934, AGFI = .803, RMSEA = .172,CFI = .861;Figure)。そして当該モ デルにおいて,小学生と中学生といった校種による差 異を検討するため,多母集団同時分析を行った。その 結果,向社会的スキルと引っ込み思案行動の相関係 数,引っ込み思案行動と攻撃行動の相関係数におい て,有意な校種差が示された(z = 4.33,p < .01, z = 2.70,p < .01)。このことから中学生の方が小 学生よりも社会的スキルの下位尺度間の関係性が強い ことが示された。さらに小学生と中学生を比較して, 中学生の方がストレス反応から学校肯定感に影響する パスが有意に高いことが示された(z = 2.78,p < .01)。したがって,中学生の方が小学生に比べて,「か なしい」や「勉強が手につかない」といったストレス 反応が大きくなると,「学校が楽しい」などの学校を ポジティブにとらえることがより低い傾向にあること が示された。 【考察】 本研究の目的は,小中学生を対象にして社会的スキ ルの獲得がストレス反応の程度および学校的適応感に 及ぼす影響に関して包括的に検討することであった。 従来の研究知見においては,社会的スキルを獲得する ことによって,ストレスが低減し,学校適応感が向上 することが知られているが,本研究においてそれらを 直接的に検討した結果は,そのような従来の研究知見 をあらためて支持するものであった。加えて,小学生 を対象とした場合と中学生を対象とした場合では,中 学生の方がストレス反応から学校的肯定感への強い影 響性が見られるなど,小中学生の結果に差異が見られ ることが示された。そして,小学生と比較して中学生 の方が,ストレス反応を下げることで学校適応感が高 まるなど,小中学生によるSSTの効果の差異が示され たことはやはり従来の知見を裏づける結果であった。 本研究の結果を踏まえると,中学生は小学生に比べ て,社会的スキルの下位尺度間の関係性が強いことか ら,社会的スキルの下位尺度ごとに獲得のばらつきが あるというよりも,社会的スキル全体として獲得がな されている,または未学習であるといった状態像に分 けられることが示唆された。すなわち,これらのこと を踏まえると,小学生においては必要な社会的スキル

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-78 275 -をアセスメントし,スキルの獲得をうながすことに よってストレス反応が低減し,学校適応感が向上する 可能性が示唆された。その一方で,中学生において は,必要な社会的スキルをアセスメントすることを基 盤にしながらも,他の社会的スキルの獲得に関しても 広くアセスメントを行う必要があることが示唆され た。また,小学生と中学生を比較すると,中学生の方 がストレス反応から学校肯定感への影響性が強く,学 校をポジティブにとらえられるかどうかについてはス トレス反応の程度によって左右されることが示され た。このことから中学生においては,小学生よりもス トレスマネジメントなどのストレスの低減を目的とし たアプローチを行うことによって学校適応感が向上す る可能性が大きいと考えられる。加えて,小学生,中 学生のどちらにおいても向社会的スキルからストレス 反応への直接的な影響が確認されなかった。このこと から,「困っている友だちを助ける」,「友だちが失敗 したらはげます」といった,周囲から望ましいフィー ドバックを得られることが想定される社会的スキルの 獲得をうながすことは,必ずしも直接的なストレスの 低減には結びつかない可能性があることも示された。 本研究の結果からは,向社会的スキルよりも引っ込み 思案行動や攻撃行動といった,一般に問題行動になり やすいことが想定させる行動の低減をうながすことが 直接的なストレスの低減に結びつく可能性が考えられ る。しかしながら,本研究の結果から社会的スキルの 下位尺度間の相関が一定の強さで認められることと, 理論的に問題行動の消去と並行して適応的な行動の獲 得をうながすことが有効であることを考えると,引っ 込み思案行動や攻撃行動に対する適応的な行動は,向 社会的スキルに限らない可能性があることが指摘され たことにもなると考えられる。したがって,問題行動 の消去と並行して適応的な代替行動をアセスメントす る必要があると考えられる。

参照

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